(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014932
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】バッテリパック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6557 20140101AFI20250123BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20250123BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250123BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20250123BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20250123BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20250123BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M50/209
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M50/242
H01M50/291
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117907
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史歩
(72)【発明者】
【氏名】前本 啓貴
(72)【発明者】
【氏名】町田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】衣川 公一朗
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK01
5H031KK08
5H040AA07
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC13
5H040NN01
(57)【要約】
【課題】
バッテリー容量とバッテリセルの冷却機能を維持しつつ、バッテリケースの剛性を向上させる。
【解決手段】
バッテリケース(10)と、複数のバッテリセル(20)と、複数の冷媒ジャケット(30)と、を含むバッテリパック(1)であって、複数のバッテリセル(2)が一列に接合されたセル接合体(20A)と冷媒ジャケット(30)は、第1の方向(A-A)に、互いに面接触するように交互に配列され、各冷媒ジャケット(30)は、第2の方向(B-B)両側に設けられた冷媒流通配管(40)に接続され、少なくとも一部の冷媒ジャケット(30)は、第2の方向(B-B)の両端部の上部が延長され、冷媒流通配管(40)を避けつつ、バッテリケース(10)の端板(13,14)の上部に接合されて、バッテリケース(10)の剛性を高めるように構成された補強板型冷媒ジャケット(30R)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交して水平面を構成する第1の方向及び第2の方向に広がる略箱形のバッテリケースと、
前記バッテリケース内に配列された複数のバッテリセルと、
内部に冷媒通路を有し前記複数のバッテリセルを冷却する複数の冷媒ジャケットと、を含むバッテリパックであって、
前記複数のバッテリセルは、複数個ずつ前記第2の方向に一列に配列されて接合されたセル接合体を構成し、
前記セル接合体と前記冷媒ジャケットは、前記第1の方向に、互いに面接触するように交互に配列され、
各前記冷媒ジャケットは、前記第2の方向両側に設けられた冷媒流通配管に接続され、
少なくとも一部の前記冷媒ジャケットは、前記第2の方向の両端部の上部が当該第2の方向に延長され、前記冷媒流通配管を避けつつ、前記バッテリケースの前記第2の方向の両端部を構成する端板の上部に接合されて、当該バッテリケースの剛性を高めるように構成された補強板型冷媒ジャケットである、バッテリパック。
【請求項2】
前記補強板型冷媒ジャケットは、前記第1の方向に配列された前記冷媒ジャケットの3つごとに1つ設けられている、請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
前記補強板型冷媒ジャケットは、前記第1の方向に配列された前記冷媒ジャケットの4つごとに1つ設けられている、請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項4】
