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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025148557
(43)【公開日】2025-10-07
(54)【発明の名称】1,3-ブチレングリコール製品
(51)【国際特許分類】
   C07C 31/20 20060101AFI20250930BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250930BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250930BHJP
   C07C 27/26 20060101ALN20250930BHJP
【FI】
C07C31/20 B
A61K8/34
A61Q19/00
C07C27/26
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025120918
(22)【出願日】2025-07-18
(62)【分割の表示】P 2021567563の分割
【原出願日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019239974
(32)【優先日】2019-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019239975
(32)【優先日】2019-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019239976
(32)【優先日】2019-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019239977
(32)【優先日】2019-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019239978
(32)【優先日】2019-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019239979
(32)【優先日】2019-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020006660
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020018910
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】圓尾 且也
(72)【発明者】
【氏名】草壁 聡
(72)【発明者】
【氏名】北村 浩稔
(72)【発明者】
【氏名】西村 知子
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽二
(57)【要約】      (修正有)
【課題】無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)であって、経時により着色や臭気が発生したり増大することが起きにくい、高純度の1,3-ブチレングリコール製品を得る。
【解決手段】1,3-ブチレングリコールを含む1,3-ブチレングリコール製品であって、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、特定の1,3-ジオキサン誘導体及び特定の1,3-ブチレングリコールのモノエステルの含有量の総和が65ppm未満である1,3-ブチレングリコール製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3-ブチレングリコールを含む1,3-ブチレングリコール製品であって、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、下記式(6)で表される化合物、下記式(7)で表される化合物、下記式(8)で表される化合物、下記式(9)で表される化合物及び下記式(10)で表される化合物の含有量の総和が65ppm未満である1,3-ブチレングリコール製品。
【化1】
【請求項2】
空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、前記式(4)で表される化合物、前記式(5)で表される化合物、前記式(6)で表される化合物、前記式(7)で表される化合物、前記式(8)で表される化合物、前記式(9)で表される化合物及び前記式(10)で表される化合物の含有量の総和が70ppm未満である、請求項1記載の1,3-ブチレングリコール製品。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、前記式(4)で表される化合物、前記式(5)で表される化合物、前記式(6)で表される化合物及び前記式(7)で表される化合物の含有量の総和が28ppm未満である、請求項1又は2記載の1,3-ブチレングリコール製品。
【請求項4】
空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、前記式(4)で表される化合物、前記式(5)で表される化合物、前記式(6)で表される化合物及び前記式(7)で表される化合物の含有量の総和が40ppm未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の1,3-ブチレングリコール製品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の1,3-ブチレングリコール製品を含む保湿剤。
【請求項6】
請求項5記載の保湿剤を含む化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は1,3-ブチレングリコール製品に関する。本願は、2019年12月28日に日本に出願した特願2019-239974、特願2019-239975、特願2019-239976、特願2019-239977、特願2019-239978及び特願2019-239979、2020年1月20日に日本に出願した特願2020-006660、並びに2020年2月6日に日本に出願した特願2020-018910の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
1,3-ブチレングリコールは無色透明、無臭の液体であり、低揮発性、低毒性、高吸湿性等の性質を備え、化学的安定性に優れる。このため、1,3-ブチレングリコールの用途は各種の合成樹脂、界面活性剤の原料をはじめ、化粧品、吸湿剤、高沸点溶剤、不凍液の素材等の多岐にわたっている。特に近年では、1,3-ブチレングリコールは保湿剤として優れた性質を有することが注目されており、化粧品業界での需要が拡大している。
【0003】
従来の製造方法で得られる1,3-ブチレングリコールは、水を含有した状態に長期間置くと酸濃度(酸性度)が上昇するという問題があった。酸濃度が上昇する原因は定かではなかったが、粗1,3-ブチレングリコールに含まれる副産物に関係すると考えられていた。化粧品は水を含むことが一般的であり、製造から一般消費者が実際に使用するまでに長い期間を要する。また、化粧品は保存安定性等の観点から液性が厳密に調整されている。従来の方法で得られた1,3-ブチレングリコールを化粧品に使用する場合、酸濃度の上昇により化粧品の液性バランスが崩れ、本来発揮されるべき効果が失われる可能性がある。また、化粧品の酸濃度の上昇により、使用者の肌荒れ等が発生する可能性もある。また、水を含まない化粧品であっても、使用時や保管時に吸湿することにより、その酸濃度が上昇することもあった。このため、粗1,3-ブチレングリコールから副産物を除去し、1,3-ブチレングリコールを高純度化することが求められていた。
【0004】
また、従来の製造方法で得られる1,3-ブチレングリコールは、副産物の影響により臭気を有することがあった。また、製造直後には透明なものであっても経時により着色が生じることもあり、長期間貯蔵する際に問題となっていた。例えば、化粧品を使用する際や使用後の保管時は、その化粧品は空気にさらされることになる。また、化粧品を製造する際は、空気雰囲気下で作業が行われることが一般的であり、さらに滅菌等の目的で加熱することもある。従来の方法で得られた1,3-ブチレングリコールを化粧品に使用する場合、空気の存在や加熱の影響により着色が進行することがあった。この様な問題を解決するため、粗1,3-ブチレングリコールから副産物を除去し、1,3-ブチレングリコールを高純度化することが求められていた。
【0005】
純度の高い1,3-ブチレングリコールを得る方法として、アセトアルドール類の水素還元により得られた粗1,3-ブチレングリコールに対し、苛性ソーダを添加して蒸留を行う方法が提案されている。また、高沸点物を除いた粗1,3-ブチレングリコールにアルカリ金属塩基を添加して加熱処理した後、1,3-ブチレングリコールを留出させアルカリ金属化合物及び高沸点物を残渣として分離し、続いて1,3-ブチレングリコール留分から低沸点物を留去する方法等が提案されている(特許文献1~6)。このように、純度の高い1,3-ブチレングリコールを得るために様々な1,3-ブチレングリコールの精製方法が提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-258129号公報
【特許文献2】国際公開第00/07969号
【特許文献3】特開2001-213822号公報
【特許文献4】特開2001-213824号公報
【特許文献5】特開2001-213825号公報
【特許文献6】特開2001-213828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの精製方法から得られる1,3-ブチレングリコール製品も依然として副産物が含まれており、臭気を有するという問題、製造直後には臭気が無くても経時により臭気が生じるという問題、水を含むと経時により酸濃度が上昇するという問題、着色という問題、経時により着色が増大するという問題があった。
【0008】
1,3-ブチレングリコールは、例えば、(1)アセトアルドール類の還元(水添)、(2)1,3-ブチレンオキサイドの加水分解、(3)エリスリトールの選択的水素化分解、(4)ブタジエンへの選択的水付加、(5)n-ブタナール-3-オンの水素化、(6)1-ブタノール-3-オンの水素化、(7)3-ヒドロキシ-1-ブタン酸の水素化、(8)β-ブチロラクトンの水素化、(9)ジケテンの水素化などの方法により製造される。
【0009】
上記の製造方法のうち、(1)アセトアルドール類の還元(水添)により1,3ーブチレングリコールを得る方法が好ましい。なかでも、収率の点で、アセトアルドール類を液相で還元する方法が好ましい。その理由は、アセトアルドール類が高沸点であることと、アセトアルドール類が熱に不安定であって、高温では容易に脱水反応を起こしてクロトンアルデヒド等になること、さらに、高温における脱水反応と還元反応(水添反応)は前者の反応速度が速いこと等にある。すなわち、アセトアルドール類を気相還元する場合には反応系内を高温とする必要があるが、アセトアルドール類を高温に付すと脱水反応を起こしてクロトンアルデヒド等が生じ、その後の還元反応によりブタノール等の副産物が生じる。このため、目的とする1,3-ブチレングリコールの収率が相対的に低下することとなる。したがって、高純度の1,3-ブチレングリコール製品を得るためには、気相還元よりも液相還元を行うことが好ましい。
【0010】
1,3-ブチレングリコールを製造する場合、一般にその製造過程において副産物が産生する。例えば、アセトアルドール類の水素還元により1,3-ブチレングリコールを製造する場合、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アセトン、メチルビニルケトン等の不飽和結合を有する低沸点物(低沸点化合物)や、これらの縮合物(例えば、アセトアルデヒドの三量体)、前記縮合物の水素化物、1,3-ブチレングリコールと上記低沸点物との縮合物(例えば、1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体)等が副生する。また、クロトンアルデヒドと1,3-ブチレングリコールのアセタール体、アセトアルデヒドと1,3-ブチレングリコールとのアセタール体、アセトアルドールやアセトアルデヒドとアセトアルデヒドの三量体の水素化物とのアセタール体等が副生する。また、他にも、原料となるアセトアルドール類に不純物として含まれる酢酸や、アセトアルドール類の製造において使用した苛性ソーダを中和するために使用される酢酸と、1,3-ブチレングリコールの縮合物(酢酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル体)が副生する。そして、これらの副産物は着色原因物質や臭気原因物質、さらには酸性原因物質としての性質を有し得る。
【0011】
上記アセタール体は、着色原因物質、臭気原因物質、及び酸性原因物質のいずれであるかは確かではなく、全ての性質を有することも考えられるが、臭気原因物質としての性質を色濃く有するものであると考えられる。具体的には、上記アセタール体そのものは臭気原因物質である可能性は低いものの、経時変化や加熱により臭気原因物質が発生する可能性がある。また、上記アセタール体は加水分解でアセトアルドールが発生することがあるが、これは臭気原因物質であるとともに酸化(着色)促進作用を有するものであるため、着色原因物質であるともいえる。ここで、着色原因物質とは、それ自身が現に色相を有している物質だけでなく、経時的に色相を有するものに変化する物質も含むものとして定義される。臭気原因物質とは、それ自身が現に臭気を発している物質だけでなく、経時的に臭気を発するものに変化する物質も含むものとして定義される。酸性原因物質とは、水を含むと経時により酸濃度が上昇する物質と定義される。
【0012】
上記エステル体は、着色原因物質、臭気原因物質、及び酸性原因物質のいずれであるかは確かではなく、全ての性質を有することも考えられるが、臭気原因物質と酸性原因物質としての両方の性質を色濃く有するものであると考えられる。これは、上記エステル体が水により加水分解されると、酢酸が発生するためである。
【0013】
なお、1,3-ブチレングリコールを製造する場合、その製造過程における副産物には、上記アセタール体やエステル体以外にも、着色原因物質、臭気原因物質、又は酸性原因物質に相当する、多種多様な副産物が含まれると考えられる。例えば、上述のアセトアルデヒドの三量体の水素化物は、着色原因物質、臭気原因物質、及び酸性原因物質のいずれにも相当する可能性があると考えられる。
【0014】
上記の副産物は、従来の蒸留等の精製手段を用いても完全に取り除くことは難しい。これは、粗1,3-ブチレングリコールの精製段階において、粗1,3-ブチレングリコールが高温条件に付されることや、アルカリ処理に付されることにより、新たな副産物が産生するためであると考えられる。こうした理由により、上述の通り、特許文献1~6の1,3-ブチレングリコール製品は多種多様の副産物を含むために臭気を有し、経時により着色が生じ、さらに水を含む状態において経時による酸濃度の上昇が生じることとなる。
【0015】
従って、本開示の目的は、無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)であって、経時による臭気の発生や増大がほとんどない、高純度の1,3-ブチレングリコール製品を提供することにある。
本開示の他の目的は、無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)であって、経時による着色や臭気の発生又は増大がほとんどない、及び/又は、水を含む状態においても経時による酸濃度上昇を生じにくい、高純度の1,3-ブチレングリコール製品を提供することにある。
また、本開示のさらに他の目的は、優れた保湿性能を有するとともに、高い品質を長期間保持できる保湿剤及び化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、1,3-ブチレングリコール製品を長期間保存すると、経時的に着色が増大したり、臭気が増大したり、経時的に初留点の低下、乾点の上昇、過マンガン酸カリウム試験値の低下などの品質低下が見られること、1,3-ブチレングリコール製品中に含まれる特定の不純物の含有量が一定値以上になると、当該1,3-ブチレングリコール製品の品質(着色、臭気、初留点、乾点、過マンガン酸カリウム試験値、酸濃度など)を低下させるだけでなく、該製品の長期間保存時における上記品質のさらなる低下をもたらすことを見出した。そして、前記特定の不純物の含有量をできる限り低減できる1,3-ブチレングリコールの製造方法を見出した。本開示はこれらの知見に基づき、さらに検討を加えて完成させたものである。
【0017】
すなわち、本開示は、1,3-ブチレングリコールを含む1,3-ブチレングリコール製品であって、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、下記式(6)で表される化合物、下記式(7)で表される化合物、下記式(8)で表される化合物、下記式(9)で表される化合物及び下記式(10)で表される化合物の含有量の総和が65ppm未満である1,3-ブチレングリコール製品を提供する。
【化1】
【0018】
前記1,3-ブチレングリコール製品において、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、前記式(4)で表される化合物、前記式(5)で表される化合物、前記式(6)で表される化合物、前記式(7)で表される化合物、前記式(8)で表される化合物、前記式(9)で表される化合物及び前記式(10)で表される化合物の含有量の総和が70ppm未満であることが好ましい。
【0019】
また、前記1,3-ブチレングリコール製品は、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、前記式(4)で表される化合物、前記式(5)で表される化合物、前記式(6)で表される化合物及び前記式(7)で表される化合物の含有量の総和が28ppm未満であることが好ましい。
【0020】
さらに、前記1,3-ブチレングリコール製品において、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、前記式(4)で表される化合物、前記式(5)で表される化合物、前記式(6)で表される化合物及び前記式(7)で表される化合物の含有量の総和が40ppm未満であることが好ましい。
【0021】
また、本開示は、前記の1,3-ブチレングリコール製品を含む保湿剤を提供する。
【0022】
さらに、本開示は、前記の保湿剤を含む化粧料を提供する。
【0023】
なお、本開示において、「1,3-ブチレングリコール製品」とは、1,3-ブチレングリコールが構成成分の大部分を占める(例えば、1,3-ブチレングリコール含有量が95重量%以上、好ましくは98重量%以上である)組成物を意味する。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)であって、経時による臭気の発生又は増大がほとんどない、高純度の1,3-ブチレングリコール製品が提供される。
また、本開示によれば、無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)であって、経時による着色や臭気の発生又は増大がほとんどない、及び/又は、水を含む状態においても経時による酸濃度上昇を生じにくい、高純度の1,3-ブチレングリコール製品が提供される。
また、本開示によれば、優れた保湿性能を有するとともに、高い品質を長期間保持できる保湿剤及び化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の1,3-ブチレングリコール製品を製造するための製造方法(精製方法)の一例を示すフローチャートである。
図2】比較例5における1,3-ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析のチャートである。
図3】実施例11における1,3-ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析のチャートである。
図4】比較例2における1,3-ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[1,3-ブチレングリコール製品]
本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品は、1,3-ブチレングリコールを含む1,3-ブチレングリコール製品であって、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、下記式(6)で表される化合物、下記式(7)で表される化合物、下記式(8)で表される化合物、下記式(9)で表される化合物及び下記式(10)で表される化合物の含有量の総和が65ppm未満である。
【化2】
