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特開2025-149786突刺の団塊形前駆体、正極材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025149786
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】突刺の団塊形前駆体、正極材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20251001BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20251001BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20251001BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024130491
(22)【出願日】2024-08-07
(31)【優先権主張番号】202410352563.0
(32)【優先日】2024-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524296844
【氏名又は名称】南方▲もん▼業集団有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲じゃん▼海青
(72)【発明者】
【氏名】張麗云
(72)【発明者】
【氏名】黄敏峰
(72)【発明者】
【氏名】李海亮
(72)【発明者】
【氏名】唐平
(72)【発明者】
【氏名】李華成
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】突刺の団塊形前駆体、正極材料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】突刺の団塊形前駆体は、微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性粒子である。前記突刺の団塊形前駆体は、三元系の溶液、沈殿剤溶液、錯化剤溶液、及び処理溶液を含む混合物から調製され;前記三元系の溶液は、ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩を含む混合溶液であり、前記処理液は、クエン酸溶液である。本発明で提供した突刺の団塊形前駆体は、微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性粒子であって、リチウムイオン輸送速度を加速し、微細針状の一次粒子は、比較的大きな比表面積を有し、より多くの活性サイトを提供することができ、リチウム源と混合して高温で焼成した後、表面構造安定性の良い正極材料を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性粒子であって、
突刺の団塊形前駆体は、三元系の溶液、沈殿剤溶液、錯化剤溶液、及び処理溶液を含む混合物から調製され;
前記三元系の溶液は、ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩を含む混合溶液であり、前記処理液は、クエン酸溶液であることを特徴とする突刺の団塊形前駆体。
【請求項2】
前記ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩は、独立して、硫酸塩、硝酸塩および炭酸塩から選択される1つ以上であり;及び/又は
前記沈殿剤溶液は、炭酸塩溶液であり、好ましくは、前記炭酸塩溶液は、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、炭酸カリウム溶液、炭酸水素カリウム溶液、炭酸ルビジウム溶液から選択される1つ以上であり、より好ましくは、前記炭酸ナトリウム溶液の濃度は、0.2~4.5 mol/Lであることを特徴とする請求項1に記載の突刺の団塊形前駆体。
【請求項3】
前記三元系の溶液中の金属イオンの濃度は、0.6~2.5 mol/Lであり;
前記沈殿剤溶液は炭酸イオンを含む溶液であり、好ましくは、前記沈殿剤溶液における炭酸イオン濃度は0.8~3.4 mol/Lであり;
前記錯化剤溶液はアンモニア水であり、好ましくは前記アンモニア水の濃度は4~7mol/Lであり;及び/又は
前記クエン酸の濃度は0.025~0.1mol/Lであることを特徴とする請求項2に記載の突刺の団塊形前駆体。
【請求項4】
以下の工程を備えることを特徴とする請求項1‐3の何れかに記載の突刺の団塊形前駆体の製造方法であって:
S1.三元系の溶液、沈殿剤溶液、錯化剤溶液、及び処理溶液を別々に調製し;
S2.保護雰囲気下で、錯化剤溶液と沈殿剤溶液とを混合して、プライマー液を調製し;
S3.前記三元系の溶液、前記処理液及び前記プライマー液を混合し、第一の反応の後、静置し、上澄みを除去し、第一の生成物を製造し;
S4.前記第一の生成物を、前記三元系の溶液、前記沈殿剤溶液、及び前記錯化剤溶液と混合し、第二の反応を行って、静置し、上澄みを除去し;
S5.工程S4を少なくとも1回繰り返し、熟成、洗浄、乾燥、篩分け、除鉄を行う、突刺の団塊形前駆体を製造する。
【請求項5】
前記プライマー液は、pH が11~12であり;及び/又は
