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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015007
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】電熱変換装置及び蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20220101AFI20250123BHJP
   H05B 3/40 20060101ALI20250123BHJP
   F28F 5/02 20060101ALI20250123BHJP
   F28F 13/12 20060101ALI20250123BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F24H1/10 M
H05B3/40 A
F28F5/02
F28F13/12 B
F28D20/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118054
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】今盛 聡
(72)【発明者】
【氏名】三浦 友史
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 徹
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP11
3K092QA01
3K092QB24
3K092QB80
3K092TT34
3K092TT40
3K092VV04
3K092VV22
(57)【要約】
【課題】熱媒体へ伝達する熱エネルギーを良好に確保しつつ、設備の大型化を抑制できるようにすること。
【解決手段】電熱変換装置(1)は、内部に熱媒体(H)が流れる筒状の流路形成部となる外側回転部(21)と、外側回転部内にて該外側回転部の延出方向に沿って延出する筒状に配置される発熱部(10)と、外側回転部の延出方向に沿う中心軸(C)回りに回転して熱媒体を攪拌する攪拌部(20)とを備えている。発熱部は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して熱媒体を加熱する。中心軸に交差する断面にて、外側回転部内における発熱部と攪拌部との間に熱媒体が流れる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱媒体が流れる筒状の流路形成部と、
前記流路形成部内にて該流路形成部の延出方向に沿って延出する筒状に配置され、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して前記熱媒体を加熱する発熱部と、
前記流路形成部の延出方向に沿う中心軸回りに回転して前記熱媒体を攪拌する攪拌部と、を備えた電熱変換装置であって、
前記中心軸に交差する断面にて、前記流路形成部内における前記発熱部と前記攪拌部との間に前記熱媒体が流れることを特徴とする電熱変換装置。
【請求項2】
前記攪拌部にて、前記熱媒体が接する面は滑らかな面によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の電熱変換装置。
【請求項3】
前記攪拌部は、前記発熱部が内側に配置される筒状に形成され、前記中心軸回りに回転する外側回転部を備え、
前記外側回転部は、前記流路形成部によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の電熱変換装置。
【請求項4】
前記攪拌部は、前記発熱部の内側にて前記流路形成部の延出方向に沿って延出し、前記中心軸回りに回転する中央回転部を更に備えていることを特徴とする請求項3に記載の電熱変換装置。
【請求項5】
前記攪拌部は、前記発熱部の内側にて前記流路形成部の延出方向に沿って延出し、前記中心軸回りに回転する中央回転部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電熱変換装置。
【請求項6】
前記流路形成部により形成される流路は、前記中心軸に交差する断面の面積が前記熱媒体の流れ方向にて上流側に比べて下流側の方が小さく形成されることを特徴とする請求項1に記載の電熱変換装置。
【請求項7】
前記請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電熱変換装置と、
前記熱媒体を貯留して該熱媒体を前記電熱変換装置に供給する低温蓄熱槽と、
前記電熱変換装置にて加熱された前記熱媒体を貯留する高温蓄熱槽と、
