(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014850
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】筒張出部形成方法
(51)【国際特許分類】
B21D 15/06 20060101AFI20250123BHJP
B21D 22/10 20060101ALI20250123BHJP
B21D 51/12 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B21D15/06
B21D22/10 B
B21D51/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117762
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】399131563
【氏名又は名称】株式会社カネミツ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直樹
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA10
4E137BB03
4E137CA09
4E137CA24
4E137EA04
4E137GA12
4E137HA10
(57)【要約】
【課題】 筒状のものに大きな張出部を設けようとする場合に、その張出部の形状を安定させる。
【解決手段】 筒張出部形成方法は、円錐台形状形成工程S302と所定形状形成工程S304とを備える。円錐台形状形成工程S302において、所定形状形成工程S304に先立って円錐台領域250が素形材12の筒状部20の外周に形成される。所定形状形成工程S304において、張出部形成型152の所定の形状の内周面に、筒状部20の外周に形成される円錐台領域250が取り囲まれる。所定形状形成工程S304において、筒状部20の内周面に圧力が加えられ筒状部20が張出部形成型152に押付けられることにより筒状部20に張出部252が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部を有する素形材の前記筒状部が張出部形成型に取り囲まれ、前記張出部形成型に取り囲まれた前記筒状部の内周面に圧力が加えられ、前記筒状部の内周面に圧力が加えられることに伴って前記筒状部が前記張出部形成型に押付けられることにより前記筒状部に張出部が形成される所定形状形成工程を備え、
前記張出部形成型には所定の形状の内周面が形成されており、
前記所定形状形成工程において、前記筒状部は前記張出部形成型の前記所定の形状の内周面に押付けられる筒張出部形成方法であって、
前記所定形状形成工程に先立って円錐台領域が前記筒状部の外周に形成される円錐台形状形成工程を前記所定形状形成工程に加えて備え、
前記所定形状形成工程において、前記張出部形成型の前記所定の形状の内周面に、前記筒状部の外周に形成される前記円錐台領域が取り囲まれることを特徴とする筒張出部形成方法。
【請求項2】
前記円錐台形状形成工程において、円錐台状の空間を形成する円錐台形状形成型に前記素形材の前記筒状部が取り囲まれ、前記円錐台形状形成型に取り囲まれた前記筒状部の内周面に圧力が加えられ、前記圧力が加えられることに伴って前記筒状部が前記円錐台形状形成型に押付けられることにより、前記円錐台領域が前記筒状部の外周に形成されることを特徴とする請求項1に記載の筒張出部形成方法。
【請求項3】
前記円錐台形状形成工程において、前記筒状部の内部に弾性体が配置され、力を受けて変形した前記弾性体が前記筒状部の内周面に前記圧力を加え、
前記円錐台形状形成工程において、前記筒状部の中心軸方向に沿って前記弾性体が前記力を受け、
前記円錐台形状形成工程において、前記円錐台形状形成型が形成する前記円錐台状の空間が、前記弾性体が前記力を受ける箇所に近づくにつれ窄まるものであることを特徴とする請求項2に記載の筒張出部形成方法。
【請求項4】
前記所定形状形成工程において、前記張出部形成型の前記所定の形状の内周面に前記円錐台領域が取り囲まれる際、前記張出部形成型の前記所定の形状の内周面のうち最も内径が大きい箇所に、前記円錐台領域のうち最も外径が大きい箇所が対向するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の筒張出部形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒張出部形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ビード付きパイプのバルジ加工方法を開示する。そのバルジ加工方法は、ダイに管状ワークを挿入し、その管状ワークに内圧をかけてビードを形成するものである。