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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025148243
(43)【公開日】2025-10-07
(54)【発明の名称】バッテリ状態推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/387 20190101AFI20250930BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20250930BHJP
   G01R 31/3835 20190101ALI20250930BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250930BHJP
【FI】
G01R31/387
G01R31/3828
G01R31/3835
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025010538
(22)【出願日】2025-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2024047910
(32)【優先日】2024-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】庄司 明
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA02
2G216BA03
2G216BA13
2G216BA18
2G216BA41
2G216BA63
2G216BA65
2G216CB05
2G216CB34
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA02
5G503EA08
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】バッテリの劣化に応じてOCV-SOCマップを更新し、SOCを精度よく推定する。
【解決手段】バッテリ状態推定装置は、バッテリ(B)の電圧とOCV-SOCマップとに基づきSOCを推定するコントローラ(14)を備え、コントローラは、バッテリの定電流充電中に、バッテリの電圧値及び電流値に基づきdV/dSOCを算出し、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリのSOCpeakを特定し、dV/dSOCのピークが生じるときのバッテリの負極の残容量を表すSOC[-]peakと、SOCpeakとに基づき、SOCが100%であるときの負極の残容量を表すSOC[-]TOPを算出し、正極の残容量の下限値から上限値までの正極の開回路電位OCPposのデータと、負極の残容量の下限値からSOC[-]TOPまでの負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲のOCV-SOCマップを更新する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリの状態を推定するバッテリ状態推定装置であって、
前記バッテリの充放電電流を測定する電流センサと、
前記バッテリの電圧を測定する電圧センサと、
前記バッテリの開回路電圧OCVと前記バッテリのSOCとの関係を規定したOCV-SOCマップを記憶するメモリと、
測定された前記電圧と前記OCV-SOCマップとに基づき、前記バッテリのSOCを推定するように構成されたコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記バッテリの定電流充電中に、前記バッテリの電圧値及び電流値に基づき、前記バッテリのSOCの変化に応じた電圧の変化率を表すdV/dSOCを算出し、
前記dV/dSOCのピークが現れたときの前記バッテリのSOCpeakを特定し、
前記dV/dSOCのピークが生じるときの前記バッテリの負極の残容量を表す値であって予め設定されているSOC[-]peakと、前記SOCpeakとに基づき、前記バッテリのSOCが100%であるときの前記負極の残容量を表すSOC[-]TOPを算出し、
前記バッテリの正極の残容量の下限値から上限値までの前記正極の開回路電位OCPposのデータと、前記負極の残容量の下限値から前記SOC[-]TOPまでの前記負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲のOCV-SOCマップを取得し、前記メモリに格納されている前記OCV-SOCマップを更新するように構成されている、
バッテリ状態推定装置。
【請求項2】
前記負極の残容量の下限値をSOC[-]BOTとして、前記SOC[-]TOPは、以下の式により算出される、
請求項1に記載のバッテリ状態推定装置。
【請求項3】
前記バッテリの定電流充電は、前記バッテリのSOCが30%以下のときから前記dV/dSOCのピークが現れるときまで実行される、
請求項1又は2に記載のバッテリ状態推定装置。
【請求項4】
直列接続された複数のセルを有し車両に搭載されたバッテリの状態を推定するバッテリ状態推定装置であって、
前記バッテリの充放電電流を測定する電流センサと、
前記複数のセルの各々の電圧を測定する電圧センサと、
前記バッテリの開回路電圧OCVと前記バッテリのSOCとの関係を規定したOCV-SOCマップを記憶するメモリと、
