(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014872
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】発熱/発電併用システム
(51)【国際特許分類】
F03D 9/22 20160101AFI20250123BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20250123BHJP
F03D 9/25 20160101ALI20250123BHJP
F01D 15/00 20060101ALI20250123BHJP
F16H 41/02 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F03D9/22
H02K7/18 A
F03D9/25
F01D15/00
F16H41/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117799
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(71)【出願人】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人北海道国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】松村 昌典
【テーマコード(参考)】
3H178
5H607
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA42
3H178AA43
3H178BB73
3H178DD12Z
3H178DD15Z
5H607BB02
5H607CC05
5H607FF26
(57)【要約】
【課題】回転エネルギーを熱エネルギーと電気エネルギーとに変換する、構造簡単なシステムを提供する。
【解決手段】
動力源5に接続されて回転する環状のポンプ7、該ポンプ7と対向して配置される環状のタービン8、並びにポンプ7およびタービン8間に配置される環状のステータ9を有し、ポンプ7の回転によりポンプ7、タービン8、ステータ9間で作動流体10を循環させて発熱させる流体式発熱器3と、該流体式発熱器3のタービン8に接続される回転子4aを有して流体式発熱器3に直列に接続される発電機4と、回転子4aを囲む発電機4の固定子4bを内部に保持するようにして流体式発熱器3および発電機4を収納するケース2とを備え、タービン8および回転子4aとケース2とを、任意に相対回転可能もしくは相対回転不能に切り替え得るブレーキ機構19を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源に接続されて回転する環状のポンプ、前記ポンプと対向して配置される環状のタービン、並びに前記ポンプおよび前記タービン間に配置される環状のステータを有し、前記ポンプの回転により前記ポンプ、前記タービン、前記ステータ間で作動流体を循環させて発熱させる流体式発熱器と、
前記流体式発熱器の前記タービンに接続される回転子を有して前記流体式発熱器に直列に接続される発電機と、
前記回転子を囲む前記発電機の固定子を内部に保持するようにして前記流体式発熱器および前記発電機を収納するケースと、を備える発熱/発電併用システムであって、
前記タービンおよび前記回転子と、前記ケースとを、任意に相対回転可能もしくは相対回転不能に切り替え得るブレーキ機構を有することを特徴とする発熱/発電併用システム。
【請求項2】
前記流体式発熱器は、前記ポンプと前記タービンとを、機械的に連結または連結解除できるクラッチを有することを特徴とする請求項1に記載の発熱/発電併用システム。
【請求項3】
前記流体式発熱器の前記ステータは、前記タービンまたは前記ケースに脱着可能または交換可能に固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発熱/発電併用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源に接続されて回転する環状のポンプ、前記ポンプと対向して配置される環状のタービン、並びに前記タービンに脱着可能に固定されて前記ポンプおよび前記タービン間に配置される環状のステータを有し、前記ポンプの回転により前記ポンプ、前記タービン、前記ステータ間で作動流体を循環させて発熱させる流体式発熱器と、前記流体式発熱器の前記タービンに接続される回転子を有して、前記流体式発熱器に直列に接続される発電機とを備える発熱/発電併用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
