(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014769
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】画像投影装置、および画像投影方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20250123BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20250123BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117584
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】吉永 真啓
(72)【発明者】
【氏名】福田 克也
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA29
2H199DA30
2H199DA33
2H199DA46
2H199DA48
3D344AA08
3D344AA27
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置、および画像投影方法を提供する。
【解決手段】表示部を介して虚像を投影する画像投影装置(10)であって、虚像を形成するための画像表示光(GL)を照射する画像照射部(11)と、画像表示光(GL)を表示部に導く反射鏡(12)と、を備え、所定の条件を満たす場合に、表示部の方向から反射鏡(12)に入射した光(SL)が画像照射部(11)に入射しないように反射鏡(12)の向きを変えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を介して虚像を投影する画像投影装置であって、
前記虚像を形成するための画像表示光を照射する画像照射部と、
前記画像表示光を前記表示部に導く反射部と、を備え、
所定の条件を満たす場合に、前記表示部の方向から前記反射部に入射した光が前記画像照射部に入射しないように前記反射部の向きを変えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記表示部の方向から前記反射部に入射する光が太陽光であることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像投影装置であって、
前記反射部には、前記画像表示光を前記表示部に導く稼働位置と、前記表示部の方向から前記反射部に入射した光を前記画像照射部に入射させない退避位置と、の2つの位置が設定され、
前記画像照射部の温度を監視する温度監視部と、
回転軸を中心とし前記反射部を鉛直面内において回転させる駆動部と、
前記温度監視部による監視温度が予め定められた退避判定温度を越えた場合に、前記反射部の位置を前記稼働位置から前記退避位置に変えるように前記駆動部を制御する制御部と、をさらに備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像投影装置であって、
前記制御部は、前記画像投影装置の動作終了の指示を受けた場合に、前記反射部の位置を前記稼働位置から前記退避位置に変えるようにさらに制御することを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像投影装置であって、
前記制御部は、前記反射部の位置を前記稼働位置から前記退避位置に変えるに先立って前記画像照射部における画像表示光の照射を停止させることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項3に記載の画像投影装置であって、
前記制御部は、前記反射部が一旦前記退避位置に退避した後前記監視温度が予め定められた復帰判定温度以下になった場合に、前記反射部の位置を前記退避位置から前記稼働位置に変えるとともに前記画像照射部における前記画像表示光の照射を再開することを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項3に記載の画像投影装置であって、
前記画像表示光が前記表示部で反射して形成されるアイボックスの位置の調整によって前記稼働位置が変更された場合、前記制御部は前記退避位置から変更後の前記稼働位置への移動時間だけ前記画像照射部における前記画像表示光の照射を停止して待機することを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
表示部を介して虚像を投影する画像投影装置であって、前記虚像を形成するための画像表示光を照射する画像照射部と、前記画像表示光を前記表示部に導く反射部と、を備えた画像投影装置を用いた画像投影方法であって、
