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特開2025-149903仮想現実を利用した曝露療法実施システム及び、仮想現実を利用した曝露療法実施方法及び仮想現実を利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025149903
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】仮想現実を利用した曝露療法実施システム及び、仮想現実を利用した曝露療法実施方法及び仮想現実を利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェア
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/70 20180101AFI20251001BHJP
【FI】
G16H20/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025023836
(22)【出願日】2025-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2024050178
(32)【優先日】2024-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】524115925
【氏名又は名称】伊藤 真一
(74)【代理人】
【識別番号】100139996
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真一
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】 オンラインで利用可能で被治療者の症状等に応じたきめ細かなサポートをリアルタイムにて実現でき、シンプルな構成で経済的、物理的及び精神的な負荷を調整し、被治療者にとって容易且つ継続的に曝露療法を受けることを可能とする曝露療法実施システムを提供すること。
【解決手段】
本システム10は、通信ネットワーク100を介してコンテンツサーバ200、治療者用端末200及び被治療者用端末400が接続され、コンテンツサーバ200は、治療者用端末300から送出されてくる被治療者に関するカウンセリング情報等を参照して被治療者に好適なコンテンツを提供するよう機能構成されており、被治療者に提供されるコンテンツにつきコンテンツサーバ200及び/または治療者用端末300にて環境設定可能となるよう機能構成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被治療者に関するカウンセリング情報を生成し当該カウンセリング情報を通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有するカウンセリング情報生成手段と、
上記通信ネットワークに接続し、このカウンセリング情報生成手段から送出されてくるカウンセリング情報を参照して保有する仮想現実によるコンテンツ情報を調整し、当該調整したコンテンツ情報を上記通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有するVRコンテンツ情報調整手段と、
このVRコンテンツ情報調整手段から送出されてくる調整されたコンテンツ情報を受信し当該コンテンツ情報を上記被治療者に提供する機能を有するVRコンテンツ情報提供手段と、
このVRコンテンツ情報提供手段により提供されるコンテンツ情報に対する上記被治療者の反応情報を検出して当該反応情報を上記通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有する反応情報検出手段と、
この反応情報検出手段から送出されてくる反応情報を上記通信ネットワークを介して受信し、当該反応情報を評価しまたは当該反応情報を参照して上記コンテンツ情報をさらに調整してレコメンド情報として上記通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有するレコメンド情報生成手段を具備することを特徴とする仮想現実を利用した曝露療法実施システム。
【請求項2】
上記VRコンテンツ情報提供手段にて上記被治療者に提供されるコンテンツ情報に対して環境設定する機能を有する環境設定手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の仮想現実を利用した曝露療法実施システム。
【請求項3】
上記カウンセリング情報生成手段は、上記レコメンド情報生成手段から送出されてくるレコメンド情報を参照して上記被治療者に関するあらたなカウンセリング情報を生成して上記通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の仮想現実を利用した曝露療法実施システム。
【請求項4】
被治療者に仮想現実によるコンテンツ情報を提供する被治療者用端末と、この被治療者用端末と接続し上記コンテンツ情報を制御可能な治療者用端末と、この治療者用端末及び上記被治療者用端末と通信ネットワークを介して接続し上記コンテンツ情報を管理格納するVRコンテンツ管理機器とから構成される仮想現実を利用した曝露療法実施方法であって、
上記治療者用端末は、上記被治療者に関するカウンセリング情報を上記通信ネットワークを介して上記VRコンテンツ管理機器に送出し、
上記VRコンテンツ管理機器は、上記通信ネットワークを介して送出されてくる上記カウンセリング情報を受信し当該カウンセリング情報を参照して上記被治療者につき好適となるよう上記コンテンツ情報を調整し、この調整したコンテンツ情報を上記通信ネットワークを介して上記被治療者用端末及び上記治療者用端末に送出し、
上記被治療者用端末は、送出されてくる上記調整されたコンテンツ情報を受信し当該コンテンツ情報を上記被治療者に提供し、
上記被治療者用端末または上記治療者用端末は、この提供されたコンテンツ情報に対する上記被治療者の反応情報を検出して当該反応情報を上記通信ネットワークを介して上記VRコンテンツ管理機器に送出し、
上記VRコンテンツ管理機器は、この送出されてくる反応情報を受信し当該反応情報を参照して上記被治療者に関するレコメンド情報を生成するようにしたことを特徴とする仮想現実を利用した曝露療法実施方法。
【請求項5】
上記被治療者に提供されるコンテンツ情報は、上記治療者用端末または上記VRコンテンツ管理機器にて環境設定可能としたことを特徴とする請求項4記載の仮想現実を利用した曝露療法実施方法。
【請求項6】
上記VRコンテンツ管理機器は、上記生成したレコメンド情報を上記通信ネットワークを介して上記治療者用端末に送出し、
上記治療者用端末は、上記通信ネットワークを介して受信した上記レコメンド情報を参照して、上記被治療者に関するあらたなカウンセリング情報を生成することを特徴とする請求項4または請求項5記載の仮想現実を利用した曝露療法実施方法。
【請求項7】
被治療者用端末機器に搭載される仮想現実を利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェアであって、
被治療者に関するカウンセリング情報を取得し当該カウンセリング情報をVRコンテンツ管理機器に送出し、
このVRコンテンツ管理機器にて、受信した当該カウンセリング情報を上記被治療者につき好適となるよう調整されたコンテンツ情報を受信し、
当該受信したコンテンツ情報を上記被治療者に提供し、
この提供されたコンテンツ情報に対する上記被治療者の反応情報を検出して当該反応情報を上記VRコンテンツ管理機器に送出し、
上記VRコンテンツ管理機器にて受信した当該反応情報を参照して生成される上記被治療者に関するレコメンド情報を受信するようにしたことを特徴とする仮想現実を利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想現実(以下「VR」と称す)を利用した曝露療法実施システム及び、仮想現実を利用した曝露療法実施方法及び仮想現実を利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェア、特にオンラインにて利用可能で、きめ細かなサポートを可能としたVRを利用した曝露療法実施システム及び、VRを利用した曝露療法実施方法及びVRを利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば不安症の一種である広場恐怖症には、薬物療法と心理療法による治療が用いられている。心理療法の一つである曝露療法(エクスポージャー療法)については、その有効性が広く認められている。
【0003】
曝露療法には、例えばヘッドマウンティッドディスプレイ(Head Mounted Display、以下「HMD」と称す)を用いたVR曝露療法がある。このVR曝露療法は、現実空間に於ける曝露療法と同等の効果があるとの結果が数多く報告されている。
【0004】
特許文献1には、治療用コンテンツ生成システム及びその方法が開示されている。このものにあっては、治療者のスキルが足りない場合であっても効果的な精神疾患エクスポージャー治療を行えるようにしたものである。
