(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025148835
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】錠剤印刷装置および錠剤印刷方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/06 20060101AFI20251001BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20251001BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20251001BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
B41J3/407
B41J2/01 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049152
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】生田 亮
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岡部 由孝
【テーマコード(参考)】
2C056
4C047
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EC12
2C056EC28
2C056HA29
4C047BB11
4C047CC15
4C047CC16
4C047LL10
4C047LL11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インクの転写を極力防止し、錠剤の安定した印刷品質を得ることができる錠剤印刷装置および錠剤印刷方法を提供する。
【解決手段】錠剤印刷装置1は、錠剤Tを搬送する搬送装置21、31と、搬送装置21,31によって搬送されている前記錠剤Tに対してインク滴を吐出して印刷を施す、インクジェット方式の印刷ヘッド24、34と、前記搬送装置21,31によって搬送され前記印刷ヘッド24、34により印刷が施された前記錠剤Tを、前記搬送装置21,31から受取り搬出する搬出コンベア43bと、前記搬出コンベア43bを制御する制御装置50と、を備え、前記制御装置50は、前記錠剤Tの品種に基づいて、前記搬出コンベア43b上における前記錠剤Tの密度が、前記錠剤Tの品種に応じた所定の値となるように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を複数収容し、収容した前記錠剤を順次供給する供給装置と、
前記供給装置から供給された前記錠剤を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されている前記錠剤に対してインク滴を吐出して印刷を施す、インクジェット方式の印刷ヘッドと、
前記搬送装置によって搬送され前記印刷ヘッドにより印刷が施された前記錠剤を、前記搬送装置から受取り搬出する搬出コンベアと、
前記搬出コンベアを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記錠剤の品種に基づいて、前記搬出コンベア上における前記錠剤の密度が、前記錠剤の品種に応じた所定の値となるように制御する錠剤印刷装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記搬出コンベアの搬送速度を制御することで前記密度が前記所定の値となるように制御する請求項1に記載の錠剤印刷装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記錠剤の品種毎に前記搬送速度の情報を記憶する請求項2に記載の錠剤印刷装置。
【請求項4】
前記搬送装置から前記搬出コンベア上で分散させる分散部材を更に備える請求項1~3のいずれかに記載の錠剤印刷装置。
【請求項5】
前記分散部材は、前記搬送装置から前記搬出コンベアへの前記錠剤の受け渡し位置に対応して設けられた板部材と、前記板部材を、前記搬出コンベアの搬送方向に交差する方向を軸として揺動させる駆動部と、を備え、
前記制御装置は、前記板部材を、前記搬送速度に基づく所定の周期で揺動させる
請求項4に記載の錠剤印刷装置。
【請求項6】
錠剤を順次供給する供給工程と、
供給された前記錠剤を順次搬送する搬送工程と、
搬送されている前記錠剤に対して、インクジェット方式の印刷ヘッドからインク滴を吐出させて印刷を施す印刷工程と、
前記印刷ヘッドにより印刷が施された前記錠剤を、搬出コンベアによって搬出する搬出工程と、を備え、
前記搬出工程においては、前記錠剤の種類に基づいて、前記搬出コンベア上における前記錠剤の密度が、前記錠剤の品種に応じた所定の値となるように前記搬出コンベアを駆動させる錠剤印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、錠剤印刷装置および錠剤印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤に文字や記号などの識別情報を印刷するため、インクジェット方式の印刷ヘッドを用いて印刷を行う錠剤印刷装置が知られている。このような錠剤印刷装置は、搬送コンベア等の搬送装置により複数の錠剤を整列搬送し、搬送装置によって搬送されている錠剤に向けてインクジェット方式の印刷ヘッドのノズルからインク(例えば可食性インク)を吐出し、各錠剤に識別情報を印刷する。印刷が施された錠剤は、搬送装置から搬出用の搬出コンベアに受け渡され、搬出コンベアから回収ボックスに収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、錠剤には、大きく分けて2種類がある。一つは、素錠やOD(Orally Disintegrating)錠(口腔内崩壊錠)など、表面にコーティングが施されていない錠剤(以下、「素錠」という。)である。もう一つは、糖衣錠やフィルムコーティング錠、腸溶錠など、表面にコーティングが施された錠剤(以下、「コーティング錠」という。)である。
