IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2025-15037精子用希釈液、哺乳動物精子の調製方法、人工授精方法及び体外受精方法
<>
  • -精子用希釈液、哺乳動物精子の調製方法、人工授精方法及び体外受精方法 図1
  • -精子用希釈液、哺乳動物精子の調製方法、人工授精方法及び体外受精方法 図2
  • -精子用希釈液、哺乳動物精子の調製方法、人工授精方法及び体外受精方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015037
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】精子用希釈液、哺乳動物精子の調製方法、人工授精方法及び体外受精方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/04 20060101AFI20250123BHJP
   C12N 5/076 20100101ALI20250123BHJP
   A01K 67/02 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C12N1/04
C12N5/076
A01K67/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118098
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】521235486
【氏名又は名称】ルラビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】島田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】梅原 崇
(72)【発明者】
【氏名】白川 晃久
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD50
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】簡便な方法により、先体を保持したX染色体保有精子に富む精子群を得ることが可能な精子用希釈液、哺乳動物精子の調製方法、人工授精方法及び体外受精方法を提供する。
【解決手段】精子用希釈液は、Y染色体保有精子の先体反応を誘起させ、先体を保持するX染色体保有精子に富む精子群を得るための精子用希釈液であって、TLR7リガンドを含有するとともにクエン酸の含有量が4mM以下である。哺乳動物精子の調製方法は、精子用希釈液で培養し、Y染色体保有精子の先体反応を誘起させ、先体を保持するX染色体保有精子に富む精子群を得る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y染色体保有精子の先体反応を誘起させ、先体を保持するX染色体保有精子に富む精子群を得るための精子用希釈液であって、
TLR7リガンドを含有するとともにクエン酸の含有量が4mM以下である、
ことを特徴とする精子用希釈液。
【請求項2】
クエン酸を含有しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の精子用希釈液。
【請求項3】
動物性タンパク質を含有しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の精子用希釈液。
【請求項4】
前記TLR7リガンドはレシキモド、イミキモド、ガーディキモド及びロキソリビンからなる群から選択される1種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の精子用希釈液。
【請求項5】
哺乳動物精子を請求項1乃至4のいずれか一項に記載の精子用希釈液で培養し、Y染色体保有精子の先体反応を誘起させ、先体を保持するX染色体保有精子に富む精子群を得る、
ことを特徴とする哺乳動物精子の調製方法。
【請求項6】
30分より長く90分より短い時間培養する、
ことを特徴とする請求項5に記載の哺乳動物精子の調製方法。
【請求項7】
請求項5に記載の哺乳動物精子の調製方法で調製した非ヒト哺乳動物の精子を用いて非ヒト哺乳動物の人工授精を行う、
ことを特徴とする人工授精方法。
【請求項8】
請求項5に記載の哺乳動物精子の調製方法で調製した非ヒト哺乳動物の精子を用いて非ヒト哺乳動物の体外受精を行う、
ことを特徴とする体外受精方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精子用希釈液、哺乳動物精子の調製方法、人工授精方法及び体外受精方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜における雌雄産み分け技術は、家畜の効率的な生産に大きく寄与する。たとえば、乳牛の場合、雌を計画的に産み分けさせることで後継乳牛を獲ることができる。さらに、牛乳生産のためには乳牛を妊娠させておく必要があるが、後継乳牛がえられた後は、子牛価格の高い黒毛和牛の受精卵を乳牛に移植し、黒毛和牛を生誕させると酪農家の経営が大きく改善される。
【0003】
