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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015040
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20250123BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F16F15/02 C
E04H9/02 341C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118104
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】杉田 朋哉
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AB03
2E139AC03
2E139AC04
2E139AC33
2E139AD03
2E139BB02
2E139BB26
2E139BB49
2E139BB53
2E139BC11
2E139BD26
3J048AD07
3J048BF02
3J048BF05
3J048CB01
3J048CB22
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】固有振動数の調整が容易にできる制振装置を提供すること。
【解決手段】制振装置10は、第1H形鋼11と第2H形鋼12との間に架け渡されるフレーム37と、フレーム37から上方に突出する複数のピン38と、複数のピン38に支持される振動部材36と、複数のピン38の間においてフレーム37と振動部材36とに挟持されており、振動部材36の振動を減衰する減衰部材39と、を備えている。振動部材36は、複数のピン38に支持される板バネ42と、複数のピン38の間において板バネ42に固定された錘43と、を有しており、フレーム37は、複数のピン38を移動可能に支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1梁と第2梁との間に架け渡されるフレームと、
上記フレームから上方に突出する複数のピンと、
複数の上記ピンに支持される振動部材と、
複数の上記ピンの間において上記フレームと上記振動部材とに挟持されており、上記振動部材の振動を減衰する減衰部材と、を備えており、
上記振動部材は、
複数の上記ピンに支持される板バネと、
複数の上記ピンの間において上記板バネに固定された錘と、を有しており、
上記フレームは、複数の上記ピンを移動可能に支持する制振装置。
【請求項2】
上記フレームは、上下方向に貫通する貫通穴を有しており、
上記ピンは、上記貫通穴に挿通された状態で、固定部材により上記フレームに固定されている請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
上記フレームは、
上記板バネの両端部の下面に対向する板状の受部と、
上記錘の下方において上記受部に挟まれた位置において開口する開口部と、
上記受部を上記第1梁および上記第2梁の間において支持する支持部と、を更に有する請求項2に記載の制振装置。
【請求項4】
上記貫通穴は、上記受部において上記錘から離間する方向に沿って延びており、
上記減衰部材は、上記支持部と上記錘との間に挟持されている請求項3に記載の制振装置。
【請求項5】
複数の上記ピンは、上記板バネの両端部においてそれぞれ3つが位置している請求項1または2に記載の制振装置。
【請求項6】
上記フレームは、上記第1梁および上記第2梁に連結する連結部を有しており、
上記第1梁および上記第2梁は、上フランジと、上記上フランジに対向する下フランジと、をそれぞれ有しており、
上記連結部は、上下方向において上記上フランジと上記下フランジとに囲まれている請求項1または2に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、床に設置された台座に水平の板ばねの一端が固定され、他端にマスおよびダンパーが設置され、中間部にピンが板ばねに沿って移動可能に配設された制振装置が開示されている。制振装置の板バネにはマスによって下方に負荷がかかった状態になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-240924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制振装置の固有振動数を調整する際には、マスを持ち上げて板ばねに負荷がかからない状態にしてからピンを移動する必要があり手間である。