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特開2025-14870中継装置、時刻同期方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014870
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】中継装置、時刻同期方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/46 20060101AFI20250123BHJP
   H04W 56/00 20090101ALI20250123BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H04L12/46 E
H04W56/00
H04L7/00 990
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117797
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕二郎
【テーマコード(参考)】
5K033
5K047
5K067
【Fターム(参考)】
5K033AA01
5K033CB15
5K033DB11
5K047AA03
5K047AA18
5K067AA21
5K067DD25
5K067DD30
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】効率的な通信を維持しつつ複数の通信機器の時刻同期を容易に行う。
【解決手段】中継装置102は、通信端末101および時刻サーバ105との間の通信を中継する。中継装置102は、第1通信部201と、第2通信部202と、判定部203と、抽出部204と、計時部205とを備え、判定部203が時刻サーバ105から送信されたIP通信フレームに時刻同期応答が含まれるか否かを判定し、IP通信フレームに時刻同期応答が含まれる場合には、第1通信部201および抽出部204に当該IP通信フレームを転送し、抽出部204はIP通信フレームが含む時刻同期応答から時刻データを抽出すると計時部205に当該抽出した時刻データを通知し、計時部205は当該抽出された時刻データに基づき計時部205が計時する時刻を時刻サーバ105により計時された時刻データの時刻に同期する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と、中継装置と、時刻サーバと、を備え、前記通信端末および前記時刻サーバは、前記中継装置を介して接続され、前記通信端末は、前記時刻サーバが送信する通信フレームに含まれる、前記時刻サーバにより計時された時刻データに基づいて時刻同期を行う通信システムにおける中継装置であって、
前記通信端末と通信を行う第1通信部と、
前記時刻サーバから前記通信フレームを受信する第2通信部と、
前記通信フレームから前記時刻データを抽出する抽出部と、
前記第2通信部が受信した前記通信フレームに時刻データが含まれるか否かを判定し、前記時刻データが含まれる場合には前記第1通信部および前記抽出部に前記通信フレームを転送する判定部と、
前記時刻データに基づいて時刻同期を行う計時部と、
を備える、
中継装置。
【請求項2】
前記時刻サーバが送信する通信フレームは、前記通信端末が前記時刻サーバ宛てに送信する、前記通信端末の時刻を合わせるための問い合わせである時刻同期要求に対する応答である
請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記通信システムは更に前記中継装置と前記時刻サーバの間に基地局装置を備え、
前記通信端末と、前記中継装置とは、IPアドレスを共有するものであって、
前記基地局装置は複数の通信機器間でのIPアドレスの共有を許可しない、
請求項1または2に記載の中継装置。
【請求項4】
更に前記判定部は、前記通信フレームに時刻データが含まれない場合には前記第1通信部のみに前記通信フレームを転送する、
請求項1または2に記載の中継装置。
【請求項5】
更に前記第2通信部は、前記通信フレームが受信側に到着したか否かを確認するための応答である受信確認応答が必要となる通信の場合であっても、当該通信フレームの受信確認応答を送信しない、
請求項1または2に記載の中継装置。
【請求項6】
通信端末と、中継装置と、時刻サーバと、を備え、前記通信端末および前記時刻サーバは、前記中継装置を介して接続され、前記通信端末は、前記時刻サーバが送信する通信フレームに含まれる、前記時刻サーバにより計時された時刻データに基づいて時刻同期を行う通信システムにおける中継装置の時刻同期方法であって、
前記通信フレームを受信する受信ステップと、
前記通信フレームに時刻データが含まれるか否かを判定する判定ステップと、
前記通信フレームに前記時刻データが含まれる場合に前記通信フレームから前記時刻データを抽出する抽出ステップと、