そのダイは、内周面にビード成形面をもち、直径線で分離可能である。そのバルジ加工方法は、第1工程と第2工程とからなる。第1工程において、第1ダイとゴムパンチとによりバルジ加工が施される。第1ダイは、中央部に深いビード成形面をもちその両側に一対の浅いビード成形面をもつ。第2工程において、第2ダイとゴムパンチとが用いられる。第2工程において、各ダイ部片が相互に接近しつつあるときゴムパンチが加圧される。第2ダイは、中央部および両側に深いビード成形面をもち、隣り合うビード成形面相互間および各ビード成形面の中間で分割してなるダイ部片を備える。特許文献1に開示されたバルジ加工方法によれば、通常のプレス機を用いて3山のビードをもつパイプを成形できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明には、筒状のものに大きな張出部を設けようとする場合に、その張出部の形状を安定させることが困難であるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、筒状のものに大きな張出部を設けようとする場合に、その張出部の形状を安定させる筒張出部形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述された目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、筒張出部形成方法は、所定形状形成工程S304を備える。所定形状形成工程S304において、筒状部20を有する素形材12の筒状部20が張出部形成型152に取り囲まれる。所定形状形成工程S304において、張出部形成型152に取り囲まれた筒状部20の内周面に圧力が加えられる。所定形状形成工程S304において、筒状部20の内周面に圧力が加えられることに伴って筒状部20が張出部形成型152に押付けられることにより筒状部20に張出部252が形成される。張出部形成型152には所定の形状の内周面が形成されている。所定形状形成工程において、筒状部20は張出部形成型152の所定の形状の内周面に押付けられる。筒張出部形成方法は、円錐台形状形成工程S302を所定形状形成工程S304に加えて備える。円錐台形状形成工程S302において、所定形状形成工程S304に先立って円錐台領域250が筒状部20の外周に形成される。この場合、所定形状形成工程S304において、張出部形成型152の所定の形状の内周面に、筒状部20の外周に形成される円錐台領域250が取り囲まれる。
【0007】
張出部形成型152に取り囲まれた筒状部20の内周面に圧力が加えられるにあたり、円錐台領域250が受ける圧力を筒状部20の中心軸290に沿う方向のものとその中心軸290に直交する方向のものとに分けることができる。これができるので、張出部形成型152に取り囲まれた筒状部20の内周面に圧力が加えられる際、筒状部20の中心軸290に直交する方向についてのその内周面に加えられる圧力は、筒状部20に円錐台領域250が形成されないままの場合に比べ、小さくなる。その圧力が小さくなるので、円錐台領域250においては圧力によって張出部形成型152の中で押し拡げられることが抑制される。このように円錐台領域250を設けることにより、筒状部20のうち他の領域に先立って大きく押し拡げられることが望ましくない領域につき、そのような押し拡げを抑制できる。そのような押し拡げを抑制できる結果、筒状のものに大きな張出部252を設けようとする場合に、その張出部252の形状を安定させ得る。
【0008】
また、上述された円錐台形状形成工程S302において、次に述べられることにより、円錐台領域250が筒状部20の外周に形成されることが望ましい。その一つは、円錐台状の空間を形成する円錐台形状形成型120に素形材12の筒状部20が取り囲まれるというものである。他の一つは、円錐台形状形成型120に取り囲まれた筒状部20の内周面に圧力が加えられるというものである。別の一つは、筒状部20の内周面に圧力が加えられることに伴って筒状部20が円錐台形状形成型120に押付けられるというものである。
【0009】
円錐台領域250が筒状部20の外周に形成されるにあたり、筒状部20の内周面に圧力が加えられることに伴って筒状部20が円錐台形状形成型120に押付けられる。これにより、円錐台領域250の底部にあたる箇所の直径を大きくすることが容易となる。その直径を大きくする際、円錐台領域250の高さすなわち筒状部20の中心軸290方向についての円錐台領域250の一端から他端までの距離を大きくする必要性は大きくない。円錐台領域250の高さが概ね大きくならずその底部にあたる箇所の直径が大きくなると、その直径が大きくない場合に比べて、所定形状形成工程S304において円錐台領域250の内側に圧力が加えられる際、その円錐台領域250は筒状部20の中心軸290方向について大きな分力を受けやすくなる。このように大きな分力を受けると、円錐台領域250はその底部付近が立ち上がるように拡げられることとなる。円錐台領域250の底部付近が立ち上がるように拡げられると、筒状部20がその中心軸290に直交する方向へ膨れるに過ぎない場合と比べて、形成された張出部252のうち特定の箇所が特に薄くなる可能性は低くなる。
