(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014788
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】エアバッグ用基布
(51)【国際特許分類】
D06M 15/564 20060101AFI20250123BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20250123BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20250123BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20250123BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20250123BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20250123BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20250123BHJP
B60R 21/235 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
D06M15/564
C08G18/44
C08G18/65
C08G18/08 019
C08G18/32 025
C08G18/00 C
C09D175/04
B60R21/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117617
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】名雪 涼
(72)【発明者】
【氏名】小林 美津代
(72)【発明者】
【氏名】石田 顕嗣
(72)【発明者】
【氏名】木部 佳延
(72)【発明者】
【氏名】西野 正和
【テーマコード(参考)】
3D054
4J034
4J038
4L033
【Fターム(参考)】
3D054CC45
3D054FF01
3D054FF03
3D054FF16
4J034BA06
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA14
4J034CA15
4J034CA16
4J034CA22
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC23
4J034CC26
4J034CC34
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC67
4J034CD04
4J034CE03
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG08
4J034DG09
4J034HA01
4J034HA02
4J034HB17
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA30
4J034JA42
4J034KA01
4J034KA02
4J034KB02
4J034KC17
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD11
4J034KD12
4J034KD14
4J034KD15
4J034KD22
4J034KE02
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB14
4J034QC03
4J034QC05
4J034QC08
4J034RA05
4J034RA07
4J034RA08
4J034RA09
4J034RA12
4J038DG061
4J038DG121
4J038DG261
4J038NA08
4J038NA14
4J038PA19
4J038PB07
4J038PC10
4L033AA07
4L033AA08
4L033AB05
4L033AC11
4L033AC15
4L033CA50
(57)【要約】
【課題】コーティング材を配したエアバッグ用基布において、少ない塗工量であっても高い気密性と収納性を達成し得る、エアバッグ用基布の提供。
【解決手段】基布、及び、該基布の少なくとも片面に塗工された水性ウレタン樹脂組成物の硬化物を含むエアバッグ用基布において、該水性ウレタン樹脂組成物が、(a)ポリイソシアネート、(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール、及び(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、を必須成分として反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーに、(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン、を反応させて得られるウレタン樹脂を含み、該水性ウレタン樹脂組成物の硬化物が5g/m2~15g/m2塗工されていることを特徴とする、エアバッグ用基布。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布、及び、該基布の少なくとも片面に塗工された水性ウレタン樹脂組成物の硬化物を含むエアバッグ用基布において、該水性ウレタン樹脂組成物が、以下の:
(a)ポリイソシアネート、
(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール、及び
(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、
を必須成分として反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーに、以下の:
(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン、
を反応させて得られるウレタン樹脂を含み、該水性ウレタン樹脂組成物の硬化物が5g/m2~15g/m2塗工されていることを特徴とする、エアバッグ用基布。
【請求項2】
前記(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオールが、分岐構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位を有するものである、請求項1に記載のエアバック用基布。
【請求項3】
前記(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオールが、分岐構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位と、直鎖構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位とを有するものである、請求項1又は2に記載のエアバック用基布。
【請求項4】
前記水性ウレタン樹脂組成物が、前記(a)、(b)及び(c)に加えて、さらに以下の:
(e)3価以上のアルコール、
を必須成分として反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーに、前記(d)を反応させて得られるウレタン樹脂を含むものである、請求項1又は2に記載のエアバック用基布。
【請求項5】
前記エアバッグ用基布の滑脱抵抗力が1000N~2500Nである、請求項1又は2に記載のエアバック用基布。
【請求項6】
前記エアバッグ用基布の100kPa差圧下での通気度が0.01l/cm2/min以下である、請求項1又は2に記載のエアバック用基布。
