(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015082
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】木材加工システム、およびデータ補正プログラム
(51)【国際特許分類】
B27C 9/00 20060101AFI20250123BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20250123BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20250123BHJP
B27C 3/00 20060101ALI20250123BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20250123BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B27C9/00
G01C15/00 103
E04B1/26 E ESW
B27C3/00
G06F30/13
E02D27/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118197
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】522380516
【氏名又は名称】松村 美帆
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 一志
【テーマコード(参考)】
2D046
5B146
【Fターム(参考)】
2D046AA03
5B146AA04
5B146BA04
5B146DE12
(57)【要約】
【課題】 加工機用の伏図データに対し、現場で施工されたアンカーボルトの位置に基づくボルト位置の座標入力を効率的に誤差なく行える木材加工システム、及びそれに使用されるデータ補正プログラムを提供すること。
【解決手段】 木材加工システムにおいて、測量機器が配置された平面上における所定の一点から基礎のアンカーボルト表面までの距離および上下角度のデータを読み込む手段と、前記アンカーボルト表面までの距離および上下角度のデータ、並びにアンカーボルトの寸法データからアンカーボルトの中心軸の座標データを自動算出する手段と、前記アンカーボルトの中心軸の座標に基づいて建築物の土台の伏図データ上にボルト位置を入力する手段と、前記プレカット加工機において前記ボルト位置が入力された伏図データに基づき土台に使用される木材にボルト穴を穿設するドリルの位置制御を行う手段と、を備えて構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の土台の伏図データに基づきプレカット加工機を用いて土台に使用される木材の自動加工を行う木材加工システムにおいて、
測量機器が配置された平面上における所定の一点から基礎のアンカーボルト表面までの距離および上下角度のデータを読み込む手段と、
前記アンカーボルト表面までの距離および上下角度のデータ、並びにアンカーボルトの寸法データからアンカーボルトの中心軸の座標データを自動算出する手段と、
前記アンカーボルトの中心軸の座標に基づいて建築物の土台の伏図データ上にボルト位置を入力する手段と、
前記プレカット加工機において前記ボルト位置が入力された伏図データに基づき土台に使用される木材にボルト穴を穿設するドリルの位置制御を行う手段と、を備えた木材加工システム。
【請求項2】
前記測量機器が配置された平面上における所定の一点から少なくとも2以上の基準点までの距離および上下角度のデータを読み込む手段と、
前記基準点までの距離および上下角度のデータから基準点の座標データを自動算出する手段と、
前記基準点の座標に基づいて建築物の土台の伏図データ上に2以上の基準点を結んだ基準線を描画する手段と、を備えた請求項1記載の木材加工システム。
【請求項3】
前記測量機器として上下位置および上下向きの調節が可能なレーザ距離計が用いられる、請求項1または2に記載の木材加工システム。
【請求項4】
請求項1記載の木材加工システムに用いられるデータ補正プログラムであって、アンカーボルトの中心軸までの距離および上下角度のデータからアンカーボルトの中心軸の座標データを自動算出する、データ補正プログラム。
【請求項5】
