(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025148970
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】カップ部を有する衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 3/10 20060101AFI20251001BHJP
A41C 3/00 20060101ALI20251001BHJP
A41C 3/12 20060101ALI20251001BHJP
A41C 3/14 20060101ALI20251001BHJP
【FI】
A41C3/10 A
A41C3/00 Z
A41C3/12 A
A41C3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049373
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】中西 沙瑛香
(72)【発明者】
【氏名】三津井 玖美
(72)【発明者】
【氏名】徳田 奈保
【テーマコード(参考)】
3B131
【Fターム(参考)】
3B131AA15
3B131AA17
3B131AB04
3B131BA41
3B131BB01
3B131BB07
3B131BB34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】成長期の様々な体型に、サイズを気にせず安心して着用できるカップ部を有する衣類を提供する。
【解決手段】パッド104はカップ部101に少なくとも3箇所で結合されており、カップ部101上部の肩ストラップ位置とバストトップ点Tとを通る第1の仮想線L1とパッド104の周縁のうち、第1の交点11、第2の交点12を通り、バストトップ点Tを中心とする仮想円Rにおいて、第1の仮想線L1上の第2の交点を通る半径と中心角が45°の角度をなす着用時の脇側方向の半径である第2の仮想線L2とパッド104の周縁との交点を第3の交点13としたとき、パッド104とカップ部101との結合箇所が、少なくとも、第1の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内、第2の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内および第3の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内に設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バストを被覆するカップ部を有する衣類であって、
カップ部(前身頃)、後身頃、肩ストラップおよび一対のパッドを含み、
前記肩ストラップは、前記カップ部(前身頃)の上部に設けられ、
前記パッドは、前記カップ部(前身頃)に、少なくとも3箇所で結合されており、
前記カップ部(前身頃)上部の前記肩ストラップ位置とバストトップ点とを通る直線を第1の仮想線と規定し、前記第1の仮想線と前記パッドの周縁との交点のうち、上側の交点を第1の交点とし、
前記第1の仮想線と前記パッドの周縁との交点のうち、下側の交点を第2の交点とし、
前記バストトップ点を中心とする仮想円において、前記第1の仮想線上の前記第2の交点を通る半径と中心角が45°の角度をなす着用時の脇側方向の半径を第2の仮想線と規定し、前記第2の仮想線と前記パッドの周縁との交点を第3の交点としたとき、
前記パッドと前記カップ部(前身頃)とは、少なくとも、前記第1の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある第1の結合箇所、前記第2の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある第2の結合箇所、および、前記第3の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある第3の結合箇所で結合されていることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記パッドは、前記カップ部(前身頃)に、4箇所で結合されており、
前記パッドと前記カップ部(前身頃)とは、前記第1の結合箇所、前記第2の結合箇所および前記第3の結合箇所に加え、第4の結合箇所で結合されており、
前記第1の仮想線を基準として、前記第3の交点と対称となる位置を第4の交点としたとき、前記第4の結合箇所は、前記第4の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内に設けられている、請求項1記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記第2の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある結合箇所と、前記第3の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある結合箇所との間の領域は、
前記バストトップ点から前記パッドの下縁に下ろした点を含む15mmから35mmの領域である、請求項1または2記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記カップ部(前身頃)が、表布および肌側布からなる二重構造であり、