所定の条件を満たす場合に、前記表示部の方向から前記反射部に入射した光が前記画像照射部に入射しないように前記反射部の向きを変えることを特徴とする画像投影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置、および画像投影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。しかしながら、計器盤は車両のウィンドシールド(フロントガラス)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があるため好ましくない。そこで、ウィンドシールドに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下「HUD」:Head Up Display)のような画像投影装置が提案されている。
【0003】
上記のような従来技術の画像投影装置では液晶表示装置等による画像照射部が画像を含んだ照射光(以下、「画像表示光」)を照射し、1枚もしくは複数枚の自由曲面ミラー(以下、「光学系」という場合がある)で照射光を反射させて、空間中に画像(虚像)が結像するように運転者等のアイボックスに到達させる。これにより、運転者等はアイボックスに入射した画像表示光によって、車両前方の奥行き方向における結像位置に画像が表示されているように認識することができる。特許文献1には、このような従来技術に係るHUDの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで上記従来技術に係るHUDでは、画像照射部から運転者のアイボックスに至る光路を逆にたどって、光学系で集光された外光である太陽光が画像照射部に当たることも想定される。画像照射部に長時間太陽光が当たると太陽光の熱で画像照射部の温度が上昇し、画像照射部の定格温度を越えた高温状態となることも想定される。その結果画像照射部の故障に至ることが懸念される。従って、外光としての太陽光の照射から画像照射部を保護することができる画像投影装置が求められていた。また、そのような画像投影装置は光学系の構成等に依存せず、簡素な構成であることも重要である。特許文献1に係る画像投影装置は外光による画像照射部の温度上昇の抑制を課題としているが、特許文献1に係る画像投影装置では、光学系における結像の工夫によってこの課題を解決している。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、簡素な構成で外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置、および画像投影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、表示部を介して虚像を投影する画像投影装置であって、前記虚像を形成するための画像表示光を照射する画像照射部と、前記画像表示光を前記表示部に導く反射部と、を備え、所定の条件を満たす場合に、前記表示部の方向から前記反射部に入射した光が前記画像照射部に入射しないように前記反射部の向きを変えることを特徴とする。
【0008】
このような本発明の画像投影装置では、虚像を形成するための画像表示光を照射する画像照射部と、画像表示光を表示部に導く反射部と、を備え、所定の条件を満たす場合に、表示部の方向から反射部に入射した光が画像照射部に入射しないように反射部の向きを変える。その結果、簡素な構成で外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記表示部の方向から前記反射部に入射する光が太陽光であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記反射部には、前記画像表示光を前記表示部に導く稼働位置と、前記表示部の方向から前記反射部に入射した光を前記画像照射部に入射させない退避位置と、の2つの位置が設定され、前記画像照射部の温度を監視する温度監視部と、回転軸を中心とし前記反射部を鉛直面内において回転させる駆動部と、前記温度監視部による監視温度が予め定められた退避判定温度を越えた場合に、前記反射部の位置を前記稼働位置から前記退避位置に変えるように前記駆動部を制御する制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記制御部は、前記画像投影装置の動作終了の指示を受けた場合に、前記反射部の位置を前記稼働位置から前記退避位置に変えるようにさらに制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記制御部は、前記