前記プライマー液はアンモニア濃度は、2~20g/Lであることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第一の反応と第二の反応の温度は、独立して、30~60℃であり;
前記第一の反応と第二の反応の時間が、独立して、0.5~5時間であり;
前記第一の反応と第二の反応は、pHが、独立して7.5~8.5であり;及び/又は
前記熟成の時間は、5~20時間であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1‐3の何れかに記載の突刺の団塊形前駆体とリチウム源とを混練した後、熱処理して得られる正極材料。
【請求項8】
前記突刺の団塊形前駆体とリチウム源との比率は、1:1.03~1.10であり;及び/又は
前記リチウム源は、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムから選択される1つ以上であることを特徴とする請求項7に記載の正極材料。
【請求項9】
前記正極材料の化学式は、LiNixCoyMn(1-x-y)O2( 0.6≦x<1、0<y≦0.4 )であることを特徴とする請求項7に記載の正極材料。
【請求項10】
前記混練はボールミル混合であり、前記ボールミルは、回転速度が1800~ 2000r/minであり、時間が2~4時間であり;及び/又は
前記熱処理は、酸素雰囲気で480~850℃で12~18時間保温し;好ましくは、前記熱処理では、酸素ガスの気流速度は80~120 mL/minであり;好ましくは、480~550℃で4~6時間で保温し、次いで700~850℃で9~12時間保温し、熱処理を行い、その際の昇温速度は2~5℃/ minであることを特徴とする請求項7に記載の正極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池正極材料の技術分野に関し、特に、突刺の団塊形前駆体、正極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車を発展させることは、我が国では国エネルギー戦略の需要に対応し、2060年のカーボンニュートラル目標を達成するための重大な戦略選択である。リチウムイオン電池は、ニッケル水素電池や鉛電池等の他の電池に対して、軽量、自己放電率が低く、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長い等の利点を有して広く開発されている。しかしながら、リチウムイオン電池の容量は正極材料の性能に制約され、電池コストの1/3が正極材料の性能を向上させるための研究に用いられている。現在リチウムイオン電池に用いられている正極材料は、主にコバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、および三元系材料であり、そのうち、三元系材料は、高い比容量、良好なサイクル特性およびCレート特性ならびに低コストとの利点を有するから、広く研究されているが、多くの課題に直面している。
【0003】
現在の三元系正極材料は、主に、カチオンの混合、格子酸素の析出、遷移金属イオンの移動、及びマイクロクラックの形成等の問題を有し、構造が破壊され、不活性物質が生成され、急速な容量の減衰をもたらし、最終材料の無効化をもたらし、三元系正極材料の商業的な使用を妨げている。特許文献CN111153447Aは、ニッケル、コバルト、マンガン等の溶液、錯化剤、沈殿剤及び造孔剤を、所定のガス雰囲気で所定の底液を有する反応器に一緒に並流で加え、連続的に共沈反応を行うことにより、メッシュ状多孔性前駆体材料を製造し、一次粒子が平面配列、垂直配列又は両者の混合配列を有し、二次粒子の分散性が良く、球形度が高くなる。特許文献CN112758991Aは、前駆体粒子の外層に高分子凝集剤を用いて網目構造を形成することにより、構造強度を高め、前駆体反応後期に粒子同士の衝突による球割れを回避し、循環性、安定性、安全性を確保している。しかし、上記の方法では、粒径が不揃いで、特性の均一性が悪く、粒成長が不十分で、その後のサイクルで一次粒子が脱落するという問題があった。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、従来技術に存在する1つ又は複数の技術的問題に対して、突刺の団塊形前駆体、正極材料及びその製造方法を提供する。本発明の突刺の団塊形前駆体は、微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性粒子であり、粒子径分布が均一で、球形度が高く、その中、微細針状の一次粒子が縦横に分布し、一定の細孔構造を形成し、リチウムイオン輸送速度を加速し、それに、良好な球形構造が後続のサイクル性能の向上の基礎を提供する。微細針状の一次粒子は、比較的大きな比表面積を有し、より多くの活性サイトを提供することができ、リチウム源と混合して高温で焼成した後に表面構造安定性の良い正極材料を得ることができる。
【0005】
本発明は、第1の態様において、微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性粒子であって、
前記突刺の団塊形前駆体は、三元系の溶液、沈殿剤溶液、錯化剤溶液、及び処理溶液を含む混合物から調製され;
前記三元系の溶液は、ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩を含む混合溶液であり、前記処理液は、クエン酸溶液である突刺の団塊形前駆体を提供する。
【0006】
