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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025149027
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】メンブレン、電気音響変換装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/22 20060101AFI20251001BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20251001BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20251001BHJP
   H04R 7/14 20060101ALI20251001BHJP
【FI】
H04R7/22
H04R17/00
B81B3/00
H04R7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049454
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宗明
【テーマコード(参考)】
3C081
5D004
5D016
【Fターム(参考)】
3C081AA07
3C081BA09
3C081BA22
3C081BA31
3C081BA45
3C081BA46
3C081BA48
3C081BA55
3C081CA32
3C081CA38
3C081CA45
3C081DA03
3C081DA04
3C081DA06
3C081DA07
3C081DA29
3C081DA31
3C081EA03
3C081EA21
5D004AA07
5D004FF09
5D016FA03
5D016HA04
(57)【要約】
【課題】他の部材との接着強度を向上可能なメンブレンの提供。
【解決手段】本メンブレンは、枠部と、前記枠部の内縁よりも内側に位置する中央部と、前記枠部の内縁と中央部の外縁とを接続する接続部と、を有し、前記枠部の上面及び下面に凹凸構造が設けられている。
【選択図】図40
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠部と、
前記枠部の内縁よりも内側に位置する中央部と、
前記枠部の内縁と中央部の外縁とを接続する接続部と、を有し、
前記枠部の上面及び下面に凹凸構造が設けられている、メンブレン。
【請求項2】
前記凹凸構造は、前記枠部の上面及び下面のいずれか一方から突起する複数の第1凸部と、前記枠部の上面及び下面のいずれか他方から反対面側に窪む複数の第1凹部と、を含み、
平面視で、前記第1凸部と前記第1凹部とは重なる位置にある、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項3】
前記凹凸構造は、前記枠部の上面から突起する複数の第1凸部と、前記枠部の下面から突起する複数の第2凸部と、前記枠部の下面から上面側に窪む複数の第1凹部と、前記枠部の上面から下面側に窪む複数の第2凹部と、を含み、
平面視で、前記第1凸部と前記第1凹部とは重なる位置にあり、前記第2凸部と前記第2凹部とは重なる位置にある、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項4】
前記接続部は、前記中央部の上面よりも突起し、
前記中央部の上面と垂直な方向に切った断面視で、前記接続部の上面及び下面は、同一方向に湾曲する、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項5】
前記接続部は、所定間隔で配置された複数のスリットを有する、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項6】
前記枠部と、前記接続部と、前記中央部とは、一体構造である、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項7】
前記中央部に振動板が固定されている、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に配置されるMEMSデバイスと、
前記MEMSデバイス上に配置される請求項1乃至7のいずれか一項に記載のメンブレンと、を有し、
前記MEMSデバイスは、枠状の固定部、平面視で前記固定部の内側に配置される可動部、前記固定部と前記可動部とを各々の上面よりも下面に近い位置で接続する捻じれ梁及び駆動梁、並びに前記駆動梁の下面に配置される駆動源、を有し、
前記中央部の下面は、前記可動部の上面に接合され、
前記枠部の下面は、前記固定部の上面に接合されている、電気音響変換装置。
【請求項9】
前記メンブレン上に配置される蓋部材をさらに有し、
前記蓋部材は枠状の厚板部、及び前記厚板部の内側に配置される、開口部を備えた薄板部、を含み、
前記枠部の上面は、前記厚板部の下面に接合されている、請求項8に記載の電気音響変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メンブレン、電気音響変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)における微細加工技術によって作製されたMEMSデバイスが開発されている。MEMSデバイスは、半導体プロセスにより製造されることから、ばらつきが少なく、小型、薄型、軽量、低消費電力、良好な周波数特性等の多くの特長がある。MEMSデバイスは、固定部と可動部を有し、可動部を駆動することにより、例えば、イヤホンやマイク等の電気音響変換装置に用いることができる(例えば、特許文献1参照)。電気音響変換装置では、例えば、MEMSデバイス上にメンブレンが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許明細書第9980051号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、他の部材との接着強度を向上可能なメンブレンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係るメンブレンは、枠部と、前記枠部の内縁よりも内側に位置する中央部と、前記枠部の内縁と中央部の外縁とを接続する接続部と、を有し、前記枠部の上面及び下面に凹凸構造が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、他の部材との接着強度を向上可能なメンブレンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する上面側斜視図である。
図2】第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する下面側斜視図である。
図3】第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する上面図である。
図4】第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する下面図である。
図5】第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する断面図である。
図6】MEMSデバイス20における応力の低減について説明する図(その1)である。
図7図6に示す構造の効果を示す図である。
図8】MEMSデバイス20における応力の低減について説明する図(その2)である。
図9】MEMSデバイス20における応力の低減について説明する図(その3)である。
図10】MEMSデバイス20における応力の低減について説明する図(その4)である。
図11】MEMSデバイス20における共振周波数のシミュレーション結果である。
図12】第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する上面側斜視図である。
図13】第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する下面側斜視図である。
図14】第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する断面図である。
図15】第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する上面側分解斜視図である。
図16】第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する下面側分解斜視図である。
図17】第1実施形態に係る電気音響変換装置の製造方法について説明する図(その1)である。
図18】第1実施形態に係る電気音響変換装置の製造方法について説明する図(その2)である。
図19】第2実施形態に係るMEMSデバイスを例示する上面図である。
図20】MEMSデバイス20AとMEMSデバイス20との比較結果を示す図である。
図21】第3実施形態に係る電気音響変換装置を例示する上面側分解斜視図である。
図22】MEMSデバイス及びメンブレンにおける共振周波数のシミュレーション結果である。
図23】捻じれ梁及び駆動梁の厚さを変えたときの共振周波数のシミュレーション結果である。
図24】第4実施形態に係る電気音響変換装置を例示する上面側分解斜視図である。
図25】第4実施形態に係る電気音響変換装置を構成する基板を例示する上面図である。
図26】基板上にMEMSデバイスを配置する工程を示す上面図である。
図27】基板上にMEMSデバイスを配置する工程を示す断面図である。
図28】第4実施形態の変形例1に係る電気音響変換装置を構成する基板を例示する上面図である。
図29】第4実施形態の変形例2に係る電気音響変換装置を構成する基板を例示する上面図である。
図30】第4実施形態の変形例3に係る電気音響変換装置を構成する基板を例示する上面図である。
図31】基板上にMEMSデバイスを位置合わせした様子を示す上面図である。
図32】第5実施形態に係るMEMSデバイスにおける配線を例示する下面図である。
図33】MEMSデバイスの可動部を可動させたときの応力分布のシミュレーション結果である。
図34】第5実施形態の変形例1に係るMEMSデバイスにおける配線を例示する下面図である。
図35】第6実施形態に係るMEMSデバイスにおける金属膜を例示する下面図である。
図36】MEMSデバイス20Cを用いた電気音響変換装置1Cの下面図である。
図37】可動部の変位の測定フローである。
図38】第6実施形態の変形例1に係るMEMSデバイスにおける金属膜を例示する下面図である。
図39】第6実施形態の変形例2に係るMEMSデバイスにおける金属膜を例示する下面図である。
図40】第7実施形態に係る電気音響変換装置を例示する断面図である。
図41】メンブレン30Dを例示する上面図である。
図42】第7実施形態の変形例1に係る電気音響変換装置を例示する部分断面図である。
