(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151057
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】ダンパ部材、液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20251002BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20251002BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 613
B41J2/175 501
B41J2/16 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052288
(22)【出願日】2024-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】内村 奈津希
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC14
2C056EC29
2C056EE17
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB03
2C056FC02
2C056HA05
2C056HA42
2C056HA46
2C056KB16
2C056KB25
2C056KB35
2C057AF21
2C057AF93
2C057AG29
2C057AG68
2C057AG75
2C057AG77
2C057AG91
2C057AJ03
2C057AK07
2C057AN01
2C057AN05
2C057AP24
2C057AQ03
2C057AQ06
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】弾性フィルムの接合不良を抑制することが可能なダンパ部材、それを備えた液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び記録装置を提供する。
【解決手段】ダンパ部材6は、液体吐出ヘッド2において第2流路部材5の上に配置される部材である。ダンパ部材6では、第1ダンパプレート61と弾性フィルム63とが第1接合シート62により接合されている。第1接合シート62は、第1ダンパプレート61の隔壁部615と弾性フィルム63とを接合する隔壁接合部625と、第1ダンパプレート61の第1周壁部616と弾性フィルム63とを接合する第1周壁接合部626と、第1ダンパプレート61の第2周壁部617と弾性フィルム63とを接合する第2周壁接合部627と、第1周壁接合部626、隔壁接合部625及び第2周壁接合部627を互いに接続する接続部628と、を有している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視したとき、幅方向と、前記幅方向と直交する長手方向とに延び、前記長手方向が前記幅方向よりも長い液体吐出ヘッドにおいて、前記幅方向に互いに離れて配置されて液体を収容可能な第1収容室及び第2収容室が形成された流路部材の上に配置されるダンパ部材であって、
前記第1収容室に連通する第1ダンパ開口と、前記第2収容室に連通し前記第1ダンパ開口に対して前記幅方向に離れて配置される第2ダンパ開口とを有する第1ダンパプレートと、
前記第1ダンパプレートを上方から覆う、弾性変形可能な弾性フィルムと、
前記第1ダンパプレートと前記弾性フィルムとの間に配置され、前記第1ダンパプレートと前記弾性フィルムとを接合するシートであって、前記第1ダンパ開口に重なる領域に形成された第1シート開口と、前記第2ダンパ開口に重なる領域に形成された第2シート開口と、を有する第1接合シートと、を備え、
前記第1ダンパプレートは、前記幅方向において、前記第1ダンパ開口と前記第2ダンパ開口との間で前記長手方向に延びる隔壁部と、前記第1ダンパ開口の前記隔壁部とは反対側で前記長手方向に延びる第1周壁部と、前記第2ダンパ開口の前記隔壁部とは反対側で前記長手方向に延びる第2周壁部と、を有しており、
前記第1接合シートは、
前記隔壁部に沿って前記長手方向に延び、前記隔壁部と前記弾性フィルムとを接合する隔壁接合部と、
前記第1周壁部に沿って前記長手方向に延び、前記第1周壁部と前記弾性フィルムとを接合する第1周壁接合部と、
前記第2周壁部に沿って前記長手方向に延び、前記第2周壁部と前記弾性フィルムとを接合する第2周壁接合部と、
前記第1シート開口及び前記第2シート開口に亘って前記幅方向に延び、前記第1周壁接合部、前記隔壁接合部及び前記第2周壁接合部を互いに接続する接続部と、を有している、ダンパ部材。
【請求項2】
前記隔壁部は、前記長手方向において、中央領域が端部領域よりも幅広の形状となっている幅広部を有している、請求項1に記載のダンパ部材。
【請求項3】
前記第1周壁部は、前記隔壁部の前記幅広部と対向するように、前記第1ダンパ開口の側に突出している形状を有しており、
前記第2周壁部は、前記隔壁部の前記幅広部と対向するように、前記第2ダンパ開口の側に突出している形状を有している、請求項2に記載のダンパ部材。
【請求項4】
前記第1周壁部は、前記長手方向において、中央領域が前記第1ダンパ開口の側に突出している形状を有しており、
前記第2周壁部は、前記長手方向において、中央領域が前記第2ダンパ開口の側に突出している形状を有している、請求項1に記載のダンパ部材。
【請求項5】
前記弾性フィルムを上方から覆う第2ダンパプレートと、
前記第2ダンパプレートと前記弾性フィルムとの間に配置され、前記第2ダンパプレートと前記弾性フィルムとを接合する第2接合シートと、を更に備え、
前記弾性フィルムは、前記第1接合シート及び前記第2接合シートを介して前記第1ダンパプレートと前記第2ダンパプレートとの間に挟持されている、請求項1に記載のダンパ部材。
【請求項6】
前記第2接合シートは、
前記第1ダンパ開口に重なる領域に形成された第2接合シート第1シート開口と、
前記第2ダンパ開口に重なる領域に形成された第2接合シート第2シート開口と、
前記隔壁部に沿って前記長手方向に延び、前記弾性フィルムの前記隔壁部と接合している部分の反対の面と、前記第2ダンパプレートとを接合する第2接合シート隔壁接合部と、
前記第1周壁部に沿って前記長手方向に延び、前記弾性フィルムの前記第1周壁部と接合している部分の反対の面と、前記第2ダンパプレートとを接合する第2接合シート第1周壁接合部と、
前記第2周壁部に沿って前記長手方向に延び、前記弾性フィルムの前記第2周壁部と接合している部分の反対の面と、前記第2ダンパプレートとを接合する第2接合シート第2周壁接合部と、
前記第2接合シート第1シート開口及び前記第2接合シート第2シート開口に亘って前記幅方向に延び、前記第2接合シート第1周壁接合部、前記第2接合シート隔壁接合部及び前記第2接合シート第2周壁接合部を互いに接続する第2接合シート接続部と、を有している、請求項5に記載のダンパ部材。
【請求項7】
前記接続部と、前記第2接合シート接続部とが重なって配置されている、請求項6に記載のダンパ部材。
【請求項8】
前記第1ダンパプレート及び前記第2ダンパプレートは、金属材料により構成されており、
前記第1接合シート及び前記第2接合シートは、樹脂材料により構成されている、請求項5に記載のダンパ部材。
【請求項9】
平面視したとき、幅方向と、前記幅方向と直交する長手方向とに延び、前記長手方向が前記幅方向よりも長い形状を有し、液体を吐出可能な液体吐出ヘッドであって、
前記幅方向に互いに離れて配置され、前記液体を収容可能な第1収容室及び第2収容室が形成された流路部材と、
前記流路部材の上に配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載のダンパ部材と、を備える、液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの前記流路部材における前記第1収容室及び前記第2収容室の各々に液体を供給する供給部と、を備える、液体吐出装置。
【請求項11】
前記供給部は、第1の液体を前記第1収容室に供給し、前記第1の液体とは異なる種類の第2の液体を前記第2収容室に供給する、請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
請求項9に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドから吐出した液体を着弾させる記録媒体と前記液体吐出ヘッドとを相対移動させる移動部と、を備える、記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ部材、それを備えた液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置が知られている。液体吐出ヘッドでは、液体の吐出に伴い圧力変動が生じることで吐出特性に影響を及ぼすクロストークと呼ばれる現象がある。クロストークによって、吐出速度または吐出量の変動が生じ、画像の品質が低下することがある。
【0003】
クロストークを抑制可能な液体吐出ヘッドが、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される液体吐出ヘッドは、支持部材に接合されたダンパ部材を備えている。ダンパ部材は、液体が収容される液室の壁面の一部を形成する弾性フィルム(ダンパ膜)を有している。ダンパ部材では、弾性フィルムの振動が減衰することにより、液室に生じた圧力変動を減衰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの液体吐出ヘッドから複数種類の液体を吐出させる場合がある。この場合、複数の液室を設ける必要がある。その際、液体吐出ヘッドの幅方向に互いに離れて複数の液室を設けることが考えられる。このような場合には、幅方向に互いに隣り合う液室間を隔てる隔壁部分の幅が狭くなるため、当該隔壁部分と弾性フィルムとの間の接合不良が生じ易くなり、各液室に生じる圧力変動を減衰させる効果が得られない虞がある。
