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特開2025-15056再生ゴム含有ゴム組成物および空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015056
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】再生ゴム含有ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 17/00 20060101AFI20250123BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250123BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20250123BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C08L17/00
B60C1/00 Z
B60C1/00 A
B60C19/00 L
B60C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118151
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA02
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA12
3D131BA20
3D131BC09
3D131BC22
3D131BC31
3D131LA26
4J002AC01W
4J002AC13X
4J002DA030
4J002FD010
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】加硫ゴムとしたときに破壊特性や耐疲労性に優れた再生ゴム含有ゴム組成物、および再生ゴム含有ゴム組成物を加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】再生ゴムを含有する再生ゴム含有ゴム組成物であって、再生ゴムが、下記特定の評価用ゴム組成物の加硫ゴムを原子間力顕微鏡で測定したゴム弾性率が2.0MPa以上の値を示す再生ゴムであることを特徴とする再生ゴム含有ゴム組成物。
評価用ゴム組成物;イソプレンゴム100質量部に対し、再生ゴムを20質量部含有し、かつカーボンブラックを含有しないゴム組成物
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ゴムを含有する再生ゴム含有ゴム組成物であって、
前記再生ゴムが、下記特定の評価用ゴム組成物の加硫ゴムを原子間力顕微鏡で測定したゴム弾性率が2.0MPa以上の値を示す再生ゴムであることを特徴とする再生ゴム含有ゴム組成物。
評価用ゴム組成物;イソプレンゴム100質量部に対し、前記再生ゴムを20質量部含有し、かつカーボンブラックを含有しないゴム組成物
【請求項2】
前記評価用ゴム組成物が、イソプレンゴム100質量部に対し、硫黄を1.5質量部含有するものである請求項1に記載の再生ゴム含有ゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記再生ゴムを1~10質量部含有する請求項1に記載の再生ゴム含有ゴム組成物。
【請求項4】
前記再生ゴムが、タイヤトレッド由来の再生ゴムである請求項1に記載の再生ゴム含有ゴム組成物。
【請求項5】
前記再生ゴムが、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、天然ゴムおよびイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を50質量部以上含有する再生ゴムである請求項1に記載の再生ゴム含有ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の再生ゴム含有ゴム組成物を加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ゴム含有ゴム組成物、および再生ゴム含有ゴム組成物を加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、使用済タイヤやその他のゴム製品から生ずる加硫ゴム廃材を再利用することが強く要望されている。
【0003】
下記特許文献1では、微粒径化処理を施し、145メッシュのふるいを通過したものを25%以上含有するように調製された粉ゴムを、更にオイルパン法処理して得られた再生ゴムを含有してなる再生ゴム含有ゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-35663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが鋭意検討したところ、上記従来技術で得られた再生ゴム含有ゴム組成物では、加硫ゴムとしたときに破壊特性や耐疲労性の点でさらなる改良の余地があることが判明した。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加硫ゴムとしたときに破壊特性や耐疲労性に優れた再生ゴム含有ゴム組成物、および再生ゴム含有ゴム組成物を加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤを提供することにある。
【0007】
