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特開2025-14773銅アルミニウムクラッド材の製造方法、ヒートシンクの製造方法、銅アルミニウムクラッド材及びヒートシンク
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014773
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】銅アルミニウムクラッド材の製造方法、ヒートシンクの製造方法、銅アルミニウムクラッド材及びヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20250123BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B23K20/00 340
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117591
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】小池 初美
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 和宏
(72)【発明者】
【氏名】大和田 安志
(72)【発明者】
【氏名】木村 慎吾
【テーマコード(参考)】
4E167
5F136
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA08
4E167AB05
4E167AD09
4E167BB04
4E167DB01
4E167DB11
5F136BA36
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA06
5F136FA75
5F136GA13
5F136GA17
(57)【要約】
【課題】容易に製造することができるとともに、剥離し難い銅アルミニウムクラッド材の製造方法を提供する。
【解決手段】銅部材2は、アルミニウム部材3と対向する対向面に、金属材料により密着して形成されるとともに酸化物の発生を抑制する被覆層10が設けられており、被覆層10とアルミニウム部材3とを互いに向き合わせた状態で、銅部材2とアルミニウム部材3とを積層して積層体20を形成する積層工程と、積層体20に熱間鍛造を施して鍛造接合する鍛造工程と、を備え、鍛造工程において、銅部材2と被覆層10とが密着した状態で、被覆層10の新生面10aとアルミニウム部材3の新生面3aとを密着させて接合させることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金により形成される銅部材と、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されるアルミニウム部材とを鍛造接合してクラッド材を製造する銅アルミニウムクラッド材の製造方法であって、
前記銅部材は、前記アルミニウム部材と対向する対向面に、金属材料により密着して形成されるとともに酸化物の発生を抑制する被覆層が設けられており、
前記被覆層と前記アルミニウム部材とを互いに向き合わせた状態で、前記銅部材と前記アルミニウム部材とを積層して積層体を形成する積層工程と、
前記積層体に熱間鍛造を施して鍛造接合する鍛造工程と、を備え、
前記鍛造工程において、前記銅部材と前記被覆層とが密着した状態で、前記被覆層の新生面と前記アルミニウム部材の新生面とを密着させて接合させる、
ことを特徴とする、銅アルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項2】
前記鍛造工程において、前記被覆層を分断させて、分断された前記被覆層の間に前記被覆層が存在しない分断部を形成し、
前記分断部に前記アルミニウム部材を流入させることで、前記分断部において露出した前記銅部材の新生面と前記アルミニウム部材の新生面とを密着させて前記銅部材と前記アルミニウム部材とを接合させる、
請求項1に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項3】
前記金属材料が、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属はまたその合金である、
請求項1に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項4】
前記銅部材に前記被覆層を形成する被覆工程をさらに備える、
請求項1に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項5】
前記被覆層がめっき層であり、
前記被覆工程において、前記銅部材にめっき処理を施すことで前記めっき層を形成する、
請求項4に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項6】
前記めっき処理が、電気Niめっき、無電解Ni-Pめっき、又は電気Ni-Crめっきである、
請求項5に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項7】
前記めっき層の厚さが15μm以下である、
請求項5に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項8】
前記積層体を大気雰囲気下で予備加熱する加熱工程をさらに備え、
前期鍛造工程において、前記加熱工程で予備加熱された前記積層体を大気雰囲気下で熱間鍛造する、
請求項1に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法を行いつつ、前記アルミニウム部材にフィンを形成するヒートシンクの製造方法であって、
前記鍛造工程において、前記積層体に熱間鍛造を施すことで鍛造接合するとともに、前記アルミニウム部材にフィンを形成する、
ことを特徴とするヒートシンクの製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法を行った後、
前記アルミニウム部材に切削処理を施すことでフィンを形成する切削フィン形成工程を備える、
ことを特徴とするヒートシンクの製造方法。
【請求項11】
銅又は銅合金により形成される銅部材と、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されるアルミニウム部材とが接合した銅アルミニウムクラッド材であって、
前記銅部材と前記アルミニウム部材との間に金属材料からなる介在層が介在して接合されており、
前記銅部材と前記介在層とが密着されるとともに、前記介在層と前記アルミニウム部材とが密着して接合されており、
前記介在層は、層の厚さが10μm以下である、
ことを特徴とする、銅アルミニウムクラッド材。
【請求項12】
前記介在層は、前記介在層が存在する連続部と、前記介在層が存在しない分断部を有しており、
前記連続部の一方の面と前記銅部材とが密着して接合されるとともに、前記連続部の他方の面と前記アルミニウム部材とが密着して接合されており、
前記分断部において、前記介在層から露出した前記銅部材と前記アルミニウム部材とが密着して接合されている、
請求項11に記載の銅アルミニウムクラッド材。
【請求項13】
前記金属材料は、ニッケルを含む、
請求項11に記載の銅アルミニウムクラッド材。
【請求項14】
銅又は銅合金により形成される銅部材と、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されるアルミニウム部材とが接合した銅アルミニウムクラッド材において、前記アルミニウム部材にフィンが形成されたヒートシンクであって、
前記銅部材と前記アルミニウム部材との間に金属材料からなる介在層が介在して接合されており、
前記銅部材と前記介在層とが密着されるとともに、前記介在層と前記アルミニウム部材とが密着して接合されており、
前記介在層は、層の厚さが10μm以下である、
ことを特徴とする、ヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅アルミニウムクラッド材の製造方法、ヒートシンクの製造方法、銅アルミニウムクラッド材及びヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の放熱を行うためにヒートシンクが用いられている。ヒートシンクの材料として、銅又はアルミニウムが用いられている。銅は、熱伝導性能及びはんだの濡れ性能に優れている。アルミニウムは、コスト、軽量性、耐食性、及び加工性に優れている。銅とアルミニウムの両方の性能を活かすため、電子部品が配置される側に銅を設けて、他方のフィンが形成される側にアルミニウムを設けたヒートシンクの開発が進められている。
【0003】
