(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014782
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】切断方法、切断品の製造方法及び切断装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20250123BHJP
B26D 1/14 20060101ALI20250123BHJP
B26D 7/10 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 F
B26D1/14 C
B26D7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117607
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】多羅尾 早織
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直己
【テーマコード(参考)】
3C021
5F063
【Fターム(参考)】
3C021EA02
3C021EA03
3C021EA04
5F063AA36
5F063BA17
5F063CB05
5F063CB25
5F063CC27
5F063DD04
5F063DD93
5F063DF12
5F063DF21
(57)【要約】
【課題】保護フィルムにバリを発生させ難い切断方法、切断品の製造方法及び切断装置を提供する。
【解決手段】素子が固定された基板63と、基板63に接着され素子を保護する保護フィルム67と、を有する対象物60を切断する切断方法は、流体放出部34から流体を浴びせることにより保護フィルム67を低温にする低温化工程と、低温化工程の後に、保護フィルム67を切断するフィルム切断工程と、フィルム切断工程の後に、流体よりも高温の切削水を浴びせながら基板63を切断する基板切断工程と、を含む。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子が固定された基板と、前記基板に接着され前記素子を保護する保護フィルムと、を有する対象物を切断する切断方法であって、
流体放出部から流体を浴びせることにより前記保護フィルムを低温にする低温化工程と、
前記低温化工程の後に、前記保護フィルムを切断するフィルム切断工程と、
前記フィルム切断工程の後に、前記流体よりも高温の切削水を浴びせながら前記基板を切断する基板切断工程と、を含む切断方法。
【請求項2】
前記流体は、0度未満に冷却された後に前記保護フィルムに浴びせられる低温空気である請求項1に記載の切断方法。
【請求項3】
前記低温化工程では、前記流体放出部に対して前記対象物を相対的に移動させながら前記保護フィルムの複数箇所に前記流体を同時に浴びせる請求項1又は2に記載の切断方法。
【請求項4】
前記低温化工程では、前記流体放出部に対して前記対象物を相対的に移動させながら前記保護フィルムに対して前記流体を直線状に浴びせる請求項1又は2に記載の切断方法。
【請求項5】
前記フィルム切断工程にて切断された前記保護フィルムの第1切断幅は、前記基板切断工程にて切断された前記基板の第2切断幅よりも大きい請求項1から4のいずれか一項に記載の切断方法。
【請求項6】
前記対象物は、前記保護フィルムの反対側で前記基板を覆う樹脂パッケージをさらに有しており、
前記基板切断工程の後に、前記保護フィルムを除く前記対象物の表面にシールド層を形成するシールド層形成工程をさらに含む請求項1から5のいずれか一項に記載の切断方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の切断方法に従って、前記対象物を切断することにより切断品を製造する、切断品の製造方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の切断方法に用いられる切断装置であって、
前記フィルム切断工程に用いられる第1切断機構と、
前記基板切断工程に用いられる第2切断機構と、を備えた切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断方法、切断品の製造方法及び切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体チップ等が固定された基板は、樹脂封止された後、切断装置により切断されて個片化することにより電子部品として用いられる。従来、樹脂封止された基板を切断する切断方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、保護フィルム(特許文献1においては接着フィルム)が接着された基板(特許文献1においてはウェーハ)を切断する切断方法が開示されている。基板の切断方法には、基板の裏面側に保護フィルムを貼り付けるフィルム貼着ステップと、少なくとも保護フィルムを基板の裏面側から切断するフィルム切断ステップと、基板に対してレーザービームを基板の内部に照射して改質層を形成する改質層形成ステップと、ブレーキングローラーを用いて基板を分割する分割ステップと、を含んでいる。フィルム切断ステップにおいては、基板の裏面側の保護フィルムに切削水を供給しながら切削ブレードを用いて保護フィルムを切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
