(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014839
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】レーザ溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20250123BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20250123BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20250123BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/21 G
B23K26/21 F
H01M50/505
H01M50/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117734
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大平 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】小岩 永明
(72)【発明者】
【氏名】大門 徹也
【テーマコード(参考)】
4E168
5H043
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA28
5H043AA19
5H043BA19
5H043FA04
5H043HA17F
5H043JA13F
(57)【要約】
【課題】本開示は、正確にレーザ溶接の良否を判断することができるレーザ溶接方法を提供することを目的とする。
【解決手段】2つの導電性被溶接物を重ね合わせ又は突き合わせ、そして重ね合わされた又は突き合わされた部分にレーザ光を照射することによって、上記2つの導電性被溶接物を溶接し、かつ上記溶接の間に、上記2つの導電性被溶接物が溶接されるレーザ溶接部の直流抵抗を、交流電圧又は交流電流を用いて測定する、レーザ溶接方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの導電性被溶接物を重ね合わせ又は突き合わせ、そして重ね合わされた又は突き合わされた部分にレーザ光を照射することによって、前記2つの導電性被溶接物を溶接し、かつ
前記溶接の間に、前記2つの導電性被溶接物が溶接されるレーザ溶接部の直流抵抗を、交流電圧又は交流電流を用いて測定する、
レーザ溶接方法。
【請求項2】
前記交流電圧又は交流電流の周波数が900Hz~1100Hzである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下したときに、溶接が良好であると判断する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下し、そしてその後で、前記レーザ溶接部の直流抵抗が、第2の所定の値よりも大きい幅で増加したときに、溶接が良好であると判断する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記2つの導電性被溶接物が、それぞれリチウムイオン電池の電極端子及びバスバーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法を含む、電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射することにより導電性被溶接物を一体的に溶接するレーザ溶接処理が、各種の製造工程で広く行われている。レーザ溶接処理では、正確な溶接品質を維持するために溶接状態を確認することが望まれており、次のような技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、導電性の被溶接物を重ね合わせ又は突き合わせて、この重ね合わせ部又は突き合わせ部にレーザ光を照射して溶接するレーザ溶接方法であって、次の工程を含むことを特徴とするレーザ溶接方法。a)前記導電性の被溶接物を重ね合わせ又は突き合わせてセットする工程、b)前記工程でセットした被溶接物間の電気抵抗値を測定し、予め定められた第1設定値との差を求め、差が正の値のときは再度セットし直す工程、c)前記工程で差が0または負の値のときはレーザ光を照射してレーザ溶接を行う工程、d)前記工程中、前記被溶接物間の電気抵抗を測定し、予め定められた第2設定値との差を求め、差が0または負の値になるまでレーザ光を照射する工程、によるレーザ溶接方法が記載されている。特許文献1のレーザ溶接方法によれば、レーザ溶接開始前には溶接が正常に実行されるように溶接対象物の密着性が確保され、レーザ溶接中は溶接の進捗状況が確認できるレーザ溶接作業工程でも品質管理が可能となるとされている。
