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特開2025-151175ポリオール組成物、不燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151175
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、不燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20251002BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20251002BHJP
   C08G 18/20 20060101ALI20251002BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20251002BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20251002BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/22
C08G18/20
C08G18/18
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052464
(22)【出願日】2024-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 康揮
(72)【発明者】
【氏名】吉川 悠人翔
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DC25
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF21
4J034DF22
4J034DG02
4J034DG16
4J034DG22
4J034DG23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KC02
4J034KC17
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA01
4J034MA02
4J034MA03
4J034MA04
4J034MA11
4J034MA12
4J034MA16
4J034MA22
4J034MA24
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA06
4J034NA07
4J034NA08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA10
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】粘度が低く、かつポリウレタン発泡体に優れた不燃性を付与できるポリオール組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、触媒、発泡剤、及び難燃剤を含み、前記難燃剤が赤燐系難燃剤及び液状リン系難燃剤を含み、前記ポリオール組成物における、前記赤燐系難燃剤に対する前記液状リン系難燃剤の質量比が、1.6~10であり、前記液状リン系難燃剤の含有量が、ポリオール100質量部に対して50質量部以上である、ポリオール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、
前記ポリオール組成物が、ポリオール、触媒、発泡剤、及び難燃剤を含み、
前記難燃剤が赤燐系難燃剤及び液状リン系難燃剤を含み、
前記ポリオール組成物における、前記赤燐系難燃剤に対する前記液状リン系難燃剤の質量比が、1.6~10であり、
前記液状リン系難燃剤の含有量が、ポリオール100質量部に対して50質量部以上である、ポリオール組成物。
【請求項2】
前記赤燐系難燃剤の含有量が、ポリオール100質量部に対して25質量部以上である、請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記液状リン系難燃剤がリン酸エステルを含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記触媒が、ビスマス及びスズから選択される金属塩を含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
前記触媒がイミダゾール誘導体を含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項6】
前記触媒がカリウム塩を含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項7】
前記触媒が4級アンモニウム塩を含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含む、不燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
イソシアネートインデックスが250以上である、請求項8に記載の不燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
吹き付け用途である、請求項8に記載の不燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項11】
請求項8に記載の不燃性ウレタン樹脂組成物を反応及び発泡させて形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物、不燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、その優れた断熱性を利用して、マンション等の集合住宅、戸建住宅、商業ビル等の建築物の天井、屋根、壁面などの建築部材の断熱や結露防止に実用されている。ポリウレタン発泡体は、各構造物の表面に、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含む難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付け、発泡及び硬化させることにより形成される。
【0003】
ポリウレタン発泡体は、軽量であるものの、有機物であるため燃えやすい。そのため、ポリウレタン発泡体の難燃性を高めることを目的として、その原料に難燃剤が配合されることがある。難燃剤の中でも特に、固体難燃剤である赤燐は難燃性の付与効果が高く、例えば特許文献1に開示されるように、従来から、難燃剤として赤燐が広く使用されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6200435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリウレタン発泡体の原料に赤燐を多く配合すると、ポリウレタン発泡体に優れた難燃性を付与できる一方で、原料の粘度が上昇し、例えば建築現場にて、建築物の壁などに対して原料を吹き付ける際の吹付性が悪化するなどの問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、粘度が低く、かつポリウレタン発泡体に優れた不燃性を付与できるポリオール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリオール組成物において、赤燐系難燃剤と液状リン系難燃剤との配合比を調整したことにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