反射部の位置を前記稼働位置から前記退避位置に変えるに先立って前記画像照射部における画像表示光の照射を停止させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記制御部は、前記反射部が一旦前記退避位置に退避した後前記監視温度が予め定められた復帰判定温度以下になった場合に、前記反射部の位置を前記退避位置から前記稼働位置に変えるとともに前記画像照射部における前記画像表示光の照射を再開することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記画像表示光が前記表示部で反射して形成されるアイボックスの位置の調整によって前記稼働位置が変更された場合、前記制御部は前記退避位置から変更後の前記稼働位置への移動時間だけ前記画像照射部における前記画像表示光の照射を停止して待機することを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影方法は、表示部を介して虚像を投影する画像投影装置であって、前記虚像を形成するための画像表示光を照射する画像照射部と、前記画像表示光を前記表示部に導く反射部と、を備えた画像投影装置を用いた画像投影方法であって、所定の条件を満たす場合に、前記表示部の方向から前記反射部に入射した光が前記画像照射部に入射しないように前記反射部の向きを変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、簡素な構成で外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置、および画像投影方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る画像投影装置の、(a)は構成の一例を示す縦断面図、(b)は反射鏡の稼働位置を示す縦断面図、(c)は反射鏡の退避位置を示す縦断面図である。
【
図2】実施形態に係る画像投影装置における、(a)は太陽光の経路を説明する縦断面図、(b)は反射鏡が稼働位置にある場合の太陽光の照射領域と画像照射部との位置関係を示す平面図、(c)は反射鏡が退避位置にある場合の太陽光の照射領域と画像照射部との位置関係を示す平面図である。
【
図3】実施の形態に係る画像投影装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る画像投影装置が実行する反射鏡駆動プログラムのメインルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係る画像投影装置が実行する反射鏡駆動プログラムの温度異常処理サブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る画像投影装置が実行する反射鏡駆動プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態に係る画像投影装置が参照する差分角度-動作時間対比表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。以下の説明では、本発明における画像投影装置を、車両等に搭載されたHUDに適用した形態を例示して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1から
図5を参照して、本実施形態に係る画像投影装置、および画像投影方法について説明する。
図1(a)は本実施形態に係る画像投影装置10の構成の一例を示す縦断面図である。画像投影装置10の本体は、車両の例えばダッシュボードの下部に配置される。
図1(a)に示すように画像投影装置10は、画像照射部11、反射鏡12、駆動部13、温度監視部14、制御部20、筐体30、および透光部31を含んでいる。
図1(a)において車両の進行方向は-Y方向であり、車両の高さ方向はZ軸方向である。
【0020】
画像照射部11は、車両前方に虚像を形成するための画像表示光を照射する。画像照射部11は一例として液晶パネル、有機ELパネル等で構成されている。
図1(b)は、画像表示光の経路を示している。すなわち画像照射部11から照射された画像表示光GLは、後述する筐体30の一部に設けられた透光部31を透過してウィンドシールド(図示省略)に向かう。なお、「ウィンドシールド」は本発明に係る「表示部」の一例である。
【0021】