また、養豚においては、去勢雄は成長が早く、出荷体重に到達するまでの肥育日数が雌と比較して短いため、肉豚生産において雄を生誕させることは、養豚家の経営改善のみでなく、餌あたりの豚肉生産量を増加させることにより世界の食糧生産を高めることにも寄与する。一方、長らくブタ生産において、去勢は無麻酔で行われていたが、近年アニマルウェルフェア的観点から、欧州やカナダで無麻酔去勢が禁止され、これら諸国では生産コストの増加が避けられない。去勢されない雄ブタの肉は、脂肪分が低く、雄臭という悪臭を発するため、その価値が極めて低いことから、雌を選択して生誕させることは、無麻酔去勢が禁止される海外諸国での生産コストの増加を緩和する効果も期待される。
【0004】
このような事情もあり、家畜産業においては、雌雄産み分け技術の要求は高く、雌雄産み分け技術として、特許文献1などの手法が知られている。
【0005】
特許文献1では、X染色体保有精子にのみToll様受容体7番と8番(TLR7/8)が発現することに着目し、TLR7/8を活性化する薬剤を添加した培地で精子を培養することで、運動性が低下したX染色体保有精子と運動性の良いY染色体保有精子とを分離している。そして、分離したY染色体保有精子、X染色体保有精子をそれぞれ用いることで雄産子、雌産子を選択的に生誕させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-10094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、X染色体保有精子とY染色体保有精子との分離を効率的に行える一方、X染色体保有精子を人工授精や体外受精に適用しようとする場合、薬剤でX染色体保有精子の運動性を低下させていることから、X染色体保有精子を分取した後、運動性を回復させるため、複数回の遠心洗浄や追加培養といったステップが必要であり、畜産現場で行うには煩雑である。
【0008】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な方法により、先体を保持したX染色体保有精子に富む精子群を得ることが可能な精子用希釈液、哺乳動物精子の調製方法、人工授精方法及び体外受精方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る精子用希釈液は、
Y染色体保有精子の先体反応を誘起させ、先体を保持するX染色体保有精子に富む精子群を得るための精子用希釈液であって、
TLR7リガンドを含有するとともにクエン酸の含有量が4mM以下である、
ことを特徴とする。
【0010】
また、クエン酸を含有しないことが好ましい。
【0011】
動物性タンパク質を含有しないことが好ましい。
【0012】
また、前記TLR7リガンドはレシキモド、イミキモド、ガーディキモド及びロキソリビンからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の観点に係る哺乳動物精子の調製方法は、
哺乳動物精子を本発明の第1の観点に係る精子用希釈液で培養し、Y染色体保有精子の先体反応を誘起させ、先体を保持するX染色体保有精子に富む精子群を得る、
ことを特徴とする。
【0014】
また、30分より長く90分より短い時間培養することが好ましい。
【0015】
本発明の第3の観点に係る人工授精方法は、
本発明の第2の観点に係る哺乳動物精子の調製方法で調製した非ヒト哺乳動物の精子を用いて非ヒト哺乳動物の人工授精を行う、
ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の観点に係る体外受精方法は、
本発明の第2の観点に係る哺乳動物精子の調製方法で調製した非ヒト哺乳動物の精子を用いて非ヒト哺乳動物の体外受精を行う、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡便な方法により、先体を保持したX染色体保有精子に富む精子群を得ることが可能な精子用希釈液、哺乳動物精子の調製方法、人工授精方法及び体外受精方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実験1における先体正常率を示すグラフである。
図2】実験2における先体正常率を示すグラフである。
図3】実験3におけるY精子の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態に係る精子用希釈液は、Y染色体保有精子の先体反応を誘起させて先体を欠損させ、先体を保持するX染色体保有精子に富む精子群を得るための精子用希釈液である。なお、本明細書において、X染色体保有精子を「X精子」、Y染色体保有精子を「Y精子」と記す。
【0020】
通常、精子は、雌の副生殖器官に射出された後、周囲の環境依存的に遊泳し、受精の場である卵管へとたどり着く。卵管において、卵と出会った精子は、精子頭部に存在する先体が開裂し、酵素を分泌する。この先体反応は、精子が卵内へと侵入し、受精を完了するために必須の反応である。この先体反応は卵管内でなくとも自発的に起こることもあり、早期に先体反応を起こした精子は子宮内で貪食され、卵管へと到達することができない。すなわち、受精を完了するためには、卵管へ到達するまで精子が先体を保持し、適切なタイミングで先体反応が起こることが必要不可欠である。