特許文献1では、アルミニウムと銅とからなる複合板(クラッド材)であって、複合板のアルミニウム板表面にアルミニウムからなる放熱フィンが設けられており、複合板の圧延面が金属接合(拡散接合)されているヒートシンクが開示されている。特許文献1では、アルミニウム板と銅板とをそれぞれ別々に加熱した後、両者を重ね合わせて圧延することで、複合板が冶金的に接合されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-298259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、銅部材とアルミニウム部材とからなる複合板を熱間圧延しているため、銅部材とアルミニウム部材との接合面に酸化物が生成するおそれがある。酸化物が生成された部位では、銅部材とアルミニウム部材とに接合不良が生じるため、クラッド材の密着性が低下して剥離に繋がるという問題がある。また、量産性の観点から、クラッド材又はクラッド材を用いたヒートシンクを容易に製造できることが望まれている。
【0006】
このような観点から本発明は、容易に製造することができるとともに、剥離し難い銅アルミニウムクラッド材の製造方法、ヒートシンクの製造方法、銅アルミニウムクラッド材及びヒートシンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕前記課題を解決するために、本発明は、銅又は銅合金により形成される銅部材と、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されるアルミニウム部材とを鍛造接合してクラッド材を製造する銅アルミニウムクラッド材の製造方法であって、前記銅部材は、前記アルミニウム部材と対向する対向面に、金属材料により密着して形成されるとともに酸化物の発生を抑制する被覆層が設けられており、前記被覆層と前記アルミニウム部材とを互いに向き合わせた状態で、前記銅部材と前記アルミニウム部材とを積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体に熱間鍛造を施して鍛造接合する鍛造工程と、を備え、前記鍛造工程において、前記銅部材と前記被覆層とが密着した状態で、前記被覆層の新生面と前記アルミニウム部材の新生面とを密着させて接合させることを特徴とする、銅アルミニウムクラッド材の製造方法である。
【0008】
〔2〕前記鍛造工程において、前記被覆層を分断させて、分断された前記被覆層の間に前記被覆層が存在しない分断部を形成し、前記分断部に前記アルミニウム部材を流入させることで、前記分断部において露出した前記銅部材の新生面と前記アルミニウム部材の新生面とを密着させて前記銅部材と前記アルミニウム部材とを接合させる、〔1〕に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法であることが好ましい。
【0009】
〔3〕前記金属材料が、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属はまたその合金である、〔1〕又は〔2〕に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法であることが好ましい。
【0010】
〔4〕前記銅部材に前記被覆層を形成する被覆工程をさらに備える、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法であることが好ましい。
【0011】
〔5〕前記被覆層がめっき層であり、前記被覆工程において、前記銅部材にめっき処理を施すことで前記めっき層を形成する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法であることが好ましい。
【0012】
〔6〕前記めっき処理が、電気Niめっき、無電解Ni-Pめっき、又は電気Ni-Crめっきである、〔5〕に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法であることが好ましい。
【0013】
〔7〕前記めっき層の厚さが15μm以下である、〔5〕又は〔6〕に記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法であることが好ましい。
【0014】
〔8〕前記積層体を大気雰囲気下で予備加熱する加熱工程をさらに備え、前期鍛造工程において、前記加熱工程で予備加熱された前記積層体を大気雰囲気下で熱間鍛造する、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法であることが好ましい。
【0015】
〔9〕本発明は、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法を行いつつ、前記アルミニウム部材にフィンを形成するヒートシンクの製造方法であって、前記鍛造工程において、前記積層体に熱間鍛造を施すことで鍛造接合するとともに、前記アルミニウム部材にフィンを形成する、ヒートシンクの製造方法であることを特徴とする。
【0016】
〔10〕本発明は、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の銅アルミニウムクラッド材の製造方法を行った後、前記アルミニウム部材に切削処理を施すことでフィンを形成する切削フィン形成工程を備える、ヒートシンクの製造方法であることを特徴とする。
【0017】
〔11〕本発明は、銅又は銅合金により形成される銅部材と、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されるアルミニウム部材とが接合した銅アルミニウムクラッド材であって、前記銅部材と前記アルミニウム部材との間に金属材料からなる介在層が介在して接合されており、前記銅部材と前記介在層とが密着されるとともに、前記介在層と前記アルミニウム部材とが密着して接合されており、前記介在層は、層の厚さが10μm以下であることを特徴とする、銅アルミニウムクラッド材である。
【0018】
〔12〕前記介在層は、前記介在層が存在する連続部と、前記介在層が存在しない分断部を有しており、前記連続部の一方の面と前記銅部材とが密着して接合されるとともに、前記連続部の他方の面と前記アルミニウム部材とが密着して接合されており、前記分断部において、前記介在層から露出した前記銅部材と前記アルミニウム部材とが密着して接合されている、〔11〕に記載の銅アルミニウムクラッド材であることが好ましい。
【0019】
〔13〕前記金属材料は、ニッケルを含む、〔11〕又は〔12〕に記載の銅アルミニウムクラッド材であることが好ましい。
【0020】
〔14〕本発明は、銅又は銅合金により形成される銅部材と、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されるアルミニウム部材とが接合した銅アルミニウムクラッド材において、前記アルミニウム部材にフィンが形成されたヒートシンクであって、前記銅部材と前記アルミニウム部材との間に金属材料からなる介在層が介在して接合されており、前記銅部材と前記介在層とが密着されるとともに、前記介在層と前記アルミニウム部材とが密着して接合されており、前記介在層は、層の厚さが10μm以下であることを特徴とする、ヒートシンクである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、容易に製造することができるとともに、剥離し難い銅アルミニウムクラッド材の製造方法、ヒートシンクの製造方法、銅アルミニウムクラッド材及びヒートシンクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の側面図である。
図2】第一実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法の準備工程及び被覆工程を示す側面図である。
図3】第一実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法の積層工程及び加熱工程を示す側面図である。
図4】第一実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法の鍛造工程を示す側面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るヒートシンクの側面図である。
図6】本発明の第三実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の側面図である。
図7図6の拡大図である。
図8】第三施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法の鍛造工程を示す側面図である。