【請求項7】
前記エアバッグ用基布が繊度200dtex~800dtexの原糸で構成されている、請求項1又は2に記載のエアバック用基布。
【請求項8】
前記基布を構成する繊維がポリエチレンテレフタレート繊維又はポリヘキサメチレンアジパミド繊維である、請求項1又は2に記載のエアバック用基布。
【請求項9】
前記基布を構成する繊維の引張強度が7.5cN/dtex~11.5cN/dtexである、請求項1又は2に記載のエアバック用基布。
【請求項10】
前記水性ウレタン樹脂組成物の硬化物を除いた残部の重量が150g/m2~300g/m2である、請求項1又は2に記載のエアバック用基布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ用基布に関する。より詳しくは、本発明は、密着性に優れたウレタン樹脂をコーティング材に用いることによって、少ない塗工量であっても気密性と収納性が改善されたエアバッグ用基布に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグは、事故時の衝突の衝撃や車内装備品と人体の接触を軽減するものである。そのために、エアバッグには気密性が求められている。加えて、エアバッグの展開には火薬を用いたインフレーターが多く使用されており、発生する高温のガスや残渣等に耐えるため、エアバッグに使用される基布には高い耐熱性が求められている。これらの課題を解決するために、エアバッグに用いられる基布の表面には気密性と耐熱性を向上させる目的で、コーティング材を配する手法が広く用いられている。
【0003】
昨今の傾向として世界的な安全基準の高まりにより、エアバッグ搭載部位の増加や、保護範囲を広げるためにエアバッグそのものが巨大化している。一方、車両の居住空間拡大等によってエアバッグの収容スペースは限られていることに加え、車両に使用される部材には、燃費改善に寄与するため、部材の軽量化に対する要求が非常に強く、これらの要求を満たすため、高い収納性と軽量性が重要な項目として挙げられるようになっており、コーティング材を配しつつも、収納性が良好かつ軽量な基布が求められている。
【0004】
下記特許文献1には、エアバッグ用のコーティング材に広く用いられているシリコーン樹脂に代わって、ウレタン樹脂を使用することで、バッグ重量を抑制したエアバッグ用基布が開示されている。
【0005】
下記特許文献2には、コーティング材にウレタン樹脂を使用することで、滑脱抵抗が高く、かつ、折畳み厚さが小さいエアバッグ用基布が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-168131号公報
【特許文献2】特開2009-62643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エアバッグの基布に配されるコーティング材は、気密性や耐熱性を向上させる役割を担っている。一般的に、塗工量とそれらの性能は比例関係であり、エアバッグ用基布に求められる気密性や耐熱性を満たすためには、一定量以上のコーティング材の塗工が必要になる。他方、コーティング材によって基布が厚くなることと、コーティング材の剛性が基布に加わり、基布が硬くなり収納性が悪化することに加え、コーティング材の重量で基布の重量が増加し、軽量性が悪化するという課題があり、基布の要求規格を満たしつつ、収納性と軽量性を改善し得る基布の開発が望まれている。
特許文献1では、基布との密着性に優れたコーティング材を使用することで、少ない塗工量でも基布の気密性を満足できる方法が開示されているが、125Paという低圧での通気性評価しか実施しておらず、エアバッグの基布に求められる50kPa以上の高圧での通気性はなんら開示されていない。また、実施例では20g/m2の結果しか開示されておらず、20g/m2未満の塗工量で高い気密性を達成できるかに関しては何ら開示されておらず、低塗工量、かつ高圧時の気密性保持と言った点で、改善の余地が残る。
下記特許文献2では、滑脱抵抗が高いコーティング材を使用することで、軽量で柔軟な基布を提供する方法が開示されているが、125Paという低圧での通気性評価しか実施しておらず、エアバッグの基布に求められる50kPa以上の高圧での通気性はなんら開示されていない。また、滑脱抵抗力に関しても改善の余地が残る。
【0008】
かかる従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、コーティング材を配したエアバッグ用基布において、少ない塗工量であっても高い気密性と収納性を達成し得る、エアバッグ用基布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明者は、密着性に優れたウレタン樹脂をコーティング材に用いることによって、少ない塗工量であってもエアバッグ用基布の気密性と収納性が改善し得ることを予想外に発見し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]基布、及び、該基布の少なくとも片面に塗工された水性ウレタン樹脂組成物の硬化物を含むエアバッグ用基布において、該水性ウレタン樹脂組成物が、以下の:
(a)ポリイソシアネート、
(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール、及び
(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、
を必須成分として反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーに、以下の:
(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン、
を反応させて得られるウレタン樹脂を含み、該水性ウレタン樹脂組成物の硬化物が5g/m2~15g/m2塗工されていることを特徴とする、エアバッグ用基布。
[2]前記(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオールが、分岐構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位を有するものである、前記[1]に記載のエアバック用基布。
[3]前記(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオールが、分岐構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位と、直鎖構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位とを有するものである、前記[1]又は[2]に記載のエアバック用基布。
[4]前記水性ウレタン樹脂組成物が、前記(a)、(b)及び(c)に加えて、さらに以下の:
(e)3価以上のアルコール、
を必須成分として反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーに、前記(d)を反応させて得られるウレタン樹脂を含むものである、前記[1]~[3]のいずれかに記載のエアバック用基布。
[5]前記エアバッグ用基布の滑脱抵抗力が1000N~2500Nである、前記[1]~[4]のいずれかに記載のエアバック用基布。
[6]前記エアバッグ用基布の100kPa差圧下での通気度が0.01l/cm2/min以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載のエアバック用基布。
[7]前記エアバッグ用基布が繊度200dtex~800dtexの原糸で構成されている、前記[1]~[6]のいずれかに記載のエアバック用基布。