【0027】
前記式(1)~(7)で表される化合物は環状アセタール化合物であり、式(8)~(10)で表される化合物はカルボン酸3-ヒドロキシブチルエステル化合物である。これらの化合物は、1,3-ブチレングリコールの製造時にも不純物として存在するが、1,3-ブチレングリコール製品を長期間保存した場合、経時的にその含有量が増加する不純物である。前記環状アセタール化合物は、水分の存在下で加水分解して、対応するカルボニル化合物を生成する。このように生成したカルボニル化合物は、それ自体還元性物質であり過マンガン酸カリウム試験値を低下させるだけでなく、反応性が高く、熱や酸素により、様々な複雑な化合物を生成しやすく、着色原因物質、臭気原因物質又は酸性原因物質になり得る。また、前記カルボン酸3-ヒドロキシブチルエステル化合物は、水分の存在下で加水分解して、対応するカルボン酸を生成する。このように生成したカルボン酸は、臭気原因物質、酸性原因物質になり得る。
【0028】
アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノンは、前記環状アセタール化合物又はカルボン酸3-ヒドロキシブチルエステル化合物の前駆物質である。また、ブチルアルデヒドもその構造から前記環状アセタール化合物の前駆物質となりうる。加えて、これらの化合物はカルボニル化合物であり、熱や酸素により様々な複雑な化合物を生成しやすく、着色原因物質、臭気原因物質又は酸性原因物質になり得る。
【0029】
そして、特に、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、式(1)~(10)で表される化合物の含有量の多い1,3-ブチレングリコール製品は、経時により臭気が増大する。例え製造時に無臭であったとしても、例えば長期間の保管により臭気が発生しやすい。したがって、本開示の1,3-ブチレングリコール製品においては、臭気及び経時的な臭気の増大を抑制するため、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール及び式(1)~(10)で表される化合物の含有量の総和は、65ppm未満であり、好ましくは50ppm以下、より好ましくは、45ppm以下、40ppm以下、35ppm以下、30ppm以下、25ppm以下又は20ppm以下であり、さらに好ましくは、15ppm以下、13ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下又は2ppm以下である。
【0030】
また、本開示の1,3-ブチレングリコール製品において、前記式(1)~(7)で表される化合物(環状アセタール化合物)の含有量の総和は、好ましくは28ppm未満、より好ましくは、25ppm以下、20ppm以下又は15ppm以下であり、さらに好ましくは12ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、6ppm以下、4ppm以下、2ppm以下又は1.4ppm以下である。
【0031】
また、本開示の1,3-ブチレングリコール製品において、前記式(8)~(10)で表される化合物(カルボン酸3-ヒドロキシブチルエステル化合物)の含有量の総和は、好ましくは6ppm未満、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下又は0.6ppm以下である。
【0032】
さらに、本開示の1,3-ブチレングリコール製品において、前記式(1)~(10)で表される化合物の含有量の総和は、好ましくは34ppm未満、より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは、25ppm以下、20ppm以下、18ppm以下、16ppm以下、14ppm以下、12ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下又は2ppm以下である。
【0033】
また、本開示の1,3-ブチレングリコール製品において、アセトアルデヒドの含有量は、好ましくは1.6ppm未満、より好ましくは、1.5ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1.0ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。クロトンアルデヒドの含有量は、好ましくは1ppm未満、より好ましくは、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。メチルビニルケトンの含有量は、好ましくは6ppm未満、より好ましくは、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。アセトンの含有量は、好ましくは5ppm未満、より好ましくは、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。ホルムアルデヒドの含有量は、好ましくは1ppm未満、より好ましくは、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。ブチルアルデヒドの含有量は、好ましくは5ppm未満、より好ましくは、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。アセトアルドールの含有量は、好ましくは6ppm未満、より好ましくは、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。1-ヒドロキシ-3-ブタノンの含有量は、好ましくは6ppm未満、より好ましくは、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。2-ブタノールの含有量は、好ましくは0.3ppm以下、より好ましくは0.2ppm未満である。式(1)で表される化合物の含有量は、好ましくは2ppm未満、より好ましくは、1.8ppm以下、1.6ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。式(2)で表される化合物の含有量は、好ましくは1ppm未満、より好ましくは、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(3)で表される化合物の含有量は、好ましくは4ppm未満、より好ましくは、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。式(4)で表される化合物の含有量は、好ましくは3ppm未満、より好ましくは、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。式(5)で表される化合物の含有量は、好ましくは6ppm未満、より好ましくは、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。式(6)で表される化合物の含有量は、好ましくは5ppm未満、より好ましくは、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。式(7)で表される化合物の含有量は、好ましくは7ppm未満、より好ましくは、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。式(8)で表される化合物の含有量は、好ましくは1ppm未満、より好ましくは、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(9)で表される化合物の含有量は、好ましくは4ppm未満、より好ましくは、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下である。式(10)で表される化合物の含有量は、好ましくは1ppm未満、より好ましくは、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。
【0034】
前記アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、式(1)~(10)で表される化合物の各含有量は、下記条件のGC-MS分析により定量できる。GC-MS分析では、非常に小さなピークでもすべて質量分析にかけ、各成分を定量する。特定の質量について分析するため、別の不純物がピークに重なっていても質量の異なる物質は検知されず、後述するGC分析よりも感度が高い。本明細書において、GC-MS分析による各成分の含有量の単位「ppm」は「重量ppm」を意味する。
(GC-MS分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
イオン源温度: EI 230℃、CI 250℃
Qポール温度:150℃
サンプル: そのまま分析に供する
【0035】
上記分析条件において、1,3-ブチレングリコールのピークの保持時間は、通常5.5分~7分である。上記分析条件において、1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、通常、アセトアルデヒドのピークの相対保持時間は0.3~0.5であり、クロトンアルデヒドのピークの相対保持時間は0.3~0.5であり、メチルビニルケトンのピークの相対保持時間は0.3~0.5であり、アセトンのピークの相対保持時間は0.3~0.5であり、ホルムアルデヒドのピークの相対保持時間は0.3~0.5であり、ブチルアルデヒドのピークの相対保持時間は0.3~0.5であり、アセトアルドールのピークの相対保持時間は0.4~0.6であり、1-ヒドロキシ-3-ブタノンのピークの相対保持時間は0.4~0.6であり、2-ブタノールのピークの相対保持時間は0.3~0.5であり、前記式(1)で表される化合物のピークの相対保持時間は1.3~1.7、式(2)で表される化合物のピークの相対保持時間は1.6~2.0、式(3)で表される化合物のピークの相対保持時間は0.7~1.0、式(4)で表される化合物のピークの相対保持時間は0.4~0.6、式(5)で表される化合物のピークの相対保持時間は1.3~1.7、式(6)で表される化合物のピークの相対保持時間は1.6~2.0、式(7)で表される化合物のピークの相対保持時間は0.6~0.8、式(8)で表される化合物のピークの相対保持時間は1.6~2.0、式(9)で表される化合物のピークの相対保持時間は1.0~1.2、式(10)で表される化合物のピークの相対保持時間は1.6~2.0である。
【0036】
なお、前記式(1)で表される化合物は、メチルビニルケトンと1,3-ブチレングリコールとの反応(アセタール化反応)により生成する化合物である。メチルビニルケトンは、1-ヒドロキシ-3-ブタノンの脱水反応により生成する。1-ヒドロキシ-3-ブタノンは、1,3-ブチレングリコールの酸化によって生成する。前記式(2)で表される化合物は、1-ヒドロキシ-3-ブタノンと1,3-ブチレングリコールとの反応(アセタール化反応)により生成する化合物である。前記式(3)で表される化合物は、アセトンと1,3-ブチレングリコールとの反応(アセタール化反応)により生成する化合物である。前記式(4)で表される化合物は、ホルムアルデヒドと1,3-ブチレングリコールとの反応(アセタール化反応)により生成する化合物である。アセトン及びホルムアルデヒドは、1-ヒドロキシ-3-ブタノンの分解によって生成する。前記式(5)で表される化合物は、クロトンアルデヒドと1,3-ブチレングリコールとの反応(アセタール化反応)により生成する化合物である。クロトンアルデヒドは、アセトアルドールの脱水反応によって生成する。アセトアルドールは、1,3-ブチレングリコールの酸化によって生成する。また、アセトアルドールは、アセトアルデヒドの二量化によっても生成する。前記式(6)で表される化合物は、アセトアルドールと1,3-ブチレングリコールとの反応(アセタール化反応)により生成する化合物である。前記式(7)で表される化合物は、アセトアルデヒドと1,3-ブチレングリコールとの反応(アセタール化反応)により生成する化合物である。アセトアルデヒドはアセトアルドールの分解によって生成する。前記式(8)で表される化合物は、クロトン酸と1,3-ブチレングリコールとの反応(エステル化反応)により生成する化合物である。クロトン酸はクロトンアルデヒドの酸化によって生成する。前記式(9)で表される化合物は、酢酸と1,3-ブチレングリコールとの反応(エステル化反応)により生成する化合物である。酢酸はアセトアルデヒドの酸化によって生成する。前記式(10)で表される化合物は、3-ヒドロキシブタン酸と1,3-ブチレングリコールとの反応(エステル化反応)により生成する化合物である。3-ヒドロキシブタン酸はアセトアルドールの酸化によって生成する。また、ホルムアルデヒドの酸化によってギ酸が生成し、そのギ酸と1,3-ブチレングリコールとの反応(エステル化反応)により、ギ酸2-ヒドロキシプロピルエステルが生成する。そして、ギ酸2-ヒドロキシプロピルエステルの脱炭酸により2-ブタノールが生成する。下に各化合物(不純物)の推定生成経路(「不純物生成経路図」と称する場合がある)を示す。下記式中、「1,3BG」は1,3-ブチレングリコールを示す。
【0037】
【化3】
【0038】
前述したように、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノンは、前記環状アセタール化合物又はカルボン酸3-ヒドロキシブチルエステル化合物の前駆物質である。特に、1-ヒドロキシ-3-ブタノン及びアセトアルドールは種々の不純物の前駆物質である。したがって、本開示の1,3-ブチレングリコール製品において、これらの不純物はできる限り少ないことが望ましい。このような観点から、本開示の1,3-ブチレングリコール製品において、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール及び1-ヒドロキシ-3-ブタノンの総含有量は、31ppm以下(好ましくは30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、18ppm以下、16ppm以下、14ppm以下、13ppm以下、12ppm以下、11pm以下、10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下又は1.5ppm以下)であることが望ましい。また、本開示の1,3-ブチレングリコール製品において、アセトアルドール及び1-ヒドロキシ-3-ブタノンの総含有量は、12ppm未満(好ましくは10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.5ppm以下又は0.4ppm以下)であることが望ましい。
【0039】
さらにまた、本開示の1,3-ブチレングリコール製品において、酸濃度(酢酸換算)が6ppm未満(例えば5ppm以下、好ましくは4ppm以下、より好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、特に好ましくは1ppm以下)であることが好ましい。1,3-ブチレングリコール製品における酸濃度を低くすることにより、例えば、前記式(8)~(10)で表される化合物等のカルボン酸3-ヒドロキシブチルエステル化合物の経時的増加を抑制できる。カルボン酸3-ヒドロキシブチルエステル化合物は、水分の存在下で加水分解して、対応するカルボン酸を生成する。このようにして生成したカルボン酸は、臭気原因物質、酸性原因物質になり得る。
【0040】
本開示の1,3-ブチレングリコール製品は、その90重量%水溶液を100℃で1週間保持した後の酸濃度(酢酸換算)が9ppm未満(例えば8ppm以下、好ましくは7ppm以下、より好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下、特に好ましくは4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下又は1ppm以下)であることが好ましい。なお、90重量%水溶液とは、1,3-ブチレングリコール製品と水(例えば純水)とを混合し、1,3-ブチレングリコール製品が90重量%となるように調整した水溶液を意味する。1,3-ブチレングリコール製品における酸の前駆物質の濃度を低くすることにより、前記式(8)~(10)で表される化合物等のカルボン酸3-ヒドロキシブチルエステル化合物の経時的増加を抑制できる。
【0041】
本開示の1,3-ブチレングリコール製品は、90重量%水溶液の酸濃度(酢酸換算)について、100℃で1週間保持した後の酸濃度の保持前の酸濃度に対する比率[(100℃1週間保持後の酸濃度)/(保持前の酸濃度)×100(%)]は、150%以下が好ましく、より好ましくは120%以下、さらに好ましくは110%以下である。
【0042】
本開示の1,3-ブチレングリコール製品は、APHA(ハーゼン色数)が例えば3以下(好ましくは2以下、より好ましくは1以下)である。また、該1,3-ブチレングリコール製品を空気雰囲気下、100℃で75日保持した後のAPHAは、例えば11以下(好ましくは10以下、より好ましくは8以下、7以下又は6以下、さらに好ましくは5以下、4以下、3以下又は2以下)である。
【0043】
本開示の1,3-ブチレングリコール製品のAPHAについて、100℃で75日間保持した後のAPHAの保持前のAPHAに対する比率[(100℃75日間保持後のAPHA)/(保持前のAPHA)]は、特に限定されないが、3未満が好ましく、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下(例えば、1.2以下)である。
【0044】
また、本開示の1,3-ブチレングリコール製品は、初留点が204℃以上であることが好ましい。前記初留点は、好ましくは204.5℃以上、より好ましくは205℃以上、さらに好ましくは206℃以上又は207℃であり、特に好ましくは208℃以上である。
【0045】
また、本開示の1,3-ブチレングリコール製品は、乾点が209℃未満(例えば208.8℃以下)であることが好ましい。
【0046】
さらに、本開示の1,3-ブチレングリコール製品は、過マンガン酸カリウム試験値(PMT)が36分以上であることが好ましい。前記過マンガン酸カリウム試験値(PMT)は、より好ましくは38分以上、さらに好ましくは40分以上、特に好ましくは50分以上(とりわけ60分以上)である。
【0047】
本開示の1,3-ブチレングリコール製品において、1,3-ブチレングリコールの含有量は、例えば99.3%以上であることが好ましい。前記1,3-ブチレングリコールの含有量は下記条件のガスクロマトグラフィー分析(GC分析)において、1,3-ブチレングリコールのピークの面積率(GC面積率)を示す。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【0048】
本開示において、ピークの「面積率」とは、チャートに現れる全てのピークの面積の和に対する特定のピークの面積の割合を意味するものである。また、全てのピークとは、例えば、1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が7.8まで分析を継続して停止した場合に現れるピークの全てを意味する。1,3-ブチレングリコール製品中の1,3-ブチレングリコール含有量が、例えば98.6%以上であることにより、1,3-ブチレングリコールが本来有する基本的特性が保証される。
【0049】
上記1,3-ブチレングリコールの含有量(GC面積率)は、好ましくは99.4%以上、より好ましくは99.5%以上、さらに好ましくは99.6%以上、特に好ましくは99.7%以上、とりわけ99.8%以上である。
【0050】
前記GC分析において、1,3-ブチレングリコールのピークよりも保持時間が短いピークの総面積率は、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.08%以下、さらに好ましくは0.07%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.01%以下又は0.007%以下であり、特に好ましくは0.005%以下(例えば0.003%以下)である。
【0051】
前記GC分析において、1,3-ブチレングリコールのピークよりも保持時間が長いピークの総面積率は、好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.6%以下、さらに好ましくは0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下又は0.2%以下であり、特に好ましくは0.1%以下である。
【0052】
本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品においては、水の含有量が0.2重量%以下であることが好ましい。前記水の含有量は、好ましくは0.15重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.07重量%以下、0.05重量%以下、0.03重量%以下、0.02重量%以下又は0.01重量%以下であり、特に好ましくは0.005重量%以下である。なお、水の含有量はカールフィッシャー水分分析装置により定量できる。