測定された前記電圧と前記OCV-SOCマップとに基づき、前記バッテリのSOCを推定するように構成されたコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記バッテリの定電流充電中に、前記複数のセルの電圧の内の最大値Vcell max及び最小値Vcell minと、前記バッテリの電流値とに基づき、前記バッテリのSOCに応じたVcell maxとVcell minとの差を算出し、
前記Vcell maxとVcell minとの差のピークが現れたときの前記バッテリのSOCを、前記バッテリのSOCの変化に応じた電圧の変化率を表すdV/dSOCのピークが生じるときの前記バッテリのSOCpeakとして特定し、
前記dV/dSOCのピークが生じるときの前記バッテリの負極の残容量を表す値であって予め設定されているSOC[-]peakと、前記SOCpeakとに基づき、前記バッテリのSOCが100%であるときの前記負極の残容量を表すSOC[-]TOPを算出し、
前記バッテリの正極の残容量の下限値から上限値までの前記正極の開回路電位OCPposのデータと、前記負極の残容量の下限値から前記SOC[-]TOPまでの前記負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲のOCV-SOCマップを取得し、前記メモリに格納されている前記OCV-SOCマップを更新するように構成されている、
バッテリ状態推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたバッテリの状態を推定するバッテリ状態推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車など動力源としてモータを備える車両において、モータに電力を供給するためにリチウムイオンバッテリ等の二次電池が使用されている。電気自動車やプラグインハイブリッド車両に搭載されるバッテリは、家庭用の商用電源といった外部電源から充電される。
【0003】
上記のような電動車両において、バッテリの充電状態を示すSOC(State Of Charge)を正確に把握することは、バッテリの過充電や過放電を防ぐと共に、走行時におけるバッテリの残容量を乗員に正確に伝える上で非常に重要である。しかしながら、バッテリ内部の状態を直接検出してSOCを特定することは難しい。
【0004】
そこで、バッテリ内部の状態を直接検出することなくSOCを推定するための方法が知られている。例えば、バッテリの充放電電流を時間で積分した値を、充放電開始時のSOC初期値に加減算することにより、現在のSOCを推定する方法(以下「積算法」という)や、バッテリの等価回路モデルにバッテリの電流値と端子電圧値を入力することによってバッテリの開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)を逐次推定し、OCVとSOCとの対応関係を示すOCV-SOCマップを参照してバッテリのSOCを推定する方法(以下「OCV法」という)が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-227840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バッテリの使用を継続していると、正極と負極の劣化の進行速度の違いに起因して正極と負極の容量バランスが崩れ、OCVとSOCとの対応関係が徐々に変化する。その結果、バッテリの劣化前に対応したOCV-SOCマップでは、バッテリの電圧からSOCを推定する際の精度が悪化する。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、バッテリの劣化に応じてOCV-SOCマップを更新し、SOCを精度よく推定することが可能なバッテリ状態推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両に搭載されたバッテリの状態を推定するバッテリ状態推定装置であって、バッテリの充放電電流を測定する電流センサと、バッテリの電圧を測定する電圧センサと、バッテリの開回路電圧OCVとバッテリのSOCとの関係を規定したOCV-SOCマップを記憶するメモリと、測定された電圧とOCV-SOCマップとに基づき、バッテリのSOCを推定するように構成されたコントローラと、を備え、コントローラは、バッテリの定電流充電中に、バッテリの電圧値及び電流値に基づき、バッテリのSOCの変化に応じた電圧の変化率を表すdV/dSOCを算出し、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリのSOCpeakを特定し、dV/dSOCのピークが生じるときのバッテリの負極の残容量を表す値であって予め設定されているSOC[-]peakと、SOCpeakとに基づき、バッテリのSOCが100%であるときの負極の残容量を表すSOC[-]TOPを算出し、バッテリの正極の残容量の下限値から上限値までの正極の開回路電位OCPposのデータと、負極の残容量の下限値からSOC[-]TOPまでの負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲のOCV-SOCマップを取得し、メモリに格納されているOCV-SOCマップを更新するように構成されている。