前記時刻データに基づいて時刻同期を行う時刻同期ステップと、
を含む、
時刻同期方法。
【請求項7】
請求項6に記載の時刻同期方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置、時刻同期方法、および、そのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信装置(通信端末)が中継装置(例えば、ブリッジ装置)を経由して時刻サーバから時刻データを取得して時刻同期を行う通信システムが知られている。このような通信システムの一例では、通信端末が時刻同期を行う際、中継装置が通信端末から送信された時刻データの取得要求を時刻サーバに送信する。時刻サーバは、当該取得要求を受信すると自装置が計時する時刻データを返信用フレームに含めて無線ネットワークに送信し、この返信用フレームが無線ネットワークおよび中継装置を経由して通信端末に受信される。その後通信端末が当該受信した返信用フレームに含まれる時刻データに基づいて自機に時刻を設定して、時刻サーバと時刻を同期する。特許文献1にはこのような同期処理を行うネットワークシステムの例が記載されている。このような通信システムでは、中継装置が自装置に時刻を計時する計時部を備える場合、中継装置も正しい時刻を計時するために時刻サーバが計時する時刻と、自装置の時刻とを同期することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-168811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような従来のネットワークシステムでは、一組のIPアドレスとMACアドレスとの組み合わせの通信端末のみに対して返信用フレームを送信する時刻サーバや、一組のIPアドレスとMACアドレスとの組み合わせの通信端末のみに対して通信を許可する基地局装置等を含む場合においては、取得要求を送信した通信端末しか返信用フレームを受信することができず、IPアドレスおよびMACアドレスを通信端末と共有し通信を中継している中継装置は時刻同期を行うことができない、という問題があった。このような通信システムでは、通信端末および中継装置の双方が時刻の同期を行いたい場合、時刻の同期を所望する通信機器それぞれが個別にIPアドレスを備えた上で取得要求を送信しなければならず、効率的に通信が行えないとの問題もある。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その主要な目的は、効率的な通信を維持しつつ、一組のIPアドレスとMACアドレスとの組み合わせの通信端末のみに対して返信用フレームを送信する時刻サーバを備える通信システムや、一組のIPアドレスとMACアドレスとの組み合わせの通信機器のみに対して通信が許可される基地局装置を備える通信システムにおいても、確実に時刻同期の処理を行うことができる中継装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る中継装置は、通信端末と、中継装置と、時刻サーバと、を備え、通信端末および時刻サーバは、中継装置を介して接続され、通信端末は、時刻サーバが送信する通信フレームに含まれる、時刻サーバにより計時された時刻データに基づいて時刻同期を行う通信システムにおける中継装置であって、通信端末と通信を行う第1通信部と、時刻サーバから通信フレームを受信する第2通信部と、通信フレームから時刻データを抽出する抽出部と、第2通信部が受信した通信フレームに時刻データが含まれるか否かを判定し、時刻データが含まれる場合には第1通信部および抽出部に通信フレームを転送する判定部と、時刻データに基づいて時刻同期を行う計時部と、を備える。
【0007】
これによれば、中継装置は、時刻サーバが送信する通信端末宛の通信フレームを受信し当該通信フレームに格納された時刻データを抽出すると共に、当該通信フレームを通信端末に送信する。これにより、1つの通信フレームで中継装置および通信端末それぞれが時刻同期を行うことができ、通信を効率化しつつ時刻同期を行いたい中継装置においても容易に時刻同期ができる。
【0008】
また、上記通信システムにおいて、時刻サーバが送信する通信フレームは、通信端末が時刻サーバ宛てに送信する、通信端末の時刻を合わせるための問い合わせである時刻同期要求に対する応答である。
【0009】
これによれば、中継装置は、通信端末が時刻サーバ宛に送信した時刻同期要求を中継し、当該時刻同期要求に対する応答として時刻サーバが応答する通信フレームを受信し、当該通信フレームを通信端末に送信するだけでなく、当該通信フレームに格納された時刻同期応答に含まれる時刻データを抽出する。これにより、通信端末が送信した1つの時刻同期要求に基づいて、中継装置および通信端末それぞれが時刻同期を行うことができ、通信を効率化しつつ時刻同期を行いたい中継装置においても容易に時刻同期ができる。
