(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014840
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ポリオレフィン組成物の製造方法及びポリオレフィン組成物を含む成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
C08J3/20 CEP
C08J3/20 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117737
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼田 祥
(72)【発明者】
【氏名】池田 直人
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA13
4F070AA15
4F070AA30
4F070AB11
4F070AD02
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、剛性及び衝撃特性に優れたポリオレフィン組成物の製造方法及びポリオレフィン組成物を含む成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】セルロース繊維(a1)とカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)とを混合し、セルロース繊維混合物(A1)を得る工程(1)、前記セルロース繊維混合物(A1)、ポリオレフィン(B)及びエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)を混合する工程(2)を有するポリオレフィン組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維(a1)とカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)とを混合し、セルロース繊維混合物(A1)を得る工程(1)、
前記セルロース繊維混合物(A1)、ポリオレフィン(B)及びエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)を混合する工程(2)
を有するポリオレフィン組成物の製造方法。
【請求項2】
前記カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)が、スチレン/(メタ)アクリル樹脂及び(メタ)アクリル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン組成物の製造方法。
【請求項3】
前記エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)が、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とポリプロピレンとの反応物(C1)及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とプロピレンとの共重合物(C2)であり、下記(i)、(ii)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン組成物の製造方法。
(i)セルロース繊維(a1)100質量部に対して、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)が5質量部以上1,000質量部以下含有する
(ii)エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)のエポキシ当量が142以上23,000以下である
【請求項4】
前記エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)が、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とスチレン類とポリプロピレンとの反応物(C3)及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とスチレン類とプロピレンとの共重合物(C4)であること特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られたポリオレフィン組成物を用いることを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性及び衝撃特性に優れたポリオレフィン組成物の製造方法、並びにポリオレフィン組成物を含む成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形材料用樹脂用補強材料として、タルクやガラス繊維が用いられている。タルクは安価であるが多量に添加しなければ求める機械特性を得ることが出来ないため、成形体が重くなる。ガラス繊維も比較的安価であるが、成形加工時に繊維の切断が起こるためマテリアルリサイクルが難しく、ガラス繊維配合材料は焼却が困難であるため、埋め立て処分が必要となるなどリサイクル性に課題がある。
【0003】
一方、セルロース繊維は天然物由来でリサイクル性に優れること、他の補強材料に比べて軽量であること、セルロース繊維自体が高い弾性率を有していることから樹脂の補強材料として活用することが期待されており、技術の開発が進められている。
【0004】
例えば特許文献1では、セルロース繊維とポリオレフィン樹脂からなる樹脂組成物にエポキシ含有ポリプロピレン(以下PPと略すことがある)を配合することで自動車内装用成形品、家電製品の外装用成形品等の使用用途に適した曲げ強度、引張強度及び曲げ弾性率を有する樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2では、親水性のセルロース繊維表面を水に不溶のスチレン/アクリル樹脂で表面改質することで、疎水性のポリオレフィン樹脂中でのセルロース繊維の分散性を向上させ高い弾性率を有する樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2いずれにおいても構造用材料に要求される衝撃強度について言及がなされていない。特許文献1においては親水性である植物繊維を疎水性の樹脂にそのまま配合しているため樹脂中で植物繊維が凝集して十分な補強効果が発現できず、また特許文献2においてはセルロース繊維表面を改質するためにスチレン/アクリル樹脂を配合すると、弾性率は向上するが所望される衝撃強度には至らなかった。構造材料用成形部品に必要な物性として剛性すなわち高い弾性率と、高い衝撃強度の両立が求められている。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/099530号