材料を切断する場合、一般的に高温では粘性破壊が支配的になり、低温では脆性破壊が支配的になる。粘性破壊は延性破壊とも呼ばれる。粘性破壊が支配的な場合、切断時に材料が延び、切断後の材料は延びた状態が維持される。この材料の延びた部分がバリになる。一方、脆性破壊が支配的な場合、切断時に材料が延びるものの切断後には元の状態に戻り、バリは発生し難い。特許文献1に記載の切断方法のフィルム切断ステップで保護フィルムを切断する場合、切削水による保護フィルムの冷却が不十分であると、保護フィルムの切断は粘性破壊が支配的になり、切断後の保護フィルムにバリが発生する場合がある。
【0006】
そのため、保護フィルムにバリを発生させ難い切断方法、切断品の製造方法及び切断装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る切断方法の一つの実施形態は、素子が固定された基板と、前記基板に接着され前記素子を保護する保護フィルムと、を有する対象物を切断する切断方法であって、流体放出部から流体を浴びせることにより前記保護フィルムを低温にする低温化工程と、前記低温化工程の後に、前記保護フィルムを切断するフィルム切断工程と、前記フィルム切断工程の後に、前記流体よりも高温の切削水を浴びせながら前記基板を切断する基板切断工程と、を含んでいる。
【0008】
本発明に係る切断品の製造方法は、上記に記載の切断方法にしたがって、前記対象物を切断することにより切断品を製造する。
【0009】
本発明に係る切断装置の一つの実施形態は、上記に記載の切断方法に用いられる切断装置であって、前記フィルム切断工程に用いられる第1切断機構と、前記基板切断工程に用いられる第2切断機構と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、保護フィルムにバリを発生させ難い切断方法、切断品の製造方法及び切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】基板に保護フィルムを接着する過程を表す斜視図である。
【
図4A】第1切断機構で保護フィルムを切断する工程を表す平面図である。
【
図4B】第1切断機構で保護フィルムを切断する工程を表す正面図である。
【
図4C】第1切断機構で保護フィルムを切断する工程を表す左側面図である。
【
図5】第1切断機構で保護フィルムを切断した後の基板を表す斜視図である。
【
図6A】第2切断機構で基板を切断する工程を表す平面図である。
【
図6B】第2切断機構で基板を切断する工程を表す正面図である。
【
図6C】第2切断機構で基板を切断する工程を表す左側面図である。
【
図7】保護フィルムが接着された電子部品を表す斜視図である。
【
図8】電子部品にシールド層を形成する工程を表す模式図である。
【
図9】保護フィルムを剥した後の電子部品を表す模式図である。
【
図10】別仕様の基板に保護フィルムが接着された状態を表す部分拡大断面図である。
【
図11】別仕様のノズルが取り付けられた第1切断装置を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る切断方法、切断品の製造方法及び切断装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0013】
半導体チップ等の素子が固定された基板は樹脂封止された後、切断されて個片化することにより電子部品として用いられる。樹脂封止された基板を切断するためには、専用の切断装置が用いられる。
【0014】
基板の樹脂封止は、樹脂成形装置の成形型(不図示)に基板を載置して、成形型内に液状の溶融樹脂を供給することにより行われる。溶融樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂は、加熱すると粘度が低下し、さらに加熱すると重合して硬化し、硬化樹脂となる。半導体チップ等の素子が固定された基板を樹脂封止する場合には、熱硬化性樹脂を用いることが望ましい。封止された樹脂により、基板に固定された素子が保護される。
【0015】
〔対象物の構成〕
本実施形態における切断装置で切断される対象物60は、
図1に示されるように、複数の素子61が固定された基板63を樹脂封止して素子61の側に樹脂パッケージ65を形成したものにおいて、基板63の側に保護フィルム67を接着したものである。素子61は、例えば集積回路(半導体チップ)である。保護フィルム67は、裏面に接着剤等からなる不図示の接着層を有しており、これにより基板63に接着可能である。電極61aは素子61の一部であり、基板63に対して樹脂パッケージ65と反対側に露出している。すなわち、保護フィルム67は、基板63を覆って素子61の電極61aを保護している。本実施形態においては、1つの基板63に複数の素子61が固定され、1つの素子61が複数の電極61aを有している。
図1の例では、1つの基板63に固定される素子61の数は21個であり、1つの素子61が有する電極61aの数は4つである。
図1における破線は、後述する切断装置で切断される箇所を表している。
【0016】
〔切断装置の全体構成〕
以下、樹脂封止された基板を切断して個片化する切断装置1について説明する。
図2、