【0010】
また、上記通信システムは更に中継装置と時刻サーバの間に基地局装置を備え、通信端末と、中継装置とは、IPアドレスを共有するものであって、基地局装置は複数の通信機器間でのIPアドレスの共有を許可しない構成としてもよい。
【0011】
これによれば、IPアドレスの共有を許可しない基地局装置は、複数の通信機器のそれぞれと、各通信機器が個別に備える1つのMACアドレスに対してただ1つのIPアドレスが紐づけられた通信のみを行うところ、本発明の中継装置は端末装置のみに向けられた通信フレームから時刻データを抽出する。これにより、中継装置は、通信システムにおけるセキュリティを保ちながら、通信端末が送信した1つの時刻同期要求に基づいて、中継装置および通信端末それぞれが時刻同期を行うことができ、中継装置は時刻同期に係る通信を更に効率化することができる。
【0012】
また、上記中継装置が備える判定部は、通信フレームに時刻データが含まれない場合には第1通信部のみに通信フレームを転送する構成としてもよい。
【0013】
これによれば、中継装置は、通信フレームに時刻データが含まれない場合においても通信端末に通信フレームを送信でき、通常の通信に影響を及ぼさない。
【0014】
更に上記中継装置が備える第2通信部は、通信フレームが受信側に到着したか否かを確認するための応答である受信確認応答が必要となる通信の場合であっても、当該通信フレームの受信確認応答を送信しない構成としてもよい。
【0015】
これによれば、中継装置は、時刻サーバと通信端末との間の通信を変更することなく、本来時刻サーバが通信端末に宛てて送信した時刻同期応答に含まれた時刻データを用いて自装置の時刻を時刻サーバに同期することができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る時刻同期方法は、通信端末と、中継装置と、時刻サーバと、を備え、通信端末および時刻サーバは、中継装置を介して接続され、通信端末は、時刻サーバが送信する通信フレームに含まれる、時刻サーバにより計時された時刻データに基づいて、時刻同期を行う通信システムにおける中継装置の時刻同期方法であって、通信フレームを受信する受信ステップと、通信フレームに時刻データが含まれるか否かを判定する判定ステップと、通信フレームに時刻データが含まれる場合に通信フレームから時刻データを抽出する抽出ステップと、時刻データに基づいて時刻同期を行う時刻同期ステップと、を含む。
【0017】
これによれば、上記中継装置と同様の効果を奏する。
【0018】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、上記時刻同期方法をコンピュータに実行させる構成としてもよい。
【0019】
これによれば、上記中継装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、効率的な通信を維持しつつ、複数の通信機器の時刻同期を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る通信システムの概要を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る中継装置の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る、時刻同期応答を含むIP通信フレームの一例を示す。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る中継装置が通信端末からの時刻同期要求の受信に際して行う一連の処理例を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおいて、通信端末および中継装置が時刻同期を完了するまでの処理例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
[実施の形態]
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る通信システムの概要を示す模式図である。
図1に示されるように、通信システム100は、通信端末101、中継装置102、基地局装置104、および、時刻サーバ105を備える。通信システム100は、例えばユーザが使用する通信端末101が、中継装置102および無線リンク103を経由し、基地局装置104に接続された時刻サーバ105等にアクセスするネットワークシステム等である。
中継装置102および基地局装置104は、無線リンク103により無線通信可能に接続されている。また、通信端末101および中継装置102は、通信リンク106により有線通信または無線通信可能に接続されている。また、基地局装置104および時刻サーバ105は、通信リンク107により有線通信可能に接続されている。
【0024】