前記高温蓄熱槽から前記低温蓄熱槽に供給される前記熱媒体と所定の作動流体との間で熱交換する熱交換器と、を備えていることを特徴とする蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体を加熱する電熱変換装置及び蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発熱部材にて発生した熱を熱媒体に伝達する発熱装置を開示している。特許文献1は、発熱部材の内部に通路が形成され、この通路に入側配管及び出側配管を介して蓄熱装置を接続している。そして、発熱部材の通路、入側配管、出側配管、及び蓄熱装置が一連の経路を形成して熱媒体を流通及び循環しており、熱エネルギーを回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6572905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱媒体は、組成によっては温度が高すぎると分解されるので、分解温度以上になることを局所的であっても回避する設計が要求される。特許文献1は、発熱部材に形成される細い通路に熱媒体を流通させており、熱媒体へ伝達する熱量を増大しようとすると、発熱部材が熱媒体の分解温度より高くなる、という問題がある。一方、発熱部材の温度を下げると、発熱装置から熱媒体へ伝達する熱量が減少し、該熱量を十分に確保するには発熱装置を複数台として装置が大掛かりになる、という問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、熱媒体へ伝達する熱エネルギーを良好に確保しつつ、設備の大型化を抑制することができる電熱変換装置及び蓄熱システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における一態様の電熱変換装置は、内部に熱媒体が流れる筒状の流路形成部と、前記流路形成部内にて該流路形成部の延出方向に沿って延出する筒状に配置され、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して前記熱媒体を加熱する発熱部と、前記流路形成部の延出方向に沿う中心軸回りに回転して前記熱媒体を攪拌する攪拌部と、を備えた電熱変換装置であって、前記中心軸に交差する断面にて、前記流路形成部内における前記発熱部と前記攪拌部との間に前記熱媒体が流れることを特徴とする。
【0007】
本発明における一態様の蓄熱システムは、前記電熱変換装置と、前記熱媒体を貯留して該熱媒体を前記電熱変換装置に供給する低温蓄熱槽と、前記電熱変換装置にて加熱された前記熱媒体を貯留する高温蓄熱槽と、前記高温蓄熱槽から前記低温蓄熱槽に供給される前記熱媒体と所定の作動流体との間で熱交換する熱交換器と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発熱部と攪拌部との間で筒状となる流路内の熱媒体を攪拌部によって螺旋状に攪拌しながら発熱部の熱を熱媒体に伝達することができる。これにより、熱媒体が局所的に高温になることを回避しつつ、熱媒体へ伝達する熱量を良好に確保できる。よって、発熱装置を複数台設置する必要をなくすことができ、大掛かりな設備となることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る電熱変換装置を模式的に表した構成図である。
図2】実施の形態に係る電熱変換装置の概略断面図である。
図3】実施の形態に係る蓄熱システムの説明図である。
図4】変形例に係る電熱変換装置の図1と同様の構成図である。
図5図4のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る電熱変換装置について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。
【0011】
図1は、実施の形態に係る電熱変換装置を模式的に表した構成図である。図2は、実施の形態に係る電熱変換装置の概略断面図である。図1及び図2に示すように、電熱変換装置1は、発熱部10と、攪拌部20とを備え、中心軸Cに沿う方向に延出した形状を有している。なお、図2は、中心軸Cに直交(交差)する断面を表した図である。電熱変換装置1は、熱媒体Hを加熱する装置であり、熱媒体Hは、例えば硝酸塩を用いることができる。但し、熱媒体Hは、電熱変換装置1を用いるシステム等の仕様に応じ、比熱、粘度、融点、分解温度、コスト等を考慮して適切に選択でき、上記の硝酸塩以外には高耐熱性の油を用いることが例示できる。
【0012】
発熱部10は、丸軸状の複数の抵抗ヒータ11を円筒状に並べて配置することで構成され、該円筒の中心軸位置は上述の中心軸Cと同じ位置とされる。よって、発熱部10においても、中心軸Cの延出方向に沿って延出している。
【0013】
抵抗ヒータ11は、電力供給によって電流が流れることでジュール熱を発生させ、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して熱媒体Hを加熱する。図示していないが、抵抗ヒータ11の電圧仕様によっては電力供給系統と抵抗ヒータ11との間に変圧器を接続させたり、制御のためにスイッチを接続させたりしてもよい。