【特許文献2】国際公開第2020/235310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、剛性及び衝撃特性に優れたポリオレフィン組成物の製造方法及びポリオレフィン組成物を含む成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、カルボキシル基を有するビニル系ポリマーで表面を改質したセルロース繊維に対して、さらにエポキシ基を含有するオレフィン重合物を配合することで、弾性率を向上させるだけでなく、衝撃強度においても高い値を示すポリオレフィン組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、
<1>セルロース繊維(a1)とカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)とを混合し、セルロース繊維混合物(A1)を得る工程(1)、
前記セルロース繊維混合物(A1)、ポリオレフィン(B)及びエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)を混合する工程(2)
を有するポリオレフィン組成物の製造方法、
<2>前記カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)が、スチレン/(メタ)アクリル樹脂及び(メタ)アクリル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする前記<1>に記載のポリオレフィン組成物の製造方法、
<3>前記エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)が、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とポリプロピレンとの反応物(C1)及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とプロピレンとの共重合物(C2)であり、下記(i)、(ii)を満たすことを特徴とする前記<1>に記載のポリオレフィン組成物の製造方法、
(i)セルロース繊維(a1)100質量部に対して、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)が5質量部以上1,000質量部以下含有する
(ii)エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)のエポキシ当量が142以上23,000以下である
<4>前記エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)が、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とスチレン類とポリプロピレンとの反応物(C3)及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とスチレン類とプロピレンとの共重合物(C4)であること特徴とする前記<1>に記載のポリオレフィン組成物の製造方法、
<5>前記<1>乃至<4>のいずれか1項に記載の製造方法によって得られたポリオレフィン組成物を用いることを特徴とする成形体の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剛性と衝撃特性が優れたポリオレフィン組成物を提供することが出来る。また、各種用途に利用可能なポリオレフィン組成物からなる成形体を提供することが出来る。
【0011】
本発明のセルロース繊維混合物(A1)は、セルロース繊維(a1)とカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)とを予め混合してセルロース繊維表面を疎水的に改質することで、本来親水性の高いセルロース繊維をポリオレフィン樹脂中で凝集させることなく、効率的かつ均一に分散させることが出来る。また、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)は、極性を有するエポキシ基と極性を有さないポリオレフィン構造の両方を持つため、セルロース繊維混合物(A1)のポリオレフィンへの相溶性を更に向上させることが出来る。これらの結果、ポリオレフィン組成物の剛性をより高めることができる。更に、セルロース繊維混合物(A1)の表面のカルボキシル基(カルボン酸無水物の加水分解物を含む)は、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)のエポキシ基と一部/又は全て反応し架橋構造を形成することができる。セルロース繊維のネットワークに加え、セルロース繊維とエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)の緩やかな架橋構造が存在することで、外部からの応力を吸収し、剛性だけでなく衝撃特性も向上したと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリオレフィン組成物の製造方法では、(1)セルロース繊維(a1)とカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)を混合し、セルロース繊維混合物(A1)を得る工程の後に、(2)前記セルロース繊維混合物(A1)とポリオレフィン(B)、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)とを混合する工程をとる。以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の記載は本発明の実施形態の一例であり、本記載に限定されるものではない。
【0013】
<セルロース繊維混合物(A1)を得る工程>
