(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015050
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】グリップ圧測定センサ及びグリップ圧測定装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20250123BHJP
A63B 53/14 20150101ALI20250123BHJP
A63B 60/46 20150101ALI20250123BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20250123BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20250123BHJP
A63B 102/02 20150101ALN20250123BHJP
A63B 102/18 20150101ALN20250123BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
A63B53/14 Z
A63B60/46
A61B5/11 230
A63B102:32
A63B102:02
A63B102:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118140
(22)【出願日】2023-07-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載 掲載日:令和5年3月10日、掲載サイト:公営財団法人鳥取県産業振興機構のウェブサイト〈https://www.toriton.or.jp/〉の「2023/03/10 トピックス」
(71)【出願人】
【識別番号】390034728
【氏名又は名称】イナバゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】岡本 吉久
(72)【発明者】
【氏名】河原 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 こず恵
【テーマコード(参考)】
2C002
2F051
4C038
【Fターム(参考)】
2C002AA06
2C002LL04
2C002ZZ05
2F051AA19
2F051AB07
2F051BA05
4C038VA04
4C038VB12
(57)【要約】
【課題】グリップを備える運動用具のグリップ圧を測定するのに最適なグリップ圧測定センサ及びこのグリップ圧測定センサを用いたグリップ圧測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】グリップ圧測定センサ10は、X方向及びY方向に並んだ複数の検出部Dを備えるフレキシブル基板1と、検出部の上に配置された感圧導電性エラストマー2と、からなり、フレキシブル基板1は、検出部Dを構成する一対の電極A、Bと、一方の電極Aに接続し、隣り合う検出部の間をX方向に伸びた湾曲形状の一方の電極配線JAと、他方の電極Bに接続し、隣り合う検出部の間をY方向に伸びた湾曲形状の他方の電極配線JBと、で形成されている。また、グリップ圧測定装置は、運動用具のグリップに巻き付けられたこのグリップ圧測定センサ10と、測定値を解析する解析手段20とからなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップを備えた運動用具のグリップ圧を測定するために用いるシート状のグリップ圧測定センサであって、
X方向及びY方向に並んだ複数の検出部を備えるフレキシブル基板と、
前記検出部の上に配置された感圧導電性エラストマーと、からなり、
前記フレキシブル基板は、
前記検出部を構成する一対の電極と、
前記一対の電極の一方の電極に接続し、隣り合う前記検出部の間をX方向に伸びた湾曲形状の一方の電極配線と、
前記一対の電極の他方の電極に接続し、隣り合う前記検出部の間をY方向に伸びた湾曲形状の他方の電極配線と、
で形成されていることを特徴とするグリップ圧測定センサ。
【請求項2】
前記フレキシブル基板の裏面側と、前記感圧導電性エラストマーの表面側には、保護シートが配置されていることを特徴とする請求項1に記載のグリップ圧測定センサ。
【請求項3】