【0010】
また、上述された円錐台形状形成工程S302において、筒状部20の内部に弾性体100が配置され、力を受けて変形した弾性体100が筒状部20の内周面に圧力を加えることが望ましい。この場合、円錐台形状形成工程S302において、筒状部20の中心軸290方向に沿って弾性体100が力を受けることが望ましい。この場合、円錐台形状形成工程S302において、円錐台形状形成型120が形成する円錐台状の空間が、弾性体100が力を受ける箇所に近づくにつれ窄まるものであることが望ましい。
【0011】
弾性体100が筒状部20の内周面に圧力を加える場合には、液体が筒状部20の内周面に圧力を加える場合に比べれば、筒状部20の内周面へ一様な圧力を加え難い。液体が筒状部20の内周面に圧力を加える場合に比べると、筒状部20の内周面のうち弾性体100が力を受ける箇所に近い箇所は遠い箇所に比べて圧力が高くなりやすい。円錐台形状形成工程S302において、円錐台形状形成型120が形成する円錐台状の空間が、弾性体100が力を受ける箇所に近づくにつれ窄まると、筒状部20の内周面のうち圧力が高くなりやすい箇所に対する押し拡げが抑制される。圧力が高くなりやすい箇所に対する押し拡げが抑制されると、その圧力が高くなりやすい箇所が想定を超えて押し拡げられる可能性が低下する。その可能性が低下すると、筒状部20に形成される円錐台領域250の形状を安定させ得る。
【0012】
また、上述された所定形状形成工程S304において、張出部形成型152の所定の形状の内周面に円錐台領域250が取り囲まれる際、張出部形成型152の所定の形状の内周面のうち最も内径が大きい箇所に、円錐台領域250のうち最も外径が大きい箇所が対向するように配置されることが望ましい。
【0013】
張出部形成型152の所定の形状の内周面のうち最も内径が大きい箇所と円錐台領域250のうち最も外径が大きい箇所とが対向する。これにより、所定形状形成工程S304において筒状部20の内周面に圧力が加えられる際、筒状部20の中心軸290に直交する方向についての筒状部20の押し拡げ量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、筒状のものに大きな張出部を設けようとする場合に、その張出部の形状を安定させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のある実施形態にかかる筒張出部形成方法の各工程が示されるフローチャートである。
【
図2】本発明のある実施形態にかかる所定形状形成装置の断面図である。
【
図3】本発明のある実施形態にかかる円柱状弾性体および円錐台形状形成型の断面形状が示される概念図である。
【
図4】本発明のある実施形態にかかる先細弾性体および張出部形成型の断面形状が示される概念図である。
【
図5】本発明のある実施形態にかかる素形材の外観図である。
【
図6】本発明のある実施形態にかかる一方駆動カムが一方従動カムを押しつつある状況が示される概念図である。
【
図7】本発明のある実施形態にかかる一方円錐台面型および一方底面型が素形材に接した状況が示される概念図である。
【
図8】本発明のある実施形態にかかる一方切欠形成部材の上端の切り欠きに一方保持体が進入した状況が示される概念図である。
【
図9】本発明のある実施形態にかかる円柱状弾性体が筒状部を円錐台形状形成型のうち一方円錐台面型および一方底面型の内周面に押し付けている状況が示される概念図である。
【
図10】本発明のある実施形態にかかる張出部が形成された素形材の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面が参照されつつ、本発明の実施形態が説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能は同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返されない。
【0017】
[筒張出部形成方法の工程]
図1は、本実施形態にかかる筒張出部形成方法の各工程が示されるフローチャートである。
図1に基づいて、本実施形態にかかる筒張出部形成方法の各工程が説明される。
【0018】
本実施形態にかかる筒張出部形成方法は、素形材形成工程S300と、円錐台形状形成工程S302と、所定形状形成工程S304とを備える。
