(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025149788
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20251001BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20251001BHJP
【FI】
F04C18/02 311A
F04C29/02 311A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024133803
(22)【出願日】2024-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2024049973
(32)【優先日】2024-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】管原 彬人
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 友次
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭史朗
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA12
3H039BB11
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC12
3H039CC27
3H129AA02
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB09
3H129CC02
3H129CC09
3H129CC16
3H129CC17
3H129CC32
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れたスクロール型圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明のスクロール型圧縮機は、ハウジング6、駆動機構10、第1スクロール30及び第2スクロール40を備えている。第1スクロール30及び第2スクロール40は、冷媒を圧縮する圧縮室12を形成している。第1スクロール30にはケース25が固定されている。ケース25には吐出室16、還流路250及び吐出通路251が形成されている。吐出室16は圧縮室12と連通しており、圧縮室12で圧縮された冷媒である圧縮冷媒が吐出される。また、吐出室16内には衝突壁71が設けられており、この衝突壁71はケース25とともに回転する。そして、衝突壁71は、吐出通路251に向かって流通する圧縮冷媒と衝突することで圧縮冷媒に含まれた潤滑油18を圧縮冷媒から分離させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、駆動機構、第1スクロール及び第2スクロールを備え、
前記駆動機構、前記第1スクロール及び前記第2スクロールは前記ハウジング内に収容され、
前記第1スクロールと前記第2スクロールとによって、冷媒を圧縮する圧縮室が形成されるスクロール型圧縮機であって、
前記ハウジングには、前記圧縮室で圧縮された冷媒である圧縮冷媒を外部に吐出する吐出連絡口が形成され、
前記第1スクロール、前記第2スクロール及び前記駆動機構の少なくとも一つには、前記ハウジング内で回転可能にケースが固定され、
前記ケースには、前記圧縮室と連通し、前記圧縮室から前記圧縮冷媒が内部に吐出される吐出室と、
前記吐出室と前記吐出連絡口とに連通する吐出通路とが形成され、
前記吐出室内には、前記ケースとともに回転し、前記吐出通路に向かって流通する前記圧縮冷媒と衝突することで前記圧縮冷媒に含まれた潤滑油を前記圧縮冷媒から分離させる衝突壁が設けられていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記第1スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記第2スクロールは、前記第1スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記第1スクロール及び従動機構によって回転従動され、
前記ケースは、前記第1スクロールに固定され、
前記第1スクロールには、前記圧縮室と連通する吐出口が形成されている請求項1記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記衝突壁は、前記第1スクロールの径方向に延びる板状をなし、前記駆動軸心方向で前記第1スクロールから離隔しつつ前記第1スクロールと対向する対向壁部と、前記対向壁部と接続して前記駆動軸心方向に筒状に延びる接続周壁部とを有し、
前記吐出室は、前記衝突壁によって第1吐出室と第2吐出室とに区画され、
前記第1吐出室は、前記衝突壁と前記第1スクロールとの間に位置するとともに、前記吐出口と連通し、
前記第2吐出室は、前記ケースと前記衝突壁との間に位置するとともに、前記吐出通路と連通し、
前記接続周壁部には、前記径方向に延びて前記第1吐出室と前記第2吐出室とを連通する連通路が形成されている請求項2記載のスクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記衝突壁は、前記第1スクロールの径方向に延びる板状をなし、前記駆動軸心方向で前記第1スクロールから離隔しつつ前記第1スクロールと対向する対向壁部と、前記対向壁部と接続して前記駆動軸心方向に筒状に延びる接続周壁部とを有し、
前記吐出室は、前記衝突壁によって第1吐出室と第2吐出室とに区画され、
前記第1吐出室は、前記衝突壁と前記第1スクロールとの間に位置するとともに、前記吐出口と連通し、
前記第2吐出室は、前記ケースと前記衝突壁との間に位置するとともに、前記吐出通路と連通し、
前記接続周壁部には、前記駆動軸心方向に延びて前記第1吐出室と前記第2吐出室とを連通する連通路が形成されている請求項2記載のスクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記第1スクロールには、前記吐出室内に配置されて前記吐出口を開閉可能な吐出弁が設けられ、
前記吐出口及び前記吐出弁と、前記衝突壁とは前記駆動軸心方向で対向している請求項2記載のスクロール型圧縮機。
【請求項6】
前記衝突壁は、前記駆動軸心方向で前記吐出弁と対向する第1面と、前記第1面の反対側に位置し、前記駆動軸心方向で前記ケースに当接する第2面とを有し、
前記吐出通路は、前記駆動軸心方向で前記第2面に対向しつつ前記衝突壁によって覆われ、
前記第2面と前記ケースとの間には、前記吐出室内の前記圧縮冷媒を前記第1スクロールの径方向に流通させつつ前記吐出通路に案内する径方向流路が形成されている請求項5記載のスクロール型圧縮機。
【請求項7】
前記径方向流路は、前記吐出室内に開口する入口部と、
前記入口部と接続し、前記入口部から前記吐出通路に向けて前記圧縮冷媒を流通させる上流側流路部とを有し、
前記上流側流路部は、前記入口部から前記吐出通路に向かって前記第1スクロールの回転方向とは反対方向に傾斜している請求項6記載のスクロール型圧縮機。
【請求項8】
前記径方向流路は、前記吐出通路と連通する下流側流路部を有し、
前記下流側流路部は、前記上流側流路部に向かって湾曲しつつ、前記入口部とは反対側で前記上流側流路部と接続している請求項7記載のスクロール型圧縮機。
【請求項9】
前記ケースは、前記衝突壁に向かって駆動軸心方向に突出して前記第2面に当接する複数の突出部を有し、
前記衝突壁は前記各突出部に固定され、
前記径方向流路は、前記突出部同士の間に位置している請求項6記載のスクロール型圧縮機。
【請求項10】
前記ケースは、軸受を介して前記ハウジングに回転可能に支持され、
前記吐出室は、前記軸受の外径よりも大径に形成されている請求項1記載のスクロール型圧縮機。
【請求項11】
前記吐出室は、前記ハウジング内において前記吐出室よりも低圧となる個所に前記吐出室内の前記潤滑油を還流させる還流路と連通している請求項1記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のスクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機は、ハウジング、駆動機構、第1スクロール、第2スクロール及び従動機構を備えている。駆動機構及び第1スクロールはハウジング内に収容されている。また、ハウジングには、第1スクロールに向かって突出するボスが形成されている。ボスの内部には支持孔と吐出連絡口が形成されている。支持孔は吐出連絡口よりも大径に形成されており、吐出連絡口と連通している。吐出連絡口はハウジングの外部に連通している。
【0003】
第1スクロールには駆動軸が形成されている。駆動軸は円筒状をなしており、内部にボスを収容している。駆動軸とボスとの間、より具体的には、駆動軸の内周面とボスの外周面との間には軸受が設けられている。駆動軸は外周面が駆動機構に固定されている。こうして、第1スクロールは、ハウジング内において駆動機構と固定されているとともに、軸受を介してボスに駆動軸心周りで回転可能に支持されている。
【0004】
第2スクロールは第1スクロール内に収容されている。これにより、第2スクロールは第1スクロールとの間に圧縮室を形成している。また、第2スクロールには、ボスに向かって突出する従動軸が形成されている。従動軸は支持孔に挿通されている。これにより、第2スクロールは、第1スクロール内に収容された状態でボスに従動軸心周りで回転可能に支持されている。また、従動軸の内部には吐出室が形成されている。吐出室は圧縮室と連通している他、吐出連絡口と連通している。つまり、吐出室を通じて圧縮室と吐出連絡口とが連通している。従動機構は第1スクロールと第2スクロールとの間に配置されている。
【0005】
この圧縮機では、第1スクロールが駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、従動スクロールが第1スクロール及び従動機構によって従動軸心周りで回転従動される。これにより、回転駆動する第1スクロールと回転従動する第2スクロールとによって圧縮室の容積が変化する。こうして、この圧縮機では、圧縮室内に冷媒が吸入されつつ圧縮される。そして、圧縮室で圧縮された冷媒は圧縮冷媒として吐出室に吐出され、更に吐出室から吐出連絡口を経てハウジングの外部に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の圧縮機では、第1スクロール及び第2スクロール等を潤滑油によって潤滑し、第1スクロール及び第2スクロール等の摩耗を抑制することが求められる。ここで、圧縮室内に吸入される冷媒には潤滑油が含まれており、この潤滑油は圧縮冷媒とともに圧縮室から吐出室に吐出される。そこで、このような潤滑油を第1スクロール及び第2スクロール等の潤滑に用いれば、第1スクロール及び第2スクロール等を好適に潤滑し得ると考えられる。
【0008】
しかし、上記従来の圧縮機では、吐出室に吐出された潤滑油の大部分は、圧縮冷媒とともに吐出室から吐出連絡口を経てハウジングの外部に吐出されてしまう。このため、この圧縮機では、吐出室に吐出された潤滑油を第1スクロール及び第2スクロール等の潤滑に十分に用いることができない。このため、このような圧縮機では第1スクロール及び第2スクロール等の潤滑不足による耐久性の低下が懸念される。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、耐久性に優れたスクロール型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスクロール型圧縮機は、ハウジング、駆動機構、第1スクロール及び第2スクロールを備え、
