(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025148342
(43)【公開日】2025-10-07
(54)【発明の名称】食品品質の特性評価および食品安全性の向上に適用される標的検出のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20250930BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250930BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M1/34 B
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2025097525
(22)【出願日】2025-06-11
(62)【分割の表示】P 2023547327の分割
【原出願日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】63/091,101
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523132583
【氏名又は名称】バイオ-ラッド ヨーロッパ ゲーエムべーハー
【氏名又は名称原語表記】Bio-Rad Europe GmbH
(71)【出願人】
【識別番号】502416811
【氏名又は名称】バイオ-ラッド ラボラトリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハンディーク,カリヤン
(72)【発明者】
【氏名】レボフスキー,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】マッケ,エミリー,セリーヌ,クラウディ
(72)【発明者】
【氏名】ディヴァート,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】キリング,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール,ソフィー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】標的検出のための方法、システムおよび装置を提供する。
【解決手段】標的検出のための方法において、プレート上の複数のマイクロウェルの中にサンプルを装填するステップと、前記複数のマイクロウェルを密封する油層を設けるステップと、撮像サブシステムを用いて、前記複数のマイクロウェルを撮像するステップと、を含むことを特徴とする方法を提供する。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的検出のためのシステムであって、
ベース基板と、
前記基板の広い表面に規定されたサンプル処理領域のセットとを備え、前記サンプル処理領域のセットの各々が、
各サンプル処理領域の上流端と下流端との間に勾配を付けて配置されたマイクロウェルサブアレイのセットと、
各サンプル処理領域を隣接するサンプル処理領域から分離する境界とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記マイクロウェルサブアレイのセットが、上流端に配置された第1の特性寸法を有するウェルを含む最初のマイクロウェルサブアレイと、下流端に配置された第2の特性寸法を有するウェルを含む終端のマイクロウェルサブアレイとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記第1の特性寸法が前記第2の特性寸法よりも小さく、前記最初のマイクロウェルサブアレイが、前記ベース基板の第1のフットプリントを占め、前記終端のマイクロウェルサブアレイが、前記第1のフットプリントよりも大きい前記ベース基板の第2のフットプリントを占めることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記最初のサブアレイのウェルが第1の充填構成で配置され、前記終端のサブアレイのウェルが第2の充填構成で配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ベース基板が、液体交換を防止しつつ、前記サンプル処理領域のセットのウェルの内容物と当該システムの環境との間のガス交換を可能にするレベルの多孔性を有する材料で構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記サンプル処理領域のセットが、媒体、蛍光基質および比色基質のうちの少なくとも1つを含む乾燥サンプル処理物質を含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、
各サンプル処理領域が0.01~10ミリリットルの総容積を有し、前記マイクロウェルサブアレイのセットの各々が、MPNアッセイに対する5~3,000,000の最確数(MPN)範囲に対応する、10~100,000個のパーティションを有することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記境界が、溢れ出したサンプルを受け入れるように動作可能な凹状のチャネルを含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、
結合モードで前記ベース基板と嵌合するように構成されたカバー基板をさらに含み、前記カバー基板が、前記結合モードで前記ベース基板と前記カバー基板を嵌合させる際に前記サンプル処理領域のセットと整列する通気チャネルのネットワークを含み、前記通気チャネルのネットワークが、前記ベース基板と前記マイクロウェルアセンブリの周囲の環境との間のガス交換を提供することを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記カバー基板が、液体交換を防止しつつ、当該システムの内容物と当該システムの環境との間のガス交換を可能にするレベルの多孔性を有する材料で構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記カバー基板が、エラストマー材料から構成され、前記ベース基板における前記サンプル処理領域のセットに分配されたサンプルから流体のサブボリュームが移動する変形動作モードと、前記カバー基板がベースライン状態に弛緩して前記カバー基板と前記ベース基板のマイクロウェルとの間にポケットを作り出す弛緩動作モードとを提供することを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記通気チャネルのネットワークが、第1の軸に平行に前記カバー基板に延在するチャネルの第1のサブセットと、第2の軸に平行に前記カバー基板に延在するチャネルの第2のサブセットとを含み、前記チャネルの第1のサブセットが前記チャネルの第2のサブセットと交差することを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記通気チャネルのネットワークが、前記カバー基板の周縁部において当該システムの環境に対して開いていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記カバー基板が、前記ベース基板の第2のロック部分と相補的な第1のロック部分を備えることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記カバー基板が、1または複数の機能層によって前記ベース基板から分離されていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、
前記1または複数の機能層が、前記カバー基板と前記ベース基板との間に配置され、前記サンプル処理領域のセットのウェルからのガス交換を提供する多孔質接着フィルム層を含むことを特徴とするシステム。
【請求項17】
標的検出のためのシステムであって、
ベース基板と、
前記基板の広い表面に規定されたサンプル処理領域のセットであって、前記サンプル処理領域のセットの各々が、
各サンプル処理領域の上流端と下流端との間に勾配を付けて配置されたマイクロウェルサブアレイのセットと、
各サンプル処理領域を隣接するサンプル処理領域から分離する境界とを備える、サンプル処理領域のセットと、
結合モードで前記ベース基板と嵌合するように構成されたカバー基板とを備え、前記カバー基板が、前記結合モードで前記ベース基板と前記カバー基板を嵌合させる際に前記サンプル処理領域のセットと整列する通気チャネルのネットワークを含み、前記通気チャネルのネットワークが、前記ベース基板と前記マイクロウェルアセンブリの周囲の環境との間のガス交換を提供することを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、
前記マイクロウェルサブアレイのセットが、上流端に配置された第1の特性寸法を有するウェルを含む最初のマイクロウェルサブアレイと、下流端に配置された第2の特性寸法を有するウェルを含む終端のマイクロウェルサブアレイとを含み、前記第1の特性寸法が前記第2の特性寸法よりも小さいことを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムにおいて、
前記ベース基板および前記カバー基板のうちの少なくとも一方が、液体交換を防止しつつ、前記サンプル処理領域のセットのウェルの内容物と当該システムの環境との間のガス交換を可能にするレベルの多孔性を有する材料で構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項17に記載のシステムにおいて、
前記カバー基板が、エラストマー材料から構成され、前記ベース基板の前記サンプル処理領域のセットに分配されたサンプルから流体のサブボリュームが移動する変形動作モードと、前記カバー基板がベースライン状態に弛緩して前記カバー基板と前記ベース基板のマイクロウェルとの間にポケットを作り出す弛緩動作モードとを提供することを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して食品安全の分野に関し、より具体的には、食品品質の特性評価および食品安全性の向上に適用される標的検出のための新規かつ有用なシステムおよび方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月13日に出願された米国仮出願第63/091,101号の利益を主張するものであり、その全体はこの引用により本明細書に援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
微生物の同定および/または定量は、消耗品(例えば、食品、飲料、サプリメント、局所消耗品など)の品質や安全性に関連する分野を含む多くの分野に関連している。微生物の有無を検出するためにそのような消耗品のサンプルを培養することは、通常時間がかかり、手作業であり、コストの制約を受けるため、それらの欠点や他の欠点を解決するための新しい技術を開発する動機を与えている。
【0004】
食品産業は、原材料の生産、調達および取り扱いから、完成品の製造、流通および消費に至る様々な段階にわたって、汚染物質、病原体および品質指標を含む、食品安全および衛生に関する多数のパラメータの監視するための多くの要件に従うものとなっている。それらの要件の1つの側面として、微生物の食品品質指標(QI)の計数がある。そのようなQIの特性評価は、(例えば、腐敗、保存期間に対する)製品の品質およびプロセスの衛生に関する指標を提供し、病原菌の発生を予測するのに役立つ。食品および環境サンプル中のQIを計数するためのいくつかの方法が存在し、最も広く使用されているのはコロニー計数法(例えば、寒天培地の実装、乾燥試薬を含むすぐに使えるパッドの実装など)、最確数(MPN)手法であるが、そのような手法は、人為的なミス、固有のアッセイのバラツキ、技術的再現性の低さ、結果までの長い時間、自動化の欠如、検出に関連する阻害、計数範囲の制限、低い感度、デジタル読み出しとは対照的なアナログ、高コスト、高い廃棄度、複雑なワークフロー、低いスループットおよび食品マトリクスの不適合のうちの1または複数を起こし易い。さらに、この手法は様々な標的微生物の計数および特性評価のために特殊な試薬を必要とする場合がある。
【0005】
臨床環境では、病原性微生物が、抗菌剤に対して様々な程度の感受性を示す場合がある。このため、臨床医は、病原体の種または株と、様々なクラスの抗菌剤およびその組合せに対する感受性の両方を特定することによって、しばしば恩恵を受けることがある。しかしながら、当該技術分野で使用される微生物感染症の臨床評価方法は、典型的には、抗菌剤感受性を特定するために少なくとも16~48時間を必要とし、上述したものと同様の欠陥を被り易い。
【0006】
そのため、食品の品質を特性評価し、食品の安全性を向上させることに応用できる、標的検出のための新規かつ有用なシステムおよび方法が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、標的検出のためのマイクロウェルアセンブリの実施形態の概略図を示している。
【
図2】
図2は、標的検出のためのマイクロウェルアセンブリの一態様の概略図を示している。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、標的検出のためのマイクロウェルアセンブリの特定の例の概略図を示している。
【
図4】
図4は、標的検出のための、カバーコンポーネントを有するマイクロウェルアセンブリの側面図を示している。
【
図5】
図5は、エラストマーカバーコンポーネントを有するマイクロウェルアセンブリの動作モードの側面図を示している。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、標的検出のためのマイクロウェルアセンブリの通気チャネルの態様を示している。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、標的検出のためのマイクロウェルアセンブリの多孔質フィルム層の態様を示している。
【
図8】
図8は、ベース基板および/またはカバー基板が多孔質材料で構成されているマイクロウェルアセンブリの態様を示している。
【
図9】
図9は、マイクロウェルアセンブリのユニットを使用してサンプルの処理を自動化するためのプラットフォームの一実施形態を示している。