このように構成された本発明では、コントローラは、バッテリの定電流充電中にdV/dSOCを算出し、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリのSOCpeakを特定し、dV/dSOCのピークが生じるときの負極の残容量を表すSOC[-]peakと、SOCpeakとに基づき、バッテリのSOCが100%であるときの負極の残容量を表すSOC[-]TOPを算出し、正極の残容量の下限値から上限値までの正極の開回路電位OCPposのデータと、負極の残容量の下限値からSOC[-]TOPまでの負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲のOCV-SOCマップを取得し、メモリに格納されているOCV-SOCマップを更新する。即ち、負極よりも正極の劣化が進むことにより正極と負極の容量バランスが崩れ、dV/dSOCのピークが生じるSOCpeakが高SOC側にシフトしたときに、そのSOCpeakのシフトに基づいて負極のSOC[-]の上限値であるSOC[-]TOPを特定して、劣化による正極と負極の容量バランスのずれを反映したOCV-SOCマップを取得することができるので、バッテリの劣化に応じて更新されたOCV-SOCマップに基づいてSOCを精度よく推定することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、負極の残容量の下限値をSOC[-]BOTとして、SOC[-]TOPは、以下の式により算出される。
このように構成された本発明においては、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリのSOCpeakと、予め特定することが可能な、dV/dSOCのピークが生じるときの負極の残容量を表すSOC[-]peak及び負極の残容量の下限値をSOC[-]BOTとに基づいて、正極と負極の容量バランスのずれを表すSOC[-]TOPを正確に算出することができる。これにより、劣化による正極と負極の容量バランスのずれを精度よく反映したOCV-SOCマップを取得することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、バッテリの定電流充電は、バッテリのSOCが30%以下のときからdV/dSOCのピークが現れるときまで実行される。
このように構成された本発明においては、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリのSOCpeakを確実に特定することができ、劣化による正極と負極の容量バランスのずれを精度よく反映したOCV-SOCマップを取得することができる。
【0011】
また、本発明の別態様によれば、バッテリ状態推定装置は、直列接続された複数のセルを有し車両に搭載されたバッテリの状態を推定するバッテリ状態推定装置であって、バッテリの充放電電流を測定する電流センサと、複数のセルの各々の電圧を測定する電圧センサと、バッテリの開回路電圧OCVとバッテリのSOCとの関係を規定したOCV-SOCマップを記憶するメモリと、測定された電圧とOCV-SOCマップとに基づき、バッテリのSOCを推定するように構成されたコントローラと、を備え、コントローラは、バッテリの定電流充電中に、複数のセルの電圧の内の最大値Vcell max及び最小値Vcell minと、バッテリの電流値とに基づき、バッテリのSOCに応じたVcell maxとVcell minとの差を算出し、Vcell maxとVcell minとの差のピークが現れたときのバッテリのSOCを、バッテリのSOCの変化に応じた電圧の変化率を表すdV/dSOCのピークが生じるときのバッテリのSOCpeakとして特定し、dV/dSOCのピークが生じるときのバッテリの負極の残容量を表す値であって予め設定されているSOC[-]peakと、SOCpeakとに基づき、バッテリのSOCが100%であるときの負極の残容量を表すSOC[-]TOPを算出し、バッテリの正極の残容量の下限値から上限値までの正極の開回路電位OCPposのデータと、負極の残容量の下限値からSOC[-]TOPまでの負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲のOCV-SOCマップを取得し、メモリに格納されているOCV-SOCマップを更新するように構成されている。
このように構成された本発明では、コントローラは、バッテリの定電流充電中にVcell max-Vcell minを算出し、Vcell max-Vcell minのピークが現れたときのバッテリのSOCを、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリのSOCpeakとして特定し、dV/dSOCのピークが生じるときの負極の残容量を表すSOC[-]peakと、SOCpeakとに基づき、バッテリのSOCが100%であるときの負極の残容量を表すSOC[-]TOPを算出し、正極の残容量の下限値から上限値までの正極の開回路電位OCPposのデータと、負極の残容量の下限値からSOC[-]TOPまでの負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲のOCV-SOCマップを取得し、メモリに格納されているOCV-SOCマップを更新する。即ち、負極よりも正極の劣化が進むことにより正極と負極の容量バランスが崩れ、dV/dSOCのピークが生じるSOCpeakが高SOC側にシフトしたときに、そのSOCpeakのシフトに基づいて負極のSOC[-]の上限値であるSOC[-]TOPを特定して、劣化による正極と負極の容量バランスのずれを反映したOCV-SOCマップを取得することができるので、バッテリの劣化に応じて更新されたOCV-SOCマップに基づいてSOCを精度よく推定することができる。また、Vcell max-Vcell minのピークが発生するSOCを、dV/dSOCのピークが発生するSOCpeakとして特定するので、複数のセルの各々のdV/dSOCを算出することなくSOCpeak求めることができ、バッテリの状態を推定するための計算負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバッテリ状態推定装置によれば、バッテリの劣化に応じてOCV-SOCマップを更新し、SOCを精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態によるバッテリ状態推定装置が適用された車両の概略構成を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態によるバッテリ状態推定装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態によるリチウムイオンバッテリの構造を簡略化して示す図である。