図3には、本実施形態に係る切断装置1の正面図及び平面図がそれぞれ示されている。切断装置1は、装置本体10、テーブル用パン移動機構20、第1切断機構30、第2切断機構40、及びこれらを制御する制御部3を備えている。本実施形態における切断装置1は、テーブル用パン移動機構20に対象物60を固定し、第1切断機構30でテーブル用パン移動機構20を直線移動させて対象物60の保護フィルム67を切断し、その後、第2切断機構40で対象物60の基板と樹脂パッケージとを切断して個片化する装置である。以下で説明する切断装置1の作動は、特段の説明のない限り、制御部3の作動指令に基づいて行われる。以下の説明では、制御部3の作動指令については原則的に説明を省略し、必要に応じて説明する。
【0017】
本実施形態の切断装置1は、共通の装置本体10とテーブル用パン移動機構20に対して、第1切断機構30と第2切断機構40とを交換していずれか一方を使用するように構成されている。第1切断機構30と第2切断機構40とは、ブレードの位置やノズルの形状が異なるが、基本的な構成は同じである。したがって、
図2、
図3においては、第1切断機構30及び第2切断機構40を、模式的な形状で共通化して図示している。
【0018】
〔装置本体の構成〕
装置本体10は、フレーム12、流しパン13、回収ボックス14、蛇腹カバー16、及びシャッタ18を備えている。流しパン13はフレーム12に溶接等の方法により取り付けられ、切断装置1のテーブル用パン移動機構20の移動方向に沿ってテーブル用パン移動機構20の両側(
図3における上下方向の両側)にそれぞれ配置されている。流しパン13は、第1切断機構30及び第2切断機構40で対象物60を切断した際に発生した端材69を回収ボックス14に送るためのものである。流しパン13は、切断装置1の第1切断機構30及び第2切断機構40よりも重力方向の下方に設けられており、水平方向(鉛直方向に対して垂直な方向)に対して傾斜している。本実施形態の切断装置1における流しパン13の傾斜角度は約5度である。流しパン13は水平方向に対して傾斜しており、流しパン13の上側に配置された不図示の水供給部から流しパン13に水が流される。このため、第1切断機構30及び第2切断機構40により切断されて流しパン13に落下してきた端材69は、流しパン13の上を水で流されて下流方向(
図2における左下方向)に送られる。以下、
図2、
図3において、左側を下流、右側を上流と称する。なお、流しパン13の傾斜角度は、端材69が滑らかに下流方向に送られるのであれば、5度を超えても、5度未満であってもよい。
【0019】
流しパン13の下流端には、流しパン13に連続して回収ボックス14がフレーム12に溶接等の方法により取り付けられて配置されている。流しパン13の下流方向に送られた端材69は、回収ボックス14内に落下して回収される。回収ボックス14は、テーブル用パン移動機構20の両側にそれぞれ配置された2つの流しパン13の両方を送られる端材69を回収可能に構成されている。なお、流しパン13と回収ボックス14は、フレーム12に溶接等の方法により取り付けられる以外に、フレーム12と一体的に形成されてもよい。また、2つの流しパン13のそれぞれに対応して別個の回収ボックス14が配置されていてもよい。
【0020】
蛇腹カバー16は、樹脂やゴム等の材料からなり、テーブル用パン移動機構20のテーブル用パン21の移動方向に沿う両側かつ2つの流しパン13の間に配置されている。すなわち、蛇腹カバー16は、テーブル用パン21の上流側と下流側とに配置されている。以下、上流側の蛇腹カバー16を第1蛇腹カバー16a、下流側の蛇腹カバー16を第2蛇腹カバー16bと称する。第1蛇腹カバー16aと第2蛇腹カバー16bを総称するときは蛇腹カバー16という。
【0021】
蛇腹カバー16は、後述するテーブル用パン移動機構20のボールねじ23が第2切断機構40を用いて対象物60を切断する際に使用される切削水で濡らされるのを防止するために、ボールねじ23の鉛直方向上方(
図2における上方)に、ボールねじ23の全体を覆うように設けられている。第1蛇腹カバー16aと第2蛇腹カバー16bのそれぞれは、一端がテーブル用パン21に固定され、他端がフレーム12に固定されている。蛇腹カバー16はテーブル用パン21の移動に伴って伸縮するように配置されている。具体的には、テーブル用パン21が下流側(
図2、
図3の左側)に移動すると、第1蛇腹カバー16aは伸長し、第2蛇腹カバー16bは短縮する。また、テーブル用パン21が上流側(
図2、
図3の右側)に移動すると、第1蛇腹カバー16aは短縮し、第2蛇腹カバー16bは伸長する。蛇腹カバー16は、伸縮しても、一端がテーブル用パン21に固定され、他端がフレーム12に固定されているので、常にボールねじ23の全体を覆うことができる。
【0022】
シャッタ18は、第2蛇腹カバー16bの上方に配置され、第2蛇腹カバー16bの全体を覆っている。シャッタ18は、第1切断機構30及び第2切断機構40により切断されて落下してきた端材69により第2蛇腹カバー16bが破損するのを防止するために設けられている。シャッタ18は、複数の金属製の細長い薄板18aを一部が重なるように配置して構成されている。複数の薄板18aは重なり量を変えることができ、これにより第2蛇腹カバー16bの伸縮に対応することができる。シャッタ18の一端はテーブル用パン21に固定されており、他端は回収ボックス14の鉛直上方に突出しつつ、フレーム12に固定されている。また、複数の薄板18aのそれぞれは、下流側で隣接する薄板18aの上側に位置するように重ねられている。これにより、第1切断機構30及び第2切断機構40により切断されてシャッタ18に落下してきた端材69は、シャッタ18の薄板18aの重なり量が増えて短縮したときに、シャッタ18上に落下した端材69を下流側に向けて押し出すことができ、最終的に回収ボックス14に落下させることができる。