前記表布と前記肌側布との間にパッドが配置されており、前記パッドは前記肌側布に固着されている、請求項1または2記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
衣類がブラジャーである、請求項1または2記載のカップ部を有する衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部を有する衣類に関し、特に、成長期の様々な体型においても、サイズを気にせずに着用することができるブラジャー等のカップ部を有する衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バストの膨らみが形成されつつある10代前半の成長段階からブラジャーを着用することが推奨されている。成長段階のバストは、大人のバストと比較すると、張り及び硬さがある、またはバージスラインがあいまいであるなどの特徴を有する。また、成長段階のバストは、段階に応じて形状が変化する。このため、大人用のブラジャーとは別に、成長段階のバストの特徴を考慮して設計されたブラジャーが提案されている。例えば、バストが下部から成長してくることを考慮し、カップ下側部材とカップ上側部材とを縫着してカップ部を形成し、カップ下側部材の伸びをカップ上側部材の伸びよりも大とするブラジャーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バストの成長過程において、バストが膨らむ前段階として、バストトップ周りが大きくなり始める。そして、この時期は、刺激で痛みを感じることもある。そのため、バストが全く膨らんでいない状態からバストトップが膨らみ始める段階においても、バストを保護する必要がある。
図7に、バストの成長過程の図を示す。
図7(A)は、バストの成長の第1ステップを示す図である。図示のように、バストは、バストトップ周りから大きくなり始める。次に、
図7(B)は、バストの成長の第2ステップを示す図である。図示のように、第2ステップでは、バストのふくらみが横に広がり、バストの輪郭がわかるようになる。次に、
図7(C)は、バストの成長の第3ステップを示す図である。図示のように、第3ステップになると、バスト全体が大きくなり、大人のバストに近づいていく。これまで、前記第1ステップから第3ステップの各段階を対象としたブラジャーは提供されている。しかし、着用者は、前記のどのステップのブラジャーを選択するかの判断で迷うことが多いものの、フィッティングに抵抗感を抱きやすい年齢でもある。また、成長期においてはバストを含む身体は日々成長するため、サイズの変化にも追随できることが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、成長期の様々な体型に、サイズを気にせず安心して着用できるカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、バストを被覆するカップ部を有する衣類であって、
カップ部(前身頃)、後身頃、肩ストラップおよび一対のパッドを含み、
前記肩ストラップは、前記カップ部(前身頃)の上部に設けられ、
前記パッドは、前記カップ部(前身頃)に、少なくとも3箇所で結合されており、
前記カップ部(前身頃)上部の前記肩ストラップ位置とバストトップ点とを通る直線を第1の仮想線と規定し、前記第1の仮想線と前記パッドの周縁との交点のうち、上側の交点を第1の交点とし、
前記第1の仮想線と前記パッドの周縁との交点のうち、下側の交点を第2の交点とし、
前記バストトップ点を中心とする仮想円において、前記第1の仮想線上の前記第2の交点を通る半径と中心角が45°の角度をなす着用時の脇側方向の半径を第2の仮想線と規定し、前記第2の仮想線と前記パッドの周縁との交点を第3の交点としたとき、
前記パッドと前記カップ部(前身頃)とは、少なくとも、前記第1の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある第1の結合箇所、前記第2の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある第2の結合箇所、および、前記第3の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある第3の結合箇所で結合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、成長期の様々な体型に、サイズを気にせず安心して着用できるカップ部を有する衣類を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第一の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第一の実施形態に係るブラジャーを装着した状態でのパッドの結合箇所の位置を説明する図である。
【
図3】
図3は、本発明のカップ部を有する衣類におけるパッドの結合箇所の位置を説明する図である。
【
図4】
図4は、従来のカップ部を有する衣類におけるパッドの結合箇所の位置を説明する図である。
【
図5】
図5は、第二の実施形態に係るブラジャーにおけるパッドの結合箇所の位置を説明する図である。
【
図6】