図4】本発明の実施形態によるOCV-SOCマップの一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態によるリチウムイオンバッテリのSOCとdV/dSOCとの関係を例示する図である。
図6】本発明の実施形態によるバッテリ状態推定処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の別実施形態によるリチウムイオンバッテリのSOCとVcell max-Vcell minとの関係を例示する図である。
図8】本発明の別実施形態によるバッテリ状態推定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるバッテリ状態推定装置について説明する。
【0015】
<システム構成>
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態によるバッテリ状態推定装置の構成を説明する。図1は、本実施形態によるバッテリ状態推定装置が適用された車両の概略構成を示す平面図であり、図2は、本実施形態によるバッテリ状態推定装置の機能構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の車両1は、車両1を動力源として内燃エンジン2とモータ4とを搭載する、プラグインハイブリッド自動車である。内燃エンジン2及びモータ4は、例えば車両1の車体前部に搭載されている。内燃エンジン2は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンである。内燃エンジン2及びモータ4から出力されたトルクは、クラッチ(図示せず)を介してトランスミッション6に伝達される。トランスミッション6は、入力されたトルクを所定の減速比で一対のドライブシャフト8に出力する。これにより、各ドライブシャフト8の車幅方向外側端部に取り付けられた一対の駆動輪10(図1の例では左右の前輪)が駆動される。また、モータ4は、車両1の減速時には回生電力を出力するジェネレータとして機能する。
【0017】
モータ4に電力を供給するバッテリBは、リチウムイオンバッテリであり、例えば車両1の車体後部に搭載されている。バッテリBは、例えば出力電圧が48V、最大放電電流値が80A、容量が20kWhである。さらに、モータ4の近傍にインバータ12が配置されている。インバータ12は、バッテリBから供給された直流電力を交流電力に変換してモータ4に供給し、モータ4が発生させる回生電力を直流電力に変換してバッテリBに供給することによりバッテリBを充電する。また、インバータ12はコントローラ14と電気的に接続されており、コントローラ14との間で制御信号を入出力できるようになっている。
【0018】
また、車両1は、バッテリBの温度を検出する温度センサSN1、バッテリBの電圧を検出する電圧センサSN2、及びバッテリBの充放電電流値を検出する電流センサSN3を有する。これらの各センサは、直接的に又は間接的にコントローラ14と電気的に接続されており、それぞれの検出値に対応する検出信号をコントローラ14に出力する。
【0019】
この車両1においては、コントローラ14が各種の制御を行う。コントローラ14は、図2に示すように、プロセッサ16、及び、当該プロセッサ16上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)や各種のデータを記憶するためのメモリ18(ROMやRAM等)を有している。メモリ18には、OCV-SOCマップ18a、劣化前のバッテリBにおける正極の残容量の下限値から上限値までの開回路電位OCPpos、及び、劣化前のバッテリBにおける負極の残容量の下限値から上限値までの開回路電位OCPnegのデータが含まれている。
【0020】
コントローラ14は、車両1のパワートレインシステムのコントローラとして機能する。即ち、コントローラ14は、ドライバによるアクセルペダルの操作に応じて、内燃エンジン2及びインバータ12を制御し、インバータ12を介してバッテリBからモータ4に電力を供給させ又はモータ4からバッテリBに回生電力を供給させることで、アクセル操作に応じた所望の出力トルク又は回生トルクが実現されるようにする。さらに、コントローラ14は、上述した各種センサSN1~SN3から入力された信号に基づき、バッテリBの充放電を制御するように構成されている。
【0021】
次に、図3から図5を参照して、本実施形態のバッテリBの構造について説明する。図3は、リチウムイオンバッテリの構造を簡略化して示す図、図4はOCV-SOCマップの一例を示す図、図5はリチウムイオンバッテリのSOCとdV/dSOCとの関係を例示する図である。
【0022】
本実施形態のバッテリBはリチウムイオンバッテリであり、図3に示すように、正極、負極及びこれらの正極と負極とを絶縁するセパレータを備え、支持電解質として主電解質と副電解質とを非水溶媒に溶解させた非水電解液を用いている。
【0023】
