(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015013
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】工具ブラケット
(51)【国際特許分類】
B23D 79/00 20060101AFI20250123BHJP
B23C 3/12 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B23D79/00 A
B23C3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118061
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】石谷 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】武藤 充
【テーマコード(参考)】
3C022
3C050
【Fターム(参考)】
3C022DD11
3C050FB09
3C050FB14
(57)【要約】
【課題】 スピンドル体を挿入し、スピンドル体が滑らかに傾動できる工具ブラケットを提供する。
【解決手段】 工具ブラケット10は、シリンダ軸2方向に延びるシリンダ室15aを有するハウジング15と、傾動中心17eを中心に傾動する傾動軸3を有し、スピンドル体11が装着され、シリンダ軸2に対して傾動可能な傾動ボディ17と、傾動軸3から径方向に延び、傾動ボディ17に配置される回り止め体19bと、シリンダ軸2方向に沿って延び、ハウジング15に配置される受容溝19aと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ軸方向に延びるシリンダ室を有するハウジングと、
傾動中心を中心に傾動する傾動軸を有し、スピンドル体が装着され、前記シリンダ軸に対して傾動可能な傾動ボディと、
前記傾動軸から径方向に延び、前記傾動ボディに配置される回り止め体と、
前記シリンダ軸方向に沿って延び、前記ハウジングに配置される受容溝と、
を有する、工具ブラケット。
【請求項2】
前記回り止め体は、前記傾動中心を通り、前記傾動軸に垂直な平面上に延びる、
請求項1に記載の工具ブラケット。
【請求項3】
前記受容溝は、前記シリンダ軸を通る平面である当接面を有する、
請求項1又は2に記載の工具ブラケット。
【請求項4】
前記回り止め体は、前記当接面と当接する膨出部を有する、
請求項1~3のいずれかに記載の工具ブラケット。
【請求項5】
前記膨出部は、球状である、
請求項4に記載の工具ブラケット。
【請求項6】
先端部に配置される作用部を有し、先端方向に付勢され、前記シリンダ室内を往復するピストンを更に有し、
前記傾動ボディは、前記シリンダ室内に配置され、前記作用部と当接するセンタリング部を有する、
請求項1~5のいずれかに記載の工具ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
工具が傾動できるバリ取り工具が提案されている(特開2022-074292号公報。以下、特許文献1)。特許文献1のバリ取り工具100は、シャンク軸15に沿って配置されたシャンク11を有するハウジング1と、伝達ロッド3と、傾動シャフト4と、傾き修正機構9を有する。傾動シャフト4は、フランジ部41と、伝達ロッドが貫通する受容部41aと、刃物101を保持するロッド部42と、シャンク軸15上に傾動中心25を有する球面ブッシュ24とを有する。傾動シャフト4は、傾動中心25を中心に傾動できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のバリ取り工具は、マシニングセンタ等の回転主軸に装着される。そのため、特許文献1のバリ取り工具は、例えば、回転主軸を有しないロボットには適用できない。
本発明は、スピンドル体を挿入し、スピンドル体が滑らかに傾動できる工具ブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の観点は、
シリンダ軸方向に延びるシリンダ室を有するハウジングと、
傾動中心を中心に傾動する傾動軸を有し、スピンドル体が装着され、前記シリンダ軸に対して傾動可能な傾動ボディと、
前記傾動軸から径方向に延び、前記傾動ボディに配置される回り止め体と、
前記シリンダ軸方向に沿って延び、前記ハウジングに配置される受容溝と、
を有する、工具ブラケットである。
【0005】
本発明の第2の観点は、
シリンダ軸方向に延びるシリンダ室を有するハウジングと、
圧縮性流体によって先端方向に付勢され、前記シリンダ室内を往復するピストンであって、先端部に配置される作用部を有するピストンと、
傾動軸を有し、前記シリンダ室内に配置され、前記シリンダ軸に対して傾動可能な傾動ボディであって、基端部に配置され、前記作用部と当接するセンタリング部であって、前記傾動軸が前記シリンダ軸から傾斜するときに、前記シリンダ軸を作用線として、前記ピストンを押し出すセンタリング部を有する傾動ボディと、
を有する、工具ブラケットである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の工具ブラケットによれば、スピンドル体を挿入し、スピンドル体が滑らかに傾動できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】傾動していない状態の実施形態1のバリ取り工具の縦断面図