上記課題は下記の如き構成により解決し得る。すなわち本発明は、再生ゴムを含有する再生ゴム含有ゴム組成物であって、前記再生ゴムが、下記特定の評価用ゴム組成物の加硫ゴムを原子間力顕微鏡で測定したゴム弾性率が2.0MPa以上の値を示す再生ゴムであることを特徴とする再生ゴム含有ゴム組成物(1)に関する。
評価用ゴム組成物;イソプレンゴム100質量部に対し、前記再生ゴムを20質量部含有し、かつカーボンブラックを含有しないゴム組成物
【0008】
上記再生ゴム含有ゴム組成物(1)において、前記評価用ゴム組成物が、イソプレンゴム100質量部に対し、硫黄を1.5質量部含有するものである再生ゴム含有ゴム組成物(2)が好ましい。
【0009】
上記再生ゴム含有ゴム組成物(1)または(2)において、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記再生ゴムを1~10質量部含有する再生ゴム含有ゴム組成物(3)が好ましい。
【0010】
上記再生ゴム含有ゴム組成物(1)~(3)いずれかにおいて、前記再生ゴムが、タイヤトレッド由来の再生ゴムである再生ゴム含有ゴム組成物(4)が好ましい。
【0011】
上記再生ゴム含有ゴム組成物(1)~(4)いずれかにおいて、前記再生ゴムが、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、天然ゴムおよびイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を50質量部以上含有する再生ゴムである再生ゴム含有ゴム組成物(5)が好ましい。
【0012】
また本発明は、上記再生ゴム含有ゴム組成物(1)~(5)いずれかを加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤ(6)に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、特定の再生ゴム、具体的には、下記特定の評価用ゴム組成物の加硫ゴムを原子間力顕微鏡で測定したゴム弾性率が2.0MPa以上の値を示す再生ゴムを含有する。
評価用ゴム組成物;イソプレンゴム100質量部に対し、前記再生ゴムを20質量部含有し、かつカーボンブラックを含有しないゴム組成物
【0014】
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(以下、単に「AFM」ともいう))は探針と試料に作用する原子間力を検出するタイプの顕微鏡であり、広義にはSPMと同義である。AFM探針は、片持ちバネ(カンチレバー)の先端に取り付けられており、カンチレバー種類や信号検出の方法を変えることにより様々な物性測定が可能となる。AFMで探針と試料に働く力の距離依存性は最も基本となる計測量で、フォースカーブと呼ばれる。フォースカーブは、探針と試料の距離制御を行う圧電素子の移動量を横軸に取り、カンチレバーの変位量を縦軸にプロットする。カンチレバーのばね定数kがわかっていれば、変位を力(N)に換算できる。探針と試料を近づけていき、最終的に接触すると斥力が働き、押し込みに応じて斥力が増加する。加硫ゴムのように、カンチレバーのばね定数に比べて試料が柔らかいと、探針の押し込みにより試料表面が変形するのでカンチレバーの変位と圧電素子の移動量は一致しなくなり非線形となる。この関係から試料の局所弾性率を評価することができる。なお、弾性率の定量値を算出するためには探針と試料表面の接触面積を知る必要があるが、現実的にはこれを実測することは不可能である。このため、通常は探針先端の形状を球と仮定した接触モデルの理論計算式をフォースカーブにフィッティングし、そのフィッティングパラメーターから弾性率を得る。
【0015】
本発明者は、イソプレンゴム100質量部に対し、再生ゴムを20質量部含有し、かつカーボンブラックを含有しない評価用ゴム組成物の加硫ゴムをAFMで測定した。加硫ゴム中の再生ゴム以外を除くマトリックス領域のゴム弾性率を2.0MPa以上に増加させる再生ゴムは、未加硫のゴム(新ゴム)に配合した場合の加硫ゴムは、破壊特性や耐疲労性を維持向上し得ることを見出した。このような効果を奏する理由は明らかではないが、上記再生ゴムは新ゴム中に配合された際、相溶効果が高まり、再生ゴムの分散性が向上することに起因して、補強効果に優れるため、一般的な再生ゴムを配合する場合に比して、再生ゴムが破壊特性や耐疲労性に与える悪影響を著しく低減できることが理由であると考えられる。さらに、再生ゴムが、タイヤトレッド由来の再生ゴムである場合、特に再生ゴムが、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、天然ゴムおよびイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を50質量部以上含有する再生ゴムである場合、再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムの破断強度向上に繋がるため好ましい。
【0016】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、加硫ゴムとしたときに破壊特性や耐疲労性に優れる。このため、空気入りタイヤ用ゴム組成物として、特には空気入りタイヤのトレッド用ゴム組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、再生ゴムを含有する。以下に、再生ゴムについて説明する。
【0018】