前記補強板型冷媒ジャケットは、前記第1の方向に配列された前記冷媒ジャケットの5つごとに1つ設けられている、請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項5】
前記補強板型冷媒ジャケットは、前記バッテリケースの前記第1の方向において200mm±20mmごとに設けられている、請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項6】
前記補強板型冷媒ジャケットにおける前記第2の方向の両端部の上部が、前記バッテリケースの前記第2の方向の両端部を構成する端板に設けられた切欠きに嵌合している、請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項7】
前記冷媒流通配管は、
前記冷媒ジャケットの前記第2の方向における一端部に接続された入口側ソケットと、
前記冷媒ジャケットの前記第2の方向における他端部に接続された出口側ソケットと、を有し、
前記入口側ソケットは、一面側から前記第1の方向に突出する一面側入口配管と、他面側から前記第1の方向に突出する他面側入口配管と、を有し、
前記出口側ソケットは、一面側から前記第1の方向に突出する一面側出口配管と、他面側から前記第1の方向に突出する他面側出口配管と、を有し、
前記セル接合体を挟んで2つの前記冷媒ジャケットを隣接させると、一の前記冷媒ジャケットに接続された前記入口側ソケットの前記一面側入口配管及び前記出口側ソケットの前記一面側出口配管が、他の前記冷媒ジャケットに接続された前記入口側ソケットの前記他面側入口配管及び前記出口側ソケットの前記他面側出口配管に、それぞれ接続されるように構成された、請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項8】
水平面を構成する互いに直交する第1の方向及び第2の方向に広がる略箱形のバッテリケースと、
前記バッテリケース内に配列された複数のバッテリセルと、
内部に冷媒通路を有し前記複数のバッテリセルを冷却する複数の冷媒ジャケットと、を含むバッテリパックを製造する製造方法であって、
前記複数のバッテリセルを、複数個ずつ前記第2の方向に一列に配列し接合して複数のセル接合体を形成する工程と、
前記バッテリケース内において、前記セル接合体と前記冷媒ジャケットを、前記第1の方向に、互いに面接触するように交互に配列する工程と、
少なくとも一部の前記冷媒ジャケットにおける前記第2の方向の両端部の上部を、前記バッテリケースの前記第2の方向の両端部を構成する端板の上部に接合して、当該バッテリケースの剛性を高める工程と、を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BEV(バッテリー式電動自動車)用のバッテリパック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
BEV(バッテリー式電動自動車)用バッテリパックは、現在、複数個のセルを束にして緊縛したバッテリーモジュールを構成し、そのモジュール複数個をバッテリケースに搭載するモジュールトゥーパック(Module To Pack:MTP)方式が採用されている。そして、そのバッテリケースには車両の幅方向および前後方向にフレームが設置され、モジュールを固定するとともに、バッテリケース自体の剛性確保に寄与している(例えば、特許文献1)。また、バッテリセルは、充放電時の発熱などに対応するため、冷却(必要に応じて加熱)用のウォータージャケットをモジュール搭載部の下にレイアウトし、バッテリセルの底面から温度管理を行っているものが多い。
【0003】
バッテリー容量拡大や高電圧化による搭載個数増加が求められているが、車体のバッテリー搭載に使用できるエリアは限られており、MTP方式では、モジュール毎の構造体が使用するスペースによってバッテリーの搭載数が限られるという問題がある。そこで、セルを直接バッテリケースに搭載するセルトゥーパック(Cell To Pack:CTP) 方式が検討されている(例えば、特許文献2,3)。CTP方式の一つとして、フレームのないバッテリケースにバッテリセルのみを密に搭載する方法がある。その場合、搭載量は多くできるが、バッテリケースの剛性が確保できずケース底面中央付近のたわみが大きくなってしまう。そこで仕切りのフレームや底面のリブを設置することが考えられるが、フレームを増やすと、バッテリー搭載量が減少するため、可能な限り薄く、少ない数のフレームで剛性確保する方法が求められている。