【0004】
特許文献2には、ワークの溶接部に検査用レーザ光を照射し、該検査用レーザ光の該溶接部からの戻り光を受光し、該戻り光の強度に基づいて該溶接部の溶接欠陥の有無を判定するレーザ溶接検査方法であって、前記溶接部からの戻りの光を認識する領域の領域径を、前記溶接部に照射されるレーザ集光径の1.5倍以下とする、レーザ溶接検査方法が記載されている。特許文献2のレーザ溶接検査方法によれば、溶接欠陥の判定制度を向上できるとされている。
【0005】
特許文献3には、検査物となる2片の金属を合わせ、その一方の表面にレーザをスポット照射して溶接したレーザ溶接部を溶接後に検査する方法において、溶接後雰囲気温度まで冷却したレーザ溶接部を赤外線カメラで撮影し、得られた赤外線画像における輝度の差を被検査物表面の赤外線放射率の差を表す指標とみなして溶接部領域を検出する第1の過程と、上記溶接部領域の形状、上記溶接部領域内での赤外線画像の輝度値の分布パターン、上記分布パターンをもとに抽出された特徴量の少なくとも1つをもとに溶接の良否を判断する第2の過程と、を有することを特徴とするレーザ溶接部の検査方法が記載されている。特許文献3のレーザ溶接部の検査方法によれば、検査の信頼性を向上させることができるとともに、良否判定制度を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-206153号公報
【特許文献2】特開2015-182092号公報
【特許文献3】特開2003-065985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レーザ溶接では溶接不良が一定確率で発生するため、レーザ溶接工程中で正確にレーザ溶接の良否を判断することが求められている。
【0008】
レーザ溶接は接触状態がレーザ溶接物ごとにばらつくことと、溶接時の温度が安定しないことから、単なる抵抗絶対値で正確に溶接の良否を判断することが困難であり、従って改善が求められている。
【0009】
そこで本開示は、正確にレーザ溶接の良否を判断することができるレーザ溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は以下の手段によって上記目的を達成するものである。
【0011】
〈態様1〉2つの導電性被溶接物を重ね合わせ又は突き合わせ、そして重ね合わされた又は突き合わされた部分にレーザ光を照射することによって、上記2つの導電性被溶接物を溶接し、かつ、上記溶接の間に、上記2つの導電性被溶接物が溶接されるレーザ溶接部の直流抵抗を、交流電圧又は交流電流を用いて測定する、レーザ溶接方法。
〈態様2〉上記交流電圧又は交流電流の周波数が900Hz~1100Hzである、態様1に記載の方法。
〈態様3〉上記レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下したときに、溶接が良好であると判断する、態様1に記載の方法。
〈態様4〉上記レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下し、そしてその後で、上記レーザ溶接部の直流抵抗が、第2の所定の値よりも大きい幅で増加したときに、溶接が良好であると判断する、態様1に記載の方法。
〈態様5〉上記2つの導電性被溶接物が、それぞれリチウムイオン電池の電極端子及びバスバーである、態様1~態様4のいずれか1つに記載の方法。
〈態様6〉態様5に記載の方法を含む、電池の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示のレーザ溶接方法によれば、溶接工程中で正確にレーザ溶接の良否を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示のレーザ溶接方法を説明するための概略図である。
【
図2】
図2は、リチウムイオン電池のナイキスト線図である。黒色プロットは921.5Hzにおける複素インピーダンスを示す。
【
図3】
図3は、本開示のレーザ溶接方法を説明するための概略図である。
【
図4】
図4は、本開示のリチウムイオン電池の電極端子とバスバーとのレーザ溶接前後のナイキスト線図である。白色プロットはレーザ溶接前のナイキスト線図を示し、灰色プロットはレーザ溶接後のナイキスト線図を示す。それぞれ黒色プロットは921.5Hzにおける複素インピーダンスを示す。
【
図5】