図43】第7実施形態の変形例2に係る電気音響変換装置を例示する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
〈第1実施形態〉
(MEMSデバイス)
図1は、第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する上面側斜視図である。図2は、第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する下面側斜視図である。図3は、第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する上面図である。図4は、第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する下面図である。図5は、第1実施形態に係るMEMSデバイスを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。
【0010】
なお、各図面において、参考のためX軸、Y軸及びZ軸を有する直交座標を示す場合がある。X方向、Y方向、Z方向のそれぞれにおいて、矢印の向く側を「+側」、その反対側を「-側」と称する場合がある。また、各部材のZ+側の面を上面、Z-側の面を下面と称する場合がある。ただし、これらは、実施形態に係るMEMSデバイス等の使用時における向きを制限するものではなく、実施形態に係るMEMSデバイス等の向きは任意である。また、対象物をZ+側からZ-側に視る、又は対象物をZ-側からZ+側に視ることを平面視と称する場合がある。
【0011】
図1図5を参照すると、MEMSデバイス20は、固定部21と、可動部22と、複数の捻じれ梁23と、複数の駆動梁24と、複数の駆動源25とを有する。捻じれ梁23と、駆動梁24と、駆動源25は、同数である。なお、図2及び図4では、便宜上、駆動源25をドットパターンで示している。以降の図においても、同様の表示を用いる場合がある。
【0012】
固定部21は、平面視で枠状に形成されている。固定部21は、平面視で外縁と内縁とを有する。内縁と外縁とは相似形であってもよいし、相似形でなくてもよい。例えば、内縁が多角形、外縁が円形又は楕円形であってもよい。図1図5の例では、固定部21の内縁は正方形であり、外縁は正方形又は長方形である。外縁が正方形又は長方形である場合、ブレードダイシングで容易に加工できるため、加工費を低減できる点で好ましい。
【0013】
固定部21の外縁の1辺の長さは、例えば、3mm~10mm程度とすることができる。固定部21の幅(内縁から外縁までの距離)は、例えば、0.3mm~1.0mm程度とすることができる。固定部21の厚さは、例えば、100μm~500μm程度とすることができる。
【0014】
なお、本願において、四角形等の多角形に関しては、多角形の隅に角丸めや面取り等の加工が施されている場合や、部分的に突起や溝が設けられている場合も、多角形に含まれるものとする。
【0015】
可動部22は、平面視で固定部21の内側に配置され、固定部21に対して可動自在に支持される。平面視で、可動部22の中心Oは、固定部21の内縁の中心と一致することが好ましい。可動部22は、平面視で、可動部22の中心Oに関して点対称であることが好ましい。可動部22の厚さは、固定部21の厚さと同一である。可動部22の上面は、固定部21の上面と同一平面上にある。可動部22の下面は、固定部21の下面と同一平面上にある。
【0016】
可動部22の上面及び下面が固定部21の上面及び下面と同一平面上にない構造としてもよい。例えば、意図的に駆動源25の成膜条件や分極条件を変更すること等により駆動梁24を反らせ、固定部21に対して可動部22の高さを上面側にずらす構造とすることができる。固定部21の上面と可動部22の上面との距離は、例えば、20~100μm程度とすることができる。また、固定部21の下面と可動部22の下面との距離は、例えば、20~100μm程度とすることができる。
【0017】
なお、本願において、同一平面とは、両者の高さの差が20μm以下である場合を指すものとする。
【0018】
可動部22は、平面視で、中心から放射状に延びる、捻じれ梁23と同数の延伸部を備えている。そして、各々の延伸部は、上面、下面、1つの端面、及び端面と繋がる2つの側面を含む。図1図5の例では、可動部22は、平面視で、中心から放射状に延びる4個の延伸部を備えた十字形状である。
【0019】
なお、可動部22が十字形状の場合、上面及び下面以外の面については、長手方向において対向する2組の面を端面と称し、それ以外の面を側面と称する。すなわち、可動部22が十字形状の場合、可動部22は、同一面積の4個の端面と、同一面積の8個の側面を有する。8個の側面は、隣接する2個の側面を4組含む。なお、端面と側面との間、及び側面と側面との間に位置する角丸めや面取り等は、端面や側面には含まない。
【0020】
捻じれ梁23及び駆動梁24は、固定部21と可動部22とを各々の上面よりも下面に近い位置で接続する。複数の捻じれ梁23は、可動部22を外側から支持する。捻じれ梁23は、弾性変形が可能である。捻じれ梁23は、可動部22よりも薄い。捻じれ梁23の厚さは、例えば、5μm~60μm程度とすることができる。捻じれ梁23は、可動部22の側面の下面側の端部に接続されている。図1図5の例では、捻じれ梁23は4個設けられている。各々の捻じれ梁23は、平面視で、可動部22の中心Oに関して点対称に配置されることが好ましい。
【0021】
捻じれ梁23の上面は、固定部21及び可動部22の上面よりも低い位置にある。捻じれ梁23の下面は、固定部21及び可動部22の下面と同一平面上にある。平面視で、各々の捻じれ梁23は、例えば、L字型の領域を含む。捻じれ梁23がL字型の領域を含むと、捻じれ梁23の長さを長くすることができる。これにより、捻じれ梁23が捻じれやすくなるため、可動部22の変位量を大きくすることができる。その結果、MEMSデバイス20を電気音響変換装置に用いたときに、高音圧を得ることができる。
【0022】
可動部22が平面視で十字形状である場合、可動部22が十字の長手方向の長さと同一の長さの辺を有する正方形の場合と比べて、捻じれ梁23の長さを長くすることができる。これにより、可動部22の変位量を大きくすることができる。その結果、MEMSデバイス20を電気音響変換装置に用いたときに、高音圧を得ることができる。また、可動部22が平面視で十字形状である場合、可動部22が十字の長手方向の長さと同一の長さの辺を有する正方形の場合と比べて軽量化できるため、共振周波数を高くすることができる。
【0023】
複数の駆動梁24は、各々の捻じれ梁23に対して1つずつ設けられている。図1図5の例では、捻じれ梁23は4個設けられているため、駆動梁24も4個設けられている。駆動梁24は、一端が捻じれ梁23と接続され、他端が固定部21の内縁と接続される。詳細には、駆動梁24は、固定部21の内側面の下面側の端部に接続されている。各々の駆動梁24は、平面視で固定部21の内縁を構成する4辺のうちの1辺のみと接続されている。なお、捻じれ梁23及び駆動梁24の個数は、4個以外であってもよい。
【0024】
駆動梁24は、弾性変形が可能である。駆動梁24の厚さは、捻じれ梁23の厚さと同一である。駆動梁24の上面は、固定部21及び可動部22の上面よりも低い位置にある。駆動梁24の下面は、固定部21及び可動部22の下面と同一平面上にある。また、駆動梁24の上面は、捻じれ梁23の上面と同一平面上にある。駆動梁24の下面は、捻じれ梁23の下面と同一平面上にある。各々の駆動梁24は、平面視で、可動部22の中心Oに関して点対称に配置されることが好ましい。
【0025】
駆動源25は、各々の駆動梁24の下面に配置される。駆動源25は、駆動力を高める観点から、各々の駆動梁24の下面の略全面に配置されることが好ましい。駆動源25は、例えば、印加された電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電材料を含んで構成される圧電膜を有する。駆動源25は、交流信号の入力に応じて振動する。
【0026】
駆動源25は、例えば、駆動梁24の下面に配置される下部電極、下部電極に積層される圧電膜、圧電膜に積層される上部電極を含む構成とすることができる。上部電極及び下部電極は、例えば、金(Au)や白金(Pt)等から構成することができる。上部電極及び下部電極は、複数の膜が積層された構造としてもよい。
【0027】
圧電膜は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)から構成することができる。圧電膜は、PNZT(チタン酸ジルコン酸ニオブ酸鉛)、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)、PLT(チタン酸ランタン鉛)、PMN(マグネシウム酸ニオブ酸鉛)、PMNN(マンガン酸ニオブ酸鉛)、BaTiO(チタン酸バリウム)等から構成されてもよい。
【0028】
駆動源25は、下部電極、圧電膜、及び上部電極の3層構造には限定されない。駆動源25は、例えば、2層以上の圧電膜と中間電極とを有してもよい。この場合、下部電極上に圧電膜及び中間電極が必要な数だけ交互に積層され、最後に最上層の中間電極上に圧電膜及び上部電極が順次積層される。中間電極は、上部電極及び下部電極と同様の材料から構成することができる。
【0029】
駆動源25が圧電膜と中間電極とを有する場合、中間電極がグランドに接続され、下部電極及び上部電極に駆動信号が供給される。下部電極及び上部電極に駆動信号が供給されると、駆動源25は駆動信号の電圧にしたがって変位する。なお、駆動信号が中間電極に供給され、下部電極及び上部電極がグランドに接続されるようにしても同様に駆動することができる。圧電膜をn層とすることにより、駆動源25の駆動電圧を、圧電膜が1層の場合の1/nにできる。
【0030】
MEMSデバイス20は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて、半導体プロセスにより作製することができる。ただし、MEMSデバイス20は、これに限定されず、Si(シリコン)基板、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、ガラス基板、又はセラミック基板等から構成されるものであってもよい。この中で、微細加工を容易に行える等の観点から、SOI基板やSi基板が好ましい。
【0031】
SOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなる支持層の上に酸化シリコンからなる埋め込み(BOX:Buried Oxide)層が設けられ、埋め込み層の上にさらに単結晶シリコンからなる活性層が設けられた基板である。MEMSデバイス20をSOI基板から作製する場合、固定部21及び可動部22は、例えば、支持層、埋め込み層、及び活性層から形成することができる。また、捻じれ梁23及び駆動梁24は、例えば、活性層から形成することができる。活性層は薄いため、活性層から形成された捻じれ梁23及び駆動梁24は弾性を有する。
