(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025148941
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】圧力開放蓋
(51)【国際特許分類】
E03F 5/10 20060101AFI20251001BHJP
E02D 29/14 20060101ALI20251001BHJP
【FI】
E03F5/10 Z
E02D29/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049323
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真翔
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
【Fターム(参考)】
2D063DA11
2D147BB21
(57)【要約】
【課題】緊急時に流体の排出を効率的に行うことができ、安全性や耐久性に優れた回転防止機能を備えた圧力開放蓋を提供する。
【解決手段】圧力開放蓋100の中央部に流体排出部120が設けられる。流体排出部120は、排出孔121と軸受部122と軸受支持部123とを備える。軸受部122は、軸受孔122aを有すると共に、軸受支持部123に支持されて流体排出部120の略中央に位置する。流体排出部120を覆う開放弁150の摺動軸152は、軸受孔122aに摺動可能に挿入される。開放弁150は、摺動軸152を取り囲む回転防止部153を有し、回転防止部153は、軸受支持部123と対向するように、弁本体151の外端と中心との中間よりも当該中心側にのみ配置される。排出孔121の開口面積は、圧力開放蓋100の面積の20%以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水配管の点検口に設置される圧力開放蓋であって、
前記圧力開放蓋は、蓋本体と、開放弁とを備え、
前記蓋本体の中央部に流体排出部が設けられ、
前記流体排出部は、排出孔と、軸受部と、軸受支持部とを備え、
前記軸受支持部は、前記排出孔の周縁から中央に向かって延び、
前記軸受部は、軸受孔を有すると共に、前記軸受支持部に支持されて前記流体排出部の略中央に位置し、
前記開放弁は、弁本体と、摺動軸と、回転防止部とを備え、
前記弁本体は、前記流体排出部の全体を覆い、
前記摺動軸は、前記弁本体の中央部に設けられると共に、前記軸受孔に摺動可能に挿入され、
前記回転防止部は、前記弁本体から前記摺動軸を取り囲むように垂下すると共に、前記弁本体の外端と中心との中間よりも当該中心側にのみ配置され、
前記回転防止部と前記軸受支持部とは互いに対向し、
前記排出孔の開口面積は、前記圧力開放蓋の面積の20%以上である、
圧力開放蓋。
【請求項2】
前記弁本体は、平面視において真円形状とは異なる形状を有する、
請求項1に記載の圧力開放蓋。
【請求項3】
前記弁本体の周縁には、前記弁本体の外方に突出する突出部が設けられる、
請求項1に記載の圧力開放蓋。
【請求項4】
前記摺動軸における前記弁本体と反対側の先端部は、前記開放弁が浮上した際に前記摺動軸が所定の距離以上摺動しないように規制する摺動規制部であり、当該摺動規制部は、前記軸受孔内で回転不能な寸法を持つ、
請求項1~3のいずれか1項に記載の圧力開放蓋。
【請求項5】
前記摺動軸における前記摺動規制部の少なくとも近傍部分は、前記軸受孔内で回転可能な寸法を持つ、
請求項4に記載の圧力開放蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排水配管を逆流してきた流体を排水配管外に排出する開放弁を備えた圧力開放蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレ等の屋内排水設備から排出される排水は、地中に埋設された排水配管を経由して下水管へ排出される。近年、気象の変化に伴う豪雨の増加による内水氾濫等の水害の影響が深刻化しているが、台風等で大量の雨水が短時間に下水管内に流入すると、下水管の排水能力を超えてあふれ出た排水が排水配管を逆流する場合がある。このような場合に備えて、排水の逆流による住宅等への被害を最小限とするために、逆流してきた流体(気体及び/又は液体)を排水配管の外部へ緊急的に排出する開放弁を備えた圧力開放蓋が排水配管に設けられる。