[8]前記基布を構成する繊維がポリエチレンテレフタレート繊維又はポリヘキサメチレンアジパミド繊維である、前記[1]~[7]のいずれかに記載のエアバック用基布。
[9]前記基布を構成する繊維の引張強度が7.5cN/dtex~11.5cN/dtexである、前記[1]~[8]のいずれかに記載のエアバック用基布。
[10]前記水性ウレタン樹脂組成物の硬化物を除いた残部の重量が150g/m2~300g/m2である、前記[1]~[9]のいずれかに記載のエアバック用基布。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエアバッグ用基布は、コーティング材が低塗工量であっても、気密性と収納性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願の実施形態における収納性評価における基布の折りたたみ方法である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の1の実施形態は、基布、及び、該基布の少なくとも片面に塗工された水性ウレタン樹脂組成物の硬化物を含むエアバッグ用基布において、該水性ウレタン樹脂組成物が、以下の:
(a)ポリイソシアネート、
(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール、及び
(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、
を必須成分として反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーに、以下の:
(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン、
を反応させて得られるウレタン樹脂を含み、該水性ウレタン樹脂組成物の硬化物が5g/m2~15g/m2塗工されていることを特徴とする、エアバッグ用基布である。
【0014】
本実施形態のエアバッグ用基布に塗工される水性ウレタン樹脂組成物における「水性」とは、ウレタン樹脂を水に乳化分散させて水中の樹脂分濃度が40質量%である乳化分散液を調製した後に、この乳化分散液を20℃で12時間静置しても分離や沈降が観察されないような状態とすることが可能であることを意味する。本実施形態では、水性ウレタン樹脂組成物を基布に塗工し硬化させてコーティング材を形成させる。
【0015】
本実施形態のエアバッグ用基布に塗工されるウレタン樹脂に使用される(a)のポリイソシアネート成分としては、特に制限はなく、従来一般に用いられている芳香族、脂肪族及び脂環式のポリイソシアネートが使用可能である。具体的には、芳香族ポリイソシアネートとしては、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が用いられ、脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が用いられ、脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等が用いられる。
これらのポリイソシアネートは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよく、得られるウレタン樹脂が無黄変性のものとなるという観点から、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0016】
本実施形態のエアバッグ用基布に塗工されるウレタン樹脂に使用される(b)の分岐構造を有するポリカーボネートジオール成分とは、一般的に、1)ジオール成分とクロルカルボン酸との反応、2)ジオール成分とホスゲンとの反応、3)ジオール成分と環状カーボネートとの反応、4)ジカーボネート化合物の縮合反応、などにより得られる化合物であって、分岐構造を有するジオール由来の構造単位を有するものである。本実施形態のエアバッグ用基布に塗工されるウレタン樹脂に使用される(b)の分岐構造を有するポリカーボネートジオール成分としては、分岐構造を有するジオール由来の構造単位のみであってもいいし、直鎖構造を有するジオール由来の構造単位も含んでもよく、分岐構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位を有することがより好ましく、分岐構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位と、直鎖構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位を有することが最も好ましい。分岐構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位としては、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール等が用いられる。直鎖構造を有する炭素数が3~10のジオール由来の構造単位としては、1,10-デカンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-オクタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール等が用いられる。
また、本実施形態のエアバッグ用基布に塗工されるウレタン樹脂に使用される(b)の分岐構造を有するポリカーボネートジオール成分の数平均分子量としては、500~6000が好ましく、800~4000がより好ましい。数平均分子量が前記下限以上であると、エアバッグ用基布の滑脱抵抗性や収納性が優れ、他方、前記上限以下であると、エアバッグ用基布の通気性が優れる。
ウレタン樹脂中のイソシアネート基と反応し得るヒドロキシ基を有する化合物の合計質量に対する(b)の割合としては、エアバッグ用基布の滑脱抵抗性や収納性の観点から、10~99.7質量%が好ましく、30~99.6質量%がより好ましい。(b)の割合が前記下限以上であると、エアバッグ用基布の滑脱抵抗性や収納性が優れる。
尚、イソシアネート基と反応し得るヒドロキシ基を有する化合物とは、(b)、後述する(b)以外のジオール、(c)及び(e)である。
(b)のジオール由来の構成単位中の分岐構造を有するジオール由来の構造単位は、エアバッグ用基布の滑脱抵抗性や通気性、収納性の観点から10~100モル%が好ましく、30~100モル%がより好ましい。
(b)の割合が99.7質量%未満の場合に含まれる、(b)以外のジオールとしては、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、(b)以外のポリカーボネート系ジオール等のジオール、数平均分子量200以下のジオールを用いることができる。
【0017】
ポリエーテル系ジオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの重合物が用いられる。このような重合物は1種類のアルキレンオキサイドの単独重合物であってもよいし、2種類以上のアルキレンオキサイドの共重合物であってもよい。共重合物である場合、ランダム重合物であっても、ブロック重合物であってもよい。また、このようなポリエーテル系ジオールの数平均分子量としては、400~5000が好ましい。また、前記ポリエーテル系ジオールとして、数平均分子量200以下の2価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加した化合物を使用することもできる。前記数平均分子量200以下の2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等が用いられる。
【0018】