【0014】
攪拌部20は、内側に発熱部10が配置される筒状の外側回転部21と、外側回転部21及び発熱部10の内側に配置される中央回転部22とを備えている。
【0015】
外側回転部21は円筒状に設けられ、該円筒の中心軸位置は上述の中心軸Cと同じ位置とされる。また、中央回転部22は円柱状に設けられ、該円柱の中心軸位置は上述の中心軸Cと同じ位置とされる。よって、外側回転部21及び中央回転部22は、発熱部10及び電熱変換装置1と同心上に設けられ、中心軸Cの延出方向に沿って延出している。言い換えると、外側回転部21の延出方向に沿って中心軸C、発熱部10及び中央回転部22が延出する位置関係となる。
【0016】
外側回転部21は、内部に熱媒体Hが流れる流路Fを形成する流路形成部として機能し、言い換えると、外側回転部21が流路形成部によって形成される。外側回転部21の内部において、発熱部10と外側回転部21の内周面との間に熱媒体Hが流れ、発熱部10と中央回転部22の外周面との間にも熱媒体Hが流れる。
【0017】
外側回転部21は、本実施の形態では、図1中右側に設けられる熱媒体Hの入口部21aと、図1中左側に設けられる熱媒体Hの出口部21bとを備えている。よって、外側回転部21の内部では、図1中右側から左側に向かって熱媒体Hが流れ、右側が熱媒体Hの流れ方向上流側、左側が熱媒体Hの流れ方向下流側となる。
【0018】
入口部21aには、低温の熱媒体Hの供給元となる低温蓄熱槽31が接続され、出口部21bには、加熱されて高温となった熱媒体Hの供給先(送出先)となる高温蓄熱槽32が接続される。なお、低温蓄熱槽31及び高温蓄熱槽32を含む蓄熱システムについては、後述する。
【0019】
外側回転部21及び中央回転部22は、回転機構25、26を介して中心軸C回りに回転可能に設けられている。詳細な図示説明は省略するが、各回転機構25、26は、外部電源からの電力を得て駆動するモータ等の電動機と、電動機の出力によって各回転部21、22を回転させるギヤ構造やプーリ構造からなる回転力伝達機構とを備えた構成が例示できる。
【0020】
攪拌部20は、外側回転部21及び中央回転部22の回転によって、熱媒体Hに対し中心軸C回りに回転する方向の力を加え、流路F内の熱媒体Hを攪拌する。攪拌部20にて熱媒体Hが接する面となる外側回転部21の内周面及び中央回転部22の外周面は、滑らかな面によって形成される。かかる滑らかな面が熱媒体Hと接するので、それらの間の摩擦を介して熱媒体Hが中心軸Cを中心とする回転方向に近付く方向に流動して攪拌される。
【0021】
ここで、「滑らかな面」とは、円筒面または円周面に沿った鏡面状となる面の他、該鏡面のように形成することを意図して製造しつつ加工精度や公差等によって若干の表面粗さを有する面も含む意味である。よって、外側回転部21の内周面及び中央回転部22の外周面においては、熱媒体Hを回転方向に流動させる力を増大することを意図した溝や窪み等の凹凸形状が非形成となる。
【0022】
続いて、電熱変換装置1による熱媒体Hの加熱方法について説明する。電熱変換装置1においては、外側回転部21の入口部21aから流路F内に熱媒体Hが供給される。該供給によって流路F内に熱媒体Hが流れ込むと、熱媒体Hが図1の右側から左側に向かって中心軸C方向に流れつつ、外側回転部21及び中央回転部22の回転によって、熱媒体Hが中心軸C回りに回転する方向の力を受ける。これにより、熱媒体Hが螺旋状に流れて攪拌されながら発熱部10の熱が熱媒体Hに伝達されて加熱される。
【0023】
本実施の形態では、上述のように熱媒体Hを攪拌することで、外側回転部21内で熱媒体Hが流れる距離を長くでき、発熱部10との間の熱伝達効率を高めて熱媒体Hへ伝達する熱量を増やすことができる。これにより、電熱変換装置1の1台あたりの熱媒体Hに伝達する熱量を良好に確保することができる。
【0024】
しかも、外側回転部21内の流路F全体にて熱媒体Hを攪拌でき、熱媒体Hが局所的に高温になることを防止でき、熱媒体Hの分解温度を超えることを回避することができる。言い換えると、熱媒体Hが分解温度を超えない条件下であっても、電熱変換装置1の1台あたりの熱媒体Hに伝達する熱量を良好に確保できる。これにより、電熱変換装置1の設置台数が増えることを回避でき、設備の大型化を抑制することができる。
【0025】
また、外側回転部21内の流路Fにおいては、円筒状となる発熱部10の外側と内側とで二重の筒状となる空間により形成される。よって、発熱部10の外側では外側回転部21の回転によって熱媒体Hが攪拌され、発熱部10の内側では中央回転部22の回転によって熱媒体Hが攪拌される。このように、流路Fを断面視した状態で、流路Fの外周寄りとなる外側回転部21と、中心軸C寄りとなる中央回転部22とで熱媒体Hを満遍なく攪拌することができる。これによっても、発熱部10の熱を熱媒体Hに効率良く伝達して熱媒体Hへ伝達する熱量を良好に確保でき、且つ、流路Fの何れの領域においても熱媒体Hが局所的に高温になることを回避することができる。