【0032】
図3に示すように、平面視で、各々の駆動梁24は、固定部21の内縁と接続される第1辺24aに対して平行な方向の幅が、第1辺24aに向かって徐々に広くなる領域を有する。図3の例では、平面視で、各々の駆動梁24は、第1辺24aの位置において、第1辺24aに対して平行な方向の幅が最も広くなる。
【0033】
また、図3の例では、平面視で、各々の駆動梁24は、捻じれ梁23と接続される第2辺24bの位置において、第1辺24aに対して平行な方向の幅が最も狭くなる。なお、図3の例では、第1辺24aと第2辺24bとは平行である。
【0034】
また、図3に示すように、平面視で、各々の駆動梁24は、台形状の第1領域24と、第1領域24よりも小面積の台形状の第2領域24とを含んでもよい。第1領域24は、第1辺24aに近い側に位置し、第2領域24は、第1領域24よりも第1辺24aから遠い側に位置する。また、第1領域24及び第2領域24を構成する台形の各々において、第1辺24aに近い側を下底、第1辺24aから遠い側を上底としたときに、第2領域24を構成する台形の下底の長さは、第1領域24を構成する台形の上底の長さと同等以下である。平面視で、第1辺24aと、第1領域24を構成する台形の上底と、第2領域24を構成する台形の上底は、平行であってもよい。
【0035】
図3の例では、平面視で、第1領域24を構成する台形の一方の脚と、第2領域24を構成する台形の一方の脚は、第1辺24aに垂直である。また、平面視で、第1領域24を構成する台形の他方の脚と、第2領域24を構成する台形の他方の脚は、第1辺24aに対する傾斜方向が異なる。
【0036】
すなわち、第1領域24を構成する台形の他方の脚は、第1辺24aが固定部21の角部から離れるにつれて第1辺24aに近づくように傾斜する。また、第2領域24を構成する台形の他方の脚は、第1辺24aが固定部21の角部から離れるにつれて第1辺24aから遠ざかるように傾斜する。
【0037】
図3の例では、平面視で、第2領域24を構成する台形の上底が捻じれ梁23と接続されるが、第2領域24を構成する台形の一方の脚又は他方の脚が捻じれ梁23と接続されてもよい。詳しくは、図19を参照しながら後述する。
【0038】
また、平面視で、第1辺24aと第1領域24との間に矩形状等の第3領域24を有し、第1領域24と第2領域24との間に台形状等の第4領域24を有してもよい。なお、第3領域24を有さずに、第1領域24を構成する台形の下底が第1辺24aと一致してもよい。また、第4領域24を有さずに、第1領域24を構成する台形の上底が第2領域24を構成する台形の下底と一致してもよい。
【0039】
このように、MEMSデバイス20において、平面視で、各々の駆動梁24は、固定部21の内縁と接続される第1辺24aに対して平行な方向の幅が、第1辺24aに向かって徐々に広くなる領域を有する。このような構造により、駆動梁24において固定部21の内縁と接続される部分を幅が広い形状にできるため、可動部22を高トルクかつ大きな変位で可動させることができる。その結果、MEMSデバイス20を電気音響変換装置に用いたときに、高音圧を得ることができる。具体的には、例えば、上記のように、各々の駆動梁24を台形状の第1領域24及び第2領域24を含む形状とすることにより、可動部22を高トルクかつ大きな変位で可動させることができる。
【0040】
また、MEMSデバイス20では、各々の駆動梁24はすべて同形状であり、平面視で可動部22の中心に関して点対称に配置されている。これにより、可動部22を可動させたときに、可動部22が傾きにくくなるため、不要な共振が発生するおそれを低減できる。
【0041】
(MEMSデバイス20における応力の低減)
図6は、MEMSデバイス20における応力の低減について説明する図(その1)である。なお、図6の上部は、MEMSデバイス20の上面側斜視図であり、下部は上部の破線E1の内側の拡大図である。
【0042】
図6の例では、可動部22は、平面視で、中心から放射状に延びる延伸部22a、22b、22c、及び22dを備え、可動部22の中心に関して点対称な十字形状である。図6に示すように、各々の捻じれ梁23は、可動部22を構成する異なる延伸部に含まれる隣接する側面の両方と接続されることが好ましい。図6の例では、平面視で、各々の捻じれ梁23は、隣接する側面の一方の全体と、他方の一部に接続されている。また、平面視で、各々の捻じれ梁23において、隣接する側面の他方に接続される部分E2の角はR状である。
【0043】
このように、各々の捻じれ梁23が隣接する側面の両方と接続されることにより、各々の捻じれ梁23のL字の先端部分が可動部22の隣接する側面の一方に対してL1だけオフセットした構造となる。可動部22の側面の長さが400μmである場合、例えば、L1は50~300μm程度とすることができる。
【0044】
図7は、図6に示す構造の効果を示す図である。図7において、オフセットなしは、各々の捻じれ梁23が可動部22の隣接する側面の一方のみと接続されており図6に示すL1がゼロの場合である。オフセットありは、図6に示す構造の場合である。また、図7において、結果の欄は、可動部22を可動させたときに生じる応力のシミュレーション結果を示すコンター図である。また、結果の欄の矢印は、最大応力部の位置と最大応力の値を示している。ただし、結果に示す図は、構造に示す図に対して上下が反転している。すなわち、結果に示す図は、捻じれ梁23と可動部22との境界付近の応力を示している。
【0045】
図7に示すように、可動部22を可動させると捻じれ梁23と可動部22との境界付近に大きな応力が生じる。しかし、各々の捻じれ梁23と可動部22が接続する部分にオフセットを設けることにより、捻じれ梁23が曲がるときの起点が、捻じれ梁23と可動部22との境界である可動部22の側面からずれるため、最大応力を低減することができる。その結果、捻じれ梁23が破損するおそれを低減できる。
【0046】
図8は、MEMSデバイス20における応力の低減について説明する図(その2)である。なお、図8の上部は、MEMSデバイス20の上面側斜視図であり、下部は上部の破線E3の内側の拡大図である。
【0047】
図8に示すように、MEMSデバイス20では、平面視で、固定部21の内側面21aの各辺から可動部22の側に向かって突起する凸部26を有する。凸部26は、固定部21と同一厚さである。凸部26は、平面視で、例えば略直角三角形である。
【0048】
また、各々の駆動梁24は、固定部21の内側面21aと、内側面21aと連続する凸部26の側面26aに接続されている。平面視で、各々の駆動梁24において、凸部26の側面26aに接続される部分E4の角はR状である。
【0049】
このように、各々の駆動梁24が固定部21の内側面21aと、内側面21aと連続する凸部26の側面26aに接続されることにより、各々の駆動梁24の固定部21との接続部分の一端側が固定部21の内側面21aに対してL2だけオフセットした構造となる。凸部26の側面26aの長さが200μmである場合、例えば、L2は50~150μm程度とすることができる。このようなオフセットを設けることにより、駆動梁24が曲がるときの起点が、駆動梁24と固定部21との境界である固定部21の内側面21aからずれるため、駆動梁24と固定部21との接続部分の一端側に生じる最大応力を低減することができる。その結果、駆動梁24が破損するおそれを低減できる。
【0050】
図9は、MEMSデバイス20における応力の低減について説明する図(その3)である。なお、図9の上部は、MEMSデバイス20の上面側斜視図であり、下部は上部の破線E5の内側の拡大図である。
【0051】
図9に示すように、MEMSデバイス20では、平面視で、固定部21の内側面21aの各辺から外側面の側に向かって窪む凹部27を有する。また、各々の駆動梁24は、固定部21の内側面21aと、内側面21aと連続する凹部27の内側面27aに接続されている。平面視で、各々の駆動梁24において、凹部27の内側面27aに接続される部分E6の角はR状である。
【0052】
このように、各々の駆動梁24が固定部21の内側面21aと、内側面21aと連続する凹部27の内側面27aに接続されることにより、各々の駆動梁24の固定部21との接続部分の他端側が固定部21の内側面21aに対してL3だけオフセットした構造となる。凹部27の内側面27aの長さが400μmである場合、例えば、L3は50~300μm程度とすることができる。このようなオフセットを設けることにより、駆動梁24が曲がるときの起点が、駆動梁24と固定部21との境界である固定部21の内側面21aからずれるため、駆動梁24と固定部21との接続部分の他端側に生じる最大応力を低減することができる。その結果、駆動梁24が破損するおそれを低減できる。
【0053】
図10は、MEMSデバイス20における応力の低減について説明する図(その4)である。なお、図10の上部は、MEMSデバイス20の下面側斜視図であり、下部は上部の破線E7の内側の拡大図である。
【0054】
図10に示すように、MEMSデバイス20では、平面視で、駆動源25の角E8はR状である。このようにすることで、電界集中により駆動源25が破損するおそれを低減できる。
【0055】
(MEMSデバイス20における可動部22の大きさ)
図11は、MEMSデバイス20における共振周波数のシミュレーション結果である。図11において、可動部大は、可動部22の形状が比較的大きい場合であり、可動部小は、可動部22の形状が比較的小さい場合である。図11に示すように、可動部22の大きさを変更することにより共振周波数を調整することができる。具体的には、可動部22を小型化することにより、共振周波数を高くすることができる。ハーマン曲線を考慮すると、可動部22の共振周波数は、1kHz以上3kHz以下であることが好ましく、2kHz付近であるとより好ましい。なお、ハーマン曲線とは、音圧レベルの周波数特性であり、ヘッドフォン等の特性を調整する際の指標として用いられるものである。
【0056】
(電気音響変換装置)
図12は、第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する上面側斜視図である。図13は、第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する下面側斜視図である。図14は、第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する断面図であり、図12のB-B線に沿う断面を示している。図15は、第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する上面側分解斜視図である。図16は、第1実施形態に係る電気音響変換装置を例示する下面側分解斜視図である。
【0057】