【0021】
そして、X精子が卵内に侵入して受精が完了すると、雌胚が生じ、雌産子が生誕する。一方、Y精子が卵内に侵入して受精が完了すると、雄胚が生じ、雄産子が生誕する。
【0022】
本実施の形態に係る精子用希釈液は、TLR7リガンドを含有するとともにクエン酸の含有量が4mM以下である。
【0023】
クエン酸は、X精子、Y精子いずれに対しても精子代謝を促し、先体反応を誘起させる。一方、TLR7リガンドは、精子に対して性特異的に作用する。TLR7リガンドを含有する精子用希釈液で精子を培養すると、X精子の精子代謝は抑制され、先体が保持される。このため、X精子の受精能力は担保される。
【0024】
すなわち、TLR7リガンドを含有するとともにクエン酸の含有量が4mM以下の精子用希釈液においては、Y精子がクエン酸によって精子代謝が高まり、先体反応が誘起される。一方、X精子の精子代謝は、TLR7リガンドによって抑制されることになる。このため、培養後において、先体を保持する精子の多くがX精子となる。よって、先体を保持する精子群においてはX精子の割合が高くなる。
【0025】
TLR7リガンドとして、レシキモド(Resiquimod)やイミキモド(Imiquimod)、ガーディキモド(Gardiquimod)、ロキソリビン(Loxoribine)が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上含まれていてもよい。
【0026】
TLR7リガンドの含有量は、TLR7リガンドの種類や用いる精子の動物種により適宜設定され、例えば、3nM~3μMであることが好ましい。
【0027】
精子用希釈液は、基礎希釈液にTLR7リガンドを添加することで得られる。基礎希釈液として、クエン酸濃度が4mM以下であれば、市販の胚培養培地等を用いることができる。
【0028】
基礎希釈液の成分として、例えば、グルコース、ラクトース、炭酸水素ナトリウム、EDTA・2Na2水和物、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(以下、Tris)が挙げられる。また、これらの成分の含有量は、例えば、グルコース;20~40mM、ラクトース;100~150mM、炭酸水素ナトリウム;8~15mM、EDTA・2Na2水和物;3~10mM、Tris;40~60mMである。
【0029】
なお、特許文献1においては、基礎培地としてHTF(Human Tubal Fluid)培地にウシ血清アルブミン(BSA:Bovine Serum Albumin)およびTLR7リガンドを添加した培地が開示されている。HTF培地にBSAを添加していない場合、X精子、Y精子の双方とも精子代謝が抑制されてしまい、Y精子も先体反応が誘起されなくなってしまう。このため、特許文献1では、HTF培地にBSAが添加されている。
【0030】
一方、本実施の形態に係る精子用希釈液では、BSA等のアルブミンを主成分とする動物性タンパク質を含有していない。本実施の形態に係る精子用希釈液では、BSA等の動物性タンパク質を含有していなくても、クエン酸濃度を4mM以下とすることにより、上述したようにY精子の先体反応の誘起を促すことを実現している。さらに、BSAは高価であるところ、精子用希釈液はBSA等の動物性タンパク質が不要であるため製造コストが抑えられる。
【0031】
また、BSAを添加したHTF培地は、冷却保管すると沈殿ができてしまうため、保存ができない。一方、本実施の形態に係る精子用希釈液においては、そのような不都合はないとともに、常温でも一ヶ月以上の長期保管が可能という利点もある。
【0032】
本実施の形態に係る哺乳動物精子の調製方法は、上述した精子用希釈液にて哺乳動物精子を培養し、Y精子の先体反応を誘起させ、先体を保持したX精子に富む精子群を調製する。
【0033】
本実施の形態においては、上述した精子希釈液で精子を培養することにより、Y精子の精子代謝が高まり、先体反応が誘起される。そして、Y精子は先体を欠損し、受精能力を喪失する。一方、X精子は、上記の精子希釈液においては精子代謝が抑制されるため、先体が保持され、受精能力が担保される。よって、培養後の精子群は、先体を保持している精子の多くがX精子となる。したがって、先体を保持するX精子に富んだ精子群が得られることになる。
【0034】
培養時間は、Y精子が活性化する十分な時間であることが好ましく、例えば、30分より長いことが好ましい。また、培養時間が長すぎると、X精子の先体の欠損も進むことから90分より短いことが好ましい。培養時間は60分であることがより好ましい。
【0035】
本実施の形態においては、上述のように、精子用希釈液で精子を培養するものゆえ、多量の精子を処理することが可能である。
【0036】
上述のように、培養後の精子群は、X染色体を持ち、且つ、先体を保持するX精子に富んでいる。したがって、この精子群を用い、哺乳動物の人工授精や体外受精を行った場合、X精子が卵子と受精し、XX染色体を持つ受精卵となるので、選択的に雌産子を産み分けさせることができる。人工授精、体外受精は、通常の方法にて行えばよい。
【0037】