前記感圧導電性エラストマーは、膜厚100~500μmであることを特徴とする請求項1に記載のグリップ圧測定センサ。
【請求項4】
グリップを備えた運動用具の該グリップに巻き付けられた請求項1から3の何れかに記載のグリップ圧測定センサと、
前記グリップ圧測定センサからの測定値を解析する解析手段と、
からなることを特徴とするグリップ圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリップ圧測定センサ及びグリップ圧測定装置に関して、詳しくは、運動用具のグリップ圧を測定するために用いられ、X方向及びY方向に並んだ複数の検出部を備えるグリップ圧測定センサ及びグリップ圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツの中にはゴルフで使うゴルフクラブ、野球で使うバット、テニスで使うラケットのようにグリップを備える運動用具を用いたスポーツも多い。そして、このような運動用具を用いるスポーツにおいては、グリップの握り方は非常に重要である。そのため、グリップの正しい握り方について指導されることも多い。一方で、正しい握り方はわかるが、実際にグリップが握られている時や、その動作中において、握られたグリップに手からどのような力が加わっているのか、つまり、どのような圧力分布になっているのかはあまりわかっていないのが現実である。したがって、例えば、プロの圧力部分布がわかることで、自分との違いを比較でき、より詳しく握り方のコツを理解することができ、技術の上達が期待できる。
【0003】
例えば、ゴルフクラブのグリップのグリップ圧を測定するためのものとして、特許文献1のようなグリップ圧力分布センサが知られている。
このグリップ圧分布センサは、シート状の感圧センサシート(6)を備えている。このシート状の感圧センサは、一方の電極板(7)と他方の電極板(8)との間に感圧導電ゴムシート(11)を挟んだ構造となっている。そして、この上側の電極板(7)には、行方向に直線状に伸びる複数の電極(12)が設けられ、下側の電極板(8)には、列方向に直線状に伸びる複数の電極(13)が設けられた構成となっている。
また、ここで用いられている感圧導電ゴムシートについては、非特許文献1にあるように本願出願人のホームページ等において、その原理が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】イナバゴム株式会社、製品紹介、イナストマー、原理とメカニズム 検索日:令和5年2月23日〈http://www.inaba-rubber.co.jp/products/inastomer/mechanism.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、グリップ圧を測定するためには、特許文献1のようなシート状の感圧センサをグリップに取り付ける必要があるが、グリップの形状は一般的には円柱状となるため、感圧センサはグリップの円周方向に巻き付けられて取り付けられることになる。
また、例えば、ゴルフクラブや野球のバットのグリップは、単純な円柱状ではなく、グリップの長さ方向においても太さが変化している。
【0007】
このようなグリップに、特許文献1のような上下の電極板で感圧導電ゴムシートを挟んだ構造の感圧センサを巻き付けて取り付けると、電極構造が直線状であることから電極に伸縮性がなく、グリップへの巻き付けや太さの違いに追従し難く、感圧センサをグリップに巻き付けることが難しいという問題がある。また本願の発明者もこのような構成の感圧センサを実際に巻き付けようとしたところ、うまく巻き付けることができなかった。
【0008】
また、感圧導電ゴムシートは、特許文献1で具体的に記載されている横浜ゴム株式会社製(CS57-7RSC)のようなものになると、シート厚が0.5mm程度ある。この程度のシート厚になると、グリップに少しだけ手を添えているような低荷重の際の圧力測定が難しい。従って、例えば、最初はリラックスした状態でグリップを握り、インパクトの瞬間に力を入れるような握りになるような、グリップ圧の変化を測定しようとするとリラックスしている際の圧力は微圧である為測定が難しく、グリップ圧の変化を測定することが困難となる。
【0009】
また、シート厚が厚くなればなる程剛性が高くなり、グリップへ巻き付ける際の追従性がなくなるので、グリップへの巻き付け加工が困難となる。また、あまり厚くなると、グリップへ巻き付けることにより最初から感圧導電ゴムシートに応力が加わった状態になってしまい、最初からある程度の圧力が加わっているような状態が生じてしまうことになる。