通信端末101は例えば、PC(Personal Computer)や、タブレット型コンピュータにより実現され、ユーザが通信システム100にアクセスする際に使用される。通信端末101は、計時部(図示せず)を備え、自装置内部で利用するための時刻を計時している。また、通信端末101は、時刻サーバ105と通信を行って、自装置の時刻を同期させる。なお、通信端末101は、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3等の通信規格に準拠した有線通信インタフェースを備えてもよいし、IEEE802.11ah等の通信規格に準拠した無線通信を行う無線インタフェースを備えてもよい。
【0025】
中継装置102は、異なる通信リンク間の通信を中継する通信機器である。中継装置102は、IEEE802.3またはIEEE802.11ah等の通信規格に準拠する通信リンク106に接続され、また、IEEE802.11ac等の通信規格に準拠する無線リンク103に接続される。中継装置102は、各インタフェース間で適切に通信を中継するために、それぞれのインタフェースが通信可能なプロトコルに適宜通信データを変換しながら通信データの送受信を行い、それぞれ異なる通信インタフェース間の通信を中継する。なお、中継装置102および通信端末101は、IPアドレスおよびMACアドレスを共有する構成であり、無線リンク103側に接続される基地局装置104や、時刻サーバ105等からは1つの通信機器として見える。
【0026】
無線リンク103は、中継装置102と、基地局装置104との間における通信経路である。無線リンク103は、例えばIEEE802.11ac等の通信規格に準拠する無線通信により実現される。
【0027】
基地局装置104は、中継装置102と、時刻サーバ105との間の通信を中継する。基地局装置104は、無線インタフェースおよび有線インタフェースを備え、無線リンク103を介して、中継装置102との間で通信データの送受信を行い、通信リンク107を介して時刻サーバ105との間でデータの送受信を行う。なお、本実施の形態では基地局装置104に1台の中継装置102が接続されている態様としているがこれに限定されず、基地局装置104に複数の中継装置102等の通信機器が接続される態様としてもよい。また、基地局装置104は、自装置にそれぞれ無線リンク103を介して接続され得る複数の通信機器に対しては、各通信機器が個別に備える1つのMACアドレスにただ1つのIPアドレスが紐づけられた通信のみを許可する設定(つまり、複数の通信機器間でのIPアドレスの共有を許可しない)で動作する態様も考え得る。これにより、基地局装置104は、未知の通信機器からの通信を排除することができ、通信システム100における通信のセキュリティを保つことができる。
【0028】
時刻サーバ105は、例えばNTP(Network Time Protocol)サーバ等、標準時間を含む時刻情報(時刻データ)を配信するサーバである。時刻サーバ105は、計時部(図示せず)を備え、他装置に配信するための時刻を計時している。時刻サーバ105は、ネットワークに接続している装置(例えば通信端末101)が自装置の時刻を合わせるための問い合わせである取得要求(時刻同期要求)に対し、当該取得要求に対する応答である返信用フレーム(時刻同期応答)に時刻データを含めて提供する。なお、時刻データは、NTP等に準拠して提供されてもよいし、通信端末101と時刻サーバ105との間で予め独自に定められるプロトコル等により提供されてもよい。また、本実施の形態における時刻サーバ105は、通信リンク107を用いて基地局装置104と有線通信で接続されているが、これに限定されず、無線インタフェースを備える事により、無線リンク103を用いて基地局装置104に接続されてもよい。
【0029】
通信リンク106は、通信端末101と、中継装置102との間における通信経路である。通信リンク106は、例えばIEEE802.3等の通信規格に準拠する有線通信や、IEEE802.11ah等の通信規格に準拠し、無線リンク103とは異なる周波数帯域(例えば920MHz帯等)を用いる無線通信等により実現されてもよい。
【0030】
通信リンク107は、基地局装置104と、時刻サーバ105との間における通信経路である。通信リンク107は、例えばIEEE802.3等の通信規格に準拠する有線通信により実現される。
【0031】