また、ピンと板ばねとの接触圧はピンの位置によって変化するため、ピンの移動距離と固有振動数の変化量は必ずしも一致しない。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、固有振動数の調整が容易にできる制振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 請求項1に係る制振は、第1梁と第2梁との間に架け渡されるフレームと、上記フレームから上方に突出する複数のピンと、複数の上記ピンに支持される振動部材と、複数の上記ピンの間において上記フレームと上記振動部材とに挟持されており、上記振動部材の振動を減衰する減衰部材と、を備えている。上記振動部材は、複数の上記ピンに支持される板バネと、複数の上記ピンの間において上記板バネに固定された錘と、を有しており、上記フレームは、複数の上記ピンを移動可能に支持する。
【0007】
板バネを支持するピンを移動させることによって振動部材を支持しつつフレームの固有振動数を容易に変えることができる。
【0008】
(2) 請求項2は、上記フレームは、上下方向に貫通する貫通穴を有しており、上記ピンは、上記貫通穴に挿通された状態で、固定部材により上記フレームに固定されている請求項1記載の制振装置である。
【0009】
固定部材にピンを固定してピンを貫通穴に固定できる。
【0010】
(3) 請求項3は、上記フレームは、上記板バネの両端部の下面に対向する板状の受部と、上記錘の下方において上記受部に挟まれた位置において開口する開口部と、上記受部を上記第1梁および上記第2梁の間において支持する支持部と、を更に有する請求項2記載の制振装置である。
【0011】
フレームには、錘の下方において開口部が形成されているため、板バネが変形しても錘がフレームに干渉しない。
【0012】
(4) 請求項4は、上記貫通穴は、上記受部において上記錘から離間する方向に沿って延びており、上記減衰部材は、上記支持部と上記錘との間に挟持されている請求項3記載の制振装置である。
【0013】
(5) 請求項5は、複数の上記ピンは、上記板バネの両端部においてそれぞれ3つが位置している請求項1から4のいずれかに記載の制振装置である。
【0014】
板バネの両端がそれぞれ3つのピンで支持されるため、板バネのそれぞれを2つのピンで支持しつつ残りのピンを移動できる。このため、安定した状態のまま振動部材の固有振動数の調整操作ができる。また、固有振動数を調整しても、2つのピンによって振動部材の高さが維持されるため、振動部材の高さが変わることによって減衰部材を付け外しする作業も生じない。
【0015】
(6) 請求項6は、上記フレームは、上記第1梁および上記第2梁に連結する連結部を有しており、上記第1梁および上記第2梁は、上フランジと、上記上フランジに対向する下フランジと、をそれぞれ有しており、上記連結部は、上下方向において上記上フランジと上記下フランジとに囲まれている請求項1から5のいずれかに記載の制振装置である。
【0016】
支持部が上フランジと下フランジの間に囲まれた状態で連結されるため、振動によってフレームが第1梁および第2梁から不意に外れることがない。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る制振装置は、固有振動数の調整が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係る制振装置10の一例を第1H形鋼11および第2H形鋼12と共に示す図である。
図2図2は、図1に示されるII-II断面図である。
図3図3は、振動部材36を上方から視た図である。
図4図4は、図3に示す振動部材36を前方から視た図である。
図5図5は、フレーム37を上方から視た図である。
図6図6は、図5に示されるVI-VI断面図である。
図7図7は、図1に示されるVII-VII断面図である。
図8図8は、図1に示されるVIII-VIII断面図である。
図9図9は、錘43と支持部63の間に位置する第1部材130、第2部材131を左方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、制振装置10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向1が定義され、第1H形鋼11が延びる方向であって、上下方向1と直行する方向として前後方向2が定義され、制振装置10が第1H形鋼11および第2H形鋼12に架け渡される方向であって、上下方向1及び前後方向2のいずれとも直交する方向として左右方向3が定義される。