図9】本発明の第四施形態に係るヒートシンクの側面図である。
図10】試験1の試験条件及び試験結果を示す一覧表である。
図11】実施例1の走査電子顕微鏡写真である。
図12】実施例2の走査電子顕微鏡写真である。
図13】実施例3の走査電子顕微鏡写真である。
図14】比較例1の走査電子顕微鏡写真である。
図15図14の拡大写真である。
図16】実施例4の走査電子顕微鏡写真である。
図17】実施例5の走査電子顕微鏡写真である。
図18】実施例6の走査電子顕微鏡写真である。
図19】実施例7の走査電子顕微鏡写真である。
図20】比較例2の走査電子顕微鏡写真である。
図21図20の拡大写真である。
図22】実施例8の走査電子顕微鏡写真である。
図23】比較例3の走査電子顕微鏡写真である。
図24図23の拡大図である。
図25】比較例4の走査電子顕微鏡写真である。
図26図25の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。実施形態及び変形例における構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。説明における方向は、便宜上用いるものであって、本発明を限定するものではない。また、介在層(被覆層)については、説明の便宜上、部材の実際の縮尺を変更して図を模式的に描画している。
【0024】
[1.第一実施形態]
[1-1.銅アルミニウムクラッド材]
本発明の第一本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材1は、銅部材2と、アルミニウム部材3と、介在層4と、を備えている。銅アルミニウムクラッド材1は板状を呈し、銅部材2とアルミニウム部材3とが接合されている部材である。
【0025】
銅部材2は、銅又は銅合金で形成されており板状を呈する。銅部材2は、鍛造可能な材種であればよい。銅部材として、例えば、銅純度が99.0%以上の無酸素銅(C1020)、タフピッチ銅(C1100)等を用いることができる。また、銅以外の成分が0.1質量%以下であることが好ましい。これにより、銅部材の強度や加工性を高めることができる。また、銅部材は、1000系であることが好ましい。これにより、銅部材の導電性、熱伝導性を高めることができる。特には、銅アルミニウムクラッド材をヒートシンクとして利用する場合に好適である。
【0026】
アルミニウム部材3は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されており板状を呈する。アルミニウム部材3は、鍛造可能な材種であればよく、アルミニウム部材の組成は適宜設定すればよい。アルミニウム部材3として、例えば、1000系の純アルミニウム、2000系、6000系、7000系のアルミニウム合金、またはこれらの時効硬化型合金を用いることができる。また、アルミニウム部材3は、例えば、アルミニウム以外の成分の含有量が2質量%以下であることが好ましい。これにより、アルミニウム部材の強度や耐食性、加工性(切削性、圧延性)等を高めることができる。また、アルミニウム部材は、例えば、マンガンの含有量が0.1質量%以下であることが好ましい。これにより、アルミニウム部材の熱伝導性を高めることができる。また、アルミニウム部材は、6000系合金であることが好ましい。これにより、アルミニウム部材の強度及び耐食性を高めることができる。
【0027】
介在層4は、銅部材2とアルミニウム部材3との間において層状に形成される部位である。介在層4は、本実施形態では、銅部材2の全表面にわたって形成されているが、少なくとも銅部材2とアルミニウム部材3との間に形成されていればよい。
【0028】
介在層4は、金属材料で形成されており、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属はまたその合金である。介在層4の厚さは、適宜設定すればよいが、例えば、10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。介在層4が所望の金属材料で形成されていることは、介在層4の存在する接合断面をエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)、又は電子プローブマイクロアナライザー(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)を利用して観察して、介在層4の領域の組成分析を行うことで判断することができる。
【0029】
介在層4は、例えば、銅部材2にめっき処理を施すことで形成することができるが、他の方法で形成してもよい。介在層4をめっき処理で形成する場合は、電気Niめっき、無電解Ni-Pめっき、又は電気Ni-Crめっき等を行うことができる。
【0030】
銅部材2と介在層4との間には酸化被膜が介在せず、密着した状態で接合されている。また、介在層4とアルミニウム部材3との間にも酸化被膜が介在せず、密着した状態で接合されている。より詳しくは、介在層4の酸化被膜が破断されて形成された新生面と、アルミニウム部材3の酸化被膜が破断されて形成された新生面とが熱間鍛造によって密着して接合されている。これらの密着の意義については後記する。
【0031】
[1-2.銅アルミニウムクラッド材の製造方法]
次に、本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法について説明する。本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法では、準備工程と、被覆工程と、積層工程と、加熱工程と、鍛造工程と、をこの順で行う。
【0032】
準備工程は、図2に示すように、銅部材2及びアルミニウム部材3を用意する工程である。被覆工程は、図2に示すように、銅部材2のうちアルミニウム部材3と対向する対向面2aに被覆層10を形成する工程である。被覆層10は、少なくとも対向面2aに設ければよいが、本実施形態では銅部材2の表面全体に被覆層10を形成している。
【0033】
被覆工程は、その被覆方法については制限されないが、本実施形態ではめっき処理で行う。めっき処理は、例えば、電気Niめっき、無電解Ni-Pめっき、又は電気Ni-Crめっき等を用いることができる。被覆工程では、銅部材2と被覆層10との間で酸化被膜が除去され、密着した状態で接合されつつ、後記する鍛造工程を行った際に被覆層10の外表面に酸化物が発生しづらいように行うことが好ましい。
【0034】
被覆工程におけるめっき層の厚さ(被覆層10の厚さ)は、被覆層10の材質、膜厚、形成条件;予備加熱の温度;鍛造工程における圧力等に応じて適宜設定すればよい。例えば、めっき層の厚さは、15μm以下であることが好ましく、13μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらにより好ましい。めっき層の厚さを15μm以下とすることで、後記する鍛造工程の際の銅部材2及びアルミニウム部材3の変形に被覆層10が追従して変形するため、銅部材2と被覆層10との間、及び、アルミニウム部材3と被覆層10との間に空隙が発生するのを防ぐことができる。
【0035】
積層工程は、図3に示すように、被覆層10とアルミニウム部材3とを互いに向き合わせた状態で、銅部材2とアルミニウム部材3とを積層して積層体20を形成する。
【0036】
加熱工程は、図3に示すように、積層体20を予備加熱する工程である。加熱工程では、加熱炉(図示省略)の中に積層体20を配置して所定の温度で予備加熱する。加熱工程は、アルゴンガス、窒素ガス、等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、本実施形態では、大気中(大気雰囲気下)で予備加熱を行っている。所定の温度Tは、後記する鍛造工程を行った際に、被覆層10が分断されず、かつ、被覆層10の酸化被膜(図示省略)が破壊されて新生面10a(図4参照)が露出するとともにアルミニウム部材3の酸化被膜(図示省略)が破壊されて新生面3a(図4参照)が露出する温度であることが好ましい。所定の温度Tは、アルミニウム部材3の固相線温度に応じて設定することができる。例えば、所定の温度Tは、好ましくは固相線温度×50%(℃)≦Tであり、より好ましくは固相線温度×65%℃≦Tであり、さらに好ましくは固相線温度×75%(℃)≦Tであり、好ましくはT≦固相線温度×98%(℃)であり、より好ましくはT≦固相線温度×93%(℃)であり、さらに好ましくはT≦固相線温度×90%(℃)である。
【0037】