【0005】
このシステムにあっては、インターネットを介して治療者の端末と患者の端末に接続され、治療者が治療室内で治療者の端末を用いて患者の端末を介してエクスポージャー治療を行うものである。即ち、治療者により選択された治療シーンと治療シナリオとから治療コンテンツを生成し患者に視聴させる第1の治療コンテンツ生成・再生部及び治療者が患者の状態に応じて調節・設定した治療シナリオの負荷強度を患者の現在の負荷強度として患者情報に記憶する第1の負荷強度設定記憶部を有する治療者用コンテンツ生成部と、患者の現在の負荷強度及び患者の負荷強度の目標値に応じて推薦する治療コンテンツを決定し患者に治療コンテンツを選択させる治療コンテンツ選択部及び患者の状態を取得しそれに応じて患者の患者情報の現在の負荷強度を設定し記憶する第2の負荷強度設定記憶部を有する患者用コンテンツ生成部から構成されるものである。
【0006】
特許文献2には、患者に心理療法を提供するための仮想現実治療システムが開示されている。このものにあっては、仮想環境に於いて、対話タスクを含む治療シナリオのセットを患者に提示するよう構成されたものである。
【0007】
即ち、患者キャラクタが、仮想環境内でタスクキャラクタと対話し、患者キャラクタとタスクキャラクタとの対話の特性を測定することにより精神的不安状態パラメータを判定し、タスクの遂行を監視し、精神的不安状態パラメータ及び/または遂行に応答して、コーチキャラクタを用いて仮想環境に於ける言語的プロンプト及び視覚的プロンプトの一方または両方を含むVRフィードバックを提供するようにしたものである。
【0008】
特許文献3には、恐怖症の治療に必要な情報を適切に記録するためのプログラム、方法、情報処理装置及びシステムが開示されている。このものにあっては、バイタルデータには表出しないが患者が感じている恐怖の感情を、恐怖刺激を含む映像・音声の時系列の情報と関連付けて記録することにより、よりいっそう恐怖症の治療に適した技術を提供するようにしたものである。
【0009】
即ち、患者である第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像・音声を、第1のユーザに提示し、第1のユーザまたは治療者である第2のユーザの操作を介して第1のユーザが映像・音声を視聴することにより能動的に表明した情報を、映像・音声の時系列の情報と関連付けて記録するように機能構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-192154号公報
【特許文献2】特表2022-538996号公報
【特許文献3】特開2022-65576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
広場恐怖症を含め不安症等を治癒・改善すべく曝露療法を試みたい者(以下「被治療者」と称す)は、顕在的にも潜在的にも相当数存在する。しかし、現実空間での曝露療法を受けることは、経済的、物理的及び精神的なハードルが高く、被治療者にとっては容易ではないものである。そもそも被治療者にとっては、治療を受ける場所への移動そのものが極めて困難を要するものである。
【0012】
また、治療者側にとっても被治療者の症状、病状または精神状態等(以下これ等を「症状等」と称す)を判断・考慮し、即座に的確な環境を用意しての曝露療法を施すことは、容易なものではない。
【0013】
特許文献1に開示されたものにあっては、仮想治療空間と現実治療空間の両者をシームレスに組合せることにより治療を実施するものであり、大掛かりなシステム構成となる。また、被治療者側の負荷も少なくはないものである。
【0014】
特許文献2に開示されたものにあっては、被治療者は、VR環境内に於いて被治療者キャラクタによって表現されており、被治療者用モバイルデバイスが存するものの、これは例えば監視された被治療者の活動度/不安を利用して、被治療者がいつストレスの多い実世界の状況にあるかを識別し実世界フィードバックする手段に過ぎないものである。
【0015】
特許文献3に開示されたものにあっては、治療者と被治療者が従前のVRを利用した治療法の一つに過ぎないものである。
【0016】
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、オンラインにて利用が可能で、被治療者の症状等に応じたきめ細かなサポートをリアルタイムにて実現可能とするVRを利用した曝露療法実施システム及び、VRを利用した曝露療法実施方法及びVRを利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェアを提供することを目的とする。
また、本発明は、曝露療法を受けることを希望する者にとって、経済的、物理的及び精神的な負荷を調整し、容易に継続的に曝露療法を受けることを可能とするVRを利用した曝露療法実施システム及び、VRを利用した曝露療法実施方法及びVRを利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェアを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、シンプルな構成で環境負荷が少ないVRを利用した曝露療法実施システム、VRを利用した曝露療法実施方法及びVRを利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成を有する。
【0018】
(1) 被治療者に関するカウンセリング情報を生成し当該カウンセリング情報を通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有するカウンセリング情報生成手段と、上記通信ネットワークに接続しこのカウンセリング情報生成手段から送出されてくるカウンセリング情報を参照して保有する仮想現実によるコンテンツ情報を調整し当該調整したコンテンツ情報を上記通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有するVRコンテンツ情報調整手段と、このVRコンテンツ情報調整手段から送出されてくる調整されたコンテンツ情報を受信し当該コンテンツ情報を上記被治療者に提供する機能を有するVRコンテンツ情報提供手段と、このVRコンテンツ情報提供手段により提供されるコンテンツ情報に対する上記被治療者の反応情報を検出して当該反応情報を上記通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有する反応情報検出手段と、この反応情報検出手段から送出されてくる反応情報を上記通信ネットワークを介して受信し当該反応情報を評価しまたは当該反応情報を参照して上記コンテンツ情報をさらに調整してレコメンド情報として上記通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有するレコメンド情報生成手段を具備することを特徴とする。
【0019】
(2) 上記(1)の構成にあって、上記VRコンテンツ情報提供手段にて上記被治療者に提供されるコンテンツ情報に対して環境設定する機能を有する環境設定手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
(3) 上記(1)または(2)の構成にあって、上記カウンセリング情報生成手段は、上記レコメンド情報生成手段から送出されてくるレコメンド情報を参照して上記被治療者に関するあらたなカウンセリング情報を生成して上記通信ネットワークを介して外部へ送出する機能を有することを特徴とする。
【0021】
(4) 被治療者に仮想現実によるコンテンツ情報を提供する被治療者用端末と、この被治療者用端末と接続し上記コンテンツ情報を制御可能な治療者用端末と、この治療者用端末及び上記被治療者用端末と通信ネットワークを介して接続し上記コンテンツ情報を管理格納するVRコンテンツ管理機器とから構成される仮想現実を利用した曝露療法方実施方法であって、
上記治療者用端末は上記被治療者に関するカウンセリング情報を上記通信ネットワークを介して上記VRコンテンツ管理機器に送出し、上記VRコンテンツ管理機器は上記通信ネットワークを介して送出されてくる上記カウンセリング情報を受信し当該カウンセリング情報を参照して上記被治療者につき好適となるよう上記コンテンツ情報を調整しこの調整したコンテンツ情報を上記通信ネットワークを介して上記被治療者用端末及び上記治療者用端末に送出し、上記被治療者用端末は送出されてくる上記調整されたコンテンツ情報を受信し当該コンテンツ情報を上記被治療者に提供し、上記被治療者用端末または上記治療者用端末はこの提供されたコンテンツ情報に対する上記被治療者の反応情報を検出して当該反応情報を上記通信ネットワークを介して上記VRコンテンツ管理機器に送出し、上記VRコンテンツ管理機器はこの送出されてくる反応情報を受信し当該反応情報を参照して上記被治療者に関するレコメンド情報を生成するようにしたことを特徴とする。
【0022】
(5) 上記(4)の機能構成にあって、上記被治療者に提供されるコンテンツ情報は、上記治療者用端末または上記VRコンテンツ管理機器にて環境設定可能としたことを特徴とする。