【0003】
圧力開放蓋は、宅地内の排水配管の下流側に設置することで、住宅等への被害をより効果的に抑制することが可能となるが、例えば、排水配管の下流側に駐車場がある場合、人が圧力開放蓋上を歩行した際に開放弁が回転して歩行者が滑る恐れがある。また、自動車のタイヤが圧力開放蓋上に載った状態で運転手がハンドルを切る(いわゆる据え切り)と、過剰な荷重がかかって開放弁が破損する恐れがある。
【0004】
特許文献1、2には、このような問題点に対応した圧力開放蓋が開示されている。特許文献1に開示されている圧力開放蓋は、人が歩行するといった軽~中程度の力では開放弁が回転せず、自動車のタイヤの据え切りといった大きな力では開放弁が回転することにより、開放弁の破損を防ぐ構造を有する。特許文献2に開示されている圧力開放蓋は、気体の排出時には中央の開放弁が作動し、液体の排出時には蓋全体が持ち上がることによって、圧力を開放する構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-256760号公報
【特許文献2】特開2018-025026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている圧力開放蓋は、通気孔のサイズが小さいため、気体だけではなく液体も排水配管を逆流してきた際に流体排出量が不足して、圧力開放蓋が飛散する恐れがある。また、特許文献1に開示されている圧力開放蓋の上面には傾斜が設けられるため、圧力開放蓋上を歩行する人が躓く恐れがある。
【0007】
また、特許文献2に開示されている圧力開放蓋は、蓋が飛散しないようにロック機構を正しく使用する必要があるため、作業者がロック機構の操作を失念した場合、圧力開放時に蓋が飛散する恐れがある。また、ロック機構が液体の排出に対して抵抗を生じるという問題や、ロック機構の構造が複雑で製造にコストがかかるなどの問題がある。
【0008】
前記に鑑み、本開示は、緊急時には流体の排出を効率的に行うことができると共に安全性や耐久性に優れた強固な回転防止機能を備えた、簡単な構造で使用しやすい圧力開放蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本開示に係る圧力開放蓋は、排水配管の点検口に設置される圧力開放蓋であって、前記圧力開放蓋は、蓋本体と、開放弁とを備える。前記蓋本体の中央部に流体排出部が設けられる。前記流体排出部は、排出孔と、軸受部と、軸受支持部とを備える。前記軸受支持部は、前記排出孔の周縁から中央に向かって延びる。前記軸受部は、軸受孔を有すると共に、前記軸受支持部に支持されて前記流体排出部の略中央に位置する。前記開放弁は、弁本体と、摺動軸と、回転防止部とを備える。前記弁本体は、前記流体排出部の全体を覆う。前記摺動軸は、前記弁本体の中央部に設けられると共に、前記軸受孔に摺動可能に挿入される。前記回転防止部は、前記弁本体から前記摺動軸を取り囲むように垂下すると共に、前記弁本体の外端と中心との中間よりも当該中心側にのみ配置される。前記回転防止部と前記軸受支持部とは互いに対向する。前記排出孔の開口面積は、前記圧力開放蓋の面積の20%以上である。
【0010】
本開示に係る圧力開放蓋によると、開放弁の摺動軸を摺動可能に支持する軸受支持部と、開放弁において摺動軸を取り囲むように垂下する回転防止部とが対向する。このため、回転防止部の変位が軸受支持部によって規制されることにより、開放弁の回転が防止されるので、安全性や耐久性に優れた強固な回転防止機能を実現できる。
【0011】
また、本開示に係る圧力開放蓋によると、開放弁の外端と中心との中間よりも当該中心側にのみに回転防止部が配置されると共に、開放弁により覆われる排出孔の開口面積が圧力開放蓋の面積の20%以上である。このため、流体の逆流で開放弁が浮上した際に、回転防止部により流体の流れが阻害されにくくなり、十分な開口面積を持つ排出孔から、流体の排出を効率的に行うことができる。