【0010】
そこで、本発明は、グリップを備える運動用具のグリップ圧を測定するのに最適なグリップ圧測定センサ及びこのグリップ圧測定センサを用いたグリップ圧測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のグリップ圧測定センサは、グリップを備えた運動用具のグリップ圧を測定するために用いるシート状のグリップ圧測定センサであって、X方向及びY方向に並んだ複数の検出部を備えるフレキシブル基板と、前記検出部の上に配置された感圧導電性エラストマーと、からなり、前記フレキシブル基板は、前記検出部を構成する一対の電極と、前記一対の電極の一方の電極に接続し、隣り合う前記検出部の間をX方向に伸びた湾曲形状の一方の電極配線と、前記一対の電極の他方の電極に接続し、隣り合う前記検出部の間をY方向に伸びた湾曲形状の他方の電極配線と、で形成されていることを特徴とする。
【0012】
フレキシブル基板の一対の電極に接続するそれぞれの電極配線が湾曲形状の配線となっていることから、あらゆる方向に伸び縮みすることができる。したがって、検出部と検出部の間の離間に応じて伸びたり曲がったりでき、円柱状のグリップへの巻き付けや、グリップの太さの違いに追従できるため、グリップ圧測定センサをグリップに容易に巻き付けて取り付けることができる。また、グリップ圧測定センサの構成が、特許文献1のような感圧導電性エラストマーを一対の電極板で挟持する構成ではないので、グリップ圧測定センサを薄くすることができる。
【0013】
また、本発明のグリップ圧測定センサは、前記フレキシブル基板の裏面側と、前記感圧導電性エラストマーの表面側には、保護シートが配置されていることが好ましい。
【0014】
配線が湾曲していることからグリップに巻き付けた際に特定の箇所に力が加わることになり、そこで断線が生じるおそれがあるが、裏面側の保護シートにより配線の断線を防ぐことができる。また、グリップ圧を計測する際には、強く握られたり、強く捩じられたりすることになり、感圧導電性エラストマーを保護することができる。
【0015】
また、本発明のグリップ圧測定センサは、前記感圧導電性エラストマーは、膜厚100~500μmであることが好ましい。
この程度の膜厚であれば、シート厚による剛性の影響も少なくグリップへの巻き付けも加工もおこない易く、また、膜厚による巻き付け時からの応力が生じることによる影響を抑えることができる。なお、グリップ圧の測定において低荷重時の計測も行いたいような場合であれば、感圧導電性エラストマーの膜厚として、100~300μmがより好ましい。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明のグリップ圧測定装置は、グリップを備えた運動用具の該グリップに巻き付けられた前述の何れかに記載のグリップ圧測定センサと、前記グリップ圧測定センサからの測定値を解析する解析手段と、からなることを特徴とする。
上記のような効果に加え、精度のよい測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態のグリップ圧測定センサの平面図である。
【
図2】本実施形態のフレキシブル基板におけるベースフィルムの平面図である。
【
図3】本実施形態のベースフィルムに形成されている一方の電極や一方の電極配線等を示す平面図である。
【
図4】本実施形態のベースフィルムに形成されている他方の電極や他方の電極配線等を示す平面図である。
【
図5】Aは本実施形態の検出部を示す図であり、BはAのVB-VB断面図である。
【
図7】Aはゴルフクラブのグリップに本実施形態のグリップ圧測定センサを取り付けた状態を示す模型の撮像であり、Bは隣り合う検出部の間の配線の状態を示した概念図である。
【
図8】異なる膜厚の感圧導電性エラストマーによる感圧特定を示した図である。
【
図9】本実施形態のグリップ圧測定装置を示すブロック図である。
【
図10】本実施形態のグリップ圧測定装置における測定結果を示した表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0019】
[実施形態]
まず、
図1~
