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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015061
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】光硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20250123BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20250123BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20250123BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C08F299/06
C09D4/02
C09D175/14
C09D183/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118161
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 駿佑
【テーマコード(参考)】
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J038DG221
4J038DL102
4J038FA011
4J038FA211
4J038FA241
4J038FA281
4J038GA01
4J038JC24
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA20
4J038NA11
4J038NA12
4J038PA17
4J038PB05
4J038PC08
4J127AA03
4J127BA01
4J127BB033
4J127BB051
4J127BB052
4J127BB221
4J127BB222
4J127BB223
4J127BC151
4J127BC152
4J127BC153
4J127BD411
4J127BD473
4J127BD481
4J127BD492
4J127BG143
4J127BG14Y
4J127BG181
4J127BG18Y
4J127BG221
4J127BG22Y
4J127BG271
4J127BG272
4J127BG273
4J127BG27Y
4J127BG382
4J127BG38Y
4J127CA02
4J127CB152
4J127CB281
4J127CC092
4J127CC331
4J127DA12
4J127FA08
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】良好な耐ヒールマーク性を有しつつ、裁断加工性が良好でカットする際に割れが生じ難い光硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アロファネート型ウレタン(メタ)アクリレートと、リン酸エステル化合物と、反応性希釈剤と、光重合開始剤と、を含み、前記ウレタン(メタ)アクリレートの配合量が固形分全量に対し30~60重量%であることを特徴とする光硬化型樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロファネート型ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、リン酸エステル化合物(B)と、反応性希釈剤(C)と、光重合開始剤(D)と、を含み、前記(A)の配合量が固形分全量に対し30~60重量%であることを特徴とする光硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
更にシリコーン変性(メタ)アクリレートモノマー(E)を含むことを特徴とする請求項1記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
ポリ塩化ビニル製基材のコーティング剤であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2いずれか記載の光硬化型樹脂組成物でコーティングされた建材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線等により硬化させて使用する光硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルや商業施設をはじめとする各種建築物から、一般住宅に至る幅広い範囲で、プラスチック系の床材が使用されている。このプラスチック系床材の中でも、ポリ塩化ビニルを含むビニル系樹脂の床材は、比較的安価でありながら施工は容易であり、また耐薬品性、耐摩耗性、耐傷性、柔軟性、下地追従性等、多くの優れた性能を有しているため、その用途は学校・病院・工場・官公庁施設と多岐にわたっている。
【0003】
例えばビニル系床材の代表例として、塩ビタイルが挙げられる。同じポリ塩化ビニル性であるクッションフロアが柔らかくて耐久性が低く、テーブルや椅子の脚ですぐにくぼんだり、へたったりするのに対し、塩ビタイルは適度な硬さと耐久性を有している。また木製やセラミクス製のフローリング材と比べで安価で施工がしやすく、厚みもこれらと比較して薄くできるため、既存のフローリング上に直接施工しても、ドアの開閉や敷居と干渉することが少ないというメリットも有している。
【0004】