図12図16を参照すると、電気音響変換装置1は、基板10と、MEMSデバイス20と、メンブレン30と、振動板40と、蓋部材50と、メッシュ70とを有する。電気音響変換装置1は、イヤホン又は設置型のスピーカーである。
【0058】
基板10は、電気音響変換装置1の土台となる部材である。基板10としては、例えば、ガラスエポキシ基板を用いることができる。基板10として、シリコン基板やセラミック基板を用いてもよい。基板10の厚さは、例えば、0.2mm~0.6mm程度とすることができる。基板10は、例えば金や銅等から形成される配線層を有する。配線層は、基板10の上面10a及び/又は下面10bに設けられてもよいし、基板10の内部に設けられてもよい。すなわち、基板10は、多層配線基板であってもよい。なお、配線層は、パッド、貫通配線、ダミー配線等を含むことができる。
【0059】
基板10の上面10aには、すべての駆動源25に供給する信号の経路となる1対の内部接続用パッド11a及び11bが配置されている。また、基板10の下面10bには、電気音響変換装置1の外部から電気音響変換装置1に信号を供給するための1対の外部接続用パッド12a及び12bが配置されている。
【0060】
内部接続用パッド11aと外部接続用パッド12aとは、基板10を上面10aから下面10bに貫通する貫通配線13aを介して電気的に接続されている。同様に、内部接続用パッド11bと外部接続用パッド12bとは、基板10を上面10aから下面10bに貫通する貫通配線13bを介して電気的に接続されている。
【0061】
また、基板10の下面10bには、外部接続用パッド12a及び12bの極性を示す正極マーク17a及び負極マーク17bが配置されている。正極マーク17aは外部接続用パッド12aが『+』端子であることを示し、負極マーク17bは外部接続用パッド12bが『-』端子であることを示している。
【0062】
また、基板10の下面10bには、貫通孔10yを囲むように、メッシュ70の位置合わせ用マーク18が配置されている。例えば、メッシュ70が円形であれば、位置合わせ用マーク18は円環状とすることができる。この場合、円環の内径をメッシュ70の直径と同程度とすることで、メッシュ70の位置合わせが可能となる。
【0063】
正極マーク17a及び負極マーク17b並びに位置合わせ用マーク18は、例えば、外部接続用パッド12a及び12bと同様の金属材料から形成することができる。正極マーク17a及び負極マーク17b並びに位置合わせ用マーク18の厚さは、例えば、外部接続用パッド12a及び12bと同一とすることができる。なお、正極マーク17a及び負極マーク17b並びに位置合わせ用マーク18は、電気的に未接続(フローティング)であってよい。
【0064】
外部接続用パッド12a及び12b、正極マーク17a及び負極マーク17b、並びに位置合わせ用マーク18は、基板10の下面10bに対して凸となっている。基板10の下面10bにおいて、外部接続用パッド12a及び12b、正極マーク17a及び負極マーク17b、並びに位置合わせ用マーク18が設けられていない領域に、印刷等により樹脂膜を配置してもよい。樹脂膜としては、例えば、ポリイミド膜が挙げられる。
【0065】
樹脂膜の厚さを、外部接続用パッド12a及び12b、正極マーク17a及び負極マーク17b、並びに位置合わせ用マーク18の厚さと同一とすることにより、基板10の下面10b側を平坦化することができる。これにより、基板10の下面10b側を下側として電気音響変換装置1を所定の平面に配置したときに、所定の平面に対して電気音響変換装置1が傾くことを防止できる。
【0066】
基板10の1対の内部接続用パッド11a及び11bは、導電性接合材を介して、MEMSデバイス20の固定部21の下面に配置される1対の導通用パッド28a及び28bと電気的に接続される。
【0067】
基板10は、枠状の上面10aと、下面10bと、上面10a側から下面10b側に窪むキャビティ部10xとを有する。MEMSデバイス20は、駆動電圧を加えると、可動部22が基板10側に変位する。このとき、基板10にキャビティ部10xが設けられていなく基板10の上面が平坦であると、可動部22が基板10と接触するおそれがある。基板10にキャビティ部10xが設けられることで、このような懸念が解消される。基板10の上面10aからキャビティ部10xの底面までの深さは、可動部22の最大変位を考慮して決定されるが、例えば、0.1mm~0.4mm程度とすることができる。
【0068】
キャビティ部10xは、板状の基板の外周部に枠状の基板を接合して形成してもよいし、板状の1枚の基板の中央側に機械加工により掘り込みを設けることで形成してもよい。すなわち、基板10は、複数の基板を接合して形成してもよいし、1枚の基板を機械加工して形成してもよい。
【0069】
なお、基板10にキャビティ部10xの代わりに貫通孔を設ける構造も考えられるが、電気音響変換装置1全体の剛性が確保できないため、基板10にキャビティ部10xを設ける構造の方が有利である。
【0070】
また、基板10にキャビティ部10xを設けることにより、電気音響変換装置1のバックボリュームを形成することができる。これにより、共振周波数での尖鋭度低減の効果を奏する。
【0071】
また、基板10には、貫通孔10yが設けられていることが好ましい。貫通孔10yは、例えば、平面視でキャビティ部10xの中央部に設けることができる。貫通孔10yは、基板10の内側への空気の入出経路となる。すなわち、貫通孔10yを設けることにより、貫通孔10yを介して空気が出入りできるため、MEMSデバイス20の可動部22が可動する際の空気抵抗を低減することができる。その結果、可動部22が可動しやすくなり、可動部22の変位量を大きくすることができる。
【0072】
MEMSデバイス20は、駆動源25を基板10側に向けて、基板10上に配置される。MEMSデバイス20において、例えば、固定部21の下面は、接着層を介して、基板10の上面10aと接合することができる。接着層は、例えば、熱硬化性の接着剤から形成することができる。熱硬化性の接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤等が挙げられる。接着層は、両面テープや紫外線硬化性の接着剤から形成してもよい。
【0073】
固定部21の外側面は、電気音響変換装置1の外部に露出している。すなわち、電気音響変換装置1において、固定部21の外側面の外側には、他の部材は配置されない。平面視で、可動部22、捻じれ梁23、駆動梁24、及び駆動源25は、キャビティ部10xと重なる位置にある。
【0074】
このように、MEMSデバイス20の固定部21の下面と基板10の上面10aとを直接接合することにより、接合用のフレーム等の他の部材が不要となり、また固定部21の外側面の外側には部材が配置されない。そのため、電気音響変換装置1を小型化することができる。
【0075】
メンブレン30は、可撓性を有する膜状部材であり、MEMSデバイス20上に配置される。メンブレン30は、例えば、平面視で矩形である。しかし、これに限定されない。メンブレン30は、平面視で、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形等の他の形状であってもよい。
【0076】
メンブレン30は、枠部31と、枠部31の内縁よりも内側に位置する中央部32と、枠部31の内縁と中央部32の外縁とを接続する接続部33とを有する。メンブレン30において、枠部31の上面と中央部32の上面は、例えば、同一平面上に位置し、枠部31の下面と中央部32の下面は、例えば、同一平面上に位置している。接続部33は、枠部31及び中央部32の上面よりも蓋部材50の方向に突起し、中央部32の上面と垂直な方向に切った断面視で、接続部33の上面及び下面は、同一方向に湾曲する形状である。
【0077】
枠部31の上面及び下面が中央部32の上面及び下面と同一平面上にない構造としてもよい。例えば、意図的にメンブレン30の成形条件を変更すること等により枠部31に対して中央部32の高さをずらす構造とすることができる。枠部31の上面と中央部32の上面との距離は、例えば、20~100μm程度とすることができる。また、枠部31の下面と中央部32の下面との距離は、例えば、20~100μm程度とすることができる。
【0078】
接続部33は、環状に延びる方向に対して略垂直な方向に所定間隔で配置された複数のスリット34を有する。このような構造により、メンブレン30が振動する際、可動部22の変位に伴う中央部32の変位が、固定部21に固定された枠部31からの張力で抑制されにくくなる。
【0079】
メンブレン30の厚さは、例えば、5~50μm程度とすることができる。メンブレン30は、例えば、エラストマーや樹脂から構成することができる。エラストマーとしては、例えは、TPEE(ポリエステル系エラストマー)やTPU(ポリウレタン系エラストマー)等が挙げられる。樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPI(ポリイミド)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等が挙げられる。メンブレン30は、薄い金属から形成してもよい。
【0080】
枠部31と、中央部32と、接続部33とは、構成の簡素化や加工の容易性等の観点から、一体構造であることが好ましいが、異なる部材を接合した構造であってもよい。枠部31、中央部32、及び接続部33が一体構造である場合、例えば、金型を用いて樹脂フィルムを加熱及び加圧することにより、メンブレン30を成形することができる。
【0081】
メンブレン30において、枠部31の下面は、例えば、接着層を介して、MEMSデバイス20の固定部21の上面と接合することができる。また、中央部32の下面は、例えば、接着層を介して、MEMSデバイス20の可動部22の上面と接合することができる。接着層は、例えば、熱硬化性の接着剤から形成することができる。熱硬化性の接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤等が挙げられる。接着層は、両面テープや紫外線硬化性の接着剤から形成してもよい。平面視で、メンブレン30の中央部32及び接続部33は、MEMSデバイス20の固定部21の内側、かつ基板10のキャビティ部10xと重なる位置にある。
【0082】
このように、MEMSデバイス20の固定部21の上面にメンブレン30を固定する構造により、MEMSデバイス20の固定部21の外側にメンブレン30を固定するためのフレームを設けることが不要となる。これにより、MEMSデバイス20の形状を、電気音響変換装置1の外形制約と同程度まで最大化できるため、駆動源25の面積も大きくなり、可動部22を高トルクかつ大きな変位で可動させることができる。その結果、電気音響変換装置1において高音圧を得ることができる。また、フレームが不要となることで、部品点数が減らせるため、工数低減によるタクトタイムの短縮が可能となる。また、製造用設備の費用も抑えることができる。
【0083】