前記駆動機構、前記第1スクロール及び前記第2スクロールは前記ハウジング内に収容され、
前記第1スクロールと前記第2スクロールとによって、冷媒を圧縮する圧縮室が形成されるスクロール型圧縮機であって、
前記ハウジングには、前記圧縮室で圧縮された冷媒である圧縮冷媒を外部に吐出する吐出連絡口が形成され、
前記第1スクロール、前記第2スクロール及び前記駆動機構の少なくとも一つには、前記ハウジング内で回転可能にケースが固定され、
前記ケースには、前記圧縮室と連通し、前記圧縮室から前記圧縮冷媒が内部に吐出される吐出室と、
前記吐出室と前記吐出連絡口とに連通する吐出通路とが形成され、
前記吐出室内には、前記ケースとともに回転し、前記吐出通路に向かって流通する前記圧縮冷媒と衝突することで前記圧縮冷媒に含まれた潤滑油を前記圧縮冷媒から分離させる衝突壁が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明のスクロール型圧縮機では、第1スクロール、第2スクロール又は駆動機構に対してケースが固定されており、このケースはハウジング内で回転可能である。また、ケース内には吐出室が形成されており、この吐出室には、圧縮室で圧縮された冷媒である圧縮冷媒が吐出される。ここで、吐出室に吐出された圧縮冷媒には潤滑油が含まれている。
【0012】
そして、この圧縮機では、吐出室内に衝突壁が設けられており、この衝突壁はケースとともに回転し、吐出通路に向かって流通する圧縮冷媒と衝突する。これにより、この圧縮機では、衝突壁に対する圧縮冷媒の衝突によって、圧縮冷媒に含まれた潤滑油を圧縮冷媒から分離させることができる。また、この圧縮機では、ケースがハウジング内で回転するため、吐出室に吐出された圧縮冷媒には、回転するケースの遠心力が作用する。これによっても、この圧縮機では、圧縮冷媒に含まれた潤滑油を圧縮冷媒から分離させることができる。
【0013】
こうして、この圧縮機では、圧縮冷媒については吐出室から吐出通路及び吐出連絡口を経てハウジングの外部に吐出する一方、潤滑油については、圧縮冷媒とともにハウジングの外部に吐出することを抑制できる。この結果、この圧縮機では、圧縮冷媒から分離した潤滑油を第1スクロール、第2スクロール及び駆動機構等の潤滑に利用し易い。
【0014】
したがって、本発明のスクロール型圧縮機は耐久性に優れている。
【0015】
第1スクロールは、駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され得る。また、第2スクロールは、第1スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで第1スクロール及び従動機構によって回転従動され得る。さらに、ケースは、第1スクロールに固定され得る。そして、第1スクロールには、圧縮室と連通する吐出口が形成されていることが好ましい。
【0016】
この場合には、第1スクロールが回転駆動し、第2スクロールが回転従動することから、本発明の圧縮機は、第1スクロール及び第2スクロールの双方が回転する両回転式スクロール型圧縮機となる。また、ケースが第1スクロールに固定されるため、ケースは、第1スクロールが回転駆動することに伴って好適に回転することができる。
【0017】
衝突壁は、第1スクロールの径方向に延びる板状をなし、駆動軸心方向で第1スクロールから離隔しつつ第1スクロールと対向する対向壁部と、対向壁部と接続して駆動軸心方向に筒状に延びる接続周壁部とを有し得る。また、吐出室は、衝突壁によって第1吐出室と第2吐出室とに区画され得る。第1吐出室は、衝突壁と第1スクロールとの間に位置するとともに、吐出口と連通し得る。第2吐出室は、ケースと衝突壁との間に位置するとともに、吐出通路と連通し得る。そして、接続周壁部には、径方向に延びて第1吐出室と第2吐出室とを連通する連通路が形成されていることが好ましい。
【0018】
また、衝突壁は、第1スクロールの径方向に延びる板状をなし、駆動軸心方向で第1スクロールから離隔しつつ第1スクロールと対向する対向壁部と、対向壁部と接続して駆動軸心方向に筒状に延びる接続周壁部とを有し得る。さらに、吐出室は、衝突壁によって第1吐出室と第2吐出室とに区画され得る。第1吐出室は、衝突壁と第1スクロールとの間に位置するとともに、吐出口と連通し得る。第2吐出室は、ケースと衝突壁との間に位置するとともに、吐出通路と連通し得る。そして、接続周壁部には、駆動軸心方向に延びて第1吐出室と第2吐出室とを連通する連通路が形成されていることも好ましい。
【0019】
これらの場合には、第1吐出室内において圧縮冷媒が対向壁部に衝突することにより、圧縮冷媒に含まれた潤滑油を圧縮冷媒から好適に分離させることができる。
【0020】
また、第1スクロールには、吐出室内に配置されて吐出口を開閉可能な吐出弁が設けられ得る。そして、吐出口及び吐出弁と、衝突壁とは駆動軸心方向で対向していることが好ましい。この場合には、吐出口から吐出された圧縮冷媒を衝突壁に好適に衝突させることができる。
【0021】
本発明の圧縮機において、衝突壁は、駆動軸心方向で吐出弁と対向する第1面と、第1面の反対側に位置し、駆動軸心方向でケースに当接する第2面とを有し得る。また、吐出通路は、駆動軸心方向で第2面に対向しつつ衝突壁によって覆われ得る。そして、第2面とケースとの間には、吐出室内の圧縮冷媒を第1スクロールの径方向に流通させつつ吐出通路に案内する径方向流路が形成されていることが好ましい。
【0022】
この圧縮機では、吐出通路が駆動軸心方向で衝突壁の第2面に対向しつつ衝突壁によって覆われるため、吐出口から吐出室内に吐出された圧縮冷媒が衝突壁に衝突することなく吐出通路に向かって流通することを好適に防止できる。また、この圧縮機では、衝突壁に衝突して潤滑油を分離させた圧縮冷媒については、径方向流路によって吐出通路に好適に案内することができる。
【0023】
径方向流路は、前記吐出室内に開口する入口部と、入口部と接続し、入口部から吐出通路に向けて冷媒を流通させる上流側流路部とを有し得る。そして、上流側流路部は、入口部から吐出通路に向かって第1スクロールの回転方向とは反対方向に傾斜していることが好ましい。
【0024】
吐出室内に存在する潤滑油の一部は、圧縮冷媒とともに径方向流路に向かって不可避的に流通し得る。この点、この圧縮機では、径方向流路の上流側流路部は、入口部から吐出通路に向かって第1スクロールの回転方向とは反対方向に傾斜している。これにより、この圧縮機では、たとえ吐出室内の潤滑油の一部が圧縮冷媒とともに径方向流路に流入した場合であっても、潤滑油に作用する遠心力により、潤滑油については吐出通路に到達させ難くすることができる。こうして、この圧縮機では、潤滑油が圧縮冷媒とともにハウジングの外部に吐出することを好適に抑制できる。
【0025】
また、この場合、径方向流路は、吐出通路と連通する下流側流路部を有し得る。そして、下流側流路部は、上流側流路部に向かって湾曲しつつ、入口部とは反対側で上流側流路部と接続していることが好ましい。
【0026】
これにより、下流側流路部が上流側流路部に対して直線的に接続している場合に比べて、圧縮冷媒は上流側流路部から下流側流路部に流通し易くなる。このため、この圧縮機では、吐出通路に向かって上流側流路部から下流側流路部を流通する圧縮冷媒、ひいては、吐出連絡口からハウジングの外部に吐出される圧縮冷媒の圧力損失を好適に抑制できる。
【0027】
また、ケースは、衝突壁に向かって駆動軸心方向に突出して第2面に当接する複数の突出部を有し得る。さらに、衝突壁は各突出部に固定され得る。そして、径方向流路は、突出部同士の間に位置していることが好ましい。この場合には、径方向流路を容易に形成することができる。
【0028】
本発明の圧縮機において、ケースは、軸受を介してハウジングに回転可能に支持され得る。そして、吐出室は、軸受の外径よりも大径に形成されていることが好ましい。
【0029】
この場合には、吐出室の容積を好適に確保できることから、吐出室のマフラー効果により、圧縮冷媒が吐出室に吐出された際の吐出脈動を好適に低減させることができる。このため、この圧縮機では、作動時の騒音も低減させることができる。
【0030】
また、この圧縮機では、軸受が吐出室よりも大径となることがないため、たとえハウジング内でケースが高速回転する場合であっても、軸受はケースを好適に支持することができる。
【0031】
吐出室は、ハウジング内において吐出室よりも低圧となる個所に吐出室内の潤滑油を還流させる還流路と連通していることが好ましい。この場合には、圧縮冷媒から分離した潤滑油を第1スクロール、第2スクロール及び駆動機構等の潤滑に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のスクロール型圧縮機は耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、実施例1のスクロール型圧縮機の断面図である。
【
図2】
図2は、実施例2のスクロール型圧縮機の断面図である。
【
図3】
図3は、実施例3のスクロール型圧縮機の断面図である。
【
図4】
図4は、実施例4のスクロール型圧縮機の断面図である。
【
図5】
図5は、実施例4のスクロール型圧縮機に係り、
図4のA-A断面を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施例5のスクロール型圧縮機の断面図である。
【
図7】
図7は、比較例のスクロール型圧縮機に係り、
図5と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した実施例1~5を図面を参照しつつ説明する。実施例1~5の圧縮機は、具体的には両回転式スクロール型圧縮機であり、図示しない車両に搭載されている。
【0035】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング6、駆動機構10、第1スクロール30、第2スクロール40、従動機構20及びケース25を備えている。
【0036】
本実施例では、
図1に示す実線矢印によって、圧縮機の前後方向を規定している。なお、前後方向は説明の便宜のための一例であり、圧縮機は搭載される車両に応じて、自己の姿勢を適宜変更可能である。
図2に示す圧縮機についても同様である。
【0037】
図1に示すように、ハウジング6は、ハウジング本体60及びハウジングカバー61によって構成されている。ハウジング本体60及びハウジングカバー61はアルミニウム合金製である。
【0038】
ハウジング本体60は、外周壁60a及び後壁60bを有する有底筒状部材である。外周壁60aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。駆動軸心O1は前後方向と平行である。外周壁60aには、吸入連絡口69が形成されている。吸入連絡口69は、外周壁60aをハウジング本体60の径方向に貫通している。吸入連絡口69には配管(図示略)が接続されている。これにより、吸入連絡口69は配管を通じてハウジング6の外部、すなわち圧縮機の外部に接続している。
【0039】