図6は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第三の実施形態に係るキャミソールを示す斜視図である。
【
図7】
図7(A)、(B)、(C)は、バストの成長段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカップ部を有する衣類において、前記パッドは、前記カップ部(前身頃)に、4箇所で結合されており、前記パッドと前記カップ部(前身頃)とは、前記第1の結合箇所、前記第2の結合箇所および前記第3の結合箇所に加え、第4の結合箇所で結合されており、前記第1の仮想線を基準として、前記第3の交点と対称となる位置を第4の交点としたとき、前記第4の結合箇所は、前記第4の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内に設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明のカップ部を有する衣類において、前記第2の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある結合箇所と、前記第3の交点の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内にある結合箇所との間の領域は、前記バストトップ点から前記パッドの下縁に下ろした点を含む15mmから35mmの領域であることが好ましい。
【0011】
本発明のカップ部を有する衣類において、前記カップ部(前身頃)が、表布および肌側布からなる二重構造であり、前記表布と前記肌側布との間にパッドが配置されており、前記パッドは前記肌側布に固着されていることが好ましい。
【0012】
本発明のカップ部を有する衣類において、衣類がブラジャーであることが好ましい。
【0013】
本発明のカップ部を有する衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0014】
(第一の実施形態)
図1に、本発明のカップ部を有する衣類の第一の実施形態に係るブラジャー100を示す。本実施形態のブラジャー100は、カップ部(前身頃)101、後身頃102、一対の肩ストラップ103および一対のパッド104を主要構成要素とする、バストが成長段階にある若年女性用(ジュニア用)のブラジャーである。本実施形態のブラジャー100は、バック布である後身頃102が連結係止部を有していない、被って着用するタイプのブラジャーである。一対の肩ストラップ103は、カップ部(前身頃)101の上部に設けられている。本実施形態においては、一対の肩ストラップ103は、背中側において後身頃102と一体に形成されている。そして、カップ部(前身頃)101には、一対のパッド104が、各々3箇所でバストに対応する位置に結合されている。
【0015】
図2は、立位(立っている状態)において本発明のブラジャーを装着した状態を、構造を分かりやすくするために、表布を外した状態で図示したものである。パッド104は、SA、SBおよびSCの3箇所で、肌側布101Bに縫着(結合)されている。前記結合箇所の位置について
図3を参照してさらに説明する。カップ部(前身頃)101上部の肩ストラップ103の位置(肩ストラップが幅広の場合は、幅方向の略中央の位置)とバストトップ点Tとを通る直線を第1の仮想線L1とする。この第1の仮想線L1とパッド104の周縁との交点のうち、上側の交点を第1の交点11とする。また、第1の仮想線L1とパッド104の周縁との交点のうち、下側の交点を第2の交点12とする。そして、バストトップ点Tを中心とする仮想円Rにおいて、第1の仮想線L1上の第2の交点12を通る半径と中心角が45°をなす着用時の脇側方向の半径を第2の仮想線L2と規定し、第2の仮想線L2とパッド104の周縁との交点を第3の交点13とする。なお、本実施形態においては、パッド104が略円形であるため、図面においてはパッド104と仮想円Rとはほぼ一致している。
【0016】
本発明において、パッド104とカップ部(前身頃)101との結合箇所は、第1の交点11、第2の交点12、第3の交点13を基準とする少なくとも3箇所である。第1の結合箇所SAは、第1の交点11の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内、第2の結合箇所SBは、第2の交点12の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内、第3の結合箇所SCは、第3の交点13の前中心側5mmから脇側10mmの範囲内に設けられている。
【0017】
肩ストラップ103の引き方向に位置する第1の交点11および第2の交点12を基準とする所定位置に結合箇所を設けることにより、肩ストラップ103の引き上げる力をパッド104に効果的に作用させることができる。そして、パッド104下部において、結合箇所間の間隔を狭くすることで、サポート感を維持できる範囲で身生地を伸ばしつつ、パッド下部において身生地の伸びる分量を押さえて、下カップ領域のバージスライン付近を支える効果を生じさせることができる。また、身生地が伸びる際には、各結合箇所を結んだ三角形の下辺が狭いことで、パッド104のバストトップ点Tからのずれを軽減することができる。バストの下部は、バストトップ付近に比べてトップ周径が小さいので、パッド104の結合箇所間の幅が狭くても着用感が損なわれない。最もバスト容量のある中央部分の伸びを確保することで、前中心側への融通を効かせることができる。