反射鏡12は、画像照射部11から照射された画像表示光GLをウィンドシールドに導く光学系である。反射鏡12の形態は特に限定されないが、本実施形態では凹面鏡を用いている。ウィンドシールドに照射された画像表示光はウィンドシールドで反射し、運転者に対するアイボックスを形成するとともに、車両前方に虚像を形成する。このことにより、運転者が運転支援情報を視認するための視線移動を小さくすることができる。なお、本実施形態では1つの反射鏡12による光学系を例示して説明するが、これに限らず、自由曲面ミラー等の他の反射部材を含んでいてもよい。なお「反射鏡12」は、本発明に係る「反射部」の一例である。
【0022】
駆動部13はモータ13aを備え、必要に応じ反射鏡12の鉛直面内における回転角度を変える機能を有する。すなわち、本実施形態に係る反射鏡12は、モータ13aに係合する回転機構13bのX軸方向の回転軸を中心として両矢印Dの方向に回転可能とされている。ここで本実施形態に係る「鉛直面」とは地面に対し垂直な面、すなわち
図1(a)に示すY-Z面をいう。使用するモータは特に限定されないが、例えば入力されるパルス電力に同期して動作する同期電動機、あるいはステッピングモータ等を用いることができる。なお、本実施形態ではモータ13aに係合する回転機構13bを用いる形態を例示して説明したが、これに限らず、直接モータ13aの回転軸を中心として反射鏡12の向きを変えてもよい。
【0023】
ここで、本実施形態ではモータ13aとして、ヘッドランプ等のレベリングアクチュエータを流用している。レベリングアクチュエータとは、車両のヘッドランプのオートレベリングシステムに用いられるモータである。ヘッドランプのオートレベリングシステムとは、車両の前後傾斜に応じて、自動でヘッドランプの照射範囲(上下方向)を調整するシステムである。車両の乗員の増減や荷物の有無、走行時の加減速等により、車両の前後傾斜が変化した際のヘッドランプによる周囲への眩惑防止、および必要な照射範囲の確保を図ったものである。上下移動させるモータという点で共通するので、制御ソフトウエアも含めて流用が可能である。こうすることで部材の共用化が図られるので、コスト低減にも寄与する。
【0024】
ここで、以下の便宜のため、反射鏡12の位置を、
図1(a)に示す水平線hを基準とする回転機構13bの回転方向Dの回転角θ(以下、「位置角度θ」)で定義する。ただし、これに限らず、基準位置を他の位置、例えば画像照射部11からの画像表示光GLの照射方向としてもよい。また位置の定義方法は位置角度に限定されず、例えばモータ13aのストローク量等であってもよい。ここで、
図1(b)における状態の位置角度θを「稼働角度θ
w」と定義し、この状態の反射鏡12の位置を「稼働位置」という。
【0025】
温度監視部14は画像照射部11の温度を監視する機能を有する。温度監視部14の形態は特に限定されないが、例えば画像照射部11の一部にサーミスタを取り付けて構成する。温度監視部14によって監視されている監視温度は、後述する制御部20に送られる。
【0026】
制御部20は、画像投影装置10の全体を統括制御し、また後述する反射鏡駆動プログラムを実行する。制御部20は、図示を省略するCPU、ROM、RAM等を含んで構成されている。なお、制御部20は、画像投影装置10を搭載する車両のECU(Engine Control Unit)であってもよい。
【0027】
筐体30は上記の構成を内部に収容し、1つのユニットを構成する。透光部31は筐体30の一部に配置され、画像照射部11からの画像表示光GLを透過させる機能を有する。透光部31は透明樹脂等で形成されている。
【0028】
ここで、
図1(c)を参照して、反射鏡12の退避位置について説明する。上述したように本実施形態に係る画像投影装置10は、外光による画像照射部11の温度上昇を効果的に抑制することを目的としている。
図2(a)は反射鏡12が稼働位置にある場合において、ウィンドシールドの方向から照射された外光である太陽光SLが進入してくる経路を示している。
図2(a)に示すように、進行方向が画像表示光GLの照射経路に沿った太陽光SLは、照射経路を逆にたどって画像照射部11に入射する。このことによって画像照射部11の温度上昇が引き起こされる。これを回避するために、画像投影装置10では、温度監視部14が異常な監視温度を検知した場合に、
図1(c)に示すように、太陽光SLが画像照射部11に直接当たらないように反射鏡12を制御する。すなわち、反射鏡12をLDで示す回転方向に回転させ、太陽光SLを画像照射部11からそらす。制御後に太陽光SLが当たる筐体30の領域を、「退避領域LA」という。
図1(c)に示す反射鏡12の位置を「退避位置」といい、反射鏡12の位置角度を「退避角度θ
e」という。また反射鏡12を退避位置に退避する動作を「退避動作」という。なお筐体30の退避領域LAには、太陽光SLが筐体内の他の領域に散乱しないように、太陽光SLを吸収する光吸収体や、太陽光SLに対する遮光体等を設けてもよい。
【0029】
ここで、