【0006】
本発明の目的は、弾性フィルムの接合不良を抑制することが可能なダンパ部材、それを備えた液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係るダンパ部材は、平面視したとき、幅方向と、前記幅方向と直交する長手方向とに延び、前記長手方向が前記幅方向よりも長い液体吐出ヘッドにおいて、前記幅方向に互いに離れて配置されて液体を収容可能な第1収容室及び第2収容室が形成された流路部材の上に配置されるダンパ部材である。このダンパ部材は、前記第1収容室に連通する第1ダンパ開口と、前記第2収容室に連通し前記第1ダンパ開口に対して前記幅方向に離れて配置される第2ダンパ開口とを有する第1プレートと、前記第1プレートを上方から覆う、弾性変形可能な弾性フィルムと、前記第1プレートと前記弾性フィルムとの間に配置され、前記第1プレートと前記弾性フィルムとを接合するシートであって、前記第1ダンパ開口に重なる領域に形成された第1シート開口と、前記第2ダンパ開口に重なる領域に形成された第2シート開口と、を有する第1接合シートと、を備える。前記第1プレートは、前記幅方向において、前記第1ダンパ開口と前記第2ダンパ開口との間で前記長手方向に延びる隔壁部と、前記第1ダンパ開口の前記隔壁部とは反対側で前記長手方向に延びる第1周壁部と、前記第2ダンパ開口の前記隔壁部とは反対側で前記長手方向に延びる第2周壁部と、を有している。前記第1接合シートは、前記隔壁部に沿って前記長手方向に延び、前記隔壁部と前記弾性フィルムとを接合する隔壁接合部と、前記第1周壁部に沿って前記長手方向に延び、前記第1周壁部と前記弾性フィルムとを接合する第1周壁接合部と、前記第2周壁部に沿って前記長手方向に延び、前記第2周壁部と前記弾性フィルムとを接合する第2周壁接合部と、前記第1シート開口及び前記第2シート開口に亘って前記幅方向に延び、前記第1周壁接合部、前記隔壁接合部及び前記第2周壁接合部を互いに接続する接続部と、を有している。
【0008】
本発明の他の局面に係る液体吐出ヘッドは、平面視したとき、幅方向と、前記幅方向と直交する長手方向とに延び、前記長手方向が前記幅方向よりも長い形状を有し、液体を吐出可能な液体吐出ヘッドである。この液体吐出ヘッドは、前記幅方向に互いに離れて配置され、前記液体を収容可能な第1収容室及び第2収容室が形成された流路部材と、前記流路部材の上に配置される、上記のダンパ部材と、を備える。
【0009】
また、本発明の他の局面に係る液体吐出装置は、上記の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記流路部材における前記第1収容室及び前記第2収容室の各々に液体を供給する供給部と、を備える。
【0010】
また、本発明の他の局面に係る記録装置は、上記の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから吐出した液体を着弾させる記録媒体と前記液体吐出ヘッドとを相対移動させる移動部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾性フィルムの接合不良を抑制することが可能なダンパ部材、それを備えた液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るダンパ部材が適用された液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置であるプリンタの模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、プリンタにおける液体吐出ヘッドと循環部との関係を示す模式図である。
【
図3】
図3は、液体吐出ヘッドにおける第1流路部材の平面図である。
【
図4】
図4は、第1流路部材の要部の断面図である。
【
図5】
図5は、液体吐出ヘッドにおける第2流路部材及びダンパ部材の平面図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿った第2流路部材及びダンパ部材の断面図である。
【
図7】
図7は、第2流路部材に含まれる各プレートの平面図である。
【
図8】
図8は、ダンパ部材に含まれる各層の平面図である。
【
図9】
図9は、ダンパ部材に含まれる第1ダンパプレートの第1変形例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、ダンパ部材に含まれる第1ダンパプレートの第2変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るダンパ部材、液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び記録装置について説明する。液体吐出ヘッドはダンパ部材を備えたヘッドであり、液体吐出装置は液体吐出ヘッドを備えた装置である。液体吐出装置としては、液体吐出ヘッドから液体としてのインクを吐出させる記録装置、導電性の粒子を含む液体を液体吐出ヘッドから吐出させて電子機器の配線パターンを印刷する装置、化学薬剤などの液体を液体吐出ヘッドから反応容器に向けて吐出させて化学薬品を作製する装置、などが挙げられる。以下の実施形態では、液体吐出装置の具体例として、液体としてインクを吐出する液体吐出ヘッドを備えた記録装置であるインクジェット式のプリンタを例示する。インクジェット式のプリンタは、織物や編物等の生地からなるワークである記録媒体に、文字や模様などの画像をインクジェット方式で印刷するデジタル捺染印刷に好適である。もちろん、プリンタは、紙シートや樹脂シート等のワークに各種の画像を印刷する用途にも用いることができる。
【0014】
[プリンタの全体構成]
図1に示されるように、プリンタ1は、インクを吐出する液体吐出ヘッド2と、液体吐出ヘッド2に対してワーク(記録媒体)Wを搬送する搬送部8と、液体吐出ヘッド2が搭載されるキャリッジ10と、制御部9と、を備える。なお、本実施形態では、左右方向がワークWに対する印刷の際の主走査方向H1、後方から前方に向かう方向であって主走査方向H1と直交する方向が副走査方向H2である。搬送部8及びキャリッジ10は、プリンタ1の骨組みを形成する装置フレームに組み込まれている。搬送部8は、ワークWが副走査方向H2に進行するように、当該ワークWを間欠送りする(搬送する)機構である。キャリッジ10は、液体吐出ヘッド2を搭載し、印刷処理の際に主走査方向H1に往復移動する。制御部9は、画像のデータである印刷データに基づき液体吐出ヘッド2を制御し、搬送部8により搬送されるワークWに向けてインクを吐出させることでワークWにインク滴を着弾させて、ワークWに印刷などの記録を行う。
【0015】
つまり、記録装置であるプリンタ1は、液体吐出ヘッド2と、液体吐出ヘッド2から吐出した液体を着弾させる記録媒体であるワークWと液体吐出ヘッド2とを相対移動させる移動部である搬送部8及びキャリッジ10とを備える。記録装置は、上述のようなシリアルプリンタ以外に、ラインプリンタも含まれる。ラインプリンタでは、液体吐出ヘッドは、記録装置に固定されており、無端ベルトなとの移動部により移動される記録媒体に対して液体を吐出する。
【0016】
装置フレームの上方側には、キャリッジ10に主走査方向H1の往復移動を行わせるためのキャリッジガイド1F1が組み付けられている。キャリッジガイド1F1は、主走査方向H1に長い平板状の部材であり、搬送部8の上方に配置されている。キャリッジガイド1F1には、タイミングベルト1F2が主走査方向H1に周回移動が可能に組み付けられている。タイミングベルト1F2は、無端ベルトであり、主走査方向H1に周回移動するように駆動される。キャリッジガイド1F1には、キャリッジ10を主走査方向H1に往復移動が可能な状態で保持する上下一対のガイドレール1F3が、主走査方向H1に平行に延在するように装備されている。キャリッジ10は、ガイドレール1F3と係合している。また、キャリッジ10は、タイミングベルト1F2に固定されている。キャリッジ10は、タイミングベルト1F2の主走査方向H1の周回移動に伴って、ガイドレール1F3に案内されつつ、キャリッジガイド1F1に沿って主走査方向H1に往復移動する。
【0017】
搬送部8は、無端ベルト81と、駆動ローラ82と、従動ローラ83とを有する。駆動ローラ82および従動ローラ83は、無端ベルト81を張架する。駆動ローラ82が回転すると、無端ベルト81が周回し、キャリッジ10の下方を通過するようにワークWを副走査方向H2に搬送する。
【0018】
プリンタ1は、シリアル印刷方式でワークWに対して印刷処理を行う。ワークWが幅広のサイズを有するものである場合、当該ワークWを連続的に送りながら印刷を行うことはできない。シリアル印刷方式は、液体吐出ヘッド2を搭載したキャリッジ10の主走査方向H1への往復移動と、搬送部8によるワークWの副走査方向H2への間欠送りとを繰り返す印刷方式である。
【0019】
液体吐出ヘッド2が吐出するインクは特に限定はされず、顔料及び染料を用いたものを使用できる。例えば、顔料と、水性媒体とを含有するインクが使用できる。インクは、必要に応じて、界面活性剤、ポリオール、及びバインダー樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも1種を更に含有してもよい。顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。インクは、アニオン性の顔料を含有していてもよい。
【0020】
また、液体吐出ヘッド2は、インクを吐出することに限定はされず、ワークWに対して所定の前処理を施すための前処理液を吐出するものであってもよいし、ワークWに対して所定の後処理を施すための後処理液を吐出するものであってもよい。
【0021】