正極は、正極活物質及び助剤(結着剤及び導電助剤)を混合して集電体に塗布することにより形成される。好ましい集電体としては、例えばアルミニウム箔が挙げられる。
【0024】
好ましい正極活物質としては、コバルト、マンガン及びニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物、リン酸系リチウム化合物、ケイ酸系リチウム化合物がある。特に、リン酸系リチウムを採用することが好ましい。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
負極は、負極活物質及び助剤(結着剤及び導電助剤)を混合して集電体に塗布することにより形成される。好ましい集電体としては、例えば銅箔が挙げられる。
【0026】
負極活物質としては、黒鉛系炭素材料、すなわち、人造黒鉛や天然黒鉛を採用することが好ましい。黒鉛系炭素材料は、Liイオンの吸蔵及び放出能力の向上の観点から、黒鉛化度が低いものが好ましい。黒鉛化度が低い人造黒鉛やハードカーボンは負極活物質として好ましい。結晶性の高い天然黒鉛単独では劣化が早いため、表面処理を行った天然黒鉛や人造黒鉛と併用することが好ましい。
【0027】
セパレータについては、特に制限はないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を採用することができる。
【0028】
非水電解液は、非水溶媒にリチウム塩(支持電解質)を溶解したものであり、必要に応じて添加剤が添加される。
【0029】
バッテリBには、バッテリBの加熱用のヒータ及び冷却用の熱交換器が設けられている。ヒータは、バッテリBの温度が例えば常温程度の低いときに、例えば45℃付近の温度となるようにバッテリBの温度を昇温させる。この昇温によって、後述するように、限界積算電流量を大きくすることができる。ヒータは、例えば電気ヒータを用いることができるが、これに限るものではない。例えば、内燃エンジン2の冷却水温度が所定温度以上の高温になっているときは、この冷却水を昇温用として利用することもできる。
【0030】
熱交換器は、バッテリBの温度が所定温度(例えば50℃)になると作動され、バッテリBの温度が許容上限温度(例えば60℃)以上になるのを防止する。熱交換器は、空冷式や水冷式など、適宜のものを使用できる。
【0031】
図4は、開回路電圧OCVとバッテリの充電状態SOCとの対応関係を示すOCV-SOCマップの一例である。図4のOCV-SOCマップにおいて、点線はバッテリの製造直後の劣化が生じていない状態のマップであり、実線は満充電容量が製造直後の60%まで劣化した状態のマップであり、それぞれSOCの全範囲にわたって正極の開回路電位OCPposと負極の開回路電位OCPnegとを取得し、それらの電位差を算出することによって求めることができる。しかしながら、車両にバッテリを搭載した後はそのような測定を行うことはできないので、従来は製造直後のバッテリの状態に応じたOCV-SOCマップを用いてSOCの推定をしていた。
【0032】
バッテリの使用を継続していると、正極と負極の劣化の進行速度の違いに起因して正極と負極の容量バランスが崩れ、OCVとSOCとの対応関係が徐々に変化する。リチウムイオンバッテリにおいては、通常は負極よりも正極の劣化が早く進み、正極の容量が負極よりも小さくなる。このように正極と負極との容量バランスが崩れた結果、リチウムイオンバッテリのSOCの変化に応じたOCVの変化が大きくなる。即ち、図4に示すように、バッテリの劣化が進むと、同じSOCに対応する開回路電圧が低くなる方向(あるいは同じ開回路電圧OCVに対応するSOCが大きくなる方向)にOCV-SOCマップがシフトする。したがって、従来のように製造直後のバッテリに対応するOCV-SOCマップを使用すると、劣化が進んだバッテリのSOCを実際よりも低く推定してしまうことになる。そこで、本発明者らは、劣化により正極と負極との容量バランスがどの程度ずれているのかを特定できれば、予め特定した正極の開回路電位OCPposと負極の開回路電位OCPnegのデータから、劣化後の容量バランスに対応する部分のデータに基づいてOCVを算出することにより、劣化後のOCVとSOCとの関係を正確に表したOCV-SOCマップに更新することができると考えた。
【0033】
図5は、図4に示したOCV-SOCマップをSOCで微分したdV/dSOC[mV/%]とSOC[%]との関係を示している。図5において、点線はバッテリの製造直後の劣化が生じていないときのdV/dSOCを例示し、実線は劣化したときのdV/dSOCを例示している。図5に示すようにdV/dSOC曲線には、SOCが40%から80%の間にピークが存在している。このピークは、負極の結晶構造の変化によって生じるものであるため、正極の劣化状態によらず、負極の特定の残容量において発生する。
【0034】
図5の例では、バッテリの製造直後の劣化が生じていない場合、dV/dSOCのピークはSOCが約52%のときに生じている。バッテリの劣化が生じていない場合には、正極と負極との容量バランスがずれておらずバッテリのSOCと負極の残容量とが一致するので、負極の残容量が52%のときにdV/dSOCのピークが生じると考えることができる。
【0035】
一方、バッテリが劣化した場合には、負極よりも正極の劣化が進むことにより、容量が減少した正極に合わせてバッテリの満充電容量も減少する。即ち、正極と負極の容量バランスが崩れ、バッテリのSOCが100%のときの負極の残容量が100%よりも低い値となる。その結果、dV/dSOCのピークが生じる負極の残容量に対応するSOCが、高SOC側にシフトすることになる。図5の例では、dV/dSOCのピークはSOCが約60%の位置までシフトしている。
【0036】