【0023】
(6) 上記(4)または(5)の機能構成にあって、上記VRコンテンツ管理機器は上記生成したレコメンド情報を上記通信ネットワークを介して上記治療者用端末に送出し、上記治療者用端末は上記通信ネットワークを介して受信した上記レコメンド情報を参照して上記被治療者に関するあらたなカウンセリング情報を生成することを特徴とする。
【0024】
(7) 被治療者用端末機器に搭載される仮想現実を利用した曝露療法実施用アプリケーションソフトウェアであって、
被治療者に関するカウンセリング情報を取得し当該カウンセリング情報をVRコンテンツ管理機器に送出し、このVRコンテンツ管理機器にて、受信した当該カウンセリング情報を上記被治療者につき好適となるよう調整されたコンテンツ情報を受信し、当該受信したコンテンツ情報を上記被治療者に提供し、この提供されたコンテンツ情報に対する上記被治療者の反応情報を検出して当該反応情報を上記VRコンテンツ管理機器に送出し、上記VRコンテンツ管理機器にて受信した当該反応情報を参照して生成される上記被治療者に関するレコメンド情報を受信するようにしたことを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、VRを利用した曝露療法をリアルタイムでオンラインにて場所を選ばず実施でき、しかもきめ細かなサポートをオンラインにてリアルタイムで実現できるものである。
【0026】
また、上記構成によれば、被治療者側にとっては、VRを利用した曝露療法を利用するに際し、経済的、物理的及び精神的なハードルが下がり、容易且つ継続的に曝露療法を受けることが可能となる。
【0027】
さらに、上記構成によれば、シンプルなシステム構成であるため、環境負荷も少なく実現でき、社会的にも有用なものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、オンラインで被治療者の症状等に応じたきめ細かなサポートをリアルタイムにてVRを利用した曝露療法を実施でき、実用的で有用なものである。
また、本発明によれば、曝露療法を受けることを希望する者にとって、経済的、物理的及び精神的な負荷を調整できるので、容易且つ継続的に曝露療法を受けることが可能となるものである。
さらに、本発明は、シンプルな構成で環境負荷が少なく実現でき、社会的にも有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施形態に係わるVRを利用した曝露療法実施システム全体の概略構成を示す図である。
図2】同実施形態に係わり、曝露療法実施システムを構成するVRコンテンツ管理機器(コンテンツサーバ)の概略構成を示す図である。
図3】同実施形態に係わり、曝露療法実施システムを構成する治療者用端末の概略構成を示す図である。
図4】同実施形態に係わり、曝露療法実施システムを構成する被治療者用端末の概略構成を示す図である。
図5】同実施形態に係わり、曝露療法実施システムに於ける曝露療法実施処理の全体の流れを示す図である。
図6】同実施形態に係わり、VRを利用した曝露療法処理の流れを示す図である。
図7】同実施形態に係わり、カウンセリング情報を構成する項目の一部を例示するテーブルを模式的に示す図である。
図8】同実施形態に係わり、環境設定情報及び反応情報を構成する項目の一部を例示するテーブルを模式的に示す図である。
図9】同実施形態に係わり、被治療者に提供され視聴されるVRコンテンツの一例を模式的に示す図である。
図10】同実施形態に係わり、被治療者に提供され視聴されるVRコンテンツを制御する治療用アイコンを模式的に示す図である。
図11】同実施形態の変形例に係るVRを利用した曝露療法実施システムに於ける曝露療法実施処理の全体の流れを示す図である。
図12】同実施形態の他の変形例に係るVRを利用した曝露療法実施システム全体の概略構成を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係わるVRを利用した曝露療法実施システム全体の概略構成を示す図である。
図14】同実施形態に係わり、曝露療法実施システムを構成するVRコンテンツ管理機器(コンテンツサーバ)の概略構成を示す図である。
図15】同実施形態に係わり、曝露療法実施システムを構成する被治療者用端末の概略構成を示す図である。
図16】同実施形態に係わり、曝露療法実施システムに於ける曝露療法実施処理の全体の流れを示す図である。
図17】同実施形態に係わり、VRを利用した曝露療法処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態につき、図を参照して説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態に係わる仮想現実を利用した曝露療法実施システム(以下「本システム」と称す)10は、通信ネットワーク100を介して仮想現実映像によるコンテンツ情報(以下「コンテンツ」と称す)を管理格納するVRコンテンツ管理機器(以下「コンテンツサーバ」と称す)200、治療者用端末300及び被治療者用端末400が接続されることにより構成されている(図1参照)。そして、コンテンツサーバ200は、治療者用端末300から送出されてくる被治療者に関するカウンセリング情報等を参照して、被治療者に好適なコンテンツを提供するよう機能構成されている。また、本システム10は、被治療者に提供されるコンテンツにつき、コンテンツサーバ200及び/または治療者用端末300にて環境設定可能となるよう機能構成されている。
【0032】
さて、コンテンツサーバ200は、VRコンテンツ情報調整機能を有するサーバコンピュータであり、中央制御処理部210、入力部220、出力部230、リード/ライト可能なメモリ240、コンテンツ情報管理部250、反応情報管理部260、環境情報管理部270及びレコメンド情報管理部280が夫々信号線290を介して接続されている(図2参照)。ここで、信号線290は、有線または無線のいずれかまたは併用でも構わないものとする。
【0033】
中央制御処理部210は、メモリ240に格納された所定のプログラム情報を参照して本システム10の全体の制御処理及びコンテンツサーバ200の制御処理を司る機能を有する。また、中央制御処理部210は、後述するメモリ240のコンテンツ情報記憶領域240f他を参照し、通信ネットワーク100を介して所定のコンテンツを外部へ提供するよう機能する。
【0034】
入力部220は、中央制御処理部210の管理下で、通信ネットワーク100を介して外部から送出されてくる種々の情報を受信してメモリ240の所定の記憶領域に格納する機能を有する。例えば、治療者用端末300から送出されてくる各種情報を受信してメモリ240の所定の記憶領域に格納する。また、入力部220は、内設するキーボード等からキー入力される各種情報等を同様にメモリ240の所定の記憶領域に格納する機能を有する。
【0035】
出力部230は、中央制御処理部210の管理下で、各種情報を出力し外部へ送出等する出力・送出機能を有する。例えば、出力部230は、治療者用端末300及び被治療者用端末400に対し、コンテンツ他各種情報を送出するものである。
【0036】
メモリ240は、各種作業を行うための作業領域240a及び中央制御処理部210が基本的な制御処理・管理をするために参照するプログラム情報を格納する記憶領域であるプログラム情報記憶領域240bを有する。
【0037】
さらに、メモリ240は、以下に示す記憶領域を有する。
・治療者用端末300及び被治療者用端末400の識別情報を含む当該端末300,400に関する情報を格納するVRコンテンツ情報端末機器情報記憶領域240c
・治療者用端末300及び被治療者用端末400等から送出されてくる治療者及び被治療者に関する識別情報等を格納する個人識別情報記憶領域240d
・治療者用端末300等から送出されてくる被治療者に対して行ったカウンセリング及びその結果等に関するカウンセリング情報(被治療者に関する基本的なカルテ情報(図7参照)、曝露療法実施に際しての提供コンテンツに係る好適な設定パラメータ情報及び主観的不安尺度表情報または不安階層表情報を含み、以下「カウンセリング情報」と称す)を格納するカウンセリング情報記憶領域240e
・曝露療法を被治療者に実施するに際し治療者用端末300及び被治療者用端末400に提供する各種コンテンツを格納するコンテンツ情報記憶領域240f
・被治療者への曝露療法実施時にコンテンツに対して行う若しくは行った調整(無調整、補正、無補正、変更及び無変更を含む)に係る一切の情報、及び当該調整するためのコンテンツ調整プログラム情報を格納するコンテンツ調整情報等記憶領域240g
・曝露療法実施時に於ける被治療者の反応に関する情報(以下「反応情報」と称し、被治療者による主観的不安尺度表情報または不安階層表情報(以下「SUD情報」と称す)並びに発汗量、心拍数及び瞳孔反応等の生体反応情報を含む)及びこの反応情報に対する評価結果等の情報(以下「評価情報」と称す)並びに評価情報を生成するための反応評価情報生成プログラム情報を格納する反応情報記憶領域240h