ポリエステル系ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量300~1,000のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン又はこれらのアルキレンオキサイド付加体等のジオール成分と、ダイマー酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビスフェノキシエタン-p,p’-ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分との脱水縮合反応によって得られるポリエステル系ジオール、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応により得られるポリエステル系ジオール、これらを共重合したポリエステル系ジオール等が用いられる。
(b)以外のポリカーボネート系ジオールとしては、1,10-デカンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-オクタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール等のグリコールから選ばれる1種又は2種以上のジオールと、クロルカルボン酸、ホスゲン、環状カーボネート等との反応、ジカーボネート化合物の縮合反応等によって得られるポリカーボネート系ジオール等が用いられる。
数平均分子量200以下のジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等が用いられる。
これらの(b)以外のジオールは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0019】
(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオールとしては、一例として下記のようなものがある。
・3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオール由来のポリカーボネートジオール(株式会社クラレ製のクラレポリオールC-1090(数平均分子量:1000)、クラレポリオールC-2090(数平均分子量:2000)、クラレポリオールC-3090(数平均分子量:3000)、クラレポリオールC-5090(数平均分子量:5000))。
・2-メチル-1,3-プロパンジオール由来のポリカーボネートジオール(UBE株式会社製のETERNACOLL UP-100(数平均分子量:1000)、ETERNACOLL UP-200(数平均分子量:2000))。
・2-メチル-1,8-オクタンジオール/1,9-ノナンジオール由来のポリカーボネートジオール(株式会社クラレ製のクラレポリオールC-1015N(数平均分子量:1000)、クラレポリオールC-2015N(数平均分子量:2000)、クラレポリオールC-1065N(数平均分子量:1000)、クラレポリオールC-2065N(数平均分子量:2000))。
・2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール由来のポリカーボネートジオール(三菱ケミカル株式会社製のBENEBiOL NL1005B(数平均分子量:1000)、BENEBiOL NL2005B(数平均分子量:2000)、BENEBiOL NL1030B(数平均分子量:1000)、BENEBiOL NL2030B(数平均分子量:2000)
【0020】
本実施形態のエアバッグ用基布に塗工されるウレタン樹脂に使用される(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物とは、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基等のアニオン性親水基とヒドロキシ基等の活性水素含有基2個以上とを有する化合物である。具体的には、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸、ジヒドロキシマレイン酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸等が用いられる。この(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物を共重合させることによって、自己乳化型のウレタン樹脂が得られる。
ウレタン樹脂中のアニオン性親水基の含有量としては、乳化安定性、貯蔵安定性の観点から、0.3~3質量%が好ましく、0.5~2.5質量%がより好ましい。アニオン性親水基の含有量が前記下限以上であると、ウレタン樹脂の乳化安定性及び貯蔵安定性が優れる傾向にあり、ウレタン樹脂を安定に使用することができる。他方、前記上限以下であると、ウレタン樹脂が柔軟性に優れ、エアバッグ用基布の滑脱抵抗性や収納性が向上する。
【0021】
本実施形態のエアバッグ用基布に塗工されるウレタン樹脂に使用される(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ヒドラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボランジ((アミン、ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等のジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン等のポリアミン;ジ第一級アミン及びモノカルボン酸から誘導されるアミドアミン;ジ第一級アミンのモノケチミン等の水溶性アミン誘導体;シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、1,1’-エチレンヒドラジン、1,1’-トリメチレンヒドラジン、1,1’-(1,4-ブチレン)ジヒドラジン等のヒドラジン誘導体等が用いられる。これらのポリアミンは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
(d)の使用量としては、後述するイソシアネート基末端プレポリマーの遊離イソシアネート基に対して、0.6~1.2当量のアミノ基等を含む量が好ましい。
【0022】
本実施形態のエアバッグ用基布に塗工されるウレタン樹脂は、前記(a)、(b)及び(c)を必須成分として反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーに、前記(d)を反応させて得られるものであり、通常水分散物として得られる。
【0023】
(イソシアネート基末端プレポリマー)
イソシアネート基末端プレポリマーの製造において、(b)以外のジオールを併用してもよく、さらに(e)3価以上のアルコ―ル成分を併用してもよい。
(e)3価以上のアルコールとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が用いられる。
ポリアルキレンポリアミン又は前述の3価以上のアルコールに、1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加した数平均分子量500以下の化合物等も(e)として使用することができる。ポリアルキレンポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。前記アルキレンオキサイドとしては、炭素数1~4のアルキレンオキサイド(具体的にはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)が用いられる。
3価以上のアルコールのうち、エアバッグ用基布の折り畳み性能の観点から、3~4価のアルコールが好ましく、3価のアルコールがより好ましい。