こうした優位性から、塩ビタイルは非常に広い分野で採用されている。一方、比較的硬いとは言いつつも、表面が傷つきやすく摩耗しやすいこともあり、表面には耐擦傷性や耐ヒールマーク性を向上させるようなコーティング剤が塗布されていることが多い。例えば表面にガラス質無機系保護コーティング層を形成する塩化ビニル系タイル等が提案されている(特許文献1)。しかしながら、コーティング層が硬くなればなるほど、タイル形状に加工する際の裁断加工性が低下し、割れが発生しやすくなるという問題があった。そのため、十分な耐擦傷性や耐ヒールマーク性を有しながらも、カットする際にコーティング層の割れが非常に小さい、バランスの取れたコーティング剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6065247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、良好な耐ヒールマーク性を有しつつ、裁断加工性が良好でカットする際に割れが生じ難い光硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため請求項1記載の発明は、アロファネート型ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、リン酸エステル化合物(B)と、反応性希釈剤(C)と、光重合開始剤(D)と、を含み、前記(A)の配合量が固形分全量に対し30~60重量%であることを特徴とする光硬化型樹脂組成物を提供する。
【0008】
請求項2記載の発明は、更にシリコーン変性(メタ)アクリレートモノマー(E)を含むことを特徴とする請求項1記載の光硬化型樹脂組成物を提供する。
【0009】
請求項3記載の発明は、ポリ塩化ビニル製基材のコーティング剤であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の光硬化型樹脂組成物を提供する。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2いずれか記載の光硬化型樹脂組成物でコーティングされた建材を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、基材と十分な密着性を有すると同時に、良好な耐ヒールマーク性を有し、また裁断加工性が良好でカットする際に割れが生じ難いため、塩ビタイルのようなプラスチック系の床材に用いるコーティング剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の組成物の構成は、アロファネート型ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、リン酸エステル化合物(B)と、反応性希釈剤(C)と、光重合開始剤(D)である。なお本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を包含する。
【0014】
本発明で使用されるアロファネート型ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、硬化皮膜を構成する主要成分の一つで、ウレタン結合に由来する水素結合の凝集力により耐摩耗性と強靭性を有する。ウレタン結合がイソシアネート基と反応したアロファネート結合(-NH-CO-NCOO-基)を有しており、粘度に大きな影響を与えるO-H間での水素結合の相互作用が分子内となるため、アロファネート結合を持たない同じ構成のウレタン(メタ)アクリレートと比較して低粘度化が可能となる。また硬化速度が速くべたつきも無い良好な硬化性を有し、硬度が高く、硬化収縮も低いという特徴を有する。
【0015】
前記(A)の官能基数は2~8官能が好ましく、4~6官能が更に好ましい。2官能以上とすることで十分な硬化性と被着体との密着性を確保することができ、8官能以下とすることで硬化時の硬化収縮を小さくし、裁断加工性を安定化することができる。またポリエステル変性された骨格を有する場合は、耐ヒールマーク性をより向上させることができ好ましい。
【0016】
前記(A)の重量分子量(以下Mwという)は1,000~20,000が好ましく、3,000~15,000が更に好ましく、5,000~10,000が特に好ましい。1,000以上とすることで硬化物の凝集力を十分確保することができ、20,000以下とすることで作業性に適した組成物粘度に調整しやすくなる。なおMwは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、スチレンジビニルベンゼン基材の充填剤を用いたカラムでテトラハイドロフラン溶離液を用いて、標準ポリスチレン換算の分子量を測定、算出した。
【0017】
前記(A)の配合量は、固形分全量に対し30~60重量%であり、32~55重量%が好ましく、35~50重量%が更に好ましい。30重量%未満では裁断加工性が低下する傾向が有り、60重量%超では塗布に適した粘度調整がしにくくなり、レベリング性も低下する場合がある。
【0018】
本発明で使用されるリン酸エステル化合物(B)は基材との接着力向上を目的に配合される。(A)との相溶性や、硬化性に優れる点でリン酸エステル基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。例えば2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジヒドロホスフェート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリロイルオキシジヒドロゲンホスフェート等がある。特に2-ヒドロキシエチルメタクリレートと無水リン酸の反応で生成された、下記化学式(1)のリン酸水素ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]が好適である。
化学式(1)
【0019】
前記(B)の配合量は、固形分全量に対し0.3~5.0重量%が好ましく、0.5~3.0重量%が更に好ましい。この範囲で配合することにより、基材との接着力を向上させることができる。市販品のリン酸エステル基を持つ(メタ)アクリレートモノマーとしては、KAYAMER PM-2、同PM-21(商品名:日本化薬社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明で使用される反応性希釈剤(C)は、組成物の粘度を低下させると共に、硬化性を向上させる目的で配合される。硬化収縮を抑えられる点で、3官能以下が好ましく、単官能が更に好ましい。例えば鎖式アルキル単量体としてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが、脂環式単量体としてはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが、水酸基を有する単量体としては2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが、芳香環を有する単量体としてはベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレートが、アミド化合物としてはN,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、塩化ビニルとの接着性を向上させる点で水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく、(A)及び(B)との相溶性が良好で希釈性が高い2-ヒドロキシプロピルメタクリレートが更に好ましい。