前処理液は、任意のものが使用できる。前処理液は、例えば、インクの顔料を凝集させて、発色および定着性を改善するものが使用できる。また、前処理液は、ワークWへのインクの浸透を抑制したり、逆に浸透を促進したり、厚く印刷して立体的な形状にしたり、光沢を与えたりしてもよい。前処理液は、例えば、水溶性カチオン性ポリマーと、有機酸塩と、水性媒体とを含有してもよい。このような前処理液により、その後に印刷されるインクに含まれる顔料と反応凝集し、発色性を改善することができる。前処理液に含まれるカチオン性ポリマーと、インクに含まれるアニオン性顔料が、ワークWの表面で電気的に反応凝集を起こすため、インクに含まれるバインダー樹脂がワークWに浸透することを抑制できる。これは、ワークWが生地である場合に、バインダー樹脂が繊維の隙間に浸透し、繊維同士を結着してしまうことを低減することができる。それにより、捺染対象の生地の風合い(肌触り等)を高めることができる。
【0022】
後処理液は、任意のものが使用できる。後処理液は、例えば、捺染対象の生地の風合いを改善するものが使用できる。また、後処理液は、印刷したインクの保護等のためのコーティングを行なったり、厚く印刷して立体的な形状にしたり、光沢を与えたりしてもよい。また、ワークWに撥水性を与えるなど、インクの印刷と直接関係しない処理を行ってもよい。後処理液は、例えば、シリコーンオイルを含有する乳化粒子と、界面活性剤と、水性媒体とを含有してもよい。つまり、後処理液は水性媒体中に乳化粒子が分散しているエマルションであり、より具体的には、水中油滴(O/W)型エマルションである。シリコーンオイルは、非変性シリコーンオイルを含んでもよい。非変性シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。このような後処理液により、風合いを改善することができる。
【0023】
プリンタ1で印刷が終わったワークWは、プリンタ1に設けられた不図示のヒーター等により加熱され、乾燥されてもよい。また、ワークWのうち、印刷の終わった部分を、不図示の巻き取りローラに巻き取るのではなく、プリンタ1とは別の乾燥機に搬送し、その乾燥機によって乾燥をしてもよい。加熱温度は、例えば、120℃以上180℃以下である。加熱時間は、例えば、1分以上10分以下である。加熱により、インク及び処理液に含まれる揮発成分が乾燥し、ワークWへのインクの固定が促進される。
【0024】
[液体吐出ヘッドの詳細構成]
次に、
図2~
図8を参照しながら、液体吐出ヘッド2を詳細に説明する。なお、以下の説明では、液体吐出ヘッド2の外側を外部と称する。本実施形態では、液体吐出ヘッド2は、第1の液体としての第1インクと、第1インクとは異なる種類の第2の液体としての第2インクを吐出することが可能に構成されている。第1インクと第2インクとは、例えば色が異なっている。液体吐出ヘッド2は、第1インク及び第2インクを吐出するためのインクの流路などが形成されたヘッド本体21と、ヘッド本体21に接続され、インクの吐出動作を制御するためのドライバICや配線基板などを収容した筐体22と、を含む。
【0025】
ヘッド本体21は、平面視したとき、幅方向D2と、幅方向D2と直交する長手方向D1とに延び、長手方向D1が幅方向D2よりも長い形状を有している。以下では、方向関係については、ヘッド本体21の長手方向D1において一方方向を第1方向D11と称し、第1方向D11の反対方向を第2方向D12と称する。また、ヘッド本体21の幅方向D2において一方方向を第3方向D21と称し、第3方向D21の反対方向を第4方向D22と称する。また、ヘッド本体21において長手方向D1及び幅方向D2と直交する方向を、ヘッド本体21の厚み方向D3と称する。液体吐出ヘッド2がキャリッジ10に搭載された状態では、ヘッド本体21の長手方向D1は主走査方向H1に平行であり、ヘッド本体21の幅方向D2は副走査方向H2に平行であり、ヘッド本体21の厚み方向D3はワークWの印刷面に垂直な上下方向に平行である。
【0026】
図2に示されるように、ヘッド本体21は、ヘッド本体21の下方部分に配置される第1流路部材3と、ヘッド本体21の上方部分に配置される第2流路部材5と、第1流路部材3と第2流路部材5との間に配置される圧電アクチュエータ基板4と、第2流路部材5の上に配置されるダンパ部材6と、を含む。
【0027】
第1流路部材3は、圧電アクチュエータ基板4の駆動に応じて第1インク及び第2インクを吐出するための流路が形成された平板状の部材である。第2流路部材5は、第1流路部材3に第1インク及び第2インクを供給するための流路が形成されるとともに、第1流路部材3から回収された第1インク及び第2インクの流路が形成された平板状の部材である。ダンパ部材6は、第2流路部材5に形成された流路の圧力変動を減衰させる平板状の部材である。ダンパ部材6は、外部から第1インクが流入する第1流入口6A、外部から第2インクが流入する第2流入口6C、外部へ第1インクが流出する第1流出口6B、外部へ第2インクが流出する第2流出口6Dを有している。第1インクは、第1流入口6Aを通じて第2流路部材5に流入し、第1流出口6Bを通じて第2流路部材5から流出する。第2インクは、第2流入口6Cを通じて第2流路部材5に流入し、第2流出口6Dを通じて第2流路部材5から流出する。
【0028】
図2に示されるように、液体吐出ヘッド2の外部には循環部7が配置されている。循環部7は、ヘッド本体21における第1流入口6A及び第2流入口6Cと、第1流出口6B及び第2流出口6Dとに接続される。循環部7は、第1流出口6Bから第1流入口6Aへ向かう第1インクの流れを形成するとともに、第2流出口6Dから第2流入口6Cへ向かう第2インクの流れを形成することで、ヘッド本体21を介して第1インク及び第2インクを循環させる。
【0029】
循環部7は、供給貯留部71と、回収貯留部72と、ポンプ73と、外部供給流路部材74と、外部回収流路部材75と、を含む。供給貯留部71及び外部供給流路部材74は、第1流入口6Aを通じて第1インクを第2流路部材5に供給するとともに、第2流入口6Cを通じて第2インクを第2流路部材5に供給する供給部を構成する。回収貯留部72及び外部回収流路部材75は、第1流出口6Bを通じて第1インクを第2流路部材5から回収するとともに、第2流出口6Dを通じて第2インクを第2流路部材5から回収する回収部を構成する。
【0030】
供給貯留部71は、ヘッド本体21の第1流入口6Aへ供給される第1インクを貯留するとともに、ヘッド本体21の第2流入口6Cへ供給される第2インクを第1インクとは区別して貯留する。回収貯留部72は、ヘッド本体21の第1流出口6Bから流出された第1インクを貯留するとともに、ヘッド本体21の第2流出口6Dから流出された第2インクを第1インクとは区別して貯留する。ポンプ73は、回収貯留部72から供給貯留部71へ第1インク及び第2インクを送出する。外部供給流路部材74は、供給貯留部71とヘッド本体21の第1流入口6A及び第2流入口6Cとの間を接続し、供給貯留部71に貯留された第1インクを第1流入口6Aへ流す流路と、供給貯留部71に貯留された第2インクを第2流入口6Cへ流す流路とを形成する。外部回収流路部材75は、回収貯留部72とヘッド本体21の第1流出口6B及び第2流出口6Dとの間を接続し、第1流出口6Bから流出された第1インクを回収貯留部72へ流す流路と、第2流出口6Dから流出された第2インクを回収貯留部72へ流す流路とを形成する。
【0031】
<第1流路部材について>
図3及び
図4に示されるように、ヘッド本体21の下方部分に配置される第1流路部材3は、複数の個別流路31と、第1共通流路32と、第2共通流路33と、を有している。第1共通流路32は、複数の個別流路31の各々の流路の入口となる一端部311に接続される流路である。第2共通流路33は、複数の個別流路31の各々の流路の出口となる他端部312に接続される流路である。本実施形態では、第1流路部材3は、複数の個別流路31の各々の一端部311に接続される第1共通流路32を複数有するとともに、複数の個別流路31の各々の他端部312に接続される第2共通流路33を複数有している。
【0032】
複数の個別流路31はそれぞれ、第1共通流路32に接続される一端部311と、第2共通流路33に接続される他端部312とを有し、一端部311から他端部312に向かって第1インク及び第2インクが流れる流路である。各個別流路31において、一端部311は、第1インク及び第2インクの流れ方向の上流端であって流路の入口であり、他端部312は、第1インク及び第2インクの流れ方向の下流端であって流路の出口である。各個別流路31における第1インク及び第2インクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。各個別流路31は、一端部311と他端部312との間において第1流路部材3の上面3Aに配置された加圧室313と、一端部311と他端部312との間において第1流路部材3の下面3Bに配置された吐出孔315と、加圧室313と吐出孔315とを繋ぐディセンダ314と、を有している。
【0033】
加圧室313は、第1流路部材3の上面3Aにおいて上方を向いて開口しており、ディセンダ314を通じて吐出孔315に連通している。第1流路部材3の上面3Aには、加圧室313の開口を塞ぐように圧電アクチュエータ基板4が接合されている。これにより、加圧室313の上方には、圧電アクチュエータ基板4に組み込まれた変位素子41が配置される。変位素子41は、加圧室313に対して圧力を加える加圧部としての機能を有する。ディセンダ314は、第1流路部材3の厚み方向D3に沿って加圧室313から吐出孔315に至るまで下方に延びている。ディセンダ314の上端に加圧室313が接続され、ディセンダ314の下端に吐出孔315が接続される。吐出孔315は、第1流路部材3の下面3Bにおいて下方を向いて開口しており、変位素子41の駆動に応じて加圧室313で加圧されてディセンダ314内を通過した第1インク及び第2インクを吐出する。
【0034】