【0053】
本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品は、長期間保存後にも着色や臭気が全く無い、或いは極めて少ない。そして、本開示の1,3-ブチレングリコール製品は、長期間保存後においても、着色原因物質や臭気原因物質になり得る不純物の含有量は極めて少ない。例えば、1,3-ブチレングリコール製品の長期保存を想定した加速試験(1,3-ブチレングリコール製品を空気雰囲気下、180℃で3時間保持する試験)を経た後でも、製品中の着色原因物質や臭気原因物質になり得る不純物の含有量は極めて少ない。
【0054】
本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品において、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール及び式(1)~(10)で表される化合物の含有量の総和は、例えば70ppm未満、好ましくは、65ppm以下、60ppm以下、55ppm以下、50ppm以下、45ppm以下、40ppm以下、35ppm以下、30ppm以下、25ppm以下又は20ppm以下であり、さらに好ましくは、18ppm以下、15ppm以下、13ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、5ppm以下、4ppm以下又は3.5ppm以下である。
【0055】
また、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品において、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、前記式(1)~(7)で表される化合物(環状アセタール化合物)の含有量の総和は、例えば40ppm未満、好ましくは35ppm以下、さらに好ましくは、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、15ppm以下、12ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下又は1.4ppm以下である。
【0056】
また、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品において、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、前記式(8)~(10)で表される化合物(カルボン酸3-ヒドロキシブチルエステル化合物)の含有量の総和は、例えば18ppm未満、好ましくは16ppm以下、さらに好ましくは、14ppm以下、13ppm以下、12ppm以下、11pm以下、10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下又は0.6ppm以下である。
【0057】
さらに、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品において、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、前記式(1)~(10)で表される化合物の含有量の総和は、例えば59ppm未満、好ましくは55ppm以下、さらに好ましくは、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、18ppm以下、16ppm以下、14ppm以下、12ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下又は2ppm以下である。
【0058】
さらにまた、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品は、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後において、アセトアルデヒドの含有量は、好ましくは1ppm未満、より好ましくは、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。クロトンアルデヒドの含有量は、好ましくは0.5ppm未満、より好ましくは、0.4ppm以下、0.3ppm以下、0.2ppm以下又は0.1ppm以下である。メチルビニルケトンの含有量は、好ましくは4ppm未満、より好ましくは、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。アセトンの含有量は、好ましくは2ppm未満、より好ましくは、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。ホルムアルデヒドの含有量は、好ましくは0.5ppm未満、より好ましくは、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。ブチルアルデヒドの含有量は、好ましくは3ppm未満、より好ましくは、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。アセトアルドールの含有量は、好ましくは0.5ppm未満、より好ましくは、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。1-ヒドロキシ-3-ブタノンの含有量は、好ましくは0.5ppm未満、より好ましくは、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。2-ブタノールの含有量は、好ましくは0.2ppm未満である。式(1)で表される化合物の含有量は、好ましくは6ppm未満、より好ましくは、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(2)で表される化合物の含有量は、好ましくは5ppm未満、より好ましくは、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(3)で表される化合物の含有量は、好ましくは4ppm未満、より好ましくは、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(4)で表される化合物の含有量は、好ましくは5ppm未満、より好ましくは、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(5)で表される化合物の含有量は、好ましくは7ppm未満、より好ましくは、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(6)で表される化合物の含有量は、好ましくは6ppm未満、より好ましくは、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(7)で表される化合物の含有量は、好ましくは8ppm未満、より好ましくは、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(8)で表される化合物の含有量は、好ましくは6ppm未満、より好ましくは、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(9)で表される化合物の含有量は、好ましくは5ppm未満、より好ましくは、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。式(10)で表される化合物の含有量は、好ましくは7ppm未満、より好ましくは、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下又は0.2ppm以下である。
【0059】
また、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品において、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール及び1-ヒドロキシ-3-ブタノンの含有量の総和は、例えば12ppm未満、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下又は1.6ppm以下である。
【0060】
また、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品において、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、アセトアルドール及び1-ヒドロキシ-3-ブタノンの含有量の総和は、例えば1ppm未満、好ましくは0.9ppm以下、さらに好ましくは0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下又は0、4ppm以下である。
【0061】
また、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品において、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAは、25未満(好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下又は7以下)であることが望ましい。
【0062】
また、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品は、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後において、初留点が204℃以上が好ましく、乾点が209℃未満であることが好ましい。前記初留点は、好ましくは205℃以上、より好ましくは206℃以上、さらに好ましくは207℃以上である。
【0063】
さらに、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品は、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の過マンガン酸カリウム試験値(PMT)が30分超であることが好ましい。前記過マンガン酸カリウム試験値は、より好ましくは32分以上、さらに好ましくは35分以上(例えば40分以上)、特に好ましくは50分以上(とりわけ60分以上)である。
【0064】
また、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品は、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の酸濃度(酢酸換算)が8ppm未満であることが好ましい。前記酸濃度(酢酸換算)は、より好ましくは7ppm以下、さらに好ましくは6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下である。
【0065】
1,3-ブチレングリコールの含有量が特定値以上であり、且つ上記特定条件下の加熱試験後における特定物質の含有量が特定値以下であるような1,3-ブチレングリコール製品は、高純度で高品質であり、しかも品質の経時的低下がほとんどない。特に、本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品は、無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)であって、経時による臭気の発生や増大がほとんどない。そのため、保湿剤や化粧料の原料として好適に使用できる。
【0066】
[保湿剤及び化粧料]
本開示の保湿剤は、上記の1,3-ブチレングリコール製品を含む。そのため、保湿性能に優れる。本開示の保湿剤は、上記の1,3-ブチレングリコール製品以外の成分、例えば、上記の1,3-ブチレングリコール製品以外の保湿剤成分などを含んでいてもよい。本開示の保湿剤において、上記の1,3-ブチレングリコール製品の含有量は、例えば10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、上記の1,3-ブチレングリコール製品のみで構成されていてもよい。
【0067】
本開示の化粧料は上記の保湿剤を含む。本開示の化粧料における上記1,3-ブチレングリコール製品の配合量は、化粧品の種類や形態に応じて、保湿性能が発揮できる量であればよい。本開示の化粧料における上記1,3-ブチレングリコール製品の配合量は、例えば0.01~40重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは0.2~20重量%、さらに好ましくは0.5~15重量%、特に好ましくは1~10重量%である。
【0068】
本開示の化粧料は、上記1,3-ブチレングリコール製品以外に、例えば、他の保湿剤;植物油、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーンなどの油剤;アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性剤;防腐剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、粉体、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、香料、pH調整剤;ビタミン剤、皮膚賦活剤、血行促進剤、美白剤、抗菌剤、抗炎症剤などの薬効成分や生理活性成分などを含んでいてもよい。
【0069】
本開示の化粧料は、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、パック、マスク等の皮膚化粧料、シャンプー、リンス、育毛剤等の頭髪化粧料とすることができる。また、日焼け止め化粧料、メイクアップ化粧料などであってもよい。また、医療用成分を配合した医薬品、医薬部外品とすることもできる。
【0070】
本開示の化粧料は、それ自体周知の方法を利用することにより製造できる。
【0071】
[1,3-ブチレングリコールの製造方法]
前記本開示の1,3-ブチレングリコール製品は、例えば、下記の1,3-ブチレングリコールの製造方法1や、下記の1,3-ブチレングリコールの製造方法2によって製造できる。
【0072】
1,3-ブチレングリコールの製造方法1:
1,3-ブチレングリコールを含む反応粗液から精製1,3-ブチレングリコールを得る1,3-ブチレングリコールの製造方法であって、
蒸留により水を除去する脱水工程、蒸留により高沸点成分を除去する脱高沸工程、及び精製1,3-ブチレングリコールを得るための製品蒸留工程を有しており、
前記製品蒸留工程で用いる製品塔において、アセトアルデヒドの含有量が500ppm以下、クロトンアルデヒドの含有量が200ppm以下、水の含有量が0.7重量%以下、下記条件のガスクロマトグラフィー分析による1,3-ブチレングリコール濃度が97.6面積%以上である1,3-ブチレングリコール仕込液を、還流比が0.3以上の条件で蒸留に付す1,3-ブチレングリコールの製造方法。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【0073】
1,3-ブチレングリコールの製造方法2:
1,3-ブチレングリコールを含む反応粗液から精製1,3-ブチレングリコールを得る1,3-ブチレングリコールの製造方法であって、
蒸留により水を除去する脱水工程及び蒸留により高沸点成分を除去する脱高沸工程を有しており、
前記脱高沸工程で用いる脱高沸塔において、アセトアルデヒドの含有量が500ppm以下、クロトンアルデヒドの含有量が200ppm以下、水の含有量が3重量%以下、下記条件のガスクロマトグラフィー分析による1,3-ブチレングリコール濃度が96.7面積%以上である1,3-ブチレングリコールを含む仕込液を、還流比0.03以上の条件で蒸留に付す1,3-ブチレングリコールの製造方法。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
前記1,3-ブチレングリコールの製造方法1と同じ。
【0074】
上記1,3-ブチレングリコールの製造方法1(以下、単に「製造方法1」と称する場合がある)では、1,3-ブチレングリコール(1,3BG)を含む反応粗液(以下、「粗1,3-ブチレングリコール」と称する場合がある)から精製1,3-ブチレングリコールを得る1,3-ブチレングリコールの製造方法であって、蒸留により水を除去する脱水工程、蒸留により高沸点成分を除去する脱高沸工程、及び精製1,3-ブチレングリコールを得るための製品蒸留工程を有している。そして、前記製品蒸留工程で用いる製品塔において、アセトアルデヒドの含有量が500ppm以下、クロトンアルデヒドの含有量が200ppm以下、水の含有量が0.7重量%以下、上記条件のガスクロマトグラフィー分析による1,3-ブチレングリコール濃度が97.6面積%以上である1,3-ブチレングリコール仕込液を、還流比が0.3以上の条件で蒸留に付し、仕込み段より上から低沸点成分が濃縮された液を留出させ、仕込み段より下から1,3-ブチレングリコールを抜き取る。こうして得られる1,3-ブチレングリコールは、無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)であり、経時による着色や臭気の発生若しくは増大が起きにくく、しかも水を含む状態においても経時による酸濃度上昇を生じにくいため、1,3-ブチレングリコール製品とすることができる。
【0075】
上記1,3-ブチレングリコールの製造方法2(以下、単に「製造方法2」と称する場合がある)では、1,3-ブチレングリコールを含む反応粗液から精製1,3-ブチレングリコールを得る1,3-ブチレングリコールの製造方法であって、蒸留により水を除去する脱水工程及び蒸留により高沸点成分を除去する脱高沸工程を有している。そして、前記脱高沸工程で用いる脱高沸塔において、アセトアルデヒドの含有量が500ppm以下、クロトンアルデヒドの含有量が200ppm以下、水の含有量が3重量%以下、上記条件のガスクロマトグラフィー分析による1,3-ブチレングリコール濃度が96.7面積%以上である1,3-ブチレングリコールを含む仕込液を、還流比0.03以上の条件で蒸留に付し、仕込み段より上から、より純度の向上した1,3-ブチレングリコールを留出させ、仕込み段より下から高沸点成分が濃縮された液を抜き取る。こうして得られる1,3-ブチレングリコールは、無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)であり、経時により着色や臭気が発生したり増大することが起きにくく、しかも水を含む状態においても経時による酸濃度上昇を生じにくいため、1,3-ブチレングリコール製品とすることができる。
【0076】
[粗1,3-ブチレングリコール]
粗1,3-ブチレングリコールとしては、例えば、(1)アセトアルドール類の還元(水添)で得られる反応粗液、(2)1,3-ブチレンオキサイドの加水分解で得られる反応粗液、(3)エリスリトールの選択的水素化分解で得られる反応粗液、(4)ブタジエンへの選択的水付加で得られる反応粗液、(5)n-ブタナール-3-オンの水素化で得られる反応粗液、(6)1-ブタノール-3-オンの水素化で得られる反応粗液、(7)3-ヒドロキシ-1-ブタン酸の水素化で得られる反応粗液、(8)β-ブチロラクトンの水素化で得られる反応粗液、及び(9)ジケテンの水素化で得られる反応粗液が挙げられる。本開示において、粗1,3-ブチレングリコールとしては、上記(1)~(9)のうちの一種又は二種以上の混合物であってもよい。粗1,3-ブチレングリコールとしては、前記(1)アセトアルドール類の還元(特に、液相還元)で得られる反応粗液であることが好ましい。
【0077】
以下、粗1,3-ブチレングリコールとして、アセトアルドール類の還元(水添)で得られる反応粗液を用いる場合について主に説明する。なお、アセトアルドール類を還元(水添)する工程を、「水添工程」と称する場合がある。
【0078】
水添工程において原料として用いるアセトアルドール類は、水素還元により1,3-ブチレングリコールとなる化合物であれば特に限定されない。原料アセトアルドール類としては、例えば、アセトアルドール、その環化二量体であるパラアルドール、アセトアルデヒドの環状三量体であるアルドキサン、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0079】
アセトアルドール類(例えば、アセトアルドールやパラアルドール)の製造方法は特に限定されないが、例えば、塩基性触媒の存在下におけるアセトアルデヒドのアルドール縮合反応により得られたものでも、アルドキサンの熱分解等で得られたものであってもよい。なお、アセトアルドール類を製造する工程を、「アセトアルドール類製造工程」又は「アセトアルデヒド重合工程」と称する場合がある。
【0080】
上記の反応により得られたアセトアルドール類を含む反応粗液を酸により中和して、1,3-ブチレングリコールの製造に使用してもよい。この様な反応粗液は、アセトアルドール類以外にも、アセトアルデヒド(AD)、クロトンアルデヒド(CR)、他のアルデヒド成分、低沸点物、アルデヒドダイマーやトリマー等の高沸点物、水、塩等が含まれ得る。なお、本明細書において、1,3-ブチレングリコールよりも沸点の低い化合物を「低沸点物」又は「低沸物」、1,3-ブチレングリコールよりも沸点の高い化合物を「高沸点物」又は「高沸物」とそれぞれ称する場合がある。