図2(a)に示す太陽光SLの強度は、1日における太陽の位置に応じて変化すると考えられる。このことに対応するために1日における太陽の位置を考慮して、より効率的になるように退避角度θ
eを定めてもよい。あるいは、1日の時刻に応じて退避角度θ
eを変えてもよい。
【0030】
図2(b)は反射鏡12が稼働位置にある場合の太陽光SLの照射領域SA1と画像照射部11との位置関係を示す平面図、
図2(c)は反射鏡12が退避位置にある場合の太陽光SLの照射領域SA2と画像照射部11との位置関係を示す平面図である。通常の表示動作をしている場合は、
図2(b)に示すように、太陽光SLの照射領域SA1が画像照射部11と重なるが、退避動作をさせると、太陽光SLの照射領域SA2が画像照射部11の上方にずれて、太陽光SLが画像照射部11に直接当たらなくなる。なお、本実施形態では、太陽光SLの照射領域を画像照射部11の上方にずらす形態を例示して説明するが、これに限らず筐体30のその他の部位、例えば下方にずらしてもよい。
図2(b)において照射領域SA1を横方向に退避する場合は、駆動部13をその方向に回転可能なように変えればよい。
【0031】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る画像投影装置10の電気的な構成について説明する。
図3に示すように、画像投影装置10は、画像照射部11、モータ13a、温度監視部14、記憶部24、および制御部20を備えている。制御部20はHCU40に接続されている。HCU(Human Machine Interface Control Unit)40は、車載ECUの1つであり、Human Machine Interface(HMI)システムを制御する機能を有する。HMIは、車両の運転者による操作を受け付ける入力インタフェース機能と、ドライバへ向けて情報を提示する出力インタフェース機能とを備えている。HCU40は、運転者から入力された操作内容等に対応した指示を制御部20へ送る。また、HCU40は、制御部20から反射鏡12の位置角度等の情報を取得する。
【0032】
制御部20は、処理部21、駆動信号生成部22、および画像信号生成部23を含んでいる。処理部21は、主として、温度監視部14からの監視温度情報、記憶部24からの各判定温度(後述)等に基づいて、モータ13a、画像照射部11を制御する。処理部21は、HCU40から、運転者によって入力された操作内容等に対応した指示を取得する。また処理部21は、反射鏡12の位置角度等の情報等をHCU40に送る。駆動信号生成部22は駆動部13のモータ13aを制御する信号を生成し、画像信号生成部23は画像照射部11における表示画像を制御する信号を生成する。
【0033】
記憶部24は、画像投影装置10が実行する反射鏡駆動処理(後述)における各判定温度や、稼働角度θw、退避角度θe、反射鏡駆動プログラム等を記憶するための記憶手段である。記憶部24の形態は特に限定されないが、例えばROM、HDD(Hard Disk Drive)等を用いることができる。
【0034】
図4および
図5を参照して、画像投影装置10における反射鏡12の制御方法について説明する。
図4は画像投影装置10において実行される反射鏡駆動処理を記述する、反射鏡駆動プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。本反射鏡駆動プログラムは図示を省略するROM等の記憶手段に記憶されており、CPUによって読み出され、RAM等に展開して実行される。
図4に示すフローチャートでは制御部20に対し、すでに動作開始の指示がHCU40から送られているものとする。また、反射鏡12は退避位置にあり、位置角度θは退避角度θ
eとなっている。
【0035】
ステップS10で制御部20は、必要に応じて初期処理を行う。例えば制御部20は、反射鏡12の位置角度を確認する。反射鏡12は通常退避位置にある。当該位置を確認後、制御部20は退避位置から稼働位置に移動させる。すなわち位置角度θを退避角度θeから稼働角度θwに設定しなおす。初期処理には他に、記憶部24に記憶された監視温度のデータクリア等が含まれる。
【0036】
ステップS11で制御部20は、温度監視部14から監視温度を取得する。
【0037】
ステップS12で制御部20は、ステップS11で取得した監視温度が、温度異常を判定する閾値である退避判定温度を越えているか判定する。退避判定温度は、画像照射部11を正常に稼働させることが可能な温度の上限値に基づいて設定される。具体的には、退避判定温度は使用する画像照射部11の仕様等に応じて適切に定めればよいが、例えば画像照射部11の定格上限温度、一例として105℃とすることができる。退避判定温度は定格上限温度に対してマージンをもって定めてもよく、例えば95℃としてもよい。当該判定が否定判定となった場合はステップS13に移行し、肯定判定となった場合は、温度異常処理サブルーチンに移行する。
