(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014842
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】生体刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117740
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】391009800
【氏名又は名称】株式会社テクノリンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 辰之
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ05
(57)【要約】
【課題】刺激信号の大きさを瞬時に変化させること。
【解決手段】一対の電極を介して、生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、前記一対の電極の一方に接続される第1端子と、前記一対の電極の他方に接続される第2端子と、第1電源電圧を生成する第1電源回路と、前記第1電源電圧よりも低い第2電源電圧を生成する第2電源回路と、前記第1電源電圧が印加され、前記第1電源電圧に応じた第1高圧電圧を前記刺激信号として出力する第1高圧回路と、前記第2電源電圧が印加され、前記第2電源電圧に応じた第1低圧電圧を前記刺激信号として出力する第1低圧回路と、前記第2端子と接地との間に設けられた第1スイッチと、前記第1スイッチのオン、オフを制御するとともに、前記第1高圧電圧又は前記第1低圧電圧が、前記第1端子に前記刺激信号として出力されるよう、前記第1高圧回路及び前記第1低圧回路を制御する制御回路と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を介して、生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、
前記一対の電極の一方に接続される第1端子と、
前記一対の電極の他方に接続される第2端子と、
第1電源電圧を生成する第1電源回路と、
前記第1電源電圧よりも低い第2電源電圧を生成する第2電源回路と、
前記第1電源電圧が印加され、前記第1電源電圧に応じた第1高圧電圧を前記刺激信号として出力する第1高圧回路と、
前記第2電源電圧が印加され、前記第2電源電圧に応じた第1低圧電圧を前記刺激信号として出力する第1低圧回路と、
前記第2端子と接地との間に設けられた第1スイッチと、
前記第1スイッチのオン、オフを制御するとともに、前記第1高圧電圧又は前記第1低圧電圧が、前記第1端子に前記刺激信号として出力されるよう、前記第1高圧回路及び前記第1低圧回路を制御する制御回路と、
を備える生体刺激装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体刺激装置であって、
前記第1電源電圧が印加され、前記第1電源電圧に応じた第2高圧電圧を前記刺激信号として出力する第2高圧回路と、
前記第2電源電圧が印加され、前記第2電源電圧に応じた第2低圧電圧を前記刺激信号として出力する第2低圧回路と、
前記第1端子と接地との間に設けられた第2スイッチと、
を備え、
前記制御回路は、
前記第2スイッチのオン、オフを制御するとともに、前記第2高圧電圧又は前記第2低圧電圧が前記第2端子に前記刺激信号として出力されるよう、前記第2高圧回路及び前記第2低圧回路を制御する、
生体刺激装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生体刺激装置であって、
前記第2電源回路は、前記第2電源電圧のレベルを変更可能である、
生体刺激装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の生体刺激装置であって、
前記第1高圧回路は、
前記第1電源電圧が電源側の電極に印加される第1トランジスタと、
アノードが前記第1トランジスタの出力側の電極に接続され、カソードが前記第1端子に接続された第1ダイオードと、
を備え、
前記第1低圧回路は、
前記第2電源電圧が電源側の電極に印加される第2トランジスタと、
アノードが前記第2トランジスタの出力側の電極に接続され、カソードが前記第1端子に接続された第2ダイオードと、
を備える生体刺激装置。
【請求項5】
請求項2に記載の生体刺激装置であって、
前記制御回路は、第1パルスと、前記第1パルスとは逆極性で前記第1パルスよりも振幅の小さい第2パルスとが、前記刺激信号として前記第1及び第2端子の間に発生するように、前記第1及び第2高圧回路、前記第1及び第2低圧回路、前記第1及び第2スイッチをそれぞれ制御する、
生体刺激装置。
【請求項6】
請求項5に記載の生体刺激装置であって、
前記制御回路は、1つの前記第1パルスに対して、複数の前記第2パルスが発生するように、前記第1及び第2高圧回路、前記第1及び第2低圧回路、前記第1及び第2スイッチをそれぞれ制御する、
生体刺激装置。
【請求項7】
請求項5に記載の生体刺激装置であって、
前記制御回路は、前記第2パルスのパルス幅が、前記第1パルスのパルス幅よりも長くなるように、前記第1及び第2高圧回路、前記第1及び第2低圧回路、前記第1及び第2スイッチをそれぞれ制御する、
生体刺激装置。
【請求項8】
請求項5~7の何れか一項に記載の生体刺激装置であって、
前記制御回路は、第1期間、前記第1及び第2パルスを発生させた後、第2期間、前記第1期間の前記第1パルスの振幅を低下させて、前記第1及び第2パルスを発生させる、
生体刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の電極を介して、生体に刺激信号(パルス信号)を出力する生体刺激装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、刺激の強さは、出力する刺激信号の電圧レベル(パルスの振幅)に依存し、刺激信号の電圧が大きいほど刺激が強く、電圧が小さいほど刺激が弱くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の生体刺激装置では、刺激信号の電源電圧を生成する電源回路として、コイルと、コンデンサと、トランジスタと、を備えた昇圧回路が用いられている。このような生体刺激装置では、コンデンサの充放電における時定数が大きいことにより、刺激信号の大きさ(電圧レベル)を瞬時に変化させることは困難である。