【0081】
上記アセトアルドール類を含む反応粗液は、必要に応じて、脱アルコール蒸留、脱水蒸留、脱塩、アルカリ処理と脱アルカリ処理、脱不純物等の前処理に付し、未反応アセトアルデヒドやクロトンアルデヒド等の副産物を除去したものを使用してもよい。前処理の方法としては、蒸留、吸着、イオン交換、加熱高沸点物化、分解等が挙げられる。蒸留は、減圧、常圧、加圧、共沸、抽出、反応等の種々の蒸留方法が使用できる。特に、アセトアルドール類を含む反応粗液を単蒸発や蒸留、水素添加に付して、アセトアルデヒドやクロトンアルデヒド等のアルデヒドを除去した後、水添工程に付すことが好ましい。
【0082】
水添原料におけるアセトアルドール類の含有量は特に限定されないが、例えば、30重量%以上(例えば30~99重量%)、より好ましくは40重量%以上(例えば40~98重量%)、50重量%以上(例えば50~97重量%)又は60重量%以上(例えば60~95重量%)であり、さらに好ましくは65~90重量%、特に好ましくは70~90重量%、最も好ましくは75~90重量%である。アセトアルドール類の含有量が上記範囲内であることにより、1,3-ブチレングリコールを含む反応粗液(粗1,3-ブチレングリコール)に含まれる不純物が低減される傾向がある。
【0083】
水添原料は水を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、1,3-ブチレングリコール製品の純度の観点からは含んでいることが好ましい。水添原料における水の含有量は特に限定されないが、例えば、2重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。なお、その上限値は、例えば90重量%、80重量%、70重量%、60重量%、50重量%、40重量%、30重量%又は20重量%であってもよい。水の含有量が上記範囲内である場合、得られる粗1,3-ブチレングリコールに含まれる1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減されるため、最終的に得られる1,3-ブチレングリコール製品の純度が高くなる傾向がある。これは、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記アセタール体が加水分解されて1,3-ブチレングリコールになるとともに、共生したアセトアルドールが還元されて1,3-ブチレングリコールとなることに起因する。
【0084】
水添触媒としては、例えば、ラネーニッケル等が挙げられる。水添触媒は、懸濁させた状態で使用することもできるし、反応容器に充填して用いることもできる。使用する水添触媒の量は特に限定されないが、水添原料100重量部に対して、例えば、1~30重量部が好ましく、より好ましくは4~25重量部、さらに好ましくは8~20重量部、特に好ましくは12~18重量部である。還元反応に使用する水素量は特に限定されないが、水添原料100重量部に対して、例えば、0.5~40重量部が好ましく、より好ましくは1~30重量部、さらに好ましくは4~20重量部、特に好ましくは8~12重量部である。還元反応における反応系内の圧力(全圧;ゲージ圧)は特に限定されないが、例えば9~70MPa、好ましくは10~40MPaである。反応系内の水素圧(水素の分圧)は特に限定されないが、例えば7~60MPa、好ましくは10~30MPaである。なお、アセトアルデヒドやクロトンアルデヒドなどの還元性物質を低減させるという観点からは、反応系内の水素圧を高くするのがよく、10MPa以上が好ましく、100MPaであってもよい。還元反応における反応温度は特に限定されないが、例えば40~150℃、好ましくは50~140℃、より好ましくは60~130℃である。還元反応における反応時間(滞留時間)は特に限定されないが、例えば10~500分間、好ましくは20~400分間、より好ましくは30~300分間、さらに好ましくは50~280分間、特に好ましくは80~250分間である。本反応は、回分式、半回分式、又は連続式のいずれでも行うことができる。
【0085】
こうして得られる粗1,3-ブチレングリコールには、アセトアルデヒド(AD)、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド(CR)、アセトン、メチルビニルケトン等の不飽和結合を有する低沸点物(低沸点化合物)や、これらの縮合物、1,3-ブチレングリコールと上記低沸点物との縮合物(例えば、1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体等)、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール、水(溶媒等)、中和処理等で生成する塩、触媒(懸濁状態で用いた場合)などが含まれている。精製工程でこれらの不純物を除去することにより、1,3-ブチレングリコール製品(精製1,3-ブチレングリコール)を得ることができる。
【0086】
[粗1,3-ブチレングリコールの精製]
本開示の製造方法1では、少なくとも、蒸留により水を除去する脱水工程、蒸留により高沸点成分を除去する脱高沸工程(脱高沸点物蒸留工程)、及び精製1,3-ブチレングリコールを得るための製品蒸留工程を有している。本開示の製造方法2では、少なくとも、蒸留により水を除去する脱水工程及び蒸留により高沸点成分を除去する脱高沸工程(脱高沸点物蒸留工程)を有している。
【0087】
本開示の製造方法において、脱水工程と脱高沸工程の順序は問わない。製造方法1では、前記脱水工程と脱高沸工程はいずれも製品蒸留工程の前に設ける。本開示の製造方法では、これらの工程のほか、脱塩工程、アルカリ反応工程(アルカリ処理工程)、脱アルカリ工程を有していてもよい。また、脱水工程の前に、触媒分離工程、アルカリによる中和工程、脱アルコール工程(脱低沸工程)を設けることもできる。前記各工程は、この記載の順序で行ってもよいが、脱アルカリ工程はアルカリ反応工程の後に設けることを除き、各工程の順序を適宜変更してもよい。例えば、脱アルコール工程(脱低沸工程)、脱塩工程、アルカリ反応工程及び脱アルカリ工程は適宜な箇所に設けることができるが、通常は、水添工程の後に設ける。なお、上記工程のうち、触媒分離工程、アルカリによる中和工程、脱アルコール工程(脱低沸工程)、脱塩工程、アルカリ反応工程、脱アルカリ工程は、必要に応じて設ければよく、必ずしも設けなくてもよい。
【0088】
図1は本開示の1,3-ブチレングリコール製品を製造するための製造方法(精製方法)の一例を示すフローチャートである。Aは脱水塔であり、脱水工程に関連する。Bは脱塩塔であり脱塩工程に関連する。Cは脱高沸点物蒸留塔(脱高沸塔)であり脱高沸点物蒸留工程(脱高沸工程)に関連する。Dはアルカリ反応器でありアルカリ反応工程に関連する。Eは脱アルカリ塔であり脱アルカリ工程に関連する。Fは製品蒸留塔(製品塔)であり製品蒸留工程に関連する。A-1、B-1、C-1、E-1、F-1はコンデンサーである。A-2、C-2、F-2はリボイラーである。以下、本フローシートを用いて上記1,3-ブチレングリコールの製造方法の実施態様の一例を説明する。
【0089】
水添原料の水素還元により得られた粗1,3-ブチレングリコール(「X-1」に相当)は、脱水塔Aに供給される。なお、上記粗1,3-ブチレングリコール(「X-1」に相当)は、エタノール等のアルコールや低沸点物を除去するための脱アルコール工程(脱アルコール塔による蒸留工程)を経た後、脱水塔Aに供給してもよい。
【0090】
本開示の製造方法では、脱水工程で用いる脱水塔Aにおいて、例えば、1,3-ブチレングリコール及び水を含む仕込液を蒸留に付し、仕込み段より上(好ましくは、塔頂部)から水を含む低沸点成分が濃縮された液を留出させる(図1の「X-2」に相当する)。また、仕込み段より下(好ましくは、塔底部)より1,3-ブチレングリコールを含む粗1,3-ブチレングリコール流が得られる。
【0091】
脱水塔A及びその他1,3-ブチレングリコールを分離する蒸留塔としては、例えば、多孔板塔、泡鐘塔等を用いることができるが、スルーザー・パッキング、メラパック(共に住友重機械工業(株)の商品名)等を充填した圧力損失の低い充填塔がより好ましい。これは、1,3-ブチレングリコールや微量に含まれる不純物は高温(例えば150℃以上)で熱分解し、着色成分である低沸点物が生成することから、蒸留温度を低くするためである。また、1,3-ブチレングリコールにかかる熱履歴(滞留時間)が長い場合も同様に影響が出るためである。従って、採用されるリボイラーはプロセス側流体の滞留時間が短いもの、例えば、自然流下型薄膜蒸発器、強制攪拌型薄膜蒸発器等の薄膜蒸発器が好ましい。
【0092】
脱水塔Aの理論段数は、例えば1~100段、好ましくは2~80段、3~80段、4~60段、5~40段、6~30段又は7~20段であり、さらに好ましくは8~15段である。仕込液の供給位置は、塔頂部から下方に向かって、塔の高さの例えば10~90%、好ましくは20~80%、より好ましくは30~70%、さらに好ましくは40~60%の位置である。脱水塔Aでの蒸留において、塔頂部の圧力(絶対圧)は、例えば101kPa以下、好ましくは0.1~90kPa、より好ましくは0.5~70kPa、さらに好ましくは1~50kPa、2~30kPa又は3~20kPaであり、特に好ましくは4~10kPaである。なお、脱水塔Aでの蒸留は、加圧下で行ってもよく、その場合、塔頂部の圧力(ゲージ圧)は、例えば0.2MPaG以下であってもよく、0.1MPaG以下であってもよい。
【0093】
脱水塔Aへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの濃度は、例えば9重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上又は60%以上であり、特に好ましくは70%以上である。脱水塔Aへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの濃度の上限は、例えば90重量%、85重量%又は80重量%である。しかし、脱水工程より前の工程での水素添加反応等を考慮すると、前記脱水塔Aへの仕込液中の水の濃度が高い方がよい場合がある。これらのことを総合すると、脱水塔Aへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの濃度は、例えば1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上又は90重量%以上であってもよい。また、脱水塔Aへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの濃度は、例えば99重量%以下、95重量%以上、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下又は45重量%以下であってもよい。脱水塔Aへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの濃度は、例えば、水添工程での反応条件(例えば、原料として用いるアセトアルドール類の濃度など)や、脱水塔の前に必要に応じて設けられる脱アルコール塔(脱低沸塔)の蒸留条件を調整することにより上記範囲とすることができる。
【0094】
なお、上記1,3-ブチレングリコールの濃度(重量%)は、下記条件のガスクロマトグラフィー分析における、全ピーク面積に対する1,3-ブチレングリコールのピークの面積の割合(GC面積%)を求め、下記式により求めた値である。なお、脱水塔Aへの仕込液中の水の濃度(重量%)は後述の方法(カールフィッシャー法)により測定した値である。
脱水塔Aへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの濃度(重量%)
=(1-脱水塔Aへの仕込液中の水の濃度(重量%)/100)×上記1,3-ブチレングリコールのGC面積%
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【0095】
本開示の製造方法において、脱水塔Aへの仕込液中のアセトアルデヒドの含有量は、例えば1000ppm以下、好ましくは900ppm以下、より好ましくは800ppm以下、700ppm以下、600ppm以下又は500ppm以下であり、さらに好ましくは400ppm以下、300ppm以下、200ppm以下、155ppm以下又は140ppm以下であり、100ppm以下、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、3ppm以下、2ppm以下又は1ppm以下であってもよい。
【0096】
脱水塔Aへの仕込液中のクロトンアルデヒドの含有量は、例えば400ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは150ppm以下、130ppm以下、117ppm以下又は100ppm以下であり、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、3ppm以下、2ppm以下又は1ppm以下であってもよい。
【0097】
脱水塔Aへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量は、例えば、脱水塔Aの上流に脱アルコール塔(脱低沸塔)を設け、該脱アルコール塔(脱低沸塔)の蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱アルコール塔(脱低沸塔)の還流比や段数、留出率を増加させることにより、脱水塔Aへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量を低下させることができる。さらに、水添工程での水素添加反応の条件により調整することもでき、完全に水素添加を行った場合は、アセトアルデヒド及びクロトンアルデヒドの濃度を検出限界以下まで下げることもできるが、反応圧力が高くなったり、反応槽が大きくなる等の不利益が生じる。
【0098】
なお、脱水塔Aへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量は、GC-MS分析(ガスマス分析)により定量できる。
【0099】
本開示の製造方法において、脱水塔Aへの仕込液中の水の含有量は、例えば90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下又は40重量%以下であり、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。脱水塔Aへの仕込液中の水の含有量の下限は、例えば10重量%又は15重量%である。なお、水添工程における水素添加反応を考慮した場合、水濃度が高く粘性が低い方が、液中の水素の溶解度や分散度が上昇するため、水素添加反応に有利に働く。脱水塔Aへの仕込液中の水の含有量は、例えば、脱水塔Aの上流に脱アルコール塔(脱低沸塔)を設け、該脱アルコール塔(脱低沸塔)の蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱アルコール塔(脱低沸塔)の還流比や段数、留出率を増加させることにより、脱水塔Aへの仕込液中の水の含有量を低下させることができる。なお、脱水塔Aへの仕込液中の水の含有量は、カールフィッシャー水分測定器で定量できる。
【0100】
本開示の製造方法において、脱水塔Aへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の含有量は、例えば20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下又は2%以下であり、1%以下、0.5%以下又は0.1%以下であってもよい。脱水塔Aへの仕込液中の水を除く低沸点成分(「低沸点物」又は「低沸物」とも言う)の含有量は、上記条件のガスクロマトグラフィー分析における、全ピーク面積に対する1,3-ブチレングリコールのピークより保持時間の短いピークのトータルの面積の割合(面積%)である。前記脱水塔Aへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の含有量は、例えば、脱水塔Aの上流に脱アルコール塔(脱低沸塔)を設け、該脱アルコール塔(脱低沸塔)の蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱アルコール塔(脱低沸塔)の還流比や段数や留出率を増加させることにより、脱水塔Aへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の濃度を低下させることができる。また、脱水塔Aへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の濃度は、例えば、水添工程における反応条件(例えば、反応温度など)等により低下できるものもある。
【0101】
脱水塔Aへの仕込液中の高沸点成分の含有量は、例えば20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、4%以下、3%以下又は2%以下であり、さらに好ましくは1%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下又は0.05%以下であり、特に好ましくは0.01%以下である。脱水塔Aへの仕込液中の高沸点成分の含有量は、例えば、水添工程における反応条件(例えば、反応温度など)等により調整できる。なお、上記脱水塔Aへの仕込液中の高沸点成分の含有量は、上記条件のガスクロマトグラフィー分析における、全ピーク面積に対する1,3BGのピークより保持時間の長いピークのトータルの面積の割合(面積%)である。
【0102】
本開示の製造方法において、脱水塔Aにおける還流比[脱水塔還流量/脱水塔留出量(蒸留塔外への排出量)]は、脱水塔Aの仕込み段より下(好ましくは、塔底部)より取り出される1,3-ブチレングリコールを含む粗1,3-ブチレングリコール流中の低沸点物(水を含む)の含有量を低減させるという観点から、例えば0.3超、好ましくは0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1以上、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上又は25以上であり、より好ましくは30以上(例えば40以上)である。特に、本開示の製造方法2においては、脱水塔Aにおける還流比は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上、特に好ましくは50以上である。還流比の上限は、エネルギーコストの点から、例えば100、好ましくは50である。脱水塔Aの理論段数が十分大きい場合は、前記還流比は、例えば0.03以上であれば、十分な分離が可能である。なお、脱水塔Aへの還流においては、通常、脱水塔塔頂ベーパーの凝縮液を当該脱水塔に還流させるが、その還流の一部又は全部を、水含有液(例えば、純水等)の当該脱水塔への仕込みで置き換えてもよい。その場合、前記「脱水塔還流量」は、脱水塔塔頂ベーパーの凝縮液の当該脱水塔への還流量と、前記水含有液(例えば、純水等)の当該脱水塔への仕込量の総和を意味する。
【0103】
本開示の製造方法において、脱水塔Aにおける留出率は、脱水塔Aへの仕込液中の水の濃度に応じて適宜設定できる。前記留出率は、仕込液中の水を全量留出させるに十分な留出率であることが望ましい。例えば、脱水塔Aへの仕込液中の水の濃度がX重量%の場合は、脱水塔Aにおける留出率をX重量%以上とするのが好ましい。したがって、脱水塔Aにおける留出率は、例えば95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下又は5重量%以下である。なお、上記留出率とは、脱水塔Aへの仕込量に対する脱水塔Aの仕込段より上(例えば、塔頂部)から蒸留塔外に抜き出される液の量の割合(重量%)をいう。
【0104】
本開示の製造方法において、前記脱水塔Aにおける1,3BG回収率は、例えば、99.3%以上である。なお、本明細書において、脱水塔Aにおける1,3BG回収率は下記式により求めた値(%)である。
{1-[留出液における1,3BG濃度(重量%)×(留出量(部)-リサイクル量(部))]/(仕込液における1,3BG濃度(重量%)×仕込量(部))}×100
なお、低沸点物、高沸点物は水により加水分解されて1,3BGが生成する場合がある一方、1,3BGの重合により高沸点物が生成する場合もあり、さらには微量不純物の生成や消失もあるため、脱水塔における物質収支は、必ずしもとれない場合がある。このことは、脱アルコール塔(脱低沸塔)、脱高沸塔、製品塔など他の蒸留塔にも言える。
【0105】