好ましくは、前記ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩は、独立して、硫酸塩、硝酸塩および炭酸塩から選択される1つ以上であり;及び/又は
前記沈殿剤溶液は、炭酸塩溶液であり、好ましくは、前記炭酸塩溶液は、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、炭酸カリウム溶液、炭酸水素カリウム溶液、炭酸ルビジウム溶液から選択される1つ以上であり、より好ましくは、前記炭酸ナトリウム溶液の濃度は、0.2~4.5 mol/Lである。
【0007】
好ましくは、前記三元系の溶液中の金属イオンの濃度は、0.6~2.5 mol/Lであり;
前記沈殿剤溶液は炭酸イオンを含む溶液であり、好ましくは、前記沈殿剤溶液における炭酸イオン濃度は0.8~3.4 mol/Lであり;
前記錯化剤溶液はアンモニア水であり、好ましくは前記アンモニア水の濃度は4~7mol/Lであり;及び/又は
前記クエン酸の濃度は0.025~0.1mol/Lである。
【0008】
本発明は、第2の態様において、以下の工程を備える第1の態様に記載の突刺の団塊形前駆体の製造方法であって:
S1.三元系の溶液、沈殿剤溶液、錯化剤溶液、及び処理溶液を別々に調製し;
S2.保護雰囲気下で、錯化剤溶液と沈殿剤溶液とを混合して、プライマー液を調製し;
S3.前記三元系の溶液、前記処理液及び前記プライマー液を混合し、第一の反応の後、静置し、上澄みを除去し、第一の生成物を製造し;
S4.前記第一の生成物を、前記三元系の溶液、前記沈殿剤溶液、及び前記錯化剤溶液と混合し、第二の反応を行って、静置し、上澄みを除去し;
S5.工程S4を少なくとも1回繰り返し、熟成、洗浄、乾燥、篩分け、除鉄を行う、突刺の団塊形前駆体を製造する製造方法を提供する。
【0009】
好ましくは、前記プライマー液は、pH が11~12であり;及び/又は
前記プライマー液はアンモニア濃度は、2~20g/Lである。
【0010】
好ましくは、前記第一の反応と第二の反応の温度は、独立して、30~60℃であり;
前記第一の反応と第二の反応の時間が、独立して、0.5~5時間であり;
前記第一の反応と第二の反応は、pHが、独立して7.5~8.5であり;及び/又は
前記熟成の時間は、5~20時間である。
【0011】
本発明は、第3の態様において、第1の態様に記載の突刺の団塊形前駆体とリチウム源とを混練した後、熱処理して得られる正極材料を提供する。
【0012】
好ましくは、前記突刺の団塊形前駆体とリチウム源との比率は、1:1.03~1.10であり;及び/又は
前記リチウム源は、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムから選択される1つ以上である。
【0013】
好ましくは、前記正極材料の化学式は、LiNixCoyMn(1-x-y)O2( 0.6≦x<1、0<y≦0.4 )である。
【0014】
好ましくは、前記混練はボールミル混合であり、前記ボールミルは、回転速度が1800~ 2000r/minであり、時間が2~4時間であり;及び/又は
前記熱処理は、酸素雰囲気で480~850℃で12~18時間保温し;好ましくは、前記熱処理では、酸素ガスの気流速度は80~120 mL/minであり;好ましくは、480~550℃で4~6時間で保温し、次いで700~850℃で9~12時間保温し、熱処理を行い、その際の昇温速度は2~5℃/ minである。
【0015】
本発明は、先行技術と比較して少なくとも以下の有利な効果を示している。
【0016】
本発明は、粒径分布が均一で、球形度が高い突刺の団塊形前駆体を提供し、該突刺の団塊形前駆体は、微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性粒子であり、粒径分布が均一で、球形度が高く、その中、微細針状の一次粒子が縦横に分布し、一定の細孔構造を形成し、リチウムイオン輸送速度を加速し、それに、良好な球形構造が後続のサイクル性能の向上の基礎を提供する。微細針状の一次粒子は、比較的大きな比表面積を有し、より多くの活性サイトを提供することができ、リチウム源と混合して高温で焼成した後に表面構造安定性の良い正極材料を得ることができる。
【0017】
本発明は、三元系の溶液、沈殿剤溶液、錯化剤の共沈殿システムに処理液を導入し、前駆体の合成条件のパラメータを調整し、結晶粒を異方成長させ、微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性の突刺の団塊形前駆体を製造し、孔隙はリチウムイオン輸送通路となり、正極材料のサイクル性能を向上させるのに有利であると同時に、表面アルカリ含有量を低下させ、多量の水分を利用した長時間水洗による材料表面構造の破壊及び原料の損失を回避し、正極材料のサイクル性能等の電気化学的性能を更に向上させることができ、さらに、リチウム源と混合され、熱処理により微細針状の一次粒子を更に成長させ、筋状になって互いに絡み合い、表面構造の安定性を向上させ、更にCレート特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施例又は先行技術における技術態様をより明確にするために、以下、実施例又は先行技術の説明において必要となる図面について簡単に説明するが、以下の説明における図面は本発明の実施例の一部であり、当業者にとって創造的な労働をしないで、これらの図面に基づいて他の図面を導くことは明らかである。