【0012】
以上のように、本開示に係る圧力開放蓋によると、簡単な構造で使用しやすい圧力開放蓋を提供することができる。
【0013】
本開示に係る圧力開放蓋において、前記弁本体は、平面視において真円形状とは異なる形状を有してもよい。このようにすると、真円形状を有する弁本体と比べて、開放弁の回転がより強固に防止される。
【0014】
本開示に係る圧力開放蓋において、前記弁本体の周縁には、前記弁本体の外方に突出する突出部が設けられてもよい。このようにすると、突出部によって、開放弁の回転がより強固に防止される。この場合、真円形状とは異なる形状を有する弁本体の周縁に突出部を設けると、開放弁の回転がさらに強固に防止される。
【0015】
本開示に係る圧力開放蓋において、前記摺動軸における前記弁本体と反対側の先端部は、前記開放弁が浮上した際に前記摺動軸が所定の距離以上摺動しないように規制する摺動規制部であり、当該摺動規制部は、前記軸受孔内で回転不能な寸法を持ってもよい。このようにすると、流体の排出時に開放弁が流出することを防止できる。この場合、前記摺動軸における前記摺動規制部の少なくとも近傍部分は、前記軸受孔内で回転可能な寸法を持ってもよい。これにより、摺動規制部が摺動軸と一体に形成されていても、摺動軸を回して摺動規制部の向きを変えることによって、摺動規制部が軸受孔を通過するように、開放弁を圧力開放蓋に設置することができる。従って、摺動規制部を後付けする場合と比べて、圧力開放蓋の設置が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によると、緊急時には流体の排出を効率的に行うことができると共に安全性や耐久性に優れた強固な回転防止機能を備えた、簡単な構造で使用しやすい圧力開放蓋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図2は、実施形態に係る圧力開放蓋が排水マスに設けられた様子を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る圧力開放蓋の全体構成を示す斜視図であり、(a)は、開放弁の閉鎖時の様子を示し、(b)は、開放弁の浮上時の様子を示す。
【
図4】
図4は、
図3に示す圧力開放蓋を分解した様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)~(d)は、実施形態に係る圧力開放蓋における回転防止部のバリエーションを示す斜視図である。
【
図6】
図6(a)~(c)は、実施形態に係る圧力開放蓋における弁本体の平面形状のバリエーションを示す平面図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係る圧力開放蓋の全体構成を示す斜視図であり、(a)は、表側から見た様子を示し、(b)は、(a)に示す状態から摺動軸を軸回りに90度回転させた状態を裏側から見た様子を示す。
【
図8】
図8(a)~(e)は、変形例1に係る圧力開放蓋に開放弁を装着する様子を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る圧力開放蓋を裏側から見た斜視図であり、(a)は、通常の状態を示し、(b)は、開放弁が僅かに回転した状態を示す。
【
図10】
図10(a)及び(b)は、
図9(a)及び(b)の要部を拡大した斜視図であり、
図10(c)及び(d)は、変形例2に係る圧力開放蓋の要部を裏側から見た斜視図であり、(a)は、通常の状態を示し、(b)は、開放弁が僅かに回転した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
以下、実施形態に係る圧力開放蓋について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0019】
<排水配管>
本実施形態の圧力開放蓋は、例えば