【0005】
このような2種類の錠剤に対して上述の錠剤印刷装置を用いて同様に印刷を施すと、回収ボックスに収容された錠剤に転写が生じることがある。搬出コンベア上で、乾燥エアを吹き付ける等の乾燥処理を施しても転写が生じることがある。このような転写は、素錠よりもコーティング錠の方が生じ易い傾向にある。これは、コーティング錠が、糖や水溶性の高分子などで被覆されている分だけ、素錠よりもインクが染み込み難く乾き難いからであると推測される。
【0006】
そこで、発明者らは、回収ボックスに錠剤が収容される前の、搬出コンベア上でのインクの充分な乾燥時間を確保するため、搬出コンベアの搬出速度を搬送装置の搬送速度よりも極めて低速にすることを試みた。しかしながら、転写の発生を抑制するには至らなかった。このような転写は、錠剤の印刷品質の低下を招くので、極力抑えることが望まれている。
【0007】
本発明は、インクの転写を極力防止し、錠剤の安定した印刷品質を得ることができる錠剤印刷装置および錠剤印刷方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る錠剤印刷装置は、錠剤を複数収容し、収容した前記錠剤を順次供給する供給装置と、
前記供給装置から供給された前記錠剤を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されている前記錠剤に対してインク滴を吐出して印刷を施す、インクジェット方式の印刷ヘッドと、
前記搬送装置によって搬送され前記印刷ヘッドにより印刷が施された前記錠剤を、前記搬送装置から受取り搬出する搬出コンベアと、
前記搬出コンベアを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記錠剤の品種に基づいて、前記搬出コンベア上における前記錠剤の密度が、前記錠剤の品種に応じた所定の値となるように制御する。
【0009】
実施形態に係る錠剤印刷方法は、錠剤を順次供給する供給工程と、
供給された前記錠剤を順次搬送する搬送工程と、
搬送されている前記錠剤に対して、インクジェット方式の印刷ヘッドからインク滴を吐出させて印刷を施す印刷工程と、
前記印刷ヘッドにより印刷が施された前記錠剤を、搬出コンベアによって搬出する搬出工程と、を備え、
前記搬出工程においては、前記錠剤の種類に基づいて、前記搬出コンベア上における前記錠剤の密度が、前記錠剤の品種に応じた所定の値となるように前記搬出コンベアを駆動させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、インクの転写を極力防止しつつ、錠剤の安定した印刷品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る錠剤印刷装置の概略構成を示す正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る錠剤印刷装置の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、
図1~2を参照して説明する。
【0013】
(錠剤印刷装置の構成例)
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置30と、回収装置40と、制御装置(制御部)50と、を備える。
【0014】
錠剤印刷装置1の構成要素のうち供給装置10、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40はこの順で錠剤Tの搬送経路Pを形成する。この搬送経路P上において錠剤Tの供給、印刷、回収の一連の処理が行われる。したがって、搬送経路Pの上流は供給装置10側であり、下流は回収装置40側である。なお、本実施形態では、搬送経路Pは二列形成される。なお、本実施形態では、錠剤Tとしてコーティング錠を用いた例で説明する。
【0015】
供給装置10は、印刷対象となる錠剤Tを第1の印刷装置20に供給するもので、ホッパ11、整列フィーダ12及び受渡フィーダ13を有している。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、整列フィーダ12に錠剤Tを順次供給する。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを二列に整列し、受渡フィーダ13に向けて搬送する。受渡フィーダ13は、整列フィーダ12から二列で搬送される錠剤Tを上側から順次吸引して保持し、保持した各錠剤Tを第1の印刷装置20の上流側の端部まで二列のまま搬送して第1の印刷装置20に渡す。整列フィーダ12及び受渡フィーダ13における錠剤Tが二列で搬送される部分が搬送経路Pとなる。この供給装置10は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。整列フィーダ12及び受渡フィーダ13としては、例えば、ベルトコンベア等のベルト搬送機構を用いることが可能である。
【0016】
第1の印刷装置20は、錠剤Tを搬送しながら錠剤Tに印刷を施すもので、搬送装置21と、検出装置22と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)23と、印刷ヘッド装置24と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)25と、乾燥装置26とを備えている。
【0017】