請求項2記載の木材加工システムに用いられるデータ補正プログラムであって、基準点までの距離および上下角度のデータから基準点の座標データを自動算出する、データ補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土台の伏図データを利用して木材のプレカット加工を行う木材加工システム及びそれに使用されるデータ補正プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建築時に使用する木材は現場で加工して使用していたが、手間が大きく技巧が求められるため、最近では、予め工場で木材の加工を行ってから現場に搬入するプレカット工法が採用されるケースが多い。このプレカット工法においては、設計図面をCAMによりプレカット加工機の制御データに変換するシステムも開発されており(例えば、特許文献1~2参照)、このシステムを利用すれば現場でプレカットされた木材を組み立てるだけで施工を行うことができる。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1~2に記載の従来のプレカット加工システムは、アンカーボルトが差し込まれるボルト穴を木材にドリルで穿設する加工を行うことができるものの、設計図面上のデータに基づいて加工を行うため、現場で施工された基礎のアンカーボルトの位置と設計図面の位置に誤差が生じた場合、設計図面に基づく伏図データのみではその誤差に対応することができないという問題がある。
【0004】
上記誤差に対応するために、現場でアンカーボルトの位置を計測して誤差を修正する場合でも、測量装置を動かしながら各アンカーボルトの位置を計測する方法だと、計測作業に時間がかかる。一方、レーザ距離計を用いて計測する場合、ボルト表面までの距離しか計測できないため、ボルトの中心軸の位置との間に誤差が生じる。加えて、伏図データにアンカーボルトの位置を一つずつ手動で入力または補正する場合、アンカーボルトの数が多いため手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-104004号公報
【特許文献2】特開2022-152640公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを課題としており、要約するとプレカット加工機を使用して土台に使用する木材の穴開け加工を自動で行うことができるだけでなく、加工機用の伏図データに対し、現場で施工されたアンカーボルトの位置に基づくボルト位置の座標入力を効率的に誤差なく行える木材加工システム、及びそれに使用されるデータ補正プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決する手段として、建築物の土台の伏図データに基づきプレカット加工機を用いて土台に使用される木材の自動加工を行う木材加工システムにおいて、測量機器が配置された平面上における所定の一点から基礎のアンカーボルト表面までの距離および上下角度のデータを読み込む手段と、前記アンカーボルト表面までの距離および上下角度のデータ、並びにアンカーボルトの寸法データからアンカーボルトの中心軸の座標データを自動算出する手段と、前記アンカーボルトの中心軸の座標に基づいて建築物の土台の伏図データ上にボルト位置を入力する手段と、前記プレカット加工機において前記ボルト位置が入力された伏図データに基づき土台に使用される木材にボルト穴を穿設するドリルの位置制御を行う手段と、を備えて構成した(効果は後述する)。
【0008】
また本発明では、上記前記測量機器が配置された平面上における所定の一点から少なくとも2以上の基準点までの距離および上下角度のデータを読み込む手段と、前記基準点までの距離および上下角度のデータから基準点の座標データを自動算出する手段と、前記基準点の座標に基づいて建築物の土台の伏図データ上に2以上の基準点を結んだ基準線を描画する手段と、を備えた構成を採用できる。これにより伏図データの所定箇所と基準点または基準線の位置を一致させることで、伏図データに対しボルト位置の座標をズレなく入力できる。
【0009】
また本発明では、上記測量機器として上下位置および上下向きの調節が可能なレーザ距離計を使用することができ、これにより手前側と奥側でアンカーボルトが重なった場合でも測量装置の高さや上下向きを変えることで奥側のアンカーボルトにレーザ光を当てて位置を計測することができる。
【0010】