しかし、バッテリケース内底面には冷却部品を設置される可能性や、端子を下向きに設置する場合にセル同士を電気的に接続するバスバーが存在する可能性があるため、フレームの下面を底面に全面接合できない場合もあり、さらに、バッテリケース側壁との間も、配線、配管の経路として使用するため、フレームの端面を壁面に全面接合できない場合が考えられる。一方、その他のCTP方式として、バッテリセルとその側面に接する冷却部品を交互に密に配置する方法もある。その場合、冷却部品をフレームとして機能させる方法が考えられるが、同様に、バスバーの存在や、配線、配管の経路を確保するため、底面・側面共に、全面接合できない場合が想定される。そこで、バッテリケースとの最小限の接続で最大限の剛性向上の効果を奏することができるようなフレーム構造の最適化が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-16467号公報
【特許文献2】特表2023―502274号公報
【特許文献3】特表2023-509695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、バッテリー容量とバッテリセルの冷却機能を維持しつつ、バッテリケースの剛性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
バッテリケース内に設置するフレーム(薄板)の剛性UP効果とスペース損失のトレードオフの関係から、必要本数を割り出した。
最適本数算出の基準条件として、フレームについては厚み8mmとし、バッテリケースのサイドフレーム(外枠)には接合せず、底板に全面接合したリブとなる様に設置する。フレームが無い状態を基準とし、搭載する電池重量の分布荷重をケース底面に付与した場合の変位量をシミュレーションにて求め、フレームの本数を増やしていったときに、底面の変位量減少が飽和するポイントを見極めた。その結果、フレームを9本機能させることで変位量を大幅に小さくすることが可能であるといえる。
この傾向について、底面を一部だけ接合した、より実態に近い場合についてのシミュレーションにおいても同様であるが、その場合、変位量は増加してしまうため、本発明では、両端の上部に突起があるフレーム形状とし、それをバッテリーケースサイドフレーム(外枠)の上部に接するようにし、そこを接着することで、大幅に変位量を抑えることを可能とした。
【0007】
本発明のバッテリパック(1)は、互いに直交して水平面を構成する第1の方向(A-A)及び第2の方向(B-B)に広がる略箱形のバッテリケース(10)と、前記バッテリケース(10)内に配列された複数のバッテリセル(20)と、内部に冷媒通路(34)を有し前記複数のバッテリセル(20)を冷却する複数の冷媒ジャケット(30)と、を含むバッテリパック(1)であって、前記複数のバッテリセル(2)は、複数個ずつ前記第2の方向(B-B)に一列に配列されて接合されたセル接合体(20A)を構成し、前記セル接合体(20)と前記冷媒ジャケット(30)は、前記第1の方向(A-A)に、互いに面接触するように交互に配列され、各前記冷媒ジャケット(30)は、前記第2の方向(B-B)両側に設けられた冷媒流通配管(40)に接続され、少なくとも一部の前記冷媒ジャケット(30)は、前記第2の方向(B-B)の両端部の上部が当該第2の方向(B-B)に延長され、前記冷媒流通配管(40)を避けつつ、前記バッテリケース(10)の前記第2の方向(B-B)の両端部を構成する端板(13,14)の上部に接合されて、当該バッテリケース(10)の剛性を高めるように構成された補強板型冷媒ジャケット(30R)である、ことを特徴とする。
【0008】
この構成により、バッテリセルの搭載数、バッテリー容量とバッテリセルの冷却機能を維持しつつ、バッテリケースの剛性を向上させて、バッテリパックのたわみを低減することができる。
【0009】
前記補強板型冷媒ジャケット(30R)の配置は、ケースと本数の関係で決まるので、搭載するセルサイズによっては、前記第1の方向(A-A)に配列された前記冷媒ジャケット(30)の3つごとに1つ設けられていてもよく、前記第1の方向(A-A)に配列された前記冷媒ジャケット(30)の4つごとに1つ設けられていてもよく、前記第1の方向(A-A)に配列された前記冷媒ジャケット(30)の5つごとに1つ設けられていてもよい。
【0010】
これらの構成により、バッテリー容量とバッテリセルの冷却機能を維持しつつ、バッテリケースの剛性を向上させることができる。
【0011】
前記補強板型冷媒ジャケット(30R)は、前記バッテリケースの前記第1の方向(A-A)において200mm±20mmごとに設けられていてもよい。
【0012】