【0021】
前記(C)の配合量は、固形分全量に対し10~50重量%が好ましく、20~40重量%が更に好ましく、25~35重量%が特に好ましい。10重量%以上とすることで作業性に優れた粘度への調整が期待できると同時に十分な硬化性を確保でき、50重量%以下とすることで良好な裁断加工性を確保することができる。
【0022】
本発明で使用される光重合開始剤(D)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましい。
【0023】
前記(D)の配合量は、光重合性成分100重量部に対し2~15重量部を配合することが好ましく、5~10重量部が更に好ましい。2重量部以上とすることで十分な硬化性を確保することができ、15重量部以下とすることで過剰添加とならず硬化後も十分な分子量を確保することができる。α-ヒドロキシアセトフェノン系の市販品としてはJRCURE1103(商品名:大同化成工業社製)等が挙げられる。
【0024】
本発明では、更にシリコーン変性(メタ)アクリレートモノマー(E)を含むことが好ましい。(E)を配合することで、耐ヒールマーク性を安定して向上させることができる。例えばシリコーン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。(E)のMwは1,000~20,000が好ましく、3,000~15,000が更に好ましい。この範囲とすることで耐ヒールマーク性を十分向上させることができる。
【0025】
前記(E)の配合量は、組成物固形分全量に対し30重量%以下が好ましく、20重量%以下が更に好ましく、15重量%以下が特に好ましい。30重量%以下とすることで、対ヒールマーク性と裁断加工性をバランスよく向上させることができる。
【0026】
更に加えて、本発明の光硬化型樹脂組成物(以下本組成物という)には性能を損なわない範囲で、レベリング剤、無機フィラー、界面活性剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、消泡剤、濡れ性調整剤、有機微粒子、帯電防止剤などの添加剤を併用することができる。
【0027】
前記レベリング剤は、塗工時のレベリング特性を向上させると共に、硬化皮膜の耐擦傷性及び防汚性を向上させることが可能となる。例えばフッ素系、シリコーン系、フッ素シリコーン系等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
これらの中では、塗膜表面の大きな表面張力差を均一化できるシリコーン系のポリシロキサン系化合物が好ましい。例えばポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、ポリエステル変性シロキサン、ポリエーテル変性シロキサン等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
レベリング剤の配合量としては、固形分全量に対し0.1~3重量%が好ましく、0.3~2重量%が更に好ましい。この範囲とすることで、十分なレベリング性を確保し安定した塗膜外観とすることができると共に、耐擦傷性や防汚性を向上させることが可能となる。市販品としてはTEGO Glide410(商品名:EVONIK INDUSTRIES社製、ポリエーテル変性シロキサンコポリマー)等が挙げられる。
【0030】
前記無機フィラーは、塗膜外観の改良や、硬化塗膜の硬度を向上させることができる。例えばシリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。当該成分を配合することで光が乱反射し、塗膜表面の光沢を抑制することができる。また塗膜との密着性を向上させるため、表面を有機成分で処理することが好ましい。
【0031】
特に塗膜外観の光沢度を調整する場合は、二次粒子径が0.5~10μmの非晶質シリカを配合することが好ましい。また表面をポリエチレン処理したシリカを配合することで、非常に滑らかな艶消し表面を得ることができる。配合量は所望する光沢度によるが、例えば固形分全量に対し1~20重量%が例示される。市販品としてはACEMATT OK607(商品名:EVONIK INDUSTRIES社製、二次粒子径4.4μm、表面ポリエチレン処理)等が挙げられる。
【0032】
本組成物は、溶剤により希釈しても良い。但し塩化ビニルのような極性溶剤に対し溶解性が強い基材の場合は、極性が低い溶剤を用いることが好ましい。配合量としては10%以下が好ましく、無溶剤であることが更に好ましい。なお本発明において無溶剤とは、希釈を目的として意図的に溶剤を配合することを除くことであり、組成物の各成分に微量に含まれる揮発成分までをも除くことは意味せず、その溶剤含有量としては5重量%以下、典型的には1重量%以下を指す。
【0033】
本組成物の塗布方法としては特に制限はなく、公知の方法で良い。被着体の全面に塗布する場合は、例えばロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター等が挙げられる。
【0034】
本組成物は、プラスチック材料のコーティング材料として用いることができる。特に塩化ビニルタイルの表面に用いるコーティング剤として使用する場合、耐ヒールマーク性に優れ、また裁断加工する際に塗膜の割れが発生しにくいため好適である。
【0035】