メンブレン30の中央部32は、MEMSデバイス20の可動部22の振動に応じて振動する。これにより、MEMSデバイス20の可動部22の振動に応じた、可聴域の振動数を有する音波が生成される。
【0084】
図12図16の例では、メンブレン30の中央部32の上面に振動板40が固定されている。メンブレン30単体には柔らかい物性が要求されるが、音圧を高めるには硬い領域を設けることが好ましい。メンブレン30の中央部32上に振動板40が配置されることにより、中央部32は硬い領域となるため、音圧を高めることができる。
【0085】
振動板40の材料としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂を用いることができる。振動板40の材料として、アルミニウム等の金属やカーボン等を用いてもよい。振動板40は、例えば、粘着剤や両面テープ等を介して、メンブレン30の中央部32の上面に固定することができる。振動板40の厚さは、例えば、25~100μm程度とすることができる。なお、振動板40は、メンブレン30の中央部32の下面に配置されてもよい。
【0086】
蓋部材50は、必要に応じ、メンブレン30上に配置される。蓋部材50を設けることにより、メンブレン30を保護すると共に、電気音響変換装置1全体の剛性を高めることができる。また、電気音響変換装置1を他の部材に取り付ける際に、蓋部材50を取り付け基準として用いることができる。
【0087】
蓋部材50は、下面側にキャビティ部50xを有する。蓋部材50のキャビティ部50xの外側に位置する外周領域は枠状の厚板部であり、キャビティ部50xは厚板部の内側に配置される薄板部である。蓋部材50の厚板部の下面は、例えば、接着層を介して、メンブレン30の枠部31の上面に接合することができる。接着層は、例えば、熱硬化性の接着剤から形成することができる。熱硬化性の接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤等が挙げられる。接着層は、両面テープや紫外線硬化性の接着剤から形成してもよい。キャビティ部50xは、1又は複数の開口部50yを備えおり、開口部50yを介して音波が出力される。
【0088】
電気音響変換装置1は、蓋部材50を有することにより、薄型ながら剛性を確保することができる。蓋部材50の厚さは、例えば、キャビティ部50xの外側に位置する外周領域で0.3mm程度、キャビティ部50xの部分で0.1mm程度とすることができる。
【0089】
蓋部材50の材料としては、例えば、SUS(ステンレス)やアルミニウム等の金属を用いることができる。蓋部材50の材料として、PC(ポリカーボネート)等の樹脂を用いてもよい。薄型化しつつ剛性を確保する観点からは、蓋部材50の材料として金属を用いると好ましい。
【0090】
メッシュ70は、必要に応じ、基板10の下面10b側に配置される。メッシュ70は、多数の小さな開口を有する。メッシュ70の材料としては、ポリエステル等の樹脂を用いることができる。メッシュ70は、中央に開口を有する接着層60を介して、基板10の貫通孔10yを塞ぐように基板10の下面10bと接合することができる。接着層60は、例えば、両面テープである。
【0091】
メッシュ70を設け、メッシュ70の開口率を調整することで、電気音響変換装置1の共振周波数のQ値を下げることができるため、フラットに近い周波数特性を実現できる。また、メッシュ70を設けることにより、貫通孔10yを介しての空気が出入りを維持しつつ、電気音響変換装置1の内部に塵埃や水などの異物が入り込むおそれを低減できる。
【0092】
図17及び図18は、第1実施形態に係る電気音響変換装置の製造方法について説明する図である。なお、図17及び図18において、太い矢印は工程の流れを示し、細い矢印は部品の供給を示す。また、説明の便宜上、図17では各部材を下側から視た状態を示し、図18では各部材を上側から視た状態を示している。また、便宜上、接着層200及び210をドットパターンで示している。
【0093】
まず、図17の左端に示すように、キャビティ部50x及び開口部50yを有する蓋部材50を準備する。次に、図17の中央に示すように、蓋部材50のキャビティ部50xの外周側を囲む下面全体に、接着層200を環状に配置する。接着層200は、例えば、エポキシ系接着剤から形成することができる。次に、枠部31と、中央部32と、接続部33とを含むメンブレン30を準備し、図17の右端に示すように、接着層200を介してメンブレン30の枠部31の上面を蓋部材50の厚板部の下面に接合する。なお、蓋部材50と接合する前に、メンブレン30の中央部32に接着等により予め振動板40を配置しておく。
【0094】
次に、図18の左端に示すように、基板10及びMEMSデバイス20を準備し、基板10上にMEMSデバイス20を接合する。次に、図18の中央に示すように、MEMSデバイス20の固定部21の上面に、接着層210を環状に配置する。接着層210は、例えば、エポキシ系接着剤から形成することができる。そして、図18の右端に示すように、図17で作製したメンブレン30と蓋部材50とのアッセンブリーを、接着層210を介してMEMSデバイス20の固定部21の上面に接合する。その後、基板10の貫通孔10yを塞ぐように、接着層60を介してメッシュ70を固定することにより、電気音響変換装置1が完成する。なお、メッシュ70は、予め基板10に固定しておいてもよい。
【0095】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、MEMSデバイスにおいて、捻じれ梁と可動部及び駆動梁との接続位置が異なる例を示す。
【0096】
図19は、第2実施形態に係るMEMSデバイスを例示する上面図である。図19に示すMEMSデバイス20Aは、捻じれ梁23と可動部22及び駆動梁24との接続位置がMEMSデバイス20(図3等参照)と相違する。MEMSデバイス20Aでは、MEMSデバイス20と同様に、平面視で、各々の駆動梁24は、固定部21の内縁と接続される第1辺24aに対して平行な方向の幅が、第1辺24aに向かって徐々に広くなる領域を有する。
【0097】
図3に示すMEMSデバイス20では、平面視で、第2領域24を構成する台形の上底が捻じれ梁23と接続されるが、図19に示すMEMSデバイス20Aでは、第2領域24を構成する台形の可動部22に近い側の脚が捻じれ梁23と接続されている。また、第1領域24を構成する台形の下底が第1辺24aと一致している。MEMSデバイス20Aにおいて、第1領域24を構成する台形の上底が第2領域24を構成する台形の下底と一致してもよい。
【0098】
図20は、MEMSデバイス20AとMEMSデバイス20との比較結果を示す図であり、両者の可動部22の変位量と20Hzでの音圧レベルSPLをシミュレーションにより求めたものである。図20に示すように、MEMSデバイス20AとMEMSデバイス20の特性に大きな差はなく、いずれもMEMSスピーカーとして十分に機能し得るが、変位量も音圧レベルもMEMSデバイス20の方が僅かに勝っている。
【0099】
〈第3実施形態〉
第3実施形態では、電気音響変換装置に、形状の異なるメンブレンを採用する例を示す。
【0100】
図21は、第3実施形態に係る電気音響変換装置を例示する上面側分解斜視図である。図21を参照すると、電気音響変換装置1Aは、メンブレン30がメンブレン30Aに置換された点が、電気音響変換装置1(図15等参照)と相違する。
【0101】
メンブレン30Aは、内縁が円形の枠部31と、枠部31の内縁よりも内側に位置する円形の中央部32Aと、枠部31の内縁と中央部32Aの外縁とを接続する接続部33とを有する。中央部32Aの下面は、可動部22の上面と接続される。中央部32Aの上面には、振動板40が配置されている。振動板40の形状も、中央部32Aの形状に対応して円形である。
【0102】
メンブレン30Aにおいて、枠部31の上面と中央部32Aの上面は、例えば、同一平面上に位置し、枠部31の下面と中央部32Aの下面は、例えば、同一平面上に位置している。接続部33は、中央部32Aの上面よりも突起し、中央部32Aの上面と垂直な方向に切った断面視で、接続部33の上面及び下面は、同一方向に湾曲する形状である。接続部33は、環状に延びる方向に対して略垂直な方向に所定間隔で配置された複数のスリット34を有し、平面視で、各々のスリット34の長手方向は、中央部32Aの中心方向を向く。平面視で、各々のスリット34の長手方向は、枠部31の円形の内縁に対して接線方向を向いてもよい。枠部31と、中央部32Aと、接続部33とは、例えば、一体構造である。なお、メンブレン30の場合と同様に、枠部31の上面及び下面が中央部32Aの上面及び下面と同一平面上にない構造としてもよい。
【0103】
図22は、MEMSデバイス及びメンブレンにおける共振周波数のシミュレーション結果である。図22の構造の欄において、MEMSデバイス20の図示は省略されているが、MEMSデバイス及び振動板を備えたメンブレンの共振周波数のシミュレーションである。メンブレン30とメンブレン30Aの材料や厚さは同一である。また、各々の振動板40の材料や厚さは等しく、また矢印部の長さは等しい。
【0104】
図22に示すように、メンブレン30Aは、メンブレン30よりも共振周波数が高い。すなわち、中央部と振動板が矩形の場合に比べて、円形の方が軽量になるため、駆動しやすく、共振周波数が高くなる。また、中央部と振動板が円形の場合は、歪みが少なく、ねじり方向の不要共振が出にくい点でも好ましい。
【0105】
このように、メンブレン30の中央部32A及び振動板40を円形にすると共振周波数が高くなる。また、前述のように、可動部22を軽量化すると共振周波数が高くなる。さらに、図23に示すように、捻じれ梁23及び駆動梁24の厚さによっても共振周波数が変化する。図23は、捻じれ梁及び駆動梁の厚さを変えたときの共振周波数のシミュレーション結果である。なお、駆動源25を構成する圧電膜の厚さ及び圧電膜の層数は同一とした。
【0106】
図23に示すように、メンブレンの中央部及び振動板を円形とし、さらに捻じれ梁23及び駆動梁24の厚さを厚くすることにより、共振周波数を高くできることがわかる。例えば、捻じれ梁23及び駆動梁24の厚さを25μm以上35μm以下とすることにより、共振周波数を1.5kHz~2.5kHz程度に調整できる。これは、前述のとおり、ハーマン曲線を考慮した場合の好適な共振周波数に相当する。また、捻じれ梁23及び駆動梁24の厚さを厚くするほど、高いトルクを得ることができる。
【0107】
〈第4実施形態〉
第4実施形態では、MEMSデバイスに、高さ合わせや位置合わせのためのパッドを配置する例を示す。
【0108】
図24は、第4実施形態に係る電気音響変換装置を例示する上面側分解斜視図である。図25は、第4実施形態に係る電気音響変換装置を構成する基板を例示する上面図である。図24及び図25を参照すると、電気音響変換装置1Bは、基板10に高さ合わせ用パッド14が追加された点が、電気音響変換装置1(図15等参照)と相違する。
【0109】