鍛造工程は、図4に示すように、銅部材2とアルミニウム部材3とが近接する方向に所定の圧力Pで押圧して大気中(大気雰囲気下)で熱間鍛造を行う工程である。また、鍛造工程は、常温で熱間鍛造を行う。すなわち、本実施形態では、大気中且つ常温の条件下で熱間鍛造を行っている。鍛造工程における押圧時間は適宜設定すればよいが、1~3秒程度であればよく、本実施形態では1秒に設定している。所定の圧力Pは、後記する鍛造工程を行った際に、被覆層10が分断されず、かつ、被覆層10の酸化被膜(図示省略)が破れて新生面10aが露出するとともにアルミニウム部材3の酸化被膜(図示省略)が破れて新生面3aが露出する圧力であることが好ましい。鍛造工程において、酸化被膜が破れることで露出された被覆層10の新生面10aとアルミニウム部材3の新生面3aとが密接し、金属接合(拡散接合)される。
【0038】
鍛造工程における圧力Pは、鍛造の対象となる銅部材2及びアルミニウム部材3の材質;被覆層10の材質、膜厚、形成条件;予備加熱の温度等に応じて、銅部材2と被覆層10とが密着した状態で、被覆層10の新生面10aとアルミニウム部材3の新生面3aとを密着させて接合させることのできる圧力を適宜設定すればよい。例えば、所定の圧力Pは、好ましくは200(MPa)≦Pであり、より好ましくは300(MPa)≦Pであり、さらに好ましくは400(MPa)≦Pであり、特に好ましくは500(MPa)≦Pである。所定の圧力Pの上限値は特に限定されないが、プレス機の大型化と、プレス機の設備費用の増大を避ける観点からは、好ましくはP≦1000(MPa)である。
【0039】
請求項における「前記鍛造工程において、前記銅部材と前記被覆層とが密着した状態で、前記被覆層の新生面と前記アルミニウム部材の新生面とを密着させて接合させる」、「前記銅部材と前記介在層とが密着されるとともに、前記介在層と前記アルミニウム部材とが密着して接合されており」、「前記連続部の一方の面と前記銅部材とが密着して接合されるとともに、前記連続部の他方の面と前記アルミニウム部材とが密着して接合されており」の「密着」の意義について説明する。ここでの「密着」とは、鍛造工程を行った後の銅アルミニウムクラッド材1を1000倍に設定した各界面(接合界面)における断面の走査電子顕微鏡写真を観察して、接合界面の空隙率が15%未満であること、と定義している。すなわち、接合後の界面において、銅部材2と介在層4とが密着している場合には、鍛造工程において銅部材2と被覆層10とが密着した状態で接合していたと判断することができる。また、接合後の界面において、アルミニウム部材3と介在層4とが密着している場合には、鍛造工程において被覆層10の新生面とアルミニウム部材3とを密着させて状態で接合していたと判断することができる。また、接合後の界面において、銅部材2とアルミニウム部材3とが密着している場合には、鍛造工程において銅部材2の新生面とアルミニウム部材3の新生面とを密着させて接合していたと判断することができる。
【0040】
空隙率とは、視野内に含まれる接合界面において、接合界面の界面方向の長さに対する空隙が存在している領域の長さの割合をいう。特には、空隙率とは、接合界面の界面方向の被覆層(介在層)の連続部の長さに対する空隙が存在している領域の長さの割合をいう。例えば、図23は後記する比較例3を示しているが、走査電子顕微鏡を1000倍に設定し、銅部材302と被覆層(介在層304)の連続部305との界面における空隙率(当該写真の視野内に含まれる接合界面における連続部の合計長さに対する空隙の合計長さの割合)が約26%であるため、密着していない(接合結果は「不良」)と判定している。
【0041】
以上の工程により銅アルミニウムクラッド材1が形成される。鍛造工程によって、被覆層10が押圧されて変形し(若干薄くなる)、介在層4となる。このとき、被覆層10に含まれる金属材料と、アルミニウム部材3のアルミニウムとが反応することで、金属間化合物を形成してもよい。例えば、被覆層10がニッケルからなるニッケル層の場合、ニッケルとアルミニウムが反応することで、金属間化合物としてAl/Ni化合物が生じる。この場合、介在層4は、銅部材2の側に金属材料からなる金属材料層を有し、アルミニウム部材3の側に金属間化合物からなる金属間化合物層を有する複数層構造となる。これにより、銅アルミニウムクラッド材1では、銅部材2と介在層4の金属材料層とが密着されるとともに、介在層4の金属間化合物層とアルミニウム部材3とが密着して接合される。
【0042】
なお、銅アルミニウムクラッド材の製造方法は、上記した形態に限定されるものではなく、例えば、予備加熱を行わず、鍛造工程の際に積層体20を加熱しながら熱間鍛造を行ってもよい。また、被覆工程は省略し、予め被覆層が形成された銅部材を用いてもよい。
【0043】
[1-3.作用効果]
ここで、一般的に、銅部材とアルミニウム部材とを用いて銅アルミニウムクラッド材を形成する際、冷間鍛造よりも熱間鍛造を行った方が、金属接合(拡散接合)が促進され好ましい。しかし、銅部材を加熱すると、銅部材の酸化被膜が酸化し銅部材の表面に酸化物が大量に発生するため、銅部材とアルミニウム部材とを接合することが実質的に困難となる。
【0044】
一方、従来、銅部材とアルミニウム部材とのクラッド材を形成する際、両者の間に金属部材を介在(単に配置させる)させた状態で熱間鍛造することが行われている。しかし、熱間鍛造の際に単に金属部材を介在させるだけであると、各部材の線膨張係数が異なるため、熱間鍛造を行った際の銅部材及びアルミニウム部材の変形に、介在された金属部材が追従できない。これにより、銅部材と当該金属部材との間、及び、アルミニウム部材と当該金属部材との間に空隙が発生し、熱伝導率の低下、強度の低下等を招来していた。また、熱間鍛造の際に単に金属部材を介在させるだけであると、銅部材と金属部材との間に酸化皮膜が存在することで、接合不良の要因となっていた。
【0045】
また、銅部材とアルミニウム部材とのクラッド材を熱間鍛造によって製造する場合において、銅部材の表面に形成される酸化皮膜による接合への影響を避けるために、不活性ガス雰囲気下での予備加熱及び熱間鍛造や、表面酸化被膜の除去が行われている。この場合、不活性ガス雰囲気下で予備加熱及び熱間鍛造を行ったり、表面酸化被膜の除去を行ったりするための大掛かりな装置や設備が必要となる。
【0046】
この点、本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材1及び銅アルミニウムクラッド材の製造方法によれば、酸化物の発生を抑制する被覆層10を銅部材2に設けるとともに、鍛造工程において、銅部材2と被覆層10とが密着した状態で、被覆層10の新生面10aとアルミニウム部材3の新生面3aとを密着させて接合させる。より詳しくは、鍛造工程の際に、加熱された銅部材2及びアルミニウム部材3を押圧することで、被覆層10の酸化被膜及びアルミニウム部材3の酸化被膜がそれぞれ破壊されて露出した新生面10a,3a同士が接合される。これにより、銅部材2と被覆層10のとの間、及び、アルミニウム部材3と被覆層10との間に酸化物が生成されるのを抑制しながら接合を行うことができ、剥離し難い銅アルミニウムクラッド材1を形成することができる。
【0047】
また、本実施形態では、銅部材2と被覆層10とが密着するとともに、アルミニウム部材3と被覆層10とが密着した状態で鍛造を行うため、鍛造の際の銅部材2及びアルミニウム部材3の変形に被覆層10が追従する。これにより、銅部材2と被覆層10との間、及び、アルミニウム部材3と被覆層10との間に空隙が発生するのを抑制でき、剥離し難い銅アルミニウムクラッド材1形成することができる。また、被覆層10を設けた銅部材2をアルミニウム部材3と積層させて熱間鍛造するだけであるため、大掛かりな装置や設備が不要となり、銅アルミニウムクラッド材1を容易に製造することができるため、量産性を高めることができる。
【0048】
また、本実施形態では、被覆工程における金属材料が、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属はまたその合金になっている。これらの部材で被覆層10を形成すると、銅部材2に酸化物が生成されるのを抑制できるため、より剥離し難い銅アルミニウムクラッド材1を形成することができる。また、被覆層10の表面における酸化被膜生成量も少なくすることができる。特に、被覆層10の金属材料としてニッケルを用いると、耐食性及び耐熱性が高いため好ましい。
【0049】
また、本実施形態では、銅部材2に被覆層10を形成する被覆工程を備えている。これにより、被覆層10を容易に形成することができる。
【0050】
また、本実施形態では、被覆工程における被覆層10がめっき層であり、被覆工程において、銅部材2にめっき処理を施すことでめっき層を形成する。これにより、被覆層10を容易に形成することができる。また、めっき処理を施すことで、銅部材2の酸化被膜が除去され、銅部材2と被覆層10(めっき層)との間を密着して接合することができる。
【0051】