したがって、バッテリが劣化した場合、dV/dSOCのピークが生じるSOCを特定することにより、SOCが100%のときの負極の残容量SOC[-]TOPを特定することができる。これにより、残容量が下限値から100%の正極の開回路電位OCPposのデータと、残容量が下限値からSOC[-]TOPまでの負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲(例えば0%から100%まで)のOCV-SOCマップ、即ちバッテリの劣化を反映したOCV-SOCマップを取得することができる。
【0037】
<バッテリの状態推定>
次に、図6を参照して、本実施形態によるバッテリ状態推定処理について説明する。図6は、本実施形態によるバッテリ状態推定処理を示すフローチャートである。図5に示すバッテリ状態推定処理は、車両1の電源がONである場合に、コントローラ14によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0038】
バッテリ状態推定処理が開始されると、コントローラ14は、各センサSN1~SN3から信号を取得する(ステップS1)。各センサSN1~SN3からの信号の取得は、ステップS1以降の処理においてもバックグラウンドで常時実行されている。
【0039】
次に、コントローラ14は、ステップS1で取得した情報に基づきバッテリBのSOCを推定し、所定の状態推定開始閾値以下か否かを判定する(ステップS2)。このとき、コントローラ14は、バッテリBの電圧、電流及び温度に基づき、現在のOCV-SOCマップ18a及び予めメモリ18に格納されているバッテリBの等価回路モデルを用いて、SOCを算出する。状態推定開始閾値は、dV/dSOCのピークを特定するためにバッテリBの定電流充電を開始するための閾値であり、dV/dSOCのピークが生じるSOCpeakの初期値(即ち製造直後のバッテリBのSOCpeak)よりも低い値に設定されている。本実施形態では、状態推定開始閾値は例えば50%である。
【0040】
ステップS2の結果、バッテリBのSOCが状態推定開始閾値以下ではない場合、本実施形態では50%より高い場合(ステップS2:NO)、バッテリBの定電流充電を開始する条件を満たしていないので、コントローラ14はバッテリ状態推定処理を終了する。
【0041】
一方、バッテリBのSOCが状態推定開始閾値以下の場合(ステップS2:YES)、コントローラ14は、バッテリBの電流値に基づき、定電流充電(CC充電)を実行中か否かを判定する(ステップS3)。
【0042】
その結果、例えば車両1が充電器から切り離され走行を開始した場合など、バッテリBの定電流充電が行われていない場合(ステップS3:NO)、dV/dSOCのピークを特定してバッテリBの状態を推定することができないので、コントローラ14はバッテリ状態推定処理を終了する。
【0043】
一方、バッテリBの定電流充電が実行中である場合(ステップS3:YES)、コントローラ14は、バッテリBの現在の満充電容量Cap[Ah]を取得する(ステップS4)。満充電容量Capは、バッテリ状態推定処理とは別の処理において、バッテリBの電圧、電流、温度等に基づいて既知の手法により随時算出されている。
【0044】
次に、コントローラ14は、バッテリBの電圧値及び電流値とステップS4で取得した満充電容量Capとに基づき、dV/dSOCを算出する(ステップS5)。例えば、コントローラ14は、定電流充電の電流値を満充電容量Capで除算することにより、単位時間当たりのSOCの増分dSOCを算出し、単位時間当たりのバッテリBの電圧の上昇値dVをdSOCで除算することにより、dV/dSOCを算出する。即ち、dV/dSOCはSOCの変化に応じた電圧Vの変化率を表している。また、dV/dSOCの算出時におけるSOCも算出し、図5に示したようなSOCとdV/dSOCとの関係を特定したデータとしてメモリ18に格納する。このときのSOCは、定電流充電を開始するときのSOCの初期値を現在のOCV-SOCマップ18aから求め、定電流充電を開始した後のdSOCの積算値を初期値に加算することによって求めることができる(いわゆる電流積算法)。以降、次のステップS6でdV/dSOCのピークが検出されるまで、dV/dSOC及びSOCの算出及びデータ格納を継続する。
【0045】
次に、コントローラ14は、dV/dSOCのピークを判定する(ステップS6)。コントローラ14は、例えば、dV/dSOCが増加から減少に転じたとき(つまりdV/dSOCの傾きが正から負に転じたとき)に、dV/dSOCのピークが現れたと判定し、その時点のSOCを、現在の劣化状態のバッテリBにおいてdV/dSOCのピークが発生するSOCpeakとしてメモリ18に記憶する。
【0046】
次に、コントローラ14は、ステップS6で特定したdV/dSOCのピークが発生するSOCpeakに基づき、SOCが100%のときの負極の残容量、つまり負極SOC[-]の上限値であるSOC[-]TOPを算出する(ステップS7)。
【0047】
dV/dSOCのピークが生じるときの負極の残容量を負極SOC[-]peak、バッテリBのSOCが0%の時の負極の残容量を下限値SOC[-]BOTとすると、バッテリBのSOCと負極SOC[-]との関係を下記式(1)のように表すことができる。
【0048】
したがって、SOC[-]TOPは以下の式(2)により算出される。
ここで、SOC[-]peakは予め理論的あるいは実験的に求めることができる固定値であり、本実施形態において図5に示した例では52%である。また、SOC[-]BOTも予め求められた固定値であり、例えば10%である。これらのSOC[-]peak及びSOC[-]BOTは予めメモリ18に記憶されている。