図1図1は、本発明の実施例1、比較例1及び比較例2で提供した突刺の団塊形前駆体のSEM写真であり;
図2図2は、本発明の実施例1、比較例1及び比較例2での熱処理後の二次粒子のSEM写真であり;
図3図3は、本発明の実施例1及び比較例1で製造した正極材料の18 mA/g電流密度で初回の充放電曲線を示し;
図4図4は本発明の実施例1、実施例2及び比較例1で製造した正極材料の180 mA/g電流密度での初回の充放電曲線を示し;
図5図5は、本発明の実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1で製造した正極材料の異なるCレートでのサイクル特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における技術案を参照しながら、本発明を明確且つ完全に説明する。また、以下に記載された実施例は、本発明の一部の実施例であって、全ての実施例ではないが、本発明における実施例に基づいて、当業者の創造的な労働がない場合で得られた他の全ての実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0020】
本発明は、第1の態様において、微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性粒子であって、
前記突刺の団塊形前駆体は、三元系の溶液、沈殿剤溶液、錯化剤溶液、及び処理溶液を含む混合物から調製され;
前記三元系の溶液は、ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩を含む混合溶液であり、前記処理液は、クエン酸溶液である突刺の団塊形前駆体を提供する。
【0021】
本発明の突刺の団塊形前駆体は、微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性粒子であり、粒径分布が均一で、球形度が高く、その中、微細針状の一次粒子が縦横に分布し、一定の細孔構造を形成し、リチウムイオン輸送速度を加速し、それに、良好な球形構造が後続のサイクル性能の向上の基礎を提供する。また、微細針状の一次粒子は、比較的大きな比表面積を有し、より多くの活性サイトを提供することができ、リチウム源と混合して高温で焼成した後に表面構造安定性の良い正極材料を得ることができる。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態において、前記ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩は、独立して、硫酸塩、硝酸塩および炭酸塩から選択される1つ以上である。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、前記沈殿剤溶液は、炭酸塩溶液であり、好ましくは、前記炭酸塩溶液は、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、炭酸カリウム溶液、炭酸水素カリウム溶液、炭酸ルビジウム溶液から選択される1つ以上であり、より好ましくは、前記炭酸ナトリウム溶液の濃度は、0.2~4.5 mol/Lであり、例えば、0.2 mol/L、0.5 mol/L、1 mol/L、1.5mol/L、2mol/L、2.5mol/L、3mol/L、3.5mol/L、4mol/L又は4.5mol/Lである。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態において、前記三元系の溶液中の金属イオンの濃度は、0.6~2.5 mol/Lであり、例えば、0.6 mol/L、0.8 mol/L、1 mol/L、1.2mol/L、1.5mol/L、2mol/L又は2.5mol/Lである。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態において、前記沈殿剤溶液は炭酸イオンを含む溶液であり、好ましくは、前記沈殿剤溶液における炭酸イオン濃度は0.8~3.4 mol/Lであり、例えば、0.8mol/L、1 mol/L、1.2 mol/L、1.5mol/L、1.8mol/L、2mol/L、2.2mol/L、2.5mol/L、3mol/L、3.2mol/L又は3.4mol/Lである。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態において、前記錯化剤溶液はアンモニア水であり、好ましくは前記アンモニア水の濃度は4~7mol/Lであり、例えば、4mol/L、4.5mol/L、5mol/L、5.5mol/L、6mol/L、6.5mol/L又は7mol/Lである。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、前記クエン酸の濃度は0.025~0.1mol/Lであり、例えば、0.025mol/L、0.03mol/L、0.04mol/L、0.05mol/L、0.06mol/L、0.07mol/L、0.08mol/L、0.09mol/L又は1mol/Lである。
【0028】
本発明は、第2の態様において、以下の工程を備える第1の態様に記載の突刺の団塊形前駆体の製造方法であって:
S1.三元系の溶液、沈殿剤溶液、錯化剤溶液、及び処理溶液を別々に調製し;
S2.保護雰囲気下で、錯化剤溶液と沈殿剤溶液とを混合して、プライマー液を調製し;