本発明においてセルロース繊維混合物(A1)は、セルロース繊維(a1)とカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)とを混合することで得られる。セルロース繊維(a1)をカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)に混合できれば、混合方法は特に限定されない。例えば、セルロース繊維(a1)とカルボキシル基を有するビニル系ポリマーを直接混合する方法、カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)が常温で固体である場合は融点以上のカルボキシル基を有するビニル系ポリマーと混合する方法、カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)を水及び/又はアルコールやグリコールエーテル等の適当な有機溶媒と混合した後セルロース繊維(a1)と混合し、その後水、及び/又は有機溶媒を除く方法等が挙げられる。
【0014】
セルロース繊維(a1)は、植物(例えば、木材、竹、麻、コットン、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、広葉樹未漂白クラフトパルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹未漂白サルファイトパルプ、針葉樹漂白サルファイトパルプ、サーモメカニカルパルプ、再生パルプ、古紙等))、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものが知られており、本発明ではそのいずれも使用できる。好ましくは、植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは、植物由来のセルロース繊維である。植物由来のセルロース繊維の中でも、パルプ(特に針葉樹未漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ)が特に好ましい。
【0015】
セルロース繊維(a1)は、予めビーズミル、高圧ホモジナイザー、ジェットミル、超音波撹拌装置、石臼式グラインダーなどで予め解繊処理をしてミクロフィブリル化、ナノフィブリル化したものでも未解繊のものでもいずれも用いることができる。セルロース繊維(a1)を予め解繊した場合の解繊状態の確認は、次のようにして行う。
(1)解繊前後のセルロース繊維を各々、水に0.02~0.1%濃度となるように加え、超音波処理することで十分に分散させた各分散液を調製する。
(2)次いで、各分散液をガラスシャーレに1滴落とし、カバーガラスをかぶせ余分な液を除いたのち、光学顕微鏡を用いて100~500倍で観察し、解繊前後のセルロース繊維の繊維長、繊維径を測定する。解繊処理で繊維の細径化が進んでいる場合は、偏光顕微鏡では見えないため、電子顕微鏡観察に供することにより解繊された繊維の繊維径を測定する。
(3)解繊前後で繊維長、繊維径に違いがあることを確認する。
【0016】
カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)は、セルロース繊維(a1)の表面を疎水化する疎水化剤としての機能を有するものであり、少なくとも分子内にセルロースとの親和性が良いカルボキシル基と、セルロース表面を疎水化するための疎水性基の両方を含む必要がある。具体的には、カルボキシル基を有するビニル系単量体と疎水性を有するビニル系単量体とを含む単量体混合物の重合物であるビニル系ポリマーである。カルボキシル基を有するビニル系ポリマーは10~200mgKOH/gの酸価を有することが好ましく、重量平均分子量は5,000~200,000であることが好ましく、ガラス転移温度は40~150℃であることが好ましい。また、本発明においてカルボキシル基を有するビニル系ポリマーは、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル樹脂であることがより好ましい。スチレン/(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸との重合物に代表されるスチレン/アクリル酸樹脂や、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの重合物に代表されるスチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル樹脂が挙げられる。また、(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの重合物に代表される(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル樹脂が挙げられる。中でもスチレン/(メタ)アクリル酸樹脂、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル樹脂が特に好ましい。これらのカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)は単独、又は2種以上を併用することができる。
【0017】
カルボキシル基を有するビニル系単量体としては(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、アコニット酸、桂皮酸等が列挙される。これらの単量体は単独、又は2種類以上を併用することができる。これらのなかでも(メタ)アクリル酸が好ましい。カルボキシル基は本発明の効果を損なわない範囲でその一部、又は全てがアルカリ金属、アルカリ土類金属、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウムイオンの塩の形であっても構わない。さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、カルボン酸無水物を有するビニル系単量体を併用しても良い。カルボン酸無水物を有するビニル系単量体としてはイタコン酸無水物、マレイン酸無水物、フマル酸無水物、シトラコン酸無水物、シクロヘキセンジカルボン酸無水物等が列挙される。
【0018】