搬送装置21は、無端状の搬送ベルト21a、駆動プーリ21b、三つの従動プーリ21c、モータ21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有している。搬送ベルト21aは、所定の間隔で設けられた駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cに架け渡されて設けられる。駆動プーリ21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置50に接続されており、検出信号を制御装置50に送信する。制御装置50は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21aの位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。この搬送装置21は、モータ21dによる駆動プーリ21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを回転させ、その搬送ベルト21a上の錠剤Tを
図1中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。
【0018】
搬送ベルト21aは、その表面に、
図2に示すように、円形状の吸引孔21gを複数有している。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを搬送ベルト21a表面に吸着する貫通孔であり、二列の搬送経路Pを形成するように搬送方向A1に沿って二列に配置される。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21fに形成された吸引路を介して吸引チャンバ21f内に連通しており、その吸引チャンバ21fから吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fにはポンプなどの吸気装置が吸気管(いずれも図示せず)を介して接続されており、吸引チャンバ21fは、内部が減圧可能とされる。なお、吸気装置は、制御装置50により制御される。
【0019】
検出装置22は、複数の検出部22a(
図2の例では二つ)を有している。各検出部22aは、供給装置10から搬送ベルト21aに錠剤Tが供給される位置よりも、搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で直交する方向に並ぶように、搬送経路Pごとに一つずつ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。検出部22aは、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21a上での錠剤Tの搬送方向A1の位置を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。各検出部22aは制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50に検出信号を送信する。
【0020】
第1の撮像装置23は、複数の撮像部23a(
図2の例では二つ)を有している。撮像部23aは、検出装置22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で直交する方向に並ぶように、搬送経路Pごとに一つずつ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部23aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部23aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。各撮像部23aは、制御装置50により制御される。
【0021】
印刷ヘッド装置24は、インクジェット方式の複数の印刷ヘッド24a(
図2の例では二つ)を有している。印刷ヘッド24aは、第1の撮像装置23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって、搬送方向A1に水平面内で直交する方向に並ぶように、搬送経Pごとに一つずつ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。印刷ヘッド24aは、複数のノズル24bを整列して備え、ノズル24bが並ぶ方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。各印刷ヘッド24aは、制御装置50により制御される。
【0022】
第2の撮像装置25は、複数の撮像部25a(
図2の例では二つ)を有している。撮部25aは、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって、搬送方向A1に水平面内で直交する方向に並ぶように、搬送経路Pごとに一つずつ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部25aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部25aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(検査用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。各撮像部25aは、制御装置50により制御される。
【0023】
図1に戻り、乾燥装置26は、錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させるもので、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側の位置、例えば、搬送装置21の下方に設けられている。この乾燥装置26は、二列の搬送経路Pに共通して用いられ、二列の搬送経路Pをカバーする大きさを有する。乾燥装置26としては、エアなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥装置26は、制御装置50により制御される。