電気音響変換装置1Bでは、基板10の上面10aの、平面視でMEMSデバイス20の固定部21と重なる領域に、MEMSデバイス20の駆動源25に供給する信号の経路となる1対の内部接続用パッド11a及び11bと、高さ合わせ用パッド14とが配置されている。高さ合わせ用パッド14は、内部接続用パッド11a及び11bとは離隔して配置されている。高さ合わせ用パッド14はダミーパッドであるため、電気的に未接続(フローティング)であってよい。
【0110】
電気音響変換装置1Bでは、基板10の上面10aに、内部接続用パッド11a及び11b並びに高さ合わせ用パッド14を挟んで、MEMSデバイス20の固定部21の下面が接合されている。
【0111】
高さ合わせ用パッド14は、内部接続用パッド11a及び11bと、基板10の上面10aからの高さが等しい。内部接続用パッド11a及び11b、並びに高さ合わせ用パッド14の基板10の上面10aからの高さ(すなわち、厚さ)は、例えば、10μm以上50μm以下程度とすることができる。高さ合わせ用パッド14は、基板10上に配置するMEMSデバイス20の、基板10の上面10aに対する傾きを低減するために設けられる。
【0112】
本実施形態では、平面視で、基板10は、対向する第1辺10及び第2辺10と、対向する第3辺10及び第4辺10とを有する矩形である。そして、内部接続用パッド11a及び11bは、第1辺10に沿って配置されている。
【0113】
この場合、高さ合わせ用パッド14は、少なくとも第2辺10に沿って配置する必要がある。MEMSデバイス20の傾きをより確実に低減するためには、図25に示すように、高さ合わせ用パッド14は、第2辺10、第3辺10、及び第4辺10に沿って1つずつ配置されていることが好ましい。3つの高さ合わせ用パッド14は、例えば、第2辺10、第3辺10、及び第4辺10のそれぞれの中央付近に配置することができる。
【0114】
図26は、基板上にMEMSデバイスを配置する工程を示す上面図である。図27は、基板上にMEMSデバイスを配置する工程を示す断面図であり、図26のC-C線に沿う断面を示している。
【0115】
図26及び図27に示すように、基板10上にMEMSデバイス20を配置するには、まず、図26及び図27の矢印の根元側に示すように、基板10を準備する。そして、矢印に沿って次に、基板10の上面10aに、内部接続用パッド11a及び11bを露出し、かつ各々の高さ合わせ用パッド14を被覆するように、環状に接着層210を配置する。また、接着層210から露出する内部接続用パッド11a及び11b上に、導電性接合材310を配置する。導電性接合材310は、例えば、導電性ペースト剤(例えば、銀ペースト剤)やはんだ等である。
【0116】
そして、矢印に沿って次に、吸着治具400にMEMSデバイス20を吸着し、基板10上に移動させて位置合わせをする。そして、矢印に沿って次に、吸着治具400を下降させて基板10上にMEMSデバイス20を配置して押圧し、その後、吸着を解除して吸着治具400をMEMSデバイス20上から移動させる。このとき、MEMSデバイス20は、内部接続用パッド11a及び11b並びに各々の高さ合わせ用パッド14に支持されるため、基板10の上面10aに対して、ほとんど傾くことなくMEMSデバイス20を固定することができる。
【0117】
すなわち、基板10とMEMSデバイス20との平行性を保ち、かつ基板10とMEMSデバイス20との電気的導通及び接着層210による封止を確実に行うことができる。また、基板10とMEMSデバイス20と接着層210により、設計通りの空間領域を確保することができる。
【0118】
このように、高さ合わせ用パッド14を配置することにより、MEMSデバイス20と周辺部品との組み付け精度を向上することができる。
【0119】
なお、高さ合わせ用パッド14を設ける代わりに、内部接続用パッドの個数を増やし、内部接続用パッドを、例えば、第1辺10に加え、他の辺にも配置する設計も考えられる。しかし、この場合は、内部接続用パッドに接続する貫通配線等も各辺に沿って配置する必要があるため、基板10が大型化するため好ましくない。また、内部接続用パッドの個数が増えると、導電性接合材を用いて接合する箇所が増えるため、接続信頼性の低下が懸念される。本実施形態のように、内部接続用パッドは1対のみとし、内部接続用パッドとは別に高さ合わせ用パッドを設けることで、これらの懸念が解消する。
【0120】
図28は、第4実施形態の変形例1に係る電気音響変換装置を構成する基板を例示する上面図である。図28では、基板10の上面10aに2つの高さ合わせ用パッド14aが配置されている。具体的には、高さ合わせ用パッド14aは、第2辺10と第3辺10とを接続する角部、及び第2辺10と第4辺10とを接続する角部に沿って1つずつ配置されている。
【0121】
図28の場合も、基板10上にMEMSデバイス20を配置する際に、MEMSデバイス20が内部接続用パッド11a及び11b並びに各々の高さ合わせ用パッド14aに支持される。そのため、基板10の上面10aに対して、ほとんど傾くことなくMEMSデバイス20を固定することができる。
【0122】
図29は、第4実施形態の変形例2に係る電気音響変換装置を構成する基板を例示する上面図である。図29では、基板10の上面10aに1つの高さ合わせ用パッド14bが配置されている。具体的には、高さ合わせ用パッド14bは、第2辺10に沿って配置され、さらに第2辺10と第3辺10とを接続する角部、及び第2辺10と第4辺10とを接続する角部に延伸するように1つ配置されている。
【0123】
図29の場合も、基板10上にMEMSデバイス20を配置する際に、MEMSデバイス20が内部接続用パッド11a及び11b並びに高さ合わせ用パッド14bに支持される。そのため、基板10の上面10aに対して、ほとんど傾くことなくMEMSデバイス20を固定することができる。
【0124】
図30は、第4実施形態の変形例3に係る電気音響変換装置を構成する基板を例示する上面図である。図30では、基板10の上面10aに3つの高さ合わせ用パッド14とは別に、さらに第1位置合わせ用パッド15及び第2位置合わせ用パッド16が配置されている。
【0125】
具体的には、第1位置合わせ用パッド15は、基板10の上面10aの、平面視でMEMSデバイス20の固定部21の外側に位置する領域に複数個配置されている。図30の例では、第1位置合わせ用パッド15は、基板10の各々の辺の両端部に沿って1個ずつ配置されており、合計で8個配置されている。
【0126】
第2位置合わせ用パッド16は、基板10の上面10aの、平面視でMEMSデバイス20の固定部21の外側に位置する領域に複数個配置されている。図30の例では、第2位置合わせ用パッド16は、基板10の対向する1組の辺に沿って1つずつ配置されており、合計で2個配置されている。第2位置合わせ用パッド16は、例えば、平面視で、基板10の同じ辺に互いに対向するように配置された2つの第1位置合わせ用パッド15に挟まれる位置に配置することができる。
【0127】
第1位置合わせ用パッド15及び/又は第2位置合わせ用パッド16は、図26及び図27において、基板10上に接着層210やMEMSデバイス20を配置する際の位置合わせに利用することができる。具体的には、第1位置合わせ用パッド15は、例えば、吸着治具400等の装置を用いて基板10上にMEMSデバイス20を配置する際の位置合わせに利用することができる。また、第2位置合わせ用パッド16は、例えば、ロボット等の装置で基板10上に接着層210を配置する際の認識マークとして利用することができる。
【0128】
図31は、基板上にMEMSデバイスを位置合わせした様子を示す上面図である。なお、図31の上部は、基板10及びMEMSデバイス20の全体図であり、下部は上部の破線の内側の拡大図である。
【0129】
図31に示すように、第1位置合わせ用パッド15を位置合わせに利用する場合は、平面視で、各々の第1位置合わせ用パッド15の基板10の中心側を向く辺と、MEMSデバイス20の外縁とが一致するように配置する。これにより、MEMSデバイス20と基板10とを位置合わせすることができる。
【0130】
第2位置合わせ用パッド16を位置合わせに利用する場合は、2つの第2位置合わせ用パッド16を認識マークとして認識することで、MEMSデバイス20と基板10とを位置合わせすることができる。また、2つの第2位置合わせ用パッド16を認識マークとして認識することで、接着層210と基板10とを位置合わせすることができる。
【0131】
なお、第1位置合わせ用パッド15及び第2位置合わせ用パッド16は、基板10上に両方設けてもよいが、用いる装置の仕様に適したいずれか一方のみを設けてもよい。例えば、装置を選択することにより、第2位置合わせ用パッド16のみを用いて、基板10上への接着層210の位置合わせと、MEMSデバイス20の位置合わせの両方を行うことが可能となる。
【0132】
このように、第1位置合わせ用パッド15及び/又は第2位置合わせ用パッド16を配置することにより、MEMSデバイス20と周辺部品との組み付け精度を向上することができる。
【0133】
〈第5実施形態〉
第5実施形態では、MEMSデバイスに配置する配線の引き回しの例を示す。
【0134】
図32は、第5実施形態に係るMEMSデバイスにおける配線を例示する下面図である。図32を参照すると、MEMSデバイス20Bは、1対の導通用パッド28a及び28bと、第1配線41と、第2配線42とを有している。
【0135】
導通用パッド28a及び28b、第1配線41、並びに第2配線42は、MEMSデバイス20Bの駆動源25に供給する信号の経路となる。導通用パッド28a及び28b、第1配線41、並びに第2配線42は、例えば、固定部21の下面に配置することができる。第1配線41及び第2配線42は、固定部21の下面から、駆動梁24、捻じれ梁23、及び可動部22の下面に延伸してもよい。
【0136】
導通用パッド28a及び28b、第1配線41、第2配線42は、例えば、金から形成することができる。導通用パッド28a及び28b、第1配線41、第2配線42の厚さは、例えば、0.05μm以上1.00μm以下程度とすることができる。
【0137】
第1配線41は、1対の導通用パッドの一方である導通用パッド28aと各々の駆動源25の電極の一方とを電気的に接続する。第2配線42は、1対の導通用パッドの他方である導通用パッド28bと各々の駆動源25の電極の他方とを電気的に接続する。
【0138】
具体的には、各々の駆動源25が上部電極及び下部電極を有し、中間電極を有しない場合は、例えば、第1配線41が下部電極と接続され、第2配線42が上部電極と接続される。あるいは、第1配線41が上部電極と接続され、第2配線42が下部電極と接続されてもよい。
【0139】
各々の駆動源25が上部電極、下部電極、及び中間電極を有する場合は、第1配線41が上部電極及び下部電極と接続され、第2配線42が中間電極と接続される。あるいは、第1配線41が中間電極と接続され、第2配線42が上部電極及び下部電極と接続されてもよい。
【0140】