S3.前記三元系の溶液、前記処理液及び前記プライマー液を混合し、第一の反応の後、静置し、上澄みを除去し、第一の生成物を製造し;
S4.前記第一の生成物を、前記三元系の溶液、前記沈殿剤溶液、及び前記錯化剤溶液と混合し、第二の反応を行って、静置し、上澄みを除去し;
S5.工程S4を少なくとも1回繰り返し、熟成、洗浄、乾燥、篩分け、除鉄を行い、突刺の団塊形前駆体を製造する製造方法を提供する。
【0029】
本発明は、三元系の溶液、沈殿剤溶液、錯化剤の共沈殿システムに処理液を導入し、前駆体の合成条件のパラメータを調整し、結晶粒を異方成長させ、微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性の突刺の団塊形前駆体を製造し、孔隙はリチウムイオン輸送通路となり、正極材料のサイクル性能を向上させるのに有利であると同時に、表面アルカリ含有量を低下させ、多量の水分を利用した長時間水洗による材料表面構造の破壊及び原料の損失を回避し、正極材料のサイクル性能等の電気化学的性能を更に向上させることができ、さらに、リチウム源と混合され、熱処理により微細針状の一次粒子を更に成長させ、筋状になって互いに絡み合い、表面構造の安定性を向上させ、更にCレート特性を向上させることができる。
【0030】
本発明は、共沈法を採用して微細針状の前駆体を調製し、さらに高ニッケル三元系の正極材料を調製した。研究と最適化を通じて、いくつかの製造条件パラメータセットを導き出し、高ニッケル正極材料の実用的な生産と応用の条件を拡大する。本発明の方法は、経済的に実現可能で、広く適用でき、効果的であり、応用の見込みがある。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、前記プライマー液は、pH が11~12であり、例えば、11、11.2、11.4、11.6、11.8又は12である。本発明において、プライマー液のpHを上記範囲に制御することにより、三元系の溶液の注入時、核形成を迅速に行うことができ、造粒を促進することができる。
【0032】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、S2では、窒素雰囲気下で、純水に錯化剤溶液を添加し、沈殿剤溶液でpHを調整して、プライマー液を調製する。混合中の攪拌速度は400 ~600 rpmである。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態において、前記プライマー液はアンモニア濃度が2~20g/Lであり、例えば、2g/L、5g/L、6g/L、8g/L、10g/L、12g/L、15g/L、16g/L、18g/L又は20g/Lである。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第一の反応と第二の反応の温度は、独立して、30~60℃であり、例えば、30℃、40℃、50℃又は60℃である。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第一の反応と第二の反応の時間が、独立して、0.5~5時間であり、例えば、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間又は5時間である。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第一の反応と第二の反応は、pHが、独立して7.5~8.5である。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、前記熟成の時間は、5~20時間であり、例えば、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間又は20時間である。
【0038】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、S3およびS4では、第一の反応と第二の反応の撹拌速度は独立して300 ~1200 rpmである。
【0039】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、第一の反応後、反応液を0.1~10時間静置し、上澄みを除去した後、三元系の溶液、沈殿剤溶液及び錯化剤溶液をポンプで注入し、第二の反応を行い、静置し上澄みを除去する工程を1~10回繰り返し(三元系の溶液、沈殿剤溶液及び錯化剤溶液をポンプで注入し、第二の反応を行い、静置し上澄みを除去する工程)、5~20時間で熟成した後、脱イオン水で2~15回洗浄し;熟成したスラリーを脱イオン水に入れて0.2 ~ 3時間静置し、上澄みを除去して不純物イオンを除去するように、前記洗浄を行う。
【0040】
本発明では、前駆体の粒径の均一性を確保するために、S4を1~10回繰り返す。
【0041】
本発明は、第3の態様において、第1の態様に記載の突刺の団塊形前駆体とリチウム源とを混練した後、熱処理して得られる正極材料を提供する。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、前記突刺の団塊形前駆体とリチウム源との比率は、1:1.03~1.10であり、例えば1:1.03、1:1.04、1:1.05、1:1.06、1:1.07、1:1.08、1:1.09又は1:1.1であり、及び/又は