動力源である風車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電モードと、風車の回転エネルギーを熱エネルギーに変換して蓄熱器に蓄熱した後、熱発電により電気エネルギーに変換する発熱モードとを、電力供給や風の状況に応じて切り換える発熱/発電併用システムが、特許文献1に記載されているように公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたものは、風車の回転軸に誘導回転機を連結し、電力需要がピークで且つ風を受けて風車が回転している場合は、誘導回転機を通常の発電機として動作させる一方、電力需要がオフピークで且つ風を受けて風車が回転している場合は、誘導回転機に接続した電力変換装置から誘導回転機に回転を妨げる負荷トルクを与え、それにより誘導回転機を発熱機として動作させて、発生した熱を熱媒体流通機構を通じて蓄熱器に蓄え、電力需要がピークでも風車が回転していない場合には、蓄熱器に蓄えられた熱を利用して熱発電機で発電するように構成されている。
【0005】
しかしながらこのものは、誘導回転機や電力変換装置や熱発電機を使用しなければならないので、構造が複雑・大型化して高価となってしまうと共に、誘導回転機を発熱機として動作させる場合には、誘導回転機に回転を妨げるための電流を与え続けなければならないので、電力の無駄も多いものであった。
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、コンパクトな構造で発熱/発電ができて装置全体を軽量・低廉化できると共に、特に動力源が風車である場合には、それを常時高効率で運転できる発熱/発電併用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、動力源に接続されて回転する環状のポンプ、前記ポンプと対向して配置される環状のタービン、並びに前記ポンプおよび前記タービン間に配置される環状のステータを有し、前記ポンプの回転により前記ポンプ、前記タービン、前記ステータ間で作動流体を循環させて発熱させる流体式発熱器と、前記流体式発熱器の前記タービンに接続される回転子を有して前記流体式発熱器に直列に接続される発電機と、前記回転子を囲む前記発電機の固定子を内部に保持するようにして前記流体式発熱器および前記発電機を収納するケースと、を備える発熱/発電併用システムであって、前記タービンおよび前記回転子と、前記ケースとを、任意に相対回転可能もしくは相対回転不能に切り替え得るブレーキ機構を有することを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記流体式発熱器は、前記ポンプと前記タービンとを、機械的に接続または接続解除できるクラッチを有することを第2の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記流体式発熱器の前記ステータは、前記タービンまたは前記ケースに脱着可能または交換可能に固定されることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば、動力源に接続される環状のポンプ、ポンプと対向して配置される環状のタービン、ポンプおよびタービン間に配置される環状のステータを有する流体式発熱器と、その流体式発熱器のタービンに接続される回転子を有する発電機とが直列に接続され、それら流体式発熱器と発電機とが、回転子を囲む発電機の固定子を内部に保持するケース内に収納されるので、動力源の回転動力を熱エネルギーや電気エネルギーに変換する機構をコンパクトに纏めることができる。
【0011】
しかも、タービンおよび回転子とケースとを、ブレーキ機構により、相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とに任意に切り替えることができるので、ブレーキ機構を作動させてタービンおよび回転子をケースに固定し、流体式発熱器のポンプだけを回転させることで、該ポンプとタービンおよびステータとの間で循環する作動流体を発熱させる発熱モードと、ブレーキ機構を解放してポンプとタービンおよび回転子とを共に回転させ、流体式発熱器を循環する作動流体による発熱と、回転子の回転による発電機の発電とを併用する発熱/発電モードとを、簡単に切り替えることができる。