【0008】
[1]ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、触媒、発泡剤、及び難燃剤を含み、前記難燃剤が赤燐系難燃剤及び液状リン系難燃剤を含み、前記ポリオール組成物における、前記赤燐系難燃剤に対する前記液状リン系難燃剤の質量比が、1.6~10であり、前記液状リン系難燃剤の含有量が、ポリオール100質量部に対して50質量部以上である、ポリオール組成物。
[2]前記赤燐系難燃剤の含有量が、ポリオール100質量部に対して25質量部以上である、[1]に記載のポリオール組成物。
[3]前記液状リン系難燃剤がリン酸エステルを含む、[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[4]前記触媒が、ビスマス及びスズから選択される金属塩を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
[5]前記触媒がイミダゾール誘導体を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
[6]前記触媒がカリウム塩を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
[7]前記触媒が4級アンモニウム塩を含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
[8][1]~[7]のいずれか1項に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含む、不燃性ウレタン樹脂組成物。
[9]イソシアネートインデックスが250以上である、[8]に記載の不燃性ウレタン樹脂組成物。
[10]吹き付け用途である、[8]又は[9]に記載の不燃性ウレタン樹脂組成物。
[11][8]~[10]のいずれか1項に記載の不燃性ウレタン樹脂組成物を反応及び発泡させて形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粘度が低く、かつポリウレタン発泡体に優れた不燃性を付与できるポリオール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物である。また、本発明のポリオール組成物は、ポリオール、触媒、発泡剤、及び難燃剤を含み、該ポリオール組成物における、赤燐系難燃剤に対する液状リン系難燃剤の質量比(液状リン系難燃剤/赤燐系難燃剤)は、1.6~10である。液状リン系難燃剤/赤燐系難燃剤が1.6未満であると、赤燐系難燃剤の割合が多すぎることで、ポリオール組成物の粘度が高くなり、施工性などの取り扱い性が悪化するおそれがある。他方で、液状リン系難燃剤/赤燐系難燃剤が10を超えると、ポリオール組成物を実用的に使用することが困難となる。低粘度化及び不燃性の観点から、液状リン系難燃剤/赤燐系難燃剤は、2~10が好ましく、3~9がより好ましく、4~8がさらに好ましい。
【0011】
また、本発明のポリオール組成物における液状リン系難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して50質量部以上である。液状リン系難燃剤の含有量が50質量部未満であると、ポリオール組成物の粘度を低くすることが困難となる。こうした観点から、液状リン系難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して80質量部以上であることが好ましく、100質量部以上であることがより好ましい。他方で、液状リン系難燃剤の含有量は、ポリウレタン発泡体の寸法安定性の観点から、ポリオール100質量部に対して320質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましく、200質量部以下であることがさらに好ましく、170質量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0012】
<赤燐系難燃剤>
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐と樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などとを混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、不燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0013】
本発明のポリオール組成物における赤燐系難燃剤の含有量は、液状リン系難燃剤との質量比が所定の範囲となる限り、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して25質量部以上であることが好ましく、28質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。赤燐系難燃剤の含有量を上記下限値以上とすることで、ポリウレタン発泡体に優れた不燃性を付与しやすくなる。また、赤燐系難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、38質量部以下であることがさらに好ましい。赤燐系難燃剤の含有量を上記上限値以下とすることで、ポリオール組成物の粘度を一定以下に調整しやすくなる。
【0014】
<液状リン系難燃剤>
液状リン系難燃剤は、室温(25℃)、常圧(1気圧)で液体となるリン系難燃剤である。液状リン系難燃剤としては、リン酸エステルを含むことが好ましい。
【0015】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0016】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0017】
リン酸エステルは、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタン発泡体の不燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
【0018】
<その他の難燃剤>
本発明のポリオール組成物は、上記した赤燐系難燃剤及び液状リン系難燃剤以外の難燃剤(以下「その他の難燃剤」ともいう)を含んでもよい。その他の難燃剤としては、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラー等が挙げられる。その他の難燃剤は、室温(23℃)、常圧(1気圧)で固体となる固体難燃剤が好ましい。
【0019】
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0020】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、ヘキサブロモベンゼンなどのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0021】
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0022】
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましいアンチモン含有難燃剤は三酸化アンチモンである。
【0023】
本発明において使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましい金属水酸化物は水酸化アルミニウムである。
【0024】