【0049】
次に、コントローラ14は、ステップS7で算出したSOC[-]TOPに基づき、OCV-SOCマップ18aを更新する(ステップS8)。具体的には、コントローラ14は、メモリ18に格納されている残容量が下限値から100%までの正極の開回路電位OCPposのデータと、残容量が下限値SOC[-]BOTからSOC[-]TOPまでの負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲(例えば0%から100%まで)のOCV-SOCマップ、即ちバッテリBの劣化を反映したOCV-SOCマップを取得し、メモリ18に格納する。ステップS8の後、コントローラ14はバッテリ状態推定処理を終了する。
【0050】
<第2実施形態>
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第2実施形態によるバッテリ状態推定装置について説明する。図7は、第2実施形態によるバッテリのSOCとVcell max-Vcell minとの関係を例示する図であり、図8は、第2実施形態によるバッテリ状態推定処理を示すフローチャートである。なお、車両1の構成やバッテリBの構造は、特に説明する場合を除き上述した実施形態と同様である。
【0051】
一般的に、電気自動車やプラグインハイブリッド車両などの電動車両においてモータに電力を供給するバッテリは、セル電圧が例えば2~4V程度の複数のセルを直列接続することにより必要な電圧(例えば400V~800V)を出力するように構成されている。したがって、上述した実施形態によるバッテリ状態推定処理でバッテリBの劣化に応じたOCV-SOCマップを取得するために、例えば全セルの各々についてdV/dSOCを算出し、dV/dSOCのピークが発生するSOCpeakを求めることが考えられる。
【0052】
しかしながら、電動車両で用いられるバッテリのセル数は100を超えることが当たり前となっているため、セル毎にdV/dSOCを算出しようとすると計算負荷が過大となってしまう。そこで、本発明者らは、セル毎にdV/dSOCを算出することなく、dV/dSOCのピークが発生するSOCpeakを求めることが可能な手法を考案した。
【0053】
具体的には、バッテリのセル間には劣化の進行度にばらつきがあるため、劣化のばらつきに応じて各セルの端子電圧にも差が生じる。特に、dV/dSOCのピークが発生するSOCpeakの近傍では、SOCの変化に応じた電圧の変化が大きいので、各セルの端子電圧のばらつきも大きくなる。即ち、各セルの端子電圧の内の最大値Vcell maxと最小電圧値Vcell minとの差が、SOCpeakの近傍で最大になると考えられる。したがって、Vcell max-Vcell minのピークが発生するSOCを求めることにより、dV/dSOCのピークが発生するSOCpeakを近似的に求めることができる。
【0054】
図7は、上述した実施形態と同じバッテリの製造直後及び劣化後における、SOCとVcell max-Vcell minとの関係を示している。図7において、点線はバッテリの製造直後の劣化が生じていないときのVcell max-Vcell minを例示し、実線は劣化したときのVcell max-Vcell minを例示しており、点線及び実線により示すそれぞれの劣化状態は、図5において点線及び実線により示した劣化状態と同じ状態を表している。この図7によれば、Vcell max-Vcell minの曲線には、図5に示したdV/dSOC曲線と同様の位置、即ちバッテリの製造直後の劣化が生じていない場合にはSOCが約52%、バッテリの劣化後にはSOCが約60%の位置にピークが存在している。即ち、Vcell max-Vcell minのピークが発生するSOCから、dV/dSOCのピークが発生するSOCpeakを求めることができる。
【0055】
この場合、バッテリ状態推定処理では、dV/dSOCの算出(ステップS5)及びdV/dSOCのピーク判定(ステップS6)に代えて、Vcell max-Vcell minの算出及びVcell max-Vcell minピーク判定を行う。
【0056】
ここで、図8を参照して、第2実施形態によるバッテリ状態推定処理について説明する。図8は、第2実施形態によるバッテリ状態推定処理を示すフローチャートである。なお、ステップS11~S14及びS17~S18は、図6に示したフローチャートのステップS1~S4及びS7~S8と同様である。
【0057】
第2実施形態では、バッテリBは、直列接続された複数のセルを有する。また、電圧センサSN2は、複数のセルの各々の電圧を検出し、検出値に対応する検出信号をコントローラ14に出力する。
【0058】
ステップS14の後、コントローラ14は、ステップS1で取得した情報に基づきバッテリBの各セルの電圧を取得し、それらの電圧の内の最大値Vcell maxと最小値Vcell minとの差Vcell max-Vcell minを算出する(ステップS15)。また、Vcell max-Vcell minの算出時におけるSOCも算出し、図7に示したようなSOCとVcell max-Vcell minとの関係を特定したデータとしてメモリ18に格納する。このときのSOCは、上述した実施形態と同様に、例えば電流積算法により求めることができる。以降、次のステップS16でVcell max-Vcell minのピークが検出されるまで、Vcell max-Vcell min及びSOCの算出及びデータ格納を継続する。
【0059】
次に、コントローラ14は、Vcell max-Vcell minのピークを判定する(ステップS16)。コントローラ14は、例えば、Vcell max-Vcell minが増加から減少に転じたとき(つまりVcell max-Vcell minの傾きが正から負に転じたとき)に、Vcell max-Vcell minのピークが現れたと判定する。