イソシアネート基と反応し得るヒドロキシ基を有する化合物である、(b)、(b)以外のジオール、(c)及び(e)の合計質量に対する(e)の質量の割合としては、エアバッグの滑脱抵抗性や通気性、収納性の観点から、0.1~5質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
(e)の割合が前記下限以上であると、エアバッグ用基布の通気性能が優れ、他方、前記上限以下であると、エアバッグ用基布の滑脱抵抗性や収納性が優れる。
【0024】
前記のイソシアネート基末端プレポリマーの製造方法は特に制限はなく、従来公知の一段式のいわゆるワンショット法、多段式のイソシアネート重付加反応法等が用いられる。
反応温度としては40~150℃が好ましい。この際、必要に応じて、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジ-2-エチルヘキソエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)、ジアザビシクロウンデセン等の反応触媒、あるいは燐酸、燐酸水素ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加してもよい。
反応中又は反応終了後に、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を添加してもよい。このような有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、塩化メチレン等が挙げられる。これらの有機溶剤のうち、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチルが特に好ましい。また、これらの有機溶剤は、プレポリマーの乳化分散及び鎖伸長後、加熱減圧することによって除去することができる。
イソシアネート基末端プレポリマーの製造に際しては、プレポリマー不揮発分中の原料のイソシアネート基とヒドロキシ基とのモル比(NCO/OH)が、1.1~2であることが好ましく、1.25~1.7であることがより好ましい。原料のイソシアネート基とヒドロキシ基とのモル比を前記範囲内に調整することによって、所望の遊離イソシアネート基含有量を有するイソシアネート基末端プレポリマーを得ることができる。
【0025】
イソシアネート基末端プレポリマーにおける遊離イソシアネート基の含有量としては、0.2~5質量%が好ましく、1~4質量%がより好ましい。遊離イソシアネート基含有量が下限以上であると、製造時のイソシアネート基末端プレポリマーが適切な粘度となるため、有機溶剤の使用量を抑えることができるとともに、十分な乳化分散が可能となる。他方、遊離イソシアネート基含有量が上限以下であると、乳化分散後と(d)ポリアミンによる鎖伸長後の水溶性のバランスの変化が少なく、ウレタン樹脂の経時貯蔵安定性又は加工安定性に優れる。
(a)ポリイソシアネート、(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール、(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、及び(e)3価以上のアルコールは、いずれも反応点が複数存在するものであり、これらを反応させることによって得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、構造が複雑であり、一般式(構造式)で直接表すことは不可能である。
【0026】
(イソシアネート基末端プレポリマーの中和物)
イソシアネート基末端プレポリマーの中和物は、イソシアネート基末端プレポリマー中のアニオン性親水基が中和されたものである。
イソシアネート基末端プレポリマーの中和物は、(i)イソシアネート基末端プレポリマー中のアニオン性親水基を公知の方法で中和することによって製造してもよいし、(ii)(a)ポリイソシアネート、(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール、(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、及び(d)3価以上のアルコールを混合した後、(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物のアニオン性親水基を公知の方法で中和し、次いで、この中和した(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、(a)ポリイソシアネート、(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール及び前記(e)3価以上のアルコールを反応させることによって製造してもよい。また、(iii)(a)ポリイソシアネート、(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール、(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物のアニオン性親水基がアニオン性親水基の塩である(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物及び(e)3価以上のアルコールを反応させることによって製造することもできる。
(i)及び(ii)の製造方法において、アニオン性親水基の中和に用いられる塩基性化合物としては特に制限はなく、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチル-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルモノエタノールアミン、N,N-ジエチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア等が挙げられる。これらの中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン類が特に好ましい。
(i)及び(ii)の製造方法におけるアニオン性親水基の中和に際して、中和用塩基性化合物の使用量としては、アニオン性親水基に対して、0.5~1.5当量が好ましく、0.6~1.4当量がより好ましく、0.7~1.3当量が特に好ましい。中和用塩基性化合物の使用量が下限未満になると、ウレタン樹脂の乳化性及び保存安定性が低下する傾向にある。他方、上限を超える量の中和用塩基性化合物を添加しても、ウレタン樹脂の乳化性や保存安定性がそれ以上向上しないため、経済的に好ましくない。
【0027】
(ウレタン樹脂)
本明細書中、ウレタン樹脂とは、前記イソシアネート基末端プレポリマーの中和物を、(d)ポリアミンを用いて鎖伸長させたもの(鎖伸長物)をいう。
【0028】
(乳化分散)
イソシアネート基末端プレポリマー中和物の鎖伸長に際しては、先ず、イソシアネート基末端プレポリマー中和物を水に乳化分散させる。乳化分散の方法としては特に制限はなく、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー等を用いた従来公知の方法が挙げられる。特に乳化剤を添加しなくても、0~40℃の範囲内の温度で水に乳化分散させることが可能であり、イソシアネート基と水との反応を抑制することができる。乳化分散させる際には、必要に応じて、燐酸、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加してもよい。
【0029】
(鎖伸長)
次いで、水に乳化分散させた前記イソシアネート基末端プレポリマー中和物を、(d)ポリアミンを用いて鎖伸長させることにより、本発明のウレタン樹脂が形成される。鎖伸長の方法としては特に制限はなく、イソシアネート基末端プレポリマー中和物の乳化分散物に(d)ポリアミンを添加して鎖伸長する方法、或いは、イソシアネート基末端プレポリマー中和物の乳化分散物を(d)ポリアミンに添加して鎖伸長する方法が好ましい。イソシアネート基末端プレポリマー中和物とアミンとの反応は、20~50℃の反応温度で、通常、イソシアネート基末端プレポリマー中和物と(d)ポリアミンとの混合後、30~120分間で完結する。