図1に示す排水配管1に設けられる。排水配管1は、トイレ等の屋内排水設備2と下水管(図示省略)とを接続する。排水配管1には複数の排水マス3及び排水マス4が設けられる。排水マス3及び排水マス4は、排水配管1中のゴミ等の汚物の除去や点検を行うために設置される。ここで、排水配管1の下流に設ける排水マス4は、排水配管1を逆流する排水の上流側への侵入を防止する逆流防止マスであってもよい。排水配管1は、例えば塩化ビニル管であってもよい。排水配管1には、下流に向かって緩やかな下り勾配が設けられていてもよい。排水配管1は、汚水用の排水配管と雨水用の排水配管とを組み合わせた配管であってもよい。
【0020】
<圧力開放蓋の構成>
図2に示すように、本実施形態の圧力開放蓋100は、主に、蓋本体110と開放弁150とを備え、例えば、排水マス3の点検口3aに設置される。蓋本体110及び開放弁150は、例えばポリ塩化ビニル等の合成樹脂で構成される。点検口3aは、例えば直径50~300mm程度の円形形状を有する。
【0021】
以下、
図3及び
図4を参照しながら、圧力開放蓋100の詳細について説明する。尚、
図3及び
図4では、圧力開放蓋100の構造の一部を切り欠いて示している。また、
図3(a)は、開放弁150の閉鎖時の様子を示し、
図3(b)は、開放弁150の浮上時の様子を示す。
【0022】
圧力開放蓋100において、蓋本体110の中央部には流体排出部120が設けられる。流体排出部120は、排出孔121と軸受部122と軸受支持部123とを備える。排出孔121の開口面積は、圧力開放蓋100の平面視における面積の20%以上である。軸受支持部123は、排出孔121の周縁から中央に向かって延びる。軸受部122は、軸受孔122aを有すると共に、軸受支持部123に支持されて流体排出部120の略中央に位置する。本例では、軸受支持部123は、軸受部122から十字状に延びる4本の支持部材を有し、排出孔121は、当該4本の支持部材で区画された、平面視において扇形状の4つの孔部分を有する。
【0023】
開放弁150は、弁本体151と摺動軸152と回転防止部153とを備える。弁本体151は、平面視において例えば真円形状を有し、流体排出部120の全体を覆う。摺動軸152は、弁本体151の中央部に設けられると共に、軸受孔122aに摺動可能に挿入される。回転防止部153は、弁本体151から摺動軸152を取り囲むように垂下する。回転防止部153は、軸受支持部123と対向するように、弁本体151の外端と中心との中間よりも当該中心側にのみ配置される。本例では、回転防止部153は、排出孔121を構成する4つの孔部分のそれぞれに配置された、平面視において円弧状の4つの回転防止部153である。
【0024】
<圧力開放蓋の動作>
圧力開放蓋100は、通常の排水状態では、
図3(a)に示すように、開放弁150によって排出孔121を塞いでいる。具体的には、蓋本体110の中央部の流体排出部120は、蓋本体110の周縁部よりも、開放弁150の弁本体151の厚さ分だけ低くなっている。この流体排出部120上の凹部に開放弁150が嵌め合わされ、軸受部122及び軸受支持部123によって開放弁150が支持される。開放弁150が嵌め合わされた状態では、圧力開放蓋100の表面は略平坦であり、開放弁150の摺動軸152の根元部分(弁本体151への取付部分)が、軸受部122の軸受孔122a内に位置する。
【0025】
一方、排水の逆流が起きた緊急時に、開放弁150に上向きの流体圧力がかかると、
図3(b)に示すように、摺動軸152が軸受孔122aに沿って上方に移動して開放弁150が浮上する。これにより、排出孔121が開放され、蓋本体110と開放弁150との間の間隙から流体が排出される。本例では、開放弁150が浮上した際に摺動軸152が軸受孔122aから抜けることを防止するために、摺動軸152における弁本体150と反対側の先端部に、軸受孔122aよりも大きい寸法を持つ固定コマ154が設けられる。固定コマ154は、開放弁150の摺動軸152を軸受孔122aに挿入し、摺動軸152の先端部が軸受孔122aから露出した状態で、当該先端部に後付けで取り付けられる。固定コマ154は、例えばポリ塩化ビニル等の合成樹脂で構成される。
【0026】
尚、開放弁150によって排出孔121が閉鎖された