【0018】
サイズ変化にともなうフィット性維持は衣類のバスト領域の横方向の伸びによって、サポート力発現は縦方向の伸びと肩ストラップ103の引き上げる力とで実現させることができる。したがって、上述のバスト成長の第3ステップのように、バストが成長して硬く丸くなってくる段階であっても、生地の伸びでバスト全体をカバーするとともに、パッド下部の間隔が狭くなるように設けた結合箇所と肩ストラップ103からの引き上げ力によってバストを支えることができる。そして、生地が伸びたときにもパッド104が適切な位置でバストを包み込めるので、ひとつの商品で、例えば2SサイズからLサイズまでといった複数のサイズに対応することが可能である。
【0019】
前記結合箇所を3箇所に設ける際、
図4に示すように、それぞれの結合箇所を結んだ線が略正三角形になるような均等位置としたブラジャー200は、従来から存在している。しかし、本発明に求められるような、成長期の様々な体型において、サイズを気にせず着用できる衣類を実現するためには、以下の点が問題となる。一つの製品で複数のサイズに対応させるには、単に伸び縮みすればよいのではない。成長過程においては、バストサイズが大きくなるにつれて、バスト下部をサポートする構造が必要となる。略正三角形の位置で結合した場合、前身頃は伸ばすことができる。しかし、単に伸びるだけの構造では、バストのボリュームが出てくると、着用時にバスト下部のサポート感が十分得られず、着心地に問題が生じる場合がある。さらに、サイズが大きい人が着用したときに、バストトップ位置とパッドの位置とがずれるという課題が生じる。バストトップ位置とパッドの位置とがずれると、やはり着心地が悪くなる。そこで、本発明においては、着用者のサイズに関わらず、バストトップ点とパッドの位置関係を適切にするために、パッドと前身頃との結合位置を検討し、特定の位置を結合箇所としたパッド下部が最も狭い辺となる三角形とすることにより、ボリュームが大きくなってもバスト下部をしっかり支えて上に引き上げることを可能とした。
【0020】
本実施形態では、パッド104は、カップ部(前身頃)101に、結合箇所SA、SBおよびSCの3箇所で結合されているが、カップ部(前身頃)101の伸びに影響がなく効果が損なわれない範囲であれば、他にも結合箇所を設けてもよい。パッド104のサイズが大きい場合等においては、結合箇所を増やすことで、パッドを安定して保持することができる。なお、パッドや衣類自体のサイズが大きくなった場合であっても、結合箇所Bと結合箇所Cとの間の領域の距離は、サイズに合わせて変える必要はなく、前記領域は、バストトップ点Tからパッド104の下縁に下ろした点(バージスの最下点付近)を含んだ、15mmから35mmの領域であることが好ましい。
【0021】
前記領域においては、バストのサポート力を高めるために、パッド104に補強布等のサポート部材を設けてもよい。補強布の幅は、5mm~15mm程度であることが好ましい。サポート部材に用いることのできる素材としては、パワーネット、ツーウェイトリコット、ワンウェイトリコネット等があげられる。また、補強布に代えて、あるいは補強布とともに、テープの接着や樹脂含浸等の方法での伸び制御を行ってもよい。
【0022】
第3の結合箇所SCの位置は、第1の仮想線L1上の前記第2の交点を通る半径に対して、仮想円Rにおける中心角が35°以上60°以下の角度をなす範囲内としてもよいが、パッド104のサイズが大きい場合は、第2の交点12からの距離が長くなる(円弧が長くなる)ため、例えば、下限値の35°付近の角度を採ることが好ましい。
【0023】
本発明において、パッド104の素材は、ウレタンフォームであることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。パッド104に使用する素材としては、ウレタンフォームの他、例えば、伸縮性のあるダブルラッセル、シリコン等が挙げられる。パッド104の素材は、カップ部等の身生地よりは伸びないものの、伸縮性のある「伸びるパッド」を使用することが好ましい。カップ部(前身頃)にパッド104を使用することにより、バストトップが膨らみ始め、刺激による痛みを感じるようになったバストを保護することができる。
【0024】
本発明において、パッド104の厚みは、2mm~10mmの範囲が好ましく、より好ましくは2mm~6mmの範囲であり、さらに好ましくは4~6mmの範囲である。これにより、軽い着心地とバストの保護を同時に実現することができる。本実施形態では、パッド104は略円形状であるが、しずく型、レモン型、楕円形などであってもよく、特に形状は問わない。略円形状でない場合は、バストトップ点Tを中心として、パッドに内接または外接する仮想円において、第2の仮想線L2を規定すればよい。
【0025】
また、パッド104は、肌側面および肌側と反対側の面の少なくとも一方の面に、さらに、伸縮性のある生地等のシート材を貼り付けて形成してもよい。これにより、直接肌に当たる場合でも、肌触りをよくすることができる。
【0026】