図5は、本開示のレーザ溶接方法において、レーザ溶接が良好であると判断される場合を説明するための概略図である。
【
図6】
図6は、本開示のレーザ溶接方法において、レーザ溶接が不良であると判断される場合を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内で種々変形して実施できる。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
《レーザ溶接方法》
本開示のレーザ溶接方法は、
2つの導電性被溶接物を重ね合わせ又は突き合わせ、そして重ね合わされた又は突き合わされた部分にレーザ光を照射することによって、上記2つの導電性被溶接物を溶接し、かつ、上記溶接の間に、上記2つの導電性被溶接物が溶接されるレーザ溶接部の直流抵抗を、交流電圧又は交流電流を用いて測定する、を含む。
【0016】
本開示のレーザ溶接方法によれば、溶接工程中で正確にレーザ溶接の良否を判断することができる。
【0017】
2つの導電性被溶接物をレーザ溶接したレーザ溶接部は、溶接時に温度が安定しないことから、単なる抵抗絶対値で正確に溶接を判断することが困難であった。そこで、本開示者は、レーザ溶接工程におけるレーザ溶接部の直流抵抗を、交流電圧又は交流電流を用いて測定することに着目した。具体的には例えば、リチウムイオン電池を介したレーザ溶接部の直流抵抗は、交流電圧又は交流電流の周波数が900Hz~1100Hzであるとき、リチウムイオン電池の複素インピーダンスの虚数成分が0となるため、レーザ溶接部の直流抵抗(実数成分)を測定することができる。
【0018】
2つの導電性被溶接物を重ね合わせ又は突き合わせた状態は、レーザ溶接する部分が面接触した状態である。一方、レーザ溶接直後は、レーザ溶接と同時にレーザ溶接する部分の面接触が解消され、溶接された状態である。そのため、面接触した状態の直流抵抗(第1の所定の値)と比較して、レーザ溶接直後の直流抵抗が大幅に低下することが考えられ、このとき、レーザ溶接が良好であると判断することができる。一方、第1の所定の値と比較して、レーザ溶接直後の直流抵抗が大幅に低下しないとき、レーザ溶接が不良であると判断することができる。
【0019】
さらに、レーザ照射中は、レーザ溶接の熱によりレーザ溶接部が発熱し金属抵抗が増加し、レーザ溶接直後の直流抵抗(第2の所定の値)と比較して、レーザ溶接中の直流抵抗が大きい幅で増加する。そのため、レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下し、そしてその後、レーザ溶接部の直流抵抗が第2の所定の値よりも大きい幅で増加したとき、レーザ溶接が良好であると判断することができる。一方、レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下しないとき、又はその後、レーザ溶接部の直流抵抗が第2の所定の値よりも大きい幅で増加しないとき、レーザ溶接が不良であると判断することができる。
【0020】
以下、本開示の方法を詳細に説明する。
【0021】
〈レーザ溶接部〉
レーザ溶接部は、溶接の間に、2つの導電性被溶接物が溶接される部分である。
【0022】
〈導電性被溶接物〉
導電性被溶接物は、特に限定されないが、レーザ光で溶融し対象物を電気的に接合されるものであり、公知のものを用いてもよい。導電性被溶接物は、特に限定されないが、リチウムイオン電池の電極端子及びバスバーであることが好ましい。
【0023】
図1は、本開示の方法で溶接されるレーザ溶接部の1つの態様を示す概略図であるが、この場合に限られない。
【0024】
2つの導電性被溶接物として、それぞれリチウムイオン電池の電極端子11とバスバー12を用いている。リチウムイオン電池の電極端子11の上にバスバー12を重ね合わせて載置し、交流インピーダンス測定装置のプローブ13がバスバー12上に電気的に接続されている。バスバー12の上からレーザ光14を照射し、レーザ溶接部15を形成している。レーザ光は公知の技術を用いることができる。
【0025】
〈直流抵抗〉
本開示のレーザ溶接方法は、レーザ溶接部の直流抵抗を、交流電圧又は交流電流を用いて測定する、を含む。
【0026】
交流インピーダンス法によれば、例えば、周波数応答解析装置(FRA)及びポテンショガルバのスタット(PGS)の組み合わせを用いることができる。FRA構成する発振器から任意の周波数の正弦波信号が出力され、当該正弦波信号に応じた参照二次電池の電流信号I(t)及び電圧信号V(t)がPGSからFRAに入力される。そして、FRAにおいて、電流信号I(t)および電圧信号V(t)が離散フーリエ周波数変換によって周波数領域のデータに変換され、周波数f=(ω/2π)における複素インピーダンス(Z=Re(Z)+Im(Z))が測定される。実数成分Re(Z)は直流抵抗成分を表し、虚数成分Im(Z)はリアクタンス成分を表す。