後壁60bは、ハウジング本体60の後端に位置している。後壁60bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。後壁60bの外周縁は、外周壁60aの後端に接続している。後壁60bの内面中央には第1支持部64が形成されている。第1支持部64は、駆動軸心O1を中心とする略円柱状をなしており、後壁60bの内面中央から前方、すなわち、後述するスクロール室65内に突出している。なお、後壁60bに対して吸入連絡口69を形成しても良い。
【0040】
また、第1支持部64にはピン孔54が形成されている。ピン孔54は第1支持部64の前端面に開口しつつ、第1支持部64内を後方に向かって直線状に延びている。なお、ピン孔54は第1支持部64を前後方向に貫通していない。
【0041】
ハウジングカバー61は、ハウジング本体60の前方に配置されている。ハウジングカバー61は、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。ハウジングカバー61は、その外周縁がハウジング本体60の外周壁60aの前端に当接した状態で図示しないボルトによってハウジング本体60に固定されている。これにより、ハウジングカバー61は、ハウジング本体60を前方から塞いでいる。こうして、ハウジング本体60内にスクロール室65が形成されている。
【0042】
ハウジングカバー61の内面中央には、第2支持部67が形成されている。第2支持部67は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、ハウジングカバー61の内面中央から後方に突出している。
【0043】
また、第2支持部67内には、ラジアル玉軸受14と軸封部材63とが設けられている。ラジアル玉軸受14は、本発明における「軸受」の一例である。ラジアル玉軸受14の外径の長さは、第1長さL1となっており、第2支持部67の外径よりも小径をなしている。ラジアル玉軸受14は、外輪を第2支持部67内に嵌入することにより、第2支持部67に固定されている。なお、本発明における「軸受」として、滑り軸受等を採用しても良い。
【0044】
軸封部材63は、第2支持部67内においてラジアル玉軸受14よりも前方となる個所に配置されている。軸封部材63は円環状に形成されている。
【0045】
また、ハウジングカバー61には、吐出連絡口68が形成されている。吐出連絡口68は、ハウジングカバー61の中央に位置しており、ハウジングカバー61を駆動軸心O1方向に貫通している。吐出連絡口68は、後述する吐出通路251と駆動軸心O1方向で対向している。また、吐出連絡口68には配管(図示略)が接続されている。これにより、吐出連絡口68は配管を通じて圧縮機の外部に接続している。
【0046】
スクロール室65は吸入連絡口69と連通している。これにより、スクロール室65には、吸入連絡口69に接続された配管を通じて圧縮機の外部から低圧の冷媒が吸入される。これにより、スクロール室65は冷媒の吸入室としても機能する。
【0047】
駆動機構10は具体的には電動モータであり、スクロール室65内に収容されている。これにより、スクロール室65は、駆動機構10を収容するモータ室も兼ねている。駆動機構10は、ステータ17及びロータ11によって構成されている。ステータ17は、ステータコア17a及びコイルエンド17bを有している。ステータコア17aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状である。コイルエンド17bは、ステータコア17aに巻回されたコイルの一部によって形成されており、ステータコア17aから駆動軸心O1方向に突出する環状をなしている。ステータ17は、ステータコア17aを外周壁60aの内周面に嵌入することにより、ハウジング本体60に固定されている。
【0048】
ロータ11は、駆動軸心O1周りで円筒状をなしており、ステータ17内に配置されている。詳細な図示を省略するものの、ロータ11は、ステータ17に対応する複数個の永久磁石と、各永久磁石を固定する複数枚の電磁鋼板等とで構成されている。
【0049】
第1スクロール30はアルミニウム合金製である。第1スクロール30はスクロール室65内に収容されている。第1スクロール30は、第1端板31、周壁32、第1渦巻体33及びカバー体35を有している。
【0050】
第1端板31は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。ここで、従動軸心O2は、駆動軸心O1に対して偏心しつつ駆動軸心O1と平行に延びている。つまり、従動軸心O2も前後方向に平行である。
【0051】
第1端板31は、前面311と、前面311の反対側に位置する後面312とを有している。また、第1端板31には吐出口38が形成されている。吐出口38は、第1端板31の略中央となる個所に配置されており、第1端板31を駆動軸心O1方向に貫通している。
【0052】
また、第1端板31の前面311には、吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ボルト59によって固定されている。吐出リード弁57は、本発明における「吐出弁」の一例である。これにより、吐出リード弁57は吐出口38を開閉可能となっている。そして、リテーナ58は、吐出リード弁57の開度を調整可能となっている。
【0053】
周壁32は、駆動軸心O1を中心としつつ駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びる円筒状に形成されている。周壁32は、前端が第1端板31の外周縁と一体をなしており、第1端板31から後方に向かって円筒状に延びている。
【0054】
また、周壁32はロータ11内に挿通されつつ、ロータ11の内周面に固定されている。これにより、周壁32とロータ11とが一体化されている。
【0055】
第1渦巻体33は周壁32の内側に配置されている。第1渦巻体33は第1端板31と一体をなしており、第1端板31の後面312から後方、すなわち第2スクロール40に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、第1渦巻体33は、第1端板31の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。また、第1渦巻体33は、渦巻の外周端が周壁32の内周面に接続している。
【0056】
カバー体35は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。カバー体35は、第1端板31及び周壁32と略同径に形成されている。カバー体35は、前面351と後面352とを有している。前面351は、第1端板31の後面312と対向している。後面352は、前面351の反対側に位置しており、ハウジング本体60の後壁60bと対向している。
【0057】
また、カバー体35には、ボス36と、吸入口35aと、複数の第2取付孔353とが形成されている。ボス36は、カバー体35の中央に一体に形成されており、後面352から後方に向かって突出している。また、ボス36内には挿通孔350が形成されている。挿通孔350は、ボス36内及びカバー体35内を駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、ボス36は駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。挿通孔350内には、滑り軸受51が設けられている。なお、滑り軸受51に換えて、玉軸受等を挿通孔350内に設けても良い。
【0058】
吸入口35aは、ボス36よりもカバー体35の径方向の外側に配置されている。吸入口35aは、カバー体35を駆動軸心O1方向に貫通している。なお、吸入口35aの個数の他、カバー体35における吸入口35aの位置等は適宜設計可能である。
【0059】
各第2取付孔353は、吸入口35aよりもカバー体35の径方向の外側に配置されている。各第2取付孔353は、カバー体35を駆動軸心O1方向に貫通している。
【0060】
また、カバー体35においてボス36と吸入口35aとの間となる個所には、複数のリング22が取り付けられている。各リング22は、前方に臨んだ状態でカバー体35の周方向に等間隔で配置されており、ボス36及び挿通孔350を外側から囲っている。なお、本実施例では、リング22の個数は6つとされている。また、
図1では6つのリング22のうちの2つを図示している。
図2についても同様である。
【0061】
図1に示すように、カバー体35は複数の第2固定ボルト50bによって周壁32の後端に固定されている。なお、周壁32に対するカバー体35の固定については後述する。
【0062】
また、この圧縮機では、第1スクロール30に衝突筒体71が固定されている。より具体的には、衝突筒体71は第1端板31に固定されている。衝突筒体71は本発明における「衝突壁」の一例である。衝突筒体71はアルミニウム合金製である。衝突筒体71は、対向壁部71aと接続周壁部71bとを有している。なお、衝突筒体71を樹脂製としても良い。
【0063】
対向壁部71aは、衝突筒体71の前端に位置している。対向壁部71aは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。対向壁部71aは、第1面711と第2面712とを有している。第1面711は本発明における「第1面」の一例である。第2面712は本発明における「第2面」の一例である。第1面711は後方に面している。第2面712は、駆動軸心O1方向で第1面711の反対側に位置しており、前方に面している。ここで、対向壁部71aは、第1端板31よりも小径に形成されている。接続周壁部71bは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、駆動軸心O1方向に筒状に延びている。接続周壁部71bは、内径が対向壁部71aと同径に形成されている。接続周壁部71bは、前端で対向壁部71aの外周縁に接続している。これらの対向壁部71a及び接続周壁部71bにより、衝突筒体71は、後方が開口する有底の筒状をなしている。
【0064】
また、接続周壁部71bには、フランジ710と、複数の潤滑油通路73とが形成されている。フランジ710は、接続周壁部71bの後端に位置しており、衝突筒体71の径方向で外側に向かって突出している。これにより、フランジ710は、衝突筒体71において最も大径となっている。フランジ710には複数の第1取付孔713が形成されている。各第1取付孔713は、フランジ710を駆動軸心O1方向に貫通している。
【0065】
各潤滑油通路73は、接続周壁部71bにおける前方側、すなわち、接続周壁部71bにおいてフランジ710よりも対向壁部71aに近接した位置に配置されている。各潤滑油通路73は、接続周壁部71bの周方向に等間隔に配置されており、それぞれ接続周壁部71bを径方向に貫通している。また、各潤滑油通路73は、吐出口38及び吐出通路251よりも衝突筒体71の径方向の外側に設けられている。なお、潤滑油通路73の個数は適宜設計可能である。
【0066】
衝突筒体71は、接続周壁部71bのフランジ710を第1端板31の前面311に当接させている。そして、衝突筒体71では、各第1取付孔713にそれぞれ挿通された第1固定ボルト50aによって、フランジ710、ひいては接続周壁部71bが前面311に固定されている。こうして、衝突筒体71は第1スクロール30に固定されて、第1端板31の前方に配置されている。
【0067】