図6を用いてグリップ圧測定センサ10について説明する。本実施形態のグリップ圧測定センサ10は、運動用具であるゴルフクラブのグリップ圧を測定するために用いるものである。
図1はグリップ圧測定センサ10を示す平面図である。
図2は、フレキシブル基板1を構成するベースフィルム11を示す平面図である。
図3は一方の電極である電極Aや、電極Aに接続する電極配線JA等を示す図である。
図4は他方の電極である電極Bや、電極Bに接続する電極配線JB等を示す図である。
図5Aは検出部Dを示す平面図であり、
図5Bは
図5AのVB-VB断面図である。
図6は
図5AのVI-VI断面図である。
【0020】
グリップ圧測定センサ10は、X軸方向に沿って12行並んだ電極配線JAと、Y軸方向に沿って5列並んだ電極配線JBとを配し、この電極配線JAと電極配線JBとが交差する部分を検出部Dとしたものである。そして、グリップ圧測定センサ10は、5×12の60個の検出部Dを有するパッシブマトリクス駆動となっている。
【0021】
グリップ圧測定センサ10は、検出部Dを備えるフレキシブル基板1と、検出部Dの上に配置された矩形状の感圧導電性エラストマー2と、表面側に配置された矩形状の表保護シート3と、裏面側に配置された矩形状の裏保護シート4と、からなる。なお、
図1には2点鎖線で記されている。
【0022】
[フレキシブル基板1]
フレキシブル基板1は、一対の電極(一方の電極Aと他方の電極B)からなる検出部Dと、一方の電極Aに接続する電極配線JAと、他方の電極Bに接続する電極配線JBと、電極Aを後述の計測機器21へ電極配線JAを介して接続する端子部TAと、電極Bを計測機器21と電極配線JBを介して接続する端子部TBと、からなる。
【0023】
検出部Dは、X軸方向には5個(5列)、Y軸方向には12個(12行)設けられており、合計60(5×12)からなる。この検出部Dは、一対の電極(一方の電極Aと他方の電極B)で形成されている。
【0024】
電極Aや電極Bは、フレキシブル基板1の表面側(ベースフィルム11の表面側)に位置する櫛歯状の電極である。電極Aは正または負の電極となり、電極Bはその反対に負または正の電極となる。
【0025】
電極配線JAは、フレキシブル基板1の裏面側(ベースフィルム11の裏面側)に位置し、X軸方向(横方向)に沿って曲がりながら伸びる湾曲形状の配線である。この電極配線JAは、検出部Dの電極Aと電気的に接続(スルーホール13を介して接続)しており、本実施形態では「一方の電極配線」を成している。このX軸方向に伸びる電極配線JAは、Y軸方向に12本並んで設けられている。
【0026】
電極配線JBは、フレキシブル基板1の表面側(ベースフィルム11の表面側)に位置し、Y軸方向(縦方向)に沿って曲がりながら伸びる湾曲形状の配線である。この電極配線JBは、検出部Dの電極Bと電気的に接続しており、本実施形態では「他方の電極配線」を成している。このY軸方向に伸びる電極配線JBは、X軸方向に5本並んで設けられている。
【0027】
端子部TAは、フレキシブル基板1の表面側(ベースフィルム11の表面側)の前方端に位置している。この端子部TAは、電極配線JAと接続する電極Aを計測機器21と接続するためのものであり、電極配線JAの本数に対応し12個の端子TA1~12からなる。また、端子部TAは、ベースフィルム11の裏面側に配設されている引出配線Lと、スルーホール14を介して接続している。
【0028】
なお、この引出配線Lは、
図3に示すように、フレキシブル基板1の前方と右方に跨って逆L字型に配設されている。そして、引出配線Lは、各電極配線JAと各端子TAとをそれぞれ接続するための配線となっており、長さの異なる12本の配線で構成されている。
【0029】
端子部TBは、フレキシブル基板1の表面側(ベーフィルム11の表面側)の前方側に位置している。この端子部TBは、電極配線JBと接続する電極Bを計測機器21と接続するためのものであり、電極配線JBの本数に対応し5個の端子TB1~5からなる。
なお、前後の方向については、
図1において示しているX-Yの座標軸のY軸方向原点側を後方としたものである。
【0030】
次に、フレキシブル基板1の構成についてより詳細に説明する。
[ベースフィルム11]
ベースフィルム11は、
図2に示す形状となっている。具体的には、マトリクスに配置された正方形状の検出部Dの領域と、検出部Dの前後から突き出してX方向へと伸びる電極配線JAの領域と、検出部Dの左右から突き出してY方向へと伸びる電極配線JBの領域と、前方と右方の引出配線Lや端子部TA、TBの領域を有する形状となっている。