【0023】
〔パン移動機構の構成〕
テーブル用パン移動機構20は、テーブル用パン21、シャフト22、ボールねじ23、ナット24、スライダ25、及び駆動源26を備えている。テーブル用パン21は、下面にシャフト22が取り付けられており、上面にカットテーブル28が取り付けられている。シャフト22はテーブル用パン21から鉛直下方に延出している。シャフト22は、流しパン13よりも下方に延出し、シャフト22の下端は、ボールねじ23に結合されたナット24に接続されている。テーブル用パン21は、シャフト22の周囲に配置されたスライダ25にも固定されている。スライダ25は、装置本体10のフレーム12に配置された不図示のレールに支持されている。テーブル用パン21、シャフト22、ナット24、及びスライダ25は、一体となって、レールに沿って上流方向と下流方向とに移動可能に構成されている。テーブル用パン移動機構20は、制御部3により作動が制御される。
【0024】
駆動源26は、モータ等の回転式のアクチュエータであり、ボールねじ23に駆動力を与えて、ボールねじ23を、軸周りの正方向及び逆方向に回転させることができる。ナット24にはシャフト22が接続されているので、ボールねじ23が軸周りに回転しても、回転しない。このため、ボールねじ23が軸周りに回転することにより、ボールねじ23に結合されたナット24は上流側若しくは下流側に移動する。そして、ナット24と一体化されたテーブル用パン21、シャフト22、及びスライダ25は、ナット24の移動に伴い、レールに沿って上流側若しくは下流側に移動する。
【0025】
〔第1、第2切断機構の構成〕
第1切断機構30は、第1ブレード32、第1ノズル34(流体放出部の一例)、及び第1流体供給部36を備えている。第1ブレード32は、円板状であり、制御部3により制御される不図示の駆動部により回転し、保護フィルム67を切断する。第1ノズル34は、保護フィルム67を切断するにあたり、保護フィルム67を冷却するために低温の空気(流体の一例)を保護フィルム67の表面に浴びせるためのものである。保護フィルム67を冷却するのは、保護フィルム67を切断する際に低温にすることにより脆性破壊を支配的にして、切断によるバリの発生を抑制するためである。
【0026】
第1流体供給部36は、保護フィルム67に浴びせる空気を冷却して第1ノズル34に供給するものである。具体的には、第1流体供給部36において、空気は0度未満に冷却される。以下、第1流体供給部36において0度未満に冷却された空気を低温空気ともいう。低温空気の温度は例えば-20度である。空気を冷却する方法は、例えば、冷媒の圧縮膨張によって空気から吸熱することにより間接的に冷却する方式を用いることができる。低温空気をポンプ等で第1ノズル34から送り出す方法は公知であるため詳細な説明を省略する。第1流体供給部36は、0度未満に冷却した低温空気を第1ノズル34に送り出し、低温空気を保護フィルム67に浴びせる。保護フィルム67に浴びせる低温空気の温度は、保護フィルム67の表面でも0度未満であることが望ましいが、0度以上であってもよい。また、冷媒の圧縮膨張によって空気を直接的に冷却する方式であってもよいし、液体窒素により空気を間接的に冷却してもよい。
【0027】
第2切断機構40は、第2ブレード42、第2ノズル44、及び第2流体供給部46を備えている。第2ブレード42は、円板状であり、制御部3により制御される不図示の駆動部により回転し、基板と樹脂パッケージとを一度に切断する。第2ブレード42の厚さ(幅)は、第1ブレード32の厚さよりも薄い。第2ノズル44は、基板と樹脂パッケージとを切断するにあたり、基板と樹脂パッケージとを冷却するために切削水を基板の表面及び樹脂パッケージに浴びせるためのものである。基板及び樹脂パッケージを冷却するのは、切断時に、基板及び樹脂パッケージと第2ブレード42との間に発生する摩擦熱を抑制して、基板及び樹脂パッケージの変形や変質を防止するためである。
【0028】
第2流体供給部46は、第2ノズル44から基板及び樹脂パッケージに浴びせる切削水を冷却して第2ノズル44に供給するものである。具体的には、第2流体供給部46において、切削水の温度は例えば10度~25度であり、低温空気よりも高温である。切削水については冷却しても冷却しなくてもよい。切削水を冷却する方法及び切削水に圧力をかけて送り出す方法は公知であるため詳細な説明を省略する。第2流体供給部46は、冷却した切削水又は冷却していない切削水を第2ノズル44に送り出し、切削水を基板及び樹脂パッケージに浴びせる。
【0029】
〔低温化工程〕
次に、切断装置1の第1切断機構30により、対象物60の保護フィルム67を切断する切断方法について、
図4Aから
図4Cを用いて説明する。なお、
図4Aから
図4Cにおいては、装置本体10、テーブル用パン移動機構20のテーブル用パン21、ボールねじ23等の図示は省略されている。
【0030】
対象物60は、不図示のエア吸引又は固定用の粘着テープ等の手段により、カットテーブル28に固定されている。切断装置1の第1切断機構30の第1ブレード32及び第1ノズル34は、対象物60の保護フィルム67が切断される前(カットテーブル28が下流側に移動する前)には、対象物60に対して下流側に位置している。対象物60の切断箇所は、切断されることにより隣接する電子部品になる境界部分である。
【0031】