【0005】
本発明は、刺激信号の大きさを瞬時に変化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、一対の電極を介して、生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、前記一対の電極の一方に接続される第1端子と、前記一対の電極の他方に接続される第2端子と、第1電源電圧を生成する第1電源回路と、前記第1電源電圧よりも低い第2電源電圧を生成する第2電源回路と、前記第1電源電圧が印加され、前記第1電源電圧に応じた第1高圧電圧を前記刺激信号として出力する第1高圧回路と、前記第2電源電圧が印加され、前記第2電源電圧に応じた第1低圧電圧を前記刺激信号として出力する第1低圧回路と、前記第2端子と接地との間に設けられた第1スイッチと、前記第1スイッチのオン、オフを制御するとともに、前記第1高圧電圧又は前記第1低圧電圧が、前記第1端子に前記刺激信号として出力されるよう、前記第1高圧回路及び前記第1低圧回路を制御する制御回路と、を備える生体刺激装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、刺激信号の大きさを瞬時に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】比例降圧電源回路20の構成の一例を示す図である。
【
図4A】イオンバランスを整えるためのパルス波形の一例を示す図である。
【
図4B】イオンバランスを整えるためのパルス波形の一例を示す図である。
【
図4C】イオンバランスを整えるためのパルス波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
なお、本実施形態において、「接続」とは、特段の言及がない限り電気的に接続されている状態をいう。このため「接続」には、2つの部品が配線のみならず、例えば、抵抗を介して接続されている場合も含む。
【0012】
=====本実施形態=====
<<生体刺激装置1の構成>>
図1は、本発明の一実施形態である生体刺激装置1の構成を示す説明図である。
【0013】
生体刺激装置1は、人間や動物などの生体(例えば人体)に刺激信号を出力して、生体に電気的な刺激を付与する装置である。刺激信号による電流が生体に流れることによって、神経が刺激され、筋肉が収縮・弛緩され、これにより生体に刺激が付与されることになる。本実施形態の生体刺激装置1は、例えば、数十Hzの低周波パルス信号を刺激信号として出力する。
【0014】
なお、一般的に、刺激信号の周波数が高いほど、筋刺激の感覚が小さくなる。一方、刺激信号の周波数が低いほど、刺激感が強くなる。
【0015】
また、一般的に、刺激信号の電圧(パルスの振幅)が高いほど、刺激が強くなり、電圧が低いほど、刺激が弱くなる。
【0016】
本実施形態の生体刺激装置1では、出力するパルスの周波数やパルス幅を変化させることができる他に、後述するように、パルスの振幅(電圧)を瞬時に変化させることができる。これにより、多様な刺激を与えることが可能となっている。
【0017】
生体刺激装置1は、スイッチ回路3、表示部5、CPU7、出力部8、昇圧電源回路10、比例降圧電源回路20、高圧正側制御回路30A、低圧正側制御回路30B、負パルス制御回路40、高圧負側制御回路50A、低圧負側制御回路50B、及び正パルス制御回路60を備えている。
【0018】
スイッチ回路3は、刺激の種類(刺激モード)や強さ(レベル)を選択するためのスイッチなどの複数のスイッチ(不図示)を有している。そして、例えば、生体刺激装置1の使用者の操作によって任意のスイッチがオンすると、スイッチ回路3は、その旨(モードやレベルが選択されたこと)を示す信号をCPU7に出力する。
【0019】
表示部5は、スイッチ回路3で選択されたモードやレベルなどを表示する。表示部5は、例えば複数の発光ダイオード(LED)を有しており、CPU7からの指示に応じて適宜LEDを発光させて表示を行う。
【0020】
出力部8は、刺激信号を出力するための複数の端子(端子81,83)を有している。端子83は、生体に配置される一対の電極100の一方(電極100a)に接続されており、「第1端子」に相当する。また、端子81は、一対の電極100の他方(電極100b)に接続されており、「第2端子」に相当する。一対の電極100(電極100a,100b)は、生体に接触させる導子(例えば、粘着パッド、吸引パッド、金属棒状若しくはグローブ状の形態をした導子)に内蔵されている。但し、一対の電極100を生体に直接接触させてもよい。
【0021】
なお、本実施形態において、端子83は、正パルス(後述)を出力する際に(端子81よりも)高い電圧になる。また、端子81は、負パルス(後述)を出力する際に(端子83よりも)高い電圧になる。
【0022】
CPU7は、生体刺激装置1全体を制御する処理装置(中央演算処理装置)であり、「制御回路」に相当する。CPU7は、ACアダプターや電池等からの主電源(例えば5V)が印加されて動作する。また、CPU7は、スイッチ回路3で選択されたモードやレベルのパルス波形を生成するように、後述する各回路(昇圧電源回路10等)を制御する。
【0023】
以下、CPU7に制御される昇圧電源回路10、比例降圧電源回路20、高圧正側制御回路30A、低圧正側制御回路30B、負パルス制御回路40、高圧負側制御回路50A、低圧負側制御回路50B、及び正パルス制御回路60について説明する。
【0024】
<昇圧電源回路10>
昇圧電源回路10は、主電源(例えば5V)を昇圧して、主電源よりも高い電源電圧HV(例えば35V)を生成する。なお、昇圧電源回路10は「第1電源回路」に相当し、電源電圧HVは「第1電源電圧」に相当する。本実施形態の昇圧電源回路10は、コイルL1、NPNトランジスタQ1、抵抗R1、ショットキーバリアダイオードD1、及びコンデンサC3を備えている。