【0024】
乾燥装置26の下流側の位置、より具体的には、搬送ベルト21aが各従動プーリ21cに差し掛かる手前の位置で、錠剤Tは第1の印刷装置20から第2の印刷装置30の上流側の端部に受け渡される。
【0025】
第2の印刷装置30は、第1の印刷装置20と同様に、錠剤Tを搬送しながら錠剤Tに印刷を施すもので、搬送装置31と、検出装置32と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)33と、印刷ヘッド装置34と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)35と、乾燥装置36とを備え、搬送装置31は、搬送ベルト31a、駆動プーリ31b、三つの従動プーリ31c、モータ31d、位置検出器31e及び吸引チャンバ31fを有している。この第2の印刷装置30の各構成要素は、前述の第1の印刷装置20における対応する構成要素と同様の構成であるため、その説明を省略する。ただし、第2の印刷装置30の搬送方向は
図1中の矢印A2の方向(搬送方向A2)であり、第2の印刷装置20とは逆方向である。
【0026】
回収装置40は、錠剤Tを、不良品、再検査品、良品に分けて回収するもので、不良品回収装置41と、再検査品回収装置42と、良品回収装置43とを備えている。この回収装置40は、第2の印刷装置30の乾燥装置36よりも搬送方向A2の下流側に設けられる。
【0027】
不良品回収装置41は、複数の噴射ノズル41aと、回収ボックス41dとを有している。噴射ノズル41aは搬送経路Pごとに設けられており、収容ボックス41dは二列の搬送経路Pに共通して一つ設けられている。
【0028】
噴射ノズル41aは、搬送ベルト31aの吸引孔(
図2に示す吸引孔21gと同様)が設けられた部分に向けて気体(例えばエア)を噴射し、搬送ベルト31aの吸引孔を通して、吸引孔に吸着されている錠剤Tに気体を当てて、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。噴射ノズル41aは、制御装置50により制御される。
【0029】
収容ボックス41dは、各噴射ノズル41aの直下であって搬送装置31の下方に設けられている。この収容ボックス41dは、噴射ノズル41aによって搬送ベルト31aから落下させられた錠剤Tを収容する。
【0030】
再検査品回収装置42は、乾燥装置36よりも下流の位置に設けられた、搬送ベルト31a上の錠剤Tの有無を検出するセンサ(不図示)により、検出装置22、32による検出結果から把握されていない位置に錠剤Tがあることが検出された場合に、その錠剤Tを不明品として回収するものである。再検査品回収装置42は、シャッタ42aと、モータ42bと、シャッタ検出部42cと、回収ボックス42dとを有している。この再検査品回収装置42は不良品回収装置41が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に設けられており、シャッタ42a及び回収ボックス42dは二列の搬送経路Pに共通して一つ設けられている。
【0031】
シャッタ42aは、搬送ベルト31aにおける従動プーリ31cに差し掛かる手前の位置、より具体的には、後述する気体吹出部43aによって搬送ベルト31aから錠剤Tが落下させられる位置の直下に設けられている。シャッタ42aは、例えば矩形の板部材であり、搬送方向A1に沿う方向の長さよりも搬送方向A1に直交する幅方向の長さの方が長く形成されている。そのため、シャッタ42aの幅方向が長手方向となる。なお、シャッタ42aの幅方向の長さは、搬送ベルト31aの幅方向の長さとほぼ同じである。シャッタ42aはモータ42bにより揺動可能に設けられており、モータ42bの回転軸はシャッタ42aの短手方向の中央に取り付けられている。つまり、シャッタ42aは、搬送方向A1に直交する水平方向に沿う方向を軸として揺動可能である。モータ42bは正回転及び逆回転が可能なモータである。モータ42bは、制御装置50により制御される。なお、シャッタ42aは、後述する分散部材としても機能する。すなわち、シャッタ42aは、良品回収装置43の搬出コンベア43b上で錠剤Tを分散させて受け渡すための、良品回収装置43の構成の一部としても兼用される。
【0032】
このシャッタ42aは、モータ42bにより、錠剤Tを良品回収装置43に渡す状態(図の実線で示す状態)と、再検査品回収装置42の回収ボックス42dに渡す状態(
図1の実線で示す状態から反時計回りに90°回転した状態)とに姿勢を切り替えることができる。なお、シャッタ42aが、錠剤Tを良品回収装置43に渡す状態を開状態、回収ボックス42dに渡す状態を閉状態と称する。
【0033】
シャッタ検出部42cは、シャッタ42aの停止位置を検知し、シャッタ42aが開状態であるか閉状態であるかを検出する。シャッタ42aは、通常は開状態に維持されている。シャッタ検出部42cとしては、例えば、ロータリーエンコーダが用いられる。シャッタ検出部42cは、制御装置50に検出信号を送信する。
【0034】
回収ボックス42dは、シャッタ42aから渡された錠剤Tを収容する。
【0035】
良品回収装置43は、気体吹出部43aと、搬出コンベア43bと、乾燥装置43cと、回収ボックス43dとを有している。この良品回収装置43は、再検査品回収装置42よりも搬送方向A2の下流側に設けられており、気体吹出部43a、乾燥装置43c及び収容ボックス43dはそれぞれ、二列の搬送経路Pに共通して一つ設けられている。
【0036】