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、珪素系フィラー、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0026】
本発明のポリオール組成物がその他の難燃剤を含む場合、その他の難燃剤は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。2種以上を併用して使用する場合、例えば、針状フィラーとして、チタン酸カリウムウィスカー及びホウ酸アルミニウムウィスカーを含有するなど、同じ分類の難燃剤を2種以上使用してもよいし、ホウ素含有難燃剤及び針状フィラーを含有するなど、異なる分類の難燃剤を1種以上ずつ使用してもよい。
上記した中では、その他の難燃剤として、ホウ素含有難燃剤を含むことが好ましい。
【0027】
その他の難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは2~50質量部、より好ましくは5~40質量部、更に好ましくは10~30質量部である。その他の難燃剤の量を多くすると、高い不燃性を付与しやすくなる。一方で、その他の難燃剤の量を少なくすると、ポリオール組成物の粘度を低くしやすくなる。
【0028】
<触媒>
触媒としては、特に限定されないが、例えば、三量化触媒や樹脂化触媒などが挙げられる。触媒としては、発泡性、不燃性向上などの観点から、三量化触媒と樹脂化触媒の両方を使用することが好ましい。
【0029】
(三量化触媒)
三量化触媒は、不燃性ウレタン樹脂組成物において、イソシアヌレート結合を形成する三量化を促進する触媒である。このように三量化が促進されることで、ポリウレタン発泡体の不燃性や燃え拡がりにくさが向上する。三量化触媒としては、アミン系触媒、4級アンモニウム塩及びカリウム塩から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、4級アンモニウム塩及びカリウム塩から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0030】
《4級アンモニウム塩》
4級アンモニウム塩としては、例えば4級アンモニウムカルボン酸塩が挙げられる。4級アンモニウムカルボン酸塩におけるカルボン酸は、炭素数1以上であればよいが、炭素数2以上であることが好ましい。該カルボン酸は、好ましくは脂肪族カルボン酸であり、より好ましくは飽和脂肪族カルボン酸である。該カルボン酸の炭素数は、例えば20以下であるが、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。また、該カルボン酸は、直鎖状であってもよいし、分岐構造を有していてもよいが、分岐構造を有することが好ましい。分岐構造を有すると、立体障害によりハイドロフルオロオレフィンなどの発泡剤との反応性が低くなりやすくなるため、ポリオール組成物の安定性が向上する。
【0031】
4級アンモニウムカルボン酸塩におけるカルボン酸の好適な具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、ギ酸等が挙げられる。これらの中では、酢酸及び2,2-ジメチルプロパン酸から選択される少なくとも1種が好ましく、2,2-ジメチルプロパン酸がより好ましい。
【0032】
4級アンモニウムカルボン酸塩における4級アンモニウムイオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオン又はヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
【0033】
テトラアルキルアンモニウムイオンにおける各アルキル基は、例えば炭素数1~4のアルキル基、好ましくは炭素数1~2のアルキル基、より好ましくはメチル基である。
テトラアルキルアンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、及びトリエチルメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムイオンにおける各アルキル基は、例えば炭素数1~4のアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、又はブチル基である。また、ヒドロキシアルキル基は、アルキル基における水素原子のうちいずれか1つがヒドロキシ基に置換された基であり、例えば炭素数1~4、好ましくは炭素数2~4、より好ましくは炭素数3又は4である。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などが挙げられる。
ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムイオンの具体例としては、例えば、ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウムイオン、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムイオン、及びヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0035】
4級アンモニウムカルボン酸塩におけるアンモニウムイオンは、トリエチルメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウムイオン、及びヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、トリエチルメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、及びヒドロキシブチルトリメチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、テトラメチルアンモニウムイオンがさらに好ましい。
【0036】
また、4級アンモニウムカルボン酸塩の好適な具体例としては、酢酸テトラメチルアンモニウム塩、2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩、2-エチルヘキサン酸トリエチルメチルアンモニウム塩、2-エチルヘキサン酸ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。この中では、ポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合を形成しやすくし、ポリウレタン発泡体に優れた不燃性を付与しやすくする観点から、酢酸テトラメチルアンモニウム塩及び2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩から選択される少なくとも1種が好ましく、2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩がより好ましい。
なお、本発明において、前記4級アンモニウムカルボン酸塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
《カリウム塩》
カリウム塩としては、例えばカルボン酸カリウム塩が挙げられる。カルボン酸カリウム塩におけるカルボン酸は、炭素数1以上であればよいが、炭素数5以上であることが好ましい。該カルボン酸は、好ましくは脂肪族カルボン酸であり、より好ましくは飽和脂肪族カルボン酸である。該カルボン酸の炭素数は、例えば20以下であるが、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。また、該カルボン酸は、直鎖状であってもよいし、分岐構造を有していてもよいが、分岐構造を有することが好ましい。分岐構造を有すると、立体障害によりハイドロフルオロオレフィンなどの発泡剤との反応性が低くなりやすくなるため、ポリオール組成物の安定性が向上する。