【0025】
コイルL1の一端は、主電源が供給される電源ラインに接続され、コイルL1の他端は、NPNトランジスタQ1のコレクタ電極に接続されている。なお、上記電源ラインと接地との間には、電圧安定化用のコンデンサC1(電解コンデンサ)が接続されている。
【0026】
NPNトランジスタQ1のエミッタ電極は接地され、ベース電極にはCPU7からの出力制御信号S1が抵抗R1を介して入力される。なお、CPU7は、昇圧電源回路10の出力(電源電圧HV)が所定電圧(例えば35V)となるように、出力制御信号S1をハイレベル(以下、Hレベル)又はローレベル(以下、Lレベル)に切替え、NPNトランジスタQ1のオン、オフを制御する。
【0027】
ショットキーバリアダイオードD1は整流用のダイオードである。ショットキーバリアダイオードD1のアノードは、コイルL1とNPNトランジスタQ1(コレクタ電極)との接続点に接続されている。また、ショットキーバリアダイオードD1のカソードと、接地との間には、電圧平滑用のコンデンサC3が接続されている。そして、ショットキーバリアダイオードD1のカソードとコンデンサC3との接続点の電圧(コンデンサC3の充電電圧)が昇圧電源回路10の出力電圧(電源電圧HV)となる。なお、コンデンサC3には、静電容量の大きい電解コンデンサが用いられている。
【0028】
次に、昇圧電源回路10の動作について説明する。
【0029】
出力制御信号S1がHレベルのとき、NPNトランジスタQ1がオンし、コイルL1に主電源からのエネルギーが蓄えられる。その後、出力制御信号S1がLレベルになると、NPNトランジスタQ1がオフし、コイルL1に逆起電力が発生する。この逆起電力により、コイルL1に蓄えられたエネルギーに相当する電圧がショットキーバリアダイオードD1を介してコンデンサC3に印加(コンデンサC3の電圧に重畳)される。このNPNトランジスタQ1のスイッチングを繰り返すことにより、昇圧電源回路10の出力電圧(電源電圧HV)は、主電源の電圧よりも高くなる(最大数十倍になる)。なお、昇圧電源回路10の出力電圧(電源電圧HV)は、出力制御信号S1のデューティ比に依存し、例えば、デューティ比が高くなると電源電圧HVも高くなる。本実施形態においてCPU7は、電源電圧HVが35Vとなるように、出力制御信号S1のデューティ比を定めている。
【0030】
<比例降圧電源回路20>
比例降圧電源回路20は、電源電圧HVを降圧して、電源電圧HVよりも低い電源電圧LVを生成する。本実施形態の比例降圧電源回路20は、電源電圧HVに比例(連動)するように電源電圧HVを降圧し電源電圧LVを生成する。なお、比例降圧電源回路20は「第2電源回路」に相当し、電源電圧LVは「第2電源電圧」に相当する。
【0031】
図2は、比例降圧電源回路20の構成の一例を示す図である。比例降圧電源回路20は、
図2に示すように抵抗R5,R6、及びオペアンプOP1を備えている。
【0032】
抵抗R5と、抵抗R6とは直列接続されており、抵抗R5には電源電圧HVが印加され、抵抗R6は接地されている。
【0033】
オペアンプOP1の非反転入力端子(+端子)は、抵抗R5と抵抗R6の接続点に接続され、反転入力端子(-端子)は、オペアンプOP1の出力に接続されている。また、オペアンプOP1の出力と接地との間には電圧平滑用のコンデンサC5が接続されている。なお、コンデンサC5には、コンデンサC3よりも容量の小さい電解コンデンサが用いられている。そして、オペアンプOP1の出力(コンデンサC5の充電電圧)が比例降圧電源回路20の出力(電源電圧LV)になる。
【0034】
以上の構成により、比例降圧電源回路20のオペアンプOP1は、増幅率(利得)が1倍のボルテージフォロワとなり、+端子の電圧(抵抗R5と抵抗R6による電源電圧HVの分圧電圧)がそのまま出力される。つまり、オペアンプOP1の出力がそのまま-端子に返ってくるため、出力が+端子の電圧より高くなると出力を下げようとフィードバックがかかり、出力が+端子の電圧より低くなると出力を上げようとフィードバックがかかる。その結果、オペアンプOP1の出力は+端子の電圧と等しくなる。
【0035】
よって、例えば、抵抗R5と抵抗R6の抵抗値が同じ場合、電源電圧LVは、電源電圧HVの1/2になる。抵抗R5と抵抗R6の抵抗値の比(分圧比)を変えれば、電源電圧LVの大きさを変えることができる。
【0036】
なお、抵抗R5と抵抗R6の他に、抵抗、及びスイッチをさらに設けて、CPU7からの分圧比設定信号S2によって、スイッチを切り替えて、所望の分圧電圧となるようにしてもよい。あるいは、デジタル的に抵抗を変更できるデジタルポテンションメータを用いて、分圧比設定信号S2に応じて分圧電圧を変えてもよい。これにより、電源電圧LVのレベルを変更することができ、刺激の種類やパターンをさらに増やすことができる。
【0037】
また、比例降圧電源回路20は、オペアンプOP1を使用したものには限られない。例えば、トランジスタのエミッタフォロワを利用して、電源電圧HVから電源電圧LVを生成するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、比例降圧電源回路20において電源電圧HVを降圧して電源電圧LVを生成しているが、これには限られない。例えば、主電源を利用(昇圧または降圧)して、電源電圧HVよりも低い電源電圧LVを生成してもよい。また、電源電圧LVは、電源電圧HVに比例していなくてもよい。
【0039】
<高圧正側制御回路30A>
高圧正側制御回路30Aは、電源電圧HVが印加され、当該電源電圧HVに応じた電圧(以下、電圧HV1)を、出力部8の端子83に刺激信号として出力する回路である。なお、高圧正側制御回路30Aは「第1高圧回路」に相当し、高圧正側制御回路30Aの出力(電圧HV1)は「第1高圧電圧」に相当する。
【0040】
高圧正側制御回路30Aは、抵抗R11,R13,R14、NPNトランジスタQ11、PNPトランジスタQ12、ショットキーバリアダイオードD13、コンデンサC11を備えている。