【0060】
上述したように、Vcell max-Vcell minのピークが現れるときに、dV/dSOCのピークが発生している。そこで、コントローラ14は、その時点のSOCを、現在の劣化状態のバッテリBにおいてdV/dSOCのピークが発生するSOCpeakとしてメモリ18に記憶する。
【0061】
その後、コントローラ14は、Vcell max-Vcell minのピークが現れるSOC、即ちdV/dSOCのピークが発生するSOCpeakに基づき、図6に示したフローチャートのステップS7及びS8と同様に、負極SOC[-]の上限値であるSOC[-]TOPを算出し(ステップS17)、SOC[-]TOPに基づき、OCV-SOCマップ18aを更新する(ステップS18)。
【0062】
<作用効果>
次に、上述した実施形態及び変形例によるバッテリ状態推定装置の作用効果について説明する。
【0063】
まず、コントローラ14は、バッテリBの定電流充電中にdV/dSOCを算出し、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリBのSOCpeakを特定し、dV/dSOCのピークが生じるときの負極の残容量を表すSOC[-]peakと、SOCpeakとに基づき、バッテリBのSOCが100%であるときの負極の残容量を表すSOC[-]TOPを算出し、正極の残容量の下限値から上限値までの正極の開回路電位OCPposのデータと、負極の残容量の下限値からSOC[-]TOPまでの負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲のOCV-SOCマップを取得し、メモリ18に格納されているOCV-SOCマップ18aを更新する。即ち、負極よりも正極の劣化が進むことにより正極と負極の容量バランスが崩れ、dV/dSOCのピークが生じるSOCpeakが高SOC側にシフトしたときに、そのSOCpeakのシフトに基づいて負極のSOC[-]の上限値であるSOC[-]TOPを特定して、劣化による正極と負極の容量バランスのずれを反映したOCV-SOCマップを取得することができるので、バッテリBの劣化に応じて更新されたOCV-SOCマップ18aに基づいてSOCを精度よく推定することができる。
【0064】
また、SOC[-]TOPは上記式(2)により算出されるので、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリBのSOCpeakと、予め特定することが可能な、dV/dSOCのピークが生じるときの負極の残容量を表すSOC[-]peak及び負極の残容量の下限値をSOC[-]BOTとに基づいて、正極と負極の容量バランスのずれを表すSOC[-]TOPを正確に算出することができる。これにより、劣化による正極と負極の容量バランスのずれを精度よく反映したOCV-SOCマップを取得することができる。
【0065】
また、バッテリBの定電流充電は、バッテリBのSOCが30%以下のときからdV/dSOCのピークが現れるときまで実行されるので、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリBのSOCpeakを確実に特定することができ、劣化による正極と負極の容量バランスのずれを精度よく反映したOCV-SOCマップを取得することができる。
【0066】
また、コントローラ14は、バッテリBの定電流充電中にVcell max-Vcell minを算出し、Vcell max-Vcell minのピークが現れたときのバッテリBのSOCを、dV/dSOCのピークが現れたときのバッテリBのSOCpeakとして特定し、dV/dSOCのピークが生じるときの負極の残容量を表すSOC[-]peakと、SOCpeakとに基づき、バッテリBのSOCが100%であるときの負極の残容量を表すSOC[-]TOPを算出し、正極の残容量の下限値から上限値までの正極の開回路電位OCPposのデータと、負極の残容量の下限値からSOC[-]TOPまでの負極の開回路電位OCPnegのデータとに基づいて、SOCが所定範囲のOCV-SOCマップを取得し、メモリ18に格納されているOCV-SOCマップ18aを更新する。即ち、負極よりも正極の劣化が進むことにより正極と負極の容量バランスが崩れ、dV/dSOCのピークが生じるSOCpeakが高SOC側にシフトしたときに、そのSOCpeakのシフトに基づいて負極のSOC[-]の上限値であるSOC[-]TOPを特定して、劣化による正極と負極の容量バランスのずれを反映したOCV-SOCマップを取得することができるので、バッテリBの劣化に応じて更新されたOCV-SOCマップ18aに基づいてSOCを精度よく推定することができる。また、Vcell max-Vcell minのピークが発生するSOCを、dV/dSOCのピークが発生するSOCpeakとして特定するので、複数のセルの各々のdV/dSOCを算出することなくSOCpeak求めることができ、バッテリBの状態を推定するための計算負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両
2 内燃エンジン
4 モータ
6 トランスミッション
8 ドライブシャフト
10 駆動輪
B バッテリ
12 インバータ
14 コントローラ
16 プロセッサ
18 メモリ
18a OCV-SOCマップ
SN1 温度センサ
SN2 電圧センサ
SN3 電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8