本実施形態の第1切断機構30の第1ノズル34は、第1吹き出し口34aの手前で5つに分岐しており、5つの第1吹き出し口34aは互いに離間しており、かつ保護フィルム67の切断方向に沿って直線状に配置されている。
【0032】
テーブル用パン移動機構を駆動させる前に、第1流体供給部36で空気を0度未満に冷却し、冷却された低温空気を第1ノズル34の5つの第1吹き出し口34aから保護フィルム67の表面に直線状に同時に浴びせる。これにより、保護フィルム67の少なくとも第1ブレード32で切断される箇所の周辺を冷却する(低温化工程)。
【0033】
低温空気の温度が切削水の温度よりも低い温度である場合、保護フィルム67の切断は、脆性破壊が支配的となる可能性がある。保護フィルム67の切断において脆性破壊が支配的になる場合、低温空気の温度は、0度未満の温度に限定されない。なお、切削水の温度が0度未満の温度となった場合、切削水は固化する。このため、切削水の温度を0度未満の温度に下げることはできない。このため、保護フィルム67の切断において、脆性破壊を支配的にするために0度未満にする必要がある場合には、低温空気の温度を用いることが好ましい。
【0034】
〔フィルム切断工程〕
低温空気を所定時間浴びせた後、若しくは公知の温度検出手段により保護フィルム67の温度が所定温度未満になった後、制御部3によりテーブル用パン移動機構を駆動させて、対象物60を第1ブレード32に近付けると共に、第1ブレード32を回転させる。
図4Bに示される方向で見たときに、第1ブレード32は反時計方向に回転する。これにより、切断された保護フィルム67の端材69は、対象物60よりも左方、すなわち、シャッタ18で覆われた第2蛇腹カバー16bの方向に飛ばされる(
図2も参照)。
【0035】
次に、テーブル用パン移動機構20の駆動源26を駆動させてボールねじ23を回転させ、テーブル用パン21を
図4Aから
図4Bにおける左方に移動させる。これに伴い、カットテーブル28及びカットテーブル28上の対象物60も左方に移動する。そして、
図4Cに示すように、第1ブレード32の周縁が保護フィルム67を切断する(フィルム切断工程)。
【0036】
低温空気は、第1ブレード32が保護フィルム67を切断している間中、保護フィルム67の表面に浴びせられる。つまり、対象物60を移動させながら、保護フィルム67の複数箇所に低温空気を同時に浴びせる。これにより、保護フィルム67の切断される箇所は継続して低温状態になるので、切断による破壊は脆性破壊が支配的になり、切断面へのバリの発生が抑制される。
図4A及び
図4Bの例では、低温空気を同時に浴びせる箇所の数は5箇所である。低温空気の温度は、切削水の温度よりも低い温度に下げることができる。保護フィルム67の切断よる破壊に関して、切削水を用いて、保護フィルム67の温度を、脆性破壊が支配的になる低い温度に低下させることができない場合、低温空気が用いられる。
【0037】
保護フィルム67が一方向に切断された後、制御部3は、ボールねじ23を逆回転させて対象物60を含むテーブル用パン21を右方に移動させて、第1ブレード32と対象物60との位置関係を
図4Aから
図4Bに示される状態に戻す。そして、不図示の移動機構により第1ブレード32を
図4Aにおける上方向又は下方向(
図4Cにおける左方向又は右方向)に移動させ、第1ブレード32と対象物60の次の切断箇所とを対向させる。そして第1ブレード32で次の切断箇所を切断する。これを繰り返す。
【0038】
本実施形態においては、上記の切断が2回繰り返された後、不図示のハンドリング手段により対象物60のカットテーブル28に対する載置方向を90度変えた後に、同様の切断を6回繰り返す。これにより、対象物60は、
図5に示されるように、保護フィルム67だけが切断されて、基板63に接着された状態で複数個に分断される。
図5の例では、対象物60の保護フィルム67は21個に分断される。
【0039】
〔基板切断工程〕
次に、切断装置1の第2切断機構40により、対象物60の基板63及び樹脂パッケージ65を切断する切断方法について、
図6Aから
図6Cを用いて説明する。まず、フィルム切断工程が終了した切断装置1において、第1切断機構30を第2切断機構40に取り替える。第2切断機構40の第2ブレード42及び第2ノズル44は、対象物60の基板63と樹脂パッケージ65が切断される前(カットテーブル28が下流側に移動する前)には、対象物60に対して下流側に位置している。対象物60の切断箇所は、切断されることにより隣接する電子部品になる境界部分であり、フィルム切断工程で保護フィルム67が切断されて除去された部分である。
【0040】
本実施形態の第2切断機構40の第2ノズル44は、第1ノズル34とは異なり第2吹き出し口44aは1つである。第2ノズル44の第2吹き出し口44aは、第1切断機構30で切断されて保護フィルム67が除去された箇所で最も第2ブレード42に近い箇所(対象物60の端部)に向けて切削水を噴射するように配置される。
【0041】
テーブル用パン移動機構を駆動させる前に、第2流体供給部46で切削水を冷却し、冷却された切削水を第2ノズル44の第2吹き出し口44aから噴射して基板63の表面に浴びせる。これにより、基板63の少なくとも第2ブレード42で切断される箇所の周辺を冷却する。基板63及び樹脂パッケージ65は、保護フィルム67と比較して硬度が高く、切断厚さが厚い。そのため、基板63及び樹脂パッケージ65を切断する際に単位時間当たりに発生する熱の量は、保護フィルム67を切断する際に単位時間当たりに発生する熱の量よりも多い。気体である低温空気は、液体である切削水に比べて単位時間当たりに切断箇所(本実施形態においては基板63及び樹脂パッケージ65)に供給される質量が小さい。供給される物質が吸収する熱量は、物質の質量に比例する。そのため、低温空気を用いた場合、基板63及び樹脂パッケージ65を切断する際に発生する熱を十分に逃がすことができない。このため、切削水を用いて切断が行われる。大量の切削水を浴びせることにより、効率的に熱を逃がすことができる。