【0019】
素形材形成工程S300において、素形材12が形成される。本実施形態の場合、その素形材12は、円筒状の筒状部20と鍔部22とを備える。その具体的な手順は周知なのでここではその詳細な説明は繰り返されない。
【0020】
円錐台形状形成工程S302において、円錐台領域250が筒状部20の外周に形成される。その詳細な説明は後述される。
【0021】
所定形状形成工程S304において、素形材12の筒状部20に張出部252が形成される。その詳細な説明は後述される。
【0022】
[筒張出部形成方法が実施される際に用いられる装置の構成の説明]
図2は、本実施形態にかかる所定形状形成装置の断面図である。本実施形態の場合、円錐台形状形成工程S302において用いられる円錐台形状形成装置と所定形状形成工程S304が実施される際に用いられる所定形状形成装置とは、次に述べられる点で異なる。その点は、円錐台形状形成装置が円柱状弾性体100および円錐台形状形成型120を備えているのに対し、所定形状形成装置が円柱状弾性体100および円錐台形状形成型120に代えて先細弾性体150および張出部形成型152を備えている点である。ここでは、
図2に基づいて、円錐台形状形成装置と所定形状形成装置とに共通する構成が説明される。
【0023】
本実施形態の場合、所定形状形成装置は、載置台70と、一方駆動カム72と、一方従動カム74と、一方台座部材76と、一方切欠形成部材78と、図示されない一方後退機構部と、他方駆動カム80と、他方従動カム82と、図示されないカム駆動機構と、他方台座部材84と、他方切欠形成部材86と、図示されない他方後退機構部と、割型保持押さえ型88と、図示されない割型保持押さえ型駆動機構とを備える。
【0024】
載置台70には、素形材12が載せられる。これにより、載置台70は素形材12を支える。
【0025】
一方駆動カム72は、一方従動カム74に力を加える。一方従動カム74は、一方駆動カム72から力を受けると載置台70に近づくように移動する。一方台座部材76は、一方従動カム74の移動に伴って移動する。一方切欠形成部材78は、一方台座部材76に載せられる。一方切欠形成部材78は、一方従動カム74に接するように配置される。一方切欠形成部材78も、一方従動カム74の移動に伴って移動する。本実施形態の場合、一方切欠形成部材78の上端には切り欠き190が形成されている。一方後退機構部は、一方台座部材76が載置台70から離れるようその一方台座部材76に力を加える。
【0026】
他方駆動カム80は、他方従動カム82に力を加える。他方従動カム82は、他方駆動カム80から力を受けると載置台70に近づくように移動する。他方台座部材84は、他方従動カム82の移動に伴って移動する。他方切欠形成部材86は、他方台座部材84に載せられる。他方切欠形成部材86は、他方従動カム82に接するように配置される。他方切欠形成部材86も、他方従動カム82の移動に伴って移動する。本実施形態の場合、他方切欠形成部材86の上端には切り欠き192が形成されている。他方後退機構部は、他方台座部材84が載置台70から離れるようその他方台座部材84に力を加える。
【0027】
カム駆動機構は、一方駆動カム72および他方駆動カム80をこれらが上下するように駆動する。なお、本実施形態の場合、一方駆動カム72および他方駆動カム80が上下する際、割型保持押さえ型88も上下する。
【0028】
割型保持押さえ型88は、筒状部20が押し付けられる際、後述される位置保持および圧縮を行う。
【0029】
本実施形態の場合、割型保持押さえ型88は、一方保持体110と、他方保持体112と、弾性体圧縮体114とを有している。
【0030】
一方保持体110および他方保持体112は、後述される位置保持を行う。弾性体圧縮体114は、後述される圧縮を行う。
【0031】
割型保持押さえ型駆動機構は、一方保持体110と他方保持体112と弾性体圧縮体114とをこれらが上下するように駆動する。
【0032】
上述されたように、円錐台形状形成装置も、載置台70と、一方駆動カム72と、一方従動カム74と、一方台座部材76と、一方切欠形成部材78と、図示されない一方後退機構部と、他方駆動カム80と、他方従動カム82と、図示されないカム駆動機構と、他方台座部材84と、他方切欠形成部材86と、図示されない他方後退機構部と、割型保持押さえ型88と、図示されない割型保持押さえ型駆動機構とを備える。ここではその詳細な説明は繰り返されない。
【0033】
図3は、本実施形態にかかる円柱状弾性体100および円錐台形状形成型120の断面形状が示される概念図である。
図3に基づいて、本実施形態にかかる円錐台形状形成装置のさらなる構成が説明される。
【0034】
本実施形態にかかる円錐台形状形成装置は、円柱状弾性体100および円錐台形状形成型120をさらに備える。