【
図10】
図10Aは、標的検出のための方法の一実施形態のフローチャートを示している。
図10Bは、標的検出のための方法の一態様のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好ましい実施形態の以下の説明は、本発明をそれらの好ましい実施形態に限定することを意図するものではなく、当業者が本発明を製造および使用できるようにすることを意図するものである。
【0009】
1.利点
本発明は、従来のシステムおよび方法に勝るいくつかの利点を与えることができる。
【0010】
特に、本発明は、分配に関連する手動ステップの最小化に関して、合理的、効率的かつ/または自動的な方法で、サンプル分配(例えば、MPNアッセイのため)を伴う標的検出アッセイのための革新的なソリューションを提供するという利点を与えることができる。また、本発明は、様々な産業においてコスト的に不利にならないスループットの高い方法で複数のサンプルを並行して処理することができるような、サンプル処理消耗品の革新的な設計を含む。そのような設計は、任意選択的には、以下でより詳細に説明するように、自動化されたサンプル塗布および分配、制御された液体拡散、制御されたサンプル封じ込め、可変体積サンプル分配、湿度制御、蒸発防止、および/またはクロストーク防止を提供するように機能する構造および機能を含む。
【0011】
また、本発明は、人為的ミス、ワークフローの複雑さ、固有のアッセイのバラツキ、および標的の特性評価および計数に必要な時間を大幅に低減する形で、標的検出のためのシステムおよび方法を提供するという利点も与える。
【0012】
また、本発明は、処理ステップを自動化および/または簡素化するという利点も与え、いくつかの態様では、MPNアッセイのためのサンプル(例えば、体積1mL以下のサンプル、体積1mLを超えるサンプル)を自動的に分配することができる。少量を効率的に処理することにより、本発明は、アッセイ操作に関連する無駄を大幅に削減し、実行の成功を最適化し、実行間および/または異なるユーザ間の一貫性を最適化することもできる。
【0013】
また、実施例において、本発明は、少量を実施して、発色基質などの変換された酵素基質が検出閾値に到達するのに必要な時間を大幅に短縮し、それによって結果までの時間および検査所要時間を大幅に短縮するという利点も与えることができる。また、サンプルを迅速な方法で小さなパーティションに分割することにより、計数範囲が広がり、MPN推定の精度が向上する。
【0014】
また、本発明は、変換された酵素基質の生成および/または比色および/または蛍光(例えば、マルチチャネル蛍光)法による検出に関連する阻害問題を緩和する利点も与える。
【0015】
また、本発明の態様は、微生物を成長させるための構造および環境を提供するとともに、費用対効果および時間効率の高い方法で微生物の成長および/または数を迅速に分析するためのキット、組成物、方法および装置を提供する利点も与える。
【0016】
さらに、本発明は、微生物の増殖および検出のための閉鎖システムを提供し、潜在的に有害な病原体による実験室汚染を防止することができる。
【0017】
さらに、ソフトウェアおよびワークフローの改善により、システムおよび/または方法は、ユーザが実行する手動操作の数を最小限に抑え、円滑な操作およびサンプル処理を保証するために関連するシステムステータスレポートを提供することができる。
【0018】
追加的または代替的には、本システムおよび/または方法は、他の任意の適切な利点をもたらすことができる。
【0019】
2.マイクロウェルプレート
図1Aおよび
図1Bに示すように、標的検出のためのマイクロウェルアセンブリ100の一実施形態は、ベース基板110と、基板110の広い表面に規定されるサンプル処理領域のセット(サンプル処理領域120を含む)を含み、サンプル処理領域のセットの各々は、サンプル処理領域120の上流端10と下流端90との間に勾配を付けて配置されるマイクロウェルサブアレイ130のセットと、サンプル処理領域120を隣接するサンプル処理領域と分離する境界190とを含む。各サンプル処理領域に対するマイクロウェルサブアレイの勾配に関連して、第1の特性寸法(例えば、最小の特性寸法)を有するウェルを含む最初のマイクロウェルサブアレイ130を上流端10に配置することができ、第2の特性寸法(例えば、最大の特性寸法)を有するウェルを含む終端のマイクロウェルサブアレイ170をサンプル処理領域120の下流端90に配置することができ、以下でより詳細に記載する他の態様を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、
図1Bに示すように、マイクロウェルアセンブリ100が、結合モードでベース基板110と嵌合するように構成されたカバー基板210を含むことができ、カバー基板210が、(結合モードで)ベース基板110を向く通気チャネルのネットワーク220を含み、通気チャネルのネットワークが、ベース基板110とカバー基板210を嵌合させる際にサンプル処理領域のセットと整列し、ベース基板110と環境50(マイクロウェルアセンブリの周囲の環境、ベース基板110とカバー基板210との間の局所的な環境など)との間のガス交換を提供する。カバー基板210は、以下でより詳細に説明するように、1または複数の機能層によってベース基板110から分離することもできる。
【0021】
マイクロウェルアセンブリ100は、最確数(MPN)決定における特定の用途で、低コストで迅速にサンプルを分配および処理するための機構を提供するように機能する。特に、マイクロウェルアセンブリは、サンプルボリュームを受け入れ、それを(例えば、最小限のユーザ手動介入で)マイクロウェルの複数のサブアレイにわたって分配することができ、各サブアレイは特性寸法を有し、それにより、(例えば、食品安全/食品品質のアプリケーション、他のアプリケーションのために)並行して複数のサンプルにわたる連続希釈試験の迅速な操作および実行を容易にして、サンプル中の1または複数の標的微生物の濃度を測定することができる。マイクロウェルアセンブリ100は、マイクロウェルの内容物および/またはマイクロウェルアセンブリ100を取り巻く環境との間のガス交換を可能にする一方で、液体交換を防止し、それにより湿度制御を提供するとともに、蒸発を防止することができる。また、マイクロウェルアセンブリ100は、処理中の異なるサンプル間の液体、病原体および/または変換基質のクロストークを防止することもできる。マイクロウェルアセンブリ100の追加の機能は、マイクロウェルアセンブリ110の個々の要素に関して、以下でさらに詳細に説明する。
【0022】
2.1 ベース基板およびマイクロウェルサブアレイを有するサンプル処理領域
2.1.1 ベース基板
図1Aに示すように、マイクロウェルアセンブリ100は、以下にさらに詳細に説明するサンプル処理領域のセットを支持するベース基板110を含む。すなわち、ベース基板110は、サンプルのセットを支持するように機能するとともに、サンプルのセット中の微生物の存在を検出し、濃度を推定し、かつ/または特性評価するためのプロセスを容易にするように機能する。いくつかの態様では、ベース基板110が、マイクロウェルの内容物とマイクロウェルアセンブリ100を取り囲む環境との間のガス交換を可能にするようにも機能する一方で、液体交換を(例えば、構造的特徴および/または材料特性により)防止し、それによって湿度制御を提供し、蒸発を防止し、処理中の異なるサンプル間のクロストークを防止することができる。
【0023】
材料組成において、ベース基板110は、ポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンコポリマー、ポリカーボネート)、シリコン由来材料、ガラス、金属材料、セラミック材料、天然材料、合成材料、および/または任意の適切な材料のうちの1または複数で構成することができる。特に、材料の選択は、製造上の考慮事項、サンプル処理に望ましい表面特性、光学特性、バルク特性(例えば、多孔性に関して、密度に関してなど)、表面特性、熱特性、機械的特性および/または他の任意の適切な特性のうちの1または複数に基づいて行うことができる。さらに、ベース基板110のすべての部分は、1または複数の同じ材料、異なる材料(例えば、ベース基板110の各部分が異なる設計制約を有する場合)、および/または材料の任意の組合せを用いて構築することができる。さらに、ベース基板110は、単一体、または(例えば、製造中に)互いに結合される別個の部分を有するベース基板110であってもよい。
【0024】
光学特性に関連して、ベース基板110の1または複数の材料が、任意の程度の透明性、反射率または他の光学特性を有することができる。例えば、材料は、(例えば、ベース基板110の下面から、ベース基板110の上面からなど)光学分析、調査または観察を可能にするために透明であり得るが、不透明、透明、半透明および/または任意の適切な不透明度であってもよい。例えば、多孔性などのバルク特性に関連して(例えば、ガス交換機能を提供するために)高度の多孔性が望まれる場合、ベース基板110は透明でなくてもよい。さらに、材料および/または構成の態様は、ベース基板110の個々のマイクロウェル内での検出可能なシグナルの封じ込め(例えば、蛍光の封じ込めに関して、他の変換基質の封じ込めに関して)を促進するように構成することができる。さらに、基板の材料の態様は、サンプル処理材料(例えば、蛍光基質、比色基質、他の変換基質、サンプルなど)の吸収を防止するように構成および/または処理することができる。
【0025】
バルク特性に関連して、ベース基板110の1または複数の材料は、ベース基板110を介して、マイクロウェルの内容物と環境(例えば、システムの環境)との間のガス交換を可能にする一方で、液体交換を防止し、それにより湿度制御を提供し、蒸発を防止し、処理中の異なるサンプル間のクロストークを防止する多孔性のレベルを有するように構成することができる。追加的または代替的には、バルク特性に関連して、ベース基板110の1または複数の材料は、微生物の生存能力を維持するのに必要なサンプル処理および/またはインキュベーション目的に適した密度のレベルまたは他のバルク特性を有するように構成することができる。実施態様では、ベース基板110は、ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)など)、セラミック、または適切な侵入等級(例えば、IPスケールに従って、別の評価スケールに従って)または粒子保持特性(例えば、1ミクロン未満の粒子の定格保持、1ミクロン以上の粒子の定格保持)を有する別の適切な材料(例えば、天然材料、合成材料)から構成されるか、または他の方法で取り入れることができる。一例では、ベース基板110が、IP等級(例えば、IP65~69)を有するPTFEベースの材料で構成することができるが、ベース基板110は、代替的に、マイクロウェルアセンブリ100の他の要素(例えば、ベント、マイクロスケールチャネル、ナノスケールチャネルなど)によってガス交換を可能にする非孔質材料で構成することができる。
【0026】
表面特性に関連して、ベース基板110の1または複数の材料は、例えば、接触角および濡れ性によって決まる所望の親水性/疎水性特性(例えば、高度の親水性)を有するように構成することができる。他の電気的および物理的特性に関連して、ベース基板110の1または複数の材料は、所望の電荷(例えば、使用されるサンプル流体および/またはサンプル処理流体の特性に関連して)、電界特性、導電性、抵抗および/または他の任意の適切な表面または物理的特性を有するように構成することができる。追加的または代替的には、ベース基板110の1または複数の材料は、好ましくは、サンプル処理中に使用される流体および微生物と反応しないように構成される。追加的または代替的には、ベース基板110の1または複数の材料は、微生物の生存率および/または検出可能な酵素基質の変換を妨げる阻害剤を吸収するように構成される。追加的または代替的には、受け入れる流体に曝されるベース基板110の表面が、所望の表面仕上げを有することができる。
【0027】
熱特性に関連して、ベース基板110の1または複数の材料は、熱伝達および/または熱保持特性に関して、所望の熱特性を有するように構成することができる。特に、ベース基板110は、(例えば、サンプルインキュベーションステップに適切なように)所望の熱伝導率および/または熱容量特性を有するように構成することができる。一態様では、ベース基板110は、ベース基板110に接触する流体にまたは流体から熱を効率的に伝達することができるような熱特性を有するように構成することができる。例えば、ベース基板110が加熱または冷却要素に結合される態様では、ベース基板110は、インキュベーション中のマイクロウェルの内容物への熱の伝達および/または流体からの熱の伝達を促進するように構成することができる。しかしながら、ベース基板110は、使用用途に基づいて他の適切な熱特性を有することができる。例えば、ベース基板110は、材料が動作中に接触する流体の温度に大きな影響を与えないように、低い熱伝導率を有するように(例えば、断熱材料として)構成することができる。
【0028】
機械的特性に関連して、ベース基板110の1または複数の材料は、剛性、強度、弾性挙動、硬度および他の特性のうちの1または複数を含む、所望の機械的特性を有するように構成することができる。追加的または代替的には、ベース基板は、自動プレートアームロボットサブシステムと適合するように構成することができる。
【0029】
寸法に関して、ベース基板110は、SBSマイクロウェルプレートの形式(例えば、127.76mm×85.48mmのフットプリント)を有することができるが、ベース基板110は、代替的に他の適切な寸法を有することができる。マイクロウェルアセンブリのプレートは、追加的または代替的には、パッケージングまたはサンプル実行中の使用のために容易に積み重ねられるように設計することができる。
【0030】
追加的または代替的には、ベース基板110は、(例えば、オートクレーブを用いて、他の滅菌方法などを用いて)滅菌可能であるように構成することができる。
【0031】
2.1.2 マイクロウェルサブアレイを有するサンプル処理領域