本開示ではRe(Z)の値をレーザ溶接部の直流抵抗とする。
【0027】
図2は、リチウムイオン電池の複素インピーダンスZの実測結果を表すナイキストプロットの一例を示す。横軸は複素インピーダンスZの実部Re(Z)であり、縦軸は複素インピーダンスZの虚部-Im(Z)である。-Im(Z)>0の領域においてRe(Z)が大きくなるほど低周波数の複素インピーダンスZを表している。-Im(Z)=0におけるRe(Z)の値はリチウムイオン電池の電解液中の移動抵抗に相当する。-Im(Z)>0の領域における略半円形状の部分の曲率半径は、リチウムイオン電池の電荷移動抵抗に相当する。
【0028】
本開示では、複素インピーダンスのIm(Z)(リアクタンス成分)の影響が小さくなるという観点から、交流電圧又は交流電流の周波数は、特に限定されないが、900Hz~1100Hzであることが好ましい。
【0029】
交流インピーダンスの測定方法は、例えば、リサージュ法、交流ブリッジ法等のアナログ方式や、デジタル・フーリエ積分法、ノイズ印加による高速フーリエ変換法等のデジタル方式を採用することができる。
【0030】
〈レーザ溶接の良否の判断〉
本開示のレーザ溶接方法は、レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下したときに、溶接が良好であると判断する、を含んでもよい。
【0031】
第1の所定の値は、特に限定されないが、具体的には例えば、レーザ溶接の溶接前の2つの導電性被溶接物を重ね合わせ又は突き合わせた状態であり、レーザ溶接部が単に面接触された状態で計測される直流抵抗である。
【0032】
レーザ溶接が良好であると判断される場合、レーザ溶接直後の直流抵抗は第1の所定の値より大きい幅で低下する。一方、レーザ溶接が不良であると判断される場合、第1の所定の値と比較して、レーザ溶接直後の直流抵抗が大きい幅で低下しない。
【0033】
図3及び
図4を用いて、リチウムイオン電池の電極端子とバスバーとのレーザ溶接の1つの態様を説明するが、この場合に限られない。
図3は、リチウムイオン電池の電極端子とバスバーとのレーザ溶接方法の1つの態様を示す概略図であり、
図4は、レーザ溶接前後のリチウムイオン電池のナイキスト線図の一例である。
【0034】
図3において、リチウムイオン電池31には2つの電極端子11、32があり、電極端子11上にバスバー12が重ね合わさせて載置されている。対極の電極端子32上にも同様にバスバー12’が重ね合わさせて載置されている。バスバー12とバスバー12’は、交流インピーダンス測定装置33を介して電気的に接続されている。レーザ光14をバスバー12から照射し、レーザ溶接部15を形成する。レーザ溶接工程中の直流抵抗を交流インピーダンス測定装置33で計測し、レーザ溶接部を検査する。例えば、
図4に示すように、レーザ溶接前後で900~1100Hzにおける直流抵抗Re(Z)が大きい幅で低下したときにレーザ溶接が良好であると判断してもよい。
【0035】
本開示のレーザ溶接方法は、レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下し、そしてその後で、上記レーザ溶接部の直流抵抗が、第2の所定の値よりも大きい幅で増加したときに、溶接が良好であると判断する、を含んでもよい。
【0036】
第2の所定の値は、特に限定されないが、具体的には例えば、レーザ溶接直後に計測される直流抵抗である。レーザ溶接直後は、特に限定されないが、具体的には例えば、レーザ溶接と同時にレーザ溶接する部分の面接触が解消され、レーザ溶接部が溶接された状態である。
【0037】
レーザ照射中は、レーザ溶接の熱によりレーザ溶接部が発熱し金属抵抗が増加し、第2の所定の値と比較して、レーザ溶接中の直流抵抗が大きい幅で増加する。そのため、レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下し、そしてその後、レーザ溶接部の直流抵抗が第2の所定の値よりも大きい幅で増加したとき、レーザ溶接が良好であると判断することができる。一方、レーザ溶接部の直流抵抗が、第1の所定の値よりも大きい幅で低下しないとき、又はその後、レーザ溶接部の直流抵抗が第2の所定の値よりも大きい幅で増加しないとき、レーザ溶接が不良であると判断することができる。
【0038】
図5は、レーザ溶接が良好であると判断される場合における、レーザ溶接工程及びそれぞれの工程における直流抵抗を示す概略図の一例であるが、この場合に限られない。
