(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025149622
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】サイドドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20251001BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20251001BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20251001BHJP
【FI】
B60J5/00 P
B62D21/15 B
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050373
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光宏
(72)【発明者】
【氏名】深町 和弘
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB12
3D203CA04
3D203CA25
3D203CA29
3D203CA40
3D203CA74
3D203DA34
3D203DB05
(57)【要約】
【課題】車外からドア内に浸入する雨水等の排水性を損なうことなく、サイドシルを十分に補剛することができるサイドドア構造を提供する。
【解決手段】サイドドア構造は、車体前後方向に延在するサイドシル3の車幅方向外側を覆うインナパネル30と、インナパネル30に対向する位置に配置され、縁部がインナパネル30に接合して、インナパネル30と共にサイドドア5を構成するアウタパネル31と、インナパネル30の下端部に形成され、車外からサイドドア5の内部空間に浸入する雨水を排出する排水孔32と、インナパネル30の車幅方向内側に設けられ、サイドシル3に対向する位置において車体前後方向に延在する衝撃吸収部材25と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延在するサイドシルの車幅方向外側を覆うインナパネルと、
前記インナパネルに対向する位置に配置され、縁部が前記インナパネルに接合して、前記インナパネルと共にサイドドアを構成するアウタパネルと、
前記インナパネルの下端部に形成され、車外から前記サイドドアの内部空間に浸入する雨水を排出する排水孔と、
前記インナパネルの車幅方向内側に設けられ、前記サイドシルに対向する位置において前記車体前後方向に延在する衝撃吸収部材と、を備えたことを特徴とするサイドドア構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、断面略矩形形状であることを特徴とする請求項1に記載のサイドドア構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材は、内部に補強板を備えたことを特徴とする請求項1に記載のサイドドア構造。
【請求項4】
前記サイドシルの車幅方向内側にバッテリを搭載する車両に適用され、
前記衝撃吸収部材は、前記サイドシルを介して前記バッテリに対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のサイドドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突等による衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部材を備えたサイドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、従来の内燃機関(エンジン)に加えて電気モータを駆動源として備えたハイブリッド車両や、電気モータを駆動源として利用する電気自動車等が実用化されている。
【0003】
このような車両においては、電気モータを駆動するための大型の充電式バッテリ(以下、単にバッテリと略称する)が搭載されている。このような大型のバッテリは、一般に、フロアパネルの底面部に配置される。また、バッテリの車幅方向両側には、車体前後方向に延在するサイドシルが配設されている。
【0004】
サイドシルは、断面略矩形の閉断面形状となっている。このようなサイドシルは、車両の側面衝突の際、衝撃エネルギーを吸収して、バッテリを保護する衝撃吸収部として機能する。
【0005】
ところで、サイドシルの車幅方向外側の一部の面は、車外側に露出されていることが一般的である。このようなサイドシルの車外側に露出した面には、汚れが付着し易い。
【0006】
近年、このようなサイドシルの汚れを防止するため、サイドシルの車幅方向外面を覆うサイドドアが採用されている。
【0007】
このようなサイドドアを前述の車両に採用した場合、サイドシルを配置するスペースが減少し、車両の側面衝突の際の十分な衝撃エネルギーの吸収を確保できないという問題がある。
【0008】