【0038】
ステップS13で制御部20は、HCU40から画像投影装置10に対する終了指示を受領したか判定する。当該判定が肯定判定の場合はステップS16に移行し、否定判定の場合はステップS14に移行する。
【0039】
ステップS14で制御部20は、HCU40から画像投影装置10(HUD)の動作指示を取得する。画像投影装置10の動作指示とは例えば、運転者による画像投影装置10における表示内容の指示等である。
【0040】
ステップS15で制御部20は、画像表示光GLが運転者のアイボックスに照射されるように画像照射部11を制御する。
【0041】
ステップS16で制御部20は、画像表示光GLの照射を停止するように画像照射部11を制御する。
【0042】
ステップS17で制御部20は、反射鏡12が退避位置に移動するように駆動部13(モータ13a)を制御する。退避位置に退避しておくことにより、画像投影装置10の非稼働時に太陽光SLが画像照射部11に照射されることを防止できる。その後本反射鏡駆動プログラムを終了する。
【0043】
図5を参照して、温度異常処理サブルーチンについて説明する。本サブルーチンは主として、一旦高温異常になった画像照射部11の温度が、正常な温度に低下するまで待機する処理を行うプログラムである。
【0044】
ステップS20で制御部20は、画像表示光GLの照射を停止するように画像照射部11を制御する。
【0045】
ステップS21で制御部20は、反射鏡12が退避位置に移動するように駆動部13(モータ13a)を制御する。
【0046】
ステップS22で制御部20は、HCU40から画像投影装置10に対する終了指示を受領したか判定する。当該判定が否定判定の場合はステップS23に移行し、肯定判定の場合は本反射鏡駆動プログラムを終了する。
【0047】
ステップS23で制御部20は、温度監視部14から監視温度を取得する。
【0048】
ステップS24で制御部20は、ステップS23で取得した監視温度が、メインルーチンへの復帰を判定する復帰判定温度以下であるか判定する。当該判定が否定判定となった場合はステップS22に戻り、肯定判定となった場合はステップS25に移行する。復帰判定温度の値には特に制限はないが、画像照射部11の温度が十分に下がったことを確認するために、退避判定温度より十分小さい温度、例えば常温としておくことが好ましい。
【0049】
ステップS25で制御部20は、反射鏡12の位置を退避位置から稼働位置に変更する。すなわち位置角度θを退避角度θeから稼働角度θwに設定しなおす。その後メインルーチンに戻る。画像照射部11の温度が正常な範囲の温度に復帰したので、画像投影装置10を通常動作させるためである。
【0050】
以上詳述したように、本実施形態に係る画像投影装置、および画像投影方法によれば、簡素な構成で外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置、および画像投影方法を提供することができる。
【0051】
(第2実施形態)
図6を参照して本実施形態に係る画像投影装置、および画像投影方法について説明する。本実施形態は上記実施形態に対して、アイボックスの位置調整を考慮した形態である。画像投影装置10において運転者が投影画像(虚像)を正常に視認するためには、運転者の視点(アイポイント)がアイボックス内に存在していることが必要である。アイボックスとは、ある2次元空間において運転者が投影画像の虚像を視認することができる可視範囲であり、当該アイボックスは画像投影装置10の光学系(本実施形態では反射鏡12)の特性から決定される。つまり、運転者が投影画像の虚像を見るためには、運転者の視線方向のウィンドシールドに画像表示光GLが照射されなければならないが、そのウィンドシールドへの画像照射光GLの照射位置および照射角度は、主として画像投影装置10の光学系の特性により決定される。すなわち画像投影装置10の反射鏡12により、運転者が投射画像の虚像を見ることができる範囲が決定される。
【0052】
一方視点の位置は運転者の身長等によって変わるので、運転者によってアイボックスの位置を調整することが必要になる場合がある。上記のようにアイボックスの位置調整は、反射鏡12の稼働角度θ
wの調整と等価である。本実施形態はこのアイボックスの位置調整、つまり稼働角度θ