【0041】
NPNトランジスタQ11のベース電極は抵抗R11を介してCPU7に接続されており、CPU7から高圧正側制御信号S3Aが入力される。また、NPNトランジスタQ11のエミッタ電極は接地され、コレクタ電極は直列接続された抵抗R13,R14を介して電源電圧HVが印加される。
【0042】
PNPトランジスタQ12のベース電極は、直列接続された抵抗R13,R14の接続点に接続されている。また、PNPトランジスタQ12のエミッタ電極には電源電圧HVが印加され、PNPトランジスタQ12のコレクタ電極は、ショットキーバリアダイオードD13のアノードに接続されている。なお、PNPトランジスタQ12は「第1トランジスタ」に相当し、エミッタ電極は「電源側の電極」に相当し、コレクタ電極は「出力側の電極」に相当する。本実施形態ではPNPトランジスタQ12を用いているが、例えばPMOSトランジスタ等、他の種類のトランジスタを用いても良い。例えばPMOSトランジスタの場合、ソース電極が「電源側の電極」に相当し、ドレイン電極が「接地側の電極」に相当する。
【0043】
ショットキーバリアダイオードD13は逆流防止用のダイオードである。ショットキーバリアダイオードD13のカソードは、負パルス制御回路40のNPNトランジスタQ15のコレクタ電極、低圧正側制御回路30BのショットキーバリアダイオードD14のカソード、及び出力部8の端子83に接続されている。なお、ショットキーバリアダイオードD13は、「第1ダイオード」に相当する。
【0044】
コンデンサC11は電圧安定化用のコンデンサであり、一端には電源電圧HVが印加され、他端は接地されている。
【0045】
以上の構成により、CPU7から出力される高圧正側制御信号S3AがHレベルの場合、NPNトランジスタQ11がオンし、PNPトランジスタQ12のベース電極に、抵抗R13と抵抗R14による電源電圧HVの分圧電圧が印加される。これにより、PNPトランジスタQ12のベース電位がエミッタ電位より低くなりPNPトランジスタQ12もオンする。よって、この場合、ショットキーバリアダイオードD13を介して端子83に電源電圧HVに応じた電圧(電圧HV1)が出力される。電圧HV1は、PNPトランジスタQ12のオン抵抗を無視すると、電源電圧HVから、ショットキーバリアダイオードD13の順方向電圧だけ低い電圧である。
【0046】
一方、高圧正側制御信号S3AがLレベルの場合、NPNトランジスタQ11がオフする。これにより、PNPトランジスタQ12のベース-エミッタ間が同電位となるため、PNPトランジスタQ12もオフする。よって、この場合、高圧正側制御回路30Aから電圧HV1は出力されない。
【0047】
本実施形態では、NPNトランジスタQ11とPNPトランジスタQ12の2段構成にしている。これによりNPNトランジスタQ11の制御により、電源電圧HVが印加されるPNPトランジスタQ12を駆動させることができる。また、NPNトランジスタQ11を設けていることにより、PNPトランジスタQ12がオンするときに、電源電圧HVに基づく電圧(PNPトランジスタQ12のベース電圧)が、CPU7に入力されないようにすることができ、CPU7を保護することができる。
【0048】
<低圧正側制御回路30B>
低圧正側制御回路30Bは、電源電圧LVが印加され、当該電源電圧LVに応じた電圧(以下、電圧LV1)を出力部8の端子83に刺激信号として出力する回路である。なお、低圧正側制御回路30Bは「第1低圧回路」に相当し、低圧正側制御回路30Bの出力(電圧LV1)は「第1低圧電圧」に相当する。
【0049】
低圧正側制御回路30Bは、抵抗R15,R17,R18、NPNトランジスタQ13、PNPトランジスタQ14、ショットキーバリアダイオードD14、コンデンサC12を備えている。本実施形態において、PNPトランジスタQ14は「第2トランジスタ」に相当し、ショットキーバリアダイオードD14は「第2ダイオード」に相当する。
【0050】
低圧正側制御回路30Bの構成は、高圧正側制御回路30Aと同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、NPNトランジスタQ13のベース電極は抵抗R15を介してCPU7に接続されており、CPU7から低圧正側制御信号S3Bが入力される。
【0051】
低圧正側制御信号S3BがHレベルの場合、NPNトランジスタQ13がオンし、PNPトランジスタQ14もオンし、ショットキーバリアダイオードD14を介して、電源電圧LVに応じた電圧LV1が端子83に出力される。電圧LV1は、PNPトランジスタQ14のオン抵抗を無視すると、電源電圧LVから、ショットキーバリアダイオードD14の順方向電圧だけ低い電圧である。
【0052】
一方、低圧正側制御信号S3BがLレベルの場合、NPNトランジスタQ13がオフし、PNPトランジスタQ14もオフする。よって、この場合、低圧正側制御回路30Bから電圧LV1は出力されない。
【0053】
<負パルス制御回路40>
負パルス制御回路40は、負側に立ち下がるパルス波形(負パルス)を生成する際に、端子83を接地させるための回路である。なお、負パルスの場合には、端子81がパルスで正、端子83が接地になる。正パルスの場合には、端子83がパルスで正、端子81が接地になる。負パルス制御回路40は、抵抗R19とNPNトランジスタQ15を備えている。NPNトランジスタQ15は、「第2スイッチ」に相当する。また、負パルスは「第2パルス」に相当する。
【0054】
NPNトランジスタQ15のベース電極は抵抗R19を介してCPU7に接続されており、CPU7から負パルス生成信号S4が入力される。また、NPNトランジスタQ15のコレクタ電極は端子83に接続されており、エミッタ電極は接地されている。CPU7は、負パルス生成信号S4をHレベル又はLレベルに切替え、NPNトランジスタQ15のオン、オフを制御する。
【0055】