【0026】
ここで、熱媒体Hを攪拌するための回転機構25、26へ供給するエネルギー(電力)は、発熱部10へ供給するエネルギー(電力)と比べると、相当小さくなる。なお、熱媒体Hを攪拌させるためのエネルギーは、動力を得る回転機構25、26にて機械損に相当し、熱となって熱媒体Hに移動する。そのため、回転機構25、26に供給するエネルギーは電熱変換装置1の損失とはならずに回収することができる。
【0027】
本実施の形態では、外側回転部21の内周面及び中央回転部22の外周面が滑らかな面によって形成されるので、各回転部21、22の回転動作抵抗を小さく維持でき、回転機構25、26へ供給するエネルギーも小さく維持することができる。これにより、回転機構25、26でのエネルギー損失を抑えて消費電力を少なくすることができ、電熱変換装置1全体として熱媒体Hの加熱に要する消費電力も少なくすることができる。
【0028】
次いで、上記電熱変換装置1を用いた蓄熱システム50について説明する。図3は、実施の形態に係る蓄熱システムの説明図である。蓄熱システム50は、上述した電熱変換装置1、低温蓄熱槽31及び高温蓄熱槽32を備えた蓄放熱系30を有している。更に、蓄熱システム50は、蒸気から動力を発生する蒸気タービン(動力発生装置)52と、蒸気を凝縮して復水とする復水器(凝縮装置)53とを備えている。ここで、蓄熱システム50においては、蒸気及び復水(水)が作動流体とされる。
【0029】
蓄放熱系30は、低温蓄熱槽31及び高温蓄熱槽32にて、蓄熱材となる熱媒体Hを貯留して用いている。高温蓄熱槽32には低温蓄熱槽31より高温の熱媒体Hが収容される。蓄放熱系30は、高温蓄熱槽32から低温蓄熱槽31に熱媒体Hを供給する放熱用配管34及びポンプ35と、低温蓄熱槽31から高温蓄熱槽32に熱媒体Hを供給する蓄熱用配管36及びポンプ37とを備えている。
【0030】
更に、蓄放熱系30は、放熱用配管34に設けられる熱交換器38を備えている。熱交換器38は、高温蓄熱槽32から低温蓄熱槽31に供給される間に通過する熱媒体Hと、復水器53から配管56を経て通過する復水とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、復水が加熱されて蒸気に相変化され、熱媒体Hが放熱される。熱交換器38により生成された蒸気は、配管55を経て蒸気タービン52に供給される。
【0031】
蓄熱用配管36には電熱変換装置1が設けられ、蓄熱用配管36を介して低温蓄熱槽31から熱媒体Hが電熱変換装置1に供給される。電熱変換装置1は、低温蓄熱槽31から高温蓄熱槽32に供給される間に通過する熱媒体Hを加熱する。電熱変換装置1は、所定の電力網Eから電力供給され、該電力網Eは、蓄熱システム50の外部の商用電源となる電力系統とする他、蓄熱システム50を含む同一のプラント内の電源系統とすることが例示できる。
【0032】
蒸気タービン52は、配管55を介して熱交換器38にて生成した蒸気が供給される。蒸気タービン52は、蒸気の熱エネルギーを吸収して出力軸52aを回転する動力を発生し、低温になった蒸気を排出する。蒸気タービン52には、出力軸52aを介して発電機Gが接続され、発電機Gは、出力軸52aの回転により発電し、電力網Eへ電力供給する。
【0033】
蒸気タービン52の出口側に配管56が接続され、かかる配管56に上流側から下流側に向かって順に復水器53、復水ポンプ57が設けられる。復水器53は、蒸気タービン52から排出される蒸気を回収し、該蒸気を凝縮して復水する。復水器53で生成された復水は、復水ポンプ57によって熱交換器38に向かって送出される。
【0034】
上記蓄熱システム50は、蓄熱運転モードと、放熱運転モードとで選択的に運転することができる。
【0035】
蓄熱運転モードでは、蓄熱用配管36に設けられたポンプ37の作動によって、低温蓄熱槽31の熱媒体Hが蓄熱用配管36を経て電熱変換装置1に流入する。電熱変換装置1では、電力網Eから供給される電気エネルギーが熱エネルギーに変換されて熱媒体Hが加熱される。電熱変換装置1に流入して加熱された熱媒体Hは、高温蓄熱槽32に供給されて貯留される。これにより、熱媒体Hに熱エネルギーが蓄積され、蓄熱システム50としての蓄熱エネルギーが増加することとなる。
【0036】
放熱運転モードでは、放熱用配管34に設けられたポンプ35の作動によって、高温蓄熱槽32の熱媒体Hが熱交換器38に流入する。熱交換器38には、復水ポンプ57の作動によって、復水器53で生成された復水が配管56を経て流入し、該復水が熱媒体Hと熱交換される。かかる熱交換にて、熱媒体Hから熱エネルギーが放出されて蒸気が生成され、生成された蒸気は、配管55を通じて蒸気タービン52に供給される。
【0037】