次いで、前記脱水塔Aの仕込み段より下(好ましくは、塔底部)より取り出される1,3-ブチレングリコールを含む粗1,3-ブチレングリコール流は脱塩塔Bに供給される。脱塩塔Bでは蒸留により塔頂部から脱塩後の粗1,3-ブチレングリコール流が得られ、塔底部から塩や高沸点物等が缶出液として排出される。脱塩塔Bの缶出率(%)[(脱塩塔缶出量(部)/脱塩塔仕込量(部))×100]は、例えば0.1~40重量%、好ましくは1~35重量%、より好ましくは2~30重量%、さらに好ましくは3~25重量%、特に好ましくは5~20重量%であり、7~15重量%であってもよい。なお、脱塩塔の缶出液の少なくとも一部を脱塩工程より前の工程にリサイクルしてもよい。
【0106】
上記の脱塩後の粗1,3-ブチレングリコール流は脱高沸塔Cに供給される。脱高沸塔Cでは、仕込み段より下から(好ましくは、塔底部から)高沸点成分(高沸点物)が排出される。一方、仕込み段より上から脱高沸点物後の粗1,3-ブチレングリコール流(より純度の向上した1,3-ブチレングリコール)が得られる。
【0107】
脱高沸塔Cとしては、例えば、多孔板塔、泡鐘塔等を用いることができるが、スルーザー・パッキング、メラパック(共に住友重機械工業(株)の商品名)等を充填した圧力損失の低い充填塔がより好ましい。これは、1,3-ブチレングリコールや微量に含まれる不純物は高温(例えば150℃以上)で熱分解し、着色成分である低沸点物が生成することから、蒸留温度を低くするためである。また、1,3-ブチレングリコールにかかる熱履歴(滞留時間)が長い場合も同様に影響が出るためである。従って、採用されるリボイラーはプロセス側流体の滞留時間が短いもの、例えば、自然流下型薄膜蒸発器、強制攪拌型薄膜蒸発器等の薄膜蒸発器が好ましい。
【0108】
脱高沸塔Cの段数は、理論段数として、例えば1~100段、好ましくは2~90段、より好ましくは3~80段、さらに好ましくは4~70段、5~60段、8~50段又は10~40段であり、特に好ましくは15~30段である。仕込液の供給位置は、脱高沸塔の塔頂部から下方に向かって、塔の高さの例えば10~90%、好ましくは20~80%、より好ましくは30~70段、さらに好ましくは40~60%の位置である。脱高沸塔Cでの蒸留において、塔頂部の圧力(絶対圧)は、例えば0.01~50kPa、好ましくは0.1~30kPa、より好ましくは0.3~20kPa、さらに好ましくは0.5~10kPaである。
【0109】
本開示の製造方法1において、脱高沸塔Cへの仕込液中の1,3BGの濃度は、例えば95%以上、好ましくは96%以上(例えば、96.7%以上)、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。本開示の製造方法2においては、脱高沸塔Cへの仕込液中の1,3BGの濃度は、96.7%以上であり、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。脱高沸塔Cへの仕込液中の1,3BGの濃度は、前記脱水塔A及び脱塩塔Bの蒸留条件を調整することにより向上させることができる。例えば、脱水塔Aの還流比を上げたり、脱塩塔Bの缶出率を上げることにより、脱高沸塔Cへの仕込液中の1,3BGの濃度を高くすることができる。なお、上記1,3BGの濃度は、下記条件のガスクロマトグラフィー分析(GC分析)における、全ピーク面積に対する1,3BGのピークの面積の割合(面積%)である。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【0110】
脱高沸塔Cへの仕込液中の高沸点成分の含有量は、例えば4%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下又は0.05%以下であり、特に好ましくは0.01%以下である。特に、本開示の製造方法2においては、脱高沸塔Cへの仕込液中の高沸点成分の含有量は、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1.5%以下、1%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下又は0.05%以下であり、特に好ましくは0.01%以下である。脱高沸塔Cへの仕込液中の高沸点成分の含有量は、前記脱塩塔Bの蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、脱塩塔Bの缶出率を上げることにより、脱高沸塔Cへの仕込液中の高沸点成分の含有量を低下させることができる。なお、上記脱高沸塔Cへの仕込液中の高沸点成分の含有量は、上記条件のガスクロマトグラフィー分析における、全ピーク面積に対する1,3BGのピークより保持時間の長いピークのトータルの面積の割合(面積%)である。
【0111】
本開示の製造方法では、脱高沸塔Cへの仕込液中のアセトアルデヒドの含有量は、例えば500ppm以下、好ましくは205ppm以下(例えば200ppm以下)、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下又は10ppm以下であり、特に好ましくは5ppm以下であり、2ppm未満又は1ppm未満であってもよい。脱高沸塔Cへの仕込液中のクロトンアルデヒドの含有量は、例えば200ppm以下、好ましくは110ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下又は3ppm以下であり、特に好ましくは2ppm以下であり、1ppm未満であってもよい。脱高沸塔Cへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量は、例えば、脱高沸塔Cの上流に脱アルコール塔(脱低沸塔)や脱水塔を設け、該脱アルコール塔(脱低沸塔)や脱水塔の蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱アルコール塔(脱低沸塔)や脱水塔の還流比や段数、留出率を増加させることにより、脱高沸塔Cへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量を低下させることができる。なお、脱高沸塔Cへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量は、GC-MS分析(ガスマス分析)により定量できる。
【0112】
本開示の製造方法において、脱高沸塔Cへの仕込液中の水の含有量は、例えば3重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.2重量%以下、さらに好ましくは1.1重量%以下、1.0重量%以下、0.95重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下又は0.2重量%以下であり、特に好ましくは0.1重量%以下である。脱高沸塔Cへの仕込液中の水の含有量は、前記脱水塔Aの蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱水塔Aの還流比や段数、留出率を増加させることにより、脱高沸塔Cへの仕込液中の水の濃度を低下させることができる。なお、脱高沸塔CFへの仕込液中の水の含有量は、カールフィッシャー水分測定器で定量できる。なお、本開示の製造方法2では、脱高沸塔Cへの仕込液中の水の含有量は、3重量%以下であり、好ましくは2重量%以下、1.2重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下又は0.2重量%以下であり、特に好ましくは0.1重量%以下、0.05重量%以下又は0.03重量%以下である。
【0113】
本開示の製造方法において、脱高沸塔Cへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の含有量は、例えば1.8%以下、好ましくは1.6%以下、より好ましくは1.4%以下、さらに好ましくは1.2%以下、1.1%以下、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下又は0.2%以下であり、特に好ましくは、0.1%以下である。脱高沸塔Cへの仕込液中の水を除く低沸点成分(「低沸点物」又は「低沸物」とも言う)の含有量は、上記条件のガスクロマトグラフィー分析における、全ピーク面積に対する1,3-ブチレングリコールのピークより保持時間の短いピークのトータルの面積の割合(面積%)である。前記脱高沸塔Cへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の含有量は、例えば、脱高沸塔Cの上流に脱アルコール塔(脱低沸塔)を設け、該脱アルコール塔(脱低沸塔)の蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱アルコール塔(脱低沸塔)の還流比や段数や留出率を増加させることにより、脱高沸塔Cへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の濃度を低下させることができる。
【0114】
本開示の製造方法では、脱高沸塔Cにおける還流比[脱高沸塔還流量/脱高沸塔留出量(蒸留塔外への排出量)]は、1,3-ブチレングリコール製品の乾点を低くするという観点から、0.03以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1以上、1.2以上、1.5以上、2以上、3以上、4以上、5以上又は10以上であり、特に好ましくは20以上である。特に、本開示の製造方法2においては、脱高沸塔Cにおける還流比は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1以上、1.2以上、1.5以上、2以上、3以上、4以上、5以上又は10以上であり、特に好ましくは20以上である。なお、上記還流比の上限は、エネルギーコストの点から、例えば100、好ましくは50である。脱高沸塔Cの理論段数が大きい場合は、脱高沸塔Cにおける還流比は1程度又はそれ以下であっても十分な分離が可能である。
【0115】
本開示の製造方法では、脱高沸塔Cにおける還流比を上記の範囲とすることにより、高沸点成分の含有量が非常に少なく、乾点が低い高純度の1,3BGを高い回収率で製造することができる。
【0116】
本開示の製造方法において、脱高沸塔Cの缶出率は、例えば30重量%未満である。ただ、脱高沸塔の缶出液をさらなる蒸留塔で蒸留して脱高沸した後の1,3BGを製品化する場合は、その限りではなく、最終の高沸含有物の系外抜き取り量を脱高沸塔Cへの仕込量に対し30重量%未満に抑えれば、高収率で1,3BGを得ることができる。なお、上記缶出率とは、脱高沸塔Cへの仕込量に対する脱高沸塔Cの仕込段より下(例えば、塔底部)から抜き出される液の量(この液を後述する前工程へリサイクルする場合は、リサイクル量も含む)の割合(重量%)をいう。なお、この液を後述する前工程へリサイクルする場合、系外排出率が少ないほど、1,3BGの回収率が向上する。
【0117】
上記脱高沸塔Cの缶出率は、1,3BGの回収率を向上させるという点で、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下又は2重量%以下であり、1重量%以下とすることもできる。また、上記高沸塔Cの缶出率は、1,3-ブチレングリコール製品の乾点を低くするという観点から、例えば、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、0.5重量%以上又は1重量%以上であり、さらに好ましくは2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、10重量%以上又は15重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上である。
【0118】
脱高沸塔Cの仕込み段より下から抜き取られた高沸成分が濃縮された液(以下、「缶出液」と称する場合がある)の少なくとも一部を脱高沸工程より前の工程にリサイクルさせてもよい(図1の脱高沸塔Cの下部に示す破線の矢印)。上記缶出液の少なくとも一部を脱高沸工程より前の工程にリサイクルさせることにより、1,3BGの回収率を向上させることができる。なお、本明細書において、脱高沸塔Cにおける1,3BGの回収率は下記式により求めた値(%)である。
{1-[缶出液における1,3BGのGC面積%×(缶出量(部)-リサイクル量(部))]/(仕込液における1,3BGのGC面積%×仕込量(部))}×100
なお、低沸点物、高沸点物は水により加水分解されて1,3BGが生成する場合がある一方、1,3BGの重合により高沸点物が生成する場合もあり、さらには微量不純物の生成や消失もあるため、脱高沸塔における物質収支は、必ずしもとれない場合がある。
【0119】
脱高沸塔Cにおける1,3BGの回収率は、例えば80%超、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0120】
上記脱高沸工程より前の工程としては、例えば、アセトアルデヒド重合工程(アセトアルデヒドのアルドール縮合工程)、反応工程(水添工程)、脱アルコール工程(脱低沸工程)、脱水工程、脱塩工程などが挙げられる。これらの中でも、高沸点物の加水分解により1,3BGが生成することから、アセトアルデヒド重合工程(アセトアルデヒドのアルドール縮合工程)にリサイクルさせることが好ましい。また、水素添加還元により1,3BGが生成する場合もあり、その観点からは、水素添加工程にリサイクルさせてもよい。
【0121】
上記缶出液の脱高沸工程より前の工程へのリサイクル量は、缶出液の量の範囲内で適宜選択できる。上記缶出液の脱高沸工程より前の工程へのリサイクル量は、脱高沸塔Cへの仕込量に対して、例えば30重量%未満、好ましくは25重量%以下である。なお、上記リサイクル量は、脱高沸塔Cへの仕込量に対して、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下又は1重量%以下としてもよい。また、上記缶出液の脱高沸工程より前の工程へのリサイクル量は、脱高沸塔での1,3BG回収率及び1,3BG製造プロセス全体を通しての収率を向上させるという観点から、脱高沸塔Cへの仕込量に対して、例えば0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、7重量%以上又は10重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上である。なお、缶出量を極限に絞る場合は、前工程へリサイクルしなくても高収率で1,3BGを回収することができる。
【0122】
脱高沸塔Cの仕込み段より上から取り出された粗1,3-ブチレングリコール流は、本開示の製造方法2では、そのまま1,3-ブチレングリコール製品とすることができる。また、脱高沸塔Cの仕込み段より上から取り出された粗1,3-ブチレングリコール流を、後述のアルカリ反応器Dでアルカリ処理を施し、脱アルカリ塔Eで蒸発させて(又は蒸留して)、脱アルカリ塔Eの塔頂留出液を1,3-ブチレングリコール製品とすることができる。
【0123】
本開示の製造方法2によれば、脱高沸塔仕込液中のアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及び水含有量を特定の範囲とし、脱高沸塔の還流比を特定の範囲としたので、無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)で、経時による着色や臭気の発生又は増大が起きにくく、しかも水を含む状態においても経時による酸濃度上昇を生じにくい、高純度の1,3-ブチレングリコールを工業的に効率よく製造することができる。
【0124】
本開示の製造方法1では、前記脱高沸塔Cの仕込み段より上から取り出された粗1,3-ブチレングリコール流は、例えば、アルカリ反応器(例えば流通式管型反応器)Dに供給され、塩基処理(アルカリ処理)される。塩基処理により粗1,3-ブチレングリコール中に含まれている副産物を分解することができる。塩基は、アルカリ反応器D又はその上流の配管等に添加される。塩基の添加量は、アルカリ処理に付される粗1,3-ブチレングリコール流に対して、例えば0.05~10重量%、好ましくは0.1~1.0重量%である。塩基の添加量が10重量%を超えると、蒸留塔、配管等で塩基が析出し、閉塞の原因となる場合がある。また、高沸点化合物の分解反応が起こることもあり、かえって副産物が発生する場合がある。塩基の添加量が0.05重量%未満の場合は、副産物を分解する効果が小さい。
【0125】
アルカリ反応器D又はその上流の配管等に添加される塩基としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属化合物が好ましい。アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、(重)炭酸ナトリウム、(重)炭酸カリウムが挙げられる。また、前記塩基として、塩基性イオン交換樹脂を用いることもできる。塩基としては、最終的に得られる1,3-ブチレングリコール製品に含まれる副産物を低減する観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。塩基は固体状のものをそのまま加えてもよいが、操作上及び被処理液との接触を促進するため水溶液で添加することが好ましい。なお、上記の塩基は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。
【0126】
アルカリ反応器Dでの反応温度は特に限定されないが、例えば、90~140℃が好ましく、より好ましくは110~130℃である。反応温度が90℃未満である場合は長い反応滞留時間が必要になるため、反応器容量が大きくなり不経済である。反応温度が140℃を超えると最終的に得られる1,3-ブチレングリコール製品の着色が増加することがある。反応滞留時間は、例えば、5~120分が好ましく、より好ましくは10~30分である。反応滞留時間が5分未満である場合は反応が不十分となり、最終的に得られる1,3-ブチレングリコール製品の品質が悪化する場合がある。反応滞留時間が120分を超えると大きな反応器が必要になり設備費が高くなるため、経済性の観点から不利である。
【0127】
アルカリ反応器Dを出た後、反応粗液流は、必要に応じて、脱アルカリ塔(例えば、薄膜蒸発器)Eに供給され、蒸発により塩基等が塔底部から除去される。一方、脱アルカリ塔Eの塔頂部からは脱塩基後の粗1,3-ブチレングリコール流(本開示の製造方法2では、1,3-ブチレングリコール製品となる)が得られる。脱アルカリ塔Eに用いられる蒸発器は、プロセス流体への熱履歴を抑制する目的で、滞留時間の短い自然流下型薄膜蒸器、強制攪拌型薄膜蒸発器が適当である。なお、脱アルカリ塔(例えば、薄膜蒸発器)Eの仕込み位置より上の空間部にデミスターを設置して塩基等の飛沫を除去してもよい。こうすることで、1,3-ブチレングリコール製品へ塩基等が混入することを防止できる。
【0128】
脱アルカリ塔Eに用いられる蒸発器において、例えば、塔頂部は絶対圧20kPa以下、好ましくは絶対圧0.5~10kPaの減圧下で蒸発が行われる。蒸発器の温度は、例えば、90~120℃が好ましい。塔頂部から留出した低沸点物を含む粗1,3-ブチレングリコール流が製品蒸留塔(製品塔)Fへ供給される。なお、前述のように、本開示の製造方法2では、脱アルカリ塔Eの塔頂部からの留出液(E-1に相当)を1,3-ブチレングリコール製品とすることができる。
【0129】
なお、アルカリ反応器D及び脱アルカリ塔Eは、脱塩塔Bと脱高沸塔Cの間、脱水塔Aと脱塩塔Bの間(この場合、脱塩塔は脱アルカリ塔を兼ねてもよい)、あるいは脱水塔Aの前に設置してもよい。また、アルカリ反応器D及び脱アルカリ塔Eを設けることなく、塩基を脱高沸塔仕込ラインに仕込んだり、脱水塔仕込ラインに仕込んだり、あるいは水添後の反応液に加える[その後、脱アルコール塔(脱低沸塔)に仕込む]ことで、アルカリ処理を行うこともできる。
【0130】
本開示の製造方法1では、製品蒸留工程で用いる製品塔Fにおいて、GC分析による1,3-ブチレングリコール濃度が例えば97.6面積%以上の仕込液を蒸留し、仕込み段より上から低沸点成分が濃縮された液を留出させ(図1の「X-6」に相当する)、仕込み段より下から1,3-ブチレングリコールを抜き取る(図1の「Y」に相当する)。抜き取られた1,3-ブチレングリコールは1,3-ブチレングリコール製品とすることができる。
【0131】
製品塔Fとしては、例えば、多孔板塔、泡鐘塔等を用いることができるが、スルーザー・パッキング、メラパック(共に住友重機械工業(株)の商品名)等を充填した圧損失の低い充填塔がより好ましい。これは、1,3-ブチレングリコールや微量に含まれる不純物は高温(例えば150℃以上)で熱分解し、着色成分である低沸点物が生成することから、蒸留温度を低くするためである。また、1,3-ブチレングリコールにかかる熱履歴(滞留時間)が長い場合も同様に影響が出るためである。従って、採用されるリボイラーはプロセス側流体の滞留時間が短いもの、例えば、自然流下型薄膜蒸発器、強制攪拌型薄膜蒸発器等の薄膜蒸発器が好ましい。
【0132】