図2は、本発明の実施の形態に係る中継装置102の機能構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、中継装置102は、第1通信部201と、第2通信部202と、判定部203と、抽出部204と、計時部205とを備える。中継装置102における上記各機能は、中継装置102が備えるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置(例えば、ROM(Read Only Memory)、eMMC(Embedded Multimedia Card)、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置)、および通信モジュール等のハードウェアを利用し実現される。具体的には、これらの各機能は、記憶装置等に格納されたプログラムをCPUが読み出して、前述のハードウェアと協調しつつ実行することにより実現される。また、第1通信部201と第2通信部202との間で行われるIP通信フレーム300(後述する)の送受信は、それぞれの通信部が処理可能な通信プロトコルによる通信パケット等の種別や通信フレームの構造等に応じて適宜変換し行われる。
【0032】
第1通信部201は、有線インタフェースまたは無線インタフェースを備える通信モジュール等のハードウェアおよび通信プログラムにより実現される。第1通信部201は、IEEE802.3等の有線通信規格またはIEEE802.11ah等の無線通信規格に準拠した通信により、通信端末101との間でIP通信フレーム等のデータの送受信を行う。また、第1通信部201は、時刻同期要求を通信端末101から受信すると、第2通信部202に当該時刻同期要求を転送する。
【0033】
第2通信部202は、無線インタフェースを備える通信モジュール等および通信プログラムにより実現される。第2通信部202は、IEEE802.11ac等の無線通信規格に準拠した通信により、無線リンク103を介して中継装置102と、基地局装置104との間のIP通信フレーム等のデータの送受信を行い、時刻サーバ105からのIP通信フレーム300を受信することができる。また、第2通信部202は、時刻同期要求を第1通信部201から受信すると、無線リンク103を介して時刻サーバ105宛に送信する。第2通信部202は、無線リンク103を介して時刻サーバ105から送信されるIP通信フレーム300を受信したか否かを判定する。
【0034】
判定部203は、第2通信部202が受信したIP通信フレーム300に時刻同期応答が含まれるか否かを判定する。具体的には判定部203は、IP通信フレーム300のデータフィールドに格納されているデータが時刻同期応答であることを示す識別子(例えばIPヘッダに含まれる通信ポート番号やデータフィールドに含まれるプロトコルバージョン情報等)を読み取り、データが時刻同期応答であるか否かを判定する。判定部203は、IP通信フレーム300に時刻同期応答が含まれていると判定した場合は当該IP通信フレーム300を抽出部204および第1通信部201に転送する。一方で、判定部203は、IP通信フレーム300に時刻同期応答が含まれていないと判定した場合は当該IP通信フレーム300を第1通信部201のみに転送する。
【0035】
抽出部204は、判定部203から転送されたIP通信フレーム300を受信すると、当該IP通信フレーム300に含まれる時刻同期応答から時刻データを抽出する。具体的には、抽出部204は時刻同期応答の時刻データを参照すると、RAM上等に設けられた一時記憶領域(例えば通信インタフェースに割り当てられたバッファや、OS(Operating System)等のプログラムにより割り当てられた特定の記憶領域等)に当該時刻データを抽出する。抽出部204は、当該抽出した時刻データを計時部205に転送する。
【0036】
計時部205は、時刻を計時する。また、計時部205は、抽出部204から時刻データを受信すると当該受信した時刻データに基づき、計時部205が現在計時している時刻を修正または設定する。計時部205は、例えばRTC(Real Time Clock)等により実現され、時刻設定プログラム等を介して時刻情報を修正または設定する。
【0037】
図3は、一例として、本発明の実施の形態に係る時刻サーバ105から通信端末101に向けて送信されるIP通信フレーム300に時刻同期応答が含まれる例を示す。
図3に示されるように、IP通信フレーム300は、IPヘッダ301と、データフィールド302と、時刻同期応答303とを備える。
【0038】
IPヘッダ301は、IP通信フレーム300の通信に係る情報を格納する。IPヘッダ301が格納する情報は、例えばIP通信フレーム300の送信元の時刻サーバ105のIPアドレス、IP通信フレーム300の宛先の通信端末101のIPアドレス、および、IP通信フレーム300全体のサイズ等である。
【0039】
データフィールド302は、アプリケーション等の上位の処理レイヤが使用するデータ等を格納する。例えば、HTTP(Hyper Text Transport Protocol)に準拠し、WEBブラウザにWEBページを表示するための指令を記述した文字列データや、電子メールの送受信に用いられるSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)に準拠した文字列データや、バイナリデータ等が格納される。また、データフィールド302は、時刻同期応答303を含んでもよい。
【0040】