前記リチウム源は、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムから選択される1つ以上である。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、前記正極材料の化学式は、LiNixCoyMn(1-x-y)O2( 0.6≦x<1、0<y≦0.4 )である。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態において、前記混練はボールミル混合であり、前記ボールミルは、回転速度が1800~ 2000r/minであり、例えば1800 r/min、1900 r/min又は2000 r/minであり、時間が2~4時間であり、例えば2時間、2.5時間、3時間、3.5時間又は4時間であり、及び/又は
いくつかの好ましい実施形態において、前記熱処理は、酸素雰囲気で480~850℃(例えば480℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃又は850℃)で12~18時間(例えば12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間又は18時間)保温し;好ましくは、前記熱処理では、酸素ガスの気流速度は80~120 mL/min(例えば80mL/min、90mL/min、100mL/min、110mL/min又は120mL/min)であり;本発明の酸素ガスの気流速度がこの範囲よりも小さいと、酸素不足を招き、酸化物の生成に不利となる。また、気流速度が大きすぎると、実温度が不足し、所期の温度効果が得られなくなる。
【0045】
いくつかの好ましい実施形態において、前記熱処理は、まず480~550℃(例えば、480℃、490℃、500℃、510℃、520℃、530℃、540℃又は550℃)で4~6時間(例えば、4時間、4.5時間、4時間、4.5時間又は6時間)で保温し、次いで700~850℃(例えば、700℃、750℃、800℃又は850℃)で9~12時間(例えば、9時間、9.5時間、10時間、10.5時間、11時間、11.5時間又は12時間)保温し、熱処理を行い、その際の昇温速度は2~5℃/ min(例えば、2℃/min、2.5℃/min、3℃/min、3.5℃/min、4℃/min、4.5℃/min又は5℃/min)である。本発明では、昇温速度が低すぎると、時間的なコストが高くなり、電力および酸素のコストが高くなる一方、昇温速度が速すぎると、粒子が高温で熱膨張し、崩壊するため、熱処理の昇温速度を上記範囲に制御する。
【0046】
本発明の技術形態及び利点をより明確に説明するために、以下、実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0047】
実施例1
突刺の団塊形前駆体の製造方法:
S1.硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンをモル比83:11:6で混合し、純水を加えて撹拌溶解し、金属イオン総濃度1.5mol/Lとして三元系の溶液を調製した。沈殿剤溶液として2 mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を調製した。アンモニア水と炭酸ナトリウムとの濃度比2.5で錯化剤溶液を調製した。処理液としてクエン酸溶液を調製し、クエン酸溶液と炭酸ナトリウムとの濃度比は0.0125とした。
【0048】
S2.窒素ガスをエアポンプにより注入し、窒素雰囲気下で純水に錯化剤溶液を加え、沈殿剤溶液でプライマー液をpH11に制御し、アンモニア濃度8g/L、温度50℃、撹拌速度500 rpmであった。
【0049】
S3.窒素雰囲気下、調製した三元系の溶液、処理液をプライマー液に注入して反応させ、反応過程の攪拌速度を800rpmに、温度を60℃に、pHを7.5に調節し、1時間フィードした後、エアポンプを閉じ、反応液を2時間静置し、その後、上澄みを除去した。再びポンプを開いて、三元系の溶液、沈殿剤溶液及び錯化剤溶液をポンプで注入し続け、反応させ、静置し、上澄みを除去し、この工程を5回繰り返した。反応終了後、12時間熟成し、熟成後のスラリーを脱イオン水で洗浄し、1時間静置し、上澄みを除去し、8回繰り返して不純物イオンを除去し、真空チャンバーで80℃で15時間乾燥させ、得られた粉体を200メッシュの篩いで通しさせ、鉄を除去した後、突刺の団塊形前駆体を得た。
【0050】
正極材料の製造方法:
得られた突刺の団塊形前駆体3g、水酸化リチウム1.526g (突刺の団塊形前駆体と水酸化リチウムとのモル比1:1.07)を回転数1800r/minで3時間でボールミル粉砕して十分に混合し、混合材料を管状炉に入れて酸素ガスで熱処理し、酸素ガスの流量は80mL/minであった。熱処理は、まず、室温から480℃まで昇温し、4時間の温度保持を行い、その後、750℃まで昇温し、12時間の温度保持を行い、その後、炉の温度が室温まで降下し、熱処理工程の昇温速度が3℃/minであった。得られた材料を取り出して、200メッシュの篩いで通じさせ、正極材料を得た。
【0051】
実施例2
S1.硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンをモル比83:11:6で混合し、純水を加えて撹拌溶解し、金属イオン総濃度1.8mol/Lとして三元系の溶液を調製した。沈殿剤溶液として2mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液を調製した。アンモニア水と炭酸水素ナトリウムとの濃度比3で錯化剤溶液を調製した。処理液としてクエン酸溶液を調製し、クエン酸溶液と炭酸水素ナトリウムとの濃度比は0.015とした。