図1Aに示すように、ベース基板110は、(図示のサンプル処理領域120を含む)サンプル処理領域のセットを規定し、サンプル処理領域のセットの各々は、サンプル処理領域120の上流端10と下流端90の間に勾配(例えば、容積、サイズ、表面積、フットプリント、断面積など)を付けて配置されたマイクロウェルサブアレイ130のセットを含む。サンプル処理領域のセットは、1または複数の標的(例えば、食品の安全性および/または食品の品質に関連する標的)の検出のための、各サンプルに対する連続希釈試験の操作を可能にするために、サンプルのセットを受け入れて、サンプルのセットをマイクロウェルサブアレイのセットにわたって分配するのを容易にするよう機能する。いくつかの態様では、サンプル処理領域のセットは、サンプル処理の効率を高めるために、サンプルを受け入れる前に乾燥したサンプル処理材料(例えば、媒体、蛍光基質、比色基質、他の染料など)を保存するように構成することができる。追加的または代替的には、他の態様では、サンプル処理領域のセットが、他の適切なコンポーネント(例えば、予めパッケージ化されたコンポーネント)を含むことができる。いくつかの態様では、サンプル処理領域のセットが、親水性であるように、水和されるように、処理されるように、かつ/または非特異的吸収剤でブロックされるように構成することができる。
【0032】
実施態様では、サンプル処理領域のセットを、ベース基板110の広い表面に跨るレーンのセットとして配置することができ、各領域が別個のサンプルを受け入れるように構成され、サンプルを高スループットで並行して処理することができるようになっている。ベース基板110の広い表面が長軸および短軸を有する実施形態では、サンプル処理領域のセットを、(例えば、試験用のサンプルの数および構成および/または所望のマイクロウェルサイズの数との関連で)長軸に平行または短軸に平行に配置することができる。しかしながら、サンプル処理領域のセットは、代替的に、別の適切な軸に対して配置することができる。さらに、他の態様では、サンプル処理領域のセットの各々は、長手方向に規定されたマイクロウェルサブアレイを有するレーンとして構成されない場合がある。例えば、
図2に示す別の態様では、サンプル処理領域のセットの各々を、ゾーン(例えば、円形ゾーン、楕円体ゾーン、多角形ゾーン、非晶質ゾーンなど)として規定することができ、マイクロウェルサブアレイを、別の適切な軸(例えば、半径方向の軸、円周方向の軸など)に沿って、または別の適切な座標系内に配置することができる。
【0033】
実施態様では、マイクロウェルアセンブリ100に含まれるサンプル処理領域の数を、各マイクロウェルサブアレイに望まれる特徴的なマイクロウェル寸法および個々のマイクロウェルの数に関連して、(上記で与えられた例を有する)ベース基板110の寸法によって調節することができ、マイクロウェル寸法および実装されるマイクロウェルの数は、MPN決定のために、領域ごとに受け入れられるサンプル量に関連して連続希釈試験の操作のために最適化することができる。実施例(そのうちの2つが
図3Aおよび
図3Bに示されている)では、サンプル処理領域のセットが、2~7個のサンプル処理領域を含むことができる。しかしながら、他の態様では、サンプル処理領域のセットが、別の適切な数のサンプル処理領域(例えば、2未満のサンプル処理領域、7を超えるサンプル処理領域)を含むことができる。
【0034】
上で簡単に説明したように、サンプル処理領域のセットの各々は、サンプル処理領域120の上流端10と下流端90との間に勾配を付けて配置されたマイクロウェルサブアレイ130のセットと、サンプル処理領域120を隣接するサンプル処理領域から分離する境界190とを含むことができる。マイクロウェルサブアレイ130のセットは、処理される各サンプルについて、サンプルからの標的検出のためのMPNの決定および/または他のアッセイを実行するための既知の容積分布を有するパーティションのセットを提供するように機能する。したがって、マイクロウェルサブアレイのセットの各々は、適切な数の希釈および希釈あたりのパーティションを提供して、適切な信頼限界で最小および最大検出可能MPN値を生成するために、パーティションの各々について異なる特性容積を有するパーティション(例えば、マイクロウェル)を有することができる。MPNの決定および信頼限界の側面は、以下でさらに説明する。
【0035】
実施態様では、ベース基板110のサンプル処理領域が、2~10のマイクロウェルサブアレイを含むことができ、マイクロウェルサブアレイのセットの各々が、10~100,000のパーティションを有する。各サンプル処理領域は、適切な信頼限界で、MPNアッセイに対する5~3,000,000の最小範囲および最大範囲のMPN値を提供するために、0.01mL~10mLのサンプルを(総容積を提供することによって)受け入れることができる。しかしながら、サンプル処理領域は、サンプル量の他のサイズ(例えば、0.01mL未満、10mL超)を受け入れて、別の適切な範囲内のMPNの決定を可能にするために、他の適切な数のマイクロウェルサブアレイ(例えば、2未満のサブアレイ、10を超えるサブアレイ)を含むことができ、各々が他の適切な数のパーティション(例えば、10未満のパーティション、100,000を超えるパーティション)を有することができる。
【0036】
特に、マイクロウェルサブアレイの数/特性容積、およびマイクロウェルサブアレイあたりのパーティションの数は、以下の式[1]におけるλの解を求めることに関連して構成することができる。ここで、exp(x)はe
xであり、Kは希釈数を示し、g
jはj番目の希釈における陽性(または成長)チューブの数を示し、m
jはj番目の希釈において各チューブに入れられた元のサンプルの量を示し、t
jはj番目の希釈におけるチューブの数を示している。
【0037】
図3Aおよび
図3Bに示される具体例では、サンプル処理領域のセットの各々が、サンプル処理領域の長手方向軸に沿って勾配を付けて分布する3つのマイクロウェルサブアレイを有することができ、第1のマイクロウェルサブアレイ121が、パーティションあたり0.03マイクロリットルの特性容積および300のマイクロウェルパーティションを有する。
図3Bに示すように、第1のマイクロウェルサブアレイ121の各マイクロウェルは、0.35mmの幅、0.25mmの高さを有し、各マイクロウェルを隣接するマイクロウェルから分離する0.2mm幅のリブを有することができる。また、サンプル処理領域は、第2のマイクロウェルサブアレイ122も含むことができ、この第2のマイクロウェルサブアレイが、パーティションあたり0.3マイクロリットルの特性容積および300のマイクロウェルパーティションを有し、
図3Bに示すように、第2のマイクロウェルサブアレイ122の各マイクロウェルが、0.70mmの幅、0.61mmの高さを有し、各マイクロウェルを隣接するマイクロウェルから分離する0.35mmの幅のリブを有することができる。また、サンプル処理領域は、第3のマイクロウェルサブアレイ123も含むことができ、この第3のマイクロウェルサブアレイが、パーティションあたり3マイクロリットルの特性容積および300のマイクロウェルパーティションを有し、
図3Bに示すように、第3のマイクロウェルサブアレイ123の各マイクロウェルが、1.45mmの幅、1.43mmの高さを有し、各マイクロウェルを隣接するマイクロウェルから分離する0.70mmの幅のリブを有することができる。マイクロウェルは、マイクロウェルサブアレイにわたるサンプル流体の分配を促進するために、適切なピッチを有することができる。このような構成により、各サンプル処理領域は、サンプルあたりのMPNの決定を可能にするために、約1mLのサンプルを処理することができる。
【0038】
実施態様では、各マイクロウェルの断面が、多角形(例えば、六角形、長方形など)または非多角形(例えば、円形、楕円形、非晶質など)の断面(例えば、ベース基板110の広い表面と平行な平面に沿った断面)であり得る。追加的または代替的には、各マイクロウェルの断面が、基板110の広い表面から離れる方向に沿って、各マイクロウェルの基部に向かって先細りにすることができる。このため、各ウェルは、ベース基板110の広い表面に開口部を有することができ、それによりサンプルのサブボリュームがベース基板110の広い表面に垂直な方向からマイクロウェルに入ることができる。しかしながら、マイクロウェルの1または複数の開口部は、別の適切な方法で構成することができる。さらに、マイクロウェルは、充填構成(例えば、六角形の最密充填、四角形の最密充填、他の最密充填の構成など)または非充填構成で配置することができる。例えば、マイクロウェルサブアレイのセットの最初のサブアレイのウェルは、第1の充填構成(例えば、六角形の最密充填、四角形の最密充填、他の最密充填の構成など)で配置することができ、マイクロウェルサブアレイのセットの終端のサブアレイのウェルは、第2の充填構成(例えば、六角形の最密充填、四角形の最密充填、他の最密充填の構成など)で配置することができる。
【0039】
各サンプル処理領域に対するマイクロウェルサブアレイの勾配に関連して、第1の特性寸法(例えば、最小の特性寸法)を有するウェルを含む最初のマイクロウェルサブアレイ130は、サンプル処理領域の上流端10に配置することができ、第2の特性寸法(例えば、最大の特性寸法)を有するウェルを含む終端のマイクロウェルサブアレイ170は、サンプル処理領域120の下流端90に配置することができる。このため、マイクロウェルサブアレイは、上流から下流の方向に、より大きな特性マイクロウェル寸法を有することができる。代替的には、マイクロウェルサブアレイは、上流から下流の方向に、より小さな特性マイクロウェル寸法を有することができる(例えば、最初のマイクロウェルサブアレイ130が最大の特性寸法を有するウェルを含み、終端のサブアレイ170が最小の特性寸法を有するウェルを含むことができる)。さらに代替的には、マイクロウェルアレイは、別の適切な方法で(例えば、別のマイクロウェル特性に関連して、別の方向軸に沿って)勾配または非勾配で編成され得る。さらに代替的には、各サンプル処理領域は、他の態様で(例えば、マイクロウェルの勾配にわたって段階的な増分で)構成することができる。例えば、ウェルの寸法は、上流から下流への方向への勾配ではなく、横方向(例えば、上流から下流への方向と直交する方向)の勾配を有するように編成することができる。
【0040】
図3Aおよび
図3Bに示すように、ベース基板110は、各サンプル処理領域を隣接するサンプル処理領域から分離する境界のセット(
図1Aに示す境界190を含む)を含むことができ、それによってサンプルのクロストークを防止するように機能する。境界190は、凹部として(例えば、堀として、周縁を形成する凹状のチャネルのように)、または凸部として構成することができ、あるいは交互に凹部および凸部を含むことができる。また、境界190は、溢れたサンプルの蒸発または吸収を促進するように構成された領域として構成することもでき、それにより、領域にサンプルが入る際に、サンプルは蒸発し、かつ/または境界190の壁に吸収される。境界190がサンプル処理領域の周囲の凹状の外周として規定される態様では、境界190は、サンプル処理中に溢れたサンプルが受け入れられる堀として機能することができる。代替的には、境界190は、別の適切な目的を果たすことができる。
【0041】
追加的または代替的には、境界190は、サンプル処理領域から溢れ出た物質を受け入れて吸収するように構成された吸収性材料で構成することができる。
【0042】
追加的または代替的には、1または複数の境界は、サンプル処理領域から離れる1または複数の出口(例えば、廃棄チャンバへの出口)を含むことができ、それにより、溢れ出た物質をサンプル処理領域から離すように送達して、サンプル処理領域に再び入るのを防止することができる。
【0043】
さらに、ベース基板110は物理的に連続することができるが、実施態様では、ベース基板110は、(例えば、ミシン目、可逆的にロックするコンポーネントなどによって)隣接するサンプル処理領域間で分離できるように構成することができる。しかしながら、ベース基板110は、代替的に、分離不可能であるように構成することができる。
【0044】
サンプル処理領域のマイクロウェルの実施形態、実施態様および実施例を上述したが、マイクロウェルおよび/またはサンプル処理領域の態様は、2018年7月27日に出願された米国出願第16/048,104号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,057号、2017年9月29日に出願された米国出願第15/720,194号、2017年2月13日に出願された米国出願第15/430,833号、2017年11月22日に出願された米国出願第15/821,329号、2017年10月12日に出願された米国出願第15/782,270号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,240号、2017年11月16日に出願された米国出願第15/815,532号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,370号、2019年9月9日に出願された米国出願第16/564,375号、並びに、2020年3月12日に出願された米国出願第16/816,817号のうちの1または複数から適合させることができ、それら出願は、この引用によりその全体がそれぞれ援用されるものとする。
【0045】
2.2 カバー基板およびオプション要素
2.2.1 カバー基板
図1Bおよび
図4に示すように、いくつかの実施形態では、マイクロウェルアセンブリ100が、ベース基板110と嵌合するように構成されたカバー基板210を含むことができる。カバー基板210は、環境(例えば、マイクロウェルアセンブリを取り囲む環境、ベース基板110とカバー基板210との間の局所環境など)とのガス交換を可能にしながら、ベース基板110で処理および/またはインキュベートされるサンプルを汚染から保護するように機能する。
【0046】
材料組成に関して、カバー基板210は、ポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンコポリマー、ポリカーボネート、シリコーン、ポリジメチルシロキサン)、シリコン由来材料、ガラス、金属材料、セラミック材料、天然材料、エラストマー材料、多孔質材料、合成材料、および/または任意の適切な材料のうちの1または複数から構成することができる。特に、材料の選択は、製造上の考慮事項、サンプル処理に望ましい表面特性、光学特性、バルク特性(例えば、多孔性に関して、密度に関してなど)、表面特性、熱特性、機械的特性および/または他の任意の適切な特性のうちの1または複数に基づいて行うことができる。さらに、カバー基板210のすべての部分は、同じ1または複数の材料、異なる材料(例えば、カバー基板210の各部分が異なる設計制約を有する場合)、および/または材料の任意の組合せを使用して構築することができる。さらに、ベース基板110は、単一体、または(例えば、製造中に)互いに結合される別個の部分を有するベース基板110であってもよい。