鎖伸長は、乳化分散と同時に行ってもよいし、乳化分散の後に行ってもよいし、乳化分散の前に行ってもよい。また、得られたウレタン樹脂に有機溶剤が含まれる場合には、減圧下、30~80℃の温度で有機溶剤を除去することが好ましい。
【0030】
(a)ポリイソシアネート、(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール、(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、及び前記(e)3価以上のアルコールと同様に、(d)ポリアミンも反応点が複数存在するものであり、このような(d)ポリアミンを用いてイソシアネート基末端プレポリマーの中和物を鎖伸長させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマー中和物の鎖伸長物(ウレタン樹脂)も、イソシアネート基末端プレポリマーと同様に、構造が複雑であり、一般式(構造式)直接表すことは不可能である。
【0031】
このようにして得られたウレタン樹脂は、水に乳化分散させた状態で使用することが好ましく、その樹脂分濃度としては特に制限はないが、20~60質量%が好ましい。このようなウレタン樹脂の水乳化分散物における樹脂分濃度は、水を追加又は除去することによって調整することができる。
【0032】
本実施形態のエアバッグ用基布に塗工される水性ウレタン樹脂組成物には、エアバッグ用基布の滑脱抵抗性及び通気性、収納性の観点から、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の樹脂(例えば、本発明のウレタン樹脂以外のウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等)、増粘剤、架橋剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、粘弾性調整剤、湿潤剤、分散剤、防腐剤、膜形成剤、可塑剤、浸透剤、香料、殺菌剤、殺ダニ剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料等の各種添加剤を配合することができる。
【0033】
水性ウレタン樹脂組成物の固形分中のウレタン樹脂の含有量としては、エアバッグ用基布の滑脱抵抗性および通気性、収納性の観点から、20~100質量%が好ましく、40~100質量%がより好ましい。20質量%以上の場合、エアバッグ用基布の滑脱抵抗性および通気性、収納性が優れる。
尚、基布に塗工する前における水性ウレタン樹脂組成物中の固形分を求める場合は、水性ウレタン樹脂組成物5gを100±5℃で3時間乾燥させた際の残分の質量を測定することで算出できる。
【0034】
ウレタン樹脂以外の樹脂としては、アクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂に用いられるアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を表す。また、これらのアクリル系モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
アクリル系樹脂に用いられる共重合モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド等のアクリルアミド類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド等のビニル化合物;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの共重合モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0035】
水性ウレタン樹脂組成物においては、適切な粘度に調整するために、増粘剤を配合してもよい。このような増粘剤としては、アルカリ増粘型アクリル樹脂、会合型増粘剤、水溶性有機高分子等が挙げられる。これらの増粘剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
アルカリ増粘型アクリル樹脂としては、市販の物を使用することができる。ニカゾールVT-253A(日本カーバイド工業株式会社製)、アロンA-20P、アロンA-7150、アロンA-7070、アロンB-300、アロンB-300K、アロンB-500(以上、東亞合成株式会社製)、ジュリマーAC-10LHP、ジュリマーAC-10SHP、レオジック835H、ジュンロンPW-110、ジュンロンPW-150(以上日本純薬株式会社製)、プライマルASE-60、プライマルTT-615、プライマルRM-5(以上、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製)、SNシックナーA-818、SNシックナーA-850(以上、サンノプコ株式会社製)、パラガム500(パラケム・サザン株式会社製)、レオレート430(エレメンティス・ジャパン株式会社製)、ネオステッカーV-420(日華化学株式会社製)等が用いられる。このようなアルカリ増粘型アクリル樹脂は、通常、樹脂の乳化分散物として市販されており、乳化分散させた状態で使用することが好ましい。
【0036】
会合型増粘剤としては、市販のものを用いることができる。会合型増粘剤の市販品としては、アデカノールUH-450、アデカノールUH-450VF、SNシックナー621N、SNシックナー623N、SNシックナー660T(以上、サンノプコ株式会社製)、レオレート244、レオレート278、レオレート300(以上、エレメンティス・ジャパン株式会社製)、DKシックナーSCT-275(第一工業製薬株式会社製)、ネオステッカーN-5400(日華化学株式会社製)等が用いられる。
水溶性有機高分子としては、天然水溶性有機高分子、半合成水溶性有機高分子、合成水溶性有機高分子が挙げられる。前記天然水溶性有機高分子としては、ばれいしょデンプン、かんしょデンプン、小麦デンプン、米デンプン、タピオカデンプン、コーンスターチ等のデンプン類;アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、トロロアオイ等の樹脂多糖類;アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天(ガラクタン)、ふのり等の海藻多糖類;キサンタンガム、プルラン、カードラン、デキストリン、レバン等の微生物発酵多糖類;カゼイン、ゼラチン、アラブミン、にかわ、コラーゲン等のタンパク質;ペクチン、キチン、キトサン等が用いられる。
半合成水溶性有機高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステルナトリウム等のセルロース誘導体;デキストリン、可溶性デンプン、酸化デンプン、カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ジアルデヒドデンプン、リン酸デンプン、アセチルデンプン等のデンプン誘導体;アルギン酸プロピレングリコールエステル等が用いられる。
合成水溶性有機高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルキルエーテル、無水マレイン酸共重合体、マレイン酸共重合体、マレイン酸塩共重合体等が用いられる。