【0052】
S2.窒素ガスをエアポンプにより注入し、窒素雰囲気下で純水に錯化剤溶液を加え、沈殿剤溶液でプライマー液をpH11に制御し、アンモニア濃度8g/L、温度60℃、撹拌速度600 rpmであった。
【0053】
S3.窒素雰囲気下、調製した三元系の溶液、処理液をプライマー液に注入して反応させ、反応過程の攪拌速度を900rpmに、温度を50℃に、pHを7.8に調節し、1時間フィードした後、エアポンプを閉じ、反応液を2時間静置し、その後、上澄みを除去した。再びポンプを開いて、三元系の溶液、沈殿剤溶液及び錯化剤溶液をポンプで注入し続け、反応させ、静置し、上澄みを除去し、この工程を5回繰り返した。反応終了後、12時間熟成し、熟成後のスラリーを脱イオン水で洗浄し、1時間静置し、上澄みを除去し、8回繰り返して不純物イオンを除去し、真空チャンバーで80℃で15時間乾燥させ、得られた粉体を200メッシュの篩いで通しさせ、鉄を除去した後、突刺の団塊形前駆体を得た。
【0054】
正極材料の製造方法:
得られた突刺の団塊形前駆体3g、水酸化リチウム1.526g (突刺の団塊形前駆体と水酸化リチウムとのモル比1:1.07)を回転数1800r/minで3時間でボールミル粉砕して十分に混合し、混合材料を管状炉に入れて酸素ガスで熱処理し、酸素ガスの流量は80mL/minであった。熱処理は、まず、室温から480℃まで昇温し、4時間の温度保持を行い、その後、750℃まで昇温し、12時間の温度保持を行い、その後、炉の温度が室温まで降下し、熱処理工程の昇温速度が3℃/minであった。得られた材料を取り出して、200メッシュの篩いで通じさせ、正極材料を得た。
【0055】
実施例3
S1.硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンをモル比83:11:6で混合し、純水を加えて撹拌溶解し、金属イオン総濃度2.5mol/Lとして三元系の溶液を調製した。沈殿剤溶液として3mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を調製した。アンモニア水と炭酸ナトリウムとの濃度比2で錯化剤溶液を調製した。処理液としてクエン酸溶液を調製し、クエン酸溶液と炭酸ナトリウムとの濃度比は0.025とした。
【0056】
S2.窒素ガスをエアポンプにより注入し、窒素雰囲気下で純水に錯化剤溶液を加え、沈殿剤溶液でプライマー液をpH12に制御し、アンモニア濃度12g/L、温度60℃、撹拌速度550 rpmであった。
【0057】
S3.窒素雰囲気下、調製した三元系の溶液、処理液をプライマー液に注入して反応させ、反応過程の攪拌速度を800rpmに、温度を60℃に、pHを8.5に調節し、1時間フィードした後、エアポンプを閉じ、反応液を2時間静置し、その後、上澄みを除去した。再びポンプを開いて、三元系の溶液、沈殿剤溶液及び錯化剤溶液をポンプで注入し続け、反応させ、静置し、上澄みを除去し、この工程を5回繰り返した。反応終了後、12時間熟成し、熟成後のスラリーを脱イオン水で洗浄し、1時間静置し、上澄みを除去し、8回繰り返して不純物イオンを除去し、真空チャンバーで80℃で15時間乾燥させ、得られた粉体を200メッシュの篩いで通しさせ、鉄を除去した後、突刺の団塊形前駆体を得た。
【0058】
正極材料の製造方法:
得られた突刺の団塊形前駆体3g、水酸化リチウム1.526g (突刺の団塊形前駆体と水酸化リチウムとのモル比1:1.07)を回転数1800r/minで3時間でボールミル粉砕して十分に混合し、混合材料を管状炉に入れて酸素ガスで熱処理し、酸素ガスの流量は80mL/minであった。熱処理は、まず、室温から480℃まで昇温し、4時間の温度保持を行い、その後、750℃まで昇温し、12時間の温度保持を行い、その後、炉の温度が室温まで降下し、熱処理工程の昇温速度が3℃/minであった。得られた材料を取り出して、200メッシュの篩いで通じさせ、正極材料を得た。
【0059】
比較例1
出発材料として市販の前駆体LiNi0.83Co0.11Mn0.06O2を用いて、実施例1と同じように熱処理工程を実行した。3gの市販の前駆体LiNi0.83Co0.11Mn0.06O2、1.526gの水酸化リチウム(前駆体と水酸化リチウムのモル比1:1.07)を回転速度1800r/minで3時間でボールミル粉砕して十分に混合し、混合材料を管状炉に入れて酸素ガスで熱処理し、酸素ガスの流量は80mL/minであった。熱処理は、まず、室温から480℃まで昇温し、4時間の温度保持を行い、その後、750℃まで昇温し、12時間の温度保持を行い、その後、炉の温度が室温まで降下し、昇温速度が3℃/minであった。得られた材料を取り出して、200メッシュの篩いで通じさせ、比較正極材料を得た。
【0060】
比較例2
以下の以外、実施例1と同じように実行した。
【0061】
S3.窒素雰囲気下、調製した三元系の溶液、処理液をプライマー液に注入して反応させ、反応過程の攪拌速度を800rpmに、温度を60℃に、pHを7.5に調節し、1時間フィードした後、エアポンプを閉じ、上澄みを除去した。再びポンプを開いて、三元系の溶液、沈殿剤溶液及び錯化剤溶液をポンプで注入し続け、この工程を5回繰り返した。反応終了後、12時間熟成し、熟成後のスラリーを脱イオン水で洗浄し、1時間静置し、上澄みを除去し、8回繰り返して不純物イオンを除去し、真空チャンバーで80℃で15時間乾燥させ、得られた粉体を200メッシュの篩いで通しさせ、鉄を除去した後、突刺の団塊形前駆体を得た。