また本発明では、上記木材加工システムに用いられるデータ補正プログラムとして、アンカーボルトの中心軸までの距離および上下角度のデータからアンカーボルトの中心軸の座標データを自動算出可能なものを使用できる。これによりボルト迄の距離角度データのデータ補正処理を手間なく行うことができる。
【0011】
また本発明では、上記木材加工システムに用いられるデータ補正プログラムにおいて、基準点までの距離および上下角度のデータから基準点の座標データを自動算出可能なものを使用できる。これにより基準点の座標算出をボルト位置の座標算出と共に手間なく行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の木材加工システムは、測量機器を使用して得られたアンカーボルト迄の距離角度データをボルト位置の座標に変換して加工機用伏図データに入力することができるため、プレカット時において、施工された基礎のアンカーボルトの位置に合わせて誤差なく穴開け加工を行うことができる。また上記伏図データに対するボルト位置の座標の入力は全てのアンカーボルトの座標を同時に入力できるため、座標を一つずつ入力する手間もかからない。
【0013】
また本発明の木材加工システムは、測量機器から得られるボルト表面までの距離角度データを所定のアルゴリズムを用いてボルトの中心軸の距離に補正することができるため、ボルト中心軸の座標を正確に算出することができる。このデータ補正処理に関しても、全てのアンカーボルトの距離角度データを一度に補正することができるため、補正作業に手間がかからない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態における木材加工システムを表す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の第一実施形態における加工機用伏図データ生成装置の処理の流れを表すフロー図である。
【
図3】本発明の第一実施形態におけるボルト位置の座標を出力した状態を表す説明図である。
【
図4】本発明の第一実施形態における元の伏図データにボルト位置の座標を入力した状態を表す説明図である。
【
図5】本発明の第一実施形態におけるボルト位置の座標から木材の各寸法を算出した状態を表す説明図である。
【
図6】本発明の第一実施形態におけるボルト中心軸間の距離を算出した状態を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
『第一実施形態』
本発明の第一実施形態について
図1~
図6に基づき以下に詳細に説明する。なお符号1で指示するものは、加工機用伏図データ生成装置であり、符号2で指示するものは、プレカット加工機である。また符号Rで指示するものは、レーザ距離計(光学式の測量機器)であり、符号Bで指示するものは、アンカーボルトである。また符号Lで指示するものは、原点の座標であり、符号Pで指示するものは、ボルト中心軸の座標である。
【0016】
「木材加工システムのハードウェア構成」
[1]基本構成について
本実施形態の木材加工システムのハードウェア構成について
図1に基づいて説明する。本実施形態の木材加工システムは、建築物の土台の伏図データに基づきプレカット加工機を用いて土台に使用される木材の自動加工を行うシステムであって、
図1の機能ブロック図に示すように加工機用伏図データ生成装置1および木材(集成材や無垢材を含む)のプレカット加工機2を備えている。これらの装置は無線または有線で通信可能に接続することができ、両装置を一体の装置として構成することもできる。
【0017】
また上記の両装置を接続または一体化しない場合でも、記憶媒体(USBメモリ等)を利用して各装置間のデータ移動を行えるように構成することもできる。更に本実施形態の木材加工システムでは、対象物との距離角度データを計測するための測量機器としてレーザ距離計Rを使用している。このレーザ距離計Rについては、本実施形態では記憶媒体(USBメモリ等)を利用して装置間のデータ移動を行えるように構成しているが、
図1に示すように上記加工機用伏図データ生成装置1に無線または有線で接続して木材加工システムに含めることもできる。
【0018】
[2]加工機用伏図データ生成装置について
[2-1]コンピュータ端末
次に上記各装置について説明する。上記加工機用伏図データ生成装置1については、