複数の第1共通流路32はそれぞれ、第1流路部材3の長手方向D1に沿って延びる流路である。各第1共通流路32における第1インク及び第2インクの流れ方向は、第1流路部材3の長手方向D1に平行である。各第1共通流路32は、複数の個別流路31の各々の一端部311に接続されることにより、各個別流路31に第1インク及び第2インクを供給する供給系の流路として機能する。各第1共通流路32は、第1流路部材3の幅方向D2に並んで配置される。各第1共通流路32は、長手方向D1における第1方向D11の端部及び第2方向D12の端部の各々に、第2流路部材5から第1流路部材3に供給される第1インク及び第2インクを受け入れる第1開口321を有している。第1共通流路32における各端部の第1開口321に供給された第1インク及び第2インクは、第1共通流路32の長手方向D1の中央に向かって流れる。第1共通流路32を流れた第1インク及び第2インクは、当該第1共通流路32に一端部311が接続された各個別流路31に供給される。
【0035】
第1共通流路32と各個別流路31の一端部311との間の接続部位には、フィルタ311Aが設けられている。フィルタ311Aは、第1共通流路32内の第1インク及び第2インクが各個別流路31へ通過することを許容するとともに、インク中の異物などが各個別流路31へ通過することを規制する。
【0036】
第1流路部材3において第1共通流路32の下側の面は、第1ダンパ322になっている。第1ダンパ322の第1共通流路32に面している面と反対側の面は、空気などの気体が入った第1ダンパ室323に面している。第1ダンパ室323の体積は、第1共通流路32から加わる圧力によって変化する。第1ダンパ322は、第1ダンパ室323の体積が変化することに応じて振動可能である。第1ダンパ322の振動が減衰することにより、第1共通流路32に生じた圧力変動を減衰させることができる。このため、第1共通流路32に対して第1ダンパ322を設けることで、第1共通流路32内のインクの共振等の圧力変動を小さくすることができる。
【0037】
複数の第2共通流路33はそれぞれ、第1流路部材3における第1共通流路32の下方の位置で長手方向D1に沿って延びる流路である。各第2共通流路33における第1インク及び第2インクの流れ方向は、第1流路部材3の長手方向D1に平行である。各第2共通流路33は、複数の個別流路31の各々の他端部312に接続されることにより、各個別流路31において吐出孔315から吐出されなかったインクを回収する回収系の流路として機能する。各第2共通流路33は、第1流路部材3の幅方向D2に並んで配置される。各第2共通流路33は、長手方向D1における第1方向D11の端部及び第2方向D12の端部の各々に、各個別流路31において吐出孔315から吐出されずに第2共通流路33に回収された第1インク及び第2インクを第2流路部材5へ流す第2開口331を有している。第2共通流路33に他端部312が接続された各個別流路31から第2共通流路33に回収されたインクは、第2共通流路33における各端部の第2開口331に向かって流れて、当該第2開口331を通じて第2流路部材5に回収される。
【0038】
第1流路部材3において第2共通流路33の下側の面は、第2ダンパ332になっている。第2ダンパ332の第2共通流路33に面している面と反対側の面は、空気などの気体が入った第2ダンパ室333に面している。第2ダンパ室333の体積は、第2共通流路33から加わる圧力によって変化する。第2ダンパ332は、第2ダンパ室333の体積が変化することに応じて振動可能である。第2ダンパ332の振動が減衰することにより、第2共通流路33に生じた圧力変動を減衰させることができる。このため、第2共通流路33に対して第2ダンパ332を設けることで、第2共通流路33内のインクの共振等の圧力変動を小さくすることができる。
【0039】
また、複数の個別流路31はそれぞれ、一端部311と加圧室313との間に配置された第1絞り部316と、他端部312と加圧室313との間において吐出孔315が設けられたディセンダ314の下端に接続された第2絞り部317と、を有している。
【0040】
第1絞り部316は、個別流路31の一端部311と加圧室313との間において、第1流路部材3の幅方向D2に沿って延びる流路である。第1絞り部316は、個別流路31の一端部311に接続された第1共通流路32と、加圧室313とのそれぞれに連通している。第1絞り部316における第1インク及び第2インクの流れ方向は、第1流路部材3の幅方向D2に平行である。第2絞り部317は、個別流路31の他端部312とディセンダ314の下端との間において、第1流路部材3の幅方向D2に沿って延びる流路である。第2絞り部317は、個別流路31の他端部312に接続された第2共通流路33と連通するとともに、ディセンダ314を通じて加圧室313及び吐出孔315と連通している。第2絞り部317における第1インク及び第2インクの流れ方向は、第1流路部材3の幅方向D2に平行である。
【0041】
複数の個別流路31、第1共通流路32及び第2共通流路33の各流路が形成された第1流路部材3においては、第2流路部材5から第1流路部材3に供給された第1インク及び第2インクは、第1開口321を通じて第1共通流路32に流れ込む。第1共通流路32に流れ込んだインクは、第1共通流路32との接続部位となる一端部311を通じて各個別流路31に流入する。一端部311を通じて各個別流路31に流入したインクは、第1絞り部316を通過した後に、加圧室313に流れ込む。加圧室313に流れ込んだインクは、ディセンダ314を流れ、一部のインクは吐出孔315から吐出される。吐出孔315から吐出されなかったインクは、第2絞り部317を通過した後に、他端部312を通じて第2共通流路33に流れ込む。第2共通流路33に流れ込んだインクは、第2開口331を通じて第2流路部材5に向かって流れて回収される。
【0042】
図4に示されるように、圧電アクチュエータ基板4は、圧電体である2枚の第1圧電セラミック層4A及び第2圧電セラミック層4Bからなる積層構造を有している。第1圧電セラミック層4A及び第2圧電セラミック層4Bのいずれの層も複数の加圧室313を跨ぐように延在している。
【0043】
圧電アクチュエータ基板4は、共通電極42と個別電極43とを有している。個別電極43は、圧電アクチュエータ基板4の上面における各加圧室313に対向する位置に、それぞれ配置されている。個別電極43には、制御部9から信号伝達部552(後記の
図6)を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、ワークWの搬送と同期して一定の周期で供給される。共通電極42は、第1圧電セラミック層4Aと第2圧電セラミック層4Bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極42は、圧電アクチュエータ基板4に対向する領域内のすべての加圧室313を覆うように延在している。共通電極42は、第1圧電セラミック層4A上に個別電極43からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極(不図示)に、第1圧電セラミック層4Aを貫通して形成された貫通導体を介して繋がっている。また、共通電極42は、共通電極用表面電極を介して接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極は、個別電極43と同様に、制御部9と直接的あるいは間接的に接続されている。
【0044】
<第2流路部材について>
ヘッド本体21の上方部分に配置される第2流路部材5は、第1流路部材3の上面3Aにおける、圧電アクチュエータ基板4が接続されていない領域に接合される。すなわち、第2流路部材5は、圧電アクチュエータ基板4を囲むように、第1流路部材3の上面3Aに接合される。
図5~
図7に示されるように、第2流路部材5は、第1供給流路51、第1回収流路52、第2供給流路53、及び第2回収流路54を有している。また、第2流路部材5は、複数の平板状の流路プレートが厚み方向D3に積層された積層構造を有している。
図7の例では、第2流路部材5は、第1~第7流路プレート5a~5gの7枚の流路プレートが上から順番に積層されている。第1~第7流路プレート5a~5gは接着剤により接着されている。
【0045】
(第1供給流路)
第1供給流路51は、第1流路部材3の第1共通流路32に供給する第1インクが流れる流路である。第1供給流路51は、ダンパ部材6に形成された第1流入口6Aに連通する。第1供給流路51は、第1共通流路32の第1開口321に接続され、第1流入口6Aから流入した第1インクを、第1開口321を通じて第1共通流路32に供給する。
【0046】
第1供給流路51は、第1流入口6Aに接続される第1流入接続流路511と、第1流入接続流路511を通じて第1流入口6Aに連通する第1供給収容室512と、第1供給収容室512に接続される第1供給分岐接続流路513と、第1供給分岐接続流路513を通じて第1供給収容室512に連通する第1供給分岐流路514と、を有している。
【0047】
第1流入接続流路511は、第1流路プレート5aに形成される。第1流入接続流路511は、第1流入口6Aと第1供給収容室512とを接続する流路である。
【0048】
第1供給収容室512は、第1流路プレート5aに形成される。第1供給収容室512は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部よりも第2方向D12側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第4方向D22側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる流路である。第1供給収容室512は、第1流入口6Aから流入した第1インクを収容可能であって、ダンパ部材6側の上方を向いて開口している。第1供給収容室512の上方を向く開口は、ダンパ部材6で覆われる。
【0049】
第1供給分岐接続流路513は、第2~第4流路プレート5b~5dに形成される。第1供給分岐接続流路513は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部に配置され、第1供給収容室512と第1供給分岐流路514とを接続する流路である。