【0042】
切削水を噴射するのと同時又はその後、テーブル用パン移動機構を駆動させて、対象物60を第2ブレード42に近付けると共に、第2ブレード42を回転させる。
図6Bに示される方向で見たときに、第2ブレード42は反時計方向に回転する。これにより、切断された基板63及び樹脂パッケージ65の端材69は、対象物60よりも左方、すなわち、シャッタ18で覆われた第2蛇腹カバー16bの方向に飛ばされる(
図2も参照)。
【0043】
次に、テーブル用パン移動機構20の駆動源26を駆動させてボールねじ23を回転させ、テーブル用パン21を
図6Aから
図6Bにおける左方に移動させる。これに伴い、カットテーブル28及びカットテーブル28上の対象物60も左方に移動する。そして、
図6Cに示すように第2ブレード42の周縁が基板63と樹脂パッケージ65とを切断する(基板切断工程)。なお、カットテーブル28には、逃げ溝28aが形成されており、基板63と樹脂パッケージ65を切断する第2ブレード42が、カットテーブル28を切断することはない。
【0044】
切削水は、第2ブレード42が基板63と樹脂パッケージ65とを切断している間中、基板63の表面に浴びせられる。これにより、基板63と樹脂パッケージ65の切断箇所は継続して低温状態になるので、切断による摩擦熱の発生が抑制される。第2ノズル44の第2吹き出し口44aから噴射され基板63に浴びせられた切削水は、基板63の表面で跳ね返り切断装置1を濡らすが、ボールねじ23、ナット24、及び駆動源26は、第1蛇腹カバー16aと第2蛇腹カバー16bとに覆われているので、濡れることはない(
図2も参照)。なお、上述したように、第2ブレード42の厚さ(幅)は、第1ブレード32の厚さよりも薄いので、第1ブレード32により切断された保護フィルム67の第1切断幅d1は、第2ブレード42による基板63及び樹脂パッケージ65の第2切断幅d2よりも大きい(
図4C及び
図6C参照)。したがって、第2ブレード42で保護フィルム67を切断することはない。なお、第1切断幅d1は第2切断幅d2と同じであってもよい。
【0045】
基板63及び樹脂パッケージ65が一方向に切断された後、テーブル用パン移動機構20は、ボールねじ23を逆回転させて対象物60を含むテーブル用パン21を右方に移動させて、第2ブレード42と対象物60との位置関係を
図6Aから
図6Bに示される状態に戻す。そして、不図示の移動機構により第2ブレード42を
図6Aにおける上方向又は下方向(
図6Cにおける左方向又は右方向)に移動させ、第2ブレード42と対象物60の次の切断箇所とを対向させる。そして第2ブレード42で次の切断箇所を切断する。これを繰り返す。
【0046】
本実施形態においては、上記の切断が2回繰り返された後、不図示のハンドリング手段により対象物60のカットテーブル28に対する載置方向を90度変えた後に、同様の切断を6回繰り返す。これにより、対象物60は個片化され、
図7に示されるように、保護フィルム67が接着された電子部品60a(切断品の一例)が複数個得られる。
図5に示す対象物60を個片化した場合、21個の電子部品60aが得られる。得られた複数の電子部品60aは、不図示の搬送機構によってカットテーブル28から搬送される。
【0047】
前述したように、切断装置1を用いて切断を行った場合、保護フィルム67の切断面にバリが発生し難くなる。結果、対象物60の個片化によって得られた複数の電子部品60aの中で、バリが発生している電子部品60aは殆どない。対象物60の個片化によって得られた複数の電子部品60aは、搬送機構によって吸着される。バリが発生している電子部品60aについては、バリにより吸着が適切に行われない可能性がある。切断装置1を用いて切断を行った場合、バリが発生している電子部品60aは殆どないため、搬送の不具合が発生しにくい。
【0048】
〔シールド層形成工程〕
次に、保護フィルム67が接着された電子部品60aを公知のスパッタリング装置(不図示)のチャンバ内に配置し、
図8に示されるように、導電材料からなるスパッタリングターゲット50を用いてスパッタリングを行い、電子部品60aの表面にシールド層52を形成する。シールド層52を形成することにより、電子部品60aに内蔵された素子61を外部ノイズ等から保護することができる。シールド層52の形成後に、スパッタリング装置から電子部品60aを取り出して、保護フィルム67を剥す。これにより、
図9に示されるように、電子部品60aが完成する。電子部品60aに内蔵される素子61の電極61aには、スパッタリング時に保護フィルム67で覆われていたため、電極61aにはシールド層52は形成されていない。
【0049】
〔別実施形態〕
以下、上述した実施形態の別実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同様の部材については、理解を容易にするため、同一の用語、符号を用いて説明する。
【0050】
<1>上述した実施形態では、素子61が固定された基板63から露出した電極61aを保護フィルム67により保護したが、この構成に限られるものではない。例えば、