・被治療者への曝露療法実施時にコンテンツに対して行うまたは行った設定環境の調整(無調整、補正、無補正、変更及び無変更を含み、以下単に「調整」と称す)に係る一切の情報(以下「環境設定情報」と称す)、及び当該調整するための環境設定プログラム情報を格納する環境設定情報記憶領域240i
・被治療者の反応情報や環境設定情報等を参照して生成される当該被治療者に対して今後好適とされる療法等に関するレコメンド情報(今後の曝露療法実施に際しての提供コンテンツに係る好適な設定パラメータ情報を含む)及び当該レコメンド情報を生成するためのレコメンド情報生成プログラム情報を格納するレコメンド情報記憶領域240j
【0038】
コンテンツ情報管理部250は、中央制御処理部210の管理下で、メモリ240のVRコンテンツ情報端末機器情報記憶領域240c、個人識別情報記憶領域240d、カウンセリング情報記憶領域240e及びコンテンツ情報記憶領域240fを参照し、曝露療法を実施するに際し被治療者に好適なコンテンツを選出・調整し、この選出・調整したコンテンツを出力部230を介して治療者用端末300及び被治療者用端末400へ提供するよう機能構成されている。また、コンテンツ情報管理部250は、提供したコンテンツにつき被治療者の識別情報と対応付けてメモリ240に格納する機能を有する。
【0039】
即ち、コンテンツ情報管理部250は、曝露療法の対象となる被治療者の例えば広場恐怖症に於ける不安度に応じて提供するコンテンツにつき、事前に環境設定を行う。具体的には、コンテンツ情報管理部250は、曝露療法の対象となる被治療者に関するカウンセリング情報をもとに好適なコンテンツを提供するに際し、被治療者の身体的特徴も考慮し、当該コンテンツ内の例えば背景、登場人物、人数及び登場人物同士や物との間合い(距離)等を調整した上で、治療者用端末300及び被治療者用端末400へ提供するものである。
【0040】
なお、調整は、例えば設定パラメータに基づき、予め用意された調整用テーブルを参照して所定の規則に従ってコンテンツに対して行うよう機能構成されている。また、予め用意されたプルダウンメニューからの選択若しくは所望の数値入力、または、生成系AIや被治療者の反応情報等によるデータからの推奨値に基づき、不安症(不安症群及び不安障害群、広場恐怖症等)に於ける不安度に応じて背景、登場人物、人数及び登場人物同士や物との距離等を好適となるよう調整するよう機能構成してもよい。
【0041】
反応情報管理部260は、中央制御処理部210の管理下で、反応情報記憶領域240hを参照し、治療者用端末300から送出されてくるコンテンツに対する被治療者の反応情報を例えば予め用意されたテーブルを参照して所定の規則に従って評価等する機能を有する。また、反応情報管理部260は、評価結果等の情報を被治療者の反応情報とともに、評価情報として反応情報記憶領域240hに被治療者の識別情報と対応付けてメモリ240に格納する機能を有する。
【0042】
環境情報管理部270は、中央制御処理部210の管理下で、環境設定情報記憶領域240iを参照し、被治療者に提供されるコンテンツの設定環境の調整を行う機能を有する。この調整機能は、被治療者への曝露療法実施中に被治療者から検出される反応情報を参照して例えば予め用意されたテーブルを参照して所定の規則に従って随時行うことを可能としたものである。しかし、これに限定される訳ではない。また、環境情報管理部270は、コンテンツに対して行った調整に関する情報は、治療者用端末300及び被治療者用端末400にてコンテンツに対して行った調整も含めて環境設定情報記憶領域240iに被治療者の識別情報と対応付けてメモリ240に格納する機能を有する。
【0043】
レコメンド情報管理部280は、中央制御処理部210の管理下で、レコメンド情報記憶領域240jを参照し、曝露療法を受けた被治療者の反応情報及び評価情報等をもとに生成される当該被治療者に対して好適とされる療法等に関するレコメンド情報を生成する機能を有する。また、レコメンド情報管理部280は、生成したレコメンド情報をレコメンド情報記憶領域240jに被治療者の識別情報と対応付けてメモリ240に格納し、治療者用端末300側へ出力部230を介して送出する機能を有する。
【0044】
なお、本実施形態では、コンテンツ情報管理部250、反応情報管理部260、環境情報管理部270及びレコメンド情報管理部280が有する各機能を1台のコンテンツサーバ200に集約させて管理・制御しているが、これに限らず複数のサーバに機能を分散させて管理・制御させてもよいことは勿論である。
【0045】
また、本実施形態では、反応情報管理部260及び環境情報管理部270が有する機能をコンテンツサーバ200側に設けてあるが、治療者用端末300側にのみ設けて管理・制御するようにしてもよい。
【0046】
治療者用端末300は、制御処理部310、入力部320、出力部330、リード/ライト可能なメモリ340、カウンセリング部350、HMD360及び環境設定部370及び反応検出部380からなり、夫々が信号線390を介して接続されている(図3参照)。ここで、信号線390は、有線または無線のいずれかまたは併用でも構わないものとする。治療者用端末300は、例えばPC、タブレット型端末またはスマートフォンである。
【0047】
また、治療者用端末300は、曝露療法実施時、被治療者用端末400を管理・制御可能となるよう機能構成されている。
【0048】
さて、制御処理部310は、メモリ340に格納された所定のプログラム情報を参照して治療者用端末300の制御処理を司る機能を有する。また、制御処理部310は、被治療者用端末400若しくは入力部320からの緊急停止情報に基づき、または予め設定された閾値を超えた反応情報に基づき、被治療者用端末400側にて実施中の曝露療法の停止機能を有する。即ち、被治療者用端末400に提供されたコンテンツの視聴を中止する機能を有する。
【0049】
入力部320は、制御処理部310の管理下で、内設するキーボードからのキー入力若しくはタブレットからのペン入力または音声認識若しくは画像認識等による入力情報をメモリ340の所定の記憶領域に格納する機能を有する。また、入力部320は、通信ネットワーク100を介して外部から送出されてくる情報をメモリ340の所定の記憶領域に格納する機能を有する。
【0050】
出力部330は、制御処理部310の管理下で、各種情報を表示出力、印刷出力または音声出力する機能を有する。また、出力部330は、各種情報を通信ネットワーク100を介して外部へ送出する機能を有する。例えば提供されるコンテンツに付帯する音声情報を音声出力する。
【0051】
メモリ340は、各種作業を行うための作業領域340a及び制御処理部310が各種制御処理・管理をするために参照するプログラム情報を格納するプログラム情報記憶領域340bを有する。
【0052】
さらに、メモリ340は、以下に示す記憶領域を有する。
・治療者用端末300側にて行われる被治療者に対するカウンセリングにより生成されるカウンセリング情報及びカウンセリング情報を生成するためのカウンセリング情報生成プログムラ情報を格納するための端末カウンセリング情報記憶領域340c
・コンテンツサーバ200から送出されてくるコンテンツを格納するための提供コンテンツ情報記憶領域340d
・曝露療法実施時に検出した被治療者の反応を反応情報として格納するとともに、反応検出するための反応検出プログラム情報を格納する検出反応情報記憶領域340e
・コンテンツサーバ200側にて生成された環境設定情報並びに治療者用端末300側にてコンテンツに対して行う環境設定に関する情報及び環境設定するための環境設定プログラム情報を格納する環境設定情報記憶領域340f
・コンテンツサーバ200側にて生成されたレコメンド情報を格納するレコメンド情報記憶領域340g
【0053】
カウンセリング部350は、制御処理部310の管理下で、端末カウンセリング情報記憶領域340cを参照して、被治療者に関するカウンセリング情報を生成し、生成したカウンセリング情報を端末カウンセリング情報記憶領域340cに格納する機能を有する。また、カウンセリング部350は、生成したカウンセリング情報を出力部330を介して外部へ送出する機能を有する。
【0054】
HMD360は、制御処理部310の管理下で、着脱自在に被治療者に装着されてコンテンツサーバ200から提供されたコンテンツを被治療者にVR空間にて閲覧させる機能を有する。
【0055】
なお、本実施形態では、HMD360を治療者用端末300が有する機能の一部として一体的に設けてある。しかし、これに限定される訳ではなく、他に例えば、HMD360の利用時にのみ治療者用端末300と信号線390を介して着脱自在に任意に接続されるよう構成してもよい。また、治療者用端末300にHMD360を設けず、被治療者用端末400にのみHMDの機能を持たせるようにしてもよい。
【0056】
環境設定部370は、制御処理部310の管理下で、環境設定情報記憶領域340fを参照して、HMD360または後述するHMD450から被治療者に提供されるコンテンツに対して環境設定を行う機能を有する。そして、環境設定部370は、環境設定実施の有無及びその結果等の情報について、被治療者の識別情報と対応付けて環境設定情報記憶領域340fに格納する機能を有する。
【0057】