このような問題に対し、例えば、特許文献1(特開2019-25935号公報)には、サイドドアの内部に衝撃吸収部材が設けられ、車両の側面衝突の際の衝撃エネルギーの吸収量を増大することが可能なサイドドア構造に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、サイドドアを構成するアウタパネルとインナパネルは、一般に、サイドドアの下縁部において、ヘミング加工によって接合される。従って、サイドドアの下部において、アウタパネルとインナパネルとの間隔は狭くなる。
【0011】
このような間隔が狭い空間内に衝撃吸収部材を配置する場合、衝撃吸収部材の形状が制限される。例えば、特許文献1の技術では、衝撃吸収部材の下壁部を傾斜させることにより、衝撃吸収部材とアウタパネルとの干渉を回避している。従って、特許文献1の技術では、衝撃吸収部材によるサイドシルに対する補剛機能を十分に確保できない虞がある。
【0012】
これに対し、衝撃吸収部材の下壁部の傾斜を廃止すると、アウタパネルと衝撃吸収部材との間隔が極めて狭くなる。その結果、車外からドア内に浸入する雨水等の排水性を悪化させる虞がある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、車外からドア内に浸入する雨水等の排水性を損なうことなく、サイドシルを十分に補剛することができるサイドドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、車体前後方向に延在するサイドシルの車幅方向外側を覆うインナパネルと、前記インナパネルに対向する位置に配置され、縁部が前記インナパネルに接合して、前記インナパネルと共にサイドドアを構成するアウタパネルと、前記インナパネルの下端部に形成され、車外から前記サイドドアの内部空間に浸入する雨水を排出する排水孔と、前記インナパネルの車幅方向内側に設けられ、前記サイドシルに対向する位置において前記車体前後方向に延在する衝撃吸収部材と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のサイドドア構造によれば、車外からドア内に浸入する雨水等の排水性を損なうことなく、サイドシルを十分に補剛することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】ポール側面衝突初期の衝撃吸収部材、及び、サイドシルの衝突状態を示す平面図
【
図5】ポール側面衝突終盤の衝撃吸収部材、及び、サイドシルの衝突状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明の形態を説明する。
【0018】
なお、以下の説明に用いる図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものである。従って、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び、各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるのもではない。また、以下の説明において、「接合」と記載されている場合、その接合方法は、溶融接合、或いは、機械的接合等を代表とする接合手段を用いて行われるものとする。
【0019】
本実施形態におけるサイドドア構造を適用した車体の一例として、床下にバッテリ9を搭載した電気自動車あるいはハイブリッド車両等の車両1の車体構造について説明する。
【0020】
図1、
図2に示すように、車両1の車体2は、サイドシル3と、バッテリフレーム4と、フロントサイドドア5(以下、サイドドア5と称す)と、を有する。
【0021】
サイドシル3は、
図2、
図3に示すように、キャビンの底面を構成するフロアパネル6の両側に設けられている。さらに、サイドシル3は、フロアパネル6の車体前後方向に沿って延在されている。このようなサイドシル3は、鋼板等からなる板金部材をプレス加工することによって形成されている。
【0022】
サイドシル3は、
図3に示すように、インナフレーム10と、アウタフレーム11と、を有する。
【0023】
インナフレーム10は、車幅方向内側に突出する断面略ハット型の形状となっている。このようなインナフレーム10は、内側壁部10aと、上下一対の壁部10bと、上下一対のインナフランジ10cと、を有する。
【0024】
内側壁部10aは、車体上下方向に延在されている。
【0025】
上下一対の壁部10bは、内側壁部10aの車体上下方向の両端から車幅方向外側に延出されている。
【0026】
上下一対のインナフランジ10cは、各壁部10bの車幅方向外側の縁部から上下方向に延出されている。この各インナフランジ10cは、インナフレーム10をアウタフレーム11に接合するためのフランジとして機能する。
【0027】
アウタフレーム11は、車幅方向外側に突出する断面略ハット型の形状となっている。このアウタフレーム11は、インナフレーム10の車幅方向外側に対向する位置に配置されている。具体的には、アウタフレーム11の開口部は、インナフレーム10の開口部に対峙された状態にて配置されている。
【0028】
このように配置されるアウタフレーム11は、外側壁部11aと、上下一対の壁部11bと、上下一対のアウタフランジ11cと、を有する。
【0029】