図10に示されるように、基板73に形成された樹脂ハウジング75に形成された複数の凹部75aのそれぞれに集積回路71(素子の一例)が露出した状態で固定されている構成において、樹脂ハウジング75の表面に集積回路71を保護する保護フィルム67を接着して対象物70を構成してもよい。このように構成することで、基板73と樹脂ハウジング75とを切断して電子部品を得る際に、切削水が凹部75aに入り込んで集積回路71が濡れるのを防止することができる。なお、集積回路71の例としては、MEMS(Micro Electro Mechanical System)が挙げられる。
【0051】
<2>上述した実施形態において、第1切断機構30の第1ノズル34は、複数(本実施形態においては5つ)に分岐し、互いに離間し、保護フィルム67の切断方向に沿って直線状に配置された第1吹き出し口34aを有していたが、これに限られるものではない。
図11に示されるように、第1ノズル34が、直線状(細長い矩形状)に形成された第1吹き出し口34aを1つだけ有していてもよい。第1吹き出し口34aがこのような形状であっても、低温空気を第1ブレード32の切断方向に沿って直線状に浴びせて、保護フィルム67を冷却することができる。
【0052】
<3>上述した実施形態では、1つの切断装置1で第1切断機構30と第2切断機構40とを取り替えて、フィルム切断工程と基板切断工程とを行ったが、これに限られるものではない。第1切断機構30を有する切断装置1と第2切断機構40を有する切断装置1とが独立した別個の装置であってもよい。この場合、フィルム切断工程の後、保護フィルム67が切断された対象物60は、第1切断機構30を有する切断装置1から第2切断機構40を有する切断装置1へ搬送される。基板切断工程の後、得られた複数の電子部品60aは、第2切断機構40を有する切断装置1から搬送される。この場合においても、得られた複数の電子部品60aの中にバリが発生している電子部品60aは殆どないため、搬送不具合が発生しにくい。
【0053】
<4>上述した実施形態においては、第1切断機構30の第1ブレード32及び第1ノズル34を固定した状態で対象物60,70を移動させて保護フィルム67を切断した。また、第2切断機構40の第2ブレード42及び第2ノズル44を固定した状態で対象物60,70を移動させて基板63及び樹脂パッケージ65を切断した。しかし、対象物60,70の切断は、この態様に限られるものではない。例えば、対象物60,70の移動に代わり、若しくは対象物60,70の移動と共に、第1ブレード32及び第1ノズル34、第2ブレード42及び第2ノズル44を移動させて対象物60,70の切断を行ってもよい。つまり、第1ブレード32及び第1ノズル34、並びに第2ブレード42及び第2ノズル44と、対象物60,70とが相対的に移動して相対的な位置関係が変化可能な構成であればよい。
【0054】
<5>上述した実施形態では、ボールねじ23とナット24とにより、テーブル用パン21を直線状に移動させたがこれに限られるものではない。リニアアクチュエータを用いてテーブル用パン21を直接直線状に移動可能に構成してもよい。
【0055】
<6>上述した実施形態では、保護フィルム67に低温空気を浴びせることにより冷却したが、これに加えて、公知の方法によりカットテーブル28を冷却するように構成してもよい。カットテーブル28を冷却することにより、保護フィルム67の冷却時に樹脂パッケージ65も冷却される。これにより、基板63の両面を冷却することになるので、片側(保護フィルム67)だけを冷却したときに発生するおそれがある基板63の反りを抑制することができる。
【0056】
<7>上述した実施形態においては、第1流体供給部36において冷媒により空気を冷却したが、液体窒素(流体の一例)自体を第1ノズル34に供給するように構成してもよい。液体窒素の沸点は-196度であるため、液体窒素を第1ノズル34に供給しても第1吹き出し口34aから噴射される前には気化している。これにより、保護フィルム67をさらに低温にすることができる。
【0057】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上述の実施形態において説明した切断方法、切断品の製造方法及び切断装置1の概要について説明する。
【0058】
(1)切断方法の特徴は、素子61、集積回路71が固定された基板63,73と、基板63,73に接着され素子61、集積回路71を保護する保護フィルム67と、を有する対象物60,70を切断する切断方法であって、流体放出部(第1ノズル34)から流体を浴びせることにより保護フィルム67を低温にする低温化工程と、低温化工程の後に、保護フィルム67を切断するフィルム切断工程と、フィルム切断工程の後に、流体よりも高温の切削水を浴びせながら基板63,73を切断する基板切断工程と、を含む点にある。
【0059】
本特徴を有する切断方法においては、保護フィルム67を低温にする低温化工程の後にフィルム切断工程を行うので、保護フィルム67の切断は脆性破壊が支配的になり、保護フィルム67の切断面にバリが発生し難くなる。また、フィルム切断工程の後に基板切断工程を行うので、保護フィルム67と基板63,73の切断を同時に行う場合に比べて、それぞれが最適化された条件で切断することができる。
【0060】
(2)上記(1)に記載の切断方法において、流体は、0度未満に冷却された後に保護フィルム67に浴びせられる低温空気であってもよい。