【0050】
第1供給分岐流路514は、第5~第7流路プレート5e~5gに形成される。第1供給分岐流路514は、第1供給分岐接続流路513を通じて第1供給収容室512に連通するとともに、第1流路部材3における第1開口321に接続されることで第1共通流路32に連通する流路である。第1供給分岐流路514は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部において第1供給分岐接続流路513に接続されて長手方向D1に沿って延びる。そして、第1供給分岐流路514において、長手方向D1の両端にそれぞれ位置する第1供給分岐端部515は、第1共通流路32の第1開口321に接続される。
【0051】
(第1回収流路)
第1回収流路52は、第1流路部材3の第2共通流路33から回収された第1インクが流れる流路である。第1回収流路52は、ダンパ部材6に形成された第1流出口6Bに連通する。第1回収流路52は、第2共通流路33の第2開口331に接続され、第2開口331を通じて第2共通流路33から回収された第1インクを第1流出口6Bへ流す。
【0052】
第1回収流路52は、第1流出口6Bに接続される第1流出接続流路521と、第1流出接続流路521を通じて第1流出口6Bに連通する第1回収収容室522と、第1回収収容室522に接続される第1回収分岐接続流路523と、第1回収分岐接続流路523を通じて第1回収収容室522に連通する第1回収分岐流路524と、を有している。
【0053】
第1流出接続流路521は、第1流路プレート5aに形成される。第1流出接続流路521は、第1流出口6Bと第1回収収容室522とを接続する流路である。
【0054】
第1回収収容室522は、第1流路プレート5aに形成される。第1回収収容室522は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部よりも第1方向D11側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第4方向D22側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる流路である。第1回収収容室522は、長手方向D1において、第1供給収容室512に隣接している。第1回収収容室522は、第1流出口6Bから流出された第1インクを収容可能であって、ダンパ部材6側の上方を向いて開口している。第1回収収容室522の上方を向く開口は、ダンパ部材6で覆われる。
【0055】
第1回収分岐接続流路523は、第2流路プレート5bに形成される。第1回収分岐接続流路523は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部に配置され、第1回収収容室522と第1回収分岐流路524とを接続する流路である。
【0056】
第1回収分岐流路524は、第3~第7流路プレート5c~5gに形成される。第1回収分岐流路524は、第1回収分岐接続流路523を通じて第1回収収容室522に連通するとともに、第1流路部材3における第2開口331に接続されることで第2共通流路33に連通する流路である。第1回収分岐流路524は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部において第1回収分岐接続流路523に接続されて長手方向D1に沿って延びる。そして、第1回収分岐流路524において、長手方向D1の両端にそれぞれ位置する第1回収分岐端部525は、第2共通流路33の第2開口331に接続される。
【0057】
(第2供給流路)
第2供給流路53は、第1流路部材3の第1共通流路32に供給する第2インクが流れる流路である。第2供給流路53は、ダンパ部材6に形成された第2流入口6Cに連通する。第2供給流路53は、第1共通流路32の第1開口321に接続され、第2流入口6Cから流入した第2インクを、第1開口321を通じて第1共通流路32に供給する。
【0058】
第2供給流路53は、第2流入口6Cに接続される第2流入接続流路531と、第2流入接続流路531を通じて第2流入口6Cに連通する第2供給収容室532と、第2供給収容室532に接続される第2供給分岐接続流路533と、第2供給分岐接続流路533を通じて第2供給収容室532に連通する第2供給分岐流路534と、を有している。
【0059】
第2流入接続流路531は、第1流路プレート5aに形成される。第2流入接続流路531は、第2流入口6Cと第2供給収容室532とを接続する流路である。
【0060】
第2供給収容室532は、第1流路プレート5aに形成される。第2供給収容室532は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部よりも第2方向D12側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第3方向D21側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる流路である。第2供給収容室532は、幅方向D2において、第1供給収容室512に隣接している。すなわち、第2流路部材5では、第1供給収容室512と第2供給収容室532とは幅方向D2に互いに離れて配置されている。第2供給収容室532は、第2流入口6Cから流入した第2インクを収容可能であって、ダンパ部材6側の上方を向いて開口している。第2供給収容室532の上方を向く開口は、ダンパ部材6で覆われる。
【0061】
第2供給分岐接続流路533は、第2~第4流路プレート5b~5dに形成される。第2供給分岐接続流路533は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部に配置され、第2供給収容室532と第2供給分岐流路534とを接続する流路である。
【0062】
第2供給分岐流路534は、第5~第7流路プレート5e~5gに形成される。第2供給分岐流路534は、第2供給分岐接続流路533を通じて第2供給収容室532に連通するとともに、第1流路部材3における第1開口321に接続されることで第1共通流路32に連通する流路である。第2供給分岐流路534は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部において第2供給分岐接続流路533に接続されて長手方向D1に沿って延びる。そして、第2供給分岐流路534において、長手方向D1の両端にそれぞれ位置する第2供給分岐端部535は、第1共通流路32の第1開口321に接続される。
【0063】
(第2回収流路)
第2回収流路54は、第1流路部材3の第2共通流路33から回収された第2インクが流れる流路である。第2回収流路54は、ダンパ部材6に形成された第2流出口6Dに連通する。第2回収流路54は、第2共通流路33の第2開口331に接続され、第2開口331を通じて第2共通流路33から回収された第2インクを第2流出口6Dへ流す。
【0064】
第2回収流路54は、第2流出口6Dに接続される第2流出接続流路541と、第2流出接続流路541を通じて第2流出口6Dに連通する第2回収収容室542と、第2回収収容室542に接続される第2回収分岐接続流路543と、第2回収分岐接続流路543を通じて第2回収収容室542に連通する第2回収分岐流路544と、を有している。
【0065】
第2流出接続流路541は、第1流路プレート5aに形成される。第2流出接続流路541は、第2流出口6Dと第2回収収容室542とを接続する流路である。
【0066】
第2回収収容室542は、第1流路プレート5aに形成される。第2回収収容室542は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部よりも第1方向D11側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第3方向D21側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる流路である。第2回収収容室542は、長手方向D1において、第2供給収容室532に隣接している。更に、第2回収収容室542は、幅方向D2において、第1回収収容室522に隣接している。すなわち、第2流路部材5では、第1回収収容室522と第2回収収容室542とは幅方向D2に互いに離れて配置されている。第2回収収容室542は、第2流出口6Dから流出された第2インクを収容可能であって、ダンパ部材6側の上方を向いて開口している。第2回収収容室542の上方を向く開口は、ダンパ部材6で覆われる。
【0067】
第2回収分岐接続流路543は、第2流路プレート5bに形成される。第2回収分岐接続流路543は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部に配置され、第2回収収容室542と第2回収分岐流路544とを接続する流路である。
【0068】
第2回収分岐流路544は、第3~第7流路プレート5c~5gに形成される。第2回収分岐流路544は、第2回収分岐接続流路543を通じて第2回収収容室542に連通するとともに、第1流路部材3における第2開口331に接続されることで第2共通流路33に連通する流路である。第2回収分岐流路544は、第2流路部材5の長手方向D1の中央部において第2回収分岐接続流路543に接続されて長手方向D1に沿って延びる。そして、第2回収分岐流路544において、長手方向D1の両端にそれぞれ位置する第2回収分岐端部545は、第2共通流路33の第2開口331に接続される。
【0069】
また、第2流路部材5は、第2流路部材5の幅方向D2における第3方向D21及び第4方向D22bの各端部に、上面から下面に亘って貫通する貫通孔551を有している。この第2流路部材5の貫通孔551は、後記のダンパ部材6の貫通孔6Eと連通している。これらの貫通孔551,6Eには、圧電アクチュエータ基板4を駆動する駆動信号を伝達するFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部552が通されている。