【0035】
円柱状弾性体100は、素形材12と共に載置台70に載せられる。これにより、載置台70は円柱状弾性体100も支えることとなる。円柱状弾性体100は載置台70に固定される。円柱状弾性体100は、素形材12が載置台70に載せられるとこれを貫通する。円柱状弾性体100は、力を受けて弾性変形することに伴い、これが貫通している素形材12を円錐台形状形成型120に押し付ける。
【0036】
円錐台形状形成型120は、素形材12がこれに押し付けられるとき、円錐台状の空間を形成する。円錐台形状形成型120へ素形材12の筒状部20へ押し付けられることにより、円錐台領域250が筒状部20の外周に形成されることとなる。本実施形態の場合、円錐台形状形成型120は、一方円錐台面型130と、一方底面型132と、他方円錐台面型134と、他方底面型136とを有している。
【0037】
一方円錐台面型130には、上述された円錐台状の空間に沿う内周面210が形成されている。その内周面210に筒状部20の一部が押し付けられる。本実施形態の場合、これにより筒状部20のうち一方円錐台面型130に押し付けられた箇所が円錐台領域250の一部となる。本実施形態の場合、内周面210は、上端に近づくにつれすなわち載置台70から離れるにつれ窄まる。なお、本実施形態の場合、一方円錐台面型130は一方保持体110から押されると下降できる。
【0038】
一方底面型132は、一方円錐台面型130の下に配置される。一方底面型132には、窪んだ曲面212が形成されている。その曲面212に筒状部20の一部が押し付けられる。これにより、筒状部20のうち一方底面型132に押し付けられた箇所は曲面となる。その曲面は円錐台領域250に隣接する。
【0039】
他方円錐台面型134は、円柱状弾性体100を挟んで一方円錐台面型130に対向するように配置される。他方円錐台面型134にも、上述された円錐台状の空間に沿う内周面214が形成されている。その内周面214に筒状部20の一部が押し付けられる。本実施形態の場合、これにより筒状部20のうち他方円錐台面型134に押し付けられた箇所が円錐台領域250の残る一部となる。本実施形態の場合、内周面214は、上端に近づくにつれすなわち載置台70から離れるにつれ窄まる。なお、本実施形態の場合、他方円錐台面型134は他方保持体112から押されると下降できる。
【0040】
他方底面型136は、円柱状弾性体100を挟んで一方底面型132に対向するように配置される。他方底面型136は、他方円錐台面型134の下に配置される。他方底面型136には、窪んだ曲面216が形成されている。その曲面216に筒状部20の一部が押し付けられる。これにより、筒状部20のうち他方底面型136に押し付けられた箇所は曲面となる。その曲面は円錐台領域250に隣接する。
【0041】
図4は、本実施形態にかかる先細弾性体150および張出部形成型152の断面形状が示される概念図である。
図4に基づいて、本実施形態にかかる所定形状形成装置のさらなる構成が説明される。
【0042】
本実施形態にかかる所定形状形成装置は、先細弾性体150および張出部形成型152をさらに備える。
【0043】
先細弾性体150は、素形材12と共に載置台70に載せられる。これにより、載置台70は先細弾性体150も支えることとなる。先細弾性体150は載置台70に固定される。先細弾性体150は、筒状部20に円錐台領域250が形成された素形材12が載置台70に載せられるとこれを貫通する。先細弾性体150は、力を受けて弾性変形することに伴い、これが貫通している素形材12を張出部形成型152に押し付ける。
【0044】
張出部形成型152は、所定の形状の空間を形成する。その形状は、本実施形態にかかる筒張出部形成方法によって張出部252が形成された後の筒状部20の外形に沿う。したがって、張出部形成型152へ素形材12の筒状部20が押し付けられることにより、その所定の形状の張出部252が筒状部20の外周に形成されることとなる。本実施形態の場合、張出部形成型152は、一方所定上面型170と、一方所定下面型172と、他方所定上面型174と、他方所定下面型176とを有している。
【0045】
一方所定上面型170には、次に述べられる内周面230が形成されている。その内周面230は、本実施形態にかかる筒張出部形成方法において素形材12へ最終的に形成することとされている外周面に沿うものである。一方所定上面型170の内周面230に筒状部20の一部が押し付けられる。これにより、筒状部20のうち一方所定上面型170に押し付けられた箇所は張出部252の一部となる。
【0046】