【0020】
本実施形態における制振装置10は、住宅やマンション等の建物における床の上下振動を制振するチューンドマスダンパーであり、1軒の建物に対して1台または複数台が用いられる。図1図2に示されるように、建物には、複数の柱のうちの一部の柱に支持される第1H形鋼(第1梁の一例)11と、第1H形鋼11の右方にて柱に支持される第2H形鋼(第2梁の一例)12との間において制振装置10が位置する。第1H形鋼11および第2H形鋼12は、床からの振動を受ける。第1H形鋼11および第2H形鋼12は、3つの板状部分で形成され前後方向2に長い。
【0021】
第1H形鋼11は、前後方向2および左右方向3に沿って延びる第1上フランジ15と、第1上フランジ15の下方に位置して平行に延びる第1下フランジ16と、第1上フランジ15および第1下フランジ16の中央部同士を連結する第1ウエブ17とを有している。第1上フランジ15の下面18は、第1下フランジ16の上面19に対向している。第1ウエブ17は、上下方向1および前後方向2に沿って延びており、第1ウエブ17において左方を向く面および右方を向く面が第1上フランジ15の下面18および第1下フランジ16の上面19に対して直交している。
【0022】
第2H形鋼12は、第1H形鋼11と同様の形状であり、第2上フランジ25と、第2下フランジ26と、第2ウエブ27とを有している。第2上フランジ25の下面28は、第2下フランジ26の上面29に対向している。第2ウエブ27は、左方を向く面および右方を向く面が第2上フランジ25の下面28および第2下フランジ26の上面29に対して直交している。
【0023】
制振装置10は、床から第1H形鋼11および第2H形鋼12に伝わった振動を制振する。制振装置10は、振動部材36と、フレーム37と、ピン38と、減衰部材39と、を備えている。
【0024】
振動部材36は、フレーム37の上方に位置しており、床から第1H形鋼11および第2H形鋼12へ伝わった振動に共振する。振動部材36は、板バネ42と、錘43とを有している。板バネ42は、前後方向2および左右方向3に沿う平板形状であり、金属材料で成型される。板バネ42は、フレーム37から上方に突出する6本のピン38によって両端部44において下方から支持されている。板バネ42は、中央部45から両端部44に向かうに従ってそれぞれ下方に湾曲している。板バネ42の中央部45の上下方向1における位置は、両端部44よりも上方に位置している。
【0025】
錘43は、板バネ42に固定されている。錘43は、板バネ42の中央部45において支持されている。図3図4に示されるように、錘43は、第1錘48と、第2錘49とを有している。第1錘48は、一対であり、板バネ42を上下方向1から挟む。上下の第1錘48のそれぞれは、左の端部に位置する3つのボルト51およびナット52と、右の端部に位置する3つのボルト53およびナット54によって貫通孔(不図示)を通して互いに固定されている。第1錘48のそれぞれは、所定の厚みを有しており、上下方向1から視て矩形状である。第1錘48のそれぞれは、前後方向2の寸法が板バネ42よりも大きく、左右方向3において板バネ42よりも小さい。
【0026】
第2錘49は、第1錘48を上下方向1から挟む。上下の第2錘49のそれぞれは、第1錘48と同じ厚みである。第2錘49のそれぞれは、上下方向1から視て矩形状である。第2錘49のそれぞれは、前後方向2および左右方向3において、第1錘48の中央部分に配置されている。第2錘49のそれぞれは、前後方向2および左右方向3において、第1錘48よりも寸法が小さい。第2錘49のそれぞれは、上下方向1から視て角の4つの位置において上下方向1に貫通孔(不図示)が貫通しており、ボルト58によって第1錘48に固定されている。第2錘49のそれぞれは、前後方向2において、板バネ42よりも寸法が小さい。
【0027】
フレーム37は、第1H形鋼11と第2H形鋼12の間に架け渡されており、振動部材36を支持する。フレーム37は、後述する連結部90によって第1H形鋼11および第2H形鋼12に連結されており、第1H形鋼11および第2H形鋼12を伝って振動を受ける。図5図6に示されるように、フレーム37は、受部60と、開口部61と、貫通穴62と、支持部63とを有している。
【0028】