【0070】
第2流路部材5の上面を構成している第1流路プレート5aには、第1供給収容室512と第2供給収容室532との間、および、第1回収収容室522と第2回収収容室542との間に、第1流路プレート隔壁部5a5が存在する。第1流路プレート5aには、第1供給収容室512と貫通孔551との間、および、第1回収収容室522と貫通孔551との間に、第1流路プレート第1周壁接合部5a6が存在する。第1流路プレート5aには、第2供給収容室532と貫通孔551との間、および、第2回収収容室542と貫通孔551との間に、第1流路プレート第2周壁接合部5a7が存在する。
【0071】
<ダンパ部材について>
図5、
図6及び
図8を参照しながらダンパ部材6について説明する。ダンパ部材6は、第2流路部材5の上に配置されることで、第1供給収容室512、第1回収収容室522、第2供給収容室532、及び第2回収収容室542の各々の上方を向く開口を覆う。ダンパ部材6は、第1供給収容室512、第1回収収容室522、第2供給収容室532、及び第2回収収容室542の各々の圧力変動を減衰させる。ダンパ部材6は、外部から第1インクが流入する第1流入口6A、外部から第2インクが流入する第2流入口6C、外部へ第1インクが流出する第1流出口6B、外部へ第2インクが流出する第2流出口6Dを有している。ダンパ部材6と第2流路部材5とは接着剤により接着される。また、ダンパ部材6は、ダンパ部材6の幅方向D2における第3方向D21及び第4方向D22の各端部に、上面から下面に亘って貫通する貫通孔6Eを有している。貫通孔6Eには、信号伝達部552が通される。
【0072】
ダンパ部材6は、第1ダンパプレート61、第1接合シート62、弾性フィルム63、第2接合シート64、及び第2ダンパプレート65の各々の平板状の部材が下から順番に厚み方向D3に積層された積層構造を有している。
【0073】
(第1ダンパプレート)
第1ダンパプレート61は、ステンレス鋼などの金属材料により構成されたプレートである。第1ダンパプレート61は、第1流入口6A、第2流入口6C、第1流出口6B、第2流出口6D、及び貫通孔6Eを有している。更に、第1ダンパプレート61は、第1供給ダンパ開口611と、第1回収ダンパ開口612と、第2供給ダンパ開口613と、第2回収ダンパ開口614と、隔壁部615と、第1周壁部616と、第2周壁部617と、を有している。
【0074】
第1供給ダンパ開口611は、第2流路部材5の第1供給収容室512に連通する開口である。第1ダンパプレート61において第1供給ダンパ開口611は、厚み方向D3に見て第1供給収容室512に重なる領域に形成される。第1供給ダンパ開口611は、第1ダンパプレート61の長手方向D1の中央部よりも第2方向D12側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第4方向D22側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる。
【0075】
第1回収ダンパ開口612は、第2流路部材5の第1回収収容室522に連通する開口である。第1ダンパプレート61において第1回収ダンパ開口612は、厚み方向D3に見て第1回収収容室522に重なる領域に形成される。第1回収ダンパ開口612は、第1ダンパプレート61の長手方向D1の中央部よりも第1方向D11側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第4方向D22側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる。第1回収ダンパ開口612は、長手方向D1において、第1供給ダンパ開口611に隣接している。
【0076】
第2供給ダンパ開口613は、第2流路部材5の第2供給収容室532に連通する開口である。第1ダンパプレート61において第2供給ダンパ開口613は、厚み方向D3に見て第2供給収容室532に重なる領域に形成される。第2供給ダンパ開口613は、第1ダンパプレート61の長手方向D1の中央部よりも第2方向D12側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第3方向D21側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる。更に、第2供給ダンパ開口613は、幅方向D2において、第1供給ダンパ開口611に隣接している。すなわち、第1ダンパプレート61では、第1供給ダンパ開口611と第2供給ダンパ開口613とは、幅方向D2に互いに離れて配置されている。
【0077】
第2回収ダンパ開口614は、第2流路部材5の第2回収収容室542に連通する開口である。第1ダンパプレート61において第2回収ダンパ開口614は、厚み方向D3に見て第2回収収容室542に重なる領域に形成される。第2回収ダンパ開口614は、第1ダンパプレート61の長手方向D1の中央部よりも第1方向D11側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第3方向D21側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる。第2回収ダンパ開口614は、長手方向D1において、第2供給ダンパ開口613に隣接している。更に、第2回収ダンパ開口614は、幅方向D2において、第1回収ダンパ開口612に隣接している。すなわち、第1ダンパプレート61では、第1回収ダンパ開口612と第2回収ダンパ開口614とは、幅方向D2に互いに離れて配置されている。
【0078】
隔壁部615は、第1ダンパプレート61において、第1供給ダンパ開口611と第2供給ダンパ開口613との間で長手方向D1に延びる隔壁である。第1ダンパプレート61において隔壁部615は、厚み方向D3に見て第1流路プレート隔壁部5a5に重なる領域に形成される。隔壁部615は、第1供給ダンパ開口611と第2供給ダンパ開口613との間において、第1供給ダンパ開口611及び第2供給ダンパ開口613の長手方向D1の両端部間に亘って延びている。更に、第1ダンパプレート61では、第1回収ダンパ開口612と第2回収ダンパ開口614との間にも、第1回収ダンパ開口612及び第2回収ダンパ開口614の長手方向D1の両端部間に亘って延びる隔壁部615が設けられている。
【0079】
図8に示されるように、各隔壁部615は、長手方向D1において、中央領域が端部領域よりも幅広の形状となっている幅広部を有している。各隔壁部615は、長手方向D1において、端部から中央部に向かうに従って徐々に幅が広くなっている。各隔壁部615の幅広部の形状の設計条件は、次のとおりである。すなわち、第1供給収容室512、第1回収収容室522、第2供給収容室532、及び第2回収収容室542の各々の上方を向く開口の面積を収容室開口面積S1とし、第1供給ダンパ開口611、第1回収ダンパ開口612、第2供給ダンパ開口613、及び第2回収ダンパ開口614の各々の面積をダンパ開口面積S2とする。この場合、収容室開口面積S1に対するダンパ開口面積S2の比(S2/S1)が、0.9以上1.1以下の範囲に含まれるように、各隔壁部615の幅広部の形状が設定される。これにより、後記の弾性フィルム63において、第1供給ダンパ開口611、第1回収ダンパ開口612、第2供給ダンパ開口613、及び第2回収ダンパ開口614の各々に面した部分の弾性変形が、各隔壁部615の幅広部で阻害されることを抑制することができる。
【0080】
第1周壁部616は、第1ダンパプレート61において、幅方向D2に関して第1供給ダンパ開口611の隔壁部615とは反対側で長手方向D1に延びる周壁である。第1ダンパプレート61において第1周壁部616は、厚み方向D3に見て第1流路プレート第1周壁接合部5a6に重なる領域に形成される。第1周壁部616は、第1供給ダンパ開口611の長手方向D1の両端部間に亘って延びている。更に、第1ダンパプレート61では、幅方向D2に関して第1回収ダンパ開口612の隔壁部615とは反対側にも、第1回収ダンパ開口612の長手方向D1の両端部間に亘って延びる第1周壁部616が設けられている。
【0081】
第2周壁部617は、第1ダンパプレート61において、幅方向D2に関して第2供給ダンパ開口613の隔壁部615とは反対側で長手方向D1に延びる周壁である。第1ダンパプレート61において第2周壁部617は、厚み方向D3に見て第1流路プレート第2周壁接合部5a7に重なる領域に形成される。第2周壁部617は、第2供給ダンパ開口613の長手方向D1の両端部間に亘って延びている。更に、第1ダンパプレート61では、幅方向D2に関して第2回収ダンパ開口614の隔壁部615とは反対側にも、第2回収ダンパ開口614の長手方向D1の両端部間に亘って延びる第2周壁部617が設けられている。
【0082】
(弾性フィルム)
弾性フィルム63は、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料により構成され、弾性変形可能なフィルムである。弾性フィルム63は、第1流入口6A、第2流入口6C、第1流出口6B、第2流出口6D、及び貫通孔6Eを有している。弾性フィルム63は、第1ダンパプレート61を上方から覆う。これにより、弾性フィルム63は、第1供給ダンパ開口611、第1回収ダンパ開口612、第2供給ダンパ開口613、及び第2回収ダンパ開口614の各々に連通する第1供給収容室512、第1回収収容室522、第2供給収容室532、及び第2回収収容室542の各々の上方を向く開口を塞ぐ。
【0083】