時刻同期応答303は、通信端末101が送信した時刻同期要求に対する応答である。時刻同期応答303は、時刻サーバ105により計時された時刻データを含む。中継装置102および通信端末101は、本明細書に記載する方法で、当該時刻同期応答303に含まれる時刻サーバ105が計時する時刻データに基づいて、中継装置102が備える計時部205、および、通信端末101が備える計時部(図示しない)それぞれが計時する時刻を修正、または、設定する。なお、時刻同期応答303はNTP等の標準的なプロトコルに準拠してもよいし、アプリケーション等が独自に定める応答の形式としてもよい。さらにIP通信に準拠したフレーム内に搭載されている必要もなく、適切な形式のフレームに搭載されていればよい。
【0041】
[実施の形態に係るフローの説明]
図4は、本発明の実施の形態に係る中継装置102が通信端末101からの時刻同期要求の受信に際して行う一連の処理例を示すフローチャートである。中継装置102の時刻同期に係る処理は、通信端末101から時刻同期要求を受信したことを契機に実行される。
【0042】
ステップS401は、第1通信部201が時刻同期要求を通信端末101から受信するステップである。第1通信部201は、時刻同期要求を受信すると、第2通信部202に当該時刻同期要求を転送する。
【0043】
ステップS402は、第2通信部202が無線リンク103を介してステップS401にて受信した時刻同期要求を時刻サーバ105に向けて送信するステップである。
【0044】
ステップS403は、第2通信部202が無線リンク103を介して時刻サーバ105から送信されるIP通信フレーム300を受信したか否かを判定するステップである。第2通信部202は、IP通信フレーム300を受信した場合には、当該受信したIP通信フレーム300を判定部203に転送する(ステップS403のYes)。一方、IP通信フレーム300を受信していない場合には、ステップS403を繰り返し実行する(ステップS403のNo)。
【0045】
ステップS404は、判定部203が、IP通信フレーム300に時刻同期応答303が含まれているか否かを判定するステップである。判定部203は、第2通信部202から転送されたIP通信フレーム300のデータフィールド302に時刻同期応答303が含まれている場合には、IP通信フレーム300を抽出部204に転送しステップS405が実行される(ステップS404のYes)。一方、データフィールド302に時刻同期応答303が含まれていない場合には、ステップS406を実行する(ステップS404のNo)。
【0046】
ステップS405は、抽出部204がステップS404にて判定部203から転送されたIP通信フレーム300に含まれた時刻同期応答303から時刻データを抽出して計時部205に通知し、計時部205が当該通知された時刻データに基づいて時刻同期を行うステップである。具体的には、例えば計時部205は、現在計時中の時刻を当該通知された時刻データに基づいて修正することで、時刻サーバ105と時刻同期する。
【0047】
ステップS406は、IP通信フレーム300を第1通信部201に転送するステップである。具体的には、判定部203はIP通信フレーム300のデータフィールド302に時刻同期応答303が含まれているか否かに関わらず、当該IP通信フレーム300を第1通信部201に転送する。
【0048】
ステップS407は、第1通信部201がステップS406にて転送されたIP通信フレーム300を通信端末101に送信するステップである。
【0049】
この後、通信端末101は、通信プロトコルに応じて、当該送信されたIP通信フレーム300を受信すると、受信が完了した旨の通知である受信確認応答(例えばTCP通信におけるAck(Acknowledgement)フレーム等)を中継装置102に送信する態様としてもよい。この場合、中継装置102は、通信端末101から受信した当該受信確認応答を、無線リンク103を介してIP通信フレーム300の送信元である時刻サーバ105に送信してもよい。
【0050】
その後通信端末101は、受信したIP通信フレーム300に基づいて、自装置の時刻を時刻サーバ105の時刻に同期させる。
【0051】
[シーケンスの説明]
図5は、本発明の実施の形態に係る通信システム100において、通信端末101および中継装置102が時刻同期を完了するまでの処理例を示すシーケンス図である。なお、図5のシーケンス図は、中継装置102が受信するIP通信フレーム300に時刻同期応答303が含まれていることを前提として説明する。
【0052】
先ず、ユーザは、通信端末101を用いて時刻同期要求を、中継装置102を中継して時刻サーバ105に送信する(ステップS501)。通信端末101が送信した時刻同期要求は中継装置102により受信され、無線リンク103および基地局装置104を経由して時刻サーバ105に送信される。
【0053】