このように衝突筒体71が第1端板31に固定されることにより、衝突筒体71では、対向壁部71aが接続周壁部71bの前後方向の長さの分だけ、第1端板31よりも前方に離隔しつつ、第1端板31の前面311と前後方向で対向している。
【0068】
また、衝突筒体71が第1端板31に固定されることにより、衝突筒体71は第1端板31によって後方が閉鎖された状態となる。これにより、衝突筒体71の内部、すなわち、対向壁部71aと、接続周壁部71bと、第1端板31の前面311との間には、第1吐出室16aが形成されている。そして、この第1吐出室16a内に吐出口38が位置しており、吐出口38は第1吐出室16aと連通している。また、固定ボルト59の他、固定ボルト59によって前面311に固定された吐出リード弁57及びリテーナ58についても、第1吐出室16a内に位置している。こうして、第1吐出室16a内では、吐出口38、吐出リード弁57、リテーナ58及び固定ボルト59と、対向壁部71aの第1面711とが駆動軸心O1方向で離隔しつつ対向している。
【0069】
第2スクロール40もアルミニウム合金製である。第2スクロール40は、スクロール室65内、より具体的には第1スクロール30内に収容されている。第2スクロール40は、第2端板41及び第2渦巻体43を有している。
【0070】
第2端板41は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。第2端板41は前面411と後面412とを有している。前面411は、第1スクロール30内において第1端板31の後面312と対向している。後面412は、前面411の反対側に位置しており、カバー体35の前面351と対向している。
【0071】
第2端板41には、収容部41aが形成されている。収容部41aは第2端板41の後面412から前方に向かって従動軸心O2を中心とする円柱状に凹設されている。収容部41a内にはブッシュ53が設けられている。なお、ブッシュ53は、滑り軸受や玉軸受等を介して収容部41a内に設けられても良い。
【0072】
また、ブッシュ53には従動ピン55が挿通されている。この際、従動ピン55はブッシュ53における中心、すなわち従動軸心O2よりも偏心した位置でブッシュ53に挿通されている。従動ピン55は鉄鋼製であり、円柱状をなしている。従動ピン55は、ブッシュ53、ひいては第2端板41から後方に突出している。
【0073】
さらに、第2端板41において、収容部41aよりも外周側には、後面412から後方に向かって突出した状態で複数の自転阻止ピン21が固定されている。より具体的には、各自転阻止ピン21は、収容部41aよりも外周側であって、それぞれリング22と対向する個所に固定されている。これにより、第2端板41において各自転阻止ピン21同士は第2端板41の周方向に等間隔で配置されており、収容部41a及びブッシュ53を外側から囲っている。なお、本実施例では、リング22の個数に対応して自転阻止ピン21の個数は6つとされている。また、
図1及び
図2では6つの自転阻止ピン21のうちの2つを図示している。
【0074】
図1に示すように、第2渦巻体43は第2端板41と一体をなしており、第2端板41の前面411から前方、すなわち第1端板31に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、第2渦巻体43は、第2端板41の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0075】
従動機構20は、上述の各自転阻止ピン21と、各リング22とで構成されている。なお、従動機構20を構成する自転阻止ピン21及びリング22の個数は、それぞれ3個以上であればその個数は適宜変更可能である。
【0076】
ケース25は、ケース周壁25a及びケース底壁25bを有する有底筒状部材である。ケース25はアルミニウム合金製である。ケース周壁25aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。ここで、ケース周壁25aの外径は第1端板31とほぼ同径に形成されている。また、ケース周壁25aの内径は、接続周壁部71bのフランジ710の外径とほぼ同径となっている。より具体的には、ケース周壁25aの内径の長さは第2長さL2となっている。そして、この第2長さL2は、ラジアル玉軸受14の外径の長さである第1長さL1よりも長くなっている。このため、ケース周壁25aの内径は、ラジアル玉軸受14の外径よりも大きくなっている。なお、ケース25を樹脂製としても良い。
【0077】
ケース周壁25aには、還流路250が形成されている他、複数の第3取付孔253が形成されている。還流路250は、ケース周壁25aをケース25の径方向に貫通している。各第3取付孔253は、それぞれケース周壁25aを駆動軸心O1方向に貫通している。ここで、ケース周壁25aにおいて、還流路250と各第3取付孔253とは異なる位置に形成されている。このため、還流路250と各第3取付孔253とは非連通となっている。
【0078】
ケース底壁25bは、ケース25の前端に位置しており、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。ケース底壁25bは前面255と後面256とを有している。前面255は前方に面している。後面256は駆動軸心O1方向で前面255の反対側に位置しており、後方に面している。ケース底壁25bの外周縁は、ケース周壁25aの前端に接続している。また、ケース底壁25bには、ボス25cが形成されている。ボス25cは、ケース底壁25bの中央に一体に形成されており、前面255から前方に向かって突出している。ボス25cは、ラジアル玉軸受14の内径及び軸封部材63の内径と略同径に形成されている。
【0079】
ボス25c内には吐出通路251が形成されている。吐出通路251は、ボス25c内及びケース底壁25b内を駆動軸心O1方向に貫通している。つまり、吐出通路251の前端はボス25cの前端面に開口しており、吐出通路251の後端はケース底壁25bの後面256に開口している。これにより、ボス25cは駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0080】
この圧縮機では、第1渦巻体33と第2渦巻体43と前後方向に対向させつつ、第1渦巻体33と第2渦巻体43とを噛合させている。また、各自転阻止ピン21をそれぞれ各リング22内に進入させつつ、周壁32の後端にカバー体35の前面351を当接させている。そして、この状態で各第2取付孔353にそれぞれ第2固定ボルト50bを挿通し、各第2固定ボルト50bによって周壁32の後端にカバー体35を固定している。
【0081】
こうして、第1スクロール30内に第2スクロール40を収容しつつ、第1スクロール30と第2スクロール40とが前後方向で組み付けられている。これにより、第1スクロール30と第2スクロール40とはスクロール圧縮部100を構成している。
【0082】
また、第1スクロール30と第2スクロール40とが組み付けられることにより、第1スクロール30と第2スクロール40とによって吸入部30aが形成されている。つまり、第1渦巻体33及び第2渦巻体43は吸入部30a内に位置している。吸入部30aは、第1端板31、周壁32及びカバー体35によってスクロール室65と区画されている他、第1端板31によって第1吐出室16a及び後述する第2吐出室16bと区画されている。また、吸入部30aは、吸入口35aと連通している。
【0083】
さらに、この圧縮機では、第1スクロール30にケース25が固定されている。具体的には、ケース25は、内部に衝突筒体71を収容した状態でケース周壁25aの後端を第1端板31の前面311に当接させている。この際、ケース周壁25aの後端は、衝突筒体71のフランジ710よりも外周側で前面311に当接している。そして、この状態でケース25は、各第3取付孔253にそれぞれ挿通された第3固定ボルト50cによって第1端板31に固定されている。こうして、ケース25は、第1スクロール30に固定されて第1スクロール30と一体化されている。
【0084】
そして、このようにケース25が第1スクロール30に固定されることより、ケース25のケース周壁25a及びケース底壁25bと、第1端板31とによってケース25の内部に吐出室16が形成されている。吐出室16は、還流路250及び吐出通路251とそれぞれ連通している。上述のように、ケース周壁25aの内径の長さは第2長さL2であることから、吐出室16の内径の長さは第2長さL2となっている。これにより、吐出室16は、ラジアル玉軸受14の外径よりも大径に形成されている。
【0085】
また、このように吐出室16が形成されることにより、衝突筒体71は吐出室16内に配置されている。こうして、吐出室16は、衝突筒体71によって、第1吐出室16aと、第2吐出室16bとに区画されている。第1吐出室16aは、上述のように、衝突筒体71の対向壁部71a及び接続周壁部71bと、第1端板31の前面311との間に形成されている。一方、第2吐出室16bは、ケース25のケース周壁25a及びケース底壁25bと、衝突筒体71とによって形成されている。これにより、第2吐出室16bは、第1吐出室16aの外側に位置している。また、第2吐出室16b内では、対向壁部71aの第2面712と、ケース底壁25bの後面256とが駆動軸心O1方向で離隔しつつ対向している。
【0086】
そして、第1吐出室16aと第2吐出室16bとは、各潤滑油通路73によって連通している。ここで、各潤滑油通路73は接続周壁部71bを衝突筒体71の径方向に貫通しているため、第1吐出室16aと第2吐出室16bとは、衝突筒体71の径方向で連通している。また、第2吐出室16bは、還流路250及び吐出通路251とそれぞれ連通している。
【0087】
また、ケース25は、スクロール室65内においてボス25cをラジアル玉軸受14の内輪に内嵌させているとともに、軸封部材63に挿通させている。これにより、ケース25は、ラジアル玉軸受14を介して第2支持部67、すなわちハウジング6に対して駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0088】
また、ケース25が第2支持部67に支持されることにより、吐出通路251が吐出連絡口68に対して後方から臨んだ状態となる。これにより、吐出通路251を通じて第2吐出室16b、ひいては吐出室16と吐出連絡口68とが連通している。そして、軸封部材63によって吐出通路251及び吐出連絡口68と、スクロール室65との間が封止されている。
【0089】
また、第1スクロール30では、滑り軸受51内、つまりボス36内に第1支持部64を挿通させている。これにより、カバー体35は滑り軸受51を介して第1支持部64に回転可能に支持されている。このように、カバー体35が第1支持部64に支持されることにより、吸入口35aはスクロール室65に臨んだ状態となっている。こうして、吸入口35aは、スクロール室65と吸入部30aとを連通している。
【0090】
上述のように、この圧縮機では、ケース25が第2支持部67に回転可能に支持されている。このため、第1スクロール30は、ケース25を介して第2支持部67に回転可能に支持されている。この結果、第1スクロール30は、第1支持部64と第2支持部67との両方によってハウジング6に駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0091】