疎水性を有するビニル系単量体とは、大気圧下25℃の水100gに対する溶解量が10g以下の、カルボキシル基を有するビニル系単量体と共重合可能なビニル系単量体を言う。例えば、前記溶解量を満足する(メタ)アクリル酸エステルやスチレン系単量体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の直鎖状構造の飽和アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等の分岐鎖状構造の飽和アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環式アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、スチレン系単量体としては、具体的にはスチレン、αメチルスチレン、ジビニルベンゼン、4-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-n-オクチルスチレン、4-ビニル安息香酸、4-アミノスチレン、4-メトキシスチレン、4-ニトロスチレン、スチルベン、4,4’-ジメチル-スチルベン等のスチレン及びその誘導体が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、αメチルスチレンが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、スチレン、αメチルスチレンがより好ましい。これらのビニル系単量体は単独、又は2種類以上を併用することができる。
【0019】
また、セルロース繊維混合物(A1)は本発明の効果を妨げない範囲で、セルロースの官能基を置換修飾したような変性セルロース繊維(A2)を、セルロース繊維混合物(A1)100質量部に対して10質量部以下併用してもよい。例えば、セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸、無水ヘキサン酸、無水デカン酸、無水安息香酸、無水ステアリン酸などの酸無水物や無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、アルキル若しくはアルケニルコハク酸無水物、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリブタジエンなどの多塩基酸無水物等でエステル化した変性セルロース繊維でもよい。変性セルロース繊維(A2)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0020】
<ポリオレフィン組成物を得る工程>
本発明においてポリオレフィン組成物は、前記セルロース繊維混合物(A1)とポリオレフィン(B)、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)とを混合することで得られる。より均一に混合するため、溶融混練または半溶融混練によって混合するのが好ましく、複数の混合工程を組み合わせても良い。均一に混合されているかどうかは、ポリオレフィン組成物中のセルロース繊維(a1)の分散状態によって確認できる。ポリオレフィン組成物を0.1gとり、熱プレス機(東洋精機製)で190℃10MPaの圧力をかけて作成したプレスフィルムを目視し1mm以上の粗大な粒の数を数え、判断する。粒の数が5個未満であることが実用レベルである。セルロース繊維(a1)はこの混合工程で繊維が細径化する、いわゆる解繊されても良い。
【0021】
<混練装置>
混合する装置としてはポリオレフィンの混合、混練に用いる各種方法を用いることが出来る。例えば一軸、又は多軸混練機、混練試験装置、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ボールミルなど各種ミルなどにより機械的に摩砕しながら加熱する溶融混練および半溶融混練を用いることが出来る。
【0022】
多軸混練機を用いる場合は、汎用性、入手のし易さから二軸混練機が好ましい。二軸混練機は同方向、異方向回転二軸混練機の何れも使用することが出来る。本発明で使用される二軸混練機のスクリューの長さ/スクリュー径は通常15~60、好ましくは30~60である。また、スクリューには1か所、又は2か所以上のせき止め構造を有してもよい。
【0023】
混練温度は、ポリオレフィン(B)が溶融できる温度であれば特に限定されない。混練時に、セルロース繊維(a1)を二軸又は多軸混練機により解繊する場合、処理回数(パス回数)は、目的とする植物繊維の繊維径、繊維長、求められるポリオレフィン組成物の物性等により変化するが、通常1~8回、好ましくは1~4回、更に好ましくは1~2回である。また、混練時間は通常60分以下、好ましくは30分以下、さらに好ましくは15分以下である。パス回数や混練時間が多くなりすぎると生産性を落とすだけなく、植物繊維そのものが熱劣化し、ポリオレフィン組成物の色目悪化につながることがある。
【0024】
ポリオレフィン(B)は、成型材料用途に通常用いられているものであれば特に限定されない。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のオレフィンの単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等のエチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等が列挙される。なお、ポリオレフィン(B)は、カルボキシル基やエポキシ基等の反応性基を含まない。本発明の効果を妨げない範囲で、他の熱可塑性樹脂を併用することも出来る、熱可塑性樹脂としては、ナイロンなどのポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル樹脂;ポリメチルメタクリレートやポリエチルメタクリレートなどのアクリル樹脂;ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル-スチレン樹脂などのスチレン樹脂;セルロース樹脂等の熱可塑性樹脂、ならびにオレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等樹脂及びこれらの二種以上の混合物が挙げられる。この中でもポリ乳酸を併用することが特に好ましい。
【0025】
エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)はオレフィン重合物の主鎖、及び/又は側鎖にエポキシ基を有すれば特に限定されない。例えば、エポキシ基を含有する単量体とオレフィンを共重合することや、エポキシ基を含有する重合体とオレフィン重合物を反応させること、過酸化物や電子線を用いてポリオレフィン(B)にラジカルを導入した後、エポキシ基を含有する単量体と反応させること等で得たものであってもよい。またエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)中のエポキシ基は、一本のポリマー鎖上でどのように分布していても構わない。例えばランダム的、ブロック的、グラジエント的、末端のみにエポキシ基が導入されていても良い。エポキシ基を含有する単量体としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が列挙される。オレフィンとしてはポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィンの単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等のエチレン-αオレフィン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が例示される。また、オレフィン重合物として末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリプロピレン(d)を用いることもできる。
【0026】
上記の中でも、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)は、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とポリプロピレンとの反応物(C1)及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とプロピレンとの共重合物(C2)及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とスチレン類とポリプロピレンとの反応物(C3)及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とスチレン類とプロピレンとの共重合物(C4)であることが、本発明で得られるポリオレフィン組成物の機械特性の面から好ましい。
【0027】
グリシジル基を有する(メタ)アクリレート類としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が例示される。
【0028】
スチレン類としては、スチレン、αメチルスチレン、ジビニルベンゼン、4-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-n-オクチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、4-ビニル安息香酸、4-アミノスチレン、4-メトキシスチレン、4-ニトロスチレン、スチルベン、4,4’-ジメチル-スチルベン等が挙げられ、この中でもスチレン、αメチルスチレンが特に好ましい。
【0029】
本発明において、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)の使用量は、セルロース繊維(a1)100質量部に対して5質量部以上、1,000質量部以下であることが、得られるポリオレフィン組成物の機械特性の面から好ましい。
【0030】
また、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)のエポキシ当量は、142以上23,000以下であることが、得られるポリオレフィン組成物の機械特性の面から好ましい。
ここで、エポキシ当量とは、JIS K7236で1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量として定義され、数値が小さいほどエポキシ基の含有量は大きい。
本発明においてエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)のエポキシ当量は、FT-IR測定のカルボニルピークの最大吸光度と、後述する方法であらかじめ作成した検量線を元に計算することができる。具体的には、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)のFT-IR吸光度スペクトルのカルボニルピークの最大吸光度と、NMR測定によって求めたエポキシ基を含有する単量体の含有量とを関連付ける検量線を事前に作成しておき、当該検量線を用いて、対象となるエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)のFT-IR最大吸光度から、エポキシ基を含有する単量体の含有量を計算し、エポキシ当量へと変換することができる。
【0031】
FT-IR測定は下記の手順で行うことができる。
(測定試料の調製)
容器にエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)1部とキシレン5部を仕込み、170℃に昇温して撹拌する。固形物が見られなくなったのち、アセトン40部で再沈澱させることにより未反応のエポキシ基を含有する単量体や、その単独重合体を除去する。濾別物を80℃で乾燥させる。一連の操作によりエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)を精製することで、これ以降分析によって検出されるエポキシ基およびエポキシ基に伴って導入された官能基が、オレフィン重合物に結合したものであると同定できる。
(FT-IR測定)
フーリエ変換赤外分光装置(PerkinElmer Japan合同会社製「Frontier」)を用いて、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)の吸光度スペクトルを測定する。例えばグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とポリプロピレンとの反応物(C1)においては、一回反射ATR法による測定を実施し、2,910~2,960cm-1の最大吸光度を1として規格化し、1,700~1,750cm-1の領域をカルボニルピークとして帰属し、その最大吸光度を求めた。(メタ)アクリレート構造中のカルボニルのピークが存在することから、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート類がポリプロピレンに結合していることを確認した。
【0032】