この構成により、実際のバッテリケース寸法である1500mmから2000mm程度の場合において、バッテリー容量とバッテリセルの冷却機能を維持しつつ、バッテリケースの剛性を向上させることができる。
【0013】
前記補強板型冷媒ジャケット(30R)における前記第2の方向(B-B)の両端部の上部(30c)が、前記バッテリケース(10)の前記第2の方向(B-B)の両端部を構成する端板(13,14)に設けられた切欠き(13a,14a)に嵌合する構成も好ましい。
【0014】
この構成により、補強板型冷媒ジャケットの位置が固定されるので、上記効果の他、各バッテリセルの位置を規制することができる。
【0015】
前記冷媒流通配管(40)は、前記冷媒ジャケット(30)の前記第2の方向(B-B)における一端部(30a)に接続された入口側ソケット(41)と、前記冷媒ジャケット(30)の前記第2の方向(B-B)における他端部(30b)に接続された出口側ソケット(42)と、を有し、前記入口側ソケット(41)は、一面側から前記第1の方向(A-A)に突出する一面側入口配管(41a)と、他面側から前記第1の方向(A-A)に突出する他面側入口配管(41b)と、を有し、前記出口側ソケット(42)は、一面側から前記第1の方向(A-A)に突出する一面側出口配管(42a)と、他面側から前記第1の方向(A-A)に突出する他面側出口配管(42b)と、を有し、前記セル接合体(20A)を挟んで2つの前記冷媒ジャケット(30)を隣接させると、一の前記冷媒ジャケット(30)に接続された前記入口側ソケット(41)の前記一面側入口配管(41a)及び前記出口側ソケット(42)の前記一面側出口配管(42a)が、他の前記冷媒ジャケット(30)に接続された前記入口側ソケット(41)の前記他面側入口配管(41b)及び前記出口側ソケット(42)の前記他面側出口配管(42b)に、それぞれ接続されるように構成された、構成が好ましく採用できる。
【0016】
この構成により、各冷媒ジャケットに予め入口側ソケットと出口側ソケットを結合した状態で、セル結合体同士を近づけることで、各ソケット同士が自ずと接続されて冷媒流路が形成できるので、組立て作業性が向上できる。
【0017】
また、本発明のバッテリパックの製造方法は、水平面を構成する互いに直交する第1の方向(A-A)及び第2の方向(b-B)に広がる略箱形のバッテリケース(10)と、
前記バッテリケース(10)内に配列された複数のバッテリセル(20)と、内部に冷媒通路(34)を有し前記複数のバッテリセル(20)を冷却する複数の冷媒ジャケット(30)と、を含むバッテリパック(1)を製造する方法であって、前記複数のバッテリセル(20)を、複数個ずつ前記第2の方向(B-B)に一列に配列し接合して複数のセル接合体(20A)を形成する工程と、前記バッテリケース(10)内において、前記セル接合体(20A)と前記冷媒ジャケット(30)を、前記第1の方向(A-A)に、互いに面接触するように交互に配列する工程と、少なくとも一部の前記冷媒ジャケット(30)における前記第2の方向(B-B)の両端部の上部を、前記バッテリケース(10)の前記第2の方向(B-B)の両端部を構成する端板(13,14)の上部に接合して、当該バッテリケース(10)の剛性を高める工程と、を含む方法である。
【0018】
この構成によれば、バッテリー容量とバッテリセルの冷却機能を維持しつつ、バッテリケースの剛性を向上させることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフレーム構造により、バッテリー搭載量の向上とバッテリケースの剛性低下抑制の両立が可能で、電気自動車の航続距離向上や高電圧化に対応することが可能となる。
また、本発明では、バッテリー側面を冷却する冷媒ジャケットをフレームと機能統合することで、バッテリー搭載量を減らすことなく、充電時の発熱を大幅に抑えることが可能となり、急速充電を実現することが可能となる。なお、ケースのサイドフレーム(外枠)にスリットを形成し、そこに突起部を嵌め込む構造とすれば、剛性のさらなる向上だけでなくバッテリーの位置を規制する機能としてフレームを作用させることも可能である。
さらに、この少ない本数のフレームで上部のみ接合する方式は、着部位が少ないため、比較的解体性も良好であり資源循環に適する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るバッテリパックを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のバッテリパックのA部拡大斜視図である。
【
図3】
図2の部分を、バッテリケースを外し、一部のソケットを外して、矢印Bの方向から見た斜視図である。
【