製品塔Fの理論段数は、例えば1~100段、好ましくは2~90段、3~80段、4~70段、5~60段、8~50段又は10~40段であり、さらに好ましくは15~30段である。仕込液の供給位置は、塔頂部から下方に向かって、塔の高さの例えば10~90%、好ましくは20~80%、より好ましくは30~70%、さらに好ましくは40~60%の位置である。製品蒸留塔Fでの蒸留において、塔頂部の圧力(絶対圧)は、例えば20kPa以下、好ましくは0.1~10kPa、より好ましくは0.3~8kPa、さらに好ましくは0.5~5kPaである。
【0133】
図1では、製品塔Fへの仕込みは、脱アルカリ塔Eの塔頂ベーパーをコンデンサーE-1で凝縮した液をフィードしているが、脱アルカリ塔Eからの塔頂ベーパーを直接製品塔Fへフィードしてもよい。
【0134】
製品塔Fへの仕込液(1,3-ブチレングリコール仕込液)中の1,3-ブチレングリコールの濃度は97.6%以上であり、好ましくは97.8%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは98.2%以上(例えば、98.4%以上、98.6%以上又は98.8%以上)、特に好ましくは99%以上(例えば、99.1%以上、9.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上又は99.9%以上)である。
【0135】
製品塔Fへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの濃度は、例えば、脱水塔Aの蒸留条件を調整したり、脱水塔Aの前に脱アルコール塔(脱低沸塔)を設け、その蒸留条件を調整したり、脱高沸塔Cの蒸留条件を調整することにより向上させることができる。例えば、前記脱アルコール塔(脱低沸塔)、脱水塔A、及び/又は 脱高沸塔Cの還流比を上げたり、段数を増加させることにより、製品塔Fへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの純度を高くすることができる。
【0136】
なお、上記製品塔Fへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの濃度は、下記条件のガスクロマトグラフィー分析における、全ピーク面積に対する1,3-ブチレングリコールのピークの面積の割合(面積%)である。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【0137】
本開示の製造方法1において、製品塔Fへの仕込液中のアセトアルデヒドの含有量は、500ppm以下であり、好ましくは205ppm以下(例えば200ppm以下)、より好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは120ppm以下、100ppm以下、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下又は10ppm以下であり、特に好ましくは5ppm以下であり、2ppm未満であってもよい。製品塔Fへの仕込液中のクロトンアルデヒドの含有量は、200ppm以下であり、好ましくは150ppm以下、より好ましくは130ppm以下、さらに好ましくは110ppm以下、100ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下又は3ppm以下であり、特に好ましくは2ppm以下であり、1ppm未満であってもよい。製品塔Fへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量は、例えば、製品塔Fの上流に脱アルコール塔(脱低沸塔)や脱水塔を設け、該脱アルコール塔(脱低沸塔)や脱水塔の蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱アルコール塔(脱低沸塔)や脱水塔の還流比や段数、留出率を増加させることにより、製品塔Fへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量を低下させることができる。また、製品塔Fへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量は、アルカリ反応工程において、反応温度を上げたり、滞留時間を長くしたり、塩基の添加量を増やすことにより、製品塔Fへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量を低下させることができる。なお、製品塔Fへの仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量は、GC-MS分析(ガスマス分析)により定量できる。
【0138】
本開示の製造方法1において、製品塔Fへの仕込液中の水の含有量は、0.7重量%以下であり、好ましくは0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下又は0.2重量%以下であり、特に好ましくは0.1重量%以下である。製品塔Fへの仕込液中の水の含有量は、前記脱水塔Aの蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱水塔Aの還流比や段数、留出率を増加させることにより、製品塔Fへの仕込液中の水の濃度を低下させることができる。なお、製品塔Fへの仕込液中の水の含有量は、カールフィッシャー水分測定器で定量できる。
【0139】
製品塔Fへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の含有量は、例えば1.8%以下、好ましくは1.6%以下、より好ましくは1.4%以下、さらに好ましくは1.2%以下、1.1%以下、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下又は0.2%以下であり、特に好ましくは、0.1%以下である。製品塔Fへの仕込液中の水を除く低沸点成分(「低沸点物」とも言う)の含有量は、上記条件のガスクロマトグラフィー分析における、全ピーク面積に対する1,3-ブチレングリコールのピークより保持時間の短いピークのトータルの面積の割合(面積%)である。前記製品塔Fへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の含有量は、例えば、製品塔Fの上流に脱アルコール塔(脱低沸塔)を設け、該脱アルコール塔(脱低沸塔)の蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱アルコール塔(脱低沸塔)の還流比や段数や留出率を増加させることにより、製品塔Fへの仕込液中の低沸点成分(水を除く)の濃度を低下させることができる。
【0140】
製品塔Fへの仕込液中の高沸点成分(水を除く)の含有量は、例えば1.8%以下、好ましくは1.6%以下、より好ましくは1.4%以下、さらに好ましくは1.2%以下、1.1%以下、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下又は0.2%以下であり、特に好ましくは、0.1%以下である。製品塔Fへの仕込液中の水を除く高沸点成分(「高沸点物」又は「高沸物」とも言う)の含有量は、上記条件のガスクロマトグラフィー分析における、全ピーク面積に対する1,3-ブチレングリコールのピークより保持時間の長いピークのトータルの面積の割合(面積%)である。前記製品塔Fへの仕込液中の高沸点成分(水を除く)の含有量は、例えば、脱高沸塔の蒸留条件を調整することにより低減できる。例えば、前記脱高沸塔の還流比や段数や缶出率を増加させることにより、製品塔Fへの仕込液中の高沸点成分(水を除く)の濃度を低下させることができる。
【0141】
本開示の製造方法1では、製品塔Fにおける還流比[製品塔還流量/製品塔留出量(蒸留塔外への排出量)]は、1,3-ブチレングリコール製品の初留点を高くするという観点から、0.3以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上又は50以上であり、特に好ましくは400以上(例えば500以上)である。製品塔Fの還流比の上限は、エネルギーコストの点から、例えば700又は1000である。
【0142】
本開示の製造方法1において、製品塔Fの留出率は、1,3-ブチレングリコールの回収率を向上させる点から、例えば30重量%未満、好ましくは29重量%以下、より好ましくは28重量%以下、さらに好ましくは27重量%以下、26重量%以下、25重量%以下、24重量%以下、23重量%以下、22重量%以下、21重量%以下、20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下又は0.6重量%以下であり、特に好ましくは0.4重量%以下である。なお、上記留出率とは、製品塔Fへの仕込量に対する製品塔Fの仕込段より上(例えば、塔頂部)から蒸留塔外に抜き出される液の量(後述する前工程へリサイクルする場合は、リサイクル量も含む)の割合(重量%)をいう。
【0143】
製品塔Fの仕込み段より上から抜き取られた低沸成分が濃縮された液(以下、「留出液」と称する場合がある)の少なくとも一部を製品蒸留工程より前の工程にリサイクルさせてもよい(図1の製品塔Fの右側に示す破線の矢印)。上記留出液の少なくとも一部を製品蒸留工程より前の工程にリサイクルさせることにより、1,3-ブチレングリコールの回収率を向上させることができる。
【0144】
上記製品蒸留工程より前の工程としては、例えば、脱水工程、脱アルコール工程(脱低沸工程)などが挙げられる。なお、脱アルコール工程(脱低沸工程)は前記脱水工程の前に設けることが好ましい。
【0145】
上記留出液の製品蒸留工程より前の工程へのリサイクル量は、留出液の量の範囲内で適宜選択できる。上記留出液の製品蒸留工程より前の工程へのリサイクル量は、製品塔Fへの仕込量に対して、例えば30重量%未満である。また、上記留出液の製品蒸留工程より前の工程へのリサイクル量は、製品塔での1,3BG回収率及びプロセス全体を通しての収率を向上させるという観点から、製品塔Fへの仕込量に対して、例えば0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、7重量%以上又は10重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上である。
【0146】
本開示の製造方法1では、製品塔Fへの仕込液中のアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及び水の含有量を特定の値以下とし、製品塔Fにおける還流比を特定の範囲とすることにより、無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)で、経時による着色や臭気の発生又は増大が起きにくく、しかも水を含む状態においても経時による酸濃度上昇を生じにくい、高純度の1,3-ブチレングリコールを工業的に効率よく製造することができる。
【0147】
製品塔Fにおける1,3BGの回収率は、例えば80%超、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0148】
なお、本明細書において、製品塔Fにおける1,3BGの回収率は下記式により求めた値(%)である。
{1-[留出液における1,3BGのGC面積%×(留出量(部)-リサイクル量(部))]/(仕込液における1,3BGのGC面積%×仕込量(部))}×100
なお、上述したように、低沸点物、高沸点物は水により加水分解されて1,3BGが生成する場合がある一方、1,3BGの重合により高沸点物が生成する場合もあるので、製品塔における物質収支は、必ずしもとれない場合がある。
【0149】
なお、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【実施例0150】
以下、実施例により本開示をさらに具体的に説明する。なお、実施例で用いている「部」は、特別の説明が無い限り「重量部」を意味する。ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)、初留点の測定、水分の測定は後述の方法により行った。
【0151】
[比較例5]
図1を用いて1,3-ブチレングリコールの製造方法を説明する。
原料として30重量%の水を含むアセトアルドール溶液100部(アセトアルドール69部と水29部の混合溶液、低沸、高沸不純物を合計2部含む、Na塩は0.1部未満)に対し、水素10部を液相水素還元用反応器に仕込み、触媒としてラネーニッケルを15部加え、該反応器を120℃、10MPa(ゲージ圧)に保持して液相水素還元を行った。反応後の液は触媒を分離した後、苛性ソーダで中和し、低沸不純物、水を含有する粗1,3-ブチレングリコール(1)を得た。
【0152】
なお、原料として用いた30重量%の水を含むアセトアルドール溶液は、アセトアルデヒドと水を、100重量ppmのNaOH存在下に30℃、滞留時間10時間で撹拌して、アセトアルデヒドを2量化させることにより製造した[アセトアルデヒド重合工程(アセトアルデヒドのアルドール縮合工程)]。
【0153】
粗1,3-ブチレングリコール(1)(図1中における「X-1」に相当)を脱水塔Aに仕込んだ。脱水塔Aへの仕込液中の1,3-ブチレングリコールの濃度は56重量%、水の濃度は40重量%、アセトアルデヒド(AD)の含有量は130ppm、クロトンアルデヒド(CR)の含有量は89ppm、後述のGC分析において1,3-ブチレングリコールよりも保持時間(リテンションタイム;RT)の短い不純物ピークの総面積率は3%、1,3-ブチレングリコールのピークよりも保持時間が長い不純物ピークの総面積率は1%であった。脱水塔Aでは、塔頂圧力10kPa(絶対圧)、還流比1の条件で蒸留し、塔頂部より水を抜き出し、仕込液量100部に対して43部(留出量)を系外に排出除去した(図1中における「X-2」に相当)。塔底部より、1,3-ブチレングリコールの濃度が96.9GC面積%、水が0.9重量%、後述のGC分析において1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の短い不純物ピークの総面積率が0.8%、1,3-ブチレングリコールのピークよりも保持時間が長いピークの総面積率が2.3%、アセトアルデヒドの含有量が18ppm、クロトンアルデヒドの含有量が17ppmである粗1,3-ブチレングリコール(2)が得られた。
【0154】
次に、粗1,3-ブチレングリコール(2)を脱塩塔Bに仕込んだ。脱塩塔Bでは、塔底部より、塩、高沸点物、及び1,3-ブチレングリコールの一部が蒸発残分として排出された(図1中における「X-3」に相当)。蒸発残分の排出量は、仕込液量100部に対して5部であった。一方、塔頂部からは、1,3-ブチレングリコール、低沸点物、及び高沸点物の一部を含む粗1,3-ブチレングリコール(3)が得られた。
【0155】
次に、粗1,3-ブチレングリコール(3)を脱高沸塔Cに仕込んだ。脱高沸塔Cでは、塔頂圧力5kPa(絶対圧)、還流比0.05の条件で蒸留し、塔底部から、高沸点物及び1,3-ブチレングリコールの一部が排出された(図1中における「X-4」に相当)。塔底排出量は、仕込液量100部に対して20部であった。一方、塔頂部からは、低沸点物を含む粗1,3-ブチレングリコール(4)が留出液として80部得られた。
【0156】
次に、粗1,3-ブチレングリコール(4)をアルカリ反応器Dに仕込んだ。この際、仕込液に対する苛性ソーダの濃度が0.1重量%となるように、20重量%苛性ソーダ水溶液を添加した。アルカリ反応器Dでの反応温度を120℃に維持し、滞留時間20分で反応を行った。
【0157】
次に、アルカリ反応器Dから出た反応粗液を脱アルカリ塔Eに仕込んだ。脱アルカリ塔Eでは、塔底部から、苛性ソーダ、高沸点物、及び1,3-ブチレングリコールの一部が排出された(図1中における「X-5」に相当)。塔底排出量は、仕込液量100部に対して10部であった。一方、塔頂部からは、1,3-ブチレングリコール及び低沸点物を含む粗1,3-ブチレングリコール(5)が90部得られた。1,3-ブチレングリコール及び低沸点物を含む粗1,3-ブチレングリコール(5)について、水分の測定、GC分析及びGC-MS分析を行った結果、水分濃度は1重量%、1,3-ブチレングリコールの面積率は99%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の短い不純物ピークの総面積率は0.4%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の長い不純物ピークの総面積率は0.6%、アセトアルデヒドの含有量は20ppm、クロトンアルデヒドの含有量は9ppmであった。
【0158】
次に、粗1,3-ブチレングリコール(5)を製品塔Fへ仕込んだ。製品塔Fでは、仕込液量100部に対して、塔頂部から低沸点物及び1,3-ブチレングリコールの一部が10部留出され(図1中における「X-6」に相当)、全量系外に排出した。その際の還流比(還流量/留出量)を0.5で運転し、塔底部からは1,3-ブチレングリコール製品が90部得られた(留出量は10部)(図1中における「Y」に相当)。
【0159】
得られた1,3-ブチレングリコール製品について、初留点の測定、水分の測定、GC分析及びGC-MS分析を行った結果、初留点は203.3℃、乾点は209℃、水分濃度は0.2重量%、1,3-ブチレングリコールの面積率は99.2%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の短い不純物ピークの総面積率は0.08%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の長い不純物ピークの総面積率は0.7%、アセトアルデヒドの含有量は1.5ppm、クロトンアルデヒドの含有量は0.9ppmであった。また、過マンガン酸カリウム試験値は35分であった。製品塔Fでの1,3-ブチレングリコール回収率は90%であった。
【0160】
[実施例1]
脱水塔Aの還流比を50に変更した以外は、比較例5と同様の操作を行った。製品塔Fの塔底部から1,3-ブチレングリコール製品を得た。なお、脱水塔Aの条件変更により、脱水塔缶出組成が変化し、脱高沸塔C、製品塔Fの仕込液組成がそれぞれ変化した結果、製品の品質が変化した。
得られた1,3-ブチレングリコール製品について、初留点の測定、水分の測定、GC分析及びGC-MS分析を行った結果、初留点は206.7℃、乾点は208.9℃、水分濃度は0.1重量%、1,3-ブチレングリコールの面積率は99.3%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の短い不純物ピークの総面積率は0.05%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の長い不純物ピークの総面積率は0.7%、アセトアルデヒドの含有量は0.7ppm、クロトンアルデヒドの含有量は0.7ppmであった。また、過マンガン酸カリウム試験値は45分であった。製品塔Fでの1,3-ブチレングリコール回収率は90%であった。
【0161】
[実施例2~26]
表1及び表2に示す条件により脱水塔A、脱高沸塔C及び製品塔Fの運転を行った。なお、実施例3~21、23~26では、製品塔Fの留出液を水素還元用反応器に全量リサイクルした。実施例22では、製品塔Fは用いず、脱アルカリ塔E(仕込み位置より上の空間部にデミスターを設置)の塔頂留出液を1,3-ブチレングリコール製品とした。その際、アルカリ反応器Dでの苛性ソーダ水溶液の濃度を1.5倍とし、苛性ソーダ水溶液の添加量を実施例1の半分とすることで、アルカリ処理による水分上昇を極力避けた。なお、苛性ソーダ水溶液のアルカリ濃度が高すぎると、結晶が析出するため、40℃以上に加熱するのが好ましい。表2において、実施例22の「製品塔F缶出」の欄には、脱アルカリ塔Eの塔頂留出液の組成及び物性が記載されている。なお、実施例15では、脱高沸塔缶出液10部の内、8部を水添工程にリサイクルし、2部を系外に排出した。また、実施例24では、水素添加反応の圧力を7MPaG(ゲージ圧)に下げた。そのため、脱水塔仕込液中のアセトアルデヒド含有量及びクロトンアルデヒド含有量が高い。実施例25では、脱水塔の還流比を0.3に下げ、製品塔仕込液中の1,3ーブチレングリコールの純度を低下させ、製品塔の還流比を20に上昇させた。実施例26では、水素添加反応の圧力を40MPaG(ゲージ圧)に上げた(残りの条件は実施例17と同様である)。
【0162】
[比較例1]
脱水塔Aの還流比を0.5、留出量を42部に変更し、脱高沸塔Cの還流比を0.02、製品塔Fの還流比を0.05、留出量を20部に変更した以外は、比較例5と同様の方法により、製品塔Fの塔底部から1,3-ブチレングリコール製品80部を得た。得られた1,3-ブチレングリコール製品の初留点は193.2℃、乾点は210.3℃、水分濃度は0.6重量%、1,3-ブチレングリコールの面積率は98.3%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の短い不純物ピークの総面積率は0.2%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の長い不純物ピークの総面積率は1.5%、アセトアルデヒドの含有量は5ppm、クロトンアルデヒドの含有量は4ppmであった。また、過マンガン酸カリウム試験値は0分であった。製品塔Fでの1,3-ブチレングリコール回収率は80%であった。