例えば、環境設定部370は、被治療者への曝露療法実施中に、提供されるコンテンツ内の背景、登場人物、人数及び登場人物同士や物との間合い(距離)並びに被治療者の身長、座高、目線の高さ及び音量等につき、被治療者にとって最適または好適となるよう環境を調整可能とするものである。そして、この調整結果(無調整も含む)の情報は、被治療者と対応付けて環境設定情報記憶領域340fに格納されることになる。
【0058】
なお、調整は、予め用意されたプルダウンメニューからの選択若しくは所望の数値を入力する、または生成系AIや被治療者の反応情報等によるデータからの推奨値を参照(無調整、補正、無補正、変更および無変更を含む)することにより行われるものとする。
【0059】
反応検出部380は、制御処理部310の管理下で、検出反応情報記憶領域340eの反応検出プログラム情報を参照して、曝露療法実施時に提供されるコンテンツに対する被治療者の反応を検出し、この検出した反応に関する情報を反応情報として被治療者の識別情報と対応付けて検出反応情報記憶領域340eに格納する機能を有する。また、反応検出部380は、出力部330を介して反応情報を外部へ送出する機能を有する。さらに、反応検出部380は、所定の条件下で、被治療者に提供されるコンテンツを閲覧緊急停止させる機能を有する。
【0060】
なお、反応検出部380は、検出した反応情報を評価した上で、評価結果の情報を反応情報に付加させて検出反応情報記憶領域340eに格納するとともに、出力部330を介して外部へ送出するよう機能構成されている。
【0061】
被治療者用端末400は、制御処理部410、入力部420、出力部430、リード/ライト可能なメモリ440、HMD450及び反応検出部460からなり、夫々が信号線470を介して接続されている(図4参照)。ここで、信号線470は、有線または無線のいずれかまたは併用でも構わないものとする。被治療者用端末400は、例えばPC、タブレット型端末またはスマートフォンである。
【0062】
また、被治療者用端末400は、曝露療法実施時は、治療者用端末300の管理・制御下におかれる。
【0063】
さて、制御処理部410は、メモリ440に格納された所定のプログラム情報を参照して被治療者用端末400の制御処理を司る機能を有する。また、制御処理部410は、治療者用端末300からの緊急停止情報を参照し、または反応検出部460からの予め設定された閾値を超えた反応情報を参照し、被治療者用端末400側にて実施中の曝露療法の停止機能を有する。即ち、被治療者に提供されるコンテンツの閲覧・視聴が中止される。
【0064】
入力部420は、制御処理部410の管理下で、内設するキーボードからのキー入力若しくはタブレットからのペン入力若しくはタッチ入力または音声認識若しくは画像認識等による入力情報をメモリ440の所定の記憶領域に格納する機能を有する。また、入力部420は、通信ネットワーク100を介して外部から送出されてくる情報をメモリ440の所定の記憶領域に格納する機能を有する。
【0065】
出力部430は、制御処理部410の管理下で、各種情報を表示出力、印刷出力または音声出力する機能を有するとともに、各種情報を通信ネットワーク100を介して外部へ送出する機能を有する。また、出力部430は、提供されるコンテンツに付帯する音声情報を任意に音声出力することを可能としている。
【0066】
メモリ440は、各種作業を行うための作業領域440a及び制御処理部410が各種制御処理・管理をするために参照するプログラム情報を格納するプログラム情報記憶領域440bを有する。
【0067】
さらに、メモリ440は、以下に示す記憶領域を有する。
・コンテンツサーバ200から送出されてくるコンテンツ及び治療者用端末300にて調整されたコンテンツを格納するための提供コンテンツ情報記憶領域440c
・曝露療法実施時に於ける被治療者の反応を検出し反応情報として格納するとともに、反応検出するための反応検出プログラム情報を格納する検出反応情報記憶領域440d
【0068】
HMD450は、制御処理部410の管理下で、映像出力及び音声出力する機能を有し、着脱自在に被治療者に装着されてコンテンツサーバ200から提供されたコンテンツを被治療者に仮想現実空間にて閲覧・視聴させる機能を有する。
【0069】
なお、本実施形態では、HMD450を被治療者用端末400が有する機能の一部として一体的に設けてある。しかし、これに限定される訳ではなく、他に例えば、HMD450そのものに被治療者用端末400が有する機能を搭載するよう機能構成してもよい。また、曝露治療実施時に出力部430を介して任意に出力される音声は、HMD450からのみ直接音声出力させるよう機能構成してもよい。
【0070】
反応検出部460は、制御処理部410の管理下で、検出反応情報記憶領域440dの反応検出プログラム情報を参照して、曝露療法実施時に提供されるコンテンツに対する被治療者の反応を検出し、この検出した反応に関する情報を反応情報として被治療者と対応付けて検出反応情報記憶領域440dに格納する機能を有する。また、反応検出部460は、出力部430を介して反応情報を外部へ送出する機能を有する。
【0071】
上記機能構成につき、曝露療法実施時に被治療者が視聴するコンテンツの一例について、図9及び図10を参照して説明する。
【0072】
コンテンツは、VR空間にて被治療者が列車に乗車するときの状況を想定したものである。被治療者が乗車することになる列車内外の環境について、例えば以下の項目をパラメータとして設定及び調整されるものである(図8の設定パラメータの欄参照)。設定及び調整は、予め用意されたプルダウンメニューからの選択若しくは所望する数値の入力または生成系AIや被治療者の反応情報等によるデータからの推奨値等により行われるものであるが、これに限定される訳ではない。
【0073】
・列車が走行する外部環境(地下、トンネル内、街中、山間部、海辺沿い、鉄橋等)
・列車の種別(普通、快速、急行、特急等)
・列車の色(青色、黄色、橙色、緑色等)
・乗降者数/乗車率(各駅平均±X人/Y%、X,Y:任意設定)
・乗車車両に於ける乗客の年齢比率(子供、大人、高齢者別)
・乗車車両に於ける乗客のビジネス用スーツ着用率(任意設定)
・乗車車両に於ける乗客同士の距離/人間距離(遠い、近い、中間、密接)
・乗車車両に於ける着座位置(右端、やや右、中央、やや左、左端)
なお、パラメータとして設定される項目は上記に限定される訳ではなく、上記以外の他の項目であってもよく、適宜変更可能である。
【0074】
他に例えば、VR空間にて被治療者が列車に乗車するときの状況を想定したコンテンツは、以下の通りカスタマイズしてパラメータとして設定することは勿論可能である。
・予め一人一人を独立して撮影し撮影画像をレイヤーとして分けることにより、夫々任意に重ね合わせ等による合成処理して調整する
・所望する人数に変更可能とする
・被治療者の視点の位置を不変とする、または変更できる
・音源の発生位置を変更可能とする。
・音源、音量をパラメータ調整可能とする
【0075】
また、閲覧されるコンテンツ中には、以下の機能を有するアイコン1000が表示される。
・被治療者名、日時、曝露療法実施開始からの経過時間及び列車走行状況を経過情報表示領域1000aに表示する機能
・被治療者及び治療者の目線の高さにつき目線調整領域1000bを介して調整する機能(C:被治療者用、Y:治療者用)
・音量調整領域1000cを介しての音量調整機能(C:被治療者用、Y:治療者用)
・数値化されたSUD情報をSUD表示領域1000dに表示する機能
・上記4項目につき表示される状態につき保存領域1000eを介して保存する機能
なお、表示されるアイコンは、上記機能に限定される訳ではなく、上記以外の他の機能であってもよく、適宜変更可能である。
【0076】
上記構成につき、その作用を説明する。
【0077】
本システム10にて被治療者に曝露療法を実施するには、適切なコンテンツを提供するにあたり、先ず、治療者用端末300側にてカウンセリング情報を生成すべく被治療者用端末400側への所定のカウンセリングを行う(図5のステップS110参照)。これは、治療者用端末300が被治療者用端末400から被治療者に関する基本的な情報及び主観的不安尺度表情報または不安階層表情報等をカウンセリングにより取得して、曝露療法実施に際しての好適なパラメータ設定を行い、これ等をカウンセリング情報として生成することになる。生成したカウンセリング情報は、治療者用端末300からコンテンツサーバ200へ送出される。
【0078】
カウンセリング情報を受信したコンテンツサーバ200は、コンテンツ情報管理部250にて被治療者にとって好適となるコンテンツを選出し、必要に応じてコンテンツを調整することになる(ステップS120)。そして、選出・調整したコンテンツは、治療者用端末300及び被治療者用端末400へ送出される。
【0079】
コンテンツを受信した被治療者用端末400では、HMD450を介して被治療者にコンテンツを閲覧させることにより、治療者用端末300の管理下で曝露療法を実施することになる(ステップS130)。
【0080】