気体吹出部43aは、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内であって、搬送ベルト31aが従動プーリ31cに差し掛かる手前の位置に設けられている。気体吹出部43aは、印刷処理中、常に搬送ベルト31aにおける吸引孔(吸引孔21gと同様)が形成された部分に向けて気体(例えばエア)を吹き出す。気体吹出部43aから吹き出された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔を通過して錠剤Tに当たり、吸着孔に吸着された錠剤Tを搬送ベルト31aから落下させる。気体吹出部43aとしては、例えば、搬送方向A2に水平面内で直交する方向に延びるスリット状の開口を有するエアブローを用いることが可能である。気体吹出部43aは、制御装置50により制御される。
【0037】
搬出コンベア43bは、開状態のシャッタ42aから流れ込む錠剤Tを受け取り、受け取った錠剤Tを収容ボックス43dまで搬送する。なお、搬出コンベア43bとしては、例えば、ベルトコンベアを用いることが可能である。この搬出コンベア43bのベルトは、気体通過性を有する無端状のベルトである。気体通過性を有するベルトとしては、網状のベルトや複数の丸孔を有するベルトなど、複数の貫通孔を有する各種材質のベルトを用いることが可能である。搬出コンベア43bは、制御装置50により制御される。
【0038】
乾燥装置43cは、上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2を有している。この乾燥装置43cは、乾燥気体(例えば乾燥エア)を用いて、搬出コンベア43b上の錠剤Tを乾燥させる。上乾燥部43c1は、排出搬送部43bの上方に設けられており、搬出コンベア43bの上方から下向きに乾燥気体を吹き出す。下乾燥部43c2は、排出搬送部43bの内部に設けられており、搬出コンベア43bの内部から搬出コンベア43bを通して乾燥気体を吹き出す。これらの上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2は、制御装置50により制御される。上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2としては、乾燥気体により乾燥を行う装置以外にも、エアなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。
【0039】
回収ボックス43dは、搬出コンベア43bの下流端に配置される。収容ボックス43dは、錠剤Tを搬出コンベア43bから受け取って収容する。
【0040】
制御装置50は、画像処理部51と、印刷処理部52と、検査処理部(検査部)53と、記憶部54とを備えている。画像処理部51は画像を処理する。印刷処理部52は印刷に係る処理を行う。検査処理部53は検査に係る処理を行う。記憶部54は処理情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する。このような制御装置50は、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40を制御し、また、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の検出装置22、32から送信される錠剤Tの位置情報、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の撮像装置23、25、33、35から送信される画像、回収装置40の不良品回収装置41の各センサ41b、41cから送信される検出信号などを受信する。なお、動作条件は予め設定され、記憶部54に記憶されている。制御装置50は、記憶部54に記憶された動作条件に基づき、回収装置40の不良品回収装置41及び再検査品回収装置42を制御する。
【0041】
(印刷動作)
次に、錠剤印刷装置1が行う印刷動作について説明する。以下の印刷動作では、錠剤Tとしてコーティング錠を用い、その錠剤Tの両面に対して識別情報を印刷する両面印刷について説明する。なお、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置50の記憶部54に予め記憶されているものとする。
【0042】
まず、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され、整列フィーダ12により二列に並べられ、受渡フィーダ13に送られた後、受渡フィーダ13から第1の印刷装置20の搬送ベルト21aに供給される。
【0043】
第1の印刷装置20では、搬送ベルト21a上に吸引保持された錠剤Tが、検出装置22によって検出される。これにより、制御装置50により、錠剤Tの位置情報(搬送方向A1の位置)が取得される。この錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが第1の撮像装置23を通過するタイミングに合わせて第1の撮像装置23による撮像が行われ、取得された錠剤Tの画像に基づいて錠剤Tの位置ずれ情報が画像処理部51により生成され、記憶部54に記憶される。
【0044】
次いで、錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下方を通過するタイミングに合わせて、前述の印刷データや印刷条件に基づく錠剤Tに対する識別情報の印刷が、印刷ヘッド装置24により実行される。
【0045】
識別情報が印刷された錠剤Tは、第2の撮像装置25の下方を通過するタイミングに合わせて、第2の撮像装置25による撮像が行われる。第2の撮像装置25によって撮像された画像に基づき、画像処理部51により、錠剤Tに印刷された識別情報の印刷パターン情報や印刷位置情報が生成され、検査処理部53により、印刷品質等の良否が判断される。つまり、錠剤Tの良品、不良品の別が判断される。
【0046】
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21aによって搬送され、乾燥動作中の乾燥装置26の上方を通過して、第2の印刷装置30に渡される。なお、錠剤Tに印刷されたインクは、乾燥装置26の上方を通過する間に乾燥が施されることとなる。
【0047】