本実施形態において、カップ部(前身頃)101は、表布101Aと肌側布101Bとの二重構造になっており、パッド104は、表布101Aと肌側布101Bとの間に挟まれて配置されている。そして、本実施形態では、パッド104は肌側布101Bのみに縫着することで、カップ部(前身頃)101に結合されている。パッドの結合を、縫着等の手段を用いて行う場合には、肌側布101Bのみに結合させると、着用時の表側から見た際の意匠性に影響を及ぼさない。パッド104とカップ部(前身頃)101との結合は、縫着の他、接着(ドット接着)等の方法を採用することもできる。縫着の場合、縫目の長さは5mm~15mm程度であることが好ましい。縫目の方向は、パッドの周縁に沿う方向であっても交差する方向であってもよいが、パッドの周縁に沿う方向の場合は、縫目の長さは、カップ部(前身頃)101の伸びへの追随の観点から、より短くすることが好ましい。なお、パッドの周縁に沿う方向に縫目を設ける場合の本発明における結合箇所の位置は、縫目の中央部分の位置で規定するものとする。なお、パッド104の形状によっては、周縁部から内側に入った部分でカップ部(前身頃)101に結合してもよい。
【0027】
パッド下部が脇側に伸び、バージスラインの外側にパッド周縁部が位置するようなパッド形状の場合、とくに第3の結合箇所SCは、パッド104の周縁部から内側に入った、バージスライン位置付近の領域に設けることが好ましい。このような場合、第3の結合箇所SCの位置は、バストトップ点Tを中心としてバージスラインよりも外側を通る仮想円Rの円弧と、第1の仮想線L1上の第2の交点12を通る第1の半径に対し着用時の脇側方向において35°の角度をなす第2の半径と、第1の仮想線L1上の第2の交点12を通る第1の半径に対し着用時の脇側方向において60°の角度をなす第3の半径とで囲まれる扇形領域内に設けるとよい。
【0028】
また、本実施形態において、カップ部(前身頃)101は、左右一体に形成されているが、本発明はこれに限られず、左右を別部材で構成し、前中心部分で連結してもよい。
【0029】
カップ部(前身頃)101、後身頃102、肩ストラップ103としては、伸縮性のある素材を使用することができる。前記素材としては、例えば、弾性糸を用いた編地または生地等があげられる。中でも、ベア天竺が好ましい。また、肌触りの良さの点から、ポリウレタン入りのツーウェイトリコットも好ましい。前記素材は、パッド104よりも伸縮性が高いことが好ましい。
【0030】
本実施形態のブラジャー100においては、一対の肩ストラップ103は、背中側において後身頃102と一体に形成されている。ここで、肩ストラップ103は、カップ部101を肩から吊り下げるものであればよく、本実施形態のブラジャー100のようにタンクトップのような幅の広い、いわゆるラウンドタイプのストラップには限定されず、紐や布テープであってもよい。肩ストラップ103の態様は、一対のカップ部101に対応して一対の肩ストラップ103がそれぞれカップ部上部と後身頃102とに連結される態様に限定されず、例えば、背中側で2本の肩ストラップ103が一体となり後身頃102に取り付けられる態様であってもよい。また、カップ部101のみに肩ストラップ103が取り付けられている、いわゆる「ホルターネック」タイプであってもよい。肩ストラップ103の取り付け位置は、カップ部(前身頃)101の形状やカップ部を有する衣類のデザインによって決定することができる。
【0031】
本実施形態のブラジャー100では、連結係止部を有していない後身頃(バック布)102を使用しているが、着脱自在な連結係止部を背中心付近に有している態様とすることもできる。前記連結係止部としては、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))、グリッパー、ボタン、紐、面ファスナーなどを、デザインや用途に応じて適宜選択して使用することができる。なお、上記のフック・アンド・アイやグリッパー、ボタンを用いる場合には、複数の留め位置を予め設けておくことにより、締め付け具合を微調整できるようにしておくことも好ましい。なお、上記以外の他の種類の係止具を使用してもよい。また、後身頃が連結係止部を有しておらず、前中心を係脱自在のホック等で連結するフロントホックタイプや、バック布を結んで係止するタイプであってもよい。
【0032】
本発明のカップ部を有する衣類は、上述した第1ステップから第3ステップまでの成長過程の全体で対応可能であるとともに、例えば、2SサイズからLサイズを、ワンサイズでカバーすることができる。
【0033】
このようなバストの形状変化に追随・対応したバストボリュームのサポートが可能である本発明のカップ部を有する衣類は、成長期以外にも、衣類のサイズ設定において境界サイズに該当する着用者においても、バストボリュームのサポートを良好に行い、良好な着用感を得ることが可能である。ここで、境界サイズとは、各サイズ区分で想定されている寸法範囲のうち上限近傍または下限近傍に位置する寸法を意味している。具体的には、例えば、JIS規格では、Sサイズ(72cm~80cm)、Mサイズ(79cm~87cm)、Lサイズ(86cm~94cm)、LLサイズ(93cm~101cm)、3L(100cm~108cm)と規定されている。これらのS~3Lの各サイズ範囲のうち、異なる2つのサイズに重複して設定されている寸法、例えば、SサイズとMサイズでは、79cm~80cmが境界サイズに該当する。なお、ここでは、境界サイズとしてJIS規格に定められたS~3Lの区分を用いた場合を説明したが、これに限定されるものではなく、他の規格によって定められたサイズ区分における境界サイズにも適用可能である。