第1配線41は、導通用パッド28aから出て、平面視で複数の駆動源25を囲むように環状に配置され、導通用パッド28aに戻る環状配線41aと、環状配線41aから分岐して各々の駆動源25に接続される分岐配線41bとを含む。第2配線42は、平面視で、環状配線41aよりも内側に配置される。
【0141】
図32の例では、第2配線42は、導通用パッド28bから出て、各々の駆動源25を経由し、導通用パッド28bに戻る。例えば、第2配線42は、隣接する駆動源25同士を直接接続する部分42aを4か所含む。各々の部分42aは、隣接する分岐配線41bを接続する環状配線41aの一部に沿って配置される。このような配置により、第2配線42を導通用パッド28bから出て、各々の駆動源25を経由し、導通用パッド28bに戻すことが容易となる。
【0142】
このように、MEMSデバイス20Bでは、第1配線41が環状配線41aと、分岐配線41bとを含む。また、第2配線42が導通用パッド28bから出て、各々の駆動源25を経由し、導通用パッド28bに戻る。このような配線により、導通用パッド28a及び28bと各々の駆動源25とを接続する第1配線41及び第2配線42の経路を短くできる。
【0143】
そのため、導通用パッド28a及び28bに近い駆動源25に入力される信号に対する、導通用パッド28a及び28bから遠い駆動源25に入力される信号の遅延を抑制することができる。すなわち、導通用パッド28a及び28bに近い駆動源25と、導通用パッド28a及び28bから遠い駆動源25に、位相差の小さい信号を入力することができる。その結果、可動部22の変位量を大きくすることができる。
【0144】
また、各々の駆動源25に入力される信号の位相がずれると、各々の駆動源25が可動部22の変位を打ち消す方向に駆動することもあり得る。しかし、MEMSデバイス20Bでは各々の駆動源25に位相差の小さい信号が入力され、可動部22の変位を打ち消しにくいため、MEMSデバイス20Bの周波数特性を向上することができる。この効果は、特に、信号の周波数が高い場合に顕著である。
【0145】
なお、第1配線41は外部回路のグランド配線と接続される配線であり、第2配線42は外部回路の信号配線と接続される配線であることが好ましい。この場合、信号配線と接続される第2配線42が、グランド配線と接続される第1配線41に囲まれるため、第2配線42にノイズが重畳されるおそれを低減できる。
【0146】
また、図32の例では、MEMSデバイス20Bの小型化や、MEMSデバイス20Bと基板10との接続信頼性の向上が可能となる。これに関し、以下に具体的に説明する。
【0147】
基板10への接着範囲の確保、第1配線41及び第2配線42を配置する範囲の確保、基板10の内部接続用パッド11a及び11bと接続するために使用する導電性接合材を配置する範囲の確保等の理由により、MEMSデバイス20Bの固定部21には一定の幅が必要となる。仮に、固定部21の幅を左右対称にすると、固定部21の左右方向の寸法が大きくなってしまう。また、固定部21の幅を上下左右対称にすると、固定部21の上下左右方向の外形形状が大きくなってしまう。
【0148】
そこで、図32に示すように、MEMSデバイス20Bでは、第1辺20に沿う部分の幅を他の3辺に沿う部分の幅よりも広くし、固定部21の外縁の中心と可動部22の中心とが一致しない形状としている。例えば、第1辺20に沿う部分の幅は0.9mm、他の3辺に沿う部分の幅は0.5mmとすることができる。そして、広くした第1辺20に沿う部分に、複数の駆動源25に対して1対の導通用パッド28a及び28bのみを配置している。このような構造により、第1辺20以外の他の3辺に沿う部分の幅を狭くできるため、MEMSデバイス20Bの小型化が可能となる。
【0149】
すなわち、駆動源25毎に1対の導通用パッドを配置する形態も考えられるが、駆動源25が4個あれば8個の導通用パッドが必要となるため、導通用パッドを配置するスペースを確保するために、MEMSデバイスが大型化してしまう。MEMSデバイス20Bでは、1対の導通用パッド28a及び28bのみを有することにより、小型化することができる。
【0150】
また、導通用パッド28a及び28bは、導電性接合材を介して、基板10の内部接続用パッド11a及び11bと接続されるが、接続するパッドの数が少ないことで、高い接続信頼性を得ることができる。また、導通用パッド28a及び28bと基板10のパッドとの接続が容易となるため、コスト削減にもつながる。
【0151】
なお、図25等に示す様に、基板10もMEMSデバイス20Bと同様に、1辺に沿う部分の幅を他の3辺に沿う部分の幅よりも広くし、基板10の外縁の中心と貫通孔10yの中心とが一致しない形状とすることができる。そして、広くした部分に、内部接続用パッド11a及び11b並びに貫通配線13a及び13bを配置することができる。このような構造により、内部接続用パッド11a及び11b並びに貫通配線13a及び13bを配置した部分以外の他の3辺に沿う部分の幅を狭くできるため、基板10の小型化が可能となる。また、基板10及びMEMSデバイス20Bを小型化することにより、電気音響変換装置全体の小型化が可能となる。
【0152】
図33は、MEMSデバイスの可動部を可動させたときの応力分布のシミュレーション結果である。なお、図33の下部は、MEMSデバイス20Bの下面全体を示し、上部は下部の破線の内側の拡大図である。また、拡大図では、導通用パッド28aと第1配線41及び第2配線42の一部とを図示している。
【0153】
図33に示すように、固定部21の内縁近傍には大きな応力がかかる領域が存在する。そのため、第1配線41及び第2配線42は、大きな応力がかかる領域を回避するように配置することが好ましい。これにより、MEMSデバイス20Bの可動部22を可動させたときに、第1配線41及び/又は第2配線42が断線するおそれを低減できる。
【0154】
図34は、第5実施形態の変形例1に係るMEMSデバイスにおける配線を例示する下面図である。図34を参照すると、MEMSデバイス20Cは、第2配線42の配置が図32に示すMEMSデバイス20Bと異なる。
【0155】
具体的には、図34の例では、第2配線42の一部は、可動部22及び複数の捻じれ梁23の下面に配置される。このような配置により、導通用パッド28bと各々の駆動源25とを接続する第2配線42の経路を短くできる。また、導通用パッド28aと各々の駆動源25とを接続する第1配線41の経路は図32と同様に短い。そのため、導通用パッド28a及び28bに近い駆動源25に入力される信号に対する、導通用パッド28a及び28bから遠い駆動源25に入力される信号の遅延を抑制することができる。その結果、図32の場合と同様に、可動部22の変位量を大きくすることができると共に、MEMSデバイス20Cの周波数特性を向上することができる。
【0156】
〈第6実施形態〉
第6実施形態では、MEMSデバイスの可動部の変位の検査を容易化する例を示す。
【0157】
図35は、第6実施形態に係るMEMSデバイスにおける金属膜を例示する下面図である。図35を参照すると、MEMSデバイス20Dでは、可動部22の下面に、十字形状の金属膜43が配置されている。
【0158】
金属膜43の材料としては、例えば、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、チタン(Ti)、タングステン(W)等が挙げられる。金属膜43の厚さは、例えば、0.02μm以上1.00μm以下程度とすることができる。金属膜43は、例えば、スパッタ法により成膜することができる。金属膜43の可視光線反射率は、80%以上である。
【0159】
なお、製造工程を簡素化する観点から、金属膜43は、第1配線41及び第2配線42に含まれる材料と同じ材料により形成されていることが好ましい。例えば、第1配線41や第2配線42が金を含む場合は、金属膜43も金を用いて形成することが好ましい。あるいは、金属膜43は、駆動源25を構成する電極に含まれる材料と同じ材料により形成されてもよい。例えば、駆動源25を構成する電極が白金を含む場合は、金属膜43も白金を用いて形成することが好ましい。
【0160】
図36は、MEMSデバイス20Dを用いた電気音響変換装置1Cの下面図である。前述のように、基板10は、基板10の内側への空気の入出経路となる貫通孔10yを備えている。そして、平面視で、金属膜43は、貫通孔10yと重なる位置にある。そのため、電気音響変換装置1Cの外部から金属膜43に光を照射し、金属膜43からの反射光を電気音響変換装置1Cの外部で受光することができる。
【0161】
この構成により、MEMSデバイス20Dを基板10等に組み込んだ後でも、光学式変位計を用いて、可動部22の変位の測定が可能となる。もちろん、MEMSデバイス20D単体でも、光学式変位計を用いて、可動部22の変位の測定が可能である。なお、光学式変位計は、測定対象に光を照射し、測定対象からの反射光の角度や位置、速度を計測して測定対象の変位を算出するものである。光学式変位計としては、例えば、レーザ変位計が挙げられる。レーザ変位計には、例えば、波長630nm~690nm程度の赤色レーザが用いられる。
【0162】
MEMSデバイス20Dの可動部22の材料がシリコンである場合、赤色レーザの波長帯における反射率は35%程度である。そのため、可動部22の下面に金属膜43が設けられていない場合、レーザ変位計を用いて可動部22の変位を測定しようとしても、反射光の光量が不十分であるため、精度の良い測定は期待できない。
【0163】
これに対し、可動部22の下面に金属膜43が設けられている場合、赤色レーザの波長帯における反射率は80%以上確保できる。そのため、レーザ変位計から金属膜43に光を照射することにより、反射光の光量が十分に得られてS/Nが向上し、可動部22の変位を高精度で測定することができる。すなわち、可動部22の変位を高精度で測定可能なMEMSデバイス20Dを実現できる。
【0164】
図37は、可動部の変位の測定フローである。まず、ステップS101では、可動部22を変位させる。例えば、可動部22を一定の周波数と一定の振幅で繰り返し変位させることができる。次に、ステップS102では、レーザ変位計等から金属膜43に光を照射し、金属膜43からの反射光をレーザ変位計等で受光する。次に、ステップS103では、受光した反射光に基づいて、可動部22の変位を算出する。
【0165】
このように、可動部22の下面に金属膜43を配置することにより、可動部22の変位を高精度で測定することが可能となる。なお、可動部22の変位測定の代わりに、音圧測定やインピーダンス測定を行うことも考えられる。しかし、音圧測定には専用の装置が必要になるため、検査コストが高くなる。また、インピーダンス測定は、比較的安価な装置で実施可能であるが、実際の音響性能との相関性が低いという欠点がある。これに対して、可動部22の変位は、比較的安価な光学式変位計を用いて測定可能であり、かつ、実際の音響性能との相関性も十分に高い。
【0166】