図5】冷媒ジャケットを模式的に示す斜視図で、(a)が通常の冷媒ジャケット、(b)が補強板型冷媒ジャケットである。
【
図6】バッテリパックの撓みと左右端版のねじれとの関係を示す模式的C-C断面図で、(a)が通常の冷媒ジャケットのみの場合、(b)が補強板型冷媒ジャケットを設けた場合を示す。
【
図7】補強板型冷媒ジャケットの本数とバッテリパックのたわみ量との関係を示すグラフである。
【
図8】
図1のバッテリパックの製造方法を示す斜視図で、(a)はセル接合体、(b)は冷媒ジャケットにソケットを接続した状態、(c)はセル接合体と膨張前の冷媒ジャケットの接着体を示す。
【
図9】
図1のバッテリパックの製造方法を示す斜視図で、セル接合体と冷媒ジャケットの接着体を配列して形成したセルスタックをバッテリケースに挿入し、セルスタックにバスバーモジュールを溶接して、セルボディを形成する状態を示す。
【
図10】
図1のバッテリパックの製造方法を示す斜視図で、形成されたバッテリケース入りのセルボディを示す。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るバッテリパックのバッテリケースの部分拡大斜視図である。
【
図12】
図11のバッテリケースにバッテリセルと冷媒ジャケットを搭載したバッテリパックの部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
[第一実施形態]
本実施形態は、補強板型冷媒ジャケット両端部の上部をバッテリケースの側端板の上部に接合した構成である。本実施形態のバッテリパック1は、
図1及びそのC部拡大図である
図2に示すように、バッテリケース10と、複数のバッテリセル20と、複数の冷媒ジャケット30と、冷媒流通配管40とを含んで構成される。
【0022】
バッテリケース10は、互いに直交して水平面を構成する第1の方向(前後方向A-A)及び第2の方向(左右方向B-B)に広がる薄い箱形のケースで、第1の方向両端部に設けられた前端板11及び後端板12と、第2の方向両端部に設けられ、押し出し材からなる左端板13及び右端板14と、底板15と、上板(図示省略)から構成されている。内部の前端板11近くに仕切り板16が設けられ、その後方はバッテリセル収容部17が形成されている。また、前端板11より前には、平面視で略台形の緩衝部材18が設けられ、バッテリパック1が車体の底部に設けられた際、外部からの衝撃を吸収できるようになっている。
【0023】
バッテリセル20は、
図4に示すように、本実施形態では、角形のリチウムイオン電池であって、上側に2つの端子21が突出している。バッテリセル20は、第2の方向(左右方向)に一列に6個配列されて接合されたセル接合体20Aを構成している。但し、本発明においてバッテリセル20の形状は、角形に限られず、例えば円筒形でも良い。但し、角形の方がバッテリセル20間を埋める樹脂が不要で、リサイクル時の環境負荷が小さい等の利点がある。また、電池の種類としても、リチウムイオン電池に限られず、全固体リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池等であってもよい。
【0024】
冷媒ジャケット30は、セル接合体20Aとバッテリケース10内で第1の方向(前後方向)に交互に面接触して配置され、各バッテリセル20を冷却する部品である。各冷媒ジャケット30は、
図3に示すように、セル接合体20Aと略同一の長さ及び高さを有する矩形状で所定厚のアルミ押出し部材からなり、左端面30aに設けられた冷媒入口33と、内部に設けられた冷媒通路34と、右端面30bに設けられた冷媒出口35を有する。但し、冷媒ジャケット30は、押出し部材に限られず、例えば、表面に溝を有する板にもう一枚の板を面接合して、その溝を冷媒流路としたものでもよい。
【0025】
冷媒流通配管40は、
図3及び
図8に示すように、冷媒ジャケット30の第2の方向(左右方向)における一端部(左端部)に接続された入口側ソケット41と、冷媒ジャケット30の他端部(左端部)に接続された出口側ソケット42とを有する。入口側ソケット41は、一面側(前面側)から第1の方向に突出する一面側入口配管41aと、他面側(後面側)から第1の方向に突出する他面側入口配管41bと、を有する。一方、出口側ソケット42は、一面側(前面側)から第1の方向に突出する一面側出口配管42aと、他面側(後面側)から第1の方向に突出する他面側出口配管42bと、を有する。
【0026】
セル接合体20Aを挟んで2つの冷媒ジャケット30を隣接させると、一の前記冷媒ジャケット30に接続された入口側ソケット41の一面側入口配管41a及び出口側ソケット42の一面側出口配管42aが、他の冷媒ジャケット30に接続された入口側ソケット41の他面側入口配管41b及び出口側ソケット42の他面側出口配管42bに、それぞれ例えば嵌合して接続される。