【0047】
光学特性に関連して、カバー基板210の1または複数の材料が、任意の程度の透明性、弾性、反射率または他の光学特性を有することができる。例えば、材料は、(例えば、カバー基板210の上面などから)光学分析、調査または観察を可能にするために透明であり得るが、不透明、透明、半透明および/または任意の適切な不透明度であってもよい。例えば、多孔性などのバルク特性に関連して(例えば、ガス交換機能を提供するために)高度の多孔性が望まれる場合、カバー基板210は透明でなくてもよい。
【0048】
バルク特性に関連して、カバー基板210の1または複数の材料は、処理中のサンプルと環境との間のガス交換を可能にする一方で、液体交換を防止し、それにより湿度制御を提供し、蒸発を防止する多孔性のレベルを有するように構成することができる。追加的または代替的には、バルク特性に関連して、カバー基板210の1または複数の材料は、サンプル処理および/またはインキュベーション目的に適した密度のレベルまたは他のバルク特性を有するように構成することができる。実施態様では、カバー基板210は、ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)など)、セラミック、または適切な侵入等級(例えば、IPスケールに従って、別の評価スケールに従って)または粒子保持特性(例えば、1ミクロン未満の粒子の定格保持、1ミクロン以上の粒子の定格保持)を有する別の適切な材料(例えば、天然材料、合成材料)から構成されるか、または他の方法で取り入れることができる。一例では、カバー基板210が、IP等級(例えば、IP65~69)を有するPTFEベースの材料で構成することができるが、カバー基板210は、代替的には、マイクロウェルアセンブリ100の他の要素によってガス交換を可能にする非孔質材料で構成することができる。追加的または代替的には、カバー基板210は、アッセイの終了時に環境の汚染を防止するために、多孔質状態から非多孔質状態に変換され得る。
【0049】
表面特性に関連して、ベース基板110の1または複数の材料は、例えば、接触角および濡れ性によって決まる所望の親水性/疎水性特性(例えば、高度の親水性)を有するように構成することができる。他の電気的および物理的特性に関連して、カバー基板210の1または複数の材料は、所望の電荷(例えば、使用されるサンプル流体および/またはサンプル処理流体の特性に関連して)、電界特性、導電性、抵抗および/または他の任意の適切な表面または物理的特性を有するように構成することができる。追加的または代替的には、カバー基板210の1または複数の材料は、好ましくは、サンプル処理中に使用される流体と反応しないように構成される。
【0050】
熱特性に関連して、カバー基板210の1または複数の材料は、熱伝達および/または熱保持特性に関して、所望の熱特性を有するように構成することができる。特に、カバー基板210は、(例えば、サンプルインキュベーションステップに適切なように)所望の熱伝導率および/または熱容量特性を有するように構成することができる。一態様では、カバー基板210は、サンプル処理および/またはインキュベーション中にマイクロウェルアセンブリ100へ熱を、またはマイクロウェルアセンブリから熱を効率的に伝達することができるような熱特性を有するように構成することができる。
【0051】
機械的特性に関連して、ベース基板110の1または複数の材料は、剛性、強度、弾性挙動、硬度および他の特性のうちの1または複数を含む、所望の機械的特性を有するように構成することができる。例えば、
図5に示すように、カバー基板210の実施態様は、弾性的に変形することができるエラストマー材料で構成することができ、エラストマーカバー基板210の可逆的変形は、サンプルハンドリングを容易にする動作モードを可能にすることができる。例えば、
図5に示すように、カバー基板210の弾性特性は、サブボリューム(例えば、流体の上部)がサンプル処理領域の各マイクロウェルから移動する変形動作モード211と、カバー基板がベースライン状態に弛緩してカバー基板210とベース基板のマイクロウェルとの間にポケット(例えば、エアポケット)を形成する弛緩動作モード212とを提供することができる。そのような動作モードは、湿度制御、蒸発防止、および(例えば、サンプル処理領域のセットへのサンプル分配後に)ベース基板110のマイクロウェル間のクロストークの防止を提供しながら、マイクロウェルアセンブリ100が、サンプルを処理することをさらに可能にすることができる。しかしながら、カバー基板210は、動作モードを提供するために、他の適切な機械的特性を有することができる。
【0052】
カバー基板210がエラストマーである実施例では、カバー基板210を、エラストマー(例えば、ポリエーテル/ポリアミド材料、ポリウレタン材料、ポリエステル材料など)で構成することができ、エラストマーは、環境とのガス交換を提供するために多孔質であってもよい。しかしながら、カバー基板210は、他の適切な材料(例えば、微孔性ポリカーボネート、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維、微孔性ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、再生セルロース、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、微孔性ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、リプロービングチャージドナイロンなど)で構成することができる。
【0053】
図6Aおよび
図6Bに示すように、カバー基板210は、ベース基板110を向く(例えば、カバー基板210と組み立てられたときにベース基板110に対向する)通気チャネル220のネットワークを規定する。通気チャネル220は、好ましくは、ベース基板110をカバー基板210と嵌合する際に、サンプル処理領域のセットと整列し、それによって、ベース基板110の内容物とマイクロウェルアセンブリ100を取り囲む環境50との間のガス交換を提供する。
【0054】
図6Aの断面画像に示すように、通気チャネル220は、各サンプル処理領域のマイクロウェルサブアレイと環境(例えば、インキュベーション環境)との間のガス交換を可能にするために、カバー基板210の全体にわたって(例えば、1または複数の軸に沿って)延在することができる。
図6Bに示す実施例では、チャネルの第1のサブセット221は、第1の軸に平行にカバー基板210に延在し、チャネルの第2のサブセット222は、第2の軸に平行にカバー基板210に延在することができ、チャネルの第1のサブセット221およびチャネルの第2のサブセット220が互いに交差する(例えば、互いに直交する、かつ/または互いに流体連通する)ようになっている。しかしながら、チャネルの個々のサブセットは、別の適切な方法で配置することができる。
図6Aおよび
図6Bに示す実施例では、チャネル220のネットワークが、カバー基板210の横/周縁で環境に対して開かれているが、他の態様では、チャネル220のネットワークが、カバー基板210の別の適切な部分で(例えば、カバー基板210の厚さ部分に入り別の表面で開くことによって)環境に開くことができる。通気チャネル220は、好ましくは、サンプルからの流体の侵入を防止するために、疎水性であり、小さな毛細管寸法(例えば、<200ミクロン)を有する。代替的には、通気チャネル220は、別の程度の疎水性を有することができ、かつ/または200ミクロン以上の毛細管寸法を有することができる。追加的または代替的には、通気チャネルの寸法は、より小さくすることができる(例えば、特徴的なマイクロウェル寸法の断面の50%未満および/または実質的に25%未満とすることができる)。しかしながら、通気チャネル220は、特徴的なマイクロウェル寸法に対して、他の適切な寸法を有することができる。
【0055】
アセンブリを形成する際に、カバー基板210は、インターロック機構(例えば、ベース基板110における第2のロック部分と相補的なカバー基板210における第1のロック部分)を含むことによって、ベース基板110と嵌合することができる。例えば、
図4に示すように、カバー基板は、ベース基板110の表面(例えば、底面、外周面)に係合するリップまたはタブのセットを含み、それによってベース基板110とカバー基板210との間の結合を提供することができる。他の態様では、結合を、別の適切な機構(例えば、圧入機構、スナップ嵌め機構、磁気機構、接着機構、重力機構など)で提供することができる。ベース基板110とカバー基板210との間の結合は、可逆的または永続的なものとすることができる。さらに他の態様では、カバー基板210が、ベース基板110と結合するように構成されない場合がある。
【0056】
さらに他の態様では、カバー基板210が、サンプル処理領域のセットを覆う1または複数のフィルム(例えば、接着フィルム、多孔質フィルム、多孔質接着フィルム)の形態を有することができる。例えば、そのような一態様では、カバー基板210が、サンプル処理領域のセットまたは処理されるサンプルの数に対応するフィルム(例えば、多孔質接着フィルム)のセットを含むことができ、フィルムのセットは、サンプル分配後にベース基板に貼付することができる。フィルムのセットはさらに、実行されている様々なアッセイおよび/または以下でより詳細に説明する動作モードに従って、必要に応じて(例えば、記載の自動プラットフォーム300の態様によって、ユーザなどによって)ベース基板110から除去することができる。
【0057】
2.2.2 オプション要素
カバー基板210は、1または複数の機能層によってベース基板110から分離することもできる。例えば、
図7Aに示すように、カバー基板210は、フィルム層225によってベース基板110から分離することができ、それにより、カバー基板210とベース基板110との間の結合を容易にし、隣接するサンプル処理領域間に更なる分離を提供してサンプルのクロストークを防止し、マイクロウェルのシーリング機能を実行し、ベース基板110のサンプルと環境との間のガス交換を可能にすることができる。より詳細には、フィルム層225および/またはカバー基板220は、製造コストがかからないようにしながら、蛍光基質および/または発色基質または他のサンプル処理材料/試薬が隣接するマイクロウェルパーティションを汚染するのを防ぎ、検出のために標的(例えば、細菌、酵母、カビなど)の成長を促進し、ガス交換を可能にし、かつ蒸発を防ぐ機能を果たすことができる。
【0058】
フィルム層225は、カバー基板210とベース基板110との間に全体が位置することができる。代替的には、
図7Bに示すように、カバー基板210は、ベース基板110の周りに境界を形成するように構成することができ、フィルム層225は、ベース基板110をカバー基板210に結合させることができる一方で、サンプル処理領域と相互作用してガス交換を提供することができる。実施例では、フィルム層225を、環境とのガス交換を提供するために、多孔質ポリマー(例えば、ポリエーテル/ポリアミド材料、ポリウレタン材料、ポリエステル材料、ナイロン材料など)で構成することができる。しかしながら、フィルム層225は、他の適切な材料で構成することができる。例えば、いくつかの用途では、フィルム層225は、検出のためにサンプル処理基質(例えば、蛍光基質、比色基質)を結合するヒドロゲル材料によって置換または補足することができ、ヒドロゲル材料は、流動状態でサンプル処理領域のセットに送達され、インキュベーション中にゾル状態に遷移する。フィルム層225は、連続的であるか、またはサンプル処理領域のセットまたは処理されるサンプルの数に対応する数のサブ領域に分割することができる。
【0059】
さらに、マイクロウェルアセンブリは、システム100の設計機能および/または使用用途に関連して、複数の膜を含むことができる。
【0060】
多孔質ベース基板110材料および/またはカバー基板210材料の実施態様を説明してきたが、ベース基板110およびカバー基板210のうちの1または複数は、
図8に示すように、多孔質でなくてもよく、また、環境とのガス交換を促進する材料で構成されていなくてもよい。
【0061】
さらに、マイクロウェルアセンブリ100の実施態様は、追加的または代替的には、環境とのガス交換を促進し、サンプルのクロストークを防止しながら、サンプル処理および/またはサンプルインキュベーションを促進する他の適切な要素(例えば、油層、他の分割材料層、浮力のある疎水性粒子、浮力のある自己重合材料、生体膜、細胞層、生体コーティング、マイクロウェル表面に含有または結合されるサンプル処理基質、構成媒体、希釈媒体、凍結乾燥状態で提供される媒体など)を含むか、そのような要素を支持することができる。
【0062】
3. プラットフォーム
図9に示すように、自動サンプル処理のため(例えば、上述したマイクロウェルアセンブリ100のユニットを使用してサンプルを処理するため)のプラットフォーム300の一実施形態は、サンプル処理要素のセットを支持して位置決めするデッキ310と、デッキ310によって支持されたサンプル処理要素のセットと相互作用するためのツールを作動させるガントリ370と、種々の処理サブシステムおよび処理サブシステムと通信する制御サブシステムを支持するベース380とを含み、制御サブシステムは、デッキ310、サンプル処理要素のセットおよびガントリ370の状態を制御して、種々の動作モード間でプラットフォーム300を遷移する。実施例では、プラットフォーム300は、高スループットでサンプルをロードする機能(例えば、60秒/サンプル未満のサンプルのロード、8時間で600サンプルを超える処理など)および/または高スループットでサンプルを読み取る機能(例えば、10秒/サンプルよりも高速のサンプル読み取り、1時間あたり500サンプルを超える読み取りなど)を提供することができる。様々なワークフローを提供する動作モードの実施形態、実施態様および実施例は、後述するセクション4でさらに詳細に説明する。
【0063】
3.1. デッキおよびデッキを支持する要素