受部60は、振動部材36を支持する。受部60は、第1受部66と、第2受部67とを有している。第1受部66は、第1H形鋼11と第2H形鋼12の間における、第1H形鋼11寄りに位置している。第1受部66は、所定の厚みを有しており、前後方向2および左右方向3に沿う板状である。第1受部66は、3つのピン38を左右方向3に移動可能に支持する。第1受部66は、上面68が板バネ42の左端部80の下面と対向している。
【0029】
第2受部67は、第1H形鋼11と第2H形鋼12の間における、第2H形鋼12寄りに位置している。第2受部67は、第1受部66と形状が同じである。第2受部67は3つのピン38を左右方向3に移動可能に支持する。第2受部67は、上面70が板バネ42の右端部81の下面と対向している。第1受部66と第2受部67は、上下方向1において板バネ42の下方に位置する第1錘48と重なる(図2参照)。
【0030】
開口部61は、左右方向3において第1受部66と第2受部67とに区画されており、前後方向2において第1支持部84と第2支持部85とに区画されている。開口部61は、上下方向1に開口している。開口部61は、第1錘48よりも前後方向2および左右方向3における寸法が大きい(図1参照)。開口部61は、前後方向2において板バネ42よりも寸法が大きく、左右方向3において板バネ42よりも寸法が小さい。
【0031】
貫通穴62は、受部60において、板バネ42の両端部44の下方に位置している。貫通穴62は第1錘48および第2錘49から離間する方向、すなわち左右方向3に沿って延びている。図5図6に示されるように、貫通穴62は、第1受部66に位置する第1貫通穴72と、第2受部67に位置する第2貫通穴73とを有する。第1貫通穴72は、第1受部66において上下方向1に貫通する穴であって、左右方向3に沿って延びる。第1貫通穴72は、第1受部66の前後方向2における中央位置と、前後方向2における前寄りの位置と、前後方向2における後寄りの位置の3か所に位置する。
【0032】
第2貫通穴73は、第2受部67において上下方向1に貫通する穴であって、左右方向3に沿って延びる。第2貫通穴73は、第2受部67の前後方向2における中央位置と、前後方向2における前寄りの位置と、前後方向2における後寄りの位置の3か所に位置する。
【0033】
第1貫通穴72および第2貫通穴73は、それぞれピン38の移動を案内する。図6に示されるように、ピン38は、第1貫通穴72および第2貫通穴73のそれぞれに下方から挿通されるボルトである。ピン38は蝶ナット74が螺合された状態で、第1貫通穴72および第2貫通穴73のそれぞれに下方から挿通されている。ピン38は、それぞれ前後方向2に並ぶ3つの第1貫通穴72および第2貫通穴73の上に重ねられた固定部材75に螺合されている。固定部材75は、ピン38から離間した位置において下方に向かって突出する突出部76を有している。突出部76は、固定部材75に下方から螺合されたボルトの頭である。突出部76は、第1貫通穴72および第2貫通穴73に嵌っている。第1貫通穴72に位置する3つのピン38は、板バネ42の左端部80を支持する。第2貫通穴73に位置する3つのピン38は、板バネ42の右端部81を支持する。
【0034】
支持部63は、第1H形鋼11および第2H形鋼の間において第1受部66および第2受部67を支持する。図5図6に示されるように、支持部63は、第1支持部84と、第2支持部85とを有している。第1支持部84は、板状である。第1支持部84は、前後方向2に所定の厚みを有している。第1支持部84は、後方を向く後面86が上下方向1および左右方向3に沿う。第1支持部84は、後面86における上下方向1の中央位置において、第1受部66および第2受部67の前端が連結されている。
【0035】
第2支持部85は、板状である。第2支持部85は、前後方向2に所定の厚みを有している。第2支持部85は、前方を向く前面87が上下方向1および左右方向3に沿う。第2支持部85は、前面87における上下方向1の中央位置において、第1受部66および第2受部67の後端が連結されている。
【0036】
図1に示されるように、連結部90は、フレーム37を第1H形鋼11および第2H形鋼12に連結する。図7図8に示されるように、連結部90は、第1支持部84の左端を第1H形鋼11に連結する第1連結部91と、第1支持部84の右端を第2H形鋼12に連結する第2連結部92と、第2支持部85の左端を第1H形鋼11に連結する第3連結部93と、第2支持部85の右端を第2H形鋼12に連結する第4連結部94とを有している。