【0012】
また、発熱器を風車に接続する場合には、風車のパワー係数が最大となる周速比(風車翼の先端速度と風速との比)を得られるように、発熱器のポンプ容量を調整することで、風車効率を最大化できるのであるが、本発明の流体式発熱器は、入力トルクが回転数の二乗に比例する流体継手構造を有するので、発熱器の動力伝達軸に接続される風車の出力トルクを、常に風車の回転数の二乗に比例させることができる。そのため、一旦流体式発熱器のポンプ容量を風車のパワー係数が最大となる周速比を得るように調整してしまえば、風速が変化してもパワー係数が常時最大となるような周速比を得ることができるため、風車に対して特別な制御を行うことなく、風車を常に最大の効率で運転することができる。
【0013】
また本発明の第2の特徴によれば、前記ブレーキ機構に加えて、流体式発熱器はポンプとタービンとを機械的に連結または連結解除できるクラッチを有するので、本発明の流体式発熱器を発熱器として使用しない場合には、ブレーキ機構を解放した状態で前記クラッチを作動させることでポンプおよびタービンを機械的に連結し、動力源の回転動力をポンプに連結されたタービンから発電機の回転子にそのまま伝えることができる。この場合には、流体式発熱器をロックアップ機構付きのトルクコンバータとして機能させることができるため、動力源の回転の当初は、回転を開始させるために必要なトルクを小さく抑えつつ、動力源の回転の定常状態では、ポンプ、タービン間の動力の伝達ロスをなくすことができる。
【0014】
また本発明の第3の特徴によれば、流体式発熱器のステータが、タービンまたはケースに脱着または交換可能に固定されるので、様々な風車の特性に合わせた流体式発熱器のポンプ容量の変更が、ステータの変更だけで可能となって、パワー係数を最大にできる周速比がそれぞれに異なる多種多様な風車に適合可能な発熱/発電併用システムを、ポンプおよびタービンの翼形状を変更することなく簡単に構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態の発熱/発電併用システムを垂直軸型風車に適用したときの構成を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態の発熱/発電併用システムを垂直軸型風車に適用したときの構成を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1,第2実施形態を、添付図面に基づいて以下に説明する。
【0017】
図1に示すように、第1実施形態の発熱/発電併用システム1は、各々ケース2内に配置される流体式発熱器3と発電機4とを有している。流体式発熱器3は、動力源である垂直軸型の風車5に動力伝達軸6を介して接続される環状のポンプ7と、該ポンプ7と対向して配置される環状のタービン8と、前記ポンプ7および前記タービン8間に配置される環状のステータ9とを有しており、前記タービン8を構成する上半部と、該タービン8の外周から下方に延びて前記ポンプ7全体を外方から覆う下半部とで密閉された空間を構成し、前記風車5の回転動力を受ける前記ポンプ7の回転により、当該流体式発熱器3内に充填された作動流体としてのオイル10を、前記ポンプ7と前記タービン8および前記ステータ9間の螺旋状通路3aで循環させて発熱させる。なお、作動流体としては例えば水等の他の流体を用いることも可能である。
【0018】
前記動力伝達軸6は、前記風車5から重力方向に下方に延びて、前記ケース2上面の貫通孔2aから前記ケース2内に挿通され、前記流体式発熱器3の前記タービン8の中心軸8aと前記ステータ9の中心軸9aとをそれぞれ貫通して、前記ケース2内で前記発電機4の上面に載置された前記流体式発熱器3の前記ポンプ7に結合される。
【0019】
前記タービン8の中心軸8aは、当該タービン8のハブを構成するようにして、前記ステータ9の中心軸9aを相対回転可能に囲んでおり、前記ステータ9の中心軸9aは、その一端部9a1を前記ケース2の前記貫通孔2aの周縁部にボルト2a1等で脱着可能に固定されている。前記ステータ9の中心軸9aの他端部9a2は、ワンウエイクラッチ9bを介して前記ステータ9のハブ9cに連結されており、前記動力伝達軸6は前記ステータ9の中心軸9aの内側に相対回転可能に保持されている。