一方所定下面型172は、一方所定上面型170の下に配置される。一方所定下面型172には、次に述べられる内周面232が形成されている。その内周面232は、本実施形態にかかる筒張出部形成方法において素形材12へ最終的に形成することとされている外周面に沿うものである。一方所定下面型172の内周面232に筒状部20の一部が押し付けられる。これにより、筒状部20のうち一方所定下面型172に押し付けられた箇所は張出部252の一部となる。その箇所は、筒状部20のうち一方所定上面型170の内周面230に押し付けられた箇所に隣接する。
【0047】
他方所定上面型174は、先細弾性体150を挟んで一方所定上面型170に対向するように配置される。他方所定上面型174にも、次に述べられる内周面234が形成されている。その内周面234は、本実施形態にかかる筒張出部形成方法において素形材12へ最終的に形成することとされている外周面に沿うものである。他方所定上面型174の内周面234に筒状部20の一部が押し付けられる。これにより、筒状部20のうち他方所定上面型174に押し付けられた箇所も張出部252の一部となる。
【0048】
他方所定下面型176は、先細弾性体150を挟んで一方所定下面型172に対向するように配置される。他方所定下面型176は、他方所定上面型174の下に配置される。他方所定下面型176には、次に述べられる内周面236が形成されている。その内周面236は、本実施形態にかかる筒張出部形成方法において素形材12へ最終的に形成することとされている外周面に沿うものである。他方所定下面型176の内周面236に筒状部20の一部が押し付けられる。これにより、筒状部20のうち他方所定下面型176に押し付けられた箇所は張出部252の一部となる。その箇所は、筒状部20のうち他方所定上面型174の内周面234に押し付けられた箇所に隣接する。
【0049】
なお、本実施形態の場合、上下方向における一方円錐台面型130と一方底面型132との境界の載置台70からの高さは、これらが接触するとき、次に述べられる要件を満たすものとなっている。その要件とは、一方所定上面型170と一方所定下面型172とが互いに接触する際のそれらの内周面のうち最も凹んでいる箇所の載置台70からの上下方向における高さに等しいというものである。同様に、本実施形態の場合、上下方向における他方円錐台面型134と他方底面型136との境界の載置台70からの高さは、これらが接触するとき、次に述べられる要件を満たすものとなっている。その要件とは、他方所定上面型174と他方所定下面型176とが互いに接触する際のそれらの内周面のうち最も凹んでいる箇所の載置台70からの上下方向における高さに等しいというものである。
【0050】
[筒張出部形成方法が実施されている際の各工程における動作の説明]
図5は、本実施形態にかかる素形材12の外観図である。図において素形材12の一部は切り欠かれている。
図6は、本実施形態にかかる一方駆動カム72が一方従動カム74を押しつつある状況が示される概念図である。
図7は、本実施形態にかかる一方円錐台面型130および一方底面型132が素形材12に接した状況が示される概念図である。
図8は、本実施形態にかかる一方切欠形成部材78の上端の切り欠き190に一方保持体110が進入した状況が示される概念図である。
図9は、本実施形態にかかる円柱状弾性体100が筒状部20を円錐台形状形成型120のうち一方円錐台面型130および一方底面型132の内周面に押し付けている状況が示される概念図である。
図10は、本実施形態にかかる張出部252が形成された素形材12の外観図である。
図1乃至
図10に基づいて、本実施形態にかかる筒張出部形成方法が実施される際の各工程の具体的内容が説明される。
【0051】
筒張出部形成方法を実施する者(以下「実施者」と称される)は、円筒状の筒状部20と鍔部22とを備える素形材12を形成する(S300)。本実施形態の場合、後工程により、その筒状部20のうち一端に近い箇所に後述される張出部252が形成されることとなる。鍔部22は、その筒状部20の他端の外縁に配置される。本実施形態の場合、鍔部22の形状は円環状である。鍔部22は筒状部20の中心軸290が延びる方向に対して直交するよう拡がる。
図5に、本実施形態にかかる素形材12の外観が示される。
【0052】
次いで、実施者は、その素形材12を円錐台形状形成装置に取付ける。より具体的には、実施者は、円錐台形状形成装置の円柱状弾性体100がその素形材12の筒状部20内へ進入するように、その素形材12を円錐台形状形成装置の載置台70に載せる。
【0053】
円錐台形状形成装置の載置台70にその素形材12が載せられると、実施者は、一方駆動カム72および他方駆動カム80が下降するように図示されないカム駆動機構を制御する。
【0054】
その制御によって一方駆動カム72が下降すると、一方駆動カム72は一方従動カム74を押す。