【0034】
(変形例)
本変形例のブラジャーは、第一の実施形態に係るブラジャー100において、パッド104をカップ部(前身頃)101の表布101Aに結合した構成である。本変形例においては、肌側布101Bを設けずに、パッド104を直接肌に触れるように形成してもよい。
【0035】
(第二の実施形態)
図5に、本発明のカップ部を有する衣類の第二の実施形態に係るブラジャー200を示す。本実施形態のブラジャー200は、カップ部(前身頃)101、後身頃102、一対の肩ストラップ103および一対のパッド104を主要構成要素とする、バストが成長段階にある若年女性用(ジュニア用)のブラジャーである。本実施形態は、パッド104が、第1の結合箇所SA、第2の結合箇所SBおよび第3の結合箇所SCに加え、第4の結合箇所SDの計4箇所で、肌側布101Bに縫着(結合)されている以外は、第一の実施形態のブラジャー100と同様の構成を有している。第4の結合箇所SDは、第1の仮想線L1を基準として、第3の交点13と対称となる位置を第4の交点24としたとき、第4の交点24の前中心側(第2の交点12から離れる側)5mmから脇側(第2の交点12側)10mmの範囲内に設けられている。すなわち、第4の結合箇所SDは、第1の仮想線L1上の第2の交点12を通る第1の半径と中心角が45°の角度をなし第2の仮想線L2とは反対側に位置する半径(第3の仮想線L3)と、パッド104の周縁との交点(第4の交点24)を含む、第2の交点12側に10mmの位置から、第2の交点12から離れる側に5mmの範囲内の領域に設けられることになる。なお、本実施形態においては、パッド104が略円形であるため、図面においてはパッド104と仮想円Rとはほぼ一致している。着用者の体形(バストサイズが大きい場合やバスト形状)によっては、着用時に、カップ部を有する衣類の前中心側が伸び過ぎてしまう場合がある。そこで、パッド104の前中心側において、肌側布101Bとの結合箇所を追加し、サポート力を維持する検討を試みた。その結果、前記領域に第4の結合箇所SDを設けることによって、本発明の効果である、バストトップ点とパッドの位置関係を適切にしてサイズの変化に追随するという効果は維持しつつ、安定したサポート力を実現することができた。
【0036】
(第三の実施形態)
図6に、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第三の実施形態に係るキャミソール600の斜視図を示す。このキャミソール600のブラジャー相当部分は、
図1で説明した第一の実施形態のブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、キャミソール600は、カップ部(前身頃)101および後身頃(バック布)102の下側に、胸下部身頃630を有している。その他の態様は
図1に示したブラジャー100と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。ここでは、第一の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するキャミソールについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するキャミソールとすることもできる。本例においては、後身頃(バック布)102がない態様(胸下部身頃630が背中を覆う態様)としてもよい。
【0037】
本実施形態においては、ブラジャー相当部分の下側に身頃を設ける態様に限られず、キャミソールの身頃内側にブラジャー相当部分を設けてもよい。この場合、キャミソールは、ブラジャー相当部分を覆うように身頃を有している。このような構成にすることにより、本発明の効果を有しつつ、着用時の外観のバリエーションを多様にすることができる。また、カップ部を、よりアウターにひびかなくすることもできる。
【0038】
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャーおよびキャミソールをあげて本発明を説明したが、本発明のカップ部を有する衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、ボディースーツ、ブラスリップ、水着、レオタード、その他各種のカップ部を有する衣類に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のカップ部を有する衣類は、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、ファンデーション衣類、スポーツ衣類、アウターなど、各種のカップ部を有する衣類に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
100、200 ブラジャー
101 カップ部(前身頃)
101A 表布
101B 肌側布
102 後身頃(バック布)
103 肩ストラップ
104 パッド
11 第1の交点
12 第2の交点
13 第3の交点
24 第4の交点
SA 第1の結合箇所
SB 第2の結合箇所
SC 第3の結合箇所
SD 第4の結合箇所
400 ブラジャー(従来品)
600 キャミソール
630 胸下部身頃
L1 第1の仮想線
L2 第2の仮想線
L3 第3の仮想線
T バストトップ点
R 仮想円