外側壁部11aは、内側壁部10aに対向する位置に配置されている。
【0030】
上下一対の壁部11bは、外側壁部11aの車体上下方向の両端から車幅方向内側に延出されている。
【0031】
上下一対のアウタフランジ11cは、各壁部11bの車幅方向内側の縁部から上下方向に延出されている。
【0032】
このようなアウタフレーム11は、各アウタフランジ11cを各インナフランジ10cに当接させた状態にて、接合されている。
【0033】
これにより、サイドシル3は、中空の断面略矩形形状を有している。
【0034】
このようなサイドシル3の内部空間には、補強部材28が設けられている。補強部材28は、例えば、内側壁部10aの内面、及び、外側壁部11aの内面に沿って車体前後方向に延在する直方体形状となっている。この補強部材28の車幅方向両側は、内側壁部10aの内面、及び、外側壁部11aの内面に当接した状態にて接合されている。
【0035】
さらに、補強部材28の内部には、補強部28aが設けられている。
【0036】
補強部28aは、例えば、格子状に連結された複数の平板によって構成されている。
【0037】
このような補強部材28は、車両1の側面衝突の際に、サイドシル3を補剛すると共に、衝撃エネルギーを吸収することが可能となっている。
【0038】
なお、この補強部材28は、例えば、アルミ押し出し成形品である。
【0039】
バッテリフレーム4は、例えば、
図3に示すように、フロアパネル6の底面側に対向する位置に所定の間隔を隔てて配置されている。また、バッテリフレーム4は、サイドシル3の車幅方向内側に配置されている。
【0040】
バッテリフレーム4は、例えば、複数のフレーム部材4aと、底板4bとを有する。
【0041】
複数のフレーム部材4aは、全体として矩形形状の枠を形成している。この各フレーム部材4aは、断面矩形形状となっている。
【0042】
底板4bは、複数のフレーム部材4aによって形成された矩形形状の枠の底面に設けられている。このため、底板4bは、平面視矩形形状となっている。この底板4bの外周縁部は、例えば、各フレーム部材4aの下端部の外縁部に沿って上方に折り曲げられている。そして、折り曲げられた車幅方向外面は、内側壁部10aの下部に接合されている。
【0043】
このようなバッテリフレーム4の各フレーム部材4aの上面、及び、底板4bの上面には、バッテリケース7が載置可能となっている。
【0044】
バッテリケース7は、アッパケース16と、ロアケース17と、を有する。
【0045】
各ケース16,17は、例えば、鋼板等からなる板金部材をプレス加工することによって形成されている。各ケース16,17は、例えば、断面略ハット形状となっている。このため、各ケース16,17の外周縁部には、外向フランジ部16a、及び、外向フランジ部17aが形成されている。
【0046】
このような各ケース16,17は、開口部を互いに対向させた状態にて各外向フランジ部16a,17a同士を当接させた状態にて接合されている。これにより、バッテリケース7は、中空の断面略矩形形状を有している。
【0047】
このようなバッテリケース7の内部空間には、バッテリ9が収納されている。
【0048】
バッテリ9は、例えば、車両の駆動源であるモータに電力を供給するバッテリである。このようなバッテリ9は、図示しない直方体状のバッテリセルが複数積層されている。なお、バッテリセルには、その内部にリチウムイオンバッテリ、または、ニッケル水素バッテリ等からなる二次電池の単電池が複数収容されている。
【0049】
このようなバッテリ9が収納されたバッテリケース7は、バッテリフレーム4に載置された状態にて、各フレーム部材4aに接合されている。これにより、バッテリ9は、サイドシル3の車幅方向内側に対向する位置に固定されている。
【0050】
サイドドア5は、
図2に示すように、例えば、車体2の車幅方向に揺動可能なスイングドアである。このため、サイドドア5の前部は、図示しない上下一対のヒンジを介して、ドア開口部20の前部に支持されている。このサイドドア5は、ドア開口部20を閉塞した時、サイドシル3の車幅方向外側を覆うように設定されている。すなわち、サイドドア5の下部は、サイドシル3の車幅方向外側に対向する位置に設定されている。
【0051】
このようなサイドドア5は、
図2、
図3に示すように、インナパネル30と、アウタパネル31と、を有する。なお、以下の説明において、サイドドア5の各構成部材の配置は、サイドドア5がドア開口部20を閉塞した状態での配置である。
【0052】
インナパネル30は、鋼板等からなる板金部材をプレス加工することによって形成されている。このインナパネル30は、サイドドア5の車幅方向内側に配置される。また、インナパネル30の下部は、サイドシル3の外側壁部11aを覆うように配置されている。
【0053】
詳述すると、インナパネル30は、下壁部30aと、第1の側壁部30cと、段差部30dと、第2の側壁部30eと、を有する。
【0054】
下壁部30aは、インナパネル30の下端部に形成されている。また、下壁部30aは、車幅方向に延在されている。この下壁部30aの車幅方向の略中央部には、車外からサイドドア5の内部空間に浸入する雨水等を車外に排水するための排水孔32が設けられている。この排水孔32は、サイドドア5の車体前後方向に複数設けられている。