また、本実施形態では、めっき処理が、電気Niめっき、無電解Ni-Pめっき、又は電気Ni-Crめっきである。これにより、めっき処理を容易に行うことができる。また、これらのようなニッケルを含んだめっき処理によれば、耐熱性に優れているため、加熱工程を行った際に、被覆層10が溶けるのを防ぐことができる。また、これらのようなニッケルを含んだめっき処理によれば、耐食性に優れるとともに、適度な硬度と柔軟性を備えた被覆層10を形成することができる。これにより、鍛造工程の際に、被覆層10が銅部材2及びアルミニウム部材3の変形に応じて追従することができるため、界面(接合界面)に空隙が形成されるのを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、被覆層10(めっき層)の厚さが15μm以下になっている。また、本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材1では、介在層4の厚さが10μm以下になっている。これにより、鍛造工程の際に、銅部材2及びアルミニウム部材3の変形に追従して被覆層10も変形するため、銅部材2と被覆層10、及び、アルミニウム部材3と被覆層10との間に空隙が発生するのを抑制できる。
【0053】
また、本実施形態では、大気雰囲気下で予備加熱を行った後に、鍛造工程において大気雰囲気下で熱間鍛造を行う。銅部材2に被覆層10が設けられていることで、予備加熱を行った際に、銅部材2の表面に脆くて厚い酸化皮膜が形成されることを避けることができる。このため、予備加熱を行った際に銅部材の表面に形成される酸化皮膜によって、銅部材2とアルミニウム部材3との接合が妨げられることを避けることができる。これにより、銅部材2の表面に酸化皮膜が形成されることを防ぐことを目的とする、不活性ガス雰囲気下で予備加熱及び熱間鍛造を行うための大掛かりな装置が不要となる。したがって、鍛造工程を行う際に雰囲気制御を行う必要がなく、大気中で熱間鍛造ができるため、製造コストを引き下げて容易に製造することで、量産性を高めることができる。また、鍛造工程は本実施形態では1秒で終了することからも、量産性にも優れている。
【0054】
なお、例えば、本実施形態では銅部材2のみに被覆層10を設けたが、アルミニウム部材3にも被覆層10を設けてもよい。この形態であっても、上記した実施形態と略同等の効果を得ることができる。
【0055】
[2.第二実施形態]
[2-1.ヒートシンク]
次に、第二実施形態に係るヒートシンク及びヒートシンクの製造方法について説明する。本実施形態に係るヒートシンク30は、図5に示すように、銅部材2と、アルミニウム部材3Aと、介在層4と、を備えている。銅部材2と介在層4は、第一実施形態と同じである。
【0056】
アルミニウム部材3Aは、基部31と、複数のフィン32とを備えている。基部31は、板状部であって介在層4を介して銅部材2に接合されている。複数のフィン32は、隙間をあけて基部31に立設され、基部31と一体形成されている。複数のフィン32の形成方法は特に制限されないが、例えば、切削加工により形成することができる。
【0057】
[2-2.ヒートシンクの製造方法]
本実施形態に係るヒートシンクの製造方法では、準備工程と、被覆工程と、積層工程と、加熱工程と、鍛造工程と、フィン形成工程と、をこの順で行う。ヒートシンクの製造方法の準備工程、被覆工程、積層工程、加熱工程及び鍛造工程は、前記した第一実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法と同一である。本実施形態では、フィン形成工程として、切削によってフィンを形成する、切削フィン形成工程を行う場合を例示して説明する。
【0058】
切削フィン形成工程は、銅アルミニウムクラッド材のアルミニウム部材3Aに対して、切削処理を施して複数のフィン32を形成する工程である。切削フィン形成工程では、例えば、複数の切削歯が並設されたマルチカッターを用いて切削加工により複数のフィン32を形成することができる。
【0059】
[2-3.作用効果]
以上説明した本実施形態に係るヒートシンク及びヒートシンクの製造方法によれば、銅部材2、アルミニウム部材3A及び介在層4との各接合については第一実施形態と同等の効果を奏することができる。また、本実施形態によれば、銅部材2と介在層4との間及び介在層4とアルミニウム部材3Aとの間に空隙が発生し難いため、銅部材2からアルミニウム部材3Aへの熱伝導率を高めて、ヒートシンク30の放熱効率を向上させることができる。また、切削フィン形成工程により、複数のフィン32を容易に形成することができる。
【0060】
[3.第三実施形態]
[3-1.銅アルミニウムクラッド材]
次に、第三実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材及び銅アルミニウムクラッド材の製造方法について説明する。図6に示すように、銅アルミニウムクラッド材101は、銅部材102と、アルミニウム部材103と、介在層104と、を備えている。本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材101は、介在層104に複数の連続部105と、分断部106とを備えている点で第一実施形態と相違する。銅部材102及びアルミニウム部材103の材種などは第一実施形態と同一である。
【0061】
介在層104は、銅部材102とアルミニウム部材103との間において層状に形成される部位である。介在層104は、介在層104が存在する複数の連続部105と、介在層104が存在しない複数の分断部106を有している。
【0062】
介在層104は、金属材料で形成されており、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属はまたその合金である。介在層104の厚さは、適宜設定すればよいが、例えば、10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0063】
介在層104は、例えば、銅部材102にめっき処理を施すことで形成することができるが、他の方法で形成してもよい。介在層104をめっき処理で形成する場合は、電気Niめっき、無電解Ni-Pめっき、又は電気Ni-Crめっき等を行うことができる。
【0064】
介在層104のうち、分断部106は、介在層104が分断されて形成された部位である。分断部106の大きさは均一でもよいが、本実施形態では不均一になっている。また、隣り合う分断部106,106の間隔も均一でもよいが、本実施形態では不均一になっている。
【0065】
銅部材102と連続部105の一方の面との間には酸化被膜が介在せず、密着した状態で接合されている。また、連続部105の他方の面とアルミニウム部材103との間にも酸化被膜が介在せず、密着した状態で接合されている。より詳しくは、介在層104のうち連続部105の酸化被膜が破断されて形成された新生面と、アルミニウム部材103の酸化被膜が破断されて形成された新生面とが熱間鍛造によって密着して接合されている。
【0066】
さらに、図7にも示すように、各分断部106には、アルミニウム部材103が密に入り込むとともに、銅部材102とアルミニウム部材103との間には酸化被膜が介在せず、密着した状態で接合されている。より詳しくは、介在層104の分断によって露出した銅部材102の新生面と、アルミニウム部材103の酸化被膜が破壊されて形成された新生面とが熱間鍛造によって密着して接合されている。請求項の「前記分断部に前記アルミニウム部材を流入させることで、前記分断部において露出した前記銅部材の新生面と前記アルミニウム部材の新生面とを密着させて」の「密着」については、前記した定義と同じである。
【0067】
分断部106の割合は、銅部材102とアルミニウム部材103との界面の面積に対して15~65%であることが好ましく、20~60%であることがより好ましく、25~55%であることがさらにより好ましい。
【0068】
[3-2.銅アルミニウムクラッド材の製造方法]
次に、本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法について説明する。本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法では、準備工程と、被覆工程と、積層工程と、加熱工程と、鍛造工程と、をこの順で行う。
【0069】
本実施形態の準備工程~加熱工程は、概ね第一実施形態と同一である。図8に示すように、被覆工程では、銅部材102の全周に亘って被覆層110を形成する。被覆層110の形成方法は特に制限されないが、本実施形態ではめっき処理で形成している。
【0070】