次に、時刻サーバ105はステップS501にて送信された時刻同期要求を受信する(ステップS502)。
【0054】
続いて、時刻サーバ105は、ステップS502にて受信した時刻同期要求に対し、自装置が備える計時部(図示しない)が計時する時刻データを含めた時刻同期応答303を通信端末101宛に送信する(ステップS503)。なお、時刻同期応答303はIP通信フレーム300に格納されて通信端末101宛に送信される。
【0055】
次に、中継装置102は、基地局装置104を経由して時刻同期応答303を含むIP通信フレーム300を受信する。(ステップS504)。中継装置102が備える判定部203は、当該受信したIP通信フレーム300に時刻同期応答303が含まれることを確認すると、IP通信フレーム300を抽出部204に転送する。
【0056】
続いて、中継装置102が備える抽出部204は、ステップS504にて転送されたIP通信フレーム300から、時刻同期応答303に含まれる、時刻サーバ105により計時された時刻データを抽出し、計時部205に当該時刻データを転送する(ステップS505)。
【0057】
続いて、中継装置102が備える計時部205は、抽出部204から転送された時刻データに基づいて時刻同期の処理を行う(ステップS506)。なお、ステップS506にて、中継装置102は、当該受信したIP通信フレーム300が受信側に到着したか否かを確認するための応答(受信確認応答)が必要となる通信(例えば、TCPプロトコルを用いる通信など)の場合であっても、中継装置102が受信したIP通信フレーム300の受信確認応答を第2通信部202から送信しない。これにより、時刻サーバ105と通信端末101との間の通信を変更することなく、中継装置102は、本来時刻サーバ105が通信端末101に宛てて送信した時刻同期応答303に含まれた時刻データを用いて自装置の時刻を時刻サーバ105に同期することができる。
【0058】
次に、中継装置102が備える判定部203は、ステップS504で受信した、時刻同期応答303を含むIP通信フレーム300を第1通信部201に転送する。そして、第1通信部201は、通信リンク106を介して通信端末101に送信する(ステップS507)。なお、当該ステップS507は、ステップS504の直後でも良い。
【0059】
続いて、通信端末101は、中継装置102から時刻同期応答303を含むIP通信フレーム300を受信する。この際、時刻サーバ105に対して時刻同期に係る受信確認の応答が必要とされる場合(例えば、TCPプロトコルなど)には、受信が完了した旨の受信確認の通知(受信確認応答)を時刻サーバ105に宛てて送信する(ステップS508)。当該受信確認応答は、通信端末101から中継装置102および基地局装置104を経由して時刻サーバ105に送信される。
【0060】
次に、時刻サーバ105は、受信確認応答を受信することで、通信端末101が時刻同期応答303を受信できたこと(送信が完了したこと)を検知する(ステップS509)。
【0061】
最後に、通信端末101は、IP通信フレーム300から時刻同期応答303を抽出し、当該時刻同期応答303に含まれる時刻データに基づいて自装置(通信端末101)の時刻同期の処理を行い、一連の時刻同期処理が完了する(ステップS510)。
【0062】
このようにして、中継装置102は、通信端末101が時刻サーバ105宛に送信した時刻同期要求を中継し、当該時刻同期要求に対する応答として時刻サーバ105が応答するIP通信フレーム300を受信し当該IP通信フレーム300に格納された時刻同期応答303に含まれる時刻データを抽出すると共に、当該IP通信フレーム300を通信端末101に送信する。これにより、通信端末101が送信した1つの時刻同期要求に基づいて、中継装置102および通信端末101それぞれが時刻同期を行うことができ、通信を効率化しつつ時刻同期を行いたい中継装置102においても容易に時刻同期ができる。
【0063】
なお、本発明は、装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記憶媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データおよび信号は、インタネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、有線ネットワークや無線ネットワークと、前述の無線ネットワークとは異なる周波数帯を用いる無線ネットワークとの間の通信を中継する中継装置等に適用され得る。
【符号の説明】
【0065】
100 通信システム
101 通信端末
102 中継装置
103 無線リンク
104 基地局装置
105 時刻サーバ
106、107 通信リンク
201 第1通信部
202 第2通信部
203 判定部
204 抽出部
205 計時部
300 IP通信フレーム
301 IPヘッダ
302 データフィールド
303 時刻同期応答
図1
図2
図3
図4
図5