【
図4】傾動した状態の実施形態1のバリ取り工具の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
図1に示すように、本実施形態のバリ取り工具10は、工具ブラケット13と、スピンドル体11と、を有する。
図1は、
図2のI-I線断面図である。
図1は、スピンドル体11が傾動していない状態を示す。
図1において、シリンダ軸2(
図4参照)と、傾動軸3(
図4参照)は一致している。
バリ取り工具10は、ロボット6やエア源8と接続される。
【0009】
工具ブラケット13は、ハウジング15と、ピストン21と、傾動ボディ17と、カップリング18と、回り止め19と、基端カバー27と、先端カバー25と、を有する。
ハウジング15は、中空形状である。ハウジング15の内部に、基端から、ピストン21と、傾動ボディ17と、回り止め19と、が配置される。
【0010】
ハウジング15は、基端部から、シリンダ室15aと、座面15cと、先端開口15dと、を順に有する。ハウジング15は、例えば、ロボット6のアームの先端に取り付けられる。
図2に示すように、ハウジング15は、直方体状の外形を有しても良い。シリンダ室15aは、シリンダ軸2を中心に配置される。
図1に示すように、シリンダ室15aは、シリンダ部15a2と、小径案内部15a1とを有する。シリンダ部15a2は、ハウジング15の中央部に配置される。小径案内部15a1は、シリンダ部15a2よりも小径である。小径案内部15a1は、シリンダ部15a2に接続され、ハウジング15の基端に開口する。座面15cは、ハウジング15の先端部に配置される。座面15cは、シリンダ軸2に垂直な平面である。座面15cは、回り止め19を介して、シリンダ室15aに接続される。先端開口15dは、座面15cからハウジング15の先端に開口する。好ましくは、先端開口15dは、先端に向かうにつれて径が大きくなる。
【0011】
ハウジング15は、流体ポート15fを有する。流体ポート15fは、シリンダ部15a2に接続される。流体ポート15fは、エア源8と接続される。エア源8は、流体ポート15fを介して、シリンダ部15a2に圧縮空気を供給する。
【0012】
ピストン21は、中空円筒状である。ピストン21は、ヘッド部21bと、スリーブ21aと、凹部(作用部)21dと、基端開口21cと、シール21eと、シール21fと、を有する。ヘッド部21bは、中空円筒であり、シリンダ部15a2内を往復する。凹部21dは、先端方向に進むにつれて大径である。凹部21dは、例えば、シリンダ軸2を中心とする円錐面である。スリーブ21aは、ヘッド部21bの基端部に接続される。スリーブ21aは、小径案内部15a1に案内される。基端開口21cは、スリーブ21aの内面である。基端開口21cは、基端方向に進むにつれて大径となる円錐面でも良い。基端開口21cは、凹部21dに接続される。シール21eは、ヘッド部21bの外円筒面に装着される。シール21fは、スリーブ21aの外円筒面に装着される。
【0013】
傾動ボディ17は、中空円筒状又は球状である。傾動ボディ17は、凸球面(センタリング部)17aと、ヘッド面17bと、スリーブ17cと、挿通孔17dと、を有する。凸球面17aは、傾動ボディ17の基端部に配置される。凸球面17aは、凹部21dに当接し、摺動する。凸球面17aは、傾動中心17eを有する。傾動中心17eは、凸球面17aの中心である。傾動軸3は、傾動中心17eを通る。ヘッド面17bは、傾動ボディ17の先端部に配置される。ヘッド面17bは、例えば、平面である。平面であるヘッド面17bは、傾動軸3に垂直である。スリーブ17cは、ヘッド面17bから先端方向に延びる。スリーブ17cは、中空直円筒状である。挿通孔17dは、スリーブ17cの内面である。挿通孔17dは、傾動軸3を中心とし、傾動ボディ17を貫通する。挿通孔17dは、円筒孔である。
【0014】
スピンドル体11は、挿通孔17dに挿入される。スピンドル体11は、工具ブラケット13を貫通する。スピンドル体11は、ボディ11aと、スピンドル11bと、スピンドルモータ11cと、を有する。スピンドル11bは、傾動軸3を中心に、ボディ11aに回転可能に支持される。スピンドル11bには、先端工具1が装着される。スピンドルモータ11cは、ボディ11aに配置され、スピンドル11bに接続される。例えば、スピンドルモータ11cは、スピンドル11bを回転方向5(先端方向から見て反時計回り)に回転する。
【0015】
カップリング18は、中空円筒状である。カップリング18は、スリーブ17cとスピンドル体11とを締結する。カップリング18は、例えば、リジッドカップリングである。
【0016】
図1~
図3に示すように、回り止め19は、複数の受容溝19aと、複数の回り止めピン19bと、ピン穴19cと、を有する。
複数の受容溝19aは、ハウジング15の内径部に、シリンダ軸2に対して回転対称に配置される。各受容溝19aは、シリンダ軸2と平行に延びる角溝であり、矩形の断面を有する。当接面19a1は、回転方向5の反対側の受容溝19aの側面である。当接面19a1は、シリンダ軸2を通る平面である。
【0017】
複数のピン穴19cが、傾動ボディ17に配置される。各ピン穴19cは、傾動中心17eを通り、傾動軸3に垂直な平面上で、当接面19a1に平行に延びる。ピン穴19cは、円筒穴である。