【0055】
このような下壁部30aの車幅方向外縁部には、下側に折り曲げられた状態にて延出する外向フランジ部30bが形成されている。この外向フランジ部30bは、インナパネル30の前縁部、後縁部、及び、下縁部を形成する。
【0056】
第1の側壁部30cは、下壁部30aの車幅方向内縁部から上方に向けて延出されている。第1の側壁部30cは、アウタフレーム11の外側壁部11aに対向する位置に所定の間隔を隔てて形成されている。また、第1の側壁部30cの下部には、ボルト挿通孔36が車体前後方向に所定の間隔を隔てて、複数設けられている。
【0057】
段差部30dは、第1の側壁部30cの上縁部から車幅方向内側に向けて延出されている。段差部30dの車幅方向の中央部付近には、ボルト挿通孔37が車体前後方向に所定の間隔を隔てて、複数設けられている。
【0058】
第2の側壁部30eは、段差部30dの車幅方向内縁部から上方に延出されている。なお、この第2の側壁部30eの車幅方向内側の外面には、樹脂製の内張りパネル33が設けられている。
【0059】
このような構成により、インナパネル30の下部には、サイドシル3の車幅方向外側に対向する位置に、後述する衝撃吸収部材25を取り付けるための空間が形成されている。
【0060】
アウタパネル31は、鋼板等からなる板金部材をプレス加工することによって形成されている。このアウタパネル31は、サイドドア5の車幅方向外側に配置されている。このアウタパネル31の前縁部、後縁部、及び、下縁部は、インナパネル30の外向フランジ部30bに対し、ヘミング加工等によって接合されている。
【0061】
ここで、第1の側壁部30cとアウタパネル31との間隔は、少なくともサイドドア5の内部に浸入した雨水等を車外に排水可能な寸法に設定されている。
【0062】
そして、このようなインナパネル30とアウタパネル31との接合により、サイドドア5には、内部空間が形成されている。
【0063】
なお、インナパネル30とアウタパネル31の上縁部は、それぞれ対向してサイドドア5の内側に折り曲げられている。そして、サイドドア5の上面には、ウインドガラス34が出入りするための開口部を備えている(図示せず)。
【0064】
また、アウタパネル31の外面側の後部寄りには、ドアハンドル35が取り付けられている。このドアハンドル35は、サイドドア5の内部において、ロッドを介してラチェット機構に接続されている(何れも図示せず)。
【0065】
このように構成されたサイドドア5の外部には、車両1の側面衝突において、衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部材25が設けられている。
【0066】
衝撃吸収部材25は、インナパネル30の車幅方向内側に設けられている。また、衝撃吸収部材25は、サイドシル3に対向する位置において、車体前後方向に延在されている。このような衝撃吸収部材25は、車体前後方向に延在する直方体形状となっている。
【0067】
詳述すると、衝撃吸収部材25は、
図3に示すように、上壁部25aと、下壁部25bと、外側壁部25cと、内側壁部25dと、を有する。
【0068】
上壁部25aと下壁部25bは、上下方向に所定の間隔を隔てた状態にて、互いに対向されている。
【0069】
この上壁部25aの略中央部には、ボルト挿通穴25eが車体前後方向に所定の間隔を隔てて、複数設けられている。また、下壁部25bの車幅方向外側には、ボルト挿通穴25fが車体前後方向に所定の間隔を隔てて、複数設けられている。
【0070】
外側壁部25cと内側壁部25dは、車幅方向に所定の間隔を隔てた状態にて、互いに対向されている。
【0071】
これら外側壁部25cと内側壁部25dの上端部、及び、外側壁部25cと内側壁部25dの下端部の各々は、上壁部25aと下壁部25bによって連結されている。
【0072】
これらにより、上壁部25a、下壁部25b、外側壁部25c、及び、内側壁部25dは、中空の断面矩形形状を形成している。
【0073】
このように形成された衝撃吸収部材25の内部空間には、補強板25gが複数設けられている。補強板25gは、例えば、車幅方向に延在する平板形状となっている。
【0074】
具体的には、補強板25gは、衝撃吸収部材25の内部空間を車体上下方向に仕切るように複数設けられている(例:本実施形態は2つ)。
【0075】
このような補強板25gは、車両1の側面衝突の際、衝撃吸収部材25を補剛する。また、補強板25gは、車両1の側面衝突の際、衝撃吸収部材25と共に変形して衝撃エネルギーを吸収することが可能となっている。なお、衝撃エネルギーを的確に吸収するため、補強板25gの板厚や衝撃吸収部材25の内部に設ける個数等の各種条件は、予め実験やシミュレーション等から求められている。また、補強板25gは、格子状に衝撃吸収部材25の内部に設けても良い。これらの補強板25gを内部に備える衝撃吸収部材25は、例えば、アルミ押し出し成形品である。
【0076】
このような構成により、衝撃吸収部材25は、サイドシル3に対向する位置において、インナパネル30の下部に接合可能となっている。
【0077】