図3は、出口側のこのような接続構造を示す。このようにして、バッテリケース10内に配置された全ての冷媒ジャケット30の入口側ソケット41同士が接続され、また出口側ソケット42同士が接続される。なお、最前段の一面側入口配管41aと最前段の一面側出口配管42aは設けられず、一面側は封止されている。一方、最後段の他面側入口配管41bには、冷媒供給配管(図示省略)が接続され、最後段の一面側出口配管42aには冷媒リターン配管(図示省略)が接続されている。このように接続された一群の冷媒ジャケット30に対し、冷媒供給配管(図示省略)から冷媒(水)を供給すると、この水は分岐して各冷媒ジャケット30の冷媒通路34に並列に流れてバッテリセル20を冷却し、合流して冷媒リターン配管(図示省略)に流れるようになっている。
【0027】
ここで、少なくとも一部の冷媒ジャケット30は、その第2の方向(左右方向)の両端部の上部30cが第2の方向に延長され、冷媒流通配管40のソケット(41,42)を避けつつ、バッテリケース10の第2の方向(左右方向)の両端部を構成する左端板13及び右端板14の上部に接合されて、バッテリケース10の剛性を高めるように構成された補強板型冷媒ジャケット30Rとしている。本実施例形態のバッテリパック1は、薄型で多数のバッテリセル20を搭載しているので、自動車の底部などに左右両端部を支持された状態で水平に配置されると、自重で中央部が下がるようにたわみやすい。その場合、
図6(a)に示すように、バッテリケース10の、それぞれ押出し材からなる左端板13及び右端板14は、上部同士が互いに近接するように、それぞれねじれ変形を起こすと考えられる(
図6(a)の2点鎖線)。そこで、
図6(b)に示すように、補強板型冷媒ジャケット30Rの両端部の上部30cを、左端板13及び右端板14の上部にそれぞれ接合すると、補強板型冷媒ジャケット30Rの剛性により、左端板13及び右端板14の上部同士の接近を抑え、バッテリパック1のたわみ量δを低減できる(
図6(b)の2点鎖線)。
【0028】
但し、全ての冷媒ジャケット30を補強板型冷媒ジャケット30Rとすると、バッテリパック1製造時の補強板型冷媒ジャケット30R両端部の上部と左端板13及び右端板14の上部との接合工程が増え、またリサイクル時の分解工程も増える。このため、本実施形態では、バッテリパック1のたわみ量δが所定値まで低減するのに必要十分な本数だけ補強板型冷媒ジャケット30Rとしている。
図7に、第1の方向1800mm×第2の方向1200m、荷重5500N(561kgf)のセルトゥーパック構造のバッテリパックにおける補強板型冷媒ジャケット30R近似のサイドFRM(8mmアルミ板)の本数とバッテリパックのたわみ量δとの関係のシミュレーション結果を示す。これによると、上部接続したサイドFRMに相当する補強板型冷媒ジャケット30Rを第1の方向に9本設ければ、たわみ量δは目標の1mm以下になる。換言すれば、補強板型冷媒ジャケット30Rを第1の方向に200mmごとに設ければ、たわみ量δを1mm以下にできる。
【0029】
各バッテリセル20の上面に設けられた2つの端子21は、
図9に示すように、配線回路が打抜かれた銅板であるバスバーモジュール60に溶接によって接続され、配線回路内で並列及び直列接続されて、最終的にプラス側端子61とマイナス側端子62に統合される。外部から、このプラス側端子61とマイナス側端子62の間に電圧を加えることにより、各バッテリセル20への充電が可能で、また各バッテリセル20に充電された電力を、プラス側端子61とマイナス側端子62から自動車駆動モータなどに供給することができる。
【0030】
次に、このように構成された本実施形態のバッテリパック1の製造方法について説明する。
まず、
図8に示すように、複数のバッテリセル20を、複数個(本実施形態では6個)ずつ第2の方向(左右方向)に一列に配列し接合してセル接合体20Aを形成する。一方、冷媒ジャケット30及び30Rの両端部30a、30bにソケット41,42を接続する。
【0031】
次に、このセル接合体20Aと冷媒ジャケット30を、第1の方向(前後方向A-A)に、互いに面接触するように交互に配列し互いに接着する。このとき、数本(本実施形態では4本)に1本の冷媒ジャケット30を、両端部の上部30cが第2の方向に延長された補強板型冷媒ジャケット30Rとする。
【0032】
また、このとき、セル接合体20Aを挟み付ける2つの冷媒ジャケット30のうち、一の前記冷媒ジャケット30に接続された入口側ソケット41の一面側入口配管41a及び出口側ソケット42の一面側出口配管42aが、他の冷媒ジャケット30に接続された入口側ソケット41の他面側入口配管41b及び出口側ソケット42の他面側出口配管42bに、それぞれ嵌合して接続される。