第1供給収容室512、第1回収収容室522、第2供給収容室532、及び第2回収収容室542の各々の体積は、第1供給ダンパ開口611、第1回収ダンパ開口612、第2供給ダンパ開口613、及び第2回収ダンパ開口614の各々に面した弾性フィルム63の部分の弾性変形に応じて変化する。弾性フィルム63は、弾性変形に応じて振動可能である。弾性フィルム63の振動が減衰することにより、第1供給収容室512、第1回収収容室522、第2供給収容室532、及び第2回収収容室542の各々に生じた圧力変動を減衰させることができる。このため、第1供給収容室512、第1回収収容室522、第2供給収容室532、及び第2回収収容室542の各々の内部のインクの共振等の圧力変動を小さくすることができる。
【0084】
(第2ダンパプレート)
第2ダンパプレート65は、ステンレス鋼などの金属材料により構成されたプレートである。第2ダンパプレート65は、弾性フィルム63を上方から覆う。第2ダンパプレート65は、外部に連通した外部連通孔651を有している。弾性フィルム63は、後記の第1接合シート62及び第2接合シート64を介して第1ダンパプレート61と第2ダンパプレート65との間に挟持されている。この場合、第1ダンパプレート61及び第2ダンパプレート65によって弾性フィルム63を好適に保持することができる。
【0085】
(第1接合シート及び第2接合シート)
第1接合シート62及び第2接合シート64は、ポリエチレン(PE)などの熱硬化性樹脂の樹脂材料により構成されたシートである。弾性フィルム63のヤング率をE1とし、第1接合シート62及び第2接合シート64のヤング率をE2とした場合、ヤング率E1に対するヤング率E2の比(E2/E1)は、0.1以上2.0以下の範囲に設定される。第1接合シート62は、厚み方向D3において第1ダンパプレート61と弾性フィルム63との間に配置され、加熱による硬化に基づき第1ダンパプレート61と弾性フィルム63とを接合する。第2接合シート64は、厚み方向D3において第2ダンパプレート65と弾性フィルム63との間に配置され、加熱による硬化に基づき第2ダンパプレート65と弾性フィルム63とを接合する。ダンパ部材6は、第1ダンパプレート61、第1接合シート62、弾性フィルム63、第2接合シート64、及び第2ダンパプレート65が積層された積層体を加熱及び加圧することで成形される。
【0086】
第1接合シート62は、第1流入口6A、第2流入口6C、第1流出口6B、第2流出口6D、及び貫通孔6Eを有している。更に、第1接合シート62は、第1供給シート開口621と、第1回収シート開口622と、第2供給シート開口623と、第2回収シート開口624と、隔壁接合部625と、第1周壁接合部626と、第2周壁接合部627と、接続部628と、を有している。
【0087】
第1供給シート開口621は、第1ダンパプレート61の第1供給ダンパ開口611に連通する開口である。第1接合シート62において第1供給シート開口621は、厚み方向D3に見て第1供給ダンパ開口611に重なる領域に形成される。第1供給シート開口621は、第1接合シート62の長手方向D1の中央部よりも第2方向D12側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第4方向D22側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる。
【0088】
第1回収シート開口622は、第1ダンパプレート61の第1回収ダンパ開口612に連通する開口である。第1接合シート62において第1回収シート開口622は、厚み方向D3に見て第1回収ダンパ開口612に重なる領域に形成される。第1回収シート開口622は、第1接合シート62の長手方向D1の中央部よりも第1方向D11側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第4方向D22側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる。第1回収シート開口622は、長手方向D1において、第1供給シート開口621に隣接している。
【0089】
第2供給シート開口623は、第1ダンパプレート61の第2供給ダンパ開口613に連通する開口である。第1接合シート62において第2供給シート開口623は、厚み方向D3に見て第2供給ダンパ開口613に重なる領域に形成される。第2供給シート開口623は、第1接合シート62の長手方向D1の中央部よりも第2方向D12側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第3方向D21側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる。更に、第2供給シート開口623は、幅方向D2において、第1供給シート開口621に隣接している。すなわち、第1接合シート62では、第1供給シート開口621と第2供給シート開口623とは、幅方向D2に互いに離れて配置されている。
【0090】
第2回収シート開口624は、第1ダンパプレート61の第2回収ダンパ開口614に連通する開口である。第1接合シート62において第2回収シート開口624は、厚み方向D3に見て第2回収ダンパ開口614に重なる領域に形成される。第2回収シート開口624は、第1接合シート62の長手方向D1の中央部よりも第1方向D11側であり、且つ、幅方向D2の中央部よりも第3方向D21側の領域に配置され、長手方向D1に沿って延びる。第2回収シート開口624は、長手方向D1において、第2供給シート開口623に隣接している。更に、第2回収シート開口624は、幅方向D2において、第1回収シート開口622に隣接している。すなわち、第1接合シート62では、第1回収シート開口622と第2回収シート開口624とは、幅方向D2に互いに離れて配置されている。
【0091】
隔壁接合部625は、第1供給シート開口621と第2供給シート開口623との間において、第1供給シート開口621及び第2供給シート開口623の長手方向D1の両端部間に亘って延びている。更に、第1接合シート62では、第1回収シート開口622と第2回収シート開口624との間にも、第1回収シート開口622及び第2回収シート開口624の長手方向D1の両端部間に亘って延びる隔壁接合部625が設けられている。この場合、各隔壁接合部625は、第1ダンパプレート61の各隔壁部615に沿って長手方向D1に延びて、各隔壁部615と弾性フィルム63とを接合する。
【0092】
第1周壁接合部626は、第1接合シート62において、幅方向D2に関して第1供給シート開口621の隔壁接合部625とは反対側で、第1供給シート開口621の長手方向D1の両端部間に亘って延びている。更に、第1接合シート62では、幅方向D2に関して第1回収シート開口622の隔壁接合部625とは反対側にも、第1回収シート開口622の長手方向D1の両端部間に亘って延びる第1周壁接合部626が設けられている。この場合、各第1周壁接合部626は、第1ダンパプレート61の各第1周壁部616に沿って長手方向D1に延びて、各第1周壁部616と弾性フィルム63とを接合する。
【0093】
第2周壁接合部627は、第1接合シート62において、幅方向D2に関して第2供給シート開口623の隔壁接合部625とは反対側で、第2供給シート開口623の長手方向D1の両端部間に亘って延びている。更に、第1接合シート62では、幅方向D2に関して第2回収シート開口624の隔壁接合部625とは反対側にも、第2回収シート開口624の長手方向D1の両端部間に亘って延びる第2周壁接合部627が設けられている。この場合、各第2周壁接合部627は、第1ダンパプレート61の各第2周壁部617に沿って長手方向D1に延びて、各第2周壁部617と弾性フィルム63とを接合する。
【0094】
接続部628は、第1接合シート62において、第1供給シート開口621及び第2供給シート開口623に亘って幅方向D2に延びて、第1周壁接合部626、隔壁接合部625、及び第2周壁接合部627を互いに接続する。更に、第1接合シート62では、第1回収シート開口622と第2回収シート開口624との間にも、第1回収シート開口622及び第2回収シート開口624に亘って幅方向D2に延びて、第1周壁接合部626、隔壁接合部625、及び第2周壁接合部627を互いに接続する接続部628が設けられている。
【0095】
第1接合シート62における各接続部628の設計条件は、次のとおりである。すなわち、第1供給シート開口621、第1回収シート開口622、第2供給シート開口623、及び第2回収シート開口624の各々の面積をシート開口面積S3とし、各接続部628の面積を接続部面積S4とする。この場合、シート開口面積S3に対する接続部面積S4の比(S4/S3)が、0.05以上0.5以下の範囲に含まれるように、各接続部628の幅寸法が設定される。これにより、第1接合シート62における各隔壁接合部625の変形を各接続部628で抑制することができるとともに、弾性フィルム63の弾性変形が各接続部628で阻害されることを抑制することができる。
【0096】
第2接合シート64は、第1流入口6A、第2流入口6C、第1流出口6B、第2流出口6D、及び貫通孔6Eを有している。更に、第2接合シート64は、第1接合シート62と同様の形状の第2接合シート第1供給シート開口(第2接合シート第1シート開口の1つ)641、第2接合シート第1回収シート開口(第2接合シート第1シート開口の1つ)642、第2接合シート第2供給シート開口(第2接合シート第2シート開口の1つ)643、第2接合シート第2回収シート開口(第2接合シート第2シート開口の1つ)644、第2接合シート隔壁接合部645、第2接合シート第1周壁接合部646、第2接合シート第2周壁接合部647、及び第2接合シート接続部648を有している。
【0097】
第2接合シート64では、厚み方向D3に見て、第1供給ダンパ開口611に重なる領域に第2接合シート第1供給シート開口641が形成され、第1回収ダンパ開口612に重なる領域に第2接合シート第1回収シート開口642が形成され、第2供給ダンパ開口613に重なる領域に第2接合シート第2供給シート開口643が形成され、第2回収ダンパ開口614に重なる領域に第2接合シート第2回収シート開口644が形成されている。