図9に示すように、デッキ310は、上述したマイクロウェルアセンブリ100のユニットを使用してサンプルを自動処理するための1または複数のコンポーネント(例えば、上部の広い平面、上部および下部の広い平面、側面など)を支持および位置決めするためのプラットフォームとして機能する。さらに、デッキ310は、後述するように、流体処理サブシステム、撮像サブシステム、把持/操作サブシステム、および/またはガントリ370および/またはベース380に結合された他のサブシステムと整列するかまたは他の方法で相互作用するように、1または複数のコンポーネントを位置決めする機能を有することができる。これに関して、デッキ310は、基準プラットフォームとして固定することができ、一方、他のコンポーネントは、デッキ310の要素と相互作用するための定位置に作動させられる。代替的には、デッキ310は、他のサブシステムと相互作用すべくデッキ310の要素を位置決めするために1または複数のアクチュエータに結合されることができる。
【0064】
図9に示す実施形態では、デッキ310は、サンプル処理要素のセットを支持するプラットフォームを提供し、サンプル処理要素は、使い捨ておよび/または再利用可能なコンポーネントを含むことができ、それらコンポーネントは、サンプル処理材料を収容するためのコンテナおよび/または(例えば、流体処理に関連して、材料分離に関連して、加熱および冷却などに関連して)サンプルを処理するためのツールを含む。実施形態では、デッキ310がサンプル処理要素のセットを支持することができ、サンプル処理要素のセットには、試薬カートリッジ320、上述したマイクロウェルアセンブリ100のユニット(例えば、保管中のマイクロウェルアセンブリ、別個のベース基板110およびカバー基板210と分解されたマイクロウェルアセンブリ、およびサンプルを処理するための使用中の位置にあるマイクロウェルアセンブリ)、(マイクロウェルアセンブリ100への移送前にサンプルをステージングするため)サンプルステージングコンテナ330、ツールコンテナ340、および/または他のサブシステムのうちの1または複数のユニットが含まれる。
【0065】
追加的または代替的には、デッキ310は、撮像サブシステム(例えば、蛍光検出サブシステム、明視野カメラサブシステム、共焦点顕微鏡サブシステム、分光検出サブシステム、全内部反射蛍光(TIRF)サブシステム、核磁気共鳴(NMR)サブシステム、ラマン分光法(RS)サブシステム、ピクセル分解能を改善する光学アクセサリを有する携帯電話など)と関連する他の適切なコンポーネントを含むことができる。追加的または代替的には、デッキ310またはプラットフォーム300の他のコンポーネントは、以下の引用により援用される出願に記載されるように、トレーサビリティのためのシステムコンポーネント(例えば、使い捨て品)およびサンプルとの情報の読み取りおよび追跡に関連する動作をサポートするためにバーコードリーダを含むことができる。
【0066】
サンプル処理要素は、デッキ310によって同一平面上で支持され得るか、または代替的には、異なる平面で支持され得る。好ましくは、デッキによって支持される別個の要素は重なり合わないが、デッキ310の代替的な実施形態は、(例えば、空間の節約などのため、動作効率などのために)サンプル処理要素を重なり合うように支持することができる。
【0067】
3.1.1 デッキに支持される要素:試薬カートリッジ
図9に示すように、デッキ310は、試薬カートリッジ320のユニットを支持するための少なくとも1の領域を含み、この領域が、様々な用途のために1または複数のワークフローに従って微生物細胞の捕捉および/またはサンプルの処理のための材料を1または複数のコンパートメントに含むように機能する。このため、試薬カートリッジ320は、ドメインのセットにわたって分散された貯蔵ボリュームのセットを規定することができ、ドメインのセットは、各ドメインの材料コンテンツに適した環境を提供するように構成することができる。貯蔵ボリュームのセットは、サンプル処理材料を直接的に含むことができ、かつ/またはサンプル処理材料を含む個々の容器(例えば、チューブなど)を受け入れてその位置を維持するように代替的に構成することができる。各ドメインの貯蔵ボリュームは、アレイで分配するか、または他の方法で配置することができる。試薬カートリッジ320は、デッキ310によって支持されるものとして説明されているが、試薬カートリッジ320の態様は、代替的には、デッキ110から独立して動作するように構成することができる。試薬カートリッジ120は、さらに追加的または代替的には、2020年5月5日に出願された米国出願第16/867,235号、2020年5月5日に出願された米国出願第16/867,256号、2020年3月12日に出願された米国出願第16/816,817号、2019年9月9日に出願された米国出願第16/564,375号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,370号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,059号、2018年7月27日に出願された米国出願第16/048,104号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,057号、2017年9月29日に出願された米国出願第15/720,194号、2017年2月13日に出願された米国出願第15/430,833号、2017年11月22日に出願された米国出願第15/821,329号、2017年10月12日に出願された米国出願第15/782,270号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,240号、並びに、2017年11月16日に出願された米国出願第15/815,532号に記載の態様を含むことができ、それら出願は、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0068】
3.1.2 デッキに支持される要素:ツールコンテナ
図9に示すように、デッキ310は、ツールコンテナ340のユニットを支持するための少なくとも1の領域を含み、その領域が、ツールコンテナ340を後述するガントリ370の流体処理装置に対して位置決めするように機能する。ツールコンテナ340は、様々な用途のための1または複数のワークフローに従って、流体吸引、流体送達、流体散布、サンプルの非標的物質からの標的物質の分離のための様々なツール、および/または他のツールの1または複数のユニットを、1または複数のコンパートメントに収容するように機能する。このため、ツールコンテナ340は、試薬の移送および/またはサンプルとの混合を容易にし、デッキ310の様々な領域で要素を流体的に結合および/または切り離し、マイクロウェルプレート/リッドのある位置から別の位置への移送を容易にし、またはプラットフォーム300の1または複数のコンポーネントと他の方法で相互作用することができる。ツールコンテナ340はデッキ110に支持されるものとして説明されているが、ツールコンテナ340の態様は、代替的には、デッキ310から独立して動作するように構成することができる。ツールコンテナ340は、さらに追加的または代替的には、2020年5月5日に出願された米国出願第16/867,235号、2020年5月5日に出願された米国出願第16/867,256号、2020年3月12日に出願された米国出願第16/816,817号、2019年9月9日に出願された米国出願第16/564,375号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,370号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,059号、2018年7月27日に出願された米国出願第16/048,104号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,057号、2017年9月29日に出願された米国出願第15/720,194号、2017年2月13日に出願された米国出願第15/430,833号、2017年11月22日に出願された米国出願第15/821,329号、2017年10月12日に出願された米国出願第15/782,270号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,240号、並びに、2017年11月16日に出願された米国出願第15/815,532号に記載の態様を含むことができ、それら出願は、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0069】
3.1.4 加熱および/または冷却サブシステム
デッキ310は、追加的または代替的には、基板(例えば、ベース基板110、カバー基板210)、試薬カートリッジ320、ツールコンテナ340および/または他のコンポーネントの所望の領域に熱を伝達し、かつ/またはそれら領域から熱を伝達するように機能する、加熱および冷却サブシステム350を含むか、または支持することができる。加熱および冷却サブシステム350は、追加的または代替的には、プラットフォーム300の内部ボリューム内で所望の温度を維持するように機能することができる。実施態様では、加熱および冷却サブシステム350が、加熱要素(例えば、ペルチェ加熱要素、抵抗加熱要素、他の加熱要素)、冷却要素(例えば、ペルチェ冷却要素、チルドアルミニウムブロック、冷却剤を循環させる流体経路システムなど)、加熱および冷却要素と他の物体との間で熱を伝達するための熱接触体または非接触体、ヒートシンク、ファン、温度センサおよび(例えば、後述するベース180の処理要素との電気的結合を有する)熱制御回路のうちの1または複数のユニットを含むことができる。実施態様では、1または複数の冷却要素が、貯蔵ボリュームおよび/またはサンプルを2~8℃、さらに好ましくは4℃に維持することができる。追加的または代替的には、冷却要素は、1または複数の貯蔵ボリューム/サンプルを任意の適切な温度(例えば、2℃未満、8℃超など)に維持することができる。
【0070】
加熱および冷却サブシステム350の1または複数の部分は、様々な用途のための熱伝達機能を提供するために、デッキ310の開口部に入り込んで、デッキ310によって支持される他のシステム要素の所望の部分と熱的に相互作用するか、または他の方法で結合することができる。代替的には、デッキ310は、熱伝達用途のための所望の領域において熱伝導性材料で構成することができ、加熱および冷却サブシステム350の一部分が、熱伝達のためにデッキ310の熱伝導性材料領域と接触するように構成することができる。
【0071】
実施態様では、加熱および冷却サブシステム350が、熱伝達のためのより大きな表面積を提供するために、(例えば、ヒートシンク要素に結合することができる)熱体のセットを含むことができる。さらに、デッキ310とプラットフォーム300の他のボリュームとの間の領域は、必要に応じて熱体のセットおよび/または他のシステムコンポーネントから離れる対流熱伝達のための熱機構を提供するために、1または複数のファンおよび/またはダクトを含むことができる。さらに、上記態様では、加熱および冷却サブシステム350の1または複数の部分(例えば、熱体など)が、対応するカートリッジ(例えば、試薬カートリッジ、基板など)を定位置で保持するのを容易にする特徴部を含むことができる。
【0072】
実施態様では、熱体および/または加熱および冷却サブシステム350の他の部分の1または複数を、デッキ310によって支持される要素との熱伝達の内外に熱体を移動させるアクチュエータに結合することができるが、システム100の態様は、加熱および冷却サブシステム350のアクチュエータを省略することができる。
【0073】
加熱および冷却サブシステム350は、追加的または代替的には、2020年5月5日に出願された米国出願第16/867,235号、2020年5月5日に出願された米国出願第16/867,256号、2020年3月12日に出願された米国出願第16/816,817号、2019年9月9日に出願された米国出願第16/564,375号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,370号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,059号、2018年7月27日に出願された米国出願第16/048,104号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,057号、2017年9月29日に出願された米国出願第15/720,194号、2017年2月13日に出願された米国出願第15/430,833号、2017年11月22日に出願された米国出願第15/821,329号、2017年10月12日に出願された米国出願第15/782,270号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,240号、並びに、2017年11月16日に出願された米国出願第15/815,532号に記載の態様を含むことができ、それら出願は、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0074】
3.1.4 ガントリ
図9に示すように、プラットフォーム100は、デッキ110に結合されたガントリ370を含むことができ、このガントリは、軸のセットに沿って、デッキ110の要素との種々の相互作用のために1または複数のツールの作動を支持および/または可能にするように機能する。実施態様では、ガントリ370が、ピペットインターフェースを有するピペッタ374および/または(例えば、マイクロウェルアセンブリ部分および/または他のツールなどを把持するための)把持ツール375などのツールを、3次元空間(例えば、デッキ310の第1の側面によって囲まれた3次元ボリューム)内で移動するための1または複数のレール/トラックを備える。実施態様では、ガントリ370を使用して作動するツールが、デッキ310によって支持される様々なコンポーネントにわたって物質を移送するために、サンプル処理消耗品、試薬カートリッジ320ユニット、ツールコンテナ340または他の要素に対して相対的に移動することができる。追加的または代替的には、ガントリ370によって支持されるツールを、デッキ310によって支持される様々な使い捨て品に関連する(例えば、実行の適切なセットアップの識別、在庫管理などに関連する)バーコードの撮像および/または読み取りに使用することができる。例えば、