再生ゴムは、一般的に廃タイヤなどの廃ゴムを粉砕し、脱硫処理を施すことにより製造される。廃タイヤは、タイヤを構成するトレッドやサイドウォールなどの多種多様な部材を含有するが、本発明では、再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムの破断強度向上の見地から、再生ゴムがタイヤトレッド由来の再生ゴムであることが好ましい。タイヤトレッド由来の再生ゴムとしては、例えば更生タイヤを製造する際に、トレッド部分を削って得た廃ゴムを原料として製造された再生ゴムが挙げられる。
【0019】
本発明においては、再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムの破断強度向上の見地から、再生ゴムが、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、天然ゴムおよびイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を、50質量部以上含有する再生ゴムであることが好ましく、70質量部以上含有する再生ゴムであることがより好ましい。
【0020】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物が含有する再生ゴムは、例えば天然ゴムの割合が豊富であるトラックバス用タイヤのタイヤトレッド部材を原料として製造することができる。具体的には、該タイヤトレッド部材をクラッカーロールにて、最大径500μmまで微細化し、さらに気流分流機を使用して、最大径150μmまでのゴム粉を回収し、これを原料として製造することができる。
【0021】
上記で得られたゴム粉を、さらにオイルパン法処理することが好ましい。処理方法としては、例えば上記で微粒径化処理したゴム粉をオートクレーブに投入し、再生剤を加えてスチーム雰囲気下、温度約200℃、3~6時間脱硫反応を行う方法が挙げられる。使用する再生剤は当業者に公知の再生剤、例えば、チオフェノール、nブチルアミンなどが挙げられる。
【0022】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物が含有する再生ゴムは、例えば上記の方法で製造され、以下の特性を備える。
再生ゴムを下記特定の評価用ゴム組成物に配合し、その加硫ゴムを原子間力顕微鏡で測定したゴム弾性率が2.0MPa以上の値を示す。
評価用ゴム組成物;イソプレンゴム100質量部に対し、前記再生ゴムを20質量部含有し、かつカーボンブラックを含有しないゴム組成物
なお、評価用ゴム組成物中にカーボンブラックを含有すると再生ゴムを添加したことによるAFM弾性率像が判別し難くなるため、本発明では、使用する評価用ゴム組成物にカーボンブラックを含有しないものとする。
【0023】
評価用ゴム組成物が、イソプレンゴム100質量部に対し、硫黄を1.5質量部含有する評価用ゴム組成物(1)であることが好ましく、特には、下記配合よりなる評価用ゴム組成物(2)であることが好ましい。
(評価用ゴム組成物(2))
・「イソプレンゴム(ムーニー粘度(ML(1+4)75.0―90.0):商品名「Nipol@IR2200」、日本ゼオン社製」100質量部
・「再生ゴム」20質量部
・「ステアリン酸:商品名「ルナックS-20」、花王社製」2質量部
・「亜鉛華:商品名「亜鉛華1種」、三井金属鉱業社製)」2質量部
・「加硫促進剤:商品名「ノクセラーNS」、大内新興化学工業社製」1.5質量部
・「硫黄:商品名「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」、細井化学工業社製」1.5質量部
【0024】
本発明において、原子間力顕微鏡で測定した加硫ゴムのゴム弾性率は、128ピクセル×128ピクセルでかつ5μm×5μm四方にて観察したマトリックスエリアの平均弾性率を採用する。原子間力顕微鏡で測定した加硫ゴムのゴム弾性率は2.0MPa以上の値を示し、2.5MPa以上であることがより好ましい。上限については特に限定はないが、例えば5.0MPa程度が挙げられる。
【0025】
本発明で使用する再生ゴムは、BET法に基づく比表面積が100~120m/gであるカーボンブラックを含有することが好ましい。かかるカーボンブラックは比表面積が大きいため、再生ゴムが未だ加硫されていない新ゴム中に配合された際、補強性を高める効果があるため好ましい。
【0026】
本発明で使用する再生ゴムは、ゲル分率が75%以下となるように設計されていることが好ましい。これにより、再生ゴムが未だ加硫されていない新ゴム中に配合された際、相溶効果が高まることで、再生ゴムの分散性が向上するため好ましい。
【0027】
本発明で使用する再生ゴムは、平均粒径d70が100μm以下であり、かつ平均粒径d90が150μm以下であることが好ましい。これにより、脱硫処理を実施される際に高分子量体の溶出量が多いことに起因して、再生ゴムのゲル分率がより低くなるため好ましい。なお、再生ゴムの粒度分布の測定方法については後述する。
【0028】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、リサイクルの観点からは再生ゴムをできるだけ多く含有することが好ましいが、再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムの破断強度向上の見地から、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記再生ゴムを1~10質量部含有することが好ましい。
【0029】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、再生ゴム以外に未加硫のゴム(新ゴム)、充填剤、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫遅延剤、有機過酸化物、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を適宜配合することができる。