曝露療法が開始されると(図6のステップS131参照)、適宜被治療者のコンテンツに対する反応状況に応じて、または反応状況に応じることなく一方的に、環境設定部370にてコンテンツの環境条件を調整することができる(ステップS132)。即ち、環境条件が調整された場合(ステップS132の「変更あり」)、被治療者は直ちに調整された環境下でコンテンツを視聴することになる(ステップS133)。環境条件の調整がされない場合は(ステップS132の「変更なし」)、従前のコンテンツを視聴し続けることになる(ステップS134)。
【0081】
環境条件の調整は、曝露療法の実施中(ステップS135の「続行する」)は、適宜環境設定部370にて行える。また、例えば目線の高さ及び音量については、コンテンツ中に表示されるアイコン1000を介して調整可能である。
【0082】
曝露療法実施中は、反応検出部380,460にて視聴するコンテンツに対する被治療者の反応が検出され反応情報が生成される。生成された反応情報は、コンテンツサーバ200へ送出されることになる(ステップS140)。
【0083】
コンテンツサーバ200は、レコメンド情報管理部280にて受信した反応情報等を参照して被治療者に好適となるレコメンド情報が生成されてカウンセリングを実施することになる。生成されたレコメンド情報及びカウンセリング情報は、次回の曝露療法に活用されるべく、コンテンツサーバ200から治療者用端末300に送出されることになる(ステップS150、S160)。
【0084】
而して次回、曝露療法を実施する場合(ステップS170の「継続する」)、治療者用端末300側では、受信したレコメンド情報等を参照して、被治療者用端末400側の被治療者に関するあらたなカウンセリング情報を生成することになる。
【0085】
上記実施形態によれば、治療者用端末300の管理下で被治療者の好適な環境下で曝露療法をリアルタイムでオンラインにて全て実施でき、且つ被治療者にとってきめ細かな調整された曝露療法を受けられるという優れた効果を奏するものである。
【0086】
また、上記実施形態によれば、被治療者側にとって、経済的、物理的及び精神的なハードルも下がり、継続的に曝露療法を容易に受けることが可能となり、実用的に有用なものである。
【0087】
さらに、上記実施形態によれば、極めてシンプルなシステム構成であるため、環境負荷も少なく、社会的にも有用なものである。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない限り種々の変形が可能なことは勿論である。
【0089】
例えば図11は、上記実施形態の変形例に於ける本システム10による曝露療法実施処理の全体の流れを示すものである。本変形例では、上記実施形態と同一部分および/または同一機能については、同一符号を付して当該箇所の説明は省略する。
【0090】
本変形例では、被治療者が曝露療法を受けるに当たって、治療の予約及び決済の処理を全てオンラインでリアルタイムにて行えるようにしたものである。即ち、被治療者用端末400から所望する治療者及び日時並びに決済方法を入力することにより、コンテンツサーバ200にて治療者用端末300との調整が行われ、予約処理が行われる(図11のステップS10参照)。
【0091】
曝露療法実施後は、コンテンツサーバ200側から送出されてくる決済指示情報に対し、被治療者用端末400にて決済処理を行えばよいものである(ステップS20またはステップS30)。
【0092】
本変形例によれば、上記実施形態の作用・効果に加え、予約及び決済の処理がオンラインでリアルタイムにて行えるので、物理的移動の負荷が解消され、精神的にも経済的にもさらなる優位な効果を期待できるものである。
【0093】
また、図12は、他の変形例に係る本システム全体の概略構成を示す図である。上述同様、上記実施形態及び変形例と同一部分および/または同一機能については、同一符号を付して当該箇所の説明は省略する。
【0094】
本変形例では、治療者用端末300及び被治療者用端末400の夫々が有する機能を統合して一つの端末(治療者用拡張端末302)としたものである。治療者用拡張端末302は、図3に示す治療者用端末300の機能構成に図4に示す被治療者用端末400のみが有する機能構成を付加した機能構成である。
【0095】
(第2の実施形態)
続いて本発明の第2の実施形態について、図7乃至図10並びに図13乃至図17を参照して説明する。前述第1の実施形態と同一部分、同一機能については、同一符号を付して一部説明を省略して説明する。
【0096】
本実施形態に係わる仮想現実を利用した曝露療法実施システム(以下「本システム」と称す)20は、通信ネットワーク100を介して仮想現実映像によるコンテンツ情報(以下「コンテンツ」と称す)を管理格納するVRコンテンツ管理機器(以下「コンテンツサーバ」と称す)500及び被治療者用端末600が接続されることにより構成されている(図13参照)。そして、コンテンツサーバ500は、被治療者用端末600から送出されてくる被治療者に関するカウンセリング情報等を参照して、被治療者に好適なコンテンツを提供するよう機能構成されている。また、本システム20は、被治療者に提供されるコンテンツにつき、コンテンツサーバ500及び被治療者用端末600にて環境設定可能となるよう機能構成されている。
【0097】
さて、コンテンツサーバ500は、VRコンテンツ情報調整機能を有するサーバコンピュータであり、中央制御処理部510、入力部520、出力部530、リード/ライト可能なメモリ540、コンテンツ情報管理部550、反応情報管理部560、環境情報管理部570及びレコメンド情報管理部580が夫々信号線590を介して接続されている(図14参照)。ここで、信号線590は、有線または無線のいずれかまたは併用でも構わないものとする。
【0098】
中央制御処理部510は、メモリ540に格納された所定のプログラム情報を参照して本システム20の全体の制御処理及びコンテンツサーバ500の制御処理を司る機能を有する。また、中央制御処理部510は、メモリ540のコンテンツ情報記憶領域540f他を参照し、通信ネットワーク100を介して所定のコンテンツを外部へ提供するよう機能する。
【0099】
入力部520は、中央制御処理部510の管理下で、通信ネットワーク100を介して外部から送出されてくる種々の情報を受信してメモリ540の所定の記憶領域に格納する機能を有する。例えば、被治療者用端末600から送出されてくる各種情報を受信してメモリ540の所定の記憶領域に格納する。また、入力部520は、内設するキーボード等からキー入力される各種情報等を同様にメモリ540の所定の記憶領域に格納する機能を有する。
【0100】
出力部530は、中央制御処理部510の管理下で、各種情報を出力し外部へ送出等する出力・送出機能を有する。例えば、出力部530は、被治療者用端末600に対し、コンテンツ他各種情報を送出するものである。
【0101】
メモリ540は、各種作業を行うための作業領域540a及び中央制御処理部510が基本的な制御処理・管理をするために参照するプログラム情報を格納する記憶領域であるプログラム情報記憶領域540bを有する。
【0102】
さらに、メモリ540は、以下に示す記憶領域を有する。
・被治療者用端末600の識別情報を含む当該端末600に関する情報を格納するVRコンテンツ情報端末機器情報記憶領域540c
・被治療者用端末600等から送出されてくる被治療者に関する識別情報等を格納する個人識別情報記憶領域540d
・被治療者に対して行ったカウンセリング及びその結果等に関するカウンセリング情報(被治療者に関する基本的なカルテ情報(図7参照)、曝露療法実施に際しての提供コンテンツに係る好適な設定パラメータ情報及び主観的不安尺度表情報または不安階層表情報を含み、以下「カウンセリング情報」と称す)を格納するカウンセリング情報記憶領域540e
・曝露療法を被治療者に実施するに際し被治療者用端末600に提供する各種コンテンツを格納するコンテンツ情報記憶領域540f
・被治療者への曝露療法実施時にコンテンツに対して行うまたは行った調整(無調整、補正、無補正、変更及び無変更を含む)に係る一切の情報、及び当該調整するためのコンテンツ調整プログラム情報を格納するコンテンツ調整情報等記憶領域540g
・曝露療法実施時に於ける被治療者の反応に関する情報(以下「反応情報」と称し、被治療者による主観的不安尺度表情報または不安階層表情報(以下「SUD情報」と称す)並びに発汗量、心拍数及び瞳孔反応等の生体反応情報を含む)及びこの反応情報に対する評価結果等の情報(以下「評価情報」と称す)並びに評価情報を生成するための反応評価情報生成プログラム情報を格納する反応情報記憶領域540h
・被治療者への曝露療法実施時にコンテンツに対して行うまたは行った設定環境の調整(無調整、補正、無補正、変更及び無変更を含み、以下単に「調整」と称す)に係る一切の情報(以下「環境設定情報」と称す)、及び当該調整するための環境設定プログラム情報を格納する環境設定情報記憶領域540i
・被治療者の反応情報や環境設定情報等を参照して生成される当該被治療者に対して今後(即ち次回以後)好適とされる療法等に関するレコメンド情報(今後の曝露療法実施に際しての提供コンテンツに係る好適な設定パラメータ情報を含む)及び当該レコメンド情報を生成するためのレコメンド情報生成プログラム情報を格納するレコメンド情報記憶領域540j