そして、検出部Dを中心に伸びる電極配線JA、JBの領域は、
図2に示すように、その前後左右の検出部Dへと所謂卍状をなして伸びている。
【0031】
このベースフィルム11は、可撓性を有した絶縁性のベースフィルムをパターニングして形成したものである。また、このようなベースフィルム11としては、一般的に用いられているポリイミド等を用いることができる。
【0032】
[電極A、電極B]
各検出部Dにおいて、電極Aと電極Bは、フレキシブル基板1の表面側において、前後2つの櫛の歯がかみ合った状態で接近したものである。この内、
図3に示すように後方に位置する櫛歯が電極Aある。また、
図4に示すように前方に位置する櫛歯が電極Bとなっている。
【0033】
電極Aは、
図5B、
図6に示すように、電極配線JBと同じく、ベースフィルム11の表面側に形成されている。具体的には、ベースフィルム11の表面側に形成された銅等の金属膜をエッチングして電極配線JBと共に櫛歯状に形成され、更にその櫛歯状の表面を金メッキして電極Aは形成されている。また、この電極Aは、
図6に示すように、スルーホール13を介して、ベールフィルム11の裏面側に形成されている電極配線JAと導通している。
【0034】
電極Bも電極Aと同様に、
図5Bに示すように、電極配線JBと同じく、ベースフィルム11の表面側に形成されている。具体的には、電極Aと同様に、ベースフィルム11の表面側に形成された金属膜をエッチングして電極配線JBと共に櫛歯状に形成され、更にその櫛歯状の表面を金メッキして電極Bは形成されている。
【0035】
[電極配線JA]
電極配線JAは、検出部Dを経由しながら、X方向(横方向)へ伸びる湾曲形状の配線となっている。具体的には、
図3や
図5Aに示すように、電極配線JAは、検出部Dの前後から飛び出して伸びている。そして検出部Dの後方から伸びた電極配線JAは、右隣りにある検出部Dの前方へと曲がりながら伸びている。
【0036】
より具体的には、左隣りにある検出部Dを貫くようにY方向へと伸びた電極配線JAは、この検出部Dの後方において90度に曲がるR11を経由してX方向へと伸び、90度に曲がるR12を経由してY方向へと伸び、90度に曲がるR13を経由してX方向へと伸び、90度に曲がるR14を経由して右隣りにある検出部Dの前方へと至って伸びる。このような曲がりを繰り返しながら、電極配線JAは、検出部Dを経由しながら、X方向へと伸びている。また、検出部Dを前後に貫くように伸びるR11とR14との間においては、幅広に形成されている。
【0037】
このような電極配線JAは、検出部Dの位置では電極Aや電極Bと直接に接しないよう、
図5Bに示すようにベースフィルム11の裏面側に形成されている。そして、電極配線JAは、検出部Dの電極Aと交差する位置において、スルーホール13を介して、電極Aと接続する。
【0038】
[電極配線JB]
電極配線JBは、電極Bと接続しながら、Y方向(縦方向)へ伸びる湾曲形状の配線となっている。具体的には、
図4や
図5Aに示すように、電極配線JBは、櫛歯状の電極Bの左右両端から飛び出すように伸びている。そして、右端から伸びた電極配線JBは、前段にある検出部Dの電極Bの左端へと曲がりながら伸びている。
【0039】
より具体的には、後段にある検出部Dの電極Bの右端からX方向へと伸び、90度に曲がるR21を経由してY方向へと伸び、90度に曲がるR22を経由してX方向へと伸び、90度に曲がるR23を経由してY方向へと伸び、90度に曲がるR24を経由して前段にある検出部Dの電極Bの左端へとつながる。このよう曲がりを繰り返しながら、電極配線JBは電極Bを介しながら、Y方向へと伸びている。また、電極Bの両端に接続するR21とR24においては、幅広に形成されている。このような電極配線JBは、ベースフィルム11の表面側に形成されている。
【0040】
[端子部TA、端子部TB]
端子部TA(端子TA1~12)、端子部TB(端子TB1~5)は、電極Aや電極Bと同様に、ベースフィルム11の表面側に形成されており、具体的には、ベースフィルム11の表面側に形成された金属膜をエッチングして電極配線JBと共に矩形状に形成され、更にその矩形状の表面を金メッキして端子部TA、端子部TBは形成されている。