このような増粘剤の配合量(不揮発分の配合量)としては、水性ウレタン樹脂組成物の粘度に応じて適量を用いればよいが、通常、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1~40質量部が好ましく、0.3~30質量部がより好ましい。
【0037】
水性ウレタン樹脂組成物においては、エアバッグの通気性を向上させるために、架橋剤を配合してもよい。
架橋剤としては、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤、水分散イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤等が用いられる。これらの架橋剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。加工液の安定性の観点から、カルボジイミド系架橋剤を配合することが特に好ましい。
架橋剤として市販のものを用いることができ、カルボジイミド系架橋剤の市販品としては、カルボジライトE-02、カルボジライトSV-02、カルボジライトV02-L2、カルボジライトV-10(以上、日清紡ケミカル株式会社製)、NKアシストCI-02(日華化学株式会社製)等が用いられる。
架橋剤の配合量(不揮発分の配合量)としては、エアバッグの通気性の観点から、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~15質量部がより好ましい。
【0038】
本実施形態のエアバッグ用基布に用いられる繊維としては、200dtex~800dtexが好ましく、340dtex~600dtexがより好ましく、400dtex~560dtexがさらに好ましい。
用いられる繊維の繊度が200dtex以上であれば、エアバッグ用基布に求められる耐久性を満たすことができ、800dtex以下であれば、基布が柔軟で収納性が良好な基布を作成することが可能となる。
【0039】
本実施形態のエアバッグ用基布に用いられる繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリヘキサメチレンアジパミド繊維が挙げられる。尚、かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用される各種添加剤を含んでいてもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤などを含有せしめることができる。
【0040】
本実施形態のエアバッグ用基布に用いられる繊維の(引張)強度は7.5~11.5cN/dtexの範囲であることが好ましく、より好ましくは8.0~11.5cN/dtex、特に好ましくは8.2~11.5cN/dtexの範囲である。強度が8.0cN/dtex以上で大きければ、所望の機械的特性が得られ、産業資材用繊維として十分であり、また、11.5cN/dtex以下の強度であれば、繊維品位に優れ、例えば、毛羽の発生頻度も少なく、紡糸収率の低下が抑えられ、後加工における製織トラブルの原因にならない。
【0041】
本実施形態のエアバッグ用基布は、コーティング材を除いた基布の重量が150g/m2~300g/m2が好ましく、170g/m2~280g/m2がより好ましく、175g/m2~250g/m2がさらに好ましく、180g/m2~210g/m2がよりいっそう好ましい。
コーティング材を除いた基布の重量が150g/m2以上であれば、エアバッグ用基布に求められる気密性を満たすことができ、他方、300g/m2以下であれば、軽量な基布を生産することが可能となる。
【0042】
本実施形態のエアバッグ用基布の滑脱抵抗は1000N~2500Nであることが好ましく、より好ましくは1100N~2000Nである。滑脱抵抗が1000N以上あれば、基布を構成する繊維の拘束が十分に強く、圧力がかかった状態でも繊維が移動し難く、高い気密性を得ることができ、2500N以下であれば、折り畳み時に繊維が適度に移動し、柔軟かつ収納性が良好な基布となる。
【0043】
本実施形態のエアバッグ用基布の100kPa差圧下での通気度は0.01l/cm2/min以下であり、好ましくは0.008l/cm2/min以下である。
【0044】
本実施形態のエアバッグ用基布のコーティング材の塗工量は5g/m2~15g/m2であり、好ましくは8g/m2~13g/m2である。
塗工量が5g/m2以上あることで、エアバッグに求められる気密性を満たすことができ、他方、15g/m2以下であることで、軽量かつ、柔軟で収納性が良好な基布となる。
【実施例0045】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、例中の各測定値は以下の方法で測定した。
【0046】
(1)遊離イソシアネート基含有量
ウレタンプレポリマー0.3gを三角フラスコに採取し、0.1Nジブチルアミントルエン溶液10mlを加えてウレタンプレポリマーを溶解。次いで、ブロモフェノールブルー液を数滴加え、0.1N塩酸メタノール溶液で滴定し、下記式:
NCO%=(a-b)×0.42×f/x
{式中、a:0.1Nジブチルアミントルエン溶液10mlのみを滴定した場合の0.1N塩酸メタノール液の滴定量、b:ウレタンプレポリマーを溶解させた溶液を滴定した場合の0.1N塩酸メタノール液の滴定量、f:0.1N塩酸メタノール液のファクター、x:ウレタンプレポリマー量。}
により遊離イソシアネート基含有量NCO%を求めた。
【0047】
(2)総繊度(dtex)
JIS L 1017:2002 8.3記載の方法で測定した。
【0048】
(3)(引張)強度(cN/dtex)
JIS L 1017:2002 8.5記載の方法で測定した引張強さを総繊度で除して求めた。
【0049】
(4)滑脱抵抗力(N)
ASTM D6479載の方法に従って測定した。
【0050】
(5)通気度(l/cm2/min)
φ100mmの治具に基布を把持し、基布の片側を加圧し、基布両面の差圧が100kPaとなるように調整し、その時通過する空気流量を層流菅式流量計にて測定する。尚、同一サンプル内の5箇所をランダムに測定し平均値を求めた。
【0051】
(6)収納性
以下の手順に従った:
1)基布を20cm×20cmの大きさにカットする、
2)経糸(warp)方向が上下になるようにし、コート面を上側にする、
3)基布の左右両端から5cmのところで谷折りし、内側に折りたたむ、
4)基布の上下両端から5cmのところで谷折りし、内側に折りたたむ、
5)基布の左右両端から2.5cmのところで谷折りし、内側に折りたたむ、
6)基布の上下両端から2.5cmのところで谷折りし、内側に折りたたむ、
7)上記6)のサンプルを平坦な床面に置き、そのサンプルの上に高さ2cm、幅6cm、奥行6cm、重さ560gの直方体の錘を乗せ、錘下面の頂点4か所から床面までの距離を測定し、4点の平均値を基布の厚みとした。
そして、各実施例、比較例毎にランダムに5か所で前記の厚み測定を行い、平均値を求めて各実施例と比較例の厚みとした。さらに、比較例1の厚みを100とし、各実施例、比較例の相対値を算出した。
【0052】
(7)コーティング材を除いた基布(残部)の重量(g/m2)と、塗工量(g/m2)
コーティング材を除いた基布(残部)の重量は、JIS L-1096:2010の8.3.2法に規定された方法により、コーティング材塗工前の基布単体の単位面積当たりの重量を測定することにより求めた。
また、コーティング材の塗工量は、JIS L-1096:2010の8.3.2法に規定された方法により、コーティング材塗工前と塗工後における基布の単位面積当たりの重量差から求めた。
【0053】
[実施例及び比較例で使用した原料]
<有機ポリイソシアネート>
・H12MDI:ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート(コベストロ社製「デスモジュールW」)。