図8に示すように、鍛造工程は、銅部材102とアルミニウム部材103とが近接する方向に所定の圧力Pで押圧して大気中(大気雰囲気下)で熱間鍛造を行う工程である。鍛造工程における押圧時間は適宜設定すればよいが、1~3秒程度であればよく、本実施形態では1秒に設定した。所定の圧力Pは、鍛造工程を行った際に、被覆層110が分断され、かつ、被覆層110の酸化被膜(図示省略)が除去されて新生面110aが露出するとともに、アルミニウム部材103の酸化被膜(図示省略)が除去されて新生面103aが露出する圧力であることが好ましい。
【0071】
また、所定の圧力Pは、鍛造工程を行った際に、被覆層110が分断されたことによって銅部材102の新生面102aが露出するとともに、アルミニウム部材103の酸化被膜(図示省略)が破れて新生面103aが露出する圧力であることが好ましい。また、所定の圧力Pは、鍛造工程を行った際に、被覆層110のうち連続部105の酸化被膜が破れて新生面105aが露出するとともに、アルミニウム部材103の酸化被膜(図示省略)が破れて新生面103aが露出する圧力であることが好ましい。本実施形態に係る鍛造工程における圧力Pは、第一実施形態で説明した圧力Pと同等である。
【0072】
鍛造工程において、酸化被膜が破れることで露出された連続部105の新生面105aとアルミニウム部材103の新生面103aとが密接し、金属接合(拡散接合)される。さらに、被覆層110の分断によって露出された銅部材102の新生面102aと、酸化被膜が破れることによって露出されたアルミニウム部材103の新生面103aとが密接し、金属接合(拡散接合)される。被覆層110は、酸化被膜を除去しつつめっき処理で形成されているため、鍛造工程において、被覆層110の分断によって露出した銅部材102の新生面102aには酸化被膜が無い状態になっている。なお、図8においては重複する符号の記載を一部省略している。
【0073】
以上の工程により銅アルミニウムクラッド材101が形成される。鍛造工程における分断部106の有無は、被覆工程における被覆層110の材種、厚さ、加熱工程の温度、鍛造工程における圧力の各要素を変更することで決定される。
【0074】
[3-3.作用効果]
以上説明した本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材101及び銅アルミニウムクラッド材の製造方法によれば、前記した第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。つまり、本実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材101及び銅アルミニウムクラッド材の製造方法によれば、酸化物の発生を抑制する被覆層110を銅部材102に設けるとともに、鍛造工程において、銅部材102と被覆層110とが密着した状態で、被覆層110の新生面110aとアルミニウム部材103の新生面103aとを密着させて接合させる。
より詳しくは、鍛造工程の際に、加熱された銅部材102及びアルミニウム部材103を押圧することで、被覆層110のうち連続部105の酸化被膜及びアルミニウム部材103の酸化被膜がそれぞれ破壊され、露出した新生面105a,103a同士が接合される。これにより、銅部材102と被覆層110のとの間、及び、アルミニウム部材103と被覆層110との間に酸化物が生成されるのを抑制することができ、剥離し難い銅アルミニウムクラッド材101を形成することができる。
【0075】
さらに、鍛造工程の際に、加熱された銅部材102及びアルミニウム部材103を押圧することで、被覆層110が分断されるとともにアルミニウム部材103の酸化被膜が破壊され、分断部106において露出した新生面102a,103a同士が接合される。これにより、銅部材102とアルミニウム部材103との間に酸化物が生成されるのを抑制することができ、剥離し難い銅アルミニウムクラッド材101を形成することができる。また、分断部106にアルミニウム部材103が密に入り込むため、アンカー効果により接合強度を高めることができることも期待される。
【0076】
[4.第四実施形態]
[4-1.ヒートシンク]
次に、第四実施形態に係るヒートシンク及びヒートシンクの製造方法について説明する。本実施形態に係るヒートシンク130は、図9に示すように、銅部材102と、アルミニウム部材103Aと、介在層104と、を備えている。銅部材102、介在層104(複数の連続部105、分断部106)は、第三実施形態と同じである。
【0077】
アルミニウム部材103Aは、基部131と、複数のフィン132とを備えている。基部131は、板状部であって介在層104を介して銅部材102に接合されている。複数のフィン132は、隙間をあけて基部131に立設され、基部131と一体形成されている。複数のフィン132の形成方法は特に制限されないが、例えば、切削加工により形成することができる。
【0078】
[4-2.ヒートシンクの製造方法]
本実施形態に係るヒートシンクの製造方法では、準備工程と、被覆工程と、積層工程と、加熱工程と、鍛造工程と、フィン形成工程と、をこの順で行う。ヒートシンクの製造方法の準備工程、被覆工程、積層工程、加熱工程及び鍛造工程は、前記した第三実施形態に係る銅アルミニウムクラッド材の製造方法と同一である。本実施形態では、フィン形成工程として、切削によってフィンを形成する、切削フィン形成工程を行う場合を例示して説明する。
【0079】
切削フィン形成工程は、銅アルミニウムクラッド材のアルミニウム部材103Aに対して、切削処理を施して複数のフィン132を形成する工程である。切削フィン形成工程では、例えば、複数の切削歯が並設されたマルチカッターを用いて切削加工により複数のフィン132を形成することができる。
【0080】
[4-3.作用効果]
以上説明した本実施形態に係るヒートシンク及びヒートシンクの製造方法によれば、銅部材102、アルミニウム部材103A、介在層104の各接合については第三実施形態と同等の効果を奏することができる。つまり、本実施形態によれば、銅部材102と連続部105との間、及び、連続部105とアルミニウム部材103Aとの間、並びに、分断部106における銅部材102とアルミニウム部材103Aとの間に空隙が発生し難いため、熱伝導率を高めることができる。また、切削フィン形成工程により、複数のフィン132を容易に形成することができる。
【0081】
[5.その他]
<被覆工程の変形例>
上述した実施形態では、被覆層10,110をめっき処理によって形成する場合を例示して説明した。被覆層10,110の形成方法はこれに限定されず、例えば、銅部材2に金属材料を、蒸着、スパッタ、鋳包み、等することによって被覆層10,110を形成してもよい。
【0082】
<フィン形成工程の変形例>
第二実施形態,第四実施形態では、フィン形成工程として、切削フィン形成工程を行う場合を例示して説明した。フィン形成工程として、鍛造によってフィンを形成する、鍛造フィン形成工程を行ってもよい。
【0083】
鍛造フィン形成工程は、銅アルミニウムクラッド材のアルミニウム部材3A,103Aに対して、冷間、温間、または熱間による鍛造工法によって変形させることで複数のフィン32,132を形成する工程である。
【0084】
複数のフィン32,132は、鍛造工程において、積層体20に熱間鍛造を施すことで鍛造接合した後に、アルミニウム部材3A,103Aに鍛造を施すことで複数のフィン32を形成するようにしてもよい。すなわち、鍛造工程での鍛造による接合を行った後に、改めて鍛造フィン形成工程での鍛造によるフィン形成を行うようにしてもよい。または、複数のフィン32,132は、鍛造工程において、積層体20に熱間鍛造を施すことで鍛造接合するとともに、アルミニウム部材3A,103Aに熱間鍛造を施すことで複数のフィン32を形成するようにしてもよい。すなわち、鍛造工程での鍛造による接合と、鍛造フィン形成工程での鍛造によるフィン形成とを同時に行うようにしてもよい。
【0085】
以上説明したフィン形成工程の変形例に係るヒートシンク及びヒートシンクの製造方法によれば、鍛造フィン形成工程により、複数のフィン32,132を容易に形成することができる。
【実施例0086】
[試験1]
本発明の効果を確認するために試験1を行った。試験体を作成し、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用して、断面観察を行った。
【0087】
<被覆層の厚さの測定>
被覆層(めっき層)の厚さは、SEMで撮影した断面SEM写真に含まれる被覆層について、任意の10点の位置の膜厚を測定し、10点の平均値を算出することで得た。
【0088】
<空隙率の測定>