【0039】
2つの被導電性溶接物は、それぞれ、リチウムイオン電池の電極端子11とバスバー12である。溶接前において、リチウムイオン電池の電極端子11とバスバー12が面接触した状態であり、直流抵抗は高い値を示す(5A)。次いで、レーザ溶接直後において、リチウムイオン電池の電極端子11とバスバー12の面接触が解消され、レーザ溶接部15を形成する。その結果、レーザ溶接部の直流抵抗は、第1の所定の値よりも大きい幅での低下する(5B)。次いで、レーザ溶接中は、レーザ溶接部の温度上昇により、レーザ溶接部の直流抵抗は、第2の所定の値より大きい幅で増加する(5C)。レーザ溶接後は、自然放冷によりレーザ溶接部の直流抵抗は低下し、レーザ溶接直後の直流抵抗と同等になる(5D)。
【0040】
図6は、レーザ溶接が不良であると判断される場合における、レーザ溶接工程及びそれぞれの工程における直流抵抗を示す概略図の一例であるが、この場合に限られない。
【0041】
2つの被導電性溶接物は、それぞれ、リチウムイオン電池の電極端子11とバスバー12である。溶接前において、リチウムイオン電池の電極端子11とバスバー12が面接触した状態であり、直流抵抗は高い値を示す(6A)。レーザ溶接直後において、バスバー12の溶け込みが不十分である場合、すなわち十分な深さのレーザ溶接部が形成されない場合、レーザ溶接部の直流抵抗の変化が見られず、第1の所定の値よりも大きい幅での抵抗低下が確認できない(6B)。次いで、レーザ溶接中は、レーザ溶接部の温度上昇により、レーザ溶接部の直流抵抗は、第2の所定の値より大きい幅で増加する(6C)。レーザ溶接後は、自然放冷によりレーザ溶接部の直流抵抗は低下するが、リチウムイオン電池の端子とバスバーが面接触した状態の直流抵抗と同等になる(6D)。
【0042】
〈リチウムイオン電池〉
本実施形態のリチウムイオン電池は、特に限定されず、公知のリチウムイオン電池を採用することができる。例えば、以下の正極活物質、負極活物質、及び電解液を組み合わせたリチウムイオン電池を使用することができる。
【0043】
正極活物質の材料は、特に限定されない。例えば、正極活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、Li1+xMn2-x-yMyO4(Mは、Al、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnから選ばれる1種以上の金属元素)で表される組成の異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム(LixTiOy)、リン酸金属リチウム(LiMPO4、MはFe、Mn、Co、及びNiから選ばれる1種以上の金属)等であってよいが、これらに限定されない。
【0044】
負極活物質の材料は、特に限定されない。負極活物質は、これが、金属イオン、例えば、リチウムイオン等を吸蔵・放出することができる場合には、特に限定されない。負極活物質は、金属粒子、例えば、Li、Sn、Si、若しくはIn等;リチウム合金粒子、例えば、リチウムと、チタン、マグネシウム、又はアルミニウム等とのリチウム合金粒子;及び炭素材料、例えば、カーボン、ハードカーボン、ソフトカーボン、及びグラファイト等;並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0045】
電解液は、支持塩及び溶媒を含有することが好ましい。
【0046】
リチウムイオン伝導性を有する電解液の支持塩(リチウム塩)としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6等の無機リチウム塩、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(FSO2)2、LiC(CF3SO2)3等の有機リチウム塩が挙げられる。
【0047】
電解液に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状エステル(環状カーボネート)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状エステル(鎖状カーボネート)が挙げられる。電解液は、2種以上の溶媒を含有することが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
11 電極端子
12、12’ バスバー
13 プローブ
14 レーザ光
15 レーザ溶接部
31 リチウムイオン電池
32 対極の電極端子
33 交流インピーダンス測定装置