【0030】
ゴム成分(未加硫のゴム(新ゴム))としては、ジエン系ゴムが好ましく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。ジエン系ゴムとして、好ましくは、天然ゴム、ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴム、またはこれらの2種以上のブレンドである。
【0031】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、充填剤としてカーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、再生ゴム以外のゴム成分の全量を100質量部としたとき、カーボンブラックを0~70質量部配合することが好ましく、30~70質量部含有することがより好ましい。
【0032】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、充填剤としてシリカを含有してもよい。シリカとしては、通常のゴム補強に用いられる湿式シリカ、乾式シリカ、ゾル-ゲルシリカ、表面処理シリカなどが用いられる。なかでも、湿式シリカが好ましい。
【0033】
充填剤としてシリカを含有する場合、併せてシランカップリング剤を含有することも好ましい。シランカップリング剤としては、分子中に硫黄を含むものであれば特に限定されず、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種のシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。
【0034】
硫黄としては通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、再生ゴム以外のゴム成分の全量を100質量部としたとき、硫黄を0.5~5質量部配合することが好ましい。
【0035】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0036】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0037】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物に関し、再生ゴムおよび上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0038】
本発明に係る再生ゴム含有ゴム組成物は、加硫ゴムとしたときに破壊特性や耐疲労性に優れる。このため、空気入りタイヤ用ゴム組成物として、特には空気入りタイヤのトレッド用ゴム組成物として有用である。
【実施例0039】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0040】
(再生ゴムの製造例)
トラックバス用タイヤからタイヤトレッド部材を削り取り、クラッカーロールを使用して最大径500μmまで微細化した。さらに気流分流機を使用して、最大径150μmまで微細化したゴム粉を製造した。得られたゴム粉を微細化する事で、ゴム粉の比表面積が大きくなり、脱硫効果が大きくなる。微粒径化処理した粉ゴムを、それぞれオートクレーブに投入し、再生剤を加えてスチーム雰囲気下、温度約200℃、3~6時間脱硫反応を行うことにより(オイルパン法処理)、再生ゴムA~Bを製造した。さらに、市販品である再生ゴムC(アサヒ再生ゴム社製、商品名「高強力再生ゴム」)、再生ゴムD(村岡ゴム社製、商品名「タイヤリク白線印」)、および再生ゴムE(TBトレッド部材をクラッカーロールにて粉砕し、破砕したゴム粉を気流分級により分級処理したゴム粉)を用意した。各再生ゴムを構成するポリマー比率を表1に示す。表1中、「NR」は天然ゴム、「BR」はブタジエンゴムを意味する。また、各再生ゴムの平均粒径(d50、d70およびd90)を表1に示す。測定方法を以下に示す。
【0041】
<評価用ゴム組成物の加硫ゴムを原子間力顕微鏡で測定したゴム弾性率>
前述した評価用ゴム組成物(2)の配合中、再生ゴムとして再生ゴムA~Eをイソプレンゴム100質量部に対し20質量部含有する評価用ゴム組成物(2)(再生ゴム含有組成物)を作製し、AFM弾性率像を観察した。カーボンブラックを混合すると、再生ゴムを添加したことによる弾性率像の増減が分かりにくいため、ノンフィラー配合を採用した。マトリックスエリアの平均弾性率を算出した。再生ゴム含有組成物のマトリックスエリアの平均弾性率を表1に示す。
【0042】
<各再生ゴムの平均粒径(d50、d70およびd90)>
島津製作所製SALD2300を使用して、ゴム粉の粒度分布測定を行った。レーザー回折・散乱法は、粒子群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから計算によって粒度分布を求める方法である。粒子にレーザビームを照射すると、その粒子からは前後・上下・左右と様々な方向に光が発せられる。これが「回折・散乱光」と呼ばれる光である。回折散乱光の強さは、光が発せられる方向に一定の空間パターンを描く。これが「光強度分布パターン」である。「光強度分布パターン」は、粒子の大きさによって様々な形に変化することが知られている。光強度分布パターンを検出することにより、各再生ゴムの平均粒径(d50、d70およびd90)を測定した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の結果から、評価用ゴム組成物(2)の配合中、再生ゴムを配合しない場合(表1中、「再生ゴム無し」で示す)、加硫ゴムのゴム弾性率は0.9に過ぎないが、再生ゴムA~Cはゴム弾性率が2.0MPa以上であり、特に再生ゴムAおよびBはゴム弾性率が2.5MPa以上であった。