SEMを用いて1000倍で接合界面を撮影して断面SEM写真を得た。断面SEM画像において、界面に存在する空隙について、空隙の大きさ(長さ)を測定して、界面方向の長さの合計長さを算出した。このとき、各空隙の大きさは、界面と平行な向きにおいて最長となる部分の長さを測定した。空隙の合計長さを、断面SEM写真の視野内に含まれる接合界面の合計長さで除算することで得た割合(%)を空隙率とした。具体的には、銅部材と介在層の連続部との界面について、この界面に存在する空隙の合計長さを、介在層の連続部の合計長さで除算することで空隙率を算出した。また、介在層の連続部とアルミニウム部材との界面について、この界面に存在する空隙の合計長さを、介在層の連続部の合計長さで除算することで空隙率を算出した。また、介在層の分断部における銅部材とアルミニウム部材との界面について、この界面に存在する空隙の合計長さを、介在層の分断部の合計長さで除算することで空隙率を算出した。
【0089】
<条件>
試験1では、試験体となる銅アルミニウムクラッド材301を複数体(301A~301M)作成し、界面(接合界面)の観察を行った。また、図10に示すように、試験1では、めっきの種類と鍛造前の被覆層の厚さを変えて試験体を作成し、それぞれ観察した。右端欄の「接合結果」は、前記した「密着」の定義に照らし、いずれの接合界面においても空隙率が15%未満であったものを「〇」(良好)とし、空隙率が15%以上の接合界面が存在していたものを「×」(不良)とした。
【0090】
試験1の銅アルミニウムクラッド材の製造方法では、準備工程と、被覆工程と、積層工程と、加熱工程と、鍛造工程と、をこの順で行う。準備工程では、銅部材としてJIS C1020を用意した。銅部材は、長さ100mm、幅50mm、厚さ3mmである。また、アルミニウム部材としてJIS A6063を用意した。アルミニウム部材203は、長さ100mm、幅50mm、厚さ12mmである。
【0091】
被覆工程では、めっき処理を行って銅部材の全表面に被覆層(最終的に介在層)を形成した。
【0092】
加熱工程では、被覆層が形成された銅部材及びアルミニウム部材を加熱炉に配置し、500℃に設定し、大気中で約1時間予備加熱を行った。鍛造工程では、大気雰囲気下で圧力600(MPa)に設定し、圧力時間約1秒で熱間鍛造を行った。以上により、試験体を得た。
【0093】
試験1のケース1(実施例1~実施例3、比較例1)では、被覆工程において無電解Ni-Pめっきを行った。各例において、被覆層の厚さが、実施例1が1.8μm、実施例2が3.9μm、実施例3が9.5μm、比較例1が15.1μmとなる被覆層を形成した。
【0094】
試験1のケース2(実施例4~実施例7、比較例2)では、被覆工程において電気Niめっきを行った。各例において、被覆層の厚さが、実施例4が4.7μm、実施例5が5.5μm、実施例6が7.4μm、実施例7が10.5μm、比較例2が16.4μmとなる被覆層を形成した。
【0095】
試験3のケース3(実施例8、比較例3、比較例4)では、被覆工程において電気Ni-Crめっきを行った。各例において、被覆層の厚さが、実施例8が4.9μm、比較例3が5.9μm、比較例4が6.5μmとなる被覆層を形成した。
【0096】
<実施例1~実施例3、比較例1>
図11は、実施例1の走査電子顕微鏡写真である。図11は、倍率1000倍で撮影を行ったSEM写真である。本件明細書において、「10μm」のスケールバーの表示があるものは、図11と同様に1000倍で撮影を行ったSEM写真である。図11に示すように、実施例1に係る銅アルミニウムクラッド材301Aは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び複数の分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Aは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが0.9μmである。実施例1では、銅部材302と連続部305との界面、及び、連続部305とアルミニウム部材303との界面、並びに、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面において、いずれも空隙率が15%未満であって密着しており、接合結果は良好であった。
【0097】
図12は、実施例2の走査電子顕微鏡写真である。図12に示すように、実施例2に係る銅アルミニウムクラッド材301Bは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び複数の分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Bは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが2.7μmである。実施例2では、銅部材302と連続部305との界面、及び、連続部305とアルミニウム部材303との界面、並びに、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面において、いずれも空隙率が15%未満であって密着しており、接合結果は良好であった。
【0098】
図13は、実施例3の走査電子顕微鏡写真である。図13に示すように、実施例3に係る銅アルミニウムクラッド材301Cは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Cは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが7.9μmである。実施例3では、銅部材302と連続部305との界面、及び、連続部305とアルミニウム部材303との界面、並びに、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面において、いずれも空隙率が15%未満であって密着しており、接合結果は良好であった。
【0099】
図14は、比較例1の走査電子顕微鏡写真である。図15は、図14の拡大写真である。図14及び図15に示すように、比較例1に係る銅アルミニウムクラッド材301Dは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び複数の分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Dは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが14.4μmである。比較例1では、銅部材302と連続部305との界面における空隙率は0%であった。しかし、連続部305とアルミニウム部材303との界面、及び、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面に空隙Qが見られた。分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面における空隙率は15%未満であって密着していたが、連続部305とアルミニウム部材303との界面における空隙率は35%であって密着しておらず、接合結果は不良であった。
【0100】
以上のように、試験1のケース1(実施例1~実施例3、比較例1)では、被覆工程において無電解Ni-Pめっきを行い、鍛造前の被覆層の厚さが1.8~9.5μmであると接合結果が良好であったが、鍛造前の被覆層の厚さが15.1μmであると欠陥が生じており接合結果が不良であった。つまり、被覆層の厚さが厚過ぎると、銅部材302及びアルミニウム部材303の変形例に被覆層が追従できず、界面に空隙が形成されると推察される。また、鍛造工程を行うことで、介在層(被覆層)の厚さは鍛造前よりも薄くなることがわかった。また、鍛造工程を行うことで、介在層(被覆層)の厚さが薄くなるとともに、分断部306も形成されることがわかった。
【0101】
<実施例4~実施例7、比較例2>
図16は、実施例4の走査電子顕微鏡写真である。図16に示すように、実施例4に係る銅アルミニウムクラッド材301Eは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び複数の分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Eは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが1.9μmである。実施例4では、銅部材302と連続部305との界面、及び、連続部305とアルミニウム部材303との界面、並びに、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面において、いずれも空隙率が15%未満であって密着しており、接合結果は良好であった。
【0102】
図17は、実施例5の走査電子顕微鏡写真である。図17に示すように、実施例5に係る銅アルミニウムクラッド材301Fは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び複数の分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Fは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが3.8μmである。実施例5では、銅部材302と連続部305との界面、及び、連続部305とアルミニウム部材303との界面、並びに、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面において、いずれも空隙率が15%未満であって密着しており、接合結果は良好であった。