図1に示すように主記憶部11(メモリ等)、演算部12(CPU等)、制御部13(CPU等)、補助記憶部14(ハードディスク、SSD等)、表示部15(出力手段)、入力部16(入力手段)を備えたコンピュータ端末を使用している。このコンピュータ端末に関しては、ノートPCやデスクトップPC、タブレットPC、スマートフォンやPDA(携帯情報端末)などを適宜使用できる。そして、装置内のハードウェアをソフトウェアで連動させて装置の記憶手段、入力手段および出力手段としている。
【0019】
[2-2]補助記憶部
上記加工機用伏図データ生成装置1の補助記憶部14に関しては、
図1に示すように少なくとも伏図データ記憶部14a、座標データ記憶部14b、距離角度データ記憶部14c、およびデータ補正プログラム記憶部14dを備えている。なお伏図データ記憶部14aには、アンカーボルトのボルト位置の座標が入力された加工機用伏図データと、その元となる伏図データが記憶される。座標データ記憶部14bには、距離角度データ(測量機器が配置された平面上における所定の一点から基礎のアンカーボルト表面までの距離および上下角度のデータ)を補正して得られるボルト位置の座標データが記憶される。上記距離角度データ記憶部14cには、測量機器(レーザ距離計R)から複数のアンカーボルト迄の距離角度データが記憶される。データ補正プログラム記憶部14dには、距離角度データに所定の処理をかけて各ボルトの中心軸の座標を算出するデータ補正プログラム(詳しくは後述する)が記憶される。
【0020】
また本実施形態では、上記加工機用伏図データ生成装置1を一つのコンピュータ端末から構成しているが、サーバクライアント等の分散システムやクラウドシステム等を採用して複数のコンピュータを協働して機能を実現することもでき、上記加工機用伏図データ生成装置1の一部として外部のハードウェア(WebサーバやDBサーバ等)を利用することもできる(図示せず)。
【0021】
[2-3]送受信部
また上記加工機用伏図データ生成装置1は、
図1に示すように外部装置とデータ通信可能に接続するための送受信部を備えた構成を採用することもできる。具体的には、レーザ距離計Rと接続する場合には、レーザ距離計Rからボルト表面までの距離角度データを受信するための距離角度データ受信部17を設けることができ、また木材加工機2と接続する場合には、ボルト位置の座標が入力された加工機用伏図データを送信するための伏図データ送信部18を設けることができる。なお上記加工機用伏図データ生成装置1を外部装置と接続しない場合には、これらの送受信部を設ける必要はない。
【0022】
[3]プレカット加工機について
上記木材加工システムを構成するプレカット加工機2に関しては、加工機用伏図データに基づき土台の材料となる木材を所定長さに切断し、アンカーボルト用のボルト穴を穿設可能なプレカット加工機であり、
図2に示すようにドリルを移動させる駆動部21(モータ等)、ドリルが木材の所定位置に配置されるように駆動部21を制御するドリル位置制御部22、主記憶部23、演算部24、伏図データ記憶部を有する補助記憶部25を少なくとも備えている。また木材加工機2を上記加工機用伏図データ生成装置1と接続する場合には、伏図データ受信部26を設けることもできる。
【0023】
[4]レーザ距離計
上記測量機器として使用されるレーザ距離計Rに関しては、レーザ光の反射を利用して対象物表面までの距離を測定でき、更にレーザ距離計Rから対象物に出射されるレーザ光の角度を検出できる機能を少なくとも有している。この種のレーザ距離計Rとしては測量機器または計測機器の分野で公知のものを使用することができる。また本実施形態で使用するレーザ距離計Rは、対象物に対するレーザ光の出射角度を調節できるように機器本体の上下位置(高さ)を調節するための支持脚を備えると共に、この支持脚に対しレーザ光の上下向きが調節できるように機器本体がヒンジ部で回動自在に連結されている。
【0024】
また上記レーザ距離計Rとしては、単に対象物までの距離を計測するだけではなく、距離データからレーザ距離計Rの位置を原点として対象物の座標を算出する機能を備えたものを使用することもできる。また本実施形態で使用しているレーザ距離計Rは、一カ所の基礎工事の現場において計測される複数の距離角度データを記憶できる補助記憶部を備えると共に、これらの複数の距離角度データを現場単位のファイルとして出力する機能も有している。これにより、上記加工機用伏図データ生成装置において所定の現場における全てのアンカーボルトの距離角度データを一度に読み込むことができる。