負パルス生成信号S4がHレベルの場合、NPNトランジスタQ15がオンし、端子83が接地される。一方、負パルス生成信号S4がLレベルの場合、NPNトランジスタQ15はオフするため、端子83は接地されない。なお、詳細は後述するが、PNPトランジスタQ12,Q14の何れかがオンのときには、NPNトランジスタQ15はオフする。逆に、NPNトランジスタQ15がオンのときには、PNPトランジスタQ12,Q14はともにオフする。このように、PNPトランジスタQ12,Q14と、NPNトランジスタQ12とは、相補的に動作する。
【0056】
<高圧負側制御回路50A>
高圧負側制御回路50Aは、電源電圧HVが印加され、その電源電圧HVに応じた電圧(以下、電圧HV2)を、出力部8の端子81に刺激信号として出力する回路である。なお、高圧負側制御回路50Aは「第2高圧回路」に相当し、高圧負側制御回路50Aの出力(電圧HV2)は「第2高圧電圧」に相当する。
【0057】
高圧負側制御回路50Aは、抵抗R21,R23,R24、NPNトランジスタQ21、PNPトランジスタQ22、ショットキーバリアダイオードD23、コンデンサC21を備えている。
【0058】
高圧負側制御回路50Aの構成も、高圧正側制御回路30Aと同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、NPNトランジスタQ21のベース電極は抵抗R21を介してCPU7に接続されており、CPU7から高圧負側制御信号S5Aが入力される。
【0059】
高圧負側制御信号S5AがHレベルの場合、NPNトランジスタQ21がオンし、PNPトランジスタQ22もオンし、ショットキーバリアダイオードD23を介して、電源電圧HVに応じた電圧HV2が端子81に出力される。電圧HV2は、PNPトランジスタQ22のオン抵抗を無視すると、電源電圧HVから、ショットキーバリアダイオードD23の順方向電圧だけ低い電圧である。
【0060】
一方、高圧負側制御信号S5AがLレベルの場合、NPNトランジスタQ21がオフし、PNPトランジスタQ22もオフする。よって、この場合、高圧正側制御回路30Aから電圧HV2は出力されない。
【0061】
<低圧負側制御回路50B>
低圧負側制御回路50Bは、電源電圧LVが印加され、当該電源電圧LVに応じた電圧(以下、電圧LV2)を出力部8の端子81に刺激信号として出力する回路である。なお、低圧負側制御回路50Bは「第2低圧回路」に相当し、低圧負側制御回路50Bの出力(電圧LV2)は「第2低圧電圧」に相当する。
【0062】
低圧負側制御回路50Bは、抵抗R25,R27,R28、NPNトランジスタQ23、PNPトランジスタQ24、ショットキーバリアダイオードD24、コンデンサC22を備えている。
【0063】
低圧負側制御回路50Bの構成も、高圧負側制御回路50Aと同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、NPNトランジスタQ23のベース電極は抵抗R25を介してCPU7に接続されており、CPU7から低圧負側制御信号S5Bが入力される。
【0064】
低圧負側制御信号S5BがHレベルの場合、NPNトランジスタQ23がオンし、PNPトランジスタQ24もオンし、ショットキーバリアダイオードD24を介して、電源電圧LVに応じた電圧LV2が端子81に出力される。電圧LV2は、PNPトランジスタQ24のオン抵抗を無視すると、電源電圧LVから、ショットキーバリアダイオードD24の順方向電圧だけ低い電圧である。
【0065】
一方、低圧負側制御信号S5BがLレベルの場合、NPNトランジスタQ23がオフし、PNPトランジスタQ24もオフする。よって、この場合、高圧正側制御回路30Aから電圧LV2は出力されない。
【0066】
<正パルス制御回路60>
正パルス制御回路60は、正側に立ち上がるパルス波形(正パルス)を生成する際に、端子81を接地させるための回路であり、抵抗R29とNPNトランジスタQ25を備えている。なお、NPNトランジスタQ25は、「第1スイッチ」に相当する。また、正パルスは「第1パルス」に相当する。
【0067】
NPNトランジスタQ25のベース電極は抵抗R29を介してCPU7に接続されており、CPU7から正パルス生成信号S6が入力される。また、NPNトランジスタQ25のコレクタ電極は端子81に接続されており、エミッタ電極は接地されている。CPU7は、正パルス生成信号S6をHレベル又はLレベルに切替え、NPNトランジスタQ25のオン、オフを制御する。
【0068】
正パルス生成信号S6がHレベルの場合、NPNトランジスタQ25がオンし、端子81が接地される。一方、正パルス生成信号S6がLレベルの場合、NPNトランジスタQ25がオフするため、端子81は接地されない。なお、詳細は後述するが、PNPトランジスタQ22,Q24の何れかがオンのときには、NPNトランジスタQ25はオフする。逆に、NPNトランジスタQ25がオンのときには、PNPトランジスタQ22,Q24はともにオフする。このように、PNPトランジスタQ22,Q24と、NPNトランジスタQ22とは、相補的に動作する。
【0069】
<<生体刺激装置1のパルス生成の動作>>
<正パルスについて>
正側に立ち上がるパルス(正パルス)を生成する場合、CPU7は、正パルス生成信号S6をHレベルにし、正パルス制御回路60のNPNトランジスタQ25をオンにする。また、CPU7は、NPNトランジスタQ25をオンさせるのとほぼ同じタイミングで、電圧HV1又は電圧LV1が、端子83に刺激信号として出力されるよう、高圧正側制御回路30A及び低圧正側制御回路30Bを制御する。
【0070】
例えば、端子83に電圧HV1を出力させる場合、CPU7は、高圧正側制御信号S3AをHレベル、低圧正側制御信号S3BをLレベルにする。この場合、電源電圧HV→高圧正側制御回路30A(電圧HV1)→端子83→電極100a→生体抵抗(不図示)→電極100b→端子81→正パルス制御回路60(NPNトランジスタQ25)→接地の経路の電流が流れる。そして、パルス幅に相当する時間(例えば200μs)経過後に、CPU7は、高圧正側制御信号S3A(及び正パルス生成信号S6)をLレベルにする。これにより、端子83と端子81の間に、パルス幅が200μs、振幅が電圧HV1の正パルスが生成される。
【0071】