第2の印刷装置30でも、上述した第1の印刷装置20と同様に、印刷処理が行われる。第2の撮像装置35を通過した錠剤Tは、搬送ベルト31aによって搬送され、乾燥動作中の乾燥装置36の上方を通過し、乾燥が施される。そして、乾燥が施された錠剤Tは、不良品と判断された錠剤Tである場合には、噴射ノズル41aによって搬送ベルト31aの下面から落下させられ、回収ボックス41dに収容される。良品と判断された錠剤Tである場合には、気体吹出部43aによって搬送ベルト31aから落下させられ、開状態のシャッタ42aにより搬出コンベア43bに渡される。なお、不図示のセンサによって不明品であると判断された錠剤Tである場合には、シャッタ42aが一時的に閉状態に切替えられることで、回収ボックス42dに収容される。
【0048】
搬出コンベア43bに渡された錠剤Tは、搬出コンベア43b上を搬送され、乾燥動作中の乾燥装置43cの上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2の間(乾燥空間)を通過する。乾燥空間を通過した錠剤Tは、搬出コンベア43bの下流端から落下し、回収ボックス43dに収容される。
【0049】
(良品の回収動作)
次に、良品回収装置43の回収動作について説明する。本実施形態で、印刷対象の錠剤Tとして例示したコーティング錠は、一般的に、素錠に比べてインクが染み込み難く乾き難い。したがって、本実施形態においては、良品と判断された錠剤Tの回収動作は、制御装置50が、錠剤Tの品種に基づいて、搬出コンベア43b上における錠剤Tの密度が、錠剤Tの品種に応じた所定の値となるよう制御することで行われる。例えば、制御装置50は、記憶部54に予め記憶されている、錠剤Tの品種に対応する錠剤Tの密度に関する情報に基づいて搬出コンベア43bを制御する。
【0050】
すなわち、搬送ベルト31aからシャッタ42aを介して搬出コンベア43b上に渡された錠剤Tは、搬出コンベア43b上に無作為に散らばる。このときの散らばり具合は、主に、錠剤の形状や大きさに依存する。具体的には、シャッタ42aの形状や傾斜角度、搬出コンベア43bの搬送速度が同じである場合、錠剤Tの形状が同じ(相似形)であっても、大きさが異なれば、大きさによって散らばり具合は異なるものとなる。また、大きさが概ね同じでも、形状が異なれば(例えば、円柱状に近いものと楕円状に近いものとでは)、散らばり具合はやはり異なるものとなる。そして、錠剤Tの外形や大きさの違いは、品種に依存する。つまり、錠剤Tは、搬出コンベア43b上で、品種に応じた散らばり具合を呈するものといえる。
【0051】
そして、搬出コンベア43b上での錠剤Tの散らばり具合は、錠剤Tの混み合いの程度と同義といえるから、錠剤Tの密度と見ることができる。そして、錠剤Tの密度が高いと錠剤T同士の接触が生じ易く、密度が低いと錠剤T同士の接触が生じ難い。このことから、錠剤Tの密度の大きさは、錠剤T同士の接触のし易さをあらわすものといえる。また、錠剤T同士が接触し易さは、インクの転写の生じ易さにつながる。したがって、搬出コンベア43b上での錠剤Tの密度をコントロールすることで、搬出コンベア43b上でのインクの転写を防ぐことができる。これのことから、インクの転写が防止できるように、搬出コンベア43b上での錠剤Tの密度を錠剤Tの品種に応じて設定することで、搬出コンベア43b上でのインクの転写を防止しつつ最大限の乾燥時間を確保することが可能となるのである。
【0052】
なお、上述したように、搬出コンベア43b上での錠剤Tの散らばり具合は、シャッタ42aの形状や傾斜角度、搬出コンベア43bの搬送速度が同じであれば、錠剤Tの品種に依存する。そのため、搬出コンベア43bの搬送速度を変えることで、個々の品種の錠剤Tの散らばり具合、つまり密度を変化させることが可能となる。すなわち、搬出コンベア43bの搬送速度を増加させることで錠剤Tの密度を低めることができ、搬送速度を減少させることで錠剤Tの密度を高めることができる。
【0053】
そこで、本実施形態では、錠剤Tの品種に応じて、転写が防止できる密度の範囲内であって、錠剤Tの乾燥時間が最も長く確保できる搬送コンベア43bの搬送速度を、錠剤Tの密度に関する情報として設定している。すなわち、錠剤Tの品種情報と、錠剤Tの品種に応じた搬送コンベア43bの搬送速度とを対応させた情報(例えば、下記の表1)を記憶部54に予め記憶させている。そして、錠剤Tの印刷動作を行う際に、制御装置50に入力された錠剤Tの品種情報に基づいて、制御装置50が記憶部54から当該品種に対応する速度を搬送コンベア43bの搬送速度をとして設定するようにしている。
【0054】
なお、このような搬送速度は、例えば、実験によって求めることが可能である。より具体的には、数百個~数万個程度の錠剤Tを一つの単位として、搬送コンベア43bの搬送速度の設定を切り替え、夫々の搬送速度でのインクの転写の具合を転写率として求め、転写率が許容できる範囲内となる搬送速度を、その品種の錠剤Tに適した搬送速度として設定するようにする。
【0055】
表1は、ある品種のコーティング錠をサンプルとして、搬送コンベア43bの搬送速度を切替えて、搬送コンベア43b上での錠剤Tの密度とインクの転写率との関係を求めた実験結果である。なお、表1は、密度が60%以下、および100%以上の範囲では2%毎に、60%~100%の間では10毎に転写率を測定したものである。また、それぞれの密度となるときの搬送速度を併記した。密度を基準としているので、搬送速度の変化量は必ずしも一定とはなっていない。また、各密度での錠剤Tの処理数(一つの単位)は、10000個とした。なお、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30の搬送装置21、31による錠剤Tの搬送速度は、単位時間当たりの錠剤Tの生産(印刷)数(処理量)が毎時10万錠となる速度に設定した(搬送経路Pが二列であるから、1列当たり毎時5万錠となる)。
【0056】
【0057】