【0020】
前記ワンウエイクラッチ9bは、通常のトルクコンバータのステータハブのワンウエイクラッチと同様に、風車5の特定の速度域まではステータ9を回動不能にケース2に固定し、特定の速度域に達するとステータ9を空回りさせるためのものであり、これにより風車5の回転の当初にトルクを増幅して回転開始時に必要とされるトルクを小さく抑えことができるが、このようなワンウエイクラッチ9bが必要とされない場合には、これを省略することもできる。また第1実施形態では、ステータ9をケース2に取り付けるようにしているが、これをワンウエイクラッチを介さずにタービン8のハブである中心軸8aに脱着可能に取り付けることも可能である。
【0021】
前記流体式発熱器3の内部には、前記流体式発熱器3内のオイル10を外部の蓄熱部11との間で循環させる循環配管12が接続されており、前記循環配管12の途中には循環ポンプ13が介在する。前記蓄熱部11は、前記流体式発熱器3内で発生した熱を貯蔵するためのものであり、蓄えた熱を必要とされる箇所に適宜放出する。
【0022】
前記発電機4は、前記流体式発熱器3の前記タービン8に接続される回転子4aと、その回転子4aを囲む固定子4bとを有しており、前記回転子4aは前記動力伝達軸6と同一軸線上に配置されるとともに、前記固定子4bは前記回転子4aを同軸に囲む固定手段2bによって、前記ケース2の内部に保持されている。前記発電機4の固定子4bには発電された電力を外部に送出する配線14が接続されており、前記配線14からは、電力を必要に応じて蓄電部15に接続する配線16が分岐している。これらケース2や蓄電部15と、前述した蓄熱部11とは、建屋の床17や屋根、地面等に固定的に配置される。
【0023】
前記発電機4を前記タービン8に接続するために、前記発電機4の回転子4aの上面には、前記回転子4aと同軸の円盤18が固定されるとともに、前記流体式発熱器3の下半部の下面には、前記円盤18に固定される固定部3cが形成される。そして前記円盤18の周囲には、前記円盤18の周面を上下から挟むブレーキパッド19aを備えて前記ケース2に固定されるブレーキ機構19が配置される。
【0024】
前記ブレーキ機構19は、前記タービン8および前記回転子4aと前記ケース2とを、相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とに任意に切り替えることができるものであり、前記ブレーキ機構19を作動させて前記円盤18の周面をブレーキパッド19aで上下から挟むことで、前記タービン8および前記回転子4aを前記ケース2に固定でき、ブレーキ機構19の作動を解除して前記円盤18の周面をブレーキパッド19aから離間させることで、前記タービン8および前記回転子4aと前記ケース2との固定を解除することができる。
【0025】
これにより、前記ブレーキ機構19を作動させて、前記タービン8および前記回転子4aを前記ケース2に固定してやれば、前記流体式発熱器3のポンプ7だけを回転させることができるので、前記ポンプ7と前記タービン8および前記ステータ9との間で循環するオイル10を効果的に発熱させる発熱モードを得ることができる。また、前記ブレーキ機構19を解放して前記ポンプ7と前記タービン8および前記回転子4aとを共に回転させてやれば、前記流体式発熱器3を循環するオイル10による発熱と、前記回転子4aの回転による前記発電機4の発電とを併用する発熱/発電モードを得ることができ、これら両モードは前記ブレーキ機構19の操作だけで簡単に切り替えることができる。
【0026】
次に、上記構成を備えた本発明の第1実施形態の作用を説明する。
【0027】
本実施形態では、動力源である風車5に動力伝達軸6で接続される環状のポンプ7、ポンプ7と対向して配置される環状のタービン8、ポンプ7およびタービン8間に配置される環状のステータ9を有する流体式発熱器3と、その流体式発熱器3のタービン8に接続される回転子4aを有する発電機4とが直列に接続され、それら流体式発熱器3と発電機4とが、回転子4aを囲む発電機4の固定子4bを内部に保持するケース2内に収納されるので、動力源である風車5の回転動力を熱エネルギーや電気エネルギーに変換する機構をコンパクトに纏めることができる。
【0028】