【0037】
図7に示されるように、第1連結部91は、第1壁97と、第1拡壁98と、第1延壁99とを有している。第1壁97は、上下方向1および左右方向3に沿う板状であり、前後方向2に貫通する貫通孔(不図示)を通してボルト100およびナット101によって第1支持部84の左端に固定されている。第1拡壁98は、第1壁97から第1H形鋼11の第1上フランジ15、第1下フランジ16および第1ウエブ17に囲まれる領域へ延出している。第1延壁99は、第1拡壁98と交差する方向に延びており、第1上フランジ15の下方を向く面、第1ウエブ17の右方を向く面、および第1下フランジ16の上方を向く面に沿っている。第1延壁99は、第1上フランジ15および第1下フランジ16に対してボルト102およびナット103によって固定されている。
【0038】
第2連結部92は、第2壁105と、第2拡壁106と、第2延壁107とを有している。第2壁105は、上下方向1および左右方向3に沿う板状であり、前後方向2に貫通する貫通孔(不図示)を通してボルト108およびナット109によって第2支持部85の右端に固定されている。第2拡壁106は、第2壁105から第2H形鋼12の第2上フランジ25、第2下フランジ26および第2ウエブ27に囲まれる領域へ延出している。第2延壁107は、第2拡壁106と交差する方向に延びており、第2上フランジ25の下方を向く面、第2ウエブ27の左方を向く面、および第2下フランジ26の上方を向く面に沿っている。第2延壁107は、第2上フランジ25および第2下フランジ26に対してボルト110およびナット111によって固定されている。
【0039】
第3連結部93は、第3壁113と、第3拡壁114と、第3延壁115とを有している。第3壁113は、上下方向1および左右方向3に沿う板状であり、前後方向2に貫通する貫通孔(不図示)を通してボルト116およびナット117によって支持部63の左端に固定されている。第3拡壁114は、第3壁113から第1H形鋼11の第1上フランジ15、第1下フランジ16および第1ウエブ17に囲まれる領域へ延出している。第3延壁115は、第3拡壁114と交差する方向に延びており、第1上フランジ15の下方を向く面、第1ウエブ17の右方を向く面、および第1下フランジ16の上方を向く面に沿っている。第3延壁115は、第1上フランジ15および第1下フランジ16に対してボルト118およびナット119によって固定されている。
【0040】
第4連結部94は、第4壁121と、第4拡壁122と、第4延壁123とを有している。第4壁121は、上下方向1および左右方向3に沿う板状であり、前後方向2に貫通する貫通孔(不図示)を通してボルト124およびナット125によって第2支持部85の右端に固定されている。第4拡壁122は、第4壁121から第2H形鋼12の第2上フランジ25、第2下フランジ26および第2ウエブ27に囲まれる領域へ延出している。第4延壁123は、第4拡壁122と交差する方向に延びており、第2上フランジ25の下方を向く面、第2ウエブ27の左方を向く面、および第2下フランジ26の上方を向く面に沿っている。第4延壁123は、第2上フランジ25および第2下フランジ26に対してボルト126およびナット127によって固定されている。
【0041】
減衰部材39は、振動部材36の振動を減衰する。減衰部材39は、ゴムなどの弾性材料によって形成されている。図9に示されるように、減衰部材39は、第1錘48の前方に位置する第1部材130と、第1錘48の後方に位置する第2部材131とを有している。より具体的には、第1部材130の前側は、第1支持部84の後面86にボルト132によって固定された第1平板133と接触している。第1部材130の後側は、第1錘48の前端を囲むように左右方向3からボルト134によって固定された第1金具135と接触している。第1部材130は、第1金具135と第1平板133との間において、左右方向3に2つが並び、上下に2つが並んだ状態で挟持されている。
【0042】
第2部材131の後側は、第2支持部85の前面87にボルト138によって固定された第2平板139と接触している。第2部材131の前側は、第1錘48の後端を囲むように左右方向3からボルト140によって固定された第2金具141と接触している。第2部材131は、第2金具141と第2平板139との間において、左右方向3に2つが並び、上下に2つが並んだ状態で挟持されている。フレーム37に対する振動部材36の動きは第1部材130および第2部材131によって制限されている。第1部材130および第2部材131は、フレーム37に対して振動部材36の振動を減衰させる。