この結果から、例えば、当該錠剤Tで許容される転写率が16%以下であるとした場合、密度が70%程度から90%程度の間となる搬送速度を、搬出コンベア43bの搬送速度として設定すればよいことがわかる。
【0058】
したがって本実施形態によれば、上述の制御を行うことで、第2の印刷装置30の搬送装置31から搬出コンベア43b上に渡された錠剤Tを、搬送コンベア43b上で錠剤T同士の接触によるインクの転写が防止できる密度で分散させることが可能となる。また、このときの搬送コンベア43bの搬送速度は錠剤T(インク)の乾燥時間を極力長く確保できる速度に設定されているので、錠剤Tが回収ボックス43dに収容されるまでの間に、錠剤Tに印刷されたインクを最大限に乾燥させることができる。したがって、回収ボックス43dに収容された錠剤Tにインクの転写が生じることを極力防止することができ、錠剤Tの安定した印刷品質を得ることができる。
【0059】
ここで、錠剤Tの品種(形状や大きさ等)によっては、搬送方向A1に直交する方向、つまり、搬出コンベア43bの幅方向に拡がり難い場合がある。このような品種の錠剤Tにおいて、転写を効果的に防止できる密度の上限が比較的低い値であると、乾燥時間の確保が難しくなることが考えられる。すなわち、乾燥時間は、搬出コンベア43bの搬送速度と長さ(搬送距離)によって決定されるが、搬出コンベア43bの長さは錠剤印刷装置1の外形サイズによる制限を受ける。そのため、密度を低くするために搬送速度を高めに設定した結果として、必要な乾燥時間を確保することが難しくなってしまったとしても、搬出コンベア43bの長さを延長して対応することはできない。このような場合には、分散部材としてのシャッタ42aを用いて、搬出コンベア43b上での錠剤Tが拡散する範囲を広げるようにするとよい。
【0060】
第2の印刷装置30の搬送ベルト31aから落下した錠剤Tは、シャッタ42a上で跳ね返って搬出コンベア43bに移る。このとき、シャッタ42aの傾斜角度を変えれば、錠剤Tにおけるシャッタ42aとの当接位置、或いは当接角度が変わるので、これにより、錠剤Tの跳ね返る方向を変化させることができる。跳ね返る方向が変われば、錠剤Tがより広い範囲に拡がる機会が増加する。そこで、印刷動作中、シャッタ42aを所定の角度範囲内で揺動させるように制御する。例えば、シャッタ42aの開状態の基準の傾斜角度(
図1に示した開状態のシャッタ42aの傾斜角度)が45°であった場合、45°に対して±x°の範囲で揺動させるようにするとよい。ここで、xは、錠剤Tを搬出コンベア43bに渡すことが可能な任意の角度である。なお、45°(基準とする角度)を中央値とする必要は必ずしもなく、それぞれに異なる角度を設定するようにしてもよい。
【0061】
なお、このようなシャッタ42aの揺動は、モータ42bとシャッタ検出部42cを用いて実現することが可能である。すなわち、前述の基準の傾斜角度と揺動範囲、揺動の周期(揺動の一往復にかける時間や次の一往復までの休止時間など)を記憶部54に記憶させておき、制御装置50が、シャッタ検出部42cの検出値を頼りに、記憶された揺動範囲内で揺動するようにモータ42bの駆動を制御するようにすればよい。すなわち、揺動の角度範囲のみならず、揺動の周期によっても密度を変化させることができる。錠剤の品種に応じた所望の密度が得られる揺動の角度範囲、揺動の周期は、例えば、実験によって求めることができる。
【0062】
このようにすることで、シャッタ42aの傾斜角度を固定した状態では搬出コンベア43b上で拡がり難い錠剤Tであっても、搬出コンベア43b上で拡がるように渡すことが可能となる。この結果、このような錠剤Tであっても、回収ボックス43dに収容された錠剤Tにインクの転写が生じることを極力防止することができ、錠剤Tの安定した印刷品質を得ることができる。
【0063】
また、シャッタ42aを所定の角度範囲内で揺動させることに代えて、シャッタ42aの表面(錠剤Tが跳ね返る面)に凹凸等を設けるようにしても、錠剤Tの拡散する範囲を広げることが可能である。すなわち、シャッタ42aは板部材で表面が平らなものとして説明したが、例えば、幅方向に連続する正弦波状などの凹凸を設けるようにしてもよい。例えば、幅方向に連続する正弦波状の凹凸である場合、錠剤Tの当たる位置が幅方向にずれたときに、錠剤Tが当たる面に角度が変化する。そのため、錠剤Tの幅方向へ広げる作用を生じさせ易いと考えられる。同様の作用は、滑らかな正弦波に限らず、角度の異なる面を繋げた正弦波状の凹凸であっても得ることが可能である。なお、凹凸の大きさや位置は、錠剤Tの大きさに応じて決定することが好ましい。例えば、錠剤Tが円筒形状で、正弦波の山と山との間の間隔が錠剤Tの直径よりも大きい場合、正弦波の斜面が第2の印刷装置30の搬送ベルト31aの吸引孔の直下に位置していると、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tが正弦波状の凹凸における一つの山の片側の斜面だけで跳ね返る確率が高くなる。このような場合、錠剤Tは主に斜面の向く方向に跳ね返ることとなり、錠剤Tが拡散する範囲を幅方向に広げる効果が得難くなると考えられる。したがって、このような場合には、山の頂部、または谷の底部が搬送ベルト31aの吸引孔の直下に位置するようにするとよい。
【0064】
一方、山と山との間の間隔が錠剤Tの直径よりも小さい場合、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tが山の片側の斜面に主に衝突することになったとしても、錠剤Tの他の部分、例えば、斜面に衝突した部分とは反対側に位置する部分が、隣の山の頂部にも衝突する可能性がある。そのため、跳ね返る方向が山の斜面にのみ衝突した場合に比べてより不規則になると考えられる。したがって、このような場合には、搬送ベルト31aの吸引孔との位置関係に関係なく、錠剤Tの拡散範囲を拡大する効果を得られると考えられる。そのため、位置については、考慮の必要性は低いといえる。
【0065】