一方、第2スクロール40では、従動ピン55が第1支持部64のピン孔54内に挿通される。これにより、第2スクロール40は、従動ピン55によって第1支持部64に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。つまり、第1スクロール30と異なり、第2スクロール40は、第1支持部64のみによってハウジング6に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。
【0092】
ここで、従動軸心O2は、駆動軸心O1に対して偏心している。このため、第2スクロール40は、ハウジング6に従動軸心O2周りで回転可能に支持されることにより、第1スクロール30に対して偏心した状態で第1スクロール30内に収容されている。
【0093】
以上のように構成されたこの圧縮機では、駆動機構10のロータ11が回転することにより、スクロール室65内において、第1スクロール30が駆動軸心O1周りで回転駆動する。より具体的には、第1スクロール30は回転方向R1に回転駆動する(
図5参照)。また、
図1に示すように、この圧縮機では、衝突筒体71及びケース25がそれぞれ第1スクロール30に固定されているため、ロータ11の回転によって、衝突筒体71及びケース25も第1スクロール30と一体で駆動軸心O1周りに回転する。
【0094】
また、第1スクロール30の回転に伴い、従動機構20において、各自転阻止ピン21はそれぞれ各リング22の内周面を摺接しつつ、各リング22を各自転阻止ピン21の中心周りで相対的に回転させる。こうして、従動機構20は、第2スクロール40に第1スクロール30のトルクを伝達する。
【0095】
その結果、第2スクロール40は、従動軸心O2周りで第1スクロール30及び従動機構20によって回転従動される。この際、従動機構20は、第2スクロール40が自転することを規制する。これにより、第2スクロール40は第1スクロール30に対して従動軸心O2周りで相対的に公転する。そして、吸入部30a内において第1渦巻体33及び第2渦巻体43がそれぞれ回転することで、第1渦巻体33及び第2渦巻体43は、双方の間に圧縮室12を形成する。
【0096】
また、第1スクロール30及び第2スクロール40が回転することにより、
図1の破線矢印で示すように、スクロール室65内には、配管及び吸入連絡口69を通じて圧縮機の外部から低圧の冷媒が吸入される。ここで、スクロール室65内に吸入される冷媒には、潤滑油18が含まれている。
【0097】
このスクロール室65内の冷媒は、吸入口35aから吸入部30aを経て圧縮室12に吸入される。そして、圧縮室12は、第1スクロール30の回転駆動及び第2スクロール40の回転従動によって、自己の内部に冷媒を閉じ込めつつ、自己の容積を縮小させて冷媒を圧縮する。こうして、吐出圧力まで圧縮された冷媒は、高圧の圧縮冷媒となる。そして、この圧縮冷媒は、吐出リード弁57が吐出口38を開くことにより、吐出口38から第1吐出室16a内に吐出される。このため、第1吐出室16a内は、スクロール室65及び吸入部30aに比べて高圧の雰囲気となる。また、吐出口38から第1吐出室16a内に吐出された圧縮冷媒は、第1吐出室16a内から吐出室16内、更には吐出通路251に向かって流通する。
【0098】
ここで、吐出口38から第1吐出室16a内に吐出された圧縮冷媒は潤滑油18を含んだ状態にある。そして、第1吐出室16a内の圧縮冷媒は、吐出室16内に向かう過程で対向壁部71a、より具体的には、対向壁部71aの第1面711に衝突する。これにより、対向壁部71aは、圧縮冷媒に含まれた潤滑油18を圧縮冷媒から分離させる。こうして、圧縮冷媒から分離した潤滑油18は、各潤滑油通路73を流通することで第2吐出室16b内に吐出される。また、対向壁部71aに衝突した圧縮冷媒についても、各潤滑油通路73を流通することで第2吐出室16b内に吐出される。
【0099】
つまり、この圧縮機では、吐出口38から第1吐出室16a内に吐出された圧縮冷媒は、第1吐出室16a内から第2吐出室16b内に吐出される前に対向壁部71aに衝突することになる。なお、厳密には、吐出口38から第1吐出室16a内に吐出された圧縮冷媒の一部は、対向壁部71aに衝突する前に各潤滑油通路73を流通することで第2吐出室16b内に吐出され得る。しかし、吐出口38から第1吐出室16a内に吐出された圧縮冷媒の多くは、第1吐出室16a内から第2吐出室16b内に吐出される前に対向壁部71aに衝突することになる。
【0100】
そして、上述のように、この圧縮機では衝突筒体71が第1スクロール30と一体で駆動軸心O1周りに回転する。このため、吐出冷媒が対向壁部71aに衝突することで吐出冷媒から分離した潤滑油18には、遠心力が作用する。これにより、第1吐出室16a内の潤滑油18は、衝突筒体71の径方向の外側に向かって流通する。ここで、この圧縮機では、各潤滑油通路73が接続周壁部71bを径方向に貫通しているため、第1吐出室16a内の潤滑油18は、各潤滑油通路73によって第2吐出室16b内に好適に吐出される。
【0101】
こうして、第2吐出室16b内には、各潤滑油通路73によって潤滑油18と圧縮冷媒とが第1吐出室16aから吐出されることから、第2吐出室16bについても、スクロール室65及び吸入部30aに比べて高圧の雰囲気となる。換言すれば、スクロール室65及び吸入部30aは、第1吐出室16a及び第2吐出室16b、すなわち吐出室16よりも低圧の吸入雰囲気となっている。
【0102】
また、この圧縮機では、ケース25も第1スクロール30と一体で駆動軸心O1周りに回転する。このため、各潤滑油通路73から第2吐出室16b内に吐出された潤滑油18は、回転するケース25の遠心力によって、ケース周壁25aの内面、すなわち第2吐出室16bの内周面に付着し易くなる他、ケース25の径方向の外側となる個所で第2吐出室16b内に留まり易くなる。また、各潤滑油通路73から第2吐出室16b内に吐出された圧縮冷媒にもケース25の遠心力が作用する。このため、この圧縮機では、対向壁部71aに衝突する前に各潤滑油通路73から第2吐出室16b内に吐出された圧縮冷媒から潤滑油18を好適に分離させることが可能となっている他、対向壁部71aへの衝突では十分に分離し得なかった潤滑油18を第2吐出室16b内で圧縮冷媒から分離させることが可能となっている。
【0103】
そして、第2吐出室16b内、すなわち吐出室16内の圧縮冷媒は、吐出通路251及び吐出連絡口68を経てハウジング6の外部に吐出される。つまり、この圧縮機では、圧縮冷媒については、潤滑油18を分離した状態でハウジング6の外部に吐出させることができる一方、潤滑油18については、ハウジング6の外部に吐出されることを好適に抑制できる。
【0104】
そして、第2吐出室16b内の潤滑油18については、第2吐出室16b内とスクロール室65内との圧力差によって、還流路250を通じてスクロール室65内に流出する。こうして、この圧縮機では、第2吐出室16bからスクロール室65に流出した潤滑油18によって、駆動機構10、ラジアル玉軸受14及び滑り軸受51等を潤滑することができる。
【0105】
さらに、この圧縮機では、スクロール室65に流出した潤滑油18は、吸入口35aに吸入される冷媒とともに、吸入部30a、ひいては圧縮室12に還流される。これにより、この圧縮機では、潤滑油18によって圧縮室12内を潤滑することができるため、第1端板31、第1渦巻体33、第2端板41及び第2渦巻体43についても潤滑油18によって好適に潤滑することができる。
【0106】
したがって、実施例1の圧縮機は耐久性に優れている。
【0107】
特に、この圧縮機では、衝突筒体71が有底の筒状をなしており、衝突筒体71は第1端板31に固定されることで第1端板31の前面311との間に第1吐出室16aを形成している。また、第1吐出室16a内において、吐出リード弁57、リテーナ58及び固定ボルト59と、対向壁部71aとは、駆動軸心O1方向で対向している。これらにより、この圧縮機では、圧縮室12内から第1吐出室16a内に圧縮冷媒を吐出させつつ、第1吐出室16a内で圧縮冷媒を対向壁部71aに好適に衝突させることが可能となっている。このため、この圧縮機では、圧縮室12内から吐出された圧縮冷媒が対向壁部71aに衝突することなく、吐出通路251及び吐出連絡口68を経てハウジング6の外部に吐出してしまうことを好適に防止できる。
【0108】
また、この圧縮機では、吐出室16がラジアル玉軸受14の外径よりも大径に形成されている。このため、この圧縮機では、吐出室16の容積を十分な大きさで確保できることから、衝突筒体71の設計の自由度を高くしつつ、衝突筒体71を吐出室16内に好適に配置することが可能となっている。そして、この圧縮機では、吐出口38を経た圧縮冷媒が吐出口38よりも広い第1吐出室16aに吐出され、さらに圧縮冷媒は、第1吐出室16aから吐出室16に吐出される。これにより、この圧縮機では、圧縮冷媒に対するマフラー効果が好適に発揮されるため、圧縮冷媒の吐出脈動を低減することが可能となっている。このため、この圧縮機では作動時の騒音も抑制できる。
【0109】
また、この圧縮機では、ラジアル玉軸受14が吐出室16よりも大きくなることがないため、たとえハウジング6内でケース25が高速回転する場合であっても、ラジアル玉軸受14はケース25、ひいては第1スクロール30を好適に支持することができる。
【0110】
(実施例2)
図2に示すように、実施例2の圧縮機では、衝突筒体81が第1端板31に固定されている。衝突筒体81も本発明における「衝突壁」の一例である。衝突筒体81もアルミニウム合金製である。衝突筒体81は、対向壁部81aと接続周壁部81bとを有している。なお、衝突筒体81を樹脂製としても良い。
【0111】
対向壁部81aは、衝突筒体81の前端に位置している。対向壁部81aは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。対向壁部81aは、第1面811と第2面812とを有している。第1面811も本発明における「第1面」の一例である。第2面812も本発明における「第2面」の一例である。第1面811は後方に面している。第2面812は、駆動軸心O1方向で第1面811の反対側に位置しており、前方に面している。ここで、対向壁部81aについても、第1端板31よりも小径に形成されている。
【0112】
接続周壁部81bは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、駆動軸心O1方向に筒状に延びている。接続周壁部81bは、内径が対向壁部81aと同径に形成されている。接続周壁部81bは、前端で対向壁部81aの外周縁に接続している。また、接続周壁部81bの後端には、フランジ810が形成されている。フランジ810には、複数の第1取付孔813が形成されている。フランジ810及び第1取付孔813は、それぞれ実施例1の圧縮機におけるフランジ710及び第1取付孔713と同様の構成である。これらの対向壁部81a及び接続周壁部81bにより、衝突筒体81も後方が開口する有底の筒状をなしている。
【0113】
また、この衝突筒体81では、対向壁部81aに対して潤滑油通路83a、83bが形成されている。潤滑油通路83aと潤滑油通路83bとは、対向壁部81aの周方向に離隔して配置されており、それぞれ対向壁部81aを駆動軸心O1方向に貫通している。つまり、潤滑油通路83a及び潤滑油通路83bの各前端は、対向壁部81aの第2面812に開口しており、潤滑油通路83a及び潤滑油通路83bの各後端は、対向壁部81aの第1面811に開口している。また、潤滑油通路83a、83bは、吐出口38及び吐出通路251よりも衝突筒体81の径方向の外側に設けられている。なお、対向壁部81aに対して潤滑油通路83aのみを形成したり、潤滑油通路83a、83bに加えて他の潤滑油通路を対向壁部81aに形成したりしても良い。