また、タービン8および回転子4aとケース2とを、ブレーキ機構19により、相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とに任意に切り替えることができるので、ブレーキ機構19を作動させてタービン8および回転子4aをケース2に固定し、流体式発熱器3のポンプ7だけを回転させることで、該ポンプ7とタービン8およびステータ9との間で循環するオイル10を発熱させる発熱モードと、ブレーキ機構19を解放してポンプ7とタービン8および回転子4aを共に回転させ、流体式発熱器3を循環するオイル10による発熱と、回転子4aの回転による発電機4の発電とを併用する発熱/発電モードとを、簡単に切り替えることができる。
【0029】
なお本実施形態のように、風のエネルギーを風車5によって機械的動力に変換する際は、その変換効率であるパワー係数Cpを最大にすることが望ましい。風車5のパワー係数Cpは、風車翼の先端速度Vrと風速Vとの比(Vr/V)である周速比λに対応して放物線状に変化するので、その変化の途中にパワー係数Cpを最大とする周速比λが存在する。しかしながら、従来の風車では風速Vが変わると風車回転数Nが変化し、それにより周速比λが変化してしまうため、特定の風速Vにおいてパワー係数Cpを最大とする周速比λが得られても、風速Vが変化するとパワー係数Cpを最大とする周速比λが得られなかった。
【0030】
しかしながら本実施形態では、風車5の回転エネルギーを流体継手を用いた流体式発熱器3で熱エネルギーに変換しているので、風速Vが変化してもパワー係数Cpを常に最大とする周速比λを得ることができ、風車に対して特別な制御を行うことなく、風車を常に最大の効率で運転することができる。その理由を以下に説明する。
【0031】
風車の出力Eは、パワー係数をCp、空気密度をρ、翼の受圧面積をA、Vを風速としたときに、
E=Cp×(1/2)×ρ×A×V3 ・・・・・(1)
で表すことができる。
ここで、dを回転翼の直径、λを周速比、Vrを風車翼の先端速度、Nを風車の回転数とすると、
V=Vr/λ
Vr=πdN/60
であることから、
V=πdN/60λ
と表すことができるから、(1)式は、
E=Cp×(1/2)×ρ×A×(πdN/60λ)3・・・・・・(2)
と変形できる。ここで更に、風車の出力トルクをTとすると、出力トルクTは、
T=60E/2πN・・・・・(3)
と表せるから、(2)式と(3)式とから、TとNの関係を、
T=60×(Cp×(1/2)×ρ×A×(πdN/60λ)3/2πN
={(Cp×ρ×A×π2d3)/(4×602×λ3)}×N2 ・・・・・(4)
と表すことができる。
【0032】
(4)式は、(Cp×ρ×A×π2d3)/(4×602×λ3)が一定ならば風車5の出力トルクTが風車5の回転数Nの二乗に比例することを示しているが、逆に、風車5の出力トルクTを風車の回転数Nの二乗に比例させてやれば、(Cp×ρ×A×π2d3)/(4×602×λ3)が比例定数となって一定の値に固定されること、即ち、T∝N2であるならば、対応して変化するパワー係数Cpと周速比λとを、風速Vの如何に拘わらず常に一定の値に固定できることも示している。
【0033】
しかるに、周知のように流体継手の入力トルクは回転数Nの二乗に比例するので、風車5の出力を受ける部材として流体継手を風車5に接続してやれば、風車5の出力トルクTを常に風車5の回転数Nの二乗に比例させることができるところ、本実施形態の流体式発熱器3は、入力トルクTが回転数Nの二乗に比例する流体継手構造を有するので、流体式発熱器3の動力伝達軸6に接続される風車5の出力トルクを、常に風車5の回転数Nの二乗に比例させることができる。そのため、一旦流体式発熱器3のポンプ容量を風車のパワー係数が最大となる周速比を得るように調整してしまえば、風速が変化してもパワー係数が常時最大となるような周速比を得ることができるため、風車に対して特別な制御を行うことなく、風車を常に最大の効率で運転することができるのである。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態の発熱/発電併用システムを
図2に基づいて説明する。
【0035】
本発明の第2実施形態の発熱/発電併用システムは、流体式発熱器3がポンプ7とタービン8とを機械的に連結または連結解除できるクラッチ20を有する点で、第1実施形態の発熱/発電併用システムと異なっている。
【0036】