詳述すると、上壁部25a及び外側壁部25cは、段差部30d及び第1の側壁部30cに当接されている。
【0078】
また、各ボルト挿通穴25e,25fは、各ボルト挿通孔37,36に対して、それぞれ位置決めされている。
【0079】
そして、各ボルト挿通穴25e,25fが位置決めされた各ボルト挿通孔37,36のそれぞれには、サイドドア5の内部からボルト38が螺合される。
【0080】
これにより、衝撃吸収部材25は、サイドシル3に対向する位置において、インナパネル30の下部にボルト締結によって接合されている。なお、衝撃吸収部材25のインナパネル30に対する接合は、ボルト締結に限定されるものではなく、接着剤や溶接等であっても良い。
【0081】
このような実施形態によれば、サイドドア構造は、車体前後方向に延在するサイドシル3の車幅方向外側を覆うインナパネル30と、インナパネル30に対向する位置に配置され、縁部がインナパネル30に接合して、インナパネル30と共にサイドドア5を構成するアウタパネル31と、インナパネル30の下端部に形成され、車外からサイドドア5の内部空間に浸入する雨水を排出する排水孔32と、インナパネル30の車幅方向内側に設けられ、サイドシル3に対向する位置において車体前後方向に延在する衝撃吸収部材25と、を備える。これらの構成により、サイドドア構造は、車外からドア内に浸入する雨水等の排水性を損なうことなく、サイドシル3を十分に補剛することができる。
【0082】
すなわち、サイドドア5は、インナパネル30の車幅方向内側に衝撃吸収部材25を備える。つまり、衝撃吸収部材25は、サイドドア5の内部に侵入した雨水等の流れを阻害することのないサイドドア5の外部に設けられている。従って、サイドドア5は、当該サイドドア5の内部に浸入した雨水等を排水孔32まで速やかに導くことができる。
【0083】
加えて、衝撃吸収部材25は、サイドドア5の外部において、サイドシル3に対向する位置に配置されている。これにより、衝撃吸収部材25の形状は、サイドドア5の下部の内部空間によって制約を受けることなく、高い自由度にて設定することができる。従って、衝撃吸収部材25の形状を、サイドシル3を補剛するために最適な形状に設定することができる。
【0084】
これにより、例えば、車両1の側面に電柱等(ポールP)からの衝突荷重が局所的に集中して入力されるポール側面衝突に対して、衝突初期の衝撃エネルギーを衝撃吸収部材25によって的確に吸収することができる。その結果、サイドシル3の変形ストロークを抑えることができる(
図4参照)。
【0085】
さらに、衝突初期におけるサイドシル3の変形ストロークが抑制されているため、サイドシル3は、車幅方向内側に大きく変形することなく、衝突終盤における衝撃エネルギーを的確に吸収することができる(
図5参照)。従って、例えば、車両1の床下にバッテリ9が搭載されている場合にも、当該バッテリ9をポール側面衝突等から的確に保護することができる。
【0086】
この場合において、衝撃吸収部材25の形状を断面略矩形形状とすることにより、衝撃吸収部材25の剛性を効果的に高めることができる。
【0087】
また、衝撃吸収部材25の内部に補強板25gを設けることにより、衝撃吸収部材25の衝撃吸収効率をより高めることができる。
【0088】
また、本実施形態において、衝撃吸収部材25を車両1のフロントサイドドア5に適用した例について説明したが、リアサイドドアにおいても適用することができる。
【0089】
なお、以上の実施形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。
【0090】
さらに、上記形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0091】
また、上記の実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0092】
1・・・車両
2・・・車体
3・・・サイドシル
4・・・バッテリフレーム
4a・・・フレーム部材
4b・・・底板
5・・・サイドドア
6・・・フロアパネル
7・・・バッテリケース
9・・・バッテリ
10・・・インナフレーム
10a・・・内側壁部
10b・・・壁部(上下一対の壁部)
10c・・・インナフランジ(上下一対のインナフランジ)
11・・・アウタフレーム
11a・・・外側壁部
11b・・・壁部(上下一対の壁部)
11c・・・アウタフランジ(上下一対のアウタフランジ)
16・・・アッパケース
16a・・・外向フランジ部
17・・・ロアケース
17a・・・外向フランジ部
20・・・ドア開口部
25・・・衝撃吸収部材
25a・・・上壁部
25b・・・下壁部
25c・・・外側壁部
25d・・・内側壁部
25e・・・ボルト挿通穴
25f・・・ボルト挿通穴
25g・・・補強板
28・・・補強部材
28a・・・補強部
30・・・インナパネル
30a・・・下壁部
30b・・・外向フランジ部
30c・・・第1の側壁部
30d・・・段差部
30e・・・第2の側壁部
31・・・アウタパネル
32・・・排水孔
33・・・内張りパネル
34・・・ウインドガラス
35・・・ドアハンドル
36・・・ボルト挿通孔
37・・・ボルト挿通孔
38・・・ボルト
P・・・ポール