【0103】
コンテンツ情報管理部550は、中央制御処理部510の管理下で、メモリ540のVRコンテンツ情報端末機器情報記憶領域540c、個人識別情報記憶領域540d、カウンセリング情報記憶領域540e及びコンテンツ情報記憶領域540fを参照し、曝露療法を実施するに際し被治療者に好適なコンテンツを選出・調整し、この選出・調整したコンテンツを出力部530を介して被治療者用端末600へ提供するよう機能構成されている。また、コンテンツ情報管理部550は、提供したコンテンツにつき被治療者の識別情報と対応付けてメモリ540に格納する機能を有する。
【0104】
即ち、コンテンツ情報管理部550は、曝露療法の対象となる被治療者の例えば広場恐怖症に於ける不安度に応じて提供するコンテンツにつき、事前に環境設定を行う。具体的には、コンテンツ情報管理部550は、曝露療法の対象となる被治療者に関するカウンセリング情報をもとに好適なコンテンツを提供するに際し、被治療者の身体的特徴も考慮し、当該コンテンツ内の例えば背景、登場人物、人数及び登場人物同士や物との間合い(距離)等を調整した上で、被治療者用端末600へ提供するものである。
【0105】
なお、調整は、例えば設定パラメータに基づき、予め用意された調整用テーブルを参照して所定の規則に従ってコンテンツに対して行うよう機能構成されている。また、予め用意されたプルダウンメニューからの選択若しくは所望の数値入力、または、生成系AIや被治療者の反応情報等によるデータ、特にビッグデータからの推奨値に基づき、不安症(不安症群及び不安障害群、広場恐怖症等)に於ける不安度に応じて背景、登場人物、人数及び登場人物同士や物との距離等を好適となるよう調整するよう機能構成してもよい。
【0106】
反応情報管理部560は、中央制御処理部510の管理下で、反応情報記憶領域540hを参照し、被治療者用端末600から送出されてくるコンテンツに対する被治療者の反応情報を例えば予め用意されたテーブルを参照して所定の規則に従って評価等する機能を有する。また、反応情報管理部560は、評価結果等の情報を被治療者の反応情報とともに、評価情報として反応情報記憶領域540hに被治療者の識別情報と対応付けてメモリ540に格納する機能を有する。
【0107】
環境情報管理部570は、中央制御処理部510の管理下で、環境設定情報記憶領域540iを参照し、被治療者に提供されるコンテンツの設定環境の調整を行う機能を有する。この調整機能は、被治療者への曝露療法実施中に被治療者から検出される反応情報を参照して例えば予め用意されたテーブルを参照して所定の規則に従って随時行うことを可能としたものである。しかし、これに限定される訳ではない。また、環境情報管理部570は、コンテンツに対して行った調整に関する情報は、被治療者用端末600にてコンテンツに対して行った調整も含めて環境設定情報記憶領域540iに被治療者の識別情報と対応付けてメモリ540に格納する機能を有する。
【0108】
レコメンド情報管理部580は、中央制御処理部510の管理下で、レコメンド情報記憶領域540jを参照し、曝露療法を受けた被治療者の反応情報及び評価情報等をもとに生成される当該被治療者に対して好適とされる療法等に関するレコメンド情報を生成する機能を有する。また、レコメンド情報管理部580は、生成したレコメンド情報をレコメンド情報記憶領域540jに被治療者の識別情報と対応付けてメモリ540に格納し、被治療者用端末600側へ出力部530を介して送出する機能を有する。
【0109】
なお、本実施形態では、コンテンツ情報管理部550、反応情報管理部560、環境情報管理部570及びレコメンド情報管理部580が有する各機能を1台のコンテンツサーバ500に集約させて管理・制御しているが、これに限らず複数のサーバに機能を分散させて管理・制御させてもよいことは勿論である。
【0110】
また、本実施形態では、反応情報管理部560及び環境情報管理部570が有する機能をコンテンツサーバ500側に設けてあるが、被治療者用端末600側に設けて管理・制御するようにしてもよい。また、両者にて管理・制御するようにしてもよい。
【0111】
被治療者用端末600は、制御処理部610、入力部620、出力部630、リード/ライト可能なメモリ640、カウンセリング部650、HMD660、環境設定部670及び反応検出部680からなり、夫々が信号線690を介して接続されている(図15参照)。ここで、信号線690は、有線または無線のいずれかまたは併用でも構わないものとする。被治療者用端末600は、例えばPC、タブレット型端末またはスマートフォンである。
【0112】
また、被治療者用端末600は、曝露療法実施時は、コンテンツサーバ500の管理・制御下におかれるよう選択設定可能としている。
【0113】
さて、制御処理部610は、メモリ640に格納された所定のプログラム情報を参照して被治療者用端末600の制御処理を司る機能を有する。また、制御処理部610は、コンテンツサーバ500若しくは反応検出部680から送出されてくる緊急停止情報を参照し、または反応検出部680からの予め設定された閾値を超えた反応情報を参照し、被治療者用端末600側にて実施中の曝露療法の停止機能を有する。即ち、被治療者に提供されるコンテンツの閲覧・視聴を中止される機能を有する。
【0114】
入力部620は、制御処理部610の管理下で、内設するキーボードからのキー入力、タブレットからのペン入力若しくはタッチ入力または音声認識若しくは画像認識等による入力情報をメモリ640の所定の記憶領域に格納する機能を有する。また、入力部620は、通信ネットワーク100を介して外部から送出されてくる情報をメモリ640の所定の記憶領域に格納する機能を有する。
【0115】
出力部630は、制御処理部410の管理下で、各種情報を表示出力、印刷出力、音声出力または振動所謂ハブティクス(触覚技術)による出力する機能を有するとともに、各種情報を通信ネットワーク100を介して外部へ送出する機能を有する。また、出力部630は、提供されるコンテンツに付帯する音声情報を任意に音声出力することを可能としている。
【0116】
メモリ640は、各種作業を行うための作業領域640a及び制御処理部610が各種制御処理・管理をするために参照するプログラム情報を格納するプログラム情報記憶領域640bを有する。
【0117】
さらに、メモリ640は、以下に示す記憶領域を有する。
・コンテンツサーバ500または被治療者用端末600側にて行われる被治療者に対するカウンセリングにより生成されるカウンセリング情報及びカウンセリング情報を生成するためのカウンセリング情報生成プログムラ情報を格納するためのカウンセリング情報記憶領域640c
・コンテンツサーバ500から送出されてくるコンテンツ(調整されたコンテンツを含む)を格納するための提供コンテンツ情報記憶領域640d
・曝露療法実施時に検出した被治療者の反応を反応情報として格納するとともに、反応検出するための反応検出プログラム情報を格納する検出反応情報記憶領域640e
・コンテンツサーバ500側にて生成された環境設定情報並びに被治療者用端末600側にてコンテンツに対して行う環境設定に関する情報及び環境設定するための環境設定プログラム情報を格納する環境設定情報記憶領域640f
・コンテンツサーバ500側にて生成されたレコメンド情報を格納するレコメンド情報記憶領域640g
【0118】
カウンセリング部650は、制御処理部610の管理下で、カウンセリング情報記憶領域640cを参照して、被治療者に関するカウンセリング情報を生成し、生成したカウンセリング情報をカウンセリング情報記憶領域640cに格納する機能を有する。また、カウンセリング部650は、生成したカウンセリング情報を出力部630を介して外部へ送出する機能を有する。
【0119】
HMD660は、制御処理部610の管理下で、映像出力及び音声出力する機能を有し、着脱自在に被治療者に装着されてコンテンツサーバ500から提供されるコンテンツを被治療者に仮想現実空間にて閲覧・視聴させる機能を有する。
【0120】
なお、本実施形態では、HMD660を被治療者用端末600が有する機能の一部として着脱自在に一体的に設けてある。しかし、これに限定される訳ではなく、他に例えば、HMD660そのものに被治療者用端末600が有する機能を搭載するよう機能構成してもよい。また、曝露治療実施時に出力部630を介して任意に出力される音声は、HMD660からのみ直接音声出力させるよう機能構成してもよい。
【0121】
環境設定部670は、制御処理部610の管理下で、環境設定情報記憶領域640fを参照して、HMD660から被治療者に提供されるコンテンツに対して環境設定を行う機能を有する。そして、環境設定部670は、環境設定実施の有無及びその結果等の情報について、被治療者の識別情報と対応付けて環境設定情報記憶領域640fに格納する機能を有する。また、当該情報をコンテンツサーバ500側に送出する機能を有する。
【0122】