【0025】
また上記レーザ距離計Rを加工機用伏図データ生成装置1と無線または有線で接続する場合には、
図1に示すように距離角度データ送信部を設けることもできる。更にインターネットを介して接続されたDBサーバWに距離角度データを記憶させることもでき(例えば、クラウドシステム等)、その場合にはDBサーバWの距離角度データ送信部から加工機用伏図データ生成装置1に距離角度データを送信することができる。
【0026】
「木材加工システムのソフトウェア構成」
[1]距離角度データの計測
まず事前準備であるアンカーボルトの距離角度データ(測量機器が配置された平面上における所定の一点から基礎のアンカーボルト表面までの距離および上下角度のデータ)並びに水平面上の向きデータ(測量機器に対してアンカーボルトが水平面上のどの向きにあるかを示す角度データ)の計測について説明する。現場で施工された基礎のアンカーボルトに対し、所定の一点にレーザ距離計を設置して計測を行う。この際、奥側のアンカーボルトが手前側に重なる場合には、レーザ距離計の本体部の高さおよび上下角度を変えて奥側のアンカーボルトにレーザ光が当たるように計測する。またレーザ光がアンカーボルトの中心線に当たるように計測を行う。その後、得られた距離角度データをレーザ距離計Rから加工機用データ生成装置に移動させる。
【0027】
[2]加工機用伏図データ生成ソフトの起動
[2-1]ソフト起動及び距離角度データの読み込み
次に木材加工システムのソフトウェア構成について
図2に示す処理フローに沿って説明する。まず加工機用伏図データ生成装置1の入力手段により加工機用伏図データ生成ソフトを起動すると共に(ステップS
1)、ボルト迄の距離角度データの読み込み処理を行う(ステップS
2)。読み込み対象となる距離角度データは、装置の距離角度データ記憶部14cや記憶媒体に記憶されたものをインポートして行う。
【0028】
[2-2]データ補正処理および座標データの生成出力
その後、装置の入力手段を用いて距離角度データのデータ補正処理、並びにボルト位置の座標データ生成出力処理を行う(ステップS3及びステップS4)。これらの処理は装置のデータ補正プログラム記憶部14dに記憶された補正プログラムによって行われ、アンカーボルト表面までの距離および上下角度のデータ、並びにアンカーボルトの寸法データ(直径データや半径データ)からアンカーボルトの中心軸の座標データが自動的に算出される。これらのデータ補正と座標生成の処理は、段階的に行われてもよいし、同時に行うこともできる。
【0029】
上記データ補正プログラムのアルゴリズムについては、特定の1種に限定されないが具体例を一つ挙げる。
図3(a)に示すようにレーザ距離計Rの本体部からアンカーボルトBの表面までの距離(d
1)およびレーザ光の上下角度(θ
1)が分かれば、レーザ距離計Rの中心LからアンカーボルトBの表面までの水平距離(d
2)を、d
2=d
1×cosθ
1によって導き出すことができる。更に
図3(b)に示すようにアンカーボルトBの寸法データからボルトの半径(r)が分かるため、レーザ距離計Rの中心LとアンカーボルトBの中心軸Pの距離(d)を、d=d
2+rによって導き出すことができる。更に
図3(c)に示すようにレーザ距離計Rの中心Lの座標(0,0)を原点とする場合、レーザ距離計Rの水平面上の向き(θ
2)が分かれば、アンカーボルトの中心軸Pの座標(a,b)を、a=d×cosθ
2、b=d×sinθ
2によって算出することができる。
【0030】
なお本実施形態においては、上記データ補正処理やボルト位置の座標データの生成出力処理を、現場で計測した全てのアンカーボルトの距離角度データを対象にまとめて処理することができ、例えば、レーザ距離計によって計測した順に各アンカーボルトの距離角度データに識別表示(例えば、数字やアルファベット等)を振って識別可能とすることで、
図4に示すように原点から各アンカーボルトの座標を一度に算出することができる。なお
図4は補正後のボルト位置の座標データが平面上にプロットされた図であるが、イメージとして出力されなくてもデータ群のファイルとして出力されればよい。
【0031】
[2-3]基準点または基準線の座標算出