【0045】
(再生ゴム含有ゴム組成物の調製)
再生ゴムを除くゴム成分(天然ゴム)100質量部に対して、表2~4の配合処方に従って各成分を配合し、ダイハン社製ラボミキサーを用いて混練し、実施例1~3および比較例1~2に係る再生ゴム含有ゴム組成物を製造した。なお、例えば実施例1-(1)は、再生ゴムAを含有する再生ゴム含有ゴム組成物であって、再生ゴムAをゴム成分(天然ゴム)100質量部に対して1質量部含有することを意味し、また例えば比較例1-(5)は、再生ゴムDを含有する再生ゴム含有ゴム組成物であって、再生ゴムDをゴム成分(天然ゴム)100質量部に対して5質量部含有することを意味する。
【0046】
表2~4中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
・天然ゴム:STR20
・カーボンブラック(HAF):東海カーボン社製「シースト3」
・ステアリン酸:花王社製「ルナックS-20」
・亜鉛華:三井金属鉱業社製「亜鉛華1種」
・硫黄:細井化学工業社製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製「ノクセラーNS」
【0047】
次いで、得られた再生ゴム含有ゴム組成物について、150℃、25分間の条件で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて以下の試験を行った。
【0048】
<破断強度>
JIS3号ダンベルを使用して作製したサンプルについて、JIS K6251に準拠して、破断強度(MPa)を測定した。表2~表4において、ゴム成分(天然ゴム)100質量部に対して再生ゴムDを1、3、および5質量部含有する比較例1-(1)、比較例1-(3)、および比較例1-(5)の破断強度を100として指数評価を示す。数値が大きいほど、破断強度が高く、加硫ゴムとしたときに破壊特性に優れることを示す。
【0049】
<破断伸び>
JIS3号ダンベルを使用して作製したサンプルについて、JIS K6251に準拠して、破断伸び(%)を測定した。表2~表4において、ゴム成分(天然ゴム)100質量部に対して再生ゴムDを1、3、および5質量部含有する比較例1-(1)、比較例1-(3)、および比較例1-(5)の破断伸びを100として指数評価を示す。数値が大きいほど、破断伸びが高く、加硫ゴムとしたときに破壊特性に優れることを示す。
【0050】
<耐疲労性>
JIS K6260に準拠して、De Mattia試験機による、加硫ゴムに繰り返し伸長(定ひずみ)を与えて、切断(亀裂発生)までの伸長回数を測定し、耐疲労性(屈曲亀裂発生性)を測定した。表2~表4において、ゴム成分(天然ゴム)100質量部に対して再生ゴムDを1、3、および5質量部含有する比較例1-(1)、比較例1-(3)、および比較例1-(5)の引裂強さを100として指数評価を示す。数値が大きいほど、破断伸びが高く、加硫ゴムとしたときに耐疲労性に優れることを示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2の結果から、実施例1-(1)~実施例3-(1)に係る再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムは、破断強度および破断伸びが高く、破壊特性に優れるとともに、耐疲労性にも優れることがわかる。特に、評価用ゴム組成物の加硫ゴム中の再生ゴム以外を除くマトリックス領域を原子間力顕微鏡で測定したゴム弾性率が2.5MPa以上となる再生ゴムを含有する実施例1-(1)~実施例2-(1)に係る再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムは、破断強度および破断伸びがより高く、破壊特性に優れるとともに、さらに耐疲労性にもより優れることがわかる。
【0053】
【表3】
【0054】
表3の結果から、実施例1-(3)~実施例3-(3)に係る再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムは、破断強度および破断伸びが高く、破壊特性に優れるとともに、耐疲労性にも優れることがわかる。特に、評価用ゴム組成物の加硫ゴム中の再生ゴム以外を除くマトリックス領域を原子間力顕微鏡で測定したゴム弾性率が2.5MPa以上となる再生ゴムを含有する実施例1-(3)~実施例2-(3)に係る再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムは、破断強度および破断伸びがより高く、破壊特性に優れるとともに、さらに耐疲労性にもより優れることがわかる。
【0055】
【表4】
【0056】
表4の結果から、実施例1-(5)~実施例3-(5)に係る再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムは、破断強度および破断伸びが高く、破壊特性に優れるとともに、耐疲労性にも優れることがわかる。特に、評価用ゴム組成物の加硫ゴム中の再生ゴム以外を除くマトリックス領域を原子間力顕微鏡で測定したゴム弾性率が2.5MPa以上となる再生ゴムを含有する実施例1-(5)~実施例2-(5)に係る再生ゴム含有ゴム組成物の加硫ゴムは、破断強度および破断伸びがより高く、破壊特性に優れるとともに、さらに耐疲労性にもより優れることがわかる。