【0033】
次に、
図9に示すように、こうして形成されたセルスタック50をバッテリケース10に挿入し、その後、各バッテリセル20の端子21が配置された面(
図9では上面)に、配線回路が組まれたバスバーモジュール60を載せ、各端子21に溶接し、セルボディ70を形成する。
【0034】
このようにして形成されたバッテリケース10入りのセルボディ70を、
図10に示す。さらに、冷媒供給配管(図示省略)及び冷媒リターン配管(図示省略)等を接続し、必要に応じてセルボディ70周囲の隙間にウレタンフォームを充填し、上板(図示省略)を接着することにより、バッテリパック1が完成する。
【0035】
本実施形態によれば、補強型冷媒ジャケット30R両端部の上部40cが、冷媒流通配管40のソケット(41,42)を避けつつ、バッテリケース10の左端板13及び右端板14の上部に接合されて、バッテリケース10の剛性を高めることができるとともに、冷媒流通配管40の上記ソケット結合機構を利用することができる。
【0036】
[第二実施形態]
本実施形態は、補強板型冷媒ジャケット30Rにおける前記第2の方向の両端部の上部30cを、バッテリケース10の第2の方向(左右方向B-B)の両端部を構成する端板(13,14)に設けられた切欠き13a,14aに嵌合させた形態である。第一実施形態と同一または略同一の構成要素には同一の参照符号を付し、重複した説明は省略する。
図11は、本実施形態のバッテリパック101におけるバッテリケース10の左端板13部分を示す斜視図である。
図11に示すように、左端板13の内側の角部に3つの切欠き13aが設けられている。全ては図示しないが、左端板13には合計9個の切欠き13aが設けられ、右端板14にも合計9個の切欠き14aが設けられている。
図12は、このバッテリケース10にバッテリセル20と冷媒ジャケット30,30Rを搭載したバッテリパック101の部分拡大斜視図で、各切欠き13a(
図11参照)に補強板型冷媒ジャケット30Rの左端部の上部30cが嵌合している状態を示す斜視図である。なお、全ては図示しないが、左端板13の他の切欠き13aと右端板14の切欠き14aにも補強板型冷媒ジャケット30Rの左又は右端部の上部30cが嵌合されている。これ以外の構成は、第一実施形態と同様である。
【0037】
この構成により、各切欠き13a,14aと補強板型冷媒ジャケット30Rの両端部の上部30cとの接合面が増えるため接合強度が増し、バッテリケース10の剛性がより剛性向上する。さらに、切欠き13a,14aの位置により、第1の方向(前後方向A-A)における補強板型冷媒ジャケット30Rの位置が部分的に決まるため、各バッテリセル20の位置精度が向上し、バッテリセル20の端子21の位置精度が向上する。それにより、後工程のバスバーモジュール接合工程での各バッテリセル20を含むセルスタック50に対するバスバーモジュール60の位置決め要求精度を緩めることができ、部材の小型化や加工コスト削減などが可能になる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態では、冷媒流通配管40として所定構造の入口側ソケット41及び出口側ソケット42を連結したものを用いたが、これに限られず、冷媒ジャケットと30,30Rに左右両端部30a,30bに接続できるものであれば、いずれでもよい。
【0039】
また、上記各実施形態では、補強板型冷媒ジャケット30Rは、前記第1の方向に配列された前記冷媒ジャケット30の4つごとに1つ設けたが、3つごとに1つでもよく、5つごとに1つでもよく、いずれの本数に1つでもよい。
してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1,101 バッテリパック
10 バッテリケース
11 前端板
12 後端板
13 左端板
13a,切欠き
14 右端板
14a 切欠き
15 底板
16 仕切り板
17 バッテリセル収容部
18 緩衝部材
20 バッテリセル
20A セル接合体
21 端子
30 冷媒ジャケット
30a 左端面
30b 右端面
30c 端部の上部
30R 補強板型冷媒ジャケット
33 冷媒入口
34 冷媒通路
35 冷媒出口
40 冷媒流通配管
41 入口側ソケット
41a 一面側入口配管
41b 他面側入口配管
42 出口側ソケット
42a 一面側出口配管
42b 他面側出口配管
50 セルスタック
60 バスバーモジュール
61 プラス側端子
62 マイナス側端子
70 セルボディ
δ たわみ量