【0038】
カルボン酸カリウム塩は、中でも、下記一般式(1)で表されるカルボン酸カリウム塩であることが好ましい。下記一般式(1)で表されるカルボン酸カリウム塩は、適度な立体障害を有しているため発泡剤を分解する反応を抑制でき、また、触媒活性の低下も防ぐことができる。
【0039】
【化1】
(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。また、Kはカリウムイオンを表す。)
【0040】
一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、具体的には炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1~2のアルキル基がさらに好ましい。なお、アルキル基は直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
、Rの炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなるためハイドロフルオロオレフィンを分解する反応を抑制することができる。一方、R、及びRの炭素数が前記上限値以下であると、立体障害が大きくなりすぎないため反応性が遅くなることを防ぐことができる。
また、Rは水素原子又はアルキル基を表し、水素原子が好ましい。また、Rがアルキル基である場合には、アルキル基は炭素数1~6が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1~2のアルキル基がさらに好ましい。
【0041】
カルボン酸カリウム塩におけるカルボン酸の好ましい具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸からなる群から選択される少なくとも1種である。また、上記一般式(1)で示すとおりのカルボン酸が好ましく、中でも、2,2-ジメチルプロパン酸、2-エチルヘキサン酸がより好ましく、2-エチルヘキサン酸がさらに好ましい。
なお、本発明において前記カルボン酸カリウム塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
ポリオール組成物中の三量化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、3~25質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましく、8~15質量部がさらに好ましい。三量化触媒の含有量が前記下限値以上であるとポリイソシアネートの三量化が生じやすくなり、得られるポリウレタン発泡体の不燃性が向上する。一方、三量化触媒の含有量が前記上限値以下であると反応の制御がし易くなる。
なお、本発明のポリオール組成物に含まれる三量化触媒は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用して使用してもよい。
【0043】
また、上記した4級アンモニウム塩及びカリウム塩は、これらのうち一方のみを含有してもよいが、両方を含有することも好ましい。
4級アンモニウム塩の含有量は、ポリオール100質量部に対して、2~15質量部が好ましく、2.7~12質量部がより好ましく、5~10質量部がさらに好ましい。
カリウム塩の含有量は、ポリオール100質量部に対して、1~10質量部が好ましく、2.3~8質量部がより好ましく、3~5質量部がさらに好ましい。
【0044】
(樹脂化触媒)
本発明で使用する触媒としては、樹脂化触媒として金属触媒を含むことが好ましい。この金属触媒は、一般的に樹脂化金属触媒と呼ばれるものである。本発明では、上記樹脂化金属触媒を含むことで、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が促進され、特に初期反応速度を高めることができる。また、樹脂化金属触媒を含むことで、ポリオールとポリイソシアネートとの反応速度を適切に制御しやすくなる。上記樹脂化金属触媒は、発泡性などの観点から、ビスマスを含むビスマス化合物、又は、錫を含むスズ化合物であることが好ましく、ビスマス化合物がより好ましい。ビスマス化合物は、HFOに対する反応性が低く、保存安定性が高くなる。また、ポリウレタン発泡体の不燃性を低下させることなく、初期活性を良好にさせやすい。
【0045】
上記の樹脂化金属触媒は、ビスマス及び錫から選択される金属塩が好ましく、ビスマス塩であることがより好ましい。金属塩は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくは炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である。カルボン酸は、炭素数5以上であることで、発泡剤、特にハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となる。また、カルボン酸の炭素数は、触媒活性などの観点から、18以下が好ましく、12以下がより好ましい。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。カルボン酸は、直鎖であってもよいし、分岐構造を有してもよいが、分岐構造を有することが好ましい。
カルボン酸の具体例としては、オクチル酸、ラウリル酸、バーサチック酸、ペンタン酸及び酢酸等が挙げられ、これらのなかではオクチル酸が好ましい。すなわち、樹脂化金属触媒は、オクチル酸の金属塩が好ましい。これらカルボン酸は、上記の通り直鎖状であってもよいが、分岐構造を有してもよい。なお、分岐構造を有するオクチル酸としては、2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のビスマス塩、カルボン酸の錫塩が好ましく、中でもオクチル酸のビスマス塩が好ましい。また、カルボン酸の金属塩は、アルキル金属のカルボン酸塩であってもよい。例えばカルボン酸錫塩はジアルキル錫カルボン酸塩等であってもよく、好ましくはジオクチル錫カルボン酸塩等である。
カルボン酸の金属塩の具体例としては、ビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル酸錫等が挙げられ、好ましくはビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、より好ましくはビスマストリオクテートである。
【0046】
本発明のポリオール組成物は、樹脂化触媒として、窒素原子を有する複素環式化合物(以下、「窒素含有複素環化合物」ともいう)を含むことも好ましい。樹脂化触媒として、窒素含有複素環化合物を含むことで、ハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となり、それにより、ハイドロフルオロオレフィンの分解が防止され、発泡性が良好なものとなる。また、反応速度を一定以上とし、不燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付ける際の施工性を良好なものとすることができる。窒素含有複素環化合物の中でも、イミダゾール誘導体を含むすることがより好ましい。