また本実施形態では、上記のアンカー距離角度データの読み込みの際、測量機器が配置された平面上における所定の一点から少なくとも2以上の基準点Qまでの距離および上下角度のデータを一緒に読み込んでいる。そして、上記ボルト位置の座標データ生成出力の際に、読み込んだ基準点Qまでの距離角度データおよび水平面上の向きデータに基づき基準点Qの座標データが自動算出される。なお「基準点」とは、アンカーボルト以外の目印となる位置座標であり、伏図データの対応する位置に基準点Qの座標を一致させることでボルト位置の入力ズレを防止できる。この「基準点」は、基本的に寸法データ等を有しない箇所であるため、補正プログラムにおける中心軸の算出処理は行われない。また「基準点」は2以上存在してもよく、その場合には基準点Q同士を結んだ「基準線」として伏図データの対応する位置に基準線を自動または手動で一致させることもできる。
【0032】
[2-4]伏図データに対するボルト位置のプロット処理
上記ボルト位置の座標データを取得した後、上記装置の伏図データ記憶部14aからボルト位置を入力する伏図データを選択入力し、伏図データを表示する(ステップS
5、ステップS
6)。そして、表示された伏図データに
図4に示すボルト位置の座標データを読み込むことで、
図5に示すように伏図データ上にボルト中心軸Pの位置がプロット処理(座標入力)される(ステップS
8)。その際、上記基準点Qまたは基準線を利用することで伏図データ上にボルト位置を正確にプロットできる。また基準点Qの座標に基づいて伏図データ上に2以上の基準点を結んだ基準線を描画する機能を付与することもでき、これによって手動での位置合わせが容易となる。
【0033】
図5に示すように元となる伏図データ上には、基礎上に配置される土台Dの配置や長さが入力されており、ボルト中心軸Pは土台Dの中心線に沿って配置された状態となる。そして、ボルト中心軸Pがプロットされた後、各土台Dの座標とボルト中心軸Pの座標に基づき、土台D端部からボルト中心軸Pの距離、同じ土台Dに形成された隣り合うボルト中心軸P同士の距離が自動的に算出され、
図6に示す加工機用伏図データが生成される(ステップS
8)。更に生成された加工機用伏図データは装置の確認用画面に出力される(ステップS
9)。なお本実施形態では、ボルト穴の穿設加工に必要な土台Dの一端とボルト中心軸Pの距離を算出しているが、必要に応じて土台Dの両端からボルト中心軸Pの距離を算出することもでき、プレカット加工機2に必要な加工情報を適宜算出できる。
【0034】
[2-5]加工機用伏図データの送信処理
上記加工機用伏図データが確認画面上に出力された後は、ボルト中心軸の位置や間隔、各種寸法に誤りやズレがないことを確認し、問題がなければ送信入力(例えば、送信ボタンをクリックする等)を行って加工機用伏図データをプレカット加工機2に送信処理する(ステップS10、ステップS11)。そして、データの送信が完了した後、加工機用伏図データ生成ソフトを終了する。なお加工機用伏図データ生成装置1とプレカット加工機2が接続されていない場合には、上記送信処理の代わりにUSBメモリ等の記憶媒体を用いてデータを移動させることもできる。
【0035】
[3]プレカット加工機の制御処理
上記送信された加工機用伏図データは、
図1に示すプレカット加工機2の伏図データ受信部26で受信し、伏図データ記憶部に記憶する。そして、この伏図データをCAMにより加工装置の制御データに変換し、プレカット加工を開始する。プレカット加工時には、土台Dの材料となる木材を穴開け加工する際、加工機用伏図データに基づくドリル位置制御部22の処理よりドリルの位置を土台Dの端部から所定距離だけ駆動部21で移動させてボルト穴の穴開け加工を行う。その後、穴開けを行ったボルト中心軸Pの位置から隣り合うボルト中心軸Pの位置までドリルを移動させて次の穴開け加工を行い、これを順次繰り返すことで土台の正確な位置にボルト穴を穿設することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 加工機用伏図データ生成装置
11 主記憶部
12 演算部
13 制御部
14 補助記憶部
14a 伏図データ記憶部
14b 座標データ記憶部
14c 距離角度データ記憶部
14d データ補正プログラム記憶部
15 表示部
16 入力部
17 距離角度データ受信部
18 伏図データ送信部
2 プレカット加工機
21 駆動部
22 ドリル位置制御部
23 主記憶部
24 演算部
25 補助記憶部
26 伏図データ受信部
R レーザ距離計
W DBサーバ
B アンカーボルト
L 原点
P ボルト中心軸
Q 基準点