図3(a)に示す状態で、排水配管1からの臭気が外部に漏れることを防止するために、開放弁150の弁本体151の外周にゴムパッキン155を設けて、開放弁150を蓋本体110に密着させてもよい。ゴムパッキン155は、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)又はSBR(スチレン・ブタジエンゴム)で構成されてもよい。
【0027】
<蓋枠>
圧力開放蓋100は、
図3及び
図4に示すように、蓋本体110を支持する円筒状の蓋枠111を有してもよい。蓋枠111は、本例では、排水マス3の点検口3aに挿入装着される。蓋枠111は、径方向内側に突き出た蓋支持部111aで蓋本体110の外周部110aを支持する。蓋枠111は、例えばポリ塩化ビニル等の合成樹脂で構成される。蓋枠111と蓋本体110との密着性(嵌合力)を増すためにVパッキン112を設けてもよい。本例では、蓋本体110における流体排出部120の外周側に、Vパッキン112を係止するパッキン係止部110bを設け、パッキン係止部110bに係止されたVパッキン112によって、蓋本体110を蓋枠111に固定する。Vパッキン112は、例えばポリエチレンで構成されてもよい。
【0028】
<摺動軸及び軸受孔>
摺動軸152の断面及び軸受孔122aはそれぞれ、
図4に示すように、平面視において非真円形状、例えば略四角形状を有してもよい。断面が非真円形状の摺動軸152と、当該摺動軸152の外側に当該摺動軸152が上下方向に摺動可能な僅かな隙間を持ち且つ当該摺動軸152の全周を囲む軸受孔122aとを組み合わせると、摺動軸152の軸回りの回転が軸受孔122aの内壁との接触により阻害される。これにより、開放弁150の回転を防止することができる。本例では、摺動軸152の断面及び軸受孔122aの平面形状を略四角形状としたが、これに代えて、楕円形状、多角形状、又は外周に突出部を設けた異形形状等としてもよい。
【0029】
<回転防止部>
開放弁150において、回転防止部153は、弁本体151の外端と中心との中間よりも当該中心側にのみ配置されていれば、その配置位置や形状は特に限定されない。例えば、
図5(a)に示すように、回転防止部153は、弁本体151の外端と中心との中間に近い位置に設けてもよいし、
図5(b)に示すように、弁本体151の中心に近い位置に設けてもよい。また、
図5(c)に示すように、摺動軸152の軸方向に弁本体151から離れるに従って回転防止部153が摺動軸152に接近するように、回転防止部153を摺動軸152の軸方向に対して傾斜させてもよい。このようにすると、開放弁150が浮上し排出孔121が開放されて流体が排出される際に、回転防止部153によって流体の流れが阻害されにくくなる。尚、回転防止部153の平面形状は円弧状に限定されず、例えば、
図5(d)に示すように、線状にしてもよいし、或いは、その他の形状にしてもよい。
【0030】
<開放弁の形状>
本例では、
図6(a)に示すように、開放弁150の弁本体151は、平面視において真円形状を有していたが、これに代えて、弁本体151は、平面視において真円形状とは異なる形状を有してもよい。例えば
図6(b)に示すように、弁本体151は、平面視において楕円形状を有してもよい。或いは、弁本体151は、平面視において多角形状等の他の非真円形状を有してもよい。また、例えば
図6(c)に示すように、弁本体151の周縁には、弁本体151の外方に突出する突出部151aが設けられてもよい。
図6(c)では、平面視において略半円状の4つの突出部151aを真円形状の弁本体151の周縁に等間隔で設けた場合を例示している。しかし、突出部151aを設ける弁本体151は非真円形状を有してもよいし、突出部151aの平面形状、設置数、設置位置等は特に限定されない。
【0031】
前述の通り、蓋本体110における流体排出部120の上側には、開放弁150の弁本体151の形状(突出部151aを含む)に応じた平面形状を持つ凹部が設けられる。このため、弁本体151を非真円形状にしたり、弁本体151に突出部151aを設けることによって、開放弁150の回転は、開放弁150が嵌合される凹部の内壁との接触によって阻害されることになる。