【0062】
比較例3
以下の以外、実施例1と同じように実行した。
【0063】
S3.窒素雰囲気下、調製した三元系の溶液、処理液をプライマー液に注入して反応させ、反応過程の攪拌速度を800rpmに、温度を60℃に、pHを7.5に調節し、1時間フィードした後、エアポンプを閉じ、反応液を2時間静置した。再びポンプを開いて、三元系の溶液、沈殿剤溶液及び錯化剤溶液をポンプで注入し続け、この工程を5回繰り返した。反応終了後、12時間熟成し、熟成後のスラリーを脱イオン水で洗浄し、1時間静置し、上澄みを除去し、8回繰り返して不純物イオンを除去し、真空チャンバーで80℃で15時間乾燥させ、得られた粉体を200メッシュの篩いで通しさせ、鉄を除去した後、突刺の団塊形前駆体を得た。
【0064】
比較例1-3、及び実施例1-3で調製した正極材料を極片に作製し、リチウム対を負極として、グローブボックス内でCR2025型コイン電池を作製した。充放電は以下のように実施した。充放電電圧範囲が3V ~4.3Vであり、充放電電流が0.1C (1C=180mAh/g )であるように設定し、サイクル性能試験は、充放電電流0.1Cで3回サイクルして電極を活性化させた後、1Cでサイクル試験を行った。そして、電流密度を変えて、1C、2C、5C、10Cでそれぞれ5回の定電流充電放電を行った。
【0065】
表1. 本発明の実施例と比較例の電気化学的性能試験結果
【0066】
表1から明らかなように、本発明の実施例1で提供した正極材料から製造したリチウムイオン電池は、18mA/gのレートにおいて、初回放電比容量が202mAh/gより高く、初回クーロン効率が86%より高く、180mA/gのレートにおいて、初回放電比容量が188mAh/gより高く、100回サイクル容量維持率が92%より高く、中間電圧の初期値が3.75Vより高く、優れたサイクル性能を有した。
【0067】
比較例1-3で得られた正極材料を用いて製造したリチウムイオン電池は、18mA/gのレートで、実施例1-3と比較して初回放電比容量とクーロン効率において、低下になった。また、180mA/gレートにおいて、初回放電容量と100回サイクル容量維持率及び中間電圧の初期値も、実施例1-3より明らかに低かった。
【0068】
図1図2から明らかなように、本発明の実施例の突刺の団塊形前駆体は、均一な大きさの微細針状の一次粒子が凝集して形成された多孔性粒子からなり、熱処理の後、均一な粒径の二次粒子を形成し、高温焼成後に形成された製品は、サイクル特性に優れている。比較例2で得られた前駆体は、二次粒子が比較的に疎となり、一次粒子が成形できず、高温で焼成後に形成された製品は、サイクル中に割れやすく、サイクル性能の低下を招いた。比較例3で得られた前駆体は、二次粒子の空隙が大きく、一次粒子の一部が凝集していないため、高温焼成後に形成された製品はサイクル中に割れやすく、サイクル特性に劣っていた。
【0069】
図3から明らかなように、実施例1で提供した正極材料を用いて製造したリチウムイオン電池は、0.1Cでの初期容量が203.8 mAh/gであり、初回クーロン効率が86.5%に向上し、1Cでのサイクル後も容量保持率が92.8%であった。比較例1は、0.1Cでの初回放電比容量が198.7mAh/gであり、初回クーロン効率が83.8%であり、1Cで100回サイクル後の容量が138.0mAh/gであり、容量保持率が74.1%であった。図4から明らかなように、実施例1と実施例2の正極材料を用いたリチウムイオン電池は、1Cでサイクル特性において比較例1よりも顕著に優れている。また、本発明は、実施例1と比較例1で提供した正極材料(いずれも同ロットの正極材料)で製造したリチウムイオン電池の0.1C、0.2C、0.5C、1C、2C、5C、10CでのCレート性能について、試験も同時に測定したが、図5に示すように、実施例1で提供した正極材料で製造したリチウムイオン電池は、0.1C、0.2C、0.5C、1C、2C、5C、10CでのCレート性能が204.4 mAh/g、200.7 mAh/g、192.3 mAh/g、186.8 mAh/g、180.9 mAh/g、168.6 mAh/g、157.9 mAh/gの容量を有し、優れたサイクル性能及びCレート性能性能を有した。一方、比較例1で提供した正極材料で製造したリチウムイオン電池は、10Cレートで54.4 mAh/gの容量しか発揮し得ず、市販の前駆体のサイクル性能及びレート性能のいずれも不十分であることがわかった。また、本発明の実施例2と実施例3の正極材料から製造したリチウムイオン電池は、サイクル特性とレート特性ともに比較例1よりも著しく優れていた。なお、本発明の図3の横軸は比容量で、縦軸は電圧であり、図4図5の横軸はサイクル数で、縦軸は放電比容量を示す。
【0070】
最後に、上述の実施例は、単に本発明の実施形態を例示するものであって、本発明を限定するものではなく、上述の実施例を参照して詳細に説明したが、当業者であれば、上述の実施例に記載された実施形態を変更または一部の特徴を等価的に置換することができ、そのような変更または置換は、対応の実施形態の本質が本発明の要旨及び範囲から逸脱しないことを理解すべき。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】