本発明においてポリオレフィン組成物を製造する際、セルロース繊維組成物(A1)/ポリオレフィン(B)/エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)=2~80/5~97.8/0.2~15となる質量比を混合することが、剛性、衝撃を両立する点から好ましい。
【0033】
本発明で得られたポリオレフィン組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の成分として、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、難燃剤、顔料、染料、無機充填剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、発泡助剤など各種添加剤を配合してもよい。
【0034】
本発明で得られたポリオレフィン組成物は、射出、押出、プレス、ブロー、3Dプリンティングなど各種成形方法で成形することが出来る。成形体の用途としては、例えば、自動車、バイク、自転車、鉄道、ドローン、ロケット、航空機、船舶等の輸送機械用の内外装材や筐体等、風力発電機、水力発電機等のエネルギー機械、エアコン、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、AV機器、デジタルカメラ、パソコン等の家電筐体、電子基板、携帯電話、スマートフォン等の通信機器筐体、松葉づえ、車いす等の医療用器具、スニーカーやビジネスシューズ等の靴、タイヤ、球技スポーツ用のボール、スキーブーツ、スノーボード板、ゴルフクラブ、プロテクタ、釣り糸、疑似餌等のスポーツ用品、テントやハンモックなどのアウトドア用品、電線被覆材、水道管、ガス管等の土木建築資材、柱材、床材、化粧板、窓枠、断熱材等の建築材、本棚、机、椅子等の家具、産業用ロボット、家庭用ロボット、ホットメルト接着剤、積層式3Dプリンタ用フィラメントやサポート剤、フィルムやテープなどの包装材、ペットボトル等の樹脂容器、メガネフレーム、ごみ箱、シャープペンシルケース等の生活雑貨等が挙げられる。
【実施例0035】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特にことわりのないかぎり、「部」とあるのは「質量部」を示す。
【0036】
<カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)の製造>
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500質量部を仕込み、撹拌しながら内温140℃まで昇温した。カルボキシル基を有するビニル系単量体としてアクリル酸100質量部、疎水性を有するビニル系単量体としてアクリル酸2-エチルヘキシル150質量部、スチレン250質量部、重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキサイド10質量部を3時間かけて仕込んだ。仕込み終了後、内温145℃で2時間保温し、その後系内の未反応物及び溶媒を除去し、カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2-1)を得た。
【0037】
(合成例2)
撹拌機、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、カルボキシル基を有するビニル系単量体としてアクリル酸20部、疎水性を有するビニル系単量体としてスチレン80部、アゾビスイソブチロニトリルを2.0部及びイソプロピルアルコール100部を仕込み、80℃で7時間保持し、次いでアゾビスイソブチロニトリルを1.0部仕込みさらに同温度で3時間保持した。次いで30質量%の水酸化カリウム水溶液51.9部を加えた後、水300部を加え、更に昇温してイソプロピルアルコールの留去を行い、カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2-2)の水分散液を得た。
【0038】
<エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)の製造>
(合成例3)
180℃に加熱して毎分50回転で撹拌混合している容器に、ポリエチレン87部を仕込み溶融させた。グリシジルメタクリレート12.5部にビス(1-t-ブチルペルオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン0.5部を溶解させたものを、1分間に1回、10分間かけて添加した。その後、さらに5分間撹拌を継続したのち内容物を取り出し、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C-1)を得た。
【0039】
(合成例4~7、14)
原料の種類及び仕込み量を表1のように変えた以外は、合成例3に記載の方法に準じてエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C-2、C-6、C-7、C-8、C-13)を得た。
【0040】
【表1】
表1中、(*1)はビス(1-t-ブチルペルオキシ-1-メチルエチル)ベンゼンを表す。
【0041】
(合成例8)
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に、末端不飽和ポリプロピレン(ビスコール330P:重量平均分子量40,000:三洋化成工業株式会社製)100部と無水マレイン酸2.5部を仕込んで撹拌混合した。215℃に昇温したのち8時間撹拌した。溶融状態のまま取り出して冷却したのち粉砕し、アセトンで洗浄した。80℃で2時間乾燥させ、末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン(d-1)を得た。
【0042】
(合成例9)
原料の種類及び仕込み量を表2のように変えた以外は、合成例8に記載の方法に準じて末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン(d-2)を得た。
【0043】
【表2】
ビスコール660P:末端不飽和ポリプロピレン(重量平均分子量10,000:三洋化成工業株式会社製)
【0044】
(合成例10)
170℃に加熱して毎分50回転で撹拌混合している容器に、末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン(d-1)1部とエチレン-グリシジルメタクリレート系共重合体(ボンドファースト(登録商標)BF-30C、住友化学株式会社製)8部を仕込み溶融させた。15分間撹拌を継続したのち内容物を取り出し、エポキシ基がブロック的に導入されたエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C-9)を得た。