【0114】
衝突筒体71と同様、衝突筒体81も第1固定ボルト50aによって第1端板31の前面311に固定されている。これにより、対向壁部81aは、前面311よりも前方に離隔しつつ、前面311と前後方向で対向している。また、対向壁部81aと、接続周壁部81bと、第1端板31の前面311との間には、第1吐出室16cが形成されている。そして、第1吐出室16c内では、吐出口38、吐出リード弁57、リテーナ58及び固定ボルト59と、対向壁部81aの第1面811とが駆動軸心O1方向で離隔しつつ対向している。こうして、吐出口38は第1吐出室16cと連通している。
【0115】
また、衝突筒体81についても、第1スクロール30にケース25が固定されることにより、吐出室16内に配置される。これにより、吐出室16は、衝突筒体81によって、第1吐出室16cと、第2吐出室16dとに区画されている。第1吐出室16cは、上述のように、衝突筒体81の対向壁部81a及び接続周壁部81bと、第1端板31の前面311との間に形成されている。一方、第2吐出室16dは、ケース25のケース周壁25a及びケース底壁25bと、衝突筒体81とによって形成されている。これにより、第2吐出室16dは、第1吐出室16cの外側に位置している。また、第2吐出室16d内では、対向壁部81aの第2面812と、ケース底壁25bの後面256とが駆動軸心O1方向で離隔しつつ対向している。
【0116】
そして、第1吐出室16cと第2吐出室16dとは、潤滑油通路83a、83bによって連通している。ここで、潤滑油通路83a、83bは、対向壁部81aを駆動軸心O1方向に貫通しているため、第1吐出室16cと第2吐出室16dとは、駆動軸心O1方向で連通している。また、第2吐出室16dは、還流路250及び吐出通路251とそれぞれ連通している。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0117】
この圧縮機では、圧縮室12内の圧縮冷媒が吐出口38から第1吐出室16c内に吐出される(
図2の破線矢印参照)。このように第1吐出室16c内に吐出された圧縮冷媒は、第1吐出室16c内から第2吐出室16d内、更には吐出通路251に向かって流通する。そして、この圧縮機では、第1吐出室16c内の圧縮冷媒が第2吐出室16d内に向かう過程で対向壁部81a、より具体的には、対向壁部81aの第1面811に衝突する。これにより、この圧縮機でも圧縮冷媒に含まれた潤滑油18を圧縮冷媒から好適に分離することが可能となっている。ここで、この圧縮機では対向壁部81aに潤滑油通路83a、83bが形成されているため、圧縮冷媒が対向壁部81aに衝突した後、吐出冷媒から分離した潤滑油18が潤滑油通路83a、83bを流通し易くなっている。このため、この圧縮機では、第1吐出室16c内の潤滑油18を第2吐出室16d内に好適に吐出させることが可能となっている。
【0118】
また、対向壁部81aに潤滑油通路83a、83bが形成されることにより、この圧縮機では、潤滑油通路83a、83bを経て第2吐出室16d内に吐出された圧縮冷媒がケース25のケース底壁25bに対して駆動軸心O1方向で衝突し易くなっている。このため、この圧縮機では、第2吐出室16d内で圧縮冷媒がケース底壁25bに更に衝突し易くなっている。このため、この圧縮機でも、吐出口38から第1吐出室16c内に吐出された圧縮冷媒の一部は、対向壁部81aに衝突せずに各潤滑油通路83a、83bから第2吐出室16d内に吐出され得るものの、このような圧縮冷媒についても、ケース底壁25bとの衝突によって潤滑油18を好適に分離させることができる。また、対向壁部81aへの衝突で十分に分離し得なかった潤滑油18についても、ケース底壁25bとの衝突によって圧縮冷媒から好適に分離させることが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0119】
(実施例3)
図3に示すように、実施例3の圧縮機は、ケース25内において衝突筒体71を実施例1とは前後方向を反転させた状態で配置している。そして、実施例3の圧縮機では、接続周壁部71bのフランジ710をケース25のケース底壁25bに当接させつつ、第1固定ボルト50aによって衝突筒体71をケース25に固定している。これにより、接続周壁部71bは、ケース底壁25bから駆動軸心O1方向で後方に筒状に延びている。
【0120】
そして、この圧縮機では、衝突筒体71によって、吐出室16が第1吐出室16eと、第2吐出室16fとに区画されている。第1吐出室16eは、衝突筒体71と、ケース25のケース周壁25aと、第1端板31の前面311との間に形成されている。一方、第2吐出室16fは、ケース25のケース底壁25bと、衝突筒体71とによって形成されている。これにより、この圧縮機では、第1吐出室16eが第2吐出室16fの外側に位置している。また、第1吐出室16e内では、吐出口38、吐出リード弁57、リテーナ58及び固定ボルト59と、対向壁部71aの第2面712とが駆動軸心O1方向で離隔しつつ対向している。一方、第2吐出室16f内では、対向壁部71aの第1面711と、ケース底壁25bの後面256とが駆動軸心O1方向で離隔しつつ対向している。
【0121】
そして、第1吐出室16eと第2吐出室16fとは、各潤滑油通路73によって連通している。また、第1吐出室16eは還流路250と連通している。一方、第2吐出室16fは、吐出通路251と連通している。この圧縮機における他の構成は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0122】
この圧縮機では、吐出口38から第1吐出室16e内に吐出された圧縮冷媒が対向壁部71a、より具体的には、対向壁部71aの第2面712に衝突する。これにより、この圧縮機でも、対向壁部71aは、圧縮冷媒に含まれた潤滑油18を圧縮冷媒から分離させる。そして、圧縮冷媒から分離した潤滑油18は、回転するケース25の遠心力によって、第1吐出室16e内においてケース周壁25aの内面に付着し易くなる他、ケース25の径方向の外側となる個所で第1吐出室16e内に留まり易くなる。また、第1吐出室16e内の潤滑油18は、還流路250を通じてスクロール室65内に流出する。これにより、この圧縮機でも、この潤滑油18によって、駆動機構10、ラジアル玉軸受14及び滑り軸受51等を潤滑することができる。
【0123】
一方、第1吐出室16e内の圧縮冷媒は、各潤滑油通路73を流通して第2吐出室16f内に流通する。そして、第2吐出室16f内の圧縮冷媒は、吐出通路251及び吐出連絡口68を経てハウジング6の外部に吐出される。こうして、この圧縮機でも実施例1の圧縮機と同様の作用を奏することができる。
【0124】
(実施例4)
図4に示すように、実施例4の圧縮機では、ケース25に換えて、ケース26を備えている。また、この圧縮機では、ケース26に衝突壁91が固定されている。
【0125】
ケース26は、ケース周壁26a及びケース底壁26bを有する有底筒状部材である。ケース26もアルミニウム合金製である。ケース周壁26aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。ケース周壁26aの構成は、上述のケース周壁25aと同様である。これにより、ケース周壁26aの外径は第1スクロール30の第1端板31とほぼ同径に形成されている。また、ケース周壁26aの内径の長さは第2長さL2となっている。こうして、ケース周壁26aの内径についても、ラジアル玉軸受14の外径よりも大きくなっている。なお、ケース26を樹脂製としても良い。
【0126】
また、ケース周壁26aには、還流路260及び複数の第3取付孔263が形成されている。還流路260及び各第3取付孔263は、それぞれ還流路250及び各第3取付孔253と同様の構成である。
【0127】
ケース底壁26bは、ケース26の前端に位置している。
図5に示すように、ケース底壁26bは、本体部265と、突出部266~269とを有している。
図4に示すように、本体部265は、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。本体部265は前面265aと後面265bとを有している。前面265aは前方に面している。後面265bは駆動軸心O1方向で前面265aの反対側に位置しており、後方に面している。本体部265の外周縁は、ケース周壁26aの前端に接続している。
【0128】
また、本体部265には、ボス26cが形成されている。ボス26cは、本体部265の中央に一体に形成されており、前面265aから前方に向かって突出している。ボス26cは、上述のボス25cと同様の構成である。
【0129】
ボス26c内には吐出通路26dが形成されている。吐出通路26dは、ボス26c内及び本体部265内を駆動軸心O1方向に貫通している。こうして、吐出通路26dの前端はボス26cの前端面に開口しており、吐出通路26dの後端は本体部265の後面265bに開口している(
図5参照)。より具体的には、吐出通路26dの後端は、後面265bの中央に開口している。そして、このように吐出通路26dが形成されることにより、
図4に示すように、ボス26cも上述のボス25cと同様に、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0130】
図4及び
図5に示すように、突出部266~269は、それぞれ本体部265と一体をなしており、本体部265の後面265bから衝突壁91に向かって後方に突出している。また、
図5に示すように、突出部266~269は、吐出通路26dよりもケース26の径方向、すなわち第1スクロール30の径方向の外側に配置されている。そして、突出部266~269は、吐出通路26dを囲うようにケース26の周方向に等間隔で配置されている。
【0131】
突出部266~269は同一の形状であり、それぞれ先端部位266a~269aを有している。先端部位266aを例に説明すると、先端部位266aは、突出部266において、ケース26の径方向の最も外側となる個所であって、かつ、ケース26及び第1スクロール30の回転方向R1(
図5の白色矢印参照)の最も先端側となる個所に位置している。
【0132】
図4に示すように、ケース26は、ケース周壁26aの後端を第1端板31の前面311に当接させている。そして、この状態でケース26は、各第3取付孔263にそれぞれ挿通された第3固定ボルト50cによって第1端板31に固定されている。こうして、ケース26は、第1スクロール30に固定されて第1スクロール30と一体化されている。
【0133】
そして、このようにケース26が第1スクロール30に固定されることより、ケース26のケース周壁26a及びケース底壁26bと、第1端板31とによってケース26の内部に吐出室19が形成されている。吐出室19は、吐出口38を通じて圧縮室12と連通している。また、吐出室19は、還流路260及び吐出通路26dとそれぞれ連通している。なお、吐出室16と同様、吐出室19についても、ラジアル玉軸受14の外径よりも大径に形成されている。
【0134】