また、端子部TAは、フレキシブル基板1の裏面側に形成されているL字形の引出配線Lとスルーホール14を介して接続している。
【0041】
フレキシブル基板1は、主な構成が上記のようなものとなっている。なお、
図5Bや
図6に示しているように、ベースフィルム11の表面側や裏面側では、電極A、Bと端子部TA、TBを露出させるようにして、電極配線JA、JBや引回配線Lが絶縁膜12で覆われている。
【0042】
[グリップ圧測定センサ10]
上記のようフレキシブル基板1に対して、
図5B、
図6に示すように、表面側では、厚さ100μmの矩形状の感圧導電性エラストマー2が全体を覆うように貼り付けられている。この感圧導電性エラストマー2は非特許文献1で知られているように、シリコンなどのゴム材にカーボン、金属粉や金属蒸着粉等の導電性粒子が一定の配合割合で均一に混入されたものであり、圧力を加えると抵抗が少なくなるものである。
【0043】
また、感圧導電性エラストマー2は、非常に薄いことから、剛性による影響も少なくグリップGへの巻き付けも容易であり、またグリップGに巻き付けた際に感圧導電性エラストマー2に加わる応力を抑制することができ、本来備えている感圧導電性エラストマー2の特性を十分に生かすことができる。なお、感圧導電性エラストマー2の膜厚としては、本発明者が検証によれば、本実施形態のような100μmから500μmの膜厚であれば、運動用具のグリップ圧の測定に適する。また、このような膜厚の感圧導電性エラストマー2であれば、グリップ圧測定センサ10に用いた際にも、グリップGを握った際の違和感も生じ難いので、通常のグリップGを握っている感覚でスイングすることができる。
【0044】
そして、感圧導電性エラストマー2の表面には、厚さ100μmの弾力性がある表保護シート3(例えば、シリコンゴムシート)が全体を覆うように貼り付けられている。
また、フレキシブル基板1の裏面にも厚さ100μmで弾力性がある裏保護シート4(例えば、シリコンゴムシート)が全体を覆うように貼り付けられている。
【0045】
このような表保護シート3を貼り付けておくことより、フレキシブル基板1や感圧導電性エラストマー2を保護することができる。とくにグリップ圧を測定する際には、使用者によっては非常に強く握ったり、強く捩じったりするので、このような表保護シート3は有効である。
【0046】
また、裏保護シート4を貼り付けておくことにより、フレキシブル基板1の各配線の断線を防ぐことができる。とくに本実施形態のグリップ圧測定センサ10は、ゴルフクラブのグリップGに巻き付けられた状態となるため、この巻き付けによる応力が配線に加わり続けることになり断線が生じやすくなる。したがって、このような裏保護シート4は断線の低減に有効である。
【0047】
上記のような本実施形態のフレキシブル基板1は、一対の電極A、電極Bが検出部Dを構成しており、この電極Aに接続する電極配線JAが湾曲形状の配線からなり、電極Bに接続する電極配線JBも湾曲形状の配線となっている。
【0048】
したがって、隣り合う検出部Dと検出部Dとの間においては、湾曲形状の電極配線JA、JBは、隣り合う検出部Dと検出部Dとの間の離間に対応して、あらゆる方向に伸びたり、曲がったりすることが可能となる。この点について、実際のグリップGへの取り付け例を示して具体的に説明する。
【0049】
[グリップ圧測定センサ10の取り付け]
次に、本実施形態のグリップ圧測定センサ10をゴルフクラブのグリップGへの取り付けや、その効果について説明する。
図7を用いて、グリップ圧測定センサ10のゴルフクラブのグリップGへの取り付けを説明する。
図7Aはフレキシブル基板1の模型を、円錐台形のグリップGの模型に貼り付けた撮像であり、
図7Bは隣り合う検出部Dとの間が伸張により離間したときの変形を示した平面図である。なお、
図7Bは
図7Aと同じ方向にするために、
図5Aを時計方向に90度回転させた図となっている。
【0050】
ところで、そもそもゴルフクラブのグリップGの形状は、クラブ側の先端が細く、後端となるグリップエンド側が太い円錐台となっている。つまり、グリップG全体が同じ太さというわけではなく、場所によって太さが異なる。これはゴルフクラブのグリップGに限ったことではなく、野球のバット等、他の運動用具のグリップでも同様である。
【0051】
したがって、例えば、グリップGの展開図は扇形のようになる。一方、本実施形態のグリップ圧測定センサ10は、
図1等に示すように、通常はほぼ矩形なものである。