【0163】
[比較例2]
脱水塔Aの仕込組成を変更し、還流比を0.5、留出量を32部に変更し、脱高沸塔Cの還流比を0.02、製品塔Fの還流比を0.05、留出量を20部に変更した以外は、比較例5と同様の方法により、製品塔Fの塔底部から1,3-ブチレングリコール製品80部を得た。得られた1,3-ブチレングリコール製品の初留点は199.0℃、乾点は210.1℃、水分濃度は0.4重量%、1,3-ブチレングリコールの面積率は98.5%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の短い不純物ピークの総面積率は0.1%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の長い不純物ピークの総面積率は1.4%、アセトアルデヒドの含有量は4ppm、クロトンアルデヒドの含有量は2ppmであった。また、過マンガン酸カリウム試験値は5分であった。製品塔Fでの1,3-ブチレングリコール回収率は80%であった。
【0164】
[比較例3]
脱水塔Aの仕込組成を変更し、還流比を0.5、留出量を32部に変更し、脱高沸塔Cの還流比を0.02、製品塔Fの還流比を0.05、留出量を30部に変更した以外は、比較例5と同様の方法により、製品塔Fの塔底部から1,3-ブチレングリコール製品70部を得た。得られた1,3-ブチレングリコール製品の初留点は203.0℃、乾点は210.2℃、水分濃度は0.2重量%、1,3-ブチレングリコールの面積率は98.4%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の短い不純物ピークの総面積率は0.1%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の長い不純物ピークの総面積率は1.5%、アセトアルデヒドの含有量は2ppm、クロトンアルデヒドの含有量は1.3ppmであった。また、過マンガン酸カリウム試験値は30分であった。製品塔Fでの1,3-ブチレングリコール回収率は70%であった。
【0165】
[比較例4]
脱水塔Aの仕込組成を変更し、留出量を23部に変更し、脱高沸塔Cの還流比を0.02、製品塔Fの還流比を0.1、留出量を20部に変更した以外は、比較例5と同様の方法により、製品塔Fの塔底部から1,3-ブチレングリコール製品80部を得た。得られた1,3-ブチレングリコール製品の初留点は203.1℃、乾点は209.5℃、水分濃度は0.2重量%、1,3-ブチレングリコールの面積率は98.8%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の短い不純物ピークの総面積率は0.1%、1,3-ブチレングリコールよりも保持時間の長い不純物ピークの総面積率は1.1%、アセトアルデヒドの含有量は2ppm、クロトンアルデヒドの含有量は1.3ppmであった。また、過マンガン酸カリウム試験値は30分であった。製品塔Fでの1,3-ブチレングリコール回収率は80%であった。
【0166】
[ガスクロマトグラフィー分析]
以下の条件で、対象となる1,3-ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析を行った。比較例5における1,3-ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析のチャートを図2に示す。実施例11における1,3-ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析のチャートを図3に示す。また、比較例2における1,3-ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析のチャートを図4に示す。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析装置:島津 GC2010
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)(「Agilent J&W GC カラム - DB-1」、アジレント・テクノロジー株式会社製)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入及び温度:スプリット試料導入法、250℃
スプリットのガス流量及びキャリアガス:23mL/分、ヘリウム
カラムのガス流量及びキャリアガス:1mL/分、ヘリウム
検出器及び温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
注入試料:0.2μLの80重量%1,3-ブチレングリコール製品水溶液
【0167】
[初留点及び乾点の測定]
JIS K2254「石油製品-蒸留試験方法」の常圧蒸留試験方法に規定される試験方法に従って行った。
【0168】
[水分の測定]
カールフィッシャー水分測定装置により行った。
【0169】
[GC-MS分析]
分析装置: Agilent 6890A-GC/5973A-MSD
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
イオン源温度: EI 230℃、CI 250℃
Qポール温度:150℃
サンプル: そのまま分析に供する
【0170】
[過マンガン酸カリウム試験]
本明細書において、過マンガン酸カリウム試験値(PMT)は、JIS K1351(1993)の目視比色法の手順に準じて測定した値である。
【0171】
[経時着色試験1(着色試験1)]
対象となる1,3-ブチレングリコール製品を広口瓶に入れて密栓し、180℃に設定した恒温槽に3時間保持した。色差計(日本電色工業社製「ZE6000」)を用い、光路長10mmの石英セルを使用して、180℃で3時間保持後の1,3-ブチレングリコール製品のハーゼン色数(APHA)を測定した。また、試験前の1,3-ブチレングリコール製品のハーゼン色数(APHA)も同様に測定した。さらに、経時着色試験1前後の1,3-ブチレングリコール製品中の各不純物含有量を前記GC-MS分析により測定した。また、経時着色試験1前後の1,3-ブチレングリコール製品の初留点、乾点、過マンガン酸カリウム試験値、臭気及び酸分を測定した。
【0172】
[経時着色試験2(着色試験2)]
対象となる1,3-ブチレングリコール製品を広口瓶に入れて密栓し、100℃に設定した恒温槽に75日保持した。色差計(日本電色工業社製「ZE6000」)を用い、光路長10mmの石英セルを使用して、100℃で75日保持後の1,3-ブチレングリコール製品のハーゼン色数(APHA)を測定した。
【0173】
[水分添加加熱試験(酸濃度分析)]
対象となる1,3-ブチレングリコール製品を90重量%の水溶液に調整し、100℃で1週間保持した後のものをサンプルとして、以下の手法により酸濃度分析を行った。また、試験前の1,3-ブチレングリコール製品についても、以下の手法により酸濃度分析を行った。
(酸濃度分析)
電位差自動滴定装置(京都電子工業製AT-510)を用いて電位差滴定法によって測定した。サンプル50gを蒸留水50gで希釈し、撹拌しながら0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を自動終点停止するまでビュレットから滴定した。次いで、下記式に基づいて酢酸換算の酸濃度(酸分)を算出した。
酸濃度(重量%)=滴定量(ml)×F×A×(100/サンプル量(g))
F:1.0(0.01N水酸化ナトリウム水溶液のファクター)
A:0.0006(1mlの水酸化ナトリウム水溶液に相当する酢酸のグラム数)
【0174】
[臭気試験(人による)]
対象となる1,3-ブチレングリコール製品(100ml)を広口試薬瓶(内容積:100ml)に入れ、密栓し室温にてしばらく(約120分)静置した後、栓を開け、300ml広口ビーカーに移し、その中に純水を100ml入れて合計200mlとし、手で揺らしてかき混ぜた後、速やかに臭いを嗅ぎ、以下の評価にて点数を付けた。また、上記経時着色試験1を行った後のサンプル、及び上記水分添加加熱試験を行った後のサンプルについても同様の臭気試験を行った。
1:臭いを感じない
2:僅かに臭気がある
3:明らかに臭いを感じる
【0175】
[臭気試験(臭いセンサーによる)]
対象となる1,3-ブチレングリコール製品に対し、WO2019/035476に記載された、臭気と相関のある蛍光強度変化率(蛍光輝度変化量)を測定した。すなわち、臭気測定装置(臭いセンサー;株式会社香味発酵製)を用いて蛍光輝度変化量を測定し、得られた比較例1の蛍光輝度変化量を臭気ランク4として、以下の通り6つのランク(0、1、2、3、4又は5)に臭気を評価した。また、上記経時着色試験1を行った後のサンプルについても同様の臭気試験を行った。
蛍光輝度変化量 臭気ランク
3.4未満 0
3.4以上3.5未満 1
3.5以上3.7未満 2
3.7以上3.9未満 3
3.9以上4.1未満 4
4.1以上 5
【0176】
なお、上記の経時着色試験1、2、及び水分添加加熱試験は、1,3BG製品の長期保存を想定した加速試験である。
【0177】
[結果の考察]
上記比較例と実施例の結果を表1、表2及び表3に示す。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
【表3】
【0181】
1,3BG製造プロセスにおいて、多くの不純物が生成するため、1,3BG製品中には、アルドール縮合の条件、水素添加反応の条件や、その後の精製条件によっても異なるが、一般に、前記表3に示される不純物が含まれている。1,3BG製品に含まれている例えばアセトアルドールやクロトンアルデヒド、各種カルボニル化合物、アルコールは、長期保存の際に酸素と反応し、過酸化物を生成する。特に、アルデヒド類は、ケトン、アルコール、炭化水素よりも比較的容易に過酸化物を生成する。不純物をもとに生成した過酸化物は、製品1,3BGと反応し、ツリーの最上位(1,3BG)から、酸化を促進させる(前記不純物生成経路図参照)。なお、アセトアルドールはアセトアルデヒドの二量化で主に生成している。よって、反応系や精製系において一連の不純物を低減させることで、長期保存の際の不純物から生成する過酸化物の濃度を抑制し、もって1,3BGの酸化による1-ヒドロキシ3-ブタノン、アセトアルドール、及びそれら両方の化合物から生成する更なる不純物を経由する多くの不純物の生成反応を抑制することができる。例えば、前記表3に示される不純物のうち、酸素存在下での長期保存の際、酸素と反応することで生成する物質は、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、アセトアルドール、2-ブタノール、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物、式(10)で表される化合物などであり、他の不純物は、1-ヒドロキシ-3-ブタノン又はアセトアルドールと1,3BG及び他の不純物が存在し、少量の水が存在すれば生成する。
【0182】
比較例及び実施例の結果より、1,3BG製品中のアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物、式(6)で表される化合物、式(7)で表される化合物、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物及び式(10)で表される化合物の含有量の総和(以下、「前記19種の不純物の総含有量」と称する場合がある)が少ないほど、1,3BG製品の着色度(APHA)、酸分、臭気(人による臭気及び臭いセンサーによる臭気)が低く、初留点、乾点、PMTも優れている。しかも、前記19種の不純物の総含有量が少ないほど、長期保存を想定した特定条件下での加熱試験後における着色度(APHA)、酸分、臭気(人による臭気及び臭いセンサーによる臭気)も低く、初留点、乾点及びPMTのいずれも優れていることが分かる。
【0183】
より具体的には、前記19種の不純物の総含有量が65ppm未満である実施例6、実施例17及び実施例26で得られた1,3BG製品は、APHAが2以下、酸分が3ppm以下、人による臭気評価及び臭いセンサーによる臭気評価が共に1以下であり、初留点が高く、乾点が低く、PMTも長く、高品質である。また、これらの1,3BG製品は、長期保存を想定した加熱試験を経た後においても、APHAは13以下、酸分は3ppm以下、人による臭気評価及び臭いセンサーによる臭気評価は共に1以下であり、初留点、乾点、PMTもほとんど変化しない。特に、これらの実施例の1,3BG製品は、製造直後は無臭であり、加熱試験後も臭気の発生はない。また、これらの1,3BG製品は、水存在下での加熱試験を経ても、酸分及び臭気は変化しない。
【0184】
これに対して、前記19種の不純物の総含有量が65ppm以上である比較例1、比較例2及び比較例5で得られた1,3BG製品は、APHAが4以上、酸分が6ppm以上であり、初留点は低く、乾点は高く、PMTは短く、品質に劣る。また、これらの比較例の1,3BG製品は、長期保存を想定した加熱試験を経ると、APHAは25以上、酸分は8ppm以上となる。また、比較例5の1,3BG製品では、加熱試験前において、人による臭気評価では1であるものの、臭いセンサーによる臭気評価では2であり、実施例と比較して臭気に差が見られる。また、比較例5の1,3BG製品では、加熱試験後においては、人による臭気評価が2、臭いセンサーによる臭気評価が3と、いずれも悪化し、実施例との臭気の差がよりはっきりする。また、これらの比較例の1,3BG製品は、水存在下での加熱試験を経ると、酸分及び臭気はさらに悪化する。
【0185】
以上のまとめとして、本開示の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1]1,3-ブチレングリコールを含む1,3-ブチレングリコール製品であって、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、下記式(6)で表される化合物、下記式(7)で表される化合物、下記式(8)で表される化合物、下記式(9)で表される化合物及び下記式(10)で表される化合物の含有量の総和が65ppm未満(又は、50ppm以下、45ppm以下、40ppm以下、35ppm以下、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、15ppm以下、13ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下若しくは2ppm以下)である1,3-ブチレングリコール製品。
【化4】
[2]前記式(1)~(7)で表される化合物の含有量の総和が、28ppm未満(又は、25ppm以下、20ppm以下、15ppm以下、12ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、6ppm以下、4ppm以下、2ppm以下若しくは1.4ppm以下)である、前記[1]記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[3]前記式(8)~(10)で表される化合物の含有量の総和が、6ppm未満(又は、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下若しくは0.6ppm以下)である、前記[1]又は[2]記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[4]前記式(1)~(10)で表される化合物の含有量の総和が、34ppm未満(又は、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、18ppm以下、16ppm以下、14ppm以下、12ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下若しくは2ppm以下)である、前記[1]~[3]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[5]アセトアルデヒドの含有量が、1.6ppm未満(又は、1.5ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1.0ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、クロトンアルデヒドの含有量が、1ppm未満(又は、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、メチルビニルケトンの含有量が、6ppm未満(又は、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、アセトンの含有量が、5ppm未満(又は、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、ホルムアルデヒドの含有量が、1ppm未満(又は、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、ブチルアルデヒドの含有量が、5ppm未満(又は、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、アセトアルドールの含有量が、6ppm未満(又は、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、1-ヒドロキシ-3-ブタノンの含有量が、6ppm未満(又は、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下又は0.2ppm以下)、及び/又は、2-ブタノールの含有量が、0.3ppm以下(又は、0.2ppm未満)、及び/又は、式(1)で表される化合物の含有量が、2ppm未満(又は、1.8ppm以下、1.6ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(2)で表される化合物の含有量が、1ppm未満(又は、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(3)で表される化合物の含有量が、4ppm未満(又は、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(4)で表される化合物の含有量が、3ppm未満(又は、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(5)で表される化合物の含有量が、6ppm未満(又は、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(6)で表される化合物の含有量が、5ppm未満(又は、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(7)で表される化合物の含有量が、7ppm未満(又は、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(8)で表される化合物の含有量が、1ppm未満(又は、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(9)で表される化合物の含有量が、4ppm未満(又は、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(10)で表される化合物の含有量が、1ppm未満(又は、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)である、前記[1]~[4]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[6]アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール及び1-ヒドロキシ-3-ブタノンの総含有量が、31ppm以下(又は、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、18ppm以下、16ppm以下、14ppm以下、13ppm以下、12ppm以下、11pm以下、10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下若しくは1.5ppm以下)である、前記[1]~[5]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[7]アセトアルドール及び1-ヒドロキシ-3-ブタノンの総含有量が、12ppm未満(又は、10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.5ppm以下若しくは0.4ppm以下)である、前記[1]~[6]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[8]酸濃度(酢酸