なお、培養後の精子群は、X精子とY精子との分離を行っても行わなくてもよい。培養後の精子群に含まれるY精子の多くは先体を欠損しており、受精能力を失った状態であるため、X精子とY精子との分離を行わずに培養後の精子群を人工授精や体外受精に供すれば、高い割合で雌産子を生誕させることができる。
【0038】
このように、本実施の形態に係る哺乳動物精子の調製方法は、簡便な方法でX精子に富む精子群を得ることができ、追加培養等の煩雑なステップを要さないため、畜産現場においても容易に行い得る。
【実施例0039】
(実験1)精子用希釈液のクエン酸濃度がブタ精子の先体保持に与える影響の検証
グルコース、ラクトース、炭酸水素ナトリウム、EDTA・2Na2水和物、Trisを混合した精子用希釈液(pH7.0)を調整した。そして、この精子用希釈液にクエン酸を添加し、クエン酸濃度40mM、20mM、4mM、0mMの精子用希釈液(以下、精子用希釈液A、精子用希釈液B、精子用希釈液C、精子用希釈液Dと示す)をそれぞれ調製した。精子用希釈液A、精子用希釈液B、精子用希釈液C、精子用希釈液Dの組成を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
採取翌日のブタ希釈精液を遠心分離(300×G、3分間)し、精液から精子を分離した。
分離した精子をそれぞれの精子用希釈液に添加し、恒温槽で培養した(37℃、60分間)。
先体保持マーカーであるPNA-FITC(peanut agglutinin fluorescein isothiocyanate)と細胞生存マーカーであるPI(podium iodide)を用いて染色し、遠心分離によって洗浄した後、フローサイトメトリーに供試し、PNA-/PI-の精子(生存かつ先体保持している精子)の割合を算出し、先体正常率を求めた。
【0042】
その結果を図1に示す。精子用希釈液中のクエン酸濃度が低くなるにつれて精子の先体正常率が低くなっている。クエン酸濃度が低い場合、先体反応が誘起され、先体欠損が生じることがわかる。また、クエン酸濃度が4mMと0mMでは有意差はなく、クエン酸濃度が4mM以下であれば、精子の先体欠損を促し得ることがわかる。
【0043】
(実験2)クエン酸無添加およびTLR7リガンド添加によるブタ精子の先体保持に与える影響の検証
上述した精子用希釈液DにTLR7リガンドとしてレシキモド(R848)を3mM添加した精子用希釈液(pH7.0、以下、精子用希釈液DRと記す)を調製した。
また、精子用希釈液Dおよび精子用希釈液DRにNaOHを添加し、pH8.0に調整したものを併せて準備した。
実験2で用いた精子用希釈液は、精子用希釈液A(pH7.0)、精子用希釈液D(pH7.0)、精子用希釈液DR(pH7.0)、精子用希釈液D(pH8.0)、精子用希釈液DR(pH8.0)である。
【0044】
採取翌日のブタ希釈精液を遠心分離(300×G、3分間)した。
それぞれの精子用希釈液でブタ精子を恒温槽で培養した(37℃、60分間)。
培養後、遠心分離して上清を除いた後、精漿を含むHIRO-SWINE B液(株式会社広島クライオプリザベーションサービス製、HIRO-SWINEは登録商標)で懸濁し、15℃で1日静置した。
先体保持マーカーであるPNA-FITC(peanut agglutinin fluorescein isothiocyanate)と細胞生存マーカーであるPI(podium iodide)を用いて染色し、遠心分離によって洗浄した後、フローサイトメトリーに供試し、PNA-/PI-の精子(生存かつ先体保持している精子)の割合を算出し、先体正常率を求めた。
【0045】
その結果を図2に示す。pH7.0、8.0のいずれにおいても、R848を含有する精子用希釈液DRで培養した場合、R848未添加の精子用希釈液Dに比べ、先体正常率が有意に高い結果を示した。
【0046】
(実験3)X精子(Y精子)の割合の検証
実験3では、精子用希釈液D(pH7.0)、精子用希釈液DR(pH7.0)を用いた。
採取翌日のブタ希釈精液を遠心分離(300×G、3分間)した。
それぞれの精子用希釈液でブタ精子を恒温槽で培養した(37℃、60分間)。
培養後、遠心分離して上清を除いた後、精漿を含むHIRO-SWINE B液(株式会社広島クライオプリザベーションサービス製、HIRO-SWINEは登録商標)で懸濁し、15℃で1日静置した。
先体が正常な精子は良好な運動性を有するので、スイムアップ法によって、運動精子を回収した。
Y染色体を認識するプローブを用いたFISH(Fluorescence in situ hybridization)法に供試し、Y精子率を求めた。
【0047】
その結果を図3に示す。R848を含有する精子用希釈液DRで培養した場合、Y精子の割合が約30%程度であった。即ち、X精子が約70%程度を占めている。精子用希釈液がクエン酸を含有しないことで精子の先体反応が誘起されるが、R848が性特異的に作用し、X精子の先体反応の誘起が阻害されることにより、X精子に富んだ精子群が得られたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る精子用希釈液では、先体を保持したX精子に富む精子群を得ることができるため、人工授精や体外受精に供することで選択的に雄産子を産み分けさせることが可能であり、ブタなどの家畜産業等に利用可能である。
図1
図2
図3