【0032】
<実施形態の特徴>
本実施形態の圧力開放蓋100によると、開放弁150の摺動軸152を摺動可能に支持する軸受支持部123と、開放弁150において摺動軸152を取り囲むように垂下する回転防止部153とが対向する。このため、回転防止部153の変位が軸受支持部123によって規制されることにより、開放弁150の回転が防止されるので、安全性や耐久性に優れた強固な回転防止機能を実現できる。
【0033】
また、本実施形態の圧力開放蓋100によると、開放弁150の外端と中心との中間よりも当該中心側にのみに回転防止部153が配置されると共に、開放弁150により覆われる排出孔121の開口面積が圧力開放蓋100の面積の20%以上である。このため、流体の逆流で開放弁150が浮上した際に、回転防止部153により流体の流れが阻害されにくくなり、十分な開口面積を持つ排出孔121から、流体の排出を効率的に行うことができる。例えば、流体と共にゴミなどの異物が流入してきた場合にも、当該異物が滞留しにくくなるので、流体を効率的に排出することができる。また、回転防止部153の設置位置を開放弁150の中央よりとすることにより、開放弁150の重さが開放弁150の中央に集中するので、開放弁150が回転した場合に開放弁150が元の位置に戻りやすくなる。
【0034】
以上のように、本実施形態の圧力開放蓋100は、簡単な構造でありながら、使用しやすいものである。
【0035】
本実施形態の圧力開放蓋100において、開放弁150の弁本体151が、平面視において真円形状とは異なる形状を有すると、真円形状を有する場合と比べて、開放弁150の回転がより強固に防止される。
【0036】
本実施形態の圧力開放蓋100において、開放弁150の弁本体151の周縁に、弁本体151の外方に突出する突出部151aが設けられると、突出部151aによって、開放弁150の回転がより強固に防止される。この場合、真円形状とは異なる形状を有する弁本体151の周縁に突出部151aを設けると、開放弁151の回転がさらに強固に防止される。
【0037】
(評価例)
以下、圧力開放蓋100の面積に対する排出孔121の開口面積を変えながら、開放弁150の動作試験を行った結果について説明する。
【0038】
具体的には、圧力開放蓋100を設けた排水配管を満水にして閉鎖した状態(満管状態)にすると、圧力開放蓋100の開放弁150が浮上して水(流体)が排出されるが、このとき、圧力開放蓋100を蓋枠111に嵌合させているVパッキン112が水圧に耐えられずに圧力開放蓋100が外れるかどうかを確認する蓋外れ確認試験を実施した。
【0039】
蓋外れ確認試験では、落差90cmの排水配管(75mm径、約5.5m長)を強制的に満管状態にした上で、約27Lの水を逆流させて試験を行った。圧力開放蓋100としては、蓋外径が146mm、排出孔121の開口面積が円の直径に換算して12mm、20mm、32mmの3種類を用意した。その結果、排出孔121の開口面積が円の直径に換算して12mm及び20mmの圧力開放蓋100は外れたが、32mmの圧力開放蓋100は外れなかった。
【0040】
以上の蓋外れ確認試験の結果から、排出孔121の開口面積は、圧力開放蓋100の面積の20%程度以上に設定するのが好ましいことが分かった。尚、圧力開放蓋100の外れにくさには、蓋枠111とVパッキン112との嵌合力も影響するので、試験した圧力開放蓋100ではいずれも、蓋枠111とVパッキン112との嵌合力を7kgf(68.6N)に設定した。これは、圧力開放蓋100の直径10mm当たりの嵌合力が約0.45kgfの条件に相当する。
【0041】
(変形例1)
変形例1の圧力開放蓋100が前記実施形態と異なる点は、
図7に示すように、摺動軸152における弁本体151と反対側の先端部に固定コマ154を設ける代わりに、当該先端部自体を、開放弁150が浮上した際に摺動軸152が所定の距離以上摺動しないように規制する摺動規制部152aとして構成することである。前記実施形態では、摺動軸152と別体で固定コマ154を設けたが、本変形例1では、摺動規制部152aは摺動軸152と一体で設けられる。尚、