上記の通り、イミダゾール誘導体は、ハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、ポリオール組成物の安定性を高めつつポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくする。したがって、ポリオール組成物は、イミダゾール誘導体を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートの反応性が高められ、発泡性がさらに良好となる。
イミダゾール誘導体は、好ましくは1位および2位がそれぞれ独立に炭素数8以下のアルキル基で置換されたイミダゾールであり、アルキル基は好ましくは炭素数6以下、より好ましくは炭素数4以下である。イミダゾール誘導体の好適な具体例は、下記一般式(2)で表される。
【0047】
【化2】
(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。)
【0048】
一般式(2)におけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
及びRのアルキル基又はアルケニル基の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなりハイドロフルオロオレフィン等の発泡剤の影響を受けにくくなるため好ましい。一方、R及びRのアルキル基の炭素数が前記上限値以下であると、極端に立体障害が大きくならないためポリオールとポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることが可能になり、発泡性も良好となる。
これらの観点から、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0049】
一般式(2)で表されるイミダゾール誘導体としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられ、中でも、ハイドロフルオロオレフィン存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0050】
ポリオール組成物中の樹脂化金属触媒の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、1~8質量部がより好ましく、2~5質量部が更に好ましい。樹脂化金属触媒が上記下限値以上であると、ポリオールとポリイソシアネートとの反応速度が高められ、良質なポリウレタン発泡体を形成しやすくなる。また、樹脂化金属触媒が上記上限値以下であると、ポリオールとポリイソシアネートとの反応速度を適切に制御することができる。
ポリオール組成物中の窒素含有複素環化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、1~15質量部が好ましく、3~10質量部がより好ましく、5~8質量部が更に好ましい。窒素含有複素環化合物の含有量が前記下限値以上であるとウレタン結合の形成が生じやすくなり、反応が速やかに進行し、かつ発泡性が良好となる。一方、窒素含有複素環化合物の含有量が前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなるため好ましい。
ポリオール組成物中の樹脂化触媒の合計含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、0.5~25質量部が好ましく、1~18質量部がより好ましく、7~13質量部が更に好ましい。
【0051】
<ポリオール>
ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。ポリウレタン発泡体の不燃性を向上させる観点から、ポリオールは、ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。また不燃性を向上させるという観点から、含ハロゲンポリオールや含リンポリオールなどの使用も好ましい。
このような観点から、ポリオール100質量部のうち、ポリエステルポリオールを20質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることがさらに好ましく、100質量部とすることが特に好ましい。
【0052】
本発明で用いるポリオールの平均水酸基価は、ポリウレタン発泡体の不燃性を向上させる観点から、100~500mgKOH/gが好ましく、150~450mgKOH/gがより好ましく、180~400mgKOH/gがさらに好ましい。
平均水酸基価は、ポリオールが1種の場合には、その1種のポリオールの水酸基価であり、2種類以上のポリオールを用いる場合は、当該2種類以上のポリオールの配合比率に従った水酸基の平均値である。
例えば、ポリオールとして、2種類のポリオール(d1)、ポリオール(d2)を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX、配合比率をm、ポリオール(d2)の水酸基価をX、配合比率をmとすると、該平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合比率は、質量基準である。
平均水酸基価(mgKOH/g)=X×(m/(m+m))+X×(m/(m+m))
なお、水酸基価は、JIS K1557-1:2007に準拠して測定される値である。
【0053】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、芳香環を有するポリエステルポリオールでもよいし、脂肪族ポリエステルポリオールでもよいが、得られるポリウレタン発泡体の不燃性の観点から、芳香環を有するポリエステルポリオールを使用することが好ましい。芳香環を有するポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の不燃性を高める観点から、ポリオールは、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことが好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましい。
グリコールとしては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリエステルポリオールの構成成分として公知の低分子量脂肪族グリコールを使用することが好ましい。
【0054】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、2個以上の活性水素原子を有する開始剤に、アルキレンオキサイドを開環付加重合させて得られたポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。開始剤としては、具体的には例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどの4官能アルコール類、シュクロース類、ソルビトール類などの高官能類)、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミンなどのアルキレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン)、芳香族アミン(例えば、アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、マンニッヒ縮合物など)などが挙げられる。
これらのうち、芳香環を有する開始剤を用いて製造したポリエーテルポリオールが、芳香環を有するポリエーテルポリオールであり、例えば芳香族アミンを開始剤として用いて製造したポリエーテルポリオールは、芳香環