【0045】
(合成例11~13)
原料の種類及び仕込み量を表3のように変えた以外は、合成例10に記載の方法に準じてエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C-10、C-11、C-12)を得た。
【0046】
【0047】
<エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)の評価>
(精製方法)
合成例5~7、14によって合成したエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)は、以下に示す方法に従って精製してから1HNMR測定、 FT-IR測定に用いた。容器にエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)1部とキシレン5部を仕込み、170℃に昇温して撹拌した。固形物が見られなくなったのち、アセトン40部で最沈澱させ濾過し80℃で乾燥させた。
【0048】
(1HNMR測定)
エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)を重溶媒に溶解させ、1HNMR測定に供した。得られたスペクトルから、エポキシ基またはその定数倍の物質量を有する官能基に由来するピークと、オレフィン重合物に由来するピークとの積分比から、エポキシ基の導入率を計算し、グリシジルメタクリレートの含有量を計算し、エポキシ当量へと変換した。例えば、C-6においては、4.3~4.7ppmに出現するグリシジル基由来のピークと、0.5~2.4ppmに出現する炭化水素由来のピークから、エポキシ当量を計算した。
【0049】
(FT-IR測定)
フーリエ変換赤外分光装置(PerkinElmer Japan合同会社製「Frontier」)を用いて、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)の吸光度スペクトルを測定した。一回反射ATR法による測定を実施し、2,910~2,960cm-1の最大吸光度を1として規格化し、1,700~1,750cm-1の領域をカルボニルピークとして帰属し、その最大吸光度を求めた。
【0050】
(エポキシ基の導入率計算)
エポキシ基の導入率は、エポキシ当量を求めることで実施した。エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量として定義され(JIS K7236)、数値が小さいほどエポキシ基の含有量は大きい。エポキシ基を含有するオレフィン重合物C-1~C-13について、FT-IR吸光度スペクトルのカルボニルピークの最大吸光度と検量線を元にエポキシ当量を計算した。具体的には、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)のFT-IR吸光度スペクトルのカルボニルピークの最大吸光度と、NMR測定によって求めたグリシジルメタクリレートの含有量とを関連付ける検量線を事前に作成しておき、C-1~C-13のFT-IR吸光度スペクトルの最大吸光度から、作成した検量線を用いてグリシジルメタクリレートの含有量を計算し、エポキシ当量へと変換した。エポキシ当量の計算結果を表4に示した。
【0051】
【表4】
C-3:エチレン-グリシジルメタクリレート系共重合体(ボンドファーストBF-2C(住友化学株式会社製))
C-4:エチレン-グリシジルメタクリレート系共重合体(ボンドファーストBF-30C(住友化学株式会社製))
C-5:エチレン-グリシジルメタクリレート系共重合体(ボンドファーストBF-E(住友化学株式会社製))
【0052】
<ポリオレフィン組成物の製造>
(実施例1)
容器へセルロース繊維(a1)20部と水44部からなる含水セルロース繊維を仕込み、80℃減圧下で水を留去した。カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2-1)6部、ジエチレングリコールジエチルエーテル40部を投入し、140℃で撹拌した。そののち減圧下で水とジエチレングリコールジエチルエーテルを留去し、セルロース繊維混合物(A1)を得た。
170℃に加熱して毎分50回転で撹拌混合している容器に、セルロース繊維混合物(A1)26部とポリオレフィン(B)としてポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロ(登録商標)J108M」)24部を仕込み溶融させた。毎分50回転で2分間撹拌したのち、毎分100回転で10分間撹拌した。
さらに前記ポリプロピレン44部とエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C-1)6部を仕込み溶融させた。毎分50回転で2分間撹拌したのち、毎分100回転で5分間撹拌してポリオレフィン組成物を得た。得られたポリオレフィン組成物を用いてプレスフィルムを作成し、均一に混合されているかについて目視で1mm以上の粗大な粒の数を数え、5個未満であることを確認した。
【0053】
(実施例2~28)
カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)の種類及び仕込み量、ポリオレフィン(B)の仕込み量、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)の種類及び仕込み量を表5のように変えた以外は、実施例1に記載の方法に準じてポリオレフィン組成物を得た。
【0054】
(比較例1)
170℃に加熱して毎分50回転で撹拌混合している容器に、セルロース繊維(a1)20部とポリオレフィン(B)としてポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロ(登録商標)J108M」)30部を仕込み溶融させた。毎分50回転で2分間撹拌したのち、毎分100回転で10分間撹拌した。
さらに前記ポリプロピレン50部を仕込み溶融させた。毎分50回転で2分間撹拌したのち、毎分100回転で5分間撹拌してポリオレフィン組成物を得た。
【0055】
(比較例2)