本組成物は、基材に塗布後、紫外線等の光を用いて硬化させる。光源としては例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプなどがあげられ、硬化条件としては50mW/cm~3000mW/cmの照射強度で、積算光量として100~2,000mJ/cmが例示される。また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。
【0036】
本組成物を光硬化させた硬化物の貯蔵弾性率は、30℃において600MPa以下が好ましく、500MPa以下が更に好ましい。また40℃においては230MPa以下が好ましく、200MPa以下が更に好ましい。この範囲とすることで、十分に安定したな裁断加工性を確保することができる。
【0037】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。また表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。なお配合量は重量部を示す。
【0038】
実施例1~7
(A)としてウレアク1(5官能アロファネート型ポリエステル変性ウレタンアクリレート、Mw8,000、固形分100%)及びウレアク2(5官能アロファネート型ウレタンアクリレート、Mw7,000、固形分100%)を、(B)としてKAYAMER PM-2(商品名:日本化薬社製)を、(C)としてライトエステルHOP(N)(商品名:共栄社化学社製、ヒドロキシプロピルメタクリレート)を、(D)としてJRCURE1103(商品名:大同化成工業社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系)を、(E)としてMIRAMER SIU2400(商品名:MIWON社製、10官能シリコーンウレタンアクリレート、Mw8,000、固形分100%)を、オリゴマーとしてウレアクA(2官能ポリテトラメチレングリコール骨格ウレタンアクリレート、Mw2,500、固形分100%)を、レベリング剤としてTEGOGlide 410(商品名:EVONIK INDUSTRIES社製、ポリエーテル変性シロキサンコポリマー、固形分100%)を、フィラーとしてACEMATT OK607(商品名:EVONIK INDUSTRIES社製、二次粒子径4.4μm非晶質シリカ、表面ポリエチレン処理)を用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、実施例1~7の光硬化型樹脂組成物(無溶剤)を調製した。
【0039】
比較例1~4
実施例1で用いた材料の他、オリゴマーとしてウレアクB(2官能カプロラクトン骨格ウレタンアクリレート、Mw2,000、固形分100%)およびウレアクC(2官能ポリエステル系骨格ウレタンアクリレート、Mw7,000、固形分100%)を用い、表2記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、比較例1~4の光硬化型樹脂組成物(無溶剤)を調製した。
【0040】
表1
【0041】
表2
【0042】
評価方法は以下の通りとした。
【0043】
硬化性:厚さ3mmの未塗装塩ビタイルに光硬化性樹脂組成物を膜厚20μmとなるように塗工し、有電極高圧水銀ランプ(商品名:アイグランデージ ECS4011GX/N、アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度100mW/cm、積算光量800mJ/cmにて紫外線照射し、塗膜表面の指触タックを確認し、タックなく硬化しているものを○、タックがあり硬化していないものを×とした。
【0044】
密着性:JIS K5600-5-6に準じて、1mm角で10×10のマス目を作成して碁盤目試験を行い、セロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)により塗膜の剥離状態を確認した。塗膜側に貼り付けたセロハンテープを剥離した時に、剥がれたマスが0の場合を○、1マスでも剥がれた場合を×とした。
【0045】
光沢度:JIS Z 8741に準じて、マイクロトリグロス(ビックガードナー社製)を用いて、60°光沢度を測定した。
【0046】
耐ヒールマーク性:JIS K3920に準拠したヒールマーク試験機を使用し、標準ゴムブロックを6つ用い、毎分50回転で3000回転させ、ヒールマークの初期付着性と、汚れ除去性について評価した。評価方法は初期付着性については、付着痕がほとんどない場合を◎、若干の付着痕を〇、付着痕が濃い場合を×とした。また汚れ除去性については、ウエスにより付着痕が完全に除去できる場合を◎、付着痕が薄くはなるが若干残る場合を〇、全く除去できない場合を×とした。
【0047】
裁断加工性:厚さ3mmの未塗装塩ビタイルに、乾燥膜厚が20μmとなるように塗工し有電極高圧水銀ランプ(商品名:アイグランデージ ECS4011GX/N、アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度100mW/cm、積算光量800mJ/cmにて紫外線照射し試験体を作成した。その後、試験体を室温に戻してから40℃恒温槽に3時間以上静置し、40℃に加温した試験体で3号ダンベルを用いて打ち抜き、その断面を×150倍の電子顕微鏡で観察し、塗膜のクラックが確認出来ない場合を〇、クラックが確認できる場合を×とした。
【0048】
貯蔵弾性率:TAinstruments社製DMAQ800を用い、幅5mm、膜厚200μmの樹脂組成物を、上記UV装置で照度100mW/cm2、積算光量800mJ/cm2の条件で硬化したサンプルを用い、30℃及び40℃にて貯蔵弾性率を測定した。
【0049】
表3
【0050】
表4
【0051】
実施例の各樹脂組成物は硬化性、粘着性、耐ヒールマーク性、裁断加工性、いずれの評価においても良好な結果を得た。また全ての実施例において、貯蔵弾性率は30℃で500MPa以下、40℃で200MPa以下であった。
【0052】
一方、(B)を含まない比較例1は密着性が劣り、アロファネート型ではないウレアクを用いた比較例2及び3は裁断加工性が劣り、また比較例4は耐ヒールマーク性が劣り、いずれも本願発明に適さないものであった。