【0052】
このため、グリップGのグリップ圧測定センサ10を巻き付けて取り付けようとすると、太いグリップエンド側(
図7AではグリップGの右側がグリップエンド側)に向かうにしたがって、隣り合う検出部Dとの間は離間することになり、検出部Dと検出部Dとを結ぶ配線も、この離間に応じて伸びる必要がある。
【0053】
本実施形態のグリップ圧測定センサ10は、隣接する検出部D間の配線(電極配線JA、JB)が湾曲した形状となっている。このため、検出部Dと検出部Dとの間が離れたとしても、
図7Bに示すように配線の湾曲が伸びることでこの検出部D間の離間に対して、配線(電極配線JA、JB)が容易に追従することができる。つまり、グリップ圧測定センサ10は、グリップGの表面形状に沿って、円周方向に対する巻き付けや、太さ変化に対する巻き付けに対して、容易に追従することができる。
【0054】
また、グリップ圧測定センサ10は、検出部Dと検出部Dとの間が全て湾曲形状の配線で形成されていることから、検出部Dが形成されている領域全体で、あらゆる方向に伸びたり、曲がったりすることができる。したがって、仮にグリップGの一部に部分的な突出部のようなものがあったとして、このような部分的な変化にも対応して取り付けることが可能である。
【0055】
また、グリップ圧測定センサ10は、特許文献1のような感圧導電性エラストマーを一対の電極板で挟持する構成ではなく、検出部Dを形成する一対の電極Aと電極Bとの上に感圧導電性エラストマー2を配置した構成となっているため、特許文献1に比べ薄型化できる。このため、従来に比べグリップ圧測定センサ10は、容易にグリップGに巻き付けて取り付けることができる。
【0056】
また、上記のように本実施形態のグリップ圧測定センサ10には、非常に薄い膜厚100μmの感圧導電性エラストマー2を用いているため、グリップGに巻き付けた際に感圧導電性エラストマー2に加わる応力を抑制することができ、感圧導電性エラストマー2の特性を十分に生かすことができる。
【0057】
なお、
図8には、本実施形態で用いた膜厚100μmの感圧導電性エラストマー2(試料No.1~3)と、膜厚500μmの感圧導電性エラストマー(試料No.1~3)を用いた感圧特性について示している。
図8からわかるように、低荷重(圧力)において膜厚500μmに比べ膜厚100μmの方が抵抗値の変化が大きくなっている。したがって、グリップに少しだけ手を添えているような低荷重の際の圧力測定も精度よく行うことができる。例えば、ゴルフのスイングのような、最初はリラックスした状態からインパクトの瞬間のような力を入れた状態となるグリップ圧の大きな変化や、微圧な圧力分布についての測定も容易におこなうことができる。
【0058】
なお、グリップ圧測定センサ10をグリップGに巻き付けた際、本実施形態では、感圧導電性エラストマー2よりもフレキシブル基板1側がグリップG側に位置していた。しかしながら、この構成に限定するわけではなく、フレキシブル基板1よりも感圧導電性エラストマー2側がグリップG側に位置する巻き付けとしてもよい。
【0059】
[グリップ圧測定装置100]
次に、本実施形態のグリップ圧測定センサ10を備えて、実際にグリップ圧の測定を行うグリップ圧測定装置100について説明する。
図9はグリップ圧測定装置100を示すブロック図である。本実施形態のグリップ圧測定装置100は運動用具であるゴルフクラブのグリップ圧を測定する装置である。
【0060】
図9に示すように、グリップ圧測定装置100は上述のグリップ圧測定センサ10と、解析手段20と、からなる。解析手段20はグリップ圧測定センサ10からの出力を解析して使用者の使用目的に適合した制度の高い測定を行う。この解析手段20は計測機器21と、PC(パーソナルコンピュータ)22と、からなる。
【0061】
計測機器21は、計測回路211と、マルチプレクサ212と、増幅回路213と、A/D(アナログ/デジタル変換器)214と、記憶回路215と、からなる、計測回路211は、グリップ圧測定センサ10からのグリップ圧の出力を定電圧の電流測定や定電流の電圧測定などで抵抗に対応する圧力を計測する。マルチプレクサ212は、マトリクス状に並んだ複数の検出部Dへの測定用通電を順次切り替える。増幅回路213は、グリップ圧測定センサ10の出力を増幅する。A/D214は計測機器21からのアナログ信号をPC22で処理し易いようにデジタルに変換する。記憶回路215はデジタルに変換された信号を保存する。この保存されたデータはPC22に出力される。