【0098】
第2接合シート隔壁接合部645は、長手方向D1に延びており、弾性フィルム63の隔壁部615と接合している部分において、隔壁部615と接合している面の反対の面と、第2ダンパプレート65とを接合している。第2接合シート第1周壁接合部646は、長手方向D1に延びており、弾性フィルム63の第1周壁部616と接合している部分において、第1周壁部616と接合している面の反対の面と、第2ダンパプレート65とを接合している。第2接合シート第2周壁接合部647は、長手方向D1に延びており、弾性フィルム63の第2周壁部617と接合している部分において、第2周壁部617と接合している面の反対の面と、第2ダンパプレート65とを接合している。
【0099】
第2接合シート接続部648は、第2接合シート64において、第2接合シート第1供給シート開口641及び第2接合シート第2供給シート開口643に亘って幅方向D2に延びて、第2接合シート第1周壁接合部646、第2接合シート隔壁接合部645、及び第2接合シート第2周壁接合部647を互いに接続する。更に、第2接合シート64では、第2接合シート第1回収シート開口642と第2接合シート第2回収シート開口644との間にも、第2接合シート第1回収シート開口642及び第2接合シート第2回収シート開口644に亘って幅方向D2に延びて、第2接合シート第1周壁接合部646、第2接合シート隔壁接合部645、及び第2接合シート第2周壁接合部647を互いに接続する第2接合シート接続部648が設けられている。ダンパ部材6では、第1接合シート62の接続部628と、第2接合シート64の第2接合シート接続部648とは、厚み方向D3に見て、重なって配置されている。
【0100】
ダンパ部材6では、第2流路部材5の第1供給収容室512及び第2供給収容室532の各々に対応して、第1供給ダンパ開口611及び第2供給ダンパ開口613が互いに幅方向D2に隣り合って第1ダンパプレート61に形成されている。また、第2流路部材5の第1回収収容室522及び第2回収収容室542の各々に対応して、第1回収ダンパ開口612及び第2回収ダンパ開口614が互いに幅方向D2に隣り合って第1ダンパプレート61に形成されている。この場合、液体吐出ヘッド2の幅方向D2の寸法を所定値で設計した場合には、第1ダンパプレート61における各隔壁部615の幅が狭くなる。このため、第1接合シート62における各隔壁接合部625の幅も狭くなる。この場合、例えば、第1ダンパプレート61、第1接合シート62、弾性フィルム63、第2接合シート64、及び第2ダンパプレート65が積層された積層体を加熱及び加圧してダンパ部材6を成形する際に、第1接合シート62の各隔壁接合部625が変形し(例えば、隔壁接合部625が各隔壁部615に対してずれて)、第1ダンパプレート61の各隔壁部615と弾性フィルム63との間の接合不良が生じ易くなる。第1ダンパプレート61と弾性フィルム63との間の接合不良が生じた場合には、第2流路部材5の第1供給収容室512、第1回収収容室522、第2供給収容室532、及び第2回収収容室542の各々に生じる圧力変動を減衰させる効果が低減する虞がある。
【0101】
そこで、第1接合シート62は、各隔壁接合部625を各第1周壁接合部626及び各第2周壁接合部627に接続する各接続部628を有している。これにより、第1接合シート62において各隔壁接合部625の変形を各接続部628で抑制できるため、第1ダンパプレート61の各隔壁部615と弾性フィルム63との間の接合不良を抑制することができる。このため、第2流路部材5の第1供給収容室512、第1回収収容室522、第2供給収容室532、及び第2回収収容室542の各々に生じる圧力変動を、弾性フィルム63によって減衰させる効果を維持することができる。
【0102】
なお、第1周壁接合部626と隔壁接合部625とを接続する接続部628と、第2周壁接合部627と隔壁接合部625とを接続する接続部628とは、長手方向D1において同じ位置になくてもよい。同じ位置に配置することで、隔壁接合部625がずれる可能性をより小さくできる。
【0103】
第2接合シート64についても、第1接合シート62と同様に、ダンパ部材6を積層して製造する際に、第2接合シート隔壁接合部645がずれる可能性を、第2接合シート接続部648によって小さくできる。
【0104】
接続部628及び第2接合シート接続部648は、ともに上述の効果を奏するが、対応するダンパが振動し難くなり、ダンパの性能を少し低下させてしまう。接続部628と第2接合シート接続部648とが、厚み方向D3に見て、互いに重なる位置に配置されることで、ダンパの性能の低下を小さくすることができる。
【0105】
第2流路部材5とダンパ部材6とを接着すると、第1流路プレート隔壁部5a5と隔壁部615とが接着され、第1流路プレート第1周壁接合部5a6と、第1周壁部616とが接着され、第1流路プレート第2周壁接合部5a7と第2周壁部617とが接着される。各接着部の幅を広くすれば、接着強度を高くし、インクの漏れ等を起き難くできるが、そのようにするとダンパの幅が狭くなり、ダンパの性能が低くなる。
【0106】
隔壁部615の長手方向D1の中央領域に幅広部を設けることにより、ダンパの性能の低下を小さくしつつ、接着強度を強くし、インクの漏れ等を起き難くできる。具体的には、製造ばらつきによって、各部材の各部の寸法や位置がばらついた場合や、第2流路部材5とダンパ部材6とを積層する際の位置ずれが生じた場合でも、実際の接着される幅が狭くなり難い。第1流路プレート隔壁部5a5および隔壁部615は、両方とも細長い構造なので、その中央領域において、位置ずれや寸法精度のばらつきが起き易い。そのため、隔壁部615の中央領域を幅広にするのは、他の部分を幅広にするよりも、強度向上、インク漏れの抑制等の改善効果を大きくできる。また、ダンパの幅が狭くなっても、他の部分のダンパの幅は狭くなっていないので、ダンパ性能の低下を小さくできる。ダンパの幅が狭くなる位置を中央領域にすることで、両端の、ダンパの幅が狭くなっていない部分が、長手方向D1方向に同じ長さになっているので、両端のダンパを合わせた性能の合計の低下をより小さくできる。
【0107】
また、第1ダンパプレート61の各隔壁部615は、長手方向D1において、中央領域が端部領域よりも幅広の幅広部を有している。これにより、第1ダンパプレート61において各隔壁部615の変形を抑制できるため、第1ダンパプレート61の各隔壁部615と弾性フィルム63との間の接合不良をより確実に抑制することができる。
【0108】
ダンパ部材6では、第1ダンパプレート61に代えて、
図9に示す第1変形例に係る第1ダンパプレート61Aが採用されてもよいし、
図10に示す第2変形例に係る第1ダンパプレート61Bが採用されてもよい。
【0109】
図9に示す第1ダンパプレート61Aでは、隔壁部615は、幅広形状を有しておらず、一定の幅で長手方向D1に延びている。第1ダンパプレート61Aでは、第1周壁部616は、長手方向D1において、中央領域が第1供給ダンパ開口611の側に突出している形状を有しており、第2周壁部617は、長手方向D1において、中央領域が第2供給ダンパ開口613の側に突出している形状を有している。そして、第1周壁部616および第2周壁部617は、長手方向D1において、中央領域が幅広の形状を有している。
【0110】
第1ダンパプレート61Aでは、第1周壁部616および第2周壁部617の長手方向D1の中央領域が幅広形状になっていることにより、ダンパの性能の低下を小さくしつつ、接着強度を強くし、インクの漏れ等を起き難くできる。第1周壁部616、第2周壁部617、第1流路プレート第1周壁接合部5a6、および第1流路プレート第2周壁接合部5a7は、いずれも細長い構造なので、その中央領域において、位置ずれや寸法精度のばらつきが起き易い。そのため、中央領域を幅広にするのは、他の部分を幅広にするよりも、強度向上、インク漏れの抑制等の改善効果を大きくできる。また、ダンパの幅が狭くなっても、他の部分のダンパの幅は狭くなっていないので、ダンパ性能の低下を小さくできる。ダンパの幅が狭くなる位置を中央領域にすることで、両端の、ダンパの幅が狭くなっていない部分が、長手方向D1方向に同じ長さになっているので、両端のダンパを合わせた性能の合計の低下をより小さくできる。
【0111】
図10に示す第1ダンパプレート61Bでは、
図8に示す第1ダンパプレート61と同様に、隔壁部615は幅広形状となっている幅広部を有している。そして、第1ダンパプレート61Bでは、
図9に示す第1ダンパプレート61Aと同様に、第1周壁部616および第2周壁部617が突出した形状を有している。具体的には、第1ダンパプレート61Bでは、第1周壁部616は、隔壁部615の幅広部と対向するように、第1供給ダンパ開口611の側に突出している形状を有しており、第2周壁部617は、隔壁部615の幅広部と対向するように、第2供給ダンパ開口613の側に突出している形状を有している。このような幅広形状および突出形状を有していることにより、それぞれ前述している効果を奏する。さらに、幅広形状および突出形状が対向して配置されることにより、それらがずれて配置されている場合よりも、ダンパ性能の低下を小さくできる。
【符号の説明】
【0112】
1 プリンタ(液体吐出装置、記録装置)
2 液体吐出ヘッド
3 第1流路部材
4 圧電アクチュエータ基板
5 第2流路部材
512 第1供給収容室
522 第1回収収容室
532 第2供給収容室
542 第2回収収容室
6 ダンパ部材
61 第1ダンパプレート
611 第1供給ダンパ開口
612 第1回収ダンパ開口
613 第2供給ダンパ開口
614 第2回収ダンパ開口
615 隔壁部
616 第1周壁部
617 第2周壁部
62 第1接合シート
621 第1供給シート開口
622 第1回収シート開口
623 第2供給シート開口
624 第2回収シート開口
625 隔壁接合部
626 第1周壁接合部
627 第2周壁接合部
628 接続部
63 弾性フィルム
64 第2接合シート
65 第2ダンパプレート