図7において、
図3及び
図4に示す前記実施形態の圧力開放蓋100と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0042】
摺動規制部152aは、軸受孔122a内で回転不能な寸法を持つ。軸受孔122aは、平面視において、摺動規制部152aの最大寸法よりも大きい第1開口寸法と、摺動規制部152aの最大寸法よりも小さく且つ摺動規制部152aの最小寸法よりも大きい第2開口寸法の両方を有する。例えば平面視において摺動規制部152aが最大寸法12mm、最小寸法9mmの長方形状であるとすると、軸受孔122aは13mmの第1開口寸法、10mmの第2開口寸法を持つ長方形状である。これにより、
図7(a)に示すように、摺動規制部152aが軸受孔122aを通れるように摺動軸152の向きを調整して、摺動軸152を軸受孔122aに挿入した後、
図7(b)に示すように、軸受孔122aを通過した摺動規制部152aを摺動軸152の軸回りに90度回転させれば、摺動軸152が軸受孔122aから抜けることを摺動規制部152aによって防止できる。
【0043】
本変形例1では、摺動軸152は、摺動規制部の少なくとも近傍に、軸受孔122a内で回転可能な寸法を持つ回転可能部152bを有する。軸受孔122aが例えば13mmの第1開口寸法及び10mmの第2開口寸法を持つ場合、回転可能部152bの断面は7mm四方の形状を持つ。これにより、
図7(a)に示すように、摺動軸152の軸方向に対して垂直な方向から、摺動規制部152aの最大寸法の側面を見た場合、摺動軸152の下部形状はL字状になる。尚、摺動軸152の根元部分(弁本体151への取付部分)は、開放弁150の閉鎖時に軸受孔122aに挿入可能な範囲で、回転可能部152bよりも太く構成されてもよい。
【0044】
以下、
図8を参照しながら、本変形例1の圧力開放蓋100において開放弁150を弁本体110に装着する様子を説明する。まず、
図8(a)に示すように、摺動規制部152aが軸受孔122aを通れるように摺動軸152の向きを調整した後、
図8(b)に示すように、摺動軸152を軸受孔122aに途中まで挿入する。次に、
図8(c)に示すように、軸受孔122aを通過した摺動規制部152aを摺動軸152の軸回りに90度回転させた後、
図8(d)に示すように、開放弁150が弁本体110に嵌合されるように、摺動軸152の根元まで軸受孔122aに挿入する。これにより、
図8(e)に示すように、流体の逆流時に開放弁150が浮上しても、摺動軸152が軸受孔122aから抜けることを摺動規制部152aによって防止できる。
【0045】
尚、
図8(b)に示す状態から
図8(c)に示す状態まで、摺動軸152つまり開放弁150を90度回転させることができるように、回転防止部153の下端は、摺動軸152の回転可能部152bの上端よりも上側に位置する。これにより、回転防止部153が軸受支持部123に当たらないように、開放弁150を回転させることができる。
【0046】
以上に説明した本変形例1の圧力開放蓋100によると、摺動軸152における弁本体151と反対側の先端部が、開放弁150が浮上した際に摺動軸152が所定の距離以上摺動しないように規制する摺動規制部152aであり、摺動規制部152aは、軸受孔122a内で回転不能な寸法を持つ。このため、流体の逆流時に開放弁150が浮上しても、摺動軸152が軸受孔122aから抜けることを摺動規制部152aによって防止できるので、流体の排出時に開放弁150が流出することを防止できる。
【0047】
また、本変形例1の圧力開放蓋100によると、前記実施形態のように、摺動軸152の先端部に後付けで固定コマ154を設ける必要が無い一方、
図8に示すように、摺動軸152を軸受孔122aに挿入して回転させるだけで、開放弁150を弁本体110に装着することができるので、圧力開放蓋100の組立・設置作業が容易になる。また、弁本体110からの開放弁150の取り外しも、
図8に示す工程を逆に行うだけで良いため、圧力開放蓋100を容易に分解できるので、施工後のメンテナンス性も向上する。