また、凹凸は、傾斜角度が同じ、または近似する部分が連続していると、その範囲で錠剤Tが跳ね返る方向も近似すると考えられる。そのため、傾斜角度は連続的に変化している方が好ましく、傾斜角度が同じまたは近似する部分は極力短い方が好ましい。例えば、正弦波状の凹凸を構成する表面に、さらに正弦波状の細かい凹凸を設けるようにしてもよい。
【0066】
なお、正弦波状の凹凸の例を説明したが、凹凸は、正弦波のように、凸部と凹部の高さが揃っている必要はない。例えば、凸部の高さが不規則または規則的に変化する凹凸であっても、凹部の高さが不規則または規則的に変化する凹凸であっても、それらを組み合わせた凹凸であってもよい。もちろん、正弦波状の凹凸に限られるものではなく、シャッタ42aの表面が平らなときよりも、搬出コンベア43b上での錠剤Tの拡散を拡大させることができる凹凸であれば、上記以外の凹凸であってもよい。
【0067】
また、搬出コンベア43bの構成も特に限定されるものではない。例えば、二列(複数)の搬送経路Pに対して幅広の一つの搬出コンベア43bを設けるものであっても、搬送経路Pそれぞれに一つずつ搬出コンベア43bを設けるものであってもよい。
【0068】
なお、搬出コンベア43b上での錠剤Tの密度は、単位面積当たりに占める錠剤Tの量(錠剤Tの数×錠剤Tの平面視の投影面積)で求めることができるが、単位面積は、搬出コンベア43b上で錠剤Tが分布する範囲内で設定することが好ましい。例えば、搬出コンベア43bの幅が100mmであり、搬出コンベア43b上で錠剤Tが幅方向に分布する範囲が50mmであった場合、搬出コンベア43bの幅全体(100mm)を単位面積の幅方向長さとして密度で計算してしまうと、実際の密度よりも小さな値となってしまう。このようにして求めた密度で搬出コンベア43bの搬送速度を設定すると、インクの転写が生じやすい密度になってしまうことが起こり得る。そのため、錠剤Tの密度は、錠剤Tの分布に基づいて求めることが好ましい。
【0069】
ところで、錠剤印刷装置1は、錠剤Tの生産に用いられることがある。このような場合、処理量が設定(例えば、毎時10万錠や毎時15万錠など)されることがある。そして、このような処理量によって、搬出コンベア43bの搬送速度や錠剤Tの密度が制約を受けることがある。例えば、表1に対応する品種の錠剤Tにおいて、処理量が毎時10万錠から毎時12万錠に変更されたとする。そうすると、搬出コンベア43b上に単位時間当たりに渡される錠剤Tの数は、1.2倍に増加する。そのため、搬出コンベア43bの搬送速度が同じままでは、所望の密度が得られなくなってしまう。搬出コンベア43bの搬送速度を、例えば、それぞれ1.2倍にするなど増加させれば、所望の密度を得られるかもしれない。ただし、搬送速度を増加させた分だけ、錠剤Tが搬出コンベア43b上を通過するに要する時間、つまり、乾燥時間が短くなってしまう。そのため、転写率が増加する可能性がある。したがって、処理量を変更する場合には、錠剤Tの品種情報と、錠剤Tの品種に応じた搬送コンベア43bの搬送速度(錠剤Tの密度)とを対応させた情報を取得し直すことが好ましい。
【0070】
また、処理量が同じでも、錠剤Tの大きさが変わると、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30の搬送装置21、31による錠剤Tの搬送速度が変わることがある。このような場合、搬出コンベア43b上に単位時間当たりに渡される錠剤Tの数のみならず、搬出コンベア43b上で一つの錠剤Tが占める面積も変化する。そのため、このような場合にも、錠剤Tの品種情報と、錠剤Tの品種に応じた搬送コンベア43bの搬送速度(錠剤Tの密度)とを対応させた情報を取得し直すことが好ましい。
【0071】
<他の実施形態>
前述の説明においては、二列の搬送経路Pに対して搬送経路Pごとに印刷ヘッド24a、34aを1つずつ設ける例で説明したが、複数の搬送経路Pに対して1つの印刷ヘッドを設けるようにしてもよく、また、搬送経路Pごとに3つ以上の印刷ヘッドを設けるようにしてもよい。
【0072】
また、分散部材としてのシャッタ42aを、搬送方向に直交する水平方向に沿う方向を軸として揺動させる例で説明した。しかしながら、分散部材を、良品回収装置43と再検査品回収装置42とに錠剤Tを振り分けるシャッタ42aと兼用せず、専用の部材として設ける場合には、必ずしも搬送方向に直交する水平方向に沿う方向を軸として揺動させる必要はない。
【0073】
また、分散部材は、板状の部材に限られるものではなく、搬出コンベア43b上で錠剤Tが拡散する範囲を広げることができるものであれば、如何なる構成のものであってもよい。
【0074】
ここで、前述の錠剤Tとしては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤Tとしては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあるが、コーティング錠に相当する錠剤や、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤Tに含めることができる。さらに、錠剤Tの形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状があるが、いずれの形状も含めることができる。また、印刷対象の錠剤Tが医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用してもよい。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 錠剤印刷装置
10 供給装置
20 第1の印刷装置
21 搬送装置
21a 搬送ベルト
30 第2の印刷装置
31 搬送装置
31a 搬送ベルト
40 回収装置
42a シャッタ( 部材)
42b モータ
42c シャッタ検出部
43 良品回収装置
43b搬出コンベア
43c 乾燥装置
43c1 上乾燥部
43c2 下乾燥部
43d 回収ボックス
50 制御装置
T 錠剤