図6には一方駆動カム72が一方従動カム74を押しつつある状況が示されている。押された一方従動カム74は素形材12へ近づくように移動する。一方台座部材76および一方切欠形成部材78は、一方従動カム74の移動に伴って移動する。一方台座部材76に載せられている一方円錐台面型130および一方底面型132は、一方台座部材76の移動に伴って素形材12へ近づくように移動する。
図7には一方円錐台面型130および一方底面型132が素形材12に接した状況が示されている。
【0055】
一方駆動カム72と同様に他方駆動カム80が下降すると、他方駆動カム80は他方従動カム82を押す。押された他方従動カム82は素形材12へ近づくように移動する。他方台座部材84および他方切欠形成部材86は、他方従動カム82の移動に伴って移動する。他方台座部材84に載せられている他方円錐台面型134および他方底面型136は、他方台座部材84の移動に伴って素形材12へ近づくように移動する。
【0056】
このようにして一方台座部材76と一方切欠形成部材78と他方台座部材84と他方切欠形成部材86とが素形材12に近づくので、素形材12の筒状部20は、円錐台形状形成型120に取り囲まれることとなる。
【0057】
素形材12の筒状部20が円錐台形状形成型120に取り囲まれると、実施者は、割型保持押さえ型88が下降するようにこれを制御する。これに伴って下降した割型保持押さえ型88のうち一方保持体110は、一方切欠形成部材78の上端に形成されている切り欠き190に進入する。これにより、一方切欠形成部材78が固定される。その結果、一方円錐台面型130および一方底面型132は固定される。
図8には一方切欠形成部材78の上端の切り欠き190に一方保持体110が進入した状況が示されている。割型保持押さえ型88のうち他方保持体112は、他方切欠形成部材86の上端に形成されている切り欠き192に進入する。これにより、他方切欠形成部材86が固定される。その結果、他方円錐台面型134および他方底面型136は固定される。
【0058】
次いで、割型保持押さえ型88の弾性体圧縮体114が素形材12の上端に接触する。素形材12の上端は、弾性体圧縮体114の下端に形成されている溝270に嵌まる。引き続き、割型保持押さえ型88の弾性体圧縮体114は下降する。これにより、割型保持押さえ型88の弾性体圧縮体114は、素形材12の上端を押さえつけると共に、円柱状弾性体100を圧縮することとなる。その圧縮に伴い、円柱状弾性体100の外周は膨らむ。すなわち、円柱状弾性体100は弾性体圧縮体114から力を受けて変形する。また、一方円錐台面型130は弾性体圧縮体114に押されて下降する。他方円錐台面型134も弾性体圧縮体114に押されて下降する。円柱状弾性体100の外周が膨らむことにより、その素形材12の筒状部20の内周面に円柱状弾性体100から圧力が加えられることとなる。筒状部20の内周面に圧力が加えられることに伴って、筒状部20は一方円錐台面型130および一方底面型132を有する円錐台形状形成型120に押し付けられる(S302)。これにより、素形材12には円錐台領域250が形成されることとなる。
図9には膨らんだ円柱状弾性体100が筒状部20を円錐台形状形成型120のうち一方円錐台面型130および一方底面型132の内周面に押し付けている状況が示されている。
【0059】
円錐台形状形成型120に筒状部20が押し付けられることでその筒状部20が膨らむと、実施者は、割型保持押さえ型88が上昇するように割型保持押さえ型駆動機構を制御する。これに伴って割型保持押さえ型88の弾性体圧縮体114がまず上昇する。次いで、一方保持体110および他方保持体112が上昇する。その上昇に伴い、一方保持体110は、一方切欠形成部材78の上端に形成されている切り欠き190から抜ける。他方保持体112は、他方切欠形成部材86の上端に形成されている切り欠き192から抜ける。
【0060】
次いで、実施者は、一方駆動カム72および他方駆動カム80が上昇するようにカム駆動機構を制御する。その制御によって一方駆動カム72が上昇すると、一方台座部材76と一方切欠形成部材78と一方円錐台面型130と一方底面型132とは移動可能となる。その制御によって他方駆動カム80が上昇すると、他方台座部材84と他方切欠形成部材86と他方円錐台面型134と他方底面型136とは移動可能となる。実施者は、これらが後退するように一方後退機構部および他方後退機構部を制御する。その制御により円錐台形状形成型120が素形材12から離れると、実施者は、素形材12を円錐台形状形成装置から取り外す。
【0061】
次いで、実施者は、その素形材12を所定形状形成装置に取付ける。より具体的には、実施者は、所定形状形成装置の先細弾性体150がその素形材12の筒状部20内へ進入するように、その素形材12を所定形状形成装置の載置台70に載せる。
【0062】