図9に示すように、ガントリ370は、サンプル読み取りのためのカメラ376(例えば、蛍光撮像カメラ、明視野撮像カメラなど)を支持するか、またはこれに結合することができる。追加的または代替的には、カメラ376を、(例えば、シグナルを光学的に検出するように構成されたマイクロウェルアセンブリ100の表面に対する撮像の方向に基づいて)プラットフォーム300の別の部分に結合することができる。
【0075】
ガントリ370は、好ましくは、試薬カートリッジ320、サンプル処理使い捨て品(例えば、マイクロウェルアセンブリユニット)およびツールコンテナ340の広い表面に対して平行な1または複数の軸に沿って、追加的には、広い表面に対して垂直な軸に沿って、1または複数のツールを移動させることができる。ガントリ370は、追加的または代替的には、それらの方向のサブセットに沿った、または他の任意の適切な方向に沿った移動を可能にすることができる。移動を可能にするために、ガントリ370は、1または複数のモータ(例えば、各軸用のモータまたは移動方向用のモータ)、各軸または移動方向における位置識別用の1または複数のエンコーダ、および/または(例えば、スイッチが後述するベース180に関連して説明する制御回路と電気的に結合される場合)ガントリ370の制御用の1または複数のスイッチ(例えば、各軸用の光学スイッチ)を含むか、または他の方法で結合される。
【0076】
図9に示すように、ガントリ370は、上述したツールコンテナ340のものなど、任意の数のチップまたは他のツールを保持、移動、および/または他の方法で相互作用するように機能するピペッタ374を含むことができ、かつ/またはピペッタと相互作用するように構成することができる。実施態様では、ピペッタ374アセンブリが、流体の送達および吸引のための圧力差を提供するためのポンプ(例えば、置換ポンプ)、ピペッティング圧力を検知するための圧力センサ、ピペッタ374内の流体レベルを検知するためのレベルセンサ、(例えば、ピペッタ374に結合したチップの有無を判定することができる)チップ検出器、およびピペッタ374からチップを取り除くためのチップイジェクタに結合されたチップ排出モータのうちの1または複数を含むことができる。
【0077】
ガントリ370、ピペッタ374、カメラ/撮像要素、および/または把持要素は、追加的または代替的には、2020年5月5日に出願された米国出願第16/867,235号、2020年5月5日に出願された米国出願第16/867,256号、2020年3月12日に出願された米国出願第16/816,817号、2019年9月9日に出願された米国出願第16/564,375号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,370号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,059号、2018年7月27日に出願された米国出願第16/048,104号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,057号、2017年9月29日に出願された米国出願第15/720,194号、2017年2月13日に出願された米国出願第15/430,833号、2017年11月22日に出願された米国出願第15/821,329号、2017年10月12日に出願された米国出願第15/782,270号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,240号、並びに、2017年11月16日に出願された米国出願第15/815,532号に記載の態様を含むことができ、それら出願は、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0078】
3.1.5 その他のプラットフォーム要素
いくつかの実施形態では、プラットフォーム300は、(例えば、食品の品質/食品の安全を判定するための動作の他の部分のための機能を提供するために)他のサンプル処理要素を含むか、または支持することができる。実施態様では、プラットフォーム300は、(例えば、インキュベーションおよび培養用途のための)環境制御を伴うガス組成変調器を含むか、または支持することができる。そのようなサブシステムは、加熱要素、冷却要素、温度センサ、ガス組成センサ、ベント、ガス入口、ガス出口、バルブ、およびプラットフォーム300内またはプラットフォーム300とは異なるデバイスにおける環境制御のための他の適切な要素のうちの1または複数を含むことができる。環境制御に関連して、プラットフォーム300は、内部でサンプル環境を制御することができる様々なエンクロージャおよび/またはチャンバを含むことができる。プラットフォームは、マイクロウェル内のO2および/またはCO2濃度を調節することができる。プラットフォームは、サンプル実行の間にシステムの汚染除去を可能にする要素、例えば、UVライトを含むことができる。
【0079】
実施態様では、プラットフォーム300(例えば、ベース380において)は、サンプル処理のためのピペッタ374に関する流体送達、流体レベル検知(例えば、ピペッタ374、試薬カートリッジ320の様々な貯蔵ボリュームなどにおいて)、把持ツール375の把持モードの作動、試薬カートリッジ320および/またはマイクロウェルアセンブリ100の熱サイクルおよび/または他の加熱または冷却機能、ガントリ370の制御のための機能、センサ信号を受信して出力を返すことを含む機能、センサ信号を受信して様々な動作を実行することを含む機能、システムの電力管理に関連する機能、システムの状態表示要素(例えば、ライト、音声出力デバイス、視覚出力デバイスなど)に関連する機能、システム入力デバイス(例えば、ボタン、キーボード、キーパッド、マウス、ジョイスティック、スイッチ、タッチスクリーンなど)に関連する機能、表示デバイスに関連する機能、システムデータストレージデバイスに関連する機能、システム伝送デバイス(例えば、有線伝送デバイス、無線伝送デバイスなど)に関連する機能、および他の適切な機能を含む1または複数のシステム機能のための制御および処理アーキテクチャをサポートすることができる。実施態様では、プラットフォーム300が、処理アーキテクチャ(例えば、システムに搭載される、システムから分離されるなど)、または他の任意の適切なコンポーネントに関連する電子サブシステム(例えば、PCB、電源、通信モジュール、エンコーダなど)をサポートすることができ、処理アーキテクチャが、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)、コントローラ(例えば、マイクロコントローラ)、メモリ、ストレージ、ソフトウェア、ファームウエア、または他の任意の適切なコンポーネントのうちのいずれかまたはすべてを含むことができる。さらに、処理サブシステムは、タグの読み取り、プロトコルの検証、エラー検出の実行(例えば、試薬が割り当てられたプロトコルと一致しないことの検出)、または他の任意の機能を実行するように機能する、マシンビジョンモジュールを含むことができる。
【0080】
追加要素の実施形態、実施態様および実施例は、2018年7月27日に出願された米国出願第16/048,104号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,057号、2017年9月29日に出願された米国出願第15/720,194号、2017年2月13日に出願された米国出願第15/430,833号、2017年11月22日に出願された米国出願第15/821,329号、2017年10月12日に出願された米国出願第15/782,270号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,240号、2017年11月16日に出願された米国出願第15/815,532号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,370号、2019年9月9日に出願された米国出願第16/564,375号、並びに、2020年3月12日に出願された米国出願第16/816,817号にさらに記載されており、それら出願は、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0081】
4.使用方法および用途
図10Aに示すように、標的検出および特性評価のための方法400の一実施形態は、サンプル処理システムのデッキにマイクロウェルアセンブリのユニットを含むサンプル処理要素のセットを配置するステップS410と、サンプル処理要素のセット間でサンプルおよび/または他の物質を動作シーケンスにおいて移送するステップS420と、マイクロウェルアセンブリのユニットで標的検出のためにサンプルのセットを処理するステップS430とを含むことができる。追加的または代替的には、本方法400は、2018年7月27日に出願された米国出願第16/048,104号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,057号、2017年9月29日に出願された米国出願第15/720,194号、2017年2月13日に出願された米国出願第15/430,833号、2017年11月22日に出願された米国出願第15/821,329号、2017年10月12日に出願された米国出願第15/782,270号、2018年7月30日に出願された米国出願第16/049,240号、2017年11月16日に出願された米国出願第15/815,532号、2018年8月28日に出願された米国出願第16/115,370号、2019年9月9日に出願された米国出願第16/564,375号、並びに、2020年3月12日に出願された米国出願第16/816,817号に記載のプロセスのいずれかまたはすべてを含むことができ、それら出願は、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0082】
本方法は、好ましくは、(例えば、様々な要素間の内容物の移送および/またはサンプル処理に関連して)上述したシステムの実施形態、実施態様または実施例で実行されるが、追加的または代替的には、他の任意の適切なシステムで実行することができる。本方法400は、さらに好ましくは、少なくとも部分的に自動化されるが(例えば、ユーザが試薬をロードしてプロトコルを選択することを必要とする場合、ユーザの介入を必要としない場合など)、追加的または代替的には、(例えば、品質管理ステップ、すべてのプロトコル、稀なプロトコルなどのために)1または複数の部分を手動で実行することができる。
【0083】
上述した本方法400およびシステム要素に関連する特定のワークフローを以下にさらに詳細に説明する。ここで、サンプル(例えば、均質化された消耗品または均質化されていない消耗品に由来するサンプルなど)は、ワークフローに従って処理することができる。
【0084】
4.1 方法-複数の食品サンプルから並行してMPNを決定するワークフローの例
図10Bに示すように、安全性および品質を評価する目的で、1または複数の消耗品サンプル(例えば、個々の食品サンプル懸濁液)を処理するために構成された方法400の実施態様は、サンプル処理システムのデッキにマイクロウェルアセンブリのユニットを含むサンプル処理要素のセットを配置するステップS410’と、サンプルのセットを処理するための一連のサンプル準備操作を実行するステップS415’と、(例えば、ベース基板とマイクロウェルアセンブリのカバー基板との間の間隔によって可能とされるサンプル処理領域の一端からの毛細管流による、各サンプルに関連付けられたそれぞれのマイクロウェル表面にわたる液滴形態のサンプルの予め定められた送達を使用して)サンプルのセットをマイクロウェルアセンブリのベース基板のサンプル処理領域のセットに移送するステップS420’と、(例えば、サンプル流体を広げるため、サンプル流体を分割するために)ベース基板をマイクロウェルアセンブリのカバー基板で覆うステップS425’と、更なる処理のためにマイクロウェルアセンブリを移送するステップS430’と、マイクロウェルアセンブリでサンプルのセットから1または複数の標的を検出するステップS440’とを含むことができる。
【0085】
本方法400は、最確数(MPN)決定に特定のアプリケーションを用いて、迅速なサンプル試験のためのシステムを実装するように機能する。特に、本方法400は、食品試験部分における標的微生物の濃度を測定するための連続希釈試験の迅速な操作を可能にすることに関連して(例えば、食品安全/食品品質用途のために)、複数のサンプルを並行して処理するために使用することができる。処理中、食品試験部分を希釈して(例えば、分析のためのサンプルを調製するための特定のブロス/試薬との組合せにより)食品懸濁液を調製することができる。
【0086】
実施形態では、システムは、方法400の後続のステップでサンプルを処理するための準備として、S410’において、サンプル処理システムのデッキでマイクロウェルアセンブリのユニットを含むサンプル処理要素のセットを配置することができる。システムは、上述のガントリを使用して、かつ/またはシステムオペレータによる手動動作によって、(例えば、
図9に示すように)下流の処理ステップのためのサンプル処理要素のセットを構成することができる。他の態様では、ステップS410’が、複数のサンプルを並行して処理するために、別の適切な方法でサンプル処理要素を構成することができる。下流のサンプル処理操作の準備において、ステップS410’は、マイクロウェルアセンブリのユニットのベース基板をプラットフォームの液体ロード位置に移動させ、プラットフォームのカメラを使用して、プレート識別子を読み取ることを含むことができる。その後、システムは、正しいサンプルが処理されていることを確認するために、プレート識別子を処理用サンプルの識別子と照合し、サンプル処理結果をプレート識別子に関連付けられた実行と関連付けることができる。しかしながら、ステップS410’は、他の態様において、他の実行準備ステップを含むことができる。
【0087】