衝突壁91は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交する円板状に形成されている。ここで、衝突壁91は、吐出通路26dよりも大径に形成されている一方、ケース底壁26bの本体部265よりも小径に形成されている。衝突壁91は、第1面911と第2面912とを有している。第1面911も本発明における「第1面」の一例である。第2面912も本発明における「第2面」の一例である。第1面911は後方に面している。第2面912は、駆動軸心O1方向で第1面911の反対側に位置しており、ケース底壁26bに面している。
【0135】
衝突壁91は、第2面912を突出部266~269に当接させている。そして、衝突壁91は、この状態で複数の第4固定ボルト50dによって突出部266~269に固定されている。これにより、衝突壁91はケース26に一体化されている。
【0136】
また、衝突壁91が突出部266~269に固定されることにより、衝突壁91は吐出室19内に配置されている。そして、吐出室19内において、吐出口38、吐出リード弁57、リテーナ58及び固定ボルト59と、衝突壁91の第1面911とが駆動軸心O1方向で離隔しつつ対向している。また、吐出室19内では、吐出通路26dは、衝突壁91の第2面912の中央と対向した状態で衝突壁91によって後方から覆われた状態となっている。
【0137】
さらに、衝突壁91が突出部266~269に固定されることにより、第2面912と本体部265の後面265bとの間であって、かつ、突出部266~269同士の間となる個所には、第1~4径方向流路15a~15dが形成されている。第1~4径方向流路15a~15dは、本発明における「径方向流路」の一例である。
【0138】
より具体的には、
図5に示すように、第1径方向流路15aはケース26の周方向で突出部266と突出部267との間に位置しており、第2径方向流路15bはケース26の周方向で突出部267と突出部268との間に位置している。第3径方向流路15cはケース26の周方向で突出部268と突出部269との間に位置しており、第4径方向流路15dはケース26の周方向で突出部269と突出部266との間に位置している。こうして、ケース26及び第1スクロール30の回転方向R1において、第1径方向流路15a、第2径方向流路15b、第3径方向流路15c及び第4径方向流路15dは、この順で等間隔に配置されている。
【0139】
第1~4径方向流路15a~15dは、いずれも同一の形状であり、吐出通路26d側、つまり、衝突壁91の中心側から衝突壁91の外周側に向かって第1スクロール30の径方向に延びている。そして、第1~4径方向流路15a~15dは、それぞれ第1スクロール30の径方向で吐出通路26dを吐出室19に連通させている。
【0140】
また、第1~4径方向流路15a~15dは、それぞれ入口部151、上流側通路部152及び下流側通路部153を有している。以下、第1径方向流路15aを基に、入口部151、上流側通路部152及び下流側通路部153を説明する。
【0141】
入口部151は、第1径方向流路15aにおいて、第1スクロール30の径方向で最も外側となる個所に位置している。そして、入口部151は、吐出室19内に開口している。こうして、入口部151は、第1径方向流路15aを吐出室19内に連通させている。
【0142】
上流側通路部152は、第1スクロール30の径方向で入口部151よりも内側に位置しており、入口部151と接続している。上流側通路部152は、入口部151側から吐出通路26d側に向かって、すなわち、入口部151側から下流側通路部153側に向かって第1スクロール30の回転方向R1とは反対方向に傾斜しつつ延びている。
【0143】
下流側通路部153は、第1スクロール30の径方向で上流側通路部152よりも内側に位置している。下流側通路部153は、第1スクロール30の径方向で最も内側となる個所、つまり、衝突壁91の中心側となる個所で吐出通路26dと接続している。そして、下流側通路部153は、第1スクロール30の径方向で吐出通路26d側から上流側通路部152に向かって延びており、入口部151とは反対側で上流側通路部152と接続している。ここで、下流側通路部153は、吐出通路26d側から第1スクロール30の径方向に直線状に延びた後、上流側通路部152に向かって湾曲しつつ上流側通路部152に接続している。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
【0144】
この圧縮機では、駆動機構10によって、第1スクロール30及びケース26が駆動軸心O1周りで
図5に示す回転方向R1に回転駆動する。また、この圧縮機では、吐出リード弁57が吐出口38を開くことにより、圧縮室12で圧縮された圧縮冷媒が吐出口38から吐出室19内に吐出される。これにより、吐出室19は、スクロール室65及び吸入部30aに比べて高圧の雰囲気となる。
【0145】
吐出口38から吐出室19内に吐出された圧縮冷媒は、吐出通路26dに向かって吐出室19内を流通する。ここで、この圧縮機では、突出部266~269に衝突壁91が固定されることにより、吐出通路26dは衝突壁91によって後方から覆われている。このため、吐出通路26dに向かって吐出室19内を流通する圧縮冷媒の大部分は、衝突壁91の第1面911に衝突する。こうして、衝突壁91は、圧縮冷媒に含まれた潤滑油18を圧縮冷媒から分離させる。
【0146】
そして、圧縮冷媒から分離された潤滑油18は、遠心力によって吐出室19内を第1スクロール30の径方向の外側に向かって流通する。これにより、この圧縮機でも、吐出室19の内周面に潤滑油18が付着し易くなることで、潤滑油18が吐出室19内に留まり易くなっている。また、吐出室19内の潤滑油18は還流路260を通じてスクロール室65内に流出する。こうして、この圧縮機でも、スクロール室65に流出した潤滑油18によって、駆動機構10、ラジアル玉軸受14及び滑り軸受51等を潤滑することができる。
【0147】
一方、衝突壁91との衝突によって潤滑油18が分離した圧縮冷媒は、第1スクロール30の径方向の外側から衝突壁91の前方に回り込みつつ、第1~4径方向流路15a~15dに至る。そして、この圧縮冷媒は、第1~4径方向流路15a~15dを流通することにより、吐出通路26dに案内される。つまり、第1~4径方向流路15a~15dでは、圧縮冷媒を入口部151、上流側通路部152及び下流側通路部153の順に流通させることで圧縮冷媒を吐出通路26dに案内する。こうして、圧縮冷媒は、吐出通路26d及び吐出連絡口68を経てハウジング6の外部に吐出される。
【0148】
ところで、この圧縮機では、吐出室19内に存在する潤滑油18の一部についても、圧縮冷媒とともに第1~4径方向流路15a~15dに向かって不可避的に流通し得ることになる。しかし、この圧縮機では、潤滑油18が圧縮冷媒とともに吐出通路26dを経てハウジング6の外部に吐出することを好適に抑制可能となっている。以下、この作用について、比較例との対比を基に説明する。
【0149】
図7に示すように、比較例の圧縮機では、ケース底壁26bが突出部97a~97dを有している。そして、比較例の圧縮機では、衝突壁91が突出部97a~97dに固定されることにより、衝突壁91の第2面912と本体部265の後面265bとの間であって、かつ、突出部97a~97d同士の間となる個所に、第1~4径方向流路98a~98dが形成されている。第1~4径方向流路98a~98dは、それぞれ入口部981、上流側通路部982及び下流側通路部983を有している。
【0150】
ここで、比較例の圧縮機では、上流側通路部982が入口部981側から吐出通路26d側に向かって第1スクロール30の回転方向R1と同方向に傾斜しつつ延びている。入口部981及び下流側通路部983の構成を含め、比較例の圧縮機における他の構成は実施例4の圧縮機と同様である。
【0151】
比較例の圧縮機では、吐出室19内の圧縮冷媒及び潤滑油18が第1径方向流路98aを流通するに当たり、圧縮冷媒及び潤滑油18は、回転方向R1に回転しつつ、突出部97a~97dよりも第1スクロール30の径方向の外側から第1径方向流路98aの入口部981に向かうことになる。ここで、比較例の圧縮機では、上流側通路部982が入口部981側から吐出通路26d側に向かって第1スクロール30の回転方向R1と同方向に傾斜しつつ延びている。これにより、上流側通路部982は、回転方向R1に回転する圧縮冷媒及び潤滑油18を入口部981、ひいては第1径方向流路98a内に招き入れるような形状となる。第2~4径方向流路98b~98dについても同様である。
【0152】
このため、
図7の破線で示すように、比較例の圧縮機では、回転方向R1に回転する圧縮冷媒及び潤滑油18が入口部981から上流側通路部982にスムーズに流通することができる。これにより、比較例の圧縮機では、圧縮冷媒だけでなく、潤滑油18についても第1~4径方向流路98a~98dを流通し易くなる。この結果、比較例の圧縮機では、圧縮冷媒とともに吐出通路26dを経てハウジング6の外部に吐出する潤滑油18の流量が不可避的に多くなってしまう。
【0153】
これに対し、
図5に示すように、実施例4の圧縮機では、上流側通路部152が比較例の圧縮機における上流側通路部982とは反対方向に傾斜しつつ延びている。つまり、上流側通路部152は、入口部151側から吐出通路26d側に向かって第1スクロール30の回転方向R1とは反対方向に傾斜しつつ延びている。このため、実施例4の圧縮機では、
図5の破線で示すように、回転方向R1に回転する圧縮冷媒及び潤滑油18は、第1~4径方向流路15a~15dを流通するに際して、突出部266~269の先端部位266a~269aを回り込みながら入口部151に向かう必要がある。このため、比較例の圧縮機に比べて、実施例4の圧縮機では、回転方向R1に回転する圧縮冷媒及び潤滑油18が入口部151から上流側通路部152にスムーズに流通し難くなる。加えて、潤滑油18は、圧縮冷媒よりも質量が大きく、圧縮冷媒よりも遠心力が大きく作用する。
【0154】
これにより、実施例4の圧縮機では、圧縮冷媒については第1~4径方向流路15a~15dを流通して吐出通路26dに至ることができるものの、潤滑油18については第1~4径方向流路15a~15dを流通し難く、吐出通路26dに至り難い。この結果、実施例4の圧縮機では、潤滑油18が圧縮冷媒とともに吐出通路26dを経てハウジング6の外部に吐出することを好適に抑制可能となっている。
【0155】
また、この圧縮機では、第1~4径方向流路15a~15dにおいて、下流側通路部153は、上流側通路部152に向かって湾曲しつつ上流側通路部152に接続している。このため、この圧縮機では、圧縮冷媒が吐出通路26dに向かって第1~4径方向流路15a~15dを流通するに当たって、上流側通路部152と下流側通路部153との間での圧縮冷媒の流通抵抗を可及的に小さくすることができる。これにより、この圧縮機では、第1~4径方向流路15a~15dを流通して吐出通路26dに至る圧縮冷媒の圧力損失を好適に抑制することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0156】
(実施例5)
図6に示すように、実施例5の圧縮機は、ケース25に換えてケース26を備えている点を除いて、実施例1の圧縮機と同様の構成である。これにより、この圧縮機では、衝突筒体71によって、吐出室19が第1吐出室19aと、第2吐出室19bとに区画されている。
【0157】
また、この圧縮機では、第2吐出室19b内において、吐出通路26dは、対向壁部71aの第2面712の中央と対向した状態で衝突筒体71によって後方から覆われた状態となっている。さらに、この圧縮機では、対向壁部71aが突出部266~269に当接することにより、対向壁部71aの第2面712と本体部265の後面265bとの間であって、かつ、突出部266~269同士の間となる個所に第1~4径方向流路15a~15dが形成されている(