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート。
<ポリオール>
・T5652:旭化成ケミカルズ株式会社製ポリカーボネートジオール(1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオールを原料として使用したもの)、商品名「デュラノールT5652」、数平均分子量2,000。
・C2090:株式会社クラレ製ポリカーボネートジオール(3メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオールを原料として使用したもの)、商品名「クラレポリオールC-2090」、数平均分子量2,000。
・C3090:株式会社クラレ製ポリカーボネートジオール(3メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオールを原料として使用したもの)、商品名「クラレポリオールC-3090」、数平均分子量3,000。
・UP200:UBE株式会社製ポリカーボネートジオール(2-メチル-1,3-プロパンジオールを原料として使用したもの)、商品名「ETERNACOLL UP-200」、数平均分子量2,000。
・C2065N:株式会社クラレ製ポリカーボネートジオール(2-メチル-1,8-オクタンジオール/1,9-ノナンジオールを原料として使用したもの)、商品名「クラレポリオールC-2065N」、数平均分子量2,000。
<3価以上の多価アルコール>
・TMP:トリメチロールプロパン。
<アニオン性親水基/活性水素含有化合物>
・DMPA:ジメチロールプロピオン酸。
<中和アミン>
・TEA:トリエチルアミン。
<鎖伸長剤>
・ヒドラジン一水和物。
・DETA:ジエチレントリアミン。
<増粘剤>
・ネオステッカーN―5400:日華化学株式会社製
<架橋剤>
・NKアシストCI-02:日華化学株式会社製
<顔料>
・SAグリーンA4023:御国色素株式会社製
【0054】
[実施例1]
(合成例1)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオールとしてポリカーボネートジオール(2-メチル-1,3-プロパンジオールを原料として使用したもの)(UBE株式会社製「ETERNACOLL UP-200」、数平均分子量2,000)293.1質量部、(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物としてジメチロールプロピオン酸12.3質量部、及びメチルエチルケトン98.7質量部を仕込み、均一に混合した後、(a)ポリイソシアネートとしてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート89.3質量部、ジアザビシクロウンデセン0.099質量部を加え、80℃で240分間反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーに対する遊離イソシアネート基含有量が2.3質量%のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液にトリエチルアミン8.8質量部を添加し、均一に混合した後、水632.7質量部を徐々に加えて乳化分散させた。得られた乳化分散液に(e)鎖伸長剤としてヒドラジン一水和物4.1質量部、ジエチレントリアミン1.1質量部を添加した後、90分間攪拌して、ウレタン樹脂分散物を得た。次いで、このウレタン樹脂分散物を減圧下、40℃で脱溶剤して、樹脂分40.0質量%のウレタン樹脂の水分散液を得た。(合成したウレタン樹脂におけるイソシアネート基と反応しうるヒドロキシ基を持つ化合物の合計量における(b)の割合、(b)のジオール由来の構成単位中の分岐構造を有するジオール由来の構造単位の割合、合成したウレタン樹脂におけるイソシアネート基と反応しうるヒドロキシ基を持つ化合物の合計量における(e)の割合は実施例中の表中に記載した)
【0055】
(水性ウレタン樹脂組成物1)
合成例1で得られたウレタン樹脂の水分散液800質量部、増粘剤(日華化学株式会社製「ネオステッカーN-5400」)3.8質量部、顔料(御国色素株式会社製「SAグリーンA4023」)1.6質量部を混合し、水性ウレタン樹脂組成物1を調製した。
【0056】
次いで、総繊度470dtex136フィラメント、引張強度8.3cN/dtexのポリヘキサメチレンアジパミド繊維を無撚無糊で整形し、緯糸に同一糸を用いて、ウォータージェット織機で平織に製織し、精練、セットを行い、基布重量が200g/m2である基布を得た。次いで、この基布の片側表面に、水性ウレタン樹脂組成物1をナイフコーティング法にてコーティング材塗工量が11g/m2となるように塗工した後、ピンテンター熱処理機を用い、190℃で1分間処理してエアバッグ用基布を得た。得られた基布の物性を、以下の表1乃至3に示す。
【0057】
[実施例2~9、比較例1]
合成例2~7では、表1中に示す種類及び量の(a)ポリイソシアネート、(b)分岐構造を有するポリカーボネートジオール、(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン、(e)3価以上のアルコール、中和アミンを用いた以外は、合成例1と同様に仕込み、実施例及び比較例の表中に示すイソシアネート基末端プレポリマーに対する遊離イソシアネート基含有量まで反応させ、ウレタン樹脂の水分散液を得た。
比較合成例1、調整合成例1では、実施例及び比較例の表中に示す種類及び量の(a)ポリイソシアネート、(b)’(b)以外のポリカーボネートジオール、(c)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン、(e)3価以上のアルコール、中和アミンを用いた以外は、合成例1と同様に仕込み、実施例及び比較例の表中に示すイソシアネート基末端プレポリマーに対する遊離イソシアネート基含有量まで反応させ、ウレタン樹脂の水分散液を得た。
水性ウレタン樹脂組成物2~9、及び比較水性ウレタン樹脂組成物1では、表中に示すウレタン樹脂水分散物、増粘剤、架橋剤、顔料を、水性ウレタン樹脂組成物1と同様に混合し、各種水性(又は比較水性)ウレタン樹脂組成物を調製した。
得られた水性ウレタン樹脂組成物を、実施例1と同様の基布に塗工し、同様の加工処置を実施した。得られた基布の物性を以下の表1乃至3に示す。
【0058】
[実施例10、11]
基布へのコーティング材の塗工量をそれぞれ6g/m2、15g/m2とした以外は、実施例7と同様に実施した。得られた基布の物性を以下の表1乃至3に示す。
【0059】
[実施例12]
総繊度550dtex140フィラメント、引張強度8.0cN/dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を無撚無糊で整経し、緯糸に同一糸を用いて、ウォータージェット織機で平織に製織し、精練、セットを行い、基布重量が243g/m2である基布を得た。そこにウレタン樹脂の水分散液7を、実施例1と同様に11g/m2となるように塗工し、実施例1と同様の加工処置を実施した。得られた基布の物性を以下の表1乃至3に示す。
【0060】
[比較例2、3]
基布へのコーティング材の塗工量をそれぞれ3g/m2、20g/m2(固形分)とした以外は、実施例7と同様に実施した。得られた基布の物性を以下の表1乃至3に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
本発明に係るエアバッグ用基布は、高い気密性と良好な収納性、および軽量性を兼ね備えた基布であり、高度な収納性と軽量性、低通気性を有するエアバッグ用途として好適に用いることができる。