【0061】
本方法であれば、保護フィルム67に浴びせられる低温空気は低温になるので、保護フィルム67の切断は脆性破壊が支配的になり、保護フィルム67の切断面にバリが発生し難くなる。
【0062】
(3)上記(1)又は(2)に記載の切断方法において、低温化工程では、流体放出部(第1ノズル34)に対して対象物60,70を相対的に移動させながら保護フィルム67の複数箇所に流体を同時に浴びせてもよい。
【0063】
本方法であれば、保護フィルム67の切断前から保護フィルム67の切断箇所を充分低温にすることができる。
【0064】
(4)上記(1)又は(2)に記載の切断方法において、低温化工程では、流体放出部(第1ノズル34)に対して対象物60,70を相対的に移動させながら保護フィルム67に対して流体を直線状に浴びせてもよい。
【0065】
本方法であれば、保護フィルム67の切断前から保護フィルム67の切断箇所を連続的に低温にすることができる。
【0066】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一つに記載の切断方法において、フィルム切断工程にて切断された保護フィルム67の第1切断幅d1は、基板切断工程にて切断された基板63,73の第2切断幅d2よりも大きくてもよい。
【0067】
本方法であれば、基板切断工程時に、保護フィルム67の切断面を切断することがない。
【0068】
(6)上記(1)から(5)のいずれか一つに記載の切断方法において、対象物60は、保護フィルム67の反対側で基板63を覆う樹脂パッケージ65をさらに有しており、基板切断工程の後に、保護フィルム67を除く対象物60の表面にシールド層52を形成するシールド層形成工程をさらに含んでもよい。
【0069】
本方法であれば、保護フィルム67で覆われた箇所にはシールド層52が形成されることがない。また、保護フィルム67によりシールド材料が基板63に付着することを防止できる。
【0070】
(7)上記(1)から(6)のいずれか一つに記載の切断方法にしたがって、対象物60を切断することにより切断品(電子部品60a)を製造する点にある。
【0071】
本製造方法であれば、保護フィルム67の切断面にバリが発生し難い切断品(電子部品60a)を製造することができる。
【0072】
(8)上記(1)から(6)のいずれか一つに記載の切断方法に用いられる切断装置1の特徴構成は、フィルム切断工程に用いられる第1切断機構30と、基板切断工程に用いられる第2切断機構40と、を備えた点にある。
【0073】
本構成であれば、保護フィルム67と基板63,73の切断を一度に行う場合に比べて、第1切断機構30と第2切断機構40のそれぞれを、保護フィルム67と基板63、73のそれぞれに最適化された構成で切断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、切断方法、切断品の製造方法及び切断装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 :切断装置
30 :第1切断機構
34 :第1ノズル(流体放出部)
40 :第2切断機構
52 :シールド層
60 :対象物
60a :電子部品(切断品)
61 :素子
63 :基板
65 :樹脂パッケージ
67 :保護フィルム
70 :対象物
71 :集積回路(素子)
73 :基板
d1 :第1切断幅
d2 :第2切断幅
【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子が固定された基板と、前記基板に接着され前記素子を保護する保護フィルムと、を有する対象物を切断する切断方法であって、
流体放出部から流体を浴びせることにより前記保護フィルムを低温にする低温化工程と、
前記低温化工程の後に、前記保護フィルムを切断するフィルム切断工程と、
前記フィルム切断工程の後に、前記流体よりも高温の切削水を浴びせながら前記基板を切断する基板切断工程と、を含む切断方法。
【請求項2】
前記流体は、0度未満に冷却された後に前記保護フィルムに浴びせられる低温空気である請求項1に記載の切断方法。
【請求項3】
前記低温化工程では、前記流体放出部に対して前記対象物を相対的に移動させながら前記保護フィルムの複数箇所に前記流体を同時に浴びせる請求項1に記載の切断方法。
【請求項4】
前記低温化工程では、前記流体放出部に対して前記対象物を相対的に移動させながら前記保護フィルムに対して前記流体を直線状に浴びせる請求項1に記載の切断方法。
【請求項5】
前記フィルム切断工程にて切断された前記保護フィルムの第1切断幅は、前記基板切断工程にて切断された前記基板の第2切断幅よりも大きい請求項1に記載の切断方法。
【請求項6】
前記対象物は、前記保護フィルムの反対側で前記基板を覆う樹脂パッケージをさらに有しており、
前記基板切断工程の後に、前記保護フィルムを除く前記対象物の表面にシールド層を形成するシールド層形成工程をさらに含む請求項1に記載の切断方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の切断方法に従って、前記対象物を切断することにより切断品を製造する、切断品の製造方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の切断方法に用いられる切断装置であって、
前記フィルム切断工程に用いられる第1切断機構と、
前記基板切断工程に用いられる第2切断機構と、を備えた切断装置。