170℃に加熱して毎分50回転で撹拌混合している容器に、セルロース繊維(a1)20部とポリオレフィン(B)としてポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロ(登録商標)J108M」)30部を仕込み溶融させた。毎分50回転で2分間撹拌したのち、毎分100回転で10分間撹拌した。
さらに前記ポリプロピレン49部とエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C-7)1部を仕込み溶融させた。毎分50回転で2分間撹拌したのち、毎分100回転で5分間撹拌してポリオレフィン組成物を得た。
【0056】
(比較例3)
容器へセルロース繊維(a1)20部と水44部からなる含水セルロース繊維を仕込み、80℃減圧下で水を留去した。カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2-1)2部、ジエチレングリコールジエチルエーテル40部を投入し、140℃で撹拌した。そののち減圧下で水とジエチレングリコールジエチルエーテルを留去し、セルロース繊維混合物(A1)を得た。
170℃に加熱して毎分50回転で撹拌混合している容器に、セルロース繊維混合物(A1)22部とポリオレフィン(B)としてポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロ(登録商標)J108M」)28部を仕込み溶融させた。毎分50回転で2分間撹拌したのち、毎分100回転で10分間撹拌した。
さらに前記ポリプロピレン50部を仕込み溶融させた。毎分50回転で2分間撹拌したのち、毎分100回転で5分間撹拌してポリオレフィン組成物を得た。
【0057】
(比較例4~7)
カルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)の種類及び仕込み量、ポリオレフィン(B)の仕込み量を表5のように変えた以外は、比較例3に記載の方法に準じてポリオレフィン組成物を得た。
【0058】
<射出成形によるポリオレフィン組成物を含有する成形体の製造>
得られたポリオレフィン組成物を、シリンダー温度を200℃に設定した射出成型機((株)井元製作所製)に投入し、ダンベル型の試験片を得た。
【0059】
<ポリオレフィン組成物の評価>
(曲げ物性の測定)
得られたダンベル型の試験片に対し、万能試験機(オリエンテック(株)製「テンシロン(登録商標)RTM-50」)で曲げ弾性率を測定した結果を表5に示す。
【0060】
(衝撃強度の測定)
得られたダンベル型の試験片に対し、衝撃試験機((株)東洋精機製作所製 「IT」)でアイゾット衝撃試験を実施した。1サンプルにつき5回測定を行い、その平均値を表5に示す。
【0061】
(弾性率と衝撃強度の評価方法)
優れた機械的強度を有するポリオレフィン組成物であるためには、弾性率と衝撃強度を両立させることが重要である。そのため、弾性率と衝撃強度のそれぞれにおいて大小関係を比較するのではなく、弾性率と衝撃強度の積を計算し、その大小で機械的強度の優劣を判断した。評価結果を表5に示す。
【0062】
(衝撃強度の評価方法)
衝撃強度が14kJ/m2以下の場合には、衝撃強度が向上していないと判定した。判定結果を表5に示す。例えば比較例3~5は、(A1)の含有量を増やすにつれて弾性率が向上するが、衝撃強度はほとんど変化していない。このような状況では、衝撃強度が向上していないにも関わらず、弾性率と衝撃強度の積は大きくなってしまう。そのため、上記のような判断基準を設けた。
【0063】
【0064】
実施例6と比較例1、2、3の結果から、本発明に規定するカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)とエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)を併用する製造方法によって得られるポリオレフィン組成物は、それらを含有しない、もしくは単独で含有させただけでは達し得ない優れた機械特性を有することが分かる。
【0065】
実施例6、7、12、13、22、23と比較例3、4、5の結果から、本発明に規定するカルボキシル基を有するビニル系ポリマー(a2)とエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)の含有率を増減させても、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)を含まない場合と比較して優れた機械特性を有するポリオレフィン組成物が得られることが分かる。
【0066】
実施例1~5と実施例9、11、13の結果から、セルロース繊維(a1)の質量部に対するエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)の質量部が同等の場合において、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)がグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とポリプロピレンとの反応物(C1)及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とプロピレンとの共重合物(C2)であり、かつエポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)のエポキシ当量が23,000以下である実施例9、11、13は、(C)がグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とポリエチレンとの反応物又はエチレンとの共重合物である実施例1~5と比較して優れた機械特性を有するポリオレフィン組成物が得られることが分かる。
【0067】
実施例27、28と比較例4の結果から、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)が、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とスチレン類とポリプロピレンとの反応物(C3)及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類とスチレン類とプロピレンとの共重合物(C4)であっても、エポキシ基を含有するオレフィン重合物(C)を含まない場合と比較して優れた機械特性を有するポリオレフィン組成物が得られることが分かる。