ステップS415’は、サンプルのセットを処理するために、一連のサンプル準備操作を実行することを述べている。ステップS415’は、消耗品(例えば、食品サンプル、飲料サンプルなど)に由来するサンプル材料がマイクロウェルアセンブリのベース基板のサンプル処理領域のセット内に分配されるように、サンプル材料を処理するように機能する。実施態様では、ステップS415’が、(例えば、適切な希釈倍率を有する)希釈剤で食品試験部分を(例えば、機械的、化学的に)均質化すること;サンプルを(例えば、緩衝ペプトン水で、他の懸濁剤で)懸濁すること;処理される各サンプルの容量(例えば、1mL未満、1mL以上)を、培地(例えば、バックグラウンドフローラを抑制し、特定の微生物の増殖を促進する培地、1:1希釈倍率などの適切な希釈倍率をもたらすための培地など)、酵素基質(例えば、蛍光基質、発色基質など)を含むレベレーション化学物質、または乾燥または液体形態の他の処理材料(例えば、取り扱いおよび流体送達に適した粘度特性および/または総量を有するサンプルを生成するため、スパイス、チョコレート、着色/自家蛍光を有する食品マトリクス、または他の消耗品など、高い阻害特性を有するサンプルを処理するため)と混合すること;サンプルをろ過すること(例えば、マイクロウェルでのサンプルの装填、異なる特性寸法を有するマイクロウェルにわたるサンプルの均一な分配、目詰まり、検出などに影響を与える可能性のある微粒子を除去するため)、(ここで、制限する微粒子サイズは、隣接するマイクロウェル間のピッチに基づいてカバーすることができる(例えば、20ミクロン~280ミクロンのフィルタサイズ、他のフィルタサイズを有する));並びに、他の任意の適切なサンプル準備ステップのうちの1または複数を含むことができる。ステップS415’は、上記セクション3で説明したプラットフォームの流体処理要素を使用して、または他の適切な装置コンポーネントを使用して実行することができる。
【0088】
実施態様では、ブロックS415’のサンプル処理ステップを使用して、少なくとも10cfu/gの下限検出限界、1,000,000cfu/gの上限検出限界、または(例えば、cfu/mLなどの体積測定値に関連して)他の適切な検出限界を有するMPN推定値を生成することができる。
【0089】
ステップS420’は、(例えば、ベース基板とマイクロウェルアセンブリのカバー基板との間の間隔によって可能になるサンプル処理領域の一端からの毛細管流によって、各サンプルに関連付けられたそれぞれのマイクロウェル表面にわたって液滴形態でサンプルの予め定められた送達を使用することなどにより)サンプルのセットをマイクロウェルアセンブリのベース基板のサンプル処理領域のセットに移送することを述べている。ステップS420’は、上記セクション3で説明したプラットフォームの流体処理要素を用いて、または他の適切な装置を使用して実行することができる。実施態様では、処理されるサンプルのセットの各々が、ベース基板のサンプル処理領域で順番に受け入れられるように移送され得る。代替的には、サンプルのセットは、ベース基板のサンプル処理領域に同時に(例えば、マルチヘッド流体分注装置を使用して、他の装置を使用して)分注することができる。特に、ステップS420’においてサンプルのセットをマイクロウェルアセンブリのベース基板のサンプル処理領域のセットに移送することは、迅速なサンプル試験(例えば、MPN決定)のために、勾配を付けて配置されたマイクロウェルサブアレイのセットの実施形態、実施態様および実施例を使用して、サンプルのセットを自動的に分割することになる。
【0090】
ステップS425’は、マイクロウェルアセンブリのカバー基板でベース基板を覆うことを述べており、下流の処理およびインキュベーションステップ中にサンプルのセットのための適切な環境を保護し、その維持を容易にするように機能する。実施態様では、ステップS425’が、上記セクション3で説明したプラットフォームのガントリに結合された要素(例えば、修正された把持要素)を使用して、または他の適切な装置を用いて実行することができる。実施態様では、上記セクション2で説明したように、カバー基板が通気チャネルを含むことができ、かつ/または多孔質材料で構成することができ、それにより、ステップS425’において、サンプルの相互汚染を防止し、サンプルの蒸発を防止し、インキュベーション/培養中にサンプルと環境との間のガス交換を可能にするように機能する。追加的または代替的には、
図5に示すように、カバー基板のエラストマー特性をステップS425’で使用して、処理中にサンプルのセットの各々の上にポケット(例えば、エアポケット)を提供し、サンプルのクロストークをさらに防止することができる。しかしながら、ステップS425’は、別の適切な方法で実施することもできる。
【0091】
ステップS430’は、更なる処理のためにマイクロウェルアセンブリを移送することを述べており、インキュベーション、培養または他の処理ステップのために、サンプルのセットとともに、マイクロウェルアセンブリをステージングするように機能する。ステップS430’は、上記セクション3で説明したプラットフォームのガントリに結合された要素(例えば、把持要素)を使用して、または他の適切な装置を使用して実行することができる。実施態様では、システムは、マイクロウェルアセンブリをプラットフォームのある位置まで搬送することができ、そこでオペレータは、インキュベーション、培養または更なる処理ステップのために、マイクロウェルアセンブリを他の装置に移送することができる。代替的には、システムは、インキュベーション、培養または更なる処理ステップを自動的に実行することができるプラットフォームのある位置までマイクロウェルアセンブリを移送することができる。マイクロウェルアセンブリを移送する際、システムは、好ましくは、マイクロウェルのセットのサンプルの物理的乱れを最小限に抑える方法で(例えば、ガントリおよびツールを使用して)動作するが、ステップS430’は、代替的には、別の適切な方法で実施することができる。
【0092】
ステップS440’は、マイクロウェルアセンブリでサンプルのセットから1または複数の標的を検出することを述べている。ブロックS440’は、適切なインキュベーション期間(例えば、24時間、24時間未満、24時間超)の後に実行することができる。ステップS440’は、上記セクション3で説明したプラットフォームのガントリおよび/またはベースに結合されたカメラ要素(例えば、蛍光撮像要素、明視野撮像要素)を使用して、または他の適切な装置を使用して実行することができる。例えば、プラットフォームの外側で実行される操作のために(例えば、インキュベーションのコンテキストで)、別個の読み取りサブシステムを実装することができる。ステップS440’の出力は、各サンプルのMPN推定値を、信頼限界とともに含むことができる。より詳細には、撮像サブシステムと通信するコンピューティングコンポーネントは、シグナル(例えば、蛍光シグナル、比色シグナルなど)が検出される各マイクロウェルサブアレイのマイクロウェルを処理し、サンプルのセットの各々についてMPNまたは品質および安全性に関連する他の統計値を示す分析を返すためのアルゴリズムを実装することができる。検出は、蛍光および/または他の光学的に検出されるシグナルに基づくことができ(例えば、フルオロフォアに結合した酵素基質、蛍光または比色pHインジケータに基づくことができ)、検出のための意図した標的に応じて、複数および/または異なるフルオロフォアを使用することができる。
【0093】
ステップS440’の実施態様において、システムは、サンプル処理およびインキュベーション後のマイクロウェルアセンブリの画像を、蛍光/比色シグナルおよび関連特性(例えば、強度)の検出のための1または複数の変換アルゴリズム(例えば、ハフ変換、フィルタリング操作、フィッティング操作、マイクロウェル認識操作、レジストレーション操作など)で処理し、かつ/または他の適切な画像処理操作を実行することができる。その後、システムは、集計参照、推定アルゴリズム(例えば、トーマスの法則)、信頼限界決定法(例えば、ホールデン法など)、境界近似アプローチ(例えば、ブロジェット法など)、粒子計数統計法(例えば、マイクロウェルアレイに適用される、ポアソン統計学を介した粒子/細胞計数法)、パーティショニング誤差および/またはサブサンプリング誤差に関連する誤差補正の適用、仮想パーティションの実行、または他の適切な方法のうちの1または複数に基づく分析を生成することができる。追加的または代替的には、閾値検出限界に達すると、プレートを密閉して、環境との更なる相互作用および/または環境の汚染を防止することができる。
【0094】
方法400の態様では、培地組成、基質、インキュベーション条件、および検出システムは、サンプルのセットからの検出を目的とする1または複数の標的に依存する。例えば、総生菌数を検出するために、例示的な培地ベースは、プレートカウント寒天(例えば、非選択的プレートカウント寒天)を含むことができ、培地組成は、トリプトン、酵母エキスおよびグルコースであり、検出原理は一般酵素活性または生存率を標的とする基質に基づくものであり、インキュベーション時間は30℃で72時間未満である。腸内細菌科を検出するために、例示的な培地ベースは、バイオレットレッド胆汁グルコース(例えば、選択的バイオレットレッド胆汁グルコース)を含むことができ、培地組成は、ペプトン、酵母エキス、グルコース、クリスタルバイオレット、ナトリウム、胆汁酸塩/デオキシコール酸ナトリウムであり、検出原理はpH表示に基づくものであり、インキュベーション時間は30℃で24時間未満である。大腸菌群を検出するために、例示的な培地ベースは、バイオレットレッド胆汁ラクトース(例えば、選択的バイオレットレッド胆汁ラクトース)を含むことができ、培地組成は、ペプトン、酵母エキス、ラクトース、クリスタルバイオレット、ナトリウム、胆汁酸塩/デオキシコール酸ナトリウムであり、検出原理はpH表示に基づくものであり、インキュベーション時間は37℃で24時間未満である。また、β-ガラクトシダーゼ酵素基質に基づく検出の場合、培地の酸性化の回避(および蛍光の抑制)のために、使用する培地にラクトースが含まれないようにする必要がある。そのような実施形態では、Rapid大腸菌培地(例えば、ペプトン、酵母エキス、塩化ナトリウム、胆汁酸塩/デオキシコール酸ナトリウム+β-ガラクトシダーゼ酵素基質を含む培地)を検討することができる。大腸菌を検出する場合、例示的な培地ベースは、トリプトン胆汁X-グルクロニド(例えば、選択的トリプトン胆汁X-グルクロニド)を含むことができ、培地組成は、ペプトン/トリプトン、酵母エキス、胆汁酸塩/デオキシコール酸ナトリウムであり、検出原理はベータ-グルクロニダーゼ酵素と相互作用する基質に基づくものであり、インキュベーション時間は44℃で24時間未満である。酵母およびカビを検出するために、例示的な培地ベースは、YGC培地を含むことができ、培地組成は、酵母エキス、グルコース、クロラムフェニコールであり、検出原理は、いくつかの非特異的酵素活性に基づくものであり、インキュベーション時間は30℃で72時間未満である。このシステムは、大腸菌/大腸菌群のマルチ標的検出を実行することもできる。しかしながら、意図する標的に応じて、他の培地組成、基質、インキュベーション条件および検出システムを使用することができる。
【0095】
しかしながら、システムの1または複数の実施形態は、記載されたワークフローの実施態様を含む他のワークフロー、および/または他のワークフローを実施するように構成することができる。
【0096】
4.1.1 方法-MPN計数
上述した方法400および/または他の関連する方法に関連して、MPNの原理および手順を以下のように適用することができる。
【0097】
原理:上述した実施形態、実施態様および/または実施例に従って処理されたサンプルの試験部分を、特定の微生物または微生物群の増殖を支持し、かつ/または非標的微生物の増殖を抑制するように設計された培地(例えば、液体培地、乾燥培地、再水和乾燥培地など)に接種することができる。標的微生物の増殖が生じたかどうかを判定するために、様々な基準(例えば、濁りの視覚的検出、ガス発生、色の変化、選択的寒天培地での微生物のその後の分離、他のメカニズムなど)を用いることができる。増殖培地の組成と、陽性と陰性の結果を判別する基準については、さらに後述する。これらのアプローチを使用することにより、定性的な値のみが各試験部分に帰属することができる(すなわち、結果は陽性または陰性のいずれかとなる)。存在する微生物の量の推定値を得るためには、いくつかの試験部分を検査し、統計的手順を使用して最確数(MPN)を求める必要がある。
【0098】
接種手順:選択的増殖培地を使用する場合、試験部分の添加によってその選択特性が低下して、非標的微生物の増殖が可能にならないようにする必要がある。ほとんどの規格において、特定のマトリクスと液体培地の適合性に関する情報が記載されているが、増殖阻害物質(例えば、香辛料、ココア、ブイヨンなど)を含む可能性がある一部のマトリクスには注意が必要である。そのようなマトリクスが含まれる場合、中和化合物を伴うサンプルおよびマトリクスの処理方法は、高い希釈倍率、遠心分離、浮力に基づく分離(例えば、浮力粒子への標的サンプル材料の結合および非標的マトリクス材料の洗浄を伴う)、ろ過、標的微生物をマトリクスから分離する免疫磁気分離、および/または問題のあるマトリクスの影響を緩和する他の機構を使用して、実施することができる。不適合がマトリクスの生物学的組成(例えば、重度に汚染された環境サンプル、発酵製品、プロバイオティック細菌を有する製品など)に起因する場合、本方法は、スパイクベースの実験および/または適切な対照の生成をさらに実施することができる。
【0099】
実施例では、小体積(例えば、1ミリリットル未満、1ミリリットルなど)の試験部分は、単一強度の培地の体積(例えば、5~10倍の体積)に加えることができる。実施例では、中間体積(例えば、1ミリリットル~100ミリリットル)の試験部分は、より高い強度(例えば、倍強度)の培地の体積(例えば、等しい体積)に加えることができる。実施例では、大体積(例えば、100ミリリットル超)の試験部分は、より濃縮された培地と組み合わせることができる。特別な目的のために、上記システムおよびプラットフォームの実施形態に記載されているように、無菌の脱水培地をサンプルに(例えば、低温のサンプルまたは予め温められたサンプルに)溶解して分析することができる。実施例では、サンプルの最初の希釈液を調製してから最後の部分を接種するまでの時間差は、無菌手順を実施して、閾値時間(例えば、15分間、別の適切な時間)未満にする必要がある。その後、接種されたパーティションは、(例えば、関与する標的微生物に応じて)適切なインキュベーションの期間および/または温度でインキュベートされる。いくつかの標的微生物については、多段階のインキュベーション手順および/または確認ステップを実施することができる。陽性と陰性の結果を区別する基準は、各微生物または微生物群によって異なり得る。それらの基準を用いて、MPN決定法では、1つのサンプルに由来するすべての試験部分で得られた陽性結果の数が数えられる。