wの調整を考慮した形態である。HCU40は制御部20から、反射鏡12が稼働位置へ設定されたことの通知を受けてから、画像照射部11からの画像照射光GLの照射開始の指示を制御部20に送る。退避位置から稼働位置までの移動時間が不明であると、HCU40は、想定される移動時間に余裕をもって画像照射部11の動作開始まで待機する必要がある。つまり本実施形態は、このHCU40による無駄な待機時間を削減することを主な目的としている。なお、本実施形態に係る画像投影装置の構成は上記実施形態の画像投影装置10の構成と同様なので、必要な場合は
図1を参照することとし、詳細な説明を省略する。
【0053】
図6を参照して、本実施形態に係る画像投影装置10において実行される稼働位置調整
処理について説明する。
図6は当該稼働位置調整処理を記述する稼働位置調整プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。本稼働位置調整プログラムは図示を省略するROM等の記憶手段に記憶されており、CPUによって読み出され、RAM等に展開して実行される。
図6に示すフローチャートでは制御部20に対し、HCU40からすでに動作開始の指示が送られているものとする。稼働位置調整処理は、例えばHCU40のUI(User Interface)を介して運転者により投影画像の位置調整指示が入力されたことにより実行される。本稼働位置調整プログラムは、
図4に示す反射鏡駆動プログラムの初期処理として実行してもよい。その場合は、本稼働位置調整プログラムをステップS10の初期処理に組み込めばよい。
図6に示すフローチャートの実行前には、反射鏡12は退避位置にあり、位置角度θは退避角度θ
eとなっている。
【0054】
ステップS30で制御部20は、HCU40からアイボックスの位置情報を取得する。このアイボックスの位置情報は、例えば運転者が画像投影装置10によって投影された画像を確認しながら、HCU40のUIを介して設定する。あるいは、撮像装置等を用いて運転者の視点(アイポイント)を検出し、自動的に設定してもよい。
【0055】
ステップS31で制御部20は、ステップS30で取得したアイボックスの位置情報に基づいて稼働角度θwを算出する。
【0056】
ステップS32で制御部20は、退避角度θeと稼働角度θwとの差分角度θd=(θe―θw)を算出する。退避領域LAが画像照射部11の上部に設定された本実施形態ではθd>0であるが、退避領域LAが画像照射部11の下部に設定された場合はθd<0である。
【0057】
ステップS33で制御部20は、ステップS32で算出した差分角度θ
dに基づいて動作時間t
wを取得する。動作時間t
wは、反射鏡12を退避角度θ
eから設定後の稼働角度θ
wまで回転させるのに要する時間である。動作時間t
wの取得は、一例として、予め算出しておいた、差分角度θ
dと動作時間t
wとの関係データに基づいて行う。
図7は、差分角度θ
dと動作時間t
wの関係データの一例である、差分角度-動作時間対比表を示している。本差分角度-動作時間対比表は、予め記憶部24に記憶させておいてもよい。なお退避角度θ
eを固定値にする場合は、稼働角度θ
wと動作時間t
wとの関係から動作時間t
wを取得してもよい。ここで、本実施形態では差分角度-動作時間対比表を参照して動作時間を取得する形態を例示して説明したが、これに限らず、例えば差分角度θ
dとモータ13aの回転速度から算出してもよい。
【0058】
ステップS34で制御部20は、カウンタで動作時間twを計数する。
【0059】
ステップS35で制御部20は、動作時間twが経過したか判定する。当該判定が否定判定の場合はステップS34に戻ってカウンタの計数を継続し、肯定判定となった場合はステップS36に移行する。
【0060】
ステップS36で制御部20は、反射鏡12の稼働位置への設定を完了したことをHCU40に通知する。その後本稼働位置調整プログラムを終了する。
【0061】
以上詳述したように、本実施形態に係る画像投影装置、および画像投影方法によっても、簡素な構成で外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置、および画像投影方法を提供することができる。本実施形態に係る画像投影装置、および画像投影方法によれば、HCU40は、例えば初期処理において反射鏡12の位置が稼働位置に設定されたことの情報が入手できるので、画像投影装置10による画像投影までの無駄な待機時間を削減できるという効果がある。
【符号の説明】
【0062】
10…画像投影装置
11…画像照射部
12…反射鏡
13…駆動部
13a…モータ
13b…回転機構
14…温度監視部
20…制御部
21…処理部
22…駆動信号生成部
23…画像信号生成部
24…記憶部
30…筐体
31…透光部
40…HCU
D、LD…回転方向
h…水平線
LA…退避領域
GL…画像表示光
SL…太陽光
SA1、SA2…照射領域
θ…位置角度
θw…稼働角度
θe…退避角度