このクラッチ20は、流体式発熱器3内のポンプ7と、タービン8に連なる流体式発熱器3の下半部3bの底壁との間に配置されるものであり、通常のトルクコンバータにおけるロックアップクラッチと同様の構造をしている。即ちこのクラッチ20は、相対回転不能且つ軸方向移動可能にポンプ7に取り付けられていて、通常の開放状態では流体式発熱器3の下半部3bの底壁から離間しているが、ポンプ7およびクラッチ20間に油圧等を加えることにより前記底壁側に移動して、前記ポンプ7と流体式発熱器3に連なる前記タービン8とを機械的に接続する接続状態となる。
【0037】
第2実施形態の発熱/発電併用システムは、上述したような構成を有するので、第2実施形態の流体式発熱器3を発熱器として使用する場合には、前記クラッチ20を開放することで、第1実施形態の発熱/発電併用システムと同様のモード、即ち、前記ブレーキ機構19を作動させて前記ポンプ7だけを回転させ、前記ポンプ7と前記タービン8およびステータ9との間で循環するオイル10を効果的に発熱させる発熱モードと、前記ブレーキ機構19の作動を解除して前記オイル10の循環による発熱と、前記回転子4aの回転による前記発電機4の発電とを併用する発熱/発電モードとを得ることができ、また、第2実施形態の流体式発熱器3を発熱器として使用しない場合には、前記ブレーキ機構19を解放した状態で前記クラッチ20を作動させることで、前記ポンプ7および前記タービン8を機械的に連結し、前記風車5の回転動力を前記ポンプ7に連結された前記タービン8から前記発電機4の回転子4aにそのまま伝えることができる。
【0038】
このように、第2実施形態の発熱/発電併用システムは、前記流体式発熱器3を発熱器として使用しない場合に、前記流体式発熱器3をロックアップ機構付きのトルクコンバータとして機能させることができるから、前記ワンウエイクラッチ9bとの併用により、前記風車5の回転の当初は、回転を開始させるために必要なトルクを小さく抑えつつ、前記風車5の回転の定常状態では、前記ポンプ7および前記タービン8間の動力の伝達ロスをなくすことができる。
【0039】
しかも、第1,第2実施形態の発熱/発電併用システムは何れも、前記流体式発熱器3のステータ9が前記ケース2に固定されるので、前記発電機4への動力伝達時に前記ポンプ7および前記タービン8間で差回転が生じても、前記流体式発熱器3の特性を一定に保つことができるとともに、前記ステータ9が前記ケース2に対し脱着または交換可能であるので、様々な風車の特性に合わせた前記流体式発熱器3のポンプ容量の変更が、前記ステータの変更だけで可能となって、パワー係数を最大にできる周速比がそれぞれに異なる多種多様な風車に適合可能な発熱/発電併用システムを、前記ポンプおよび前記タービンの翼形状を変更することなく簡単に構成することが可能となる。
【0040】
また更に、前記ワンウエイクラッチ9bが必要ない場合には、前記ワンウエイクラッチ9bを用いない仕様のステータ9に簡単に変更できるので、流体式発熱器3の特性を動力源の特性に応じて容易に変更することができる。
【0041】
なお、前述したように、第1,第2実施形態の発熱/発電併用システムは、前記流体式発熱器3のステータ9を、前記ワンウエイクラッチ9bを介在させることなく前記タービン8に脱着または交換可能に固定することも可能である。この場合は、前記流体式発熱器3を通常のトルクコンバータとして機能させることはできないが、前記ステータ9を前記ケース2に固定する場合と同様に、様々な風車5の特性に合わせた流体式発熱器3のポンプ容量の変更がステータの変更だけで可能となるとともに、流体式発熱器3のポンプ容量の変更は、前記タービン8に対する前記ステータの位相(相対取付角度)の変更だけでも行えるので、ポンプ容量の変更を位相の変更だけで簡単に行うことが可能となる。
【0042】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、動力伝達軸8の延びる方向は水平方向であっても良く、動力源も特に風車9に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
2・・・・ケース
3・・・・流体式発熱器
4・・・・発電機
4a・・・回転子
4b・・・固定子
5・・・・動力源としての風車
7・・・・ポンプ
8・・・・タービン
9・・・・ステータ
10・・・作動流体としてのオイル
19・・・ブレーキ機構
20・・・クラッチ