回り止め19は、受容溝19aと同数の回り止めピン19bを有する。複数の回り止めピン19bは、傾動軸3に対して回転対称に配置される。回り止めピン19bは、軸部19b1と、膨出部19b2とを有する。軸部19b1は、ピン穴19cに挿入される。膨出部19b2は、傾動ボディ17から、径方向に突出する。膨出部19b2と受容溝19aの間には、遊び(隙間)が設けられる。好ましくは、回り止めピン19bは、当接球面19b3を有する。
【0018】
基端カバー27は、ハウジング15の基端面と、スピンドル体11との間を覆う。基端カバー27は、シリンダ室15aや基端開口21cと、スピンドル体11との間に異物や切削クーラント等が進入することを抑制する。
【0019】
先端カバー25は、ハウジング15の先端面と、スピンドル体11又はカップリング18との間を覆う。先端カバー25は、スピンドル体11と先端開口15dとの間に異物や切削クーラント等が進入することを抑制する。
【0020】
図1~
図5を参照して、バリ取り工具10の使用状態について述べる。
図4及び
図5は、バリ取り工具10が、ワーク7のバリ取りを実施している状況を示す。
図4は、
図5のIV-IV線断面図である。
図4及び
図5に示すように、ワーク7は、バリ7aを有する。ここで、
図5におけるバリ7aの二点鎖線は、落とされた部分の形状を示す。ワーク7の側面は、シリンダ軸2に沿って基端方向から見て、バリ取り工具10に向かって凸の曲面を有する。バリ7aは、ワーク7の側面から突出する。スピンドル11bは、回転方向5に回転する。エア源8は、圧縮空気をシリンダ室15aに供給する。
【0021】
図1に示すように、先端工具1がワーク7から離間しているとき、先端工具1は、大きなモーメント荷重F1(
図4参照)を受けていない。ピストン21は、シリンダ室15aに供給された圧縮空気により、先端に移動する。このとき、ヘッド面17bは座面15cに当接する。これにより、スピンドル体11が傾動することが抑制される。そして、傾動軸3は、シリンダ軸2に実質的に一致する。このとき、ヘッド面17bと座面15cが平面であるため、傾動軸3が安定しやすい。
【0022】
スピンドル11bが回転を始めると、スピンドル体11も回転しようとする。
図3に示すように、回り止めピン19bの膨出部19b2は、受容溝19aの当接面19a1に当接して、スピンドル体11の回転が抑制される。
【0023】
次に、先端工具1をワーク7に接触させて、バリ取りを行う。
図5に示すように、ロボット6は、ハウジング15を位置15pから位置15qに向かって直線の軌跡41に沿って移動する。すると、
図4及び
図5に示すように、スピンドル体11が傾動しながら、先端工具1は、ワーク7の側面の形状をなぞるように、軌跡42を描いて位置1pから位置1qへ移動する。先端工具1は、バリ7aを削り落とす。
【0024】
図4に示すように、先端工具1にモーメント荷重F1が作用すると、ヘッド面17bの周囲の一点43を中心として、傾動ボディ17とスピンドル体11が一体となって傾こうとする。そして、凸球面17aが凹部21dに当接したまま、ピストン21を基端方向に押し上げる。このとき、凸球面17aが凹部21dに摺動しながら、傾動ボディ17が傾動する。傾動中心17eは、シリンダ軸2に沿って基端方向へ移動する。凹部21dは、シリンダ軸2を中心とする円形断面を有する。そのため、凸球面17aと凹部21dは、実質的に全周で接触する。傾動ボディ17は、傾動中心17eを作用点として、ピストン21をシリンダ軸2に沿って押し上げる。すなわち、傾動ボディ17がピストン21に与える付勢力F2は、シリンダ軸2を作用線とする。空気は、圧縮性流体である。そのため、ピストン室に供給されている圧縮空気の圧力に抗して、ピストン21は、基端方向に移動できる。ピストン21は、シリンダ軸2に沿って付勢力F2を受けるため、ピストン21の傾きは抑制される。そのため、ピストン21は、シリンダ軸2に沿って滑らかに移動できる。なお、ピストン21は、圧縮空気の圧力によって、傾動ボディ17を先端方向に付勢する。そのため、傾動ボディ17は、座面15cに接触した状態を保つ。
【0025】
傾動軸3がシリンダ軸2から傾動すると、膨出部19b2と受容溝19aは、ねじれながら当接する。本実施形態によれば、当接球面19b3が当接面19a1と点接触するため、膨出部19b2と受容溝19aとの接触抵抗が小さい。そのため、傾動ボディ17は、スムーズに傾動しやすい。
【0026】
作業者は、ロボット6を教示して、バリ取り工具10の軌跡41や速度を決定する。好ましくは、ロボット6の教示は、傾動軸3がシリンダ軸2に実質的に一致した状態で行われる。前述のように、ヘッド面17bが座面15cに当接して、スピンドル体11の姿勢が安定しやすい。そのため、作業者は、ロボット6を教示しやすい。また、ロボット6がバリ取り工具10を移動するときに、傾動軸3の姿勢が安定しているため、バリ取り工具10がワーク7や安全柵や作業者に接触することが抑制される。
【0027】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1 先端工具
2 ピストン軸
3 傾動軸
7 対象物
11 スピンドル体
13 工具ブラケット
15 ハウジング
15a シリンダ室
17 傾動ボディ
17e 傾動中心
19a 受容溝
19b 回り止め体
21 ピストン
21d 作用部