【0048】
尚、本変形例1の圧力開放蓋100において、摺動軸152の根元部分(弁本体151への取付部分)を回転可能部152bよりも太く構成すれば、前記実施形態で説明したように、摺動軸152の軸回りの回転が軸受孔122aの内壁との接触により阻害されるので、摺動軸152も開放弁150の回転防止に寄与できる。しかし、回転防止部153のみでも十分な回転防止機能が得られるので、摺動軸152に強度上の問題が無ければ、摺動軸152の根元部分も回転可能部152bと同等の細さで構成してもよい。
【0049】
(変形例2)
図9は、前記実施形態の圧力開放蓋100を裏側から見た図であり、
図9(a)は、通常の状態を示し、
図9(b)は、開放弁150が僅かに(摺動軸152の軸回りに約5°)回転した状態を示す。また、
図10(a)及び(b)は、
図9(a)及び(b)の要部を拡大した図である。
図9(b)及び
図10(b)に示すように、開放弁150の回転は、回転防止部153が軸受支持部123に当たることによって阻害される。このとき、
図9(a)及び
図10(a)に示す通常の状態(非回転状態)で、回転防止部153の端面(開放弁150の回転方向に位置する端面)が、当該端面と対向する軸受支持部123の側面と平行であると、
図9(b)及び
図10(b)に示す回転状態では、回転防止部153の端面と軸受支持部123の側面とを面接触させることができない。言い換えると、回転防止部153が軸受支持部123と点接触又は線接触するため、軸受支持部123への荷重の集中に起因して軸受支持部123が破損する恐れがある。
【0050】
それに対して、変形例2の圧力開放蓋100においては、
図10(c)に示す非回転状態(通常の状態)において、回転防止部153の端面が軸受支持部123の側面に対して斜めになるように、回転防止部153を配置することによって、
図10(d)に示す回転状態において、回転防止部153の端面と軸受支持部123の側面とを面接触させる。これにより、開放弁150が回転して回転防止部153が軸受支持部123と接触したときの接触面積を最大化できるので、軸受支持部123への荷重の集中を防止して、軸受支持部123の破損リスクを低減することができる。
【0051】
(その他の実施形態)
前記実施形態(変形例を含む。以下同じ。)では、排水配管1を構成する排水マス3の点検口3aに圧力開放蓋100を設ける場合を例示した。しかし、これに代えて、或いは、これに加えて、排水マス4(逆流防止マス)の点検口に圧力開放蓋100を設けてもよいし、排水配管1の他の点検口に圧力開放蓋100を設けてもよい。また、
図1に示すような汚水用の排水配管1の点検口に限定されず、雨水用の排水配管の点検口に圧力開放蓋100を設けてもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、軸受支持部123が、軸受部122から十字状に延びる4本の支持部材を有する場合を例示した。しかし、軸受支持部123を構成する支持部材の数や形状は特に限定されない。
【0053】
また、前記実施形態では、開放弁150が単一の摺動軸152を有する場合を例示した。しかし、摺動軸152の数、つまり、蓋本体110の軸受孔122aの数は、2つ以上であってもよい。
【0054】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。さらに、以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 排水配管
2 屋内排水設備
3 排水マス
3a 点検口
4 排水マス(逆流防止マス)
100 圧力開放蓋
110 蓋本体
110a 外周部
110b パッキン係止部
111 蓋枠
111a 蓋支持部
112 Vパッキン
120 流体排出部
121 排出孔
122 軸受部
122a 軸受孔
123 軸受支持部
150 開放弁
151 弁本体
151a 突出部
152 摺動軸
152a 摺動規制部
152b 回転可能部
153 回転防止部
153a 周方向端面
154 固定コマ
155 ゴムパッキン