【0043】
[固有振動数の調整]
制振装置10は、ピン38を移動することによって振動部材36が共振する振動数を変えることができる。例えば、第1受部66の前後方向2における中央に位置するピン38を移動するとき、作業者は、蝶ナット74を回転させて固定部材75に締結されたピン38を緩めた状態にする。このとき、ピン38の先端は、第1受部66の前方と後方寄りに位置する2つのピン38よりも下方に位置する。この状態で、第1受部66の前方と後方寄りに位置する2つのピン38によって板バネ42を支持しつつ緩めたピン38を第1貫通穴72に沿って移動できる。作業者は、所望の固有振動数となる位置にピン38を移動した後、蝶ナット74を締め付ける。フレーム37が蝶ナット74と固定部材75との間に挟まれてピン38がフレーム37に対して固定される。蝶ナット74が締め付けられるとき、固定部材75が第1受部66に近接して、突出部76は第1貫通穴72に進入する。この状態において、固定部材75はピン38が回転しても、突出部76によって回転が規制されるため、作業者は固定部材75を保持することなくピン38を固定部材75に対して確実に螺合できる。第1受部66の前方と後方寄りに位置するピン38および、第2受部67に位置するピン38も同様の操作によって移動されて振動部材36が共振する振動数が変えられる。
【0044】
[実施形態の作用効果]
板バネ42を支持するピン38を第1貫通穴72および第2貫通穴73に沿って移動させることができる。これにより、振動部材36を支持しつつフレーム37の固有振動数を容易に変えることができる。
【0045】
第1受部66の第1貫通穴72上、および第2受部67の第2貫通穴73上に重ねられた固定部材75にピン38を固定してピン38を第1受部66および第2受部67に固定できる。
【0046】
フレーム37には、左右方向3における第1受部66と第2受部67の間の位置であって、第2錘49の下方の位置において、開口部61が形成されている。このため、板バネ42が振動によって弾性変形しても第2錘49がフレーム37に干渉しない。
【0047】
板バネ42の両端部44は、それぞれが3つのピン38で支持されるため、両端部44のそれぞれを2つのピン38で支持しつつ残りの1つのピン38を移動できる。このため、安定した状態のまま振動部材36の固有振動数の調整操作ができる。また、固有振動数を調整しても、2つのピン38によって振動部材36の上下方向1における位置が維持されるため、振動部材36の上下方向1における位置が変わることによって減衰部材39を付け外しする作業も生じない。
【0048】
第1連結部91および第3連結部93が第1上フランジ15と第1下フランジ16の間に囲まれ、第2連結部92および第4連結部94が第2上フランジ25と第2下フランジ26の間に囲まれた状態で連結されるため、振動によってフレーム37が第1H形鋼11および第2H形鋼12から不意に外れることがない。
【0049】
[変形例]
上述の実施形態では、ピン38が第1貫通穴72および第2貫通穴73に沿って左右方向3に移動可能に支持される場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。例えば、ピン38は、溝に沿って移動してもよい。ピン38が左右方向3に移動して振動部材36が共振する振動数を変えることが可能なものであればよい趣旨である。
【0050】
上述の実施形態では、フレーム37は、第1支持部84および第2支持部85によって第1受部66および第2受部67が支持されて、第1受部66および第2受部67の間に開口部61が位置する場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。フレーム37は、振動部材36を複数のピン38によって支持すればよく、第1支持部84、第2支持部85、或いは開口部61を有しなくてもよい。
【0051】
上述の実施形態では、第1貫通穴72および第2貫通穴73が、第1錘48および第2錘49から離間する左右方向3に沿って延びる場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。第1貫通穴72および第2貫通穴73は、例えば、前後方向2に沿って延びる部分を含んでもよい。第1貫通穴72および第2貫通穴73は、ピン38を移動することで振動部材36の共振する振動数を変えることができればよい趣旨である。
【0052】