なお、基板10の貫通孔10yを塞ぐメッシュ70が設けられる構造の場合は、メッシュ70を配置する前に可動部22の変位測定を行うか、又はメッシュ70を取り外して可動部22の変位測定を行うことができる。
【0167】
可動部22の下面に形成する金属膜の形状は、照射される光のビーム径以上であれば、可動部22の形状と一致していなくてもよい。レーザ変位計を用いる場合、レーザ光のビーム径は、10μm~1000μm程度である。以下に、可動部22に設ける金属膜の形状の他の例を示す。
【0168】
図38は、第6実施形態の変形例1に係るMEMSデバイスにおける金属膜を例示する下面図である。図38を参照すると、MEMSデバイス20Eでは、可動部22の下面に、三角状の金属膜43aが配置されている。図39は、第6実施形態の変形例2に係るMEMSデバイスにおける金属膜を例示する下面図である。図39を参照すると、MEMSデバイス20Fでは、可動部22の下面に、略山型の金属膜43bが配置されている。
【0169】
可動部22の下面に金属膜43a又は43bを配置することにより、金属膜43を配置する場合と同様に、可動部22の変位を高精度で測定することが可能となる。さらに、金属膜43a及び43bは、金属膜43と異なり、点対称でない形状である。具体的には、金属膜43a及び43bは、導通用パッド28a及び28b側に向かって細くなる形状である。そのため、MEMSデバイス20E及び20Fの向きの判別に利用することができる。
【0170】
MEMSデバイス20E及び20Fを基板10に組み付ける際には、導通用パッド28a及び28bと基板10の内部接続用パッド11a及び11bとの接合が必要であるため、MEMSデバイス20E及び20Fと基板10との向きを合わせる必要がある。金属膜43a及び43bを視認することにより、MEMSデバイス20E及び20Fの向きが把握しやすくなるため、基板10に組み付ける際の向きの間違いを防ぐことができる。
【0171】
以上の説明では、可動部22の下面に金属膜を設けることで、可動部22の変位を測定する例を示した。他の方法として、図12等に示す電気音響変換装置のメンブレン側から光を照射して可動部の変位を計測する方法も考えられる。
【0172】
例えば、図12に示す電気音響変換装置1では、蓋部材50の開口部50yから振動板40が露出している。そこで、レーザ変位計等から振動板40に光を照射し、振動板40からの反射光をレーザ変位計等で受光することにより、可動部22の変位を算出することができる。なお、メンブレン30の中央部32及び振動板40は可動部22と同様に変位するため、振動板40の変位を計測すれば、それが可動部22の変位となる。
【0173】
振動板40が樹脂等の反射率の低い材料から形成されている場合は、測定精度を向上するために、振動板40の上面の少なくとも光を照射する領域に、蒸着等により金属膜43と同様の金属膜を配置する必要がある。ただし、振動板40が金属材料により形成されている場合には、金属膜の配置は不要である。
【0174】
また、メンブレン30の中央部32に振動板40が設けられていない場合や、メンブレン30の中央部32の下面側に振動板40が設けられている場合は、レーザ変位計等からメンブレン30の中央部32に光を照射する。そして、メンブレン30の中央部32からの反射光をレーザ変位計等で受光することにより、可動部22の変位を算出することができる。なお、メンブレン30の中央部32は可動部22と同様に変位するため、メンブレン30の中央部32の変位を計測すれば、それが可動部22の変位となる。
【0175】
メンブレン30が樹脂等の反射率の低い材料から形成されている場合は、測定精度を向上するために、メンブレン30の中央部32の上面の少なくとも光を照射する領域に、蒸着等により金属膜43と同様の金属膜を配置する必要がある。ただし、メンブレン30が金属材料により形成されている場合には、金属膜の配置は不要である。
【0176】
電気音響変換装置のメンブレン側から光を照射して可動部の変位を計測する場合は、基板10の貫通孔10yの位置は変位測定とは無関係となるため、貫通孔10yを任意の位置に配置することができる。すなわち、貫通孔10yの配置の設計自由度を向上することができる。
【0177】
このように、本実施形態に係る可動部の変位測定方法は、可動部を変位させるステップと、電気音響変換装置の外部から、可動部又は可動部の動作に連動して変位する部分に光を照射するステップと、照射した光の反射光に基づいて変位を算出するステップとを有する。そして、光を照射する位置には金属膜が配置されているか、又は光を照射する部分が金属材料により形成されている。これにより、可動部の変位を高精度で測定することが可能となる。
【0178】
〈第7実施形態〉
第7実施形態では、メンブレンに凹凸構造を設ける例を示す。
【0179】
図40は、第7実施形態に係る電気音響変換装置を例示する断面図である。なお、図40の上部は、電気音響変換装置の全体図であり、下部は上部の破線の内側の拡大図である。
【0180】
図40に示すように、電気音響変換装置1Dは、メンブレン30の代わりにメンブレン30Dを有する点が、電気音響変換装置1(図14等参照)と相違する。
【0181】
メンブレン30Dは、枠部31と、中央部32と、接続部33とを有し、枠部31の上面及び下面に凹凸構造35が設けられている。メンブレン30Dにおいて、凹凸構造35以外の部分の構造、材料、厚さは、例えば、メンブレン30と同様とすることができる。
【0182】
メンブレン30Dは、例えば、金型を用いて樹脂材料を加熱及び加圧することで成形できるが、その際に用いる金型の表面に予め凹凸構造を設けておくことで、枠部31等と同時に凹凸構造35を成形することができる。
【0183】
凹凸構造35は、例えば、枠部31の上面から突起する複数の第1凸部35aと、枠部31の下面から反対面である上面側に窪む複数の第1凹部35bとを含む。平面視で、第1凸部35aと第1凹部35bとは重なる位置にある。第1凸部35aの枠部31の上面からの高さは、例えば、20~40μm程度である。また、第1凹部35bの枠部31の下面からの深さは、例えば、20~40μm程度である。
【0184】
また、凹凸構造35の少なくとも一部は、平面視で、MEMSデバイス20の固定部21の上面と、蓋部材50の厚板部51の下面と重なる位置にある。凹凸構造35の上側は、接着層200を介して蓋部材50の厚板部51と接合されている。また、凹凸構造35の下側は、接着層210を介してMEMSデバイス20の固定部21と接合されている。
【0185】
このように、凹凸構造35を設けることにより、アンカー効果が生じるため、他の部材との接着強度を向上可能なメンブレン30Dを実現できる。具体的には、メンブレン30Dの枠部31と蓋部材50の厚板部51との接着強度を向上可能であると共に、メンブレン30の枠部31とMEMSデバイス20の固定部21との接着強度を向上可能である。
【0186】
なお、凹凸構造35は、例えば、枠部31の下面から突起する複数の第1凸部と、枠部31の上面から反対面である下面側に窪む複数の第1凹部とを含む構造であってもよい。すなわち、図40に示す凹凸構造35を上下反転させた構造としてもよい。この場合も、上記と同様の効果を奏する。
【0187】
図41は、メンブレン30Dを例示する上面図である。図41に示すように、凹凸構造35は、メンブレン30Dの枠部31の全体に設けることが好ましい。第1凸部35a及び第1凹部35bの平面視における形状は、矩形であってもよく、円形であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0188】
また、第1凸部35a及び第1凹部35bの平面視における形状は、点対称な形状であってもよいし、点対称な形状でなくてもよい。また、第1凸部35a及び第1凹部35bの平面視における形状は、図41に示すようなドット状には限らず、例えば、幅が狭く長さが長い直線状や曲線状であってもよく、それらが混在してもよい。また、直線や曲線が格子状等に交差する形状であってもよい。
【0189】
図42は、第7実施形態の変形例1に係る電気音響変換装置を例示する部分断面図である。図42に示す凹凸構造35Mのように、第1凸部35a及び第1凹部35bの断面視における形状は、円形や楕円形の一部のような湾曲形状であってもよい。この場合も、凹凸構造35Mによりアンカー効果が生じるため、図40の場合と同様の効果を奏する。
【0190】
図43は、第7実施形態の変形例2に係る電気音響変換装置を例示する部分断面図である。図43に示す凹凸構造35Nは、枠部31の上面から突起する複数の第1凸部35aと、枠部31の下面から突起する複数の第2凸部36aと、枠部31の下面から上面側に窪む複数の第1凹部35bと、枠部31の上面から下面側に窪む複数の第2凹部36bとを含む。平面視で、第1凸部35aと第1凹部35bとは重なる位置にあり、第2凸部36aと第2凹部36bとは重なる位置にある。
【0191】
この場合も、凹凸構造35Nによりアンカー効果が生じるため、図40の場合と同様の効果を奏する。なお、第1凸部35a及び第1凹部35b、並びに第2凸部36a及び第2凹部36bの断面視における形状は、図43に示す形状に限らず、図40に示す矩形の一部のような角を有する形状であってもよい。この場合も、凹凸構造35Nによりアンカー効果が生じるため、図40の場合と同様の効果を奏する。
【0192】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。また、一の実施形態において説明した内容は、他の実施形態にも適用可能である。
【符号の説明】
【0193】
1,1A,1B,1C 電気音響変換装置、10 基板、10 第1辺、10 第2辺、10 第3辺、10 第4辺、10a 上面、10b 下面、10x キャビティ部、10y 貫通孔、11a,11b 内部接続用パッド、12a,12b 外部接続用パッド、13a,13b 貫通配線、14,14a,14b 高さ合わせ用パッド、15 第1位置合わせ用パッド、16 第2位置合わせ用パッド、17a 正極マーク、17b 負極マーク、18 位置合わせ用マーク、20,20A,20B,20C,20D,20E,20F MEMSデバイス、21 固定部、21a 内側面、22 可動部、23 捻じれ梁、24 駆動梁、24a 第1辺、24b 第2辺、24 第1領域、24 第2領域、24 第3領域、24 第4領域、25 駆動源、26 凸部、26a 側面、27 凹部、27a 内側面、28a,28b 導通用パッド、30,30A,30D メンブレン、31 枠部、32,32A 中央部、33 接続部、34 スリット、35,35M,35N 凹凸構造、35a 第1凸部、35b 第1凹部、36a 第2凸部、36b 第2凹部、40 振動板、41 第1配線、41a 環状配線、41b 分岐配線、42 第2配線、42a 部分、43,43a,43b 金属膜、50 蓋部材、51 厚板部、50x キャビティ部、50y 開口部、60 接着層、70メッシュ、200,210 接着層、310 導電性接合材、400 吸着治具
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