また、端子83に電圧LV1を出力させる場合、CPU7は、高圧正側制御信号S3AをLレベル、低圧正側制御信号S3BをHレベルにする。この場合、電源電圧LV→低圧正側制御回路30B(電圧LV1)→端子83→電極100a→生体抵抗(不図示)→電極100b→端子81→正パルス制御回路60(NPNトランジスタQ25)→接地の経路の電流が流れる。そして、パルス幅に相当する時間(例えば200μs)経過後に、CPU7は、低圧正側制御信号S3B(及び正パルス生成信号S6)をLレベルにする。これにより、端子83と端子81の間に、パルス幅が200μs、振幅が電圧LV1(<電圧HV1)の正パルスが生成される。
【0072】
なお、仮に、比例降圧電源回路20を設けずに、昇圧電源回路10において電源電圧HVを低く変更する場合、出力制御信号S1のデューティ比を変えてもコンデンサC3の静電容量が大きいために、電圧変化の追従速度が遅い。このため、パルスの振幅(刺激信号の大きさ)を瞬時に変えることができない。ここで「瞬時」とは、昇圧電源回路10の電源電圧HVのレベルを、例えば、35Vから、電源電圧LVのレベル(例えば10V)まで変化させる期間よりも十分短い期間である。
【0073】
これに対し、本実施形態の生体刺激装置1では、比例降圧電源回路20を設けて電源電圧LVを生成しているため、CPU7の制御によって端子83に出力する電圧を切替えることで、パルスの振幅を瞬時に変えることが可能である。
【0074】
また、仮に、高圧正側制御回路30Aと低圧正側制御回路30Bに、それぞれ、ショットキーバリアダイオードD13,D14を設けていない場合、電圧を出力しない側(オフに制御している側)のPNPトランジスタのコレクタ-ベース間に電流が流れてパルス波形が歪むおそれがある。また、PNPトランジスタの代わりにMOSトランジスタ(PMOSトランジスタ)を使用した場合、寄生ダイオードを介して電流が逆流するおそれがある。
【0075】
これに対し、本実施形態では、高圧正側制御回路30Aに逆流防止用のショットキーバリアダイオードD13を設け、低圧正側制御回路30Bに逆流防止用のショットキーバリアダイオードD14を設けている。これにより電流の逆流を確実に防止することができる。後述する負側の構成(負パルスを形成する構成)についても同様である。
【0076】
<負パルスについて>
負側に立ち下がるパルス(負パルス)を生成する場合、CPU7は、負パルス生成信号S4をHレベルにし、負パルス制御回路40のNPNトランジスタQ15をオンにする。また、CPU7は、NPNトランジスタQ15をオンさせるのとほぼ同じタイミングで、電圧HV2又は電圧LV3が、端子81に刺激信号として出力されるよう、高圧負側制御回路50A及び低圧負側制御回路50Bを制御する。
【0077】
例えば、端子81に電圧HV2を出力させる場合、CPU7は、高圧負側制御信号S5AをHレベル、低圧負側制御信号S5BをLレベルにする。この場合、電源電圧HV→高圧負側制御回路50A(電圧HV2)→端子81→電極100b→生体抵抗(不図示)→電極100a→端子83→負パルス制御回路40(NPNトランジスタQ15)→接地の経路の電流が流れる。そして、パルス幅に相当する時間(例えば200μs)経過後に、CPU7は、高圧負側制御信号S5A(及び負パルス生成信号S4)をLレベルにする。これにより、端子83と端子81の間に、パルス幅が200μs、振幅が電圧HV2の負パルスが生成される。
【0078】
また、端子81に電圧LV2を出力させる場合、CPU7は、高圧負側制御信号S5AをLレベル、低圧負側制御信号S5BをHレベルにする。この場合、電源電圧LV→低圧負側制御回路50B(電圧LV2)→端子81→電極100b→生体抵抗(不図示)→電極100a→端子83→負パルス制御回路40(NPNトランジスタQ15)→接地の経路の電流が流れる。そして、パルス幅に相当する時間(例えば200μs)経過後に、CPU7は、低圧負側制御信号S5B(及び負パルス生成信号S4)をLレベルにする。これにより、端子83と端子81の間に、パルス幅が200μs、振幅が電圧LV2(<電圧HV2)の負パルスが生成される。
【0079】
負パルスの場合も、正パルスの場合と同様に、パルスの振幅(刺激信号の大きさ)を瞬時に変えることができる。また、本実施形態の生体刺激装置1では、後述するように、両極性のパルス(正パルス及び負パルス)を続けて出す場合においても、パルスの振幅を瞬時に切り替えることができる。
【0080】
<パルス波形例>
図3A~
図3Dは、パルス波形の一例を示す図である。
図3Aは正側と負側で偏りのない場合を示し、
図3B~
図3Dは正側と負側で偏りのある場合を示している。
【0081】
図3Aでは、負パルスと正パルスの組み合わせが所定周期(20ms周期で)ごとに形成されており、負パルスと正パルスの振幅が同じである(正負電圧比1)。
図3Aの場合、CPU7は、高圧負側制御回路50Aから電圧HV2を出力させて負パルスを生成した後、高圧正側制御回路30Aから電圧HV1を出力させて正パルスを生成する。これにより、正パルスと負パルスの振幅がほぼ同じ(約35V)になる。なお、負パルスと正パルスのパルス幅は、例えば0.2ms(200μs)である。
【0082】
図3Bでは、負パルスの振幅が正パルスの振幅の1/2である(正負電圧比1/2)。この
図3Bの場合、CPU7は、低圧負側制御回路50Bから電圧LV2を出力させて負パルスを生成した後、高圧正側制御回路30Aから電圧HV1を出力させて正パルスを生成する。これにより、電圧LV2が電圧HV1の1/2の場合、負パルスの振幅は、正パルスの振幅の1/2になる。
【0083】
図3Cでは、負パルスの振幅が正パルスの振幅の1/4である(正負電圧比1/4)。例えば、CPU7は、分圧比設定信号S2によって、比例降圧電源回路20における電源電圧HVの分圧比が1/4となるように設定する。これにより比例降圧電源回路20で生成される電源電圧LVは、電源電圧HVの1/4になる。そしてCPU7が、
図3Bの場合と同様に制御を行うことで、
図3Cのパルス波形が得られる。
【0084】
図3Dでは、正側のみにパルス(正パルス)が生成されている。この場合、CPU7は、高圧正側制御回路30Aから電圧HV1を出力させて正パルスのみを生成する(負パルスは生成しない)。