例えば、環境設定部670は、被治療者への曝露療法実施中に、提供されるコンテンツ内の背景、登場人物、人数及び登場人物同士や物との間合い(距離)並びに被治療者の身長、座高、目線の高さ及び音量等につき、被治療者にとって最適または好適となるよう環境を調整可能とするものである。そして、この調整結果(無調整も含む)の情報は、被治療者と対応付けて環境設定情報記憶領域640fに格納される、また当該情報を外部、例えばコンテンツサーバ500側に送出すことになる。
【0123】
なお、調整は、予め用意されたプルダウンメニューからの選択若しくは所望の数値を入力する、または生成系AIや被治療者の反応情報等によるデータ、特にビッグデータからの推奨値を参照(無調整、補正、無補正、変更および無変更を含む)することにより行われるものとする。
【0124】
反応検出部680は、制御処理部410の管理下で、検出反応情報記憶領域640eの反応検出プログラム情報を参照して、曝露療法実施時に提供されるコンテンツに対する被治療者の反応を検出し、この検出した反応に関する情報を反応情報として被治療者と対応付けて検出反応情報記憶領域640eに格納する機能を有する。また、反応検出部680は、出力部630を介して反応情報を外部、例えばコンテンツサーバ500へ送出する機能を有する。
【0125】
上記機能構成につき、曝露療法実施時に被治療者が視聴するコンテンツの一例について、前述の第1の実施形態に於いて用いた図9及び図10を参照して説明する。
【0126】
コンテンツは、VR空間にて被治療者が列車に乗車するときの状況を想定したものである。被治療者が乗車することになる列車内外の環境について、例えば以下の項目をパラメータとして設定及び調整されるものである(図8の設定パラメータの欄参照)。設定及び調整は、予め用意されたプルダウンメニューからの選択若しくは所望する数値の入力または生成系AIや被治療者の反応情報等によるデータからの推奨値等により行われるものであるが、これに限定される訳ではない。
【0127】
・列車が走行する外部環境(地下、トンネル内、街中、山間部、海辺沿い、鉄橋等)
・列車の種別(普通、快速、急行、特急等)
・列車の色(青色、黄色、橙色、緑色等)
・乗降者数/乗車率(各駅平均±X人/Y%、X,Y:任意設定)
・乗車車両に於ける乗客の年齢比率(子供、大人、高齢者別)
・乗車車両に於ける乗客のビジネス用スーツ着用率(任意設定)
・乗車車両に於ける乗客同士の距離/人間距離(遠い、近い、中間、密接)
・乗車車両に於ける着座位置(右端、やや右、中央、やや左、左端)
なお、パラメータとして設定される項目は上記に限定される訳ではなく、上記以外の他の項目であってもよく、適宜変更可能である。
【0128】
他に例えば、VR空間にて被治療者が列車に乗車するときの状況を想定したコンテンツは、以下の通りカスタマイズしてパラメータとして設定することは勿論可能である。
・予め一人一人を独立して撮影し撮影画像をレイヤーとして分けることにより、夫々任意に重ね合わせ等による合成処理して調整する
・所望する人数に変更可能とする
・被治療者の視点の位置を不変とする、または変更できる
・音源の発生位置を変更可能とする。
・音源、音量をパラメータ調整可能とする
【0129】
また、閲覧されるコンテンツ中には、以下の機能を有するアイコン1000が表示される。
・被治療者名、日時、曝露療法実施開始からの経過時間及び列車走行状況を経過情報表示領域1000aに表示する機能
・被治療者及び治療者の目線の高さにつき目線調整領域1000bを介して調整する機能(C:被治療者用、Y:治療者用)
・音量調整領域1000cを介しての音量調整機能(C:被治療者用、Y:治療者用)
・数値化されたSUD情報をSUD表示領域1000dに表示する機能
・上記4項目につき表示される状態につき保存領域1000eを介して保存する機能
なお、表示されるアイコンは、上記機能に限定される訳ではなく、上記以外の他の機能であってもよく、適宜変更可能である。
【0130】
上記構成につき、その作用を説明する。
【0131】
本システム20にて被治療者に曝露療法を実施するには、適切なコンテンツを提供するにあたり、先ず、被治療者用端末600側にてカウンセリング情報を生成すべく被治療者への所定のカウンセリングを行う(図16のステップS210参照)。これは、被治療者用端末600から被治療者に関する基本的な情報及び主観的不安尺度表情報または不安階層表情報等をカウンセリングにより取得して、曝露療法実施に際しての好適なパラメータ設定を行い、これ等をカウンセリング情報として生成することになる。生成したカウンセリング情報は、被治療者用端末600からコンテンツサーバ500へ送出される。
【0132】
カウンセリング情報を受信したコンテンツサーバ500は、コンテンツ情報管理部550にて被治療者にとって好適となるコンテンツを選出し、必要に応じてコンテンツを調整することになる(ステップS220)。そして、選出・調整したコンテンツは、被治療者用端末600へ送出される。
【0133】
コンテンツを受信した被治療者用端末600では、HMD660を介して被治療者にコンテンツを閲覧させることにより、所望する設定によりコンテンツサーバ500の管理下で曝露療法を実施することになる(ステップS230)。
【0134】
曝露療法が開始されると(図17のステップS231参照)、適宜被治療者のコンテンツに対する反応状況に応じて、または反応状況に応じることなく一方的に、環境設定部670にてコンテンツの環境条件を調整することができる(ステップS232)。即ち、環境条件が調整された場合(ステップS232の「変更あり」)、被治療者は直ちに調整された環境下でコンテンツを視聴することになる(ステップS233)。環境条件の調整がされない場合は(ステップS232の「変更なし」)、従前のコンテンツを視聴し続けることになる(ステップS234)。
【0135】
環境条件の調整は、曝露療法の実施中(ステップS235の「続行する」)は、適宜環境設定部670にて行える。また、例えば目線の高さ及び音量については、コンテンツ中に表示されるアイコン1000を介して調整可能である。
【0136】
曝露療法実施中は、反応検出部680にて視聴するコンテンツに対する被治療者の反応が検出され反応情報が生成される。生成された反応情報は、コンテンツサーバ500へ送出されることになる(ステップS240)。
【0137】
コンテンツサーバ500は、レコメンド情報管理部580にて受信した反応情報等を参照して被治療者に好適となるレコメンド情報が生成されてカウンセリングを実施することになる。生成されたレコメンド情報及びカウンセリング情報は、次回の曝露療法に活用されるべく、コンテンツサーバ500から被治療者用端末600に送出されることになる(ステップS250、S260)。
【0138】
而して次回、曝露療法を実施する場合(ステップS270の「継続する」)、被治療者用端末600側では、受信したレコメンド情報等を参照して、被治療者用端末600側の被治療者に関するあらたなカウンセリング情報を生成することになる。
【0139】
上記実施形態によれば、被治療者の好適な環境下で曝露療法をリアルタイムでオンラインにて全て実施でき、且つ被治療者にとってきめ細かな調整された曝露療法を受けられるという優れた効果を奏するものである。
【0140】
また、上記実施形態によれば、被治療者側にとっては被治療者用端末600のみ用意すれば実現化できるので、経済的、物理的及び精神的なハードルも下がり、継続的に曝露療法を時と場所を選ばず被治療者の都合に合わせて容易に受けることが可能となり、実用的に有用なものである。
【0141】
さらに、上記実施形態によれば、極めてシンプルなシステム構成であるため、環境負荷も少なく、社会的にも有用なものである。
【0142】
本発明は上記各実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない限り種々の変形が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0143】
10、20 …VR曝露療法実施システム
100 …通信ネットワーク
200、500 …VRコンテンツ管理機器(コンテンツサーバ)
240e、540e …カウンセリング情報記憶領域
240f、540f …コンテンツ報記憶領域
240g、540g …コンテンツ調整情報記憶領域
240h、540h …反応情報記憶領域
240i、540i …環境設定情報記憶領域
240j、540j …レコメンド情報記憶領域
250、550 …コンテンツ情報管理部
260、560 …反応情報管理部
270、570 …環境情報管理部
280、580 …レコメンド情報管理部
300 …治療者用端末
302 …治療者用拡張端末
340c …端末カウンセリング情報記憶領域
340d …提供コンテンツ情報記憶領域
340e …検出反応情報記憶領域
340g …レコメンド情報記憶領域
350、650 …カウンセリング部
360 …ヘッドマウンティッドディスプレイ(HMD)
370、670 …環境設定部
380、680 …反応検出部
400、600 …被治療者用端末
440c、640c …提供コンテンツ情報記憶領域
440d、640d …検出反応情報記憶領域
450、650 …HMD
460 …反応検出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17