換算)が6ppm未満(又は、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下若しくは1ppm以下)である、前記[1]~[7]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[9]当該1,3-ブチレングリコール製品の90重量%水溶液を100℃で1週間保持した後の酸濃度(酢酸換算)が、9ppm未満(又は、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下若しくは1ppm以下)である、前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[10]当該1,3-ブチレングリコール製品の90重量%水溶液の酸濃度(酢酸換算)について、100℃で1週間保持した後の酸濃度の保持前の酸濃度に対する比率[(100℃1週間保持後の酸濃度)/(保持前の酸濃度)×100(%)]が、150%以下(又は、120%以下若しくは110%以下)である、前記[1]~[9]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[11]APHA(ハーゼン色数)が、3以下(又は、2以下若しくは1以下)である、前記[1]~[10]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[12]空気雰囲気下、100℃で75日保持した後のAPHAが、11以下(又は、10以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下若しくは2以下)である、前記[1]~[11]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[13]当該1,3-ブチレングリコール製品のAPHAについて、100℃で75日間保持した後のAPHAの保持前のAPHAに対する比率[(100℃75日間保持後のAPHA)/(保持前のAPHA)]が、3未満(又は、2.5以下、2以下、1.5以下若しくは1.2以下)である、前記[1]~[12]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[14]初留点が204℃以上(又は、204.5℃以上、205℃以上、206℃以上、207℃以上若しくは208℃以上)である、前記[1]~[13]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[15]乾点が209℃未満(又は、208.8℃以下)である、前記[1]~[14]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[16]過マンガン酸カリウム試験値(PMT)が36分以上(又は、38分以上、40分以上、50分以上若しくは60分以上)である、前記[1]~[15]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[17]1,3-ブチレングリコールの含有量(下記GC分析条件におけるGC面積率)が、99.3%以上(又は、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上若しくは99.8%以上)である、前記[1]~[16]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
<ガスクロマトグラフィー(GC)分析の条件>
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
[18]前記GC分析において、1,3-ブチレングリコールのピークよりも保持時間が短いピークの総面積率が、0.09%以下(又は、0.08%以下、0.07%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.01%以下、0.007%以下、0.005%以下若しくは0.003%以下)である、前記[1]~[17]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[19]前記GC分析において、1,3-ブチレングリコールのピークよりも保持時間が長いピークの総面積率が、0.7%以下(又は、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下若しくは0.1%以下)である、前記[1]~[18]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[20]水の含有量が、0.2重量%以下(又は、0.15重量%以下、0.1重量%以下、0.07重量%以下、0.05重量%以下、0.03重量%以下、0.02重量%以下、0.01重量%以下若しくは0.005重量%以下)である、前記[1]~[19]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[21]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール、1-ヒドロキシ-3-ブタノン、2-ブタノール及び式(1)~(10)で表される化合物の含有量の総和が、70ppm未満(又は、65ppm以下、60ppm以下、55ppm以下、50ppm以下、45ppm以下、40ppm以下、35ppm以下、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、18ppm以下、15ppm以下、13ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、5ppm以下、4ppm以下若しくは3.5ppm以下)である、前記[1]~[20]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[22]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、前記式(1)~(7)で表される化合物の含有量の総和が、40ppm未満(又は、35ppm以下、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、15ppm以下、12ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下若しくは1.4ppm以下)である、前記[1]~[21]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[23]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、前記式(8)~(10)で表される化合物の含有量の総和が、18ppm未満(又は、16ppm以下、14ppm以下、13ppm以下、12ppm以下、11pm以下、10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下若しくは0.6ppm以下)である、前記[1]~[22]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[24]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、前記式(1)~(10)で表される化合物の含有量の総和が、59ppm未満(又は、55ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、18ppm以下、16ppm以下、14ppm以下、12ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下若しくは2ppm以下)である、前記[1]~[23]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[25]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後において、アセトアルデヒドの含有量が、1ppm未満(又は、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、クロトンアルデヒドの含有量が、0.5ppm未満(又は、0.4ppm以下、0.3ppm以下、0.2ppm以下若しくは0.1ppm以下)、及び/又は、メチルビニルケトンの含有量が、4ppm未満(又は、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、アセトンの含有量が、2ppm未満(又は、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、ホルムアルデヒドの含有量が、0.5ppm未満(又は、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、ブチルアルデヒドの含有量が、3ppm未満(又は、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、アセトアルドールの含有量が、0.5ppm未満(又は、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、1-ヒドロキシ-3-ブタノンの含有量が、0.5ppm未満(又は、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、2-ブタノールの含有量が、0.2ppm未満、及び/又は、式(1)で表される化合物の含有量が、6ppm未満(又は、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(2)で表される化合物の含有量が、5ppm未満(又は、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(3)で表される化合物の含有量が、4ppm未満(又は、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(4)で表される化合物の含有量が、5ppm未満(又は、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(5)で表される化合物の含有量が、7ppm未満(又は、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(6)で表される化合物の含有量が、6ppm未満(又は、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(7)で表される化合物の含有量が、8ppm未満(又は、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(8)で表される化合物の含有量が、6ppm未満(又は、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(9)で表される化合物の含有量が、5ppm未満(又は、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)、及び/又は、式(10)で表される化合物の含有量が、7ppm未満(又は、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下、0.8ppm以下、0.6ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下若しくは0.2ppm以下)である、前記[1]~[24]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[26]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルビニルケトン、アセトン、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトアルドール及び1-ヒドロキシ-3-ブタノンの含有量の総和が、12ppm未満(又は、10ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下若しくは1.6ppm以下)である、前記[1]~[25]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[27]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の、アセトアルドール及び1-ヒドロキシ-3-ブタノンの含有量の総和が、1ppm未満(又は、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下若しくは0、4ppm以下)である、前記[1]~[26]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[28]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが、25未満(又は、20以下、18以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下若しくは7以下)である、前記[1]~[27]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[29]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の初留点が204℃以上(又は、205℃以上、206℃以上若しくは207℃以上)である、前記[1]~[28]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[30]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の乾点が209℃未満である、前記[1]~[29]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[31]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の過マンガン酸カリウム試験値(PMT)が30分超(又は、32分以上、35分以上、40分以上、50分以上若しくは60分以上)である、前記[1]~[30]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[32]空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後の酸濃度(酢酸換算)が、8ppm未満(又は、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下若しくは1ppm以下)である、前記[1]~[31]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品。
[33]前記[1]~[32]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品を含む保湿剤。
[34]前記[1]~[32]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品の含有量が10重量%以上(又は、30重量%以上、50重量%以上、80重量%以上、若しくは90重量%以上)である前記[33]記載の保湿剤。
[35]前記[33]又は[34]記載の保湿剤を含む化粧料。
[36]前記[1]~[32]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品の含有量が0.01~40重量%(又は、0.1~30重量%、0.2~20重量%、0.5~15重量%、若しくは1~10重量%)である前記[35]記載の化粧料。
[37]皮膚化粧料、頭髪化粧料、日焼け止め化粧料又はメイクアップ化粧料である前記[35]又は[36]記載の化粧料。
[38]1,3-ブチレングリコールを含む反応粗液から、前記[1]~[32]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品を得る1,3-ブチレングリコールの製造方法であって、
蒸留により水を除去する脱水工程、蒸留により高沸点成分を除去する脱高沸工程、及び精製1,3-ブチレングリコール(1,3-ブチレングリコール製品)を得るための製品蒸留工程を有しており、
前記製品蒸留工程で用いる製品塔において、アセトアルデヒドの含有量が500ppm以下(又は、205ppm以下、200ppm以下、150ppm以下、120ppm以下、100ppm以下、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、若しくは2ppm未満)、クロトンアルデヒドの含有量が200ppm以下(又は、150ppm以下、130ppm以下、110ppm以下、100ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、若しくは1ppm未満)、水の含有量が0.7重量%以下(又は、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、若しくは0.1重量%以下)、下記条件のガスクロマトグラフィー分析による1,3-ブチレングリコール濃度が97.6面積%以上(又は、97.8面積%以上、98面積%以上、98.2面積%以上、98.4面積%以上、98.6面積%以上、98.8面積%以上、99面積%以上、99.1面積%以上、99.2面積%以上、99.3面積%以上、99.4面積%以上、99.5面積%以上、99.6面積%以上、99.7面積%以上、99.8面積%以上、若しくは99.9面積%以上)である1,3-ブチレングリコール仕込液を、還流比が0.3以上(又は、0.4以上、0.5以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、50以上、400以上、若しくは500以上)の条件で蒸留に付すことにより、前記1,3-ブチレングリコール製品を得る1,3-ブチレングリコールの製造方法。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
[39]1,3-ブチレングリコールを含む反応粗液から、前記[1]~[32]のいずれか1つに記載の1,3-ブチレングリコール製品を得る1,3-ブチレングリコールの製造方法であって、
蒸留により水を除去する脱水工程及び蒸留により高沸点成分を除去する脱高沸工程を有しており、
前記脱高沸工程で用いる脱高沸塔において、アセトアルデヒドの含有量が500ppm以下(又は、205ppm以下、200ppm以下、100ppm以下、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、2ppm未満、若しくは1ppm未満)、クロトンアルデヒドの含有量が200ppm以下(又は、110ppm以下、100ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、若しくは1ppm未満)、水の含有量が3重量%以下(又は、2重量%以下、1.2重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、若しくは0.03重量%以下)、下記条件のガスクロマトグラフィー分析による1,3-ブチレングリコール濃度が96.7面積%以上(又は、97%以上、98%以上、若しくは99%以上)である1,3-ブチレングリコールを含む仕込液を、還流比0.03以上(又は、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1以上、1.2以上、1.5以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、若しくは20以上)の条件で蒸留に付すことにより、前記1,3-ブチレングリコール製品を得る1,3-ブチレングリコールの製造方法。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【産業上の利用可能性】
【0186】
本開示に係る1,3-ブチレングリコール製品は、高純度且つ無色・無臭(又は、ほぼ無色・無臭)であって、経時により着色や臭気が発生したり増大することが起きにくい、及び/又は、水を含む状態においても経時による酸濃度上昇を生じにくい。この1,3-ブチレングリコール製品は、優れた保湿性能を有するとともに、高い品質を長期間保持できる保湿剤及び化粧料の原料として使用できる。
【符号の説明】
【0187】
A:脱水塔
B:脱塩塔
C:脱高沸点物蒸留塔(脱高沸塔)
D:アルカリ反応器
E:脱アルカリ塔
F:製品蒸留塔(製品塔)
A-1、B-1、C-1、E-1、F-1:コンデンサー
A-2、C-2、F-2:リボイラー
X-1:粗1,3-ブチレングリコール
X-2:水(排水)
X-3:塩、高沸点物、及び1,3-ブチレングリコールの一部
X-4:高沸点物及び1,3-ブチレングリコールの一部
X-5:苛性ソーダ、高沸点物、及び1,3-ブチレングリコールの一部
X-6:低沸点物及び1,3-ブチレングリコールの一部
Y:1,3-ブチレングリコール製品
図1
図2
図3
図4