上述の実施形態では、第1部材130は、第1平板133と第1金具135とに挟持され、第2部材131は、第2平板139と第2金具141とに挟持されている場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。第1部材130は、第1支持部84と第1錘48との間に挟持されてもよく、第2部材131は、第2支持部85と第1錘48との間に挟持されてもよい。また、第1部材130および第2部材131は、第1錘48との間ではなく、第2錘49との間に挟持されてもよい。
【0053】
上述の実施形態では、ピン38が第1受部66および第2受部67のそれぞれにおいて3つが位置している場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。ピン38は、それぞれ2つが位置してもよいし、それぞれ4つ以上が位置してもよい。
【0054】
上述の実施形態では、第1拡壁98は、第1壁97から第1H形鋼11の第1上フランジ15、第1下フランジ16に上下方向1において囲まれている場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。第1拡壁98は、例えば、第1上フランジ15および第1下フランジ16を上下方向1から囲むものであってもよいし、第1上フランジ15および第1下フランジ16のいずれかが上下方向1における外側に位置するものであってもよい。また、第2拡壁106、第3拡壁114、および第4拡壁122も同様である。
【0055】
上述の実施形態では、第1貫通穴72および第2貫通穴73に嵌まる突出部76は、固定部材75に下方から螺合されたボルトの頭である場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。突出部76は、例えば、固定部材75から下方に突出する突起であってもよい。
【0056】
[付記1]
第1梁と第2梁との間に架け渡されるフレームと、
上記フレームから上方に突出する複数のピンと、
複数の上記ピンに支持される振動部材と、
複数の上記ピンの間において上記フレームと上記振動部材とに挟持されており、上記振動部材の振動を減衰する減衰部材と、を備えており、
上記振動部材は、
複数の上記ピンに支持される板バネと、
複数の上記ピンの間において上記板バネに固定された錘と、を有しており、
上記フレームは、複数の上記ピンを移動可能に支持する制振装置。
【0057】
[付記2]
上記フレームは、上下方向に貫通する貫通穴を有しており、
上記ピンは、上記貫通穴に挿通された状態で、固定部材により上記フレームに固定されている付記1に記載の制振装置。
【0058】
[付記3]
上記フレームは、
上記板バネの両端部の下面に対向する板状の受部と、
上記錘の下方において上記受部に挟まれた位置において開口する開口部と、
上記受部を上記第1梁および上記第2梁の間において支持する支持部と、を更に有する付記2に記載の制振装置。
【0059】
[付記4]
上記貫通穴は、上記受部において上記錘から離間する方向に沿って延びており、
上記減衰部材は、上記支持部と上記錘との間に挟持されている付記3に記載の制振装置。
【0060】
[付記5]
複数の上記ピンは、上記板バネの両端部においてそれぞれ3つが位置している付記1または2に記載の制振装置。
【0061】
[付記6]
上記フレームは、上記第1梁および上記第2梁に連結する連結部を有しており、
上記第1梁および上記第2梁は、上フランジと、上記上フランジに対向する下フランジと、をそれぞれ有しており、
上記連結部は、上下方向において上記上フランジと上記下フランジとに囲まれている付記1または2に記載の制振装置。
【符号の説明】
【0062】
10・・・制振装置
11・・・第1H形鋼(第1梁)
12・・・第2H形鋼(第2梁)
15・・・第1上フランジ(上フランジ)
25・・・第2上フランジ(上フランジ)
16・・・第1下フランジ(下フランジ)
26・・・第2下フランジ(下フランジ)
36・・・振動部材
37・・・フレーム
38・・・ピン
39・・・減衰部材
42・・・板バネ
43・・・錘
44・・・板バネ42の両端部
60・・・受部
61・・・開口部
62・・・貫通穴
63・・・支持部
75・・・固定部材
90・・・連結部
図1
図2
図3
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図5
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図9