蒸気タービン52に流入した蒸気は、蒸気タービン52にて熱エネルギーが出力軸52aを回転する動力に変換され、温度低下して排出される。出力軸52aの回転動力によって発電機Gで発電され、所定の電力網Eに電力が供給される。よって、熱媒体H及び蒸気の熱エネルギーが蒸気タービン52を介して電気エネルギーに変換され、蓄熱システム50としての蓄熱エネルギーが減少することとなる。
【0038】
蒸気タービン52から排出された蒸気は復水器53で復水される。かかる復水は、復水ポンプ57により配管56を経て熱交換器38に供給、言い換えると熱交換器38に戻されて循環される。
【0039】
なお、上述した蓄熱運転モード及び放熱運転モードは、それぞれ単独で実施してもよいし、同時に並行して実施してもよい。例えば、蓄熱運転モード及び放熱運転モードを同時に並行して行う場合、蒸気タービン52が低出力で運転継続するよう熱量が小さい蒸気を供給しつつ、電熱変換装置1で熱媒体Hを加熱して高温蓄熱槽32における熱媒体Hの貯留量を増大させてもよい。
【0040】
以上のように、本実施の形態の蓄熱システム50では、電熱変換装置1にて電力を熱に変換し、その熱を熱媒体Hに移して蓄えておくことで、必要なタイミングで蒸気タービン52を用いて再度発電することができる。また、上述のように電熱変換装置1にて熱媒体Hを攪拌することで、電熱変換装置1が大型化することを抑制でき、ひいては、蓄熱システム50の設備コストが上昇することを回避することができる。
【0041】
また、再生可能エネルギー施設を大量に導入した場合には、昼間電力で電熱変換装置1によって高温蓄熱槽32の熱媒体Hに蓄熱するエネルギー量を増大することができる。一方、夜間は、熱媒体Hに蓄熱したエネルギー量の放出を制御することで、要求負荷に応じた蒸気タービン52の出力変化を実現でき、調整電力としてより良く利用することが可能となる。
【0042】
本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0043】
攪拌部20は、上記実施の形態の構成に限定されるものでなく、種々の変更が可能であり、例えば、図4及び図5に示す変形例の構成としてもよい。図4は、変形例に係る電熱変換装置の図1と同様の構成図である。図5は、図4のA-A線断面図である。
【0044】
図4及び図5の変形例は、外側回転部21において、中心軸Cに交差する断面における流路Fの面積が図4中右から左側に向かって次第に小さくなるテーパ状に形成されている。流路Fにて、熱媒体Hの流れ方向上流側が図4中右側となり、熱媒体Hの流れ方向下流側が図4中左側となるので、熱媒体Hの流れ方向にて上流側に比べて下流側の方が流路Fの面積が小さく形成される。
【0045】
なお、変形例にて、図4にて断面視した位置の形状は、上記実施の形態における図2で示した断面形状と同一となり、図5は、外側回転部21における図4中左端側にて断面視した形状を表している。図2及び図5からも分かるように、熱媒体Hの流れ方向にて上流側となる図2に比べて下流側となる図5の方が流路Fの面積が小さく形成される。
【0046】
変形例のように流路Fを形成することで、熱媒体Hの下流側で流路Fの面積を縮小でき、更には、該縮小に応じて熱媒体Hの流速を速くすることができる。これにより、熱媒体Hが相対的に高温となる流れ方向下流側で熱媒体Hをより良く攪拌して熱媒体Hが分解温度を超えることを防止することができる。
【0047】
また、攪拌部20における外側回転部21及び中央回転部22の回転にあっては、回転速度が同一でも相違してもよく、更に、それぞれの回転方向が同一方向でも反対方向でもよい。また、中央回転部22にあっては回転しない構成としてもよいが、中央回転部22を回転した方が発熱部10の内側における熱媒体Hが攪拌され易くなる点で有利となる。
【0048】
また、攪拌部20における中央回転部22は、円筒状に形成したり、中央回転部22自体の設置を省略した構成としてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、外側回転部21が流路形成部としても機能する構成としたが、これに限られるものでなく、例えば、上述した外側回転部21の外側に筒状の流路形成部を別体として設けてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、蓄熱システム50での作動流体として蒸気や水を用いたが、該作動流体として、蒸気や水以外のヘリウムガス等の流体を用いてもよい。
【0051】
また、蓄熱システム50は、蒸気タービン52を用いた構成に限られず、熱交換器38から供給される作動流体から熱エネルギーを取り出し可能な他の熱利用装置としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 :電熱変換装置
10 :発熱部
20 :攪拌部
21 :外側回転部(流路形成部)
22 :中央回転部
31 :低温蓄熱槽
32 :高温蓄熱槽
38 :熱交換器
50 :蓄熱システム
C :中心軸
F :流路
H :熱媒体
図1
図2
図3
図4
図5