図6では、第1、3径方向流路15a、15cを図示しており、第2、4径方向流路15b、15dについては
図5を参照。)。
【0158】
この圧縮機では、第1吐出室19a内において対向壁部71aの第1面711に圧縮冷媒が衝突することにより、圧縮冷媒から潤滑油18が分離される。そして、この圧縮冷媒は第2吐出室16b内に吐出され、第1~4径方向流路15a~15dを流通することで吐出通路26d及び吐出連絡口68を経てハウジング6の外部に吐出される。こうして、この圧縮機では、実施例1の圧縮機及び実施例4の圧縮機の両方の作用を奏することが可能となっている。
【0159】
以上において、本発明を実施例1~5に即して説明したが、本発明は上記実施例1~5に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0160】
例えば、実施例1の圧縮機では、第1端板31に固定された衝突筒体71を本発明における「衝突壁」としている。しかし、これに限らず、ケース25のケース周壁25aに対し、吐出室16内に板状に延びる衝突壁を設けることにより、この衝突壁に対して吐出口38から吐出室16内に吐出された圧縮冷媒を衝突させる構成としても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0161】
また、実施例1の圧縮機では、ケース25のケース周壁25aに還流路250を形成している。しかし、これに限らず、第1端板31及び周壁32に還流路250を形成しても良い。また、この場合、還流路250は、カバー体35の前面351と第2端板41の後面412との間となる個所等に吐出室16内の潤滑油18を還流させても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0162】
また、実施例1の圧縮機では、第1固定ボルト50aによって衝突筒体71を第1端板31に固定している。しかし、これに限らず、接続周壁部71bのフランジ710をケース25のケース周壁25aと第1端板31との間に進入させつつ、第3固定ボルト50cによって、ケース25及び衝突筒体71を第1端板31に固定する構成としても良い。実施例2、5の圧縮機についても同様である。
【0163】
また、実施例1の圧縮機において、ケース25のケース周壁25aにロータ11を固定することにより、ケース25によってロータ11の回転が第1スクロール30に伝達される構成としても良い。実施例2~5の圧縮機についても同様である。
【0164】
また、実施例1の圧縮機において、第1スクロール30とロータ11とを軸体によって動力伝達可能に接続することにより、第1スクロール30及びケース25とロータ11とを駆動軸心O1方向に離隔して配置する構成としても良い。実施例2~5の圧縮機についても同様である。
【0165】
また、実施例1の圧縮機について、第1スクロール30をハウジング6に固定し、第1スクロール30に対して第2スクロール40が公転する構成としても良い。実施例2~5の圧縮機についても同様である。
【0166】
また、実施例1の圧縮機では、衝突筒体71が接続周壁部71bを有している。しかし、これに限らず、接続周壁部71bは、ケース25のケース底壁25b、又は、第1端板31の前面311から吐出室16内に向かって駆動軸心O1方向に延びる壁部によって形成されても良い。実施例2、3の圧縮機についても同様である。
【0167】
また、実施例3の圧縮機において、ケース25内に衝突筒体81を実施例2とは前後方向を反転させた状態で配置しつつ、第1固定ボルト50aによって衝突筒体81をケース25のケース底壁25bに固定する構成としても良い。
【0168】
また、実施例4の圧縮機では、ケース底壁26bが突出部266~269を有している。しかし、これに限らず、衝突壁91が突出部266~269を有するとともに、突出部266~269が衝突壁91の第2面912からケース底壁26bに向かって突出する構成であっても良い。
【0169】
また、実施例4の圧縮機では、衝突壁91の第2面912と本体部265の後面265bとの間に第1~4径方向流路15a~15dが形成されている。しかし、これに限らず、衝突壁91の第2面912と本体部265の後面265bとの間に第1径方向流路15aのみが形成されていたり、第1~4径方向流路15a~15dに加えて径方向流路が形成されていたりしても良い。実施例5の圧縮機についても同様である。
【0170】
また、実施例4の圧縮機において、下流側通路部153は湾曲することなく、上流側通路部152に対して直線的に接続しても良い。実施例5の圧縮機についても同様である。
【0171】
また、実施例4の圧縮機において、下流側通路部153を省略することにより、入口部151と上流側通路部152とで第1~4径方向流路15a~15dを構成しても良い。実施例5の圧縮機についても同様である。
【0172】
また、実施例4の圧縮機において、上流側通路部152は、入口部151側から吐出通路26d側に向かって第1スクロール30の回転方向R1と同方向に傾斜しつつ延びていても良い。実施例5の圧縮機についても同様である。
【0173】
また、実施例2の圧縮機と実施例4の圧縮機とを組み合わせて圧縮機を構成しても良く、実施例3の圧縮機と実施例4の圧縮機とを組み合わせて圧縮機を構成しても良い。
【0174】
また、本明細書では、以下の発明を含んでいる。
(付記1)
ハウジング、駆動機構、第1スクロール及び第2スクロールを備え、
前記駆動機構、前記第1スクロール及び前記第2スクロールは前記ハウジング内に収容され、
前記第1スクロールと前記第2スクロールとによって、冷媒を圧縮する圧縮室が形成されるスクロール型圧縮機であって、
前記ハウジングには、前記圧縮室で圧縮された冷媒である圧縮冷媒を外部に吐出する吐出連絡口が形成され、
前記第1スクロール、前記第2スクロール及び前記駆動機構の少なくとも一つには、前記ハウジング内で回転可能にケースが固定され、
前記ケースには、前記圧縮室と連通し、前記圧縮室から前記圧縮冷媒が内部に吐出される吐出室と、
前記吐出室と前記吐出連絡口とに連通する吐出通路とが形成され、
前記吐出室内には、前記ケースとともに回転し、前記吐出通路に向かって流通する前記圧縮冷媒と衝突することで前記圧縮冷媒に含まれた潤滑油を前記圧縮冷媒から分離させる衝突壁が設けられていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
(付記2)
前記第1スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記第2スクロールは、前記第1スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記第1スクロール及び従動機構によって回転従動され、
前記ケースは、前記第1スクロールに固定され、
前記第1スクロールには、前記圧縮室と連通する吐出口が形成されている付記1記載のスクロール型圧縮機。
(付記3)
前記衝突壁は、前記第1スクロールの径方向に延びる板状をなし、前記駆動軸心方向で前記第1スクロールから離隔しつつ前記第1スクロールと対向する対向壁部と、前記対向壁部と接続して前記駆動軸心方向に筒状に延びる接続周壁部とを有し、
前記吐出室は、前記衝突壁によって第1吐出室と第2吐出室とに区画され、
前記第1吐出室は、前記衝突壁と前記第1スクロールとの間に位置するとともに、前記吐出口と連通し、
前記第2吐出室は、前記ケースと前記衝突壁との間に位置するとともに、前記吐出通路と連通し、
前記接続周壁部には、前記径方向に延びて前記第1吐出室と前記第2吐出室とを連通する連通路が形成されている付記2記載のスクロール型圧縮機。
(付記4)
前記衝突壁は、前記第1スクロールの径方向に延びる板状をなし、前記駆動軸心方向で前記第1スクロールから離隔しつつ前記第1スクロールと対向する対向壁部と、前記対向壁部と接続して前記駆動軸心方向に筒状に延びる接続周壁部とを有し、
前記吐出室は、前記衝突壁によって第1吐出室と第2吐出室とに区画され、
前記第1吐出室は、前記衝突壁と前記第1スクロールとの間に位置するとともに、前記吐出口と連通し、
前記第2吐出室は、前記ケースと前記衝突壁との間に位置するとともに、前記吐出通路と連通し、
前記接続周壁部には、前記駆動軸心方向に延びて前記第1吐出室と前記第2吐出室とを連通する連通路が形成されている付記2のスクロール型圧縮機。
(付記5)
前記第1スクロールには、前記吐出室内に配置されて前記吐出口を開閉可能な吐出弁が設けられ、
前記吐出口及び前記吐出弁と、前記衝突壁とは前記駆動軸心方向で対向している付記1乃至4のいずれか1項記載のスクロール型圧縮機。
(付記6)
前記衝突壁は、前記駆動軸心方向で前記吐出弁と対向する第1面と、前記第1面の反対側に位置し、前記駆動軸心方向で前記ケースに当接する第2面とを有し、
前記吐出通路は、前記駆動軸心方向で前記第2面に対向しつつ前記衝突壁によって覆われ、
前記第2面と前記ケースとの間には、前記吐出室内の前記圧縮冷媒を前記第1スクロールの径方向に流通させつつ前記吐出通路に案内する径方向流路が形成されている付記5記載のスクロール型圧縮機。
(付記7)
前記径方向流路は、前記吐出室内に開口する入口部と、
前記入口部と接続し、前記入口部から前記吐出通路に向けて前記圧縮冷媒を流通させる上流側流路部とを有し、
前記上流側流路部は、前記入口部から前記吐出通路に向かって前記第1スクロールの回転方向とは反対方向に傾斜している付記6記載のスクロール型圧縮機。
(付記8)
前記径方向流路は、前記吐出通路と連通する下流側流路部を有し、
前記下流側流路部は、前記上流側流路部に向かって湾曲しつつ、前記入口部とは反対側で前記上流側流路部と接続している付記7記載のスクロール型圧縮機。
(付記9)
前記ケースは、前記衝突壁に向かって駆動軸心方向に突出して前記第2面に当接する複数の突出部を有し、
前記衝突壁は前記各突出部に固定され、
前記径方向流路は、前記突出部同士の間に位置している付記6乃至8のいずれか1項記載のスクロール型圧縮機。
(付記10)
前記ケースは、軸受を介して前記ハウジングに回転可能に支持され、
前記吐出室は、前記軸受の外径よりも大径に形成されている付記1乃至9のいずれか1項記載のスクロール型圧縮機。
(付記11)
前記吐出室は、前記ハウジング内において前記吐出室よりも低圧となる個所に前記吐出室内の前記潤滑油を還流させる還流路と連通している付記1乃至10のいずれか1項記載のスクロール型圧縮機。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0176】
6…ハウジング
10…駆動機構
12…圧縮室
14…ラジアル玉軸受(軸受)
15a~15d…第1~4径方向流路(径方向流路)
16、19…吐出室
16a、16c、16e、19a…第1吐出室
16b、16d、16f、19b…第2吐出室
18…潤滑油
25、26…ケース
26d…吐出通路
30…第1スクロール
38…吐出口
40…第2スクロール
57…吐出リード弁(吐出弁)
71、81…衝突筒体(衝突壁)
71a、81a…対向壁部
71b、81b…接続周壁部
73、83a、83b…潤滑油通路
91…衝突壁
151…入口部
152…上流側流路部
153…下流側流路部
251…吐出通路
250、260…還流路
266~269…突出部
711、811、911…第1面
712、812、912…第2面
O1…駆動軸心
O2…従動軸心