【0062】
PC22は、制御回路221と、記憶回路222と、表示部223と、入力部224と、からなる。制御回路221は各部を制御する。記憶回路222は制御回路221が実行するプログラムや、記憶回路222が制御するのに必要なデータなどを記憶する。表示部223は液晶表示器により使用者の操作や情報を表示する。入力部224はキーボードやマウスにより入力を行う。
【0063】
図10は、本実施形態のグリップ圧測定装置100を用いてゴルフクラブのグリップ圧を測定した結果を、表示部223に表示した例である。本実施形態では、検出部D毎に圧力範囲に応じたカラーマップ表示を表示部223で行い、グリップにおける圧力分布を視覚的に理解できるように行っている。
【0064】
なお、
図10に示している圧力分布は、カラーマップのドット数が10×10(100個)となっているが、これは
図1等に示した5×12(60個)の検出部Dで取得したデータを基にして、表示をわかりやすくするために、例えば、隣接する3個のデータの平均値をとる等により、10×10のデータサイズに変換して表示したものとなっている。本実施形態では、このように表示サイズを変更可能としており、検出部Dの数にあわせた5×12の表示サイズでの表示や、
図10のような10×10の表示サイズや、その他の表示サイズでの表示が可能となっている。また、当然ながら、表示結果の表示については他の表示で行ってよい。
【0065】
なお、本実施形態のグリップ圧測定装置100においては、グリップ圧計測センサ10のフレキシブル基板1にある端子部TA、TBと計測機器21との間に配線を介して接続した構成としている。しかしながら、グリップ圧測定装置100は、例えば、計測機器21をグリップGに取り付けて、PC22へ無線通信とする構成を採用することもできる。このような構成であれば、ゴルフクラブとグリップ圧測定装置100との間に接続用の配線が不要となるため、スイングの際にも違和感なく行うことができる。
【0066】
また、本実施形態はゴルフクラブのグリップ圧測定であったが、本発明は、他の運動用具、たとえば、野球のバット、テニスラケット、バドミントンラケット、卓球のシェイクハンド用ラケットにも適用することができる。
本実施形態の検出部Dは電極Aと電極Bが櫛形であったが、本発明の電極Aと電極Bは形状を限定するものではない。例えば、渦巻き形であってもよい。
【0067】
また、本実施形態の隣り合う検出部Dの間の配線(電極配線JA、JB)は、
図1のような卍状のように伸びる形状となっていたが、配線の形状は検出部Dの離間に追従して伸縮できる形状であればよいので、例えば、もう少し緩やかな湾曲形状であったり、渦巻きのような形状であったりしてもよい。また、このような配線の湾曲形状としては、ミアンダ形状と呼ばれるような蛇行形状を採用することもできる。
【0068】
また、本実施形態は
図2に示すベースフィルム11の形状のように、電極配線JA、JBの形状に沿った形状となっていた。しかしながら、ベースフィルム11にゴムのような伸縮可能な一枚の矩形状のフィルム基材を用い、この矩形状のフィルム基材の表面に湾曲形状の配線を形成し、矩形状のフィルム基材全体で伸縮可能なグリップ圧計測センサ10を形成することもできる。また、グリップ圧計測センサ10は、検出部Dのある検出エリアにおいては、このようなフィルム基材全体で伸縮可能な構成を採用し、検出エリア外(端子部TA、TB、引出配線L)では非伸縮とする構成を採用することもできる。
【0069】
また、本実施形態の感圧導電性エラストマー2は
図1に示すようにフレキシブル基板1全体を覆う長方形であったが、検出部Dのみを覆うような正方形のものを複数枚用いてもよい。また、裏保護シート4はフレキシブル基板1と同じ形状にくり抜いてもよい。表保護シート3は手に握られてスイングされることから、怪我防止の為にフレキシブル基板1と同じ形状にくり抜くことは好ましくないが、そうすることは可能である。
【符号の説明】
【0070】
100…グリップ圧計測装置
10…グリップ圧計測センサ
1…フレキシブル基板
11…ベースフィルム
12…絶縁膜
13、14…スルーホール
D…検出部
A…一方の電極
B…他方の電極
JA…一方の電極配線
JB…他方の電極配線
TA、TB…端子部
2…感圧導電性エラストマー
3…表保護シート
4…裏保護シート