【0100】
接種システムの選択:MPN法によれば、サンプルは、複数のパーティションにわたって、接種物が目的の生存微生物を含むときがあるが、必ずしもそうではない程度に希釈される。その「結果」(すなわち、各希釈で増殖をもたらす接種物の数)により、サンプル中の1または複数の微生物の初期濃度を推定することができる。可能性のある広い範囲の濃度の推定値を得るために、連続希釈および/または複数のパーティション(例えば、チューブ、プレートのウェル、上述したマイクロウェルシステム、エマルションの液滴など)でのインキュベーションを使用することができる。その後、インキュベーション後に観察された1または複数の希釈での陽性および陰性パーティションの数に基づいて、元のサンプルに存在する微生物の推定MPN、およびその推定精度を統計的手順によって算出することができる。MPN接種システムは、調査対象のサンプルに含まれる微生物の予想数、規制要件、必要な精度、および他の実用的な考慮事項のうちの1または複数に基づいて選択することができる。測定の不確かさは、観察された陽性試験部分の数に依存し、使用されるパーティションの数の平方根の関数として増加する。測定の不確かさを半減させるためには、チューブの数を4倍にする必要がある。少数の複製パーティションしか有さないシステムを使用する場合、測定の不確かさは低くなる。
【0101】
接種システムの実施態様-単一希釈システム:予想される微生物の濃度が低いか、または中適度にしか変化しないと予想される場合、適切な接種システムは、単一シリーズの等しい試験部分である。微生物の最大数と最小数の間の予想比率が約25未満である場合、10の並列試験部分が機能すると予想される最小数であり、50の並列パーティションでは、200の比率が限界である。
【0102】
接種システムの実施態様-複数希釈システム:サンプル中の微生物の濃度が未知である場合、または大きな変動が予想される場合、適切な接種システムは、複数の希釈からのシリーズのパーティションが実施される複数希釈システムである。そのようなプラットフォームでは、陽性と陰性の両方の結果が得られるシステムを確保するために、十分な数の希釈を接種する。また、希釈数は、MPN値の推定に用いる計算方法にも依存する(例えば、理論モデル、参考テーブルなどに依存する)。
【0103】
接種システムの実施態様-対称希釈システム:対称MPNシステムでは、1回の希釈につき、3または5の並列パーティション(または別の適切な数のパーティション)を使用することができる。このシステムで得られる精度は、1回の希釈あたりのチューブ数が少なくなると急速に低下する。より高い精度が必要な場合は、5以上のパーティションを選択することが推奨される。
【0104】
接種システムの実施態様-非対称希釈システム:非対称システムでは、希釈レベルが異なる場合、チューブの数は同じではない。このような構成は、明確に規定された範囲内の微生物の数を推定するのに適している(その例は、ISO8199に記載されている)。
【0105】
MPN値の決定:実施態様では、MPN値を、数式による計算、MPNテーブルの参照、および他のアルゴリズムの利用のうちの1または複数によって決定することができる。これらの3つの方法について、以下に詳述する。
【0106】
MPN値の決定-数式:任意の数の希釈および平行チューブに対する近似MPN値は、以下の式を適用することによって導き出すことができる。ここで、Z
pは陽性のパーティションの数、m
rはサンプル基準質量(例えば、グラム)、m
sは陰性反応を有するすべてのパーティションにおけるサンプルの総質量(例えば、グラム)、m
tはすべてのパーティションにおけるサンプルの総質量(例えば、グラム)である。
【0107】
単一シリーズのパーティションに対するMPN値は、以下の式から導き出される。ここで、m
rはサンプル基準質量(例えば、グラム)、m
mはシリーズの各パーティションにおけるサンプルの質量(例えば、グラム)、lnは自然対数、nはシリーズにおけるパーティションの数、z
pは陽性反応を有するパーティションの数である。
【0108】
MPN推定値の95%信頼限界は、以下の式を使用して近似計算することができる。ここで、xは95%信頼限界の上限または下限、m
rはサンプル基準質量(例えば、グラム)、m
mはシリーズの各パーティションにおけるサンプルの質量(例えば、グラム)、lnは自然対数、nはシリーズにおけるパーティションの数、z
nは陰性反応のパーティションの数である。
【0109】
対称複数希釈MPNシステムのlog
10標準不確かさは、以下の式から得ることができる。ここで、SEはlog
10MPNの標準誤差、fは連続する希釈間の希釈倍率、nは希釈あたりのパーティション数である。
【0110】
上記式の変形例は、関連する体積から質量を抽出することができる体積パラメータに適合させることができ、かつ/または体積を考慮するために式を適合させることができる。
【0111】
MPN値の決定-テーブル:サンプル基準質量(または液体サンプルの場合は体積)あたりの結果を表すために、(例えば、MPNおよび95%限界値に[基準質量]/[試験部分質量]などの比率を乗じることによって)テーブルの値を処理することができる。対称システムでは、本方法は、適切な数の複製、システムコンポーネントをサポートするために上述した適切な数の実施形態、実施態様および実施例による、複数の連続する希釈(例えば、3回の連続する希釈)の実施を含むことができる。それらの方法を使用して、パーティションの各セットに対する陽性結果の数を(例えば、上述したプラットフォーム300を使用することにより)得ることができ、使用された接種システムに対するMPNテーブルから、サンプルの基準体積に存在する関連微生物のMPN値を得ることができる。陽性のパーティションの様々な組合せは、統計的に他のものよりも可能性が高くなり得るため、陽性のパーティションの結果の組合せは、様々なカテゴリ(例えば、確率が高い結果、確率が中程度の結果、確率が低い結果など)に分類することができる。
【0112】
MPN値の決定-アルゴリズム:上述した方法の態様では、様々なアルゴリズムを実施することができる(例えば、MPNアッセイアナライザを使用して、別の適切なシステムを使用して実行することができる)。
【0113】
追加的または代替的には、本方法は、Appendix Aおよび/または2016年1月25日に出願された「Digital Microbiology」という名称の米国特許出願第16/072,712号に記載されているものから適合させることができ、それらは、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0114】
5.結論
図面は、好ましい実施形態、例示的な構成およびそれらの態様に係る、システム、方法およびコンピュータプログラム製品の可能性のある実装のアーキテクチャ、機能および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図の各ブロックは、指定された1または複数の論理機能を実装するための1または複数の実行可能な命令を含む、モジュール、セグメントまたはコードの一部を示すことができる。また、いくつかの代替的な態様では、ブロックに記された機能は、図面に記された順序以外で発生し得ることにも留意されたい。例えば、連続して示された2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実行される可能性があり、または、関係する機能に応じて、逆の順序で実行される場合もある。また、ブロック図および/またはフローチャートの各ブロック、並びに、ブロック図および/またはフローチャートのブロックの組合せは、指定された機能または動作を実行する専用のハードウェアベースのシステム、または専用のハードウェアおよびコンピュータ命令の組合せによって実施することができることに留意されたい。
【0115】
当業者であれば、上述した詳細な説明、図面および特許請求の範囲から認識できるように、以下の特許請求の範囲で特定される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の好ましい実施形態に修正および変更を加えることができる。
【手続補正書】
【提出日】2025-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的検出のための方法において、
プレート上の複数のマイクロウェルの中にサンプルを装填するステップと、
前記複数のマイクロウェルを密封する油層を設けるステップと、
撮像サブシステムを用いて、前記複数のマイクロウェルを撮像するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記複数のマイクロウェルが前記プレートの第1の領域に位置し、
前記第1の領域が、上流の端部に第1のサイズを有する最初のマイクロウェルサブアレイを含み、下流の端部に第2のサイズを有する終端のマイクロウェルサブアレイを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記複数のマイクロウェルが、少なくとも2つの離れた領域に位置し、選択的に、それぞれの領域を隣接する領域から分離する凹状のチャネルを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、
前記プレートまたは前記油層が、前記マイクロウェルの内容物と前記プレートの周囲の環境との間のガス交換を可能にしつつ、液体の交換を防ぐように構成された材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、
前記複数のマイクロウェルが、前記プレートの第1の領域に位置し、
前記第1の領域が、上流の端部に第1の充填構成を有する最初のマイクロウェルサブアレイを含み、下流の端部に第2の充填構成を有する終端のマイクロウェルサブアレイを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
標的検出のためのシステムにおいて、
複数のマイクロウェルを有するプレートと、
油層を用いて前記複数のマイクロウェルを密封することができるサブシステムと、
前記プレートを撮像することができる撮像サブシステムと、を具えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記複数のマイクロウェルが前記プレートの第1の領域に位置し、
前記第1の領域が、上流の端部に第1のサイズを有する最初のマイクロウェルサブアレイを含み、下流の端部に第2のサイズを有する終端のマイクロウェルサブアレイを含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6または7に記載のシステムにおいて、
前記複数のマイクロウェルが、少なくとも2つの離れた領域に位置し、選択的に、それぞれの領域を隣接する領域から分離する凹状のチャネルを含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記プレートまたは前記油層が、前記マイクロウェルの内容物と前記プレートの周囲の環境との間のガス交換を可能にしつつ、液体の交換を防ぐように構成された材料を含むことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記複数のマイクロウェルが、前記プレートの第1の領域に位置し、
前記第1の領域が、上流の端部に第1の充填構成を有する最初のマイクロウェルサブアレイを含み、下流の端部に第2の充填構成を有する終端のマイクロウェルサブアレイを含むことを特徴とするシステム。
【請求項11】
サンプルを処理するための装置において、
少なくとも1つのサンプル処理領域を含む第1の基板を具え、
少なくとも1つの前記サンプル処理領域が、サイズが異なる複数のマイクロウェルを含むことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、
少なくとも1つの前記サンプル処理領域が、上流の端部に第1のサイズを有する最初のマイクロウェルサブアレイを含み、下流の端部に第2のサイズを有する終端のマイクロウェルサブアレイを含むことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の装置において、
前記第1の基板が、少なくとも2つの離れたサンプル処理領域を含むことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、
前記第1の基板が、それぞれのサンプル処理領域を隣接する領域から分離する凹状のチャネルを含むことを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項11~13のいずれか1項に記載の装置において、
少なくとも1つの前記サンプル処理領域が、上流の端部に第1の充填構成を有する最初のマイクロウェルサブアレイを含み、下流の端部に第2の充填構成を有する終端のマイクロウェルサブアレイを含むことを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか1項に記載の装置が、さらに、少なくとも1つのマイクロウェルを密封する第2の基板を具えることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置において、
前記第2の基板が、油層、または弾性材料と通気チャネルのネットワークとを含むことを特徴する装置。
【請求項18】
請求項16または17に記載の装置において、
前記第1の基板および前記第2の基板のうちの少なくとも一方が、前記マイクロウェルの内容物と前記装置の周囲の環境との間のガス交換を可能にしつつ、液体の交換を防ぐように構成された材料を含むことを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項11~18のいずれか1項に記載の装置が、さらに、前記第1の基板を撮像するための撮像サブシステムを具えることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項11~19のいずれか1項に記載の装置が、さらに、前記第1の基板の温度を制御するための加熱および冷却システムを具えることを特徴とする装置。
【外国語明細書】