【0085】
図3B~
図3Dでは極性のバランス(パルスバランス)を崩している。このように極性のバランスを崩すことにより、治療効果を高めることできる。ただし、
図3B~
図3Dのようにパルスの正負のバランスを崩した場合、生体内にバランスの大きい方の極性の電荷(イオン)が蓄積され、生体に対するイオンバランスが崩れる。そこで、以下では、イオンバランスを整えるようにしている。
【0086】
<イオンバランスの調整>
図4A~
図4Cは、イオンバランスを整えるためのパルス波形の一例を示す図である。
【0087】
図4Aでは、一つの正パルスに対して、振幅の小さい複数の負パルスを発生させている。なお、振幅の小さい負パルスは、生体(人体)では感じない程度の大きさのパルスである。このようにすることで、生体に対するイオンバランスを整える(例えば中和する)ことができ、例えば、生体に不要な負担がかかることを防ぐことができる。
【0088】
図4Bでは、振幅の小さい負パルスのパルス幅を、正パルスのパルス幅よりも長くしている。この場合も
図4Aと同様の効果が得られる。また、
図4Bの場合、負パルスを複数生成しなくてもよいので、
図4Aの場合よりも制御が簡易になり、CPU7の負荷が小さくなる。
【0089】
図4Cは、
図3A~
図3D、及び
図4A、
図4Bで示される期間(390ms~500ms:以下「第1期間」ともいう)の後の期間(500ms~610ms:以下「第2期間」ともいう)を示している。
【0090】
図4Cに示す第2期間では、第1期間の正パルスよりも正パルスの振幅を低下させている(例えば、低圧正側制御回路30Bから出力される電圧LV1を用いて正パルスを生成している)。また、負側も同様に、例えば、低圧負側制御回路50Bから出力される電圧LV2を用いて、負パルスを形成している。このように、
図4Cでは第1期間の後の第2期間に、第1期間の正パルスよりも振幅の小さい両極性のパルス(正パルス、負パルス)を形成している。これにより、第1期間でパルスの極性のバランスを崩した場合においても、第2期間でイオンバランスを整えることができる。
【0091】
=====まとめ=====
以上、本実施形態の生体刺激装置1について説明した。生体刺激装置1は、一対の電極100を介して、生体に刺激信号を出力する装置であり、端子83、端子81、昇圧電源回路10、比例降圧電源回路20、高圧正側制御回路30A、低圧正側制御回路30B、NPNトランジスタQ25、及びCPU7を備えている。端子83は、一対の電極100の電極100aに接続され、端子81は電極100bに接続される。昇圧電源回路10は、電源電圧HVを生成し、比例降圧電源回路20は、電源電圧HVよりも低い電源電圧LVを生成する。高圧正側制御回路30Aは、電源電圧HVに応じた電圧HV1を出力し、低圧正側制御回路30Bは、電源電圧LVに応じた電圧LV1を出力する。NPNトランジスタQ25は、端子81と接地との間に設けられており、CPU7は、NPNトランジスタQ25のオン、オフを制御するとともに、電圧HV1、又は、電圧LV1が刺激信号として端子83に出力されるように、高圧正側制御回路30A及び低圧正側制御回路30Bを制御する。これにより、刺激信号(ここでは正パルス)の電圧(振幅)を瞬時に変えることができる。
【0092】
また、本実施形態の生体刺激装置1は、電源電圧HVに応じた電圧HV2を出力する高圧負側制御回路50Aと、電源電圧LVに応じた電圧LV2を出力する低圧負側制御回路50Bと、端子83と接地との間に設けられたNPNトランジスタQ15を有している。そして、CPU7は、NPNトランジスタQ15のオン、オフを制御するとともに、HV2、又は、電圧LV2が端子81に出力されるように、高圧負側制御回路50A及び低圧負側制御回路50Bを制御する。これにより、刺激信号(ここでは負パルス)の電圧(振幅)を瞬時に変えることができる。また、両極性のパルス(正パルス及び負パルス)を続けて出力する場合にもパルスの電圧を瞬時に変えることができる(
図3B、
図3C参照)。
【0093】
また、比例降圧電源回路20は、電源電圧HVの分圧電圧に基づいて電源電圧LVを生成しており、例えば、分圧比を変更することにより、電源電圧のレベルを変更可能である。これにより、刺激の種類やパターンを増やすことができる。
【0094】
また、高圧正側制御回路30Aは、電源電圧HVがエミッタ電極に印加されるPNPトランジスタQ12と、アノードがPNPトランジスタQ12のコレクタ電極に接続され、カソードが端子83に接続されたショットキーバリアダイオードD13を有している。また、低圧正側制御回路30Bは、電源電圧LVがエミッタ電極に印加されるPNPトランジスタQ14と、アノードがPNPトランジスタQ14のコレクタ電極に接続され、カソードが端子83に接続されたショットキーバリアダイオードD14を有している。これにより、高圧正側制御回路30Aと低圧正側制御回路30Bの一方を駆動させるときに、他方側に電流が流れ込まない(逆流しない)ようにできる。
【0095】
また、
図3Bおよび
図3Cの場合、CPU7は、正パルスと、正パルスよりも振幅の小さい負パルスとが、刺激信号として端子83及び端子81の間に発生するように、高圧正側制御回路30A及び高圧負側制御回路50A、低圧正側制御回路30B及び低圧負側制御回路50B、正パルス制御回路60(NPNトランジスタQ25)及び負パルス制御回路40(NPNトランジスタQ15)をそれぞれ制御している。このように、極性のバランスを崩すことにより、治療の効果を高めることができる。
【0096】
また、
図4Aの場合、CPU7は、一つの正パルスに対して、複数の負パルスが発生するように、上記各回路を制御している。これにより、イオンバランスを整える(例えば中和する)ことができ、例えば、生体に不要な負担がかかることを防ぐことができる。
【0097】
また、
図4Bの場合、CPU7は、負パルスのパルス幅が、正パルスのパルス幅よりも長くなるように、上記各回路をそれぞれ制御している。これにより、イオンバランスを整える(例えば中和する)ことができる。また、
図4Aの場合と比べ、CPU7の制御が簡易になる(CPU7の負荷が減る)。