所定形状形成装置の載置台70にその素形材12が載せられると、実施者は、所定形状形成装置の一方駆動カム72および他方駆動カム80が下降するようにカム駆動機構を制御する。その後、円錐台形状形成装置におけるものと同様の手順で張出部形成型152は素形材12の筒状部20を取り囲む。本実施形態の場合、これにより、張出部形成型152の所定の形状の内周面に、筒状部20の外周に形成される円錐台領域250が取り囲まれることとなる。
【0063】
なお、上述されたように、本実施形態の場合、上下方向における一方円錐台面型130と一方底面型132との境界の載置台70からの高さは、これらが接触するとき、次に述べられる要件を満たすものとなっている。その要件とは、一方所定上面型170と一方所定下面型172とが互いに接触する際のそれらの内周面のうち最も凹んでいる箇所の載置台70からの上下方向における高さに等しいというものである。同様に、本実施形態の場合、上下方向における他方円錐台面型134と他方底面型136との境界の載置台70からの高さは、これらが接触するとき、次に述べられる要件を満たすものとなっている。その要件とは、他方所定上面型174と他方所定下面型176とが互いに接触する際のそれらの内周面のうち最も凹んでいる箇所の載置台70からの上下方向における高さに等しいというものである。このことから、本実施形態の場合、張出部形成型152の所定の形状の内周面に円錐台領域250が取り囲まれる際、張出部形成型152の所定の形状の内周面のうち最も内径が大きい箇所に、円錐台領域250のうち最も外径が大きい箇所が対向するように配置されることとなる。
【0064】
張出部形成型152の所定の形状の内周面に筒状部20の円錐台領域250が取り囲まれた後、円錐台形状形成装置による素形材12の加工と同様の手順で素形材12の筒状部20は張出部形成型152に押し付けられる。その具体的手順は円錐台形状形成装置による素形材12の加工と同様である。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返されない。この押し付けにより、筒状部20の形状は整えられる。これにより、筒状部20には張出部252が形成される(S304)。
【0065】
筒状部20の形状が整えられると、実施者は、円錐台形状形成装置における素形材12の取外しと同様の手順で素形材12を所定形状形成装置から取り外す。これにより、本実施形態にかかる筒張出部形成方法が終了する。
図10には、張出部252が形成された素形材12の外観が示される。
【0066】
[本実施形態にかかる筒張出部形成方法の効果]
本実施形態にかかる筒張出部形成方法によれば、筒状のものに大きな張出部252を設けようとする場合に、その張出部252の形状を安定させ得る。
【0067】
また、本実施形態にかかる筒張出部形成方法によれば、形成された張出部252のうち特定の箇所が特に薄くなる可能性は低くなる。
【0068】
また、本実施形態にかかる筒張出部形成方法によれば、筒状部20に形成される円錐台領域250の形状を安定させ得る。
【0069】
また、本実施形態にかかる筒張出部形成方法によれば、筒状部20の中心軸290に直交する方向についての筒状部20の押し拡げ量を抑えることができる。
【0070】
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではない。もちろん、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更がされてもよい。
【0071】
例えば、張出部形成型152の所定の形状の内周面に円錐台領域250が取り囲まれる際の円錐台領域250の位置は上述されたものに限定されない。また、円錐台形状形成型120の形態および張出部形成型152の形態は上述したものに限定されない。円錐台領域250が形成されるための具体的な手段も上述されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0072】
12…素形材
20…筒状部
22…鍔部
70…載置台
72…一方駆動カム
74…一方従動カム
76…一方台座部材
78…一方切欠形成部材
80…他方駆動カム
82…他方従動カム
84…他方台座部材
86…他方切欠形成部材
88…割型保持押さえ型
100…円柱状弾性体
110…一方保持体
112…他方保持体
114…弾性体圧縮体
120…円錐台形状形成型
130…一方円錐台面型
132…一方底面型
134…他方円錐台面型
136…他方底面型
150…先細弾性体
152…張出部形成型
170…一方所定上面型
172…一方所定下面型
174…他方所定上面型
176…他方所定下面型
190,192…切り欠き
210,214,230,232,234,236…内周面
212,216…曲面
250…円錐台領域
252…張出部
270…溝
290…中心軸