【0103】
図18は、実施例6の走査電子顕微鏡写真である。図18に示すように、実施例6に係る銅アルミニウムクラッド材301Gは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。実施例6では、介在層304に分断部が形成されていない。銅アルミニウムクラッド材301Gは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが3.9μmである。実施例6では、銅部材302と介在層304との界面、及び、介在層304とアルミニウム部材303との界面において、いずれも空隙率が15%未満であって密着しており、接合結果は良好であった。
【0104】
図19は、実施例7の走査電子顕微鏡写真である。図19に示すように、実施例7に係る銅アルミニウムクラッド材301Hは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、連続部305及び分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Hは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが8.4μmである。実施例7では、銅部材302と連続部305との界面、及び、連続部305とアルミニウム部材303との界面、並びに、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面において、いずれも空隙率が15%未満であって密着しており、接合結果は良好であった。
【0105】
図20は、比較例2の走査電子顕微鏡写真である。図21は、図20の拡大写真である。図20及び図21に示すように、比較例2に係る銅アルミニウムクラッド材301Iは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び複数の分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Iは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが14.9μmである。比較例2では、銅部材302と連続部305との界面、連続部305とアルミニウム部材303との界面、及び、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面にいずれも複数の空隙Qが見られた。連続部305とアルミニウム部材303との界面における空隙率、及び、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面における空隙率は15%未満であって密着していたが、銅部材302と連続部305との界面における空隙率は21%であって密着しておらず、接合結果は不良であった。
【0106】
以上のように、試験1のケース2(実施例4~実施例7、比較例2)では、被覆工程において電気Niめっきを行い、鍛造前の被覆層の厚さが4.7~10.5μmであると接合結果が良好であったが、16.4μmであると欠陥が生じており接合結果が不良であった。つまり、被覆層の厚さが厚過ぎると、銅部材302及びアルミニウム部材303の変形例に被覆層が追従できず、界面に空隙が形成されると推察される。また、鍛造工程を行うことで、介在層(被覆層)の厚さは鍛造前よりも薄くなることがわかった。また、実施例4,5,7においては鍛造工程を行うことで、介在層(被覆層)の厚さが薄くなるとともに、分断部306も形成されることがわかった。一方、実施例6においては鍛造工程を行っても、介在層(被覆層)の厚さは薄くなるが、分断部は形成されないことがわかった。つまり、実施例6のように介在層に分断部が形成されなくても、各界面を良好に接合することができる。
【0107】
<実施例8、比較例3、比較例4>
図22は、実施例8の走査電子顕微鏡写真である。図22に示すように、実施例8に係る銅アルミニウムクラッド材301Jは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び複数の分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Jは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが2.3μmである。実施例8では、銅部材302と連続部305との界面、及び、連続部305とアルミニウム部材303との界面、並びに、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面において、いずれも空隙率が15%未満であって密着しており、接合結果は良好であった。
【0108】
図23は、比較例3の走査電子顕微鏡写真である。図24は、図23の拡大写真である。図23及び図24に示すように、比較例3に係る銅アルミニウムクラッド材301Kは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び複数の分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Kは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが3.9μmである。比較例3では、銅部材302と連続部305との界面、連続部305とアルミニウム部材303との界面、及び分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面にいずれも複数の点状の空隙Qが見られた。連続部305とアルミニウム部材303との界面における空隙率、及び、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面における空隙率は15%未満であって密着していたが、銅部材302と連続部305との界面における空隙率は26%であって密着しておらず、接合結果は不良であった。
【0109】
図25は、比較例4の走査電子顕微鏡写真である。図26は、図25の拡大写真である。図25及び図26に示すように、比較例4に係る銅アルミニウムクラッド材301Lは、銅部材302と、アルミニウム部材303と、介在層304と、を備えている。介在層304には、複数の連続部305及び複数の分断部306が形成されている。銅アルミニウムクラッド材301Lは、鍛造後の被覆層(介在層304)の厚さが5.4μmである。比較例4では、銅部材302と連続部305との界面、連続部305とアルミニウム部材303との界面、及び、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面にいずれも複数の点状の空隙Qが見られた。連続部305とアルミニウム部材303との界面、及び、分断部306における銅部材302とアルミニウム部材303との界面における空隙率は15%未満であって密着していたが、銅部材302と連続部305との界面における空隙率は26%であって密着しておらず、接合結果は不良であった。
【0110】
以上のように、試験1のケース3(実施例8、比較例3,4)では、被覆工程において電気Ni-Crめっきを行い、鍛造前の被覆層の厚さが4.9μmであると接合結果が良好であったが、5.9~6.5μmであると欠陥が生じており接合結果が不良であった。つまり、被覆層の厚さが厚過ぎると、銅部材302及びアルミニウム部材303の変形例に被覆層が追従できず、界面に空隙が形成されると推察される。鍛造工程を行うことで、介在層(被覆層)の厚さは鍛造前よりも薄くなることがわかった。また、実施例8においては鍛造工程を行うことで、介在層(被覆層)の厚さが薄くなるとともに、分断部306も形成されることがわかった。
【符号の説明】
【0111】
1 銅アルミニウムクラッド材
2 銅部材
3 アルミニウム部材
3a 新生面
4 介在層
10 被覆層
10a 新生面
20 積層体
30 ヒートシンク
31 基部
32 フィン
101 銅アルミニウムクラッド材
102 銅部材
103 アルミニウム部材
103a 新生面
104 介在層
105 連続部
106 分断部
110 被覆層
110a 新生面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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