【0098】
また、
図4Cは、
図3A~
図3D及び
図4A、
図4Bにおける期間(第1期間)の後の第2期間を示しており、この
図4Cの第2期間では、正パルスの振幅を第1期間よりも低下させて、両極性のパルス(正パルス及び負パルス)を発生させている。特に、パルスのバランスを崩した後(
図3B~
図3Dの後)に、
図4Cのような両極性のパルスを追加することで、イオンバランスを整えることができる。
【0099】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0100】
前述の実施形態では、比例降圧電源回路20が一つであったが、比例降圧電源回路20を複数設け、それぞれ生成する電源電圧LVの値を異ならせてもよい。そして、例えば、CPU7が、各比例降圧電源回路20の出力(電圧の異なる電源電圧LV)を、選択的に低圧正側制御回路30Bおよび低圧負側制御回路50Bに印加させるようにしてもよい。これにより、刺激の種類やパターンをさらに増やすことができる。
【0101】
また、前述の実施形態では、ダイオードとしてショットキーバリアダイオード(D1,D13,D14,D23,D24)を用いていたが、ショットキーバリアダイオードには限られない。例えば一般的な整流ダイオードを用いても良い。但し、ショットキーバリアダイオードを用いると、順方向電圧が低いので、電圧降下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 生体刺激装置
3 スイッチ回路
5 表示部
7 CPU
8 出力部
10 昇圧電源回路
20 比例降圧電源回路
30A 高圧正側制御回路
30B 低圧正側制御回路
40 負パルス制御回路
50A 高圧負側制御回路
50B 低圧負側制御回路
60 正パルス制御回路
81,83 端子
100a 電極
100b 電極
C1,C3,C5 コンデンサ
D1,D13,D14,D23,D24 ショットキーバリアダイオード
Q1,Q11,Q13,Q21,Q23,Q25 NPNトランジスタ
Q12,Q14,Q22,Q24 PNPトランジスタ
R1,R5,R6,R11,R13,R14,R15,R17,R18,R19,R21,R23,R24,R25,R27,R28,R29 抵抗
L1 コイル
OP1 オペアンプ
【手続補正書】
【提出日】2024-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を介して、生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、
前記一対の電極の一方に接続される第1端子と、
前記一対の電極の他方に接続される第2端子と、
第1電源電圧を生成する第1電源回路と、
前記第1電源電圧よりも低い第2電源電圧を生成する第2電源回路と、
前記第1電源電圧が印加され、前記第1電源電圧に応じた第1高圧電圧を前記刺激信号として出力する第1高圧回路と、
前記第2電源電圧が印加され、前記第2電源電圧に応じた第1低圧電圧を前記刺激信号として出力する第1低圧回路と、
前記第2端子と接地との間に設けられた第1スイッチと、
前記第1電源電圧が印加され、前記第1電源電圧に応じた第2高圧電圧を前記刺激信号として出力する第2高圧回路と、
前記第2電源電圧が印加され、前記第2電源電圧に応じた第2低圧電圧を前記刺激信号として出力する第2低圧回路と、
前記第1端子と接地との間に設けられた第2スイッチと、
前記第1スイッチのオン、オフを制御するとともに、前記第1高圧電圧又は前記第1低圧電圧が、前記第1端子に前記刺激信号として出力されるよう、前記生体の抵抗に関わらず前記第1高圧回路及び前記第1低圧回路を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記第2スイッチのオン、オフを制御するとともに、前記第2高圧電圧又は前記第2低圧電圧が前記第2端子に前記刺激信号として出力されるよう、前記生体の抵抗に関わらず前記第2高圧回路及び前記第2低圧回路を制御し、
第1パルスと、前記第1パルスとは逆極性で前記第1パルスよりも振幅の小さい第2パルスとが、前記刺激信号として前記第1及び第2端子の間に発生するように、前記生体の抵抗に関わらず前記第1及び第2高圧回路、前記第1及び第2低圧回路、前記第1及び第2スイッチをそれぞれ制御する、
生体刺激装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体刺激装置であって、
前記第2電源回路は、前記第2電源電圧のレベルを変更可能である、
生体刺激装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生体刺激装置であって、
前記第1高圧回路は、
前記第1電源電圧が電源側の電極に印加される第1トランジスタと、
アノードが前記第1トランジスタの出力側の電極に接続され、カソードが前記第1端子に接続された第1ダイオードと、
を備え、
前記第1低圧回路は、
前記第2電源電圧が電源側の電極に印加される第2トランジスタと、
アノードが前記第2トランジスタの出力側の電極に接続され、カソードが前記第1端子に接続された第2ダイオードと、
を備える生体刺激装置。
【請求項4】
請求項1に記載の生体刺激装置であって、
前記制御回路は、1つの前記第1パルスに対して、複数の前記第2パルスが発生するように、前記生体の抵抗に関わらず前記第1及び第2高圧回路、前記第1及び第2低圧回路、前記第1及び第2スイッチをそれぞれ制御する、
生体刺激装置。
【請求項5】
請求項1に記載の生体刺激装置であって、
前記制御回路は、前記第2パルスのパルス幅が、前記第1パルスのパルス幅よりも長くなるように、前記生体の抵抗に関わらず前記第1及び第2高圧回路、前記第1及び第2低圧回路、前記第1及び第2スイッチをそれぞれ制御する、
生体刺激装置。
【請求項6】
請求項1,4又は5の何れか一項に記載の生体刺激装置であって、
前記制御回路は、第1期間、前記第1及び第2パルスを発生させた後、第2期間、前記第1期間の前記第1パルスの振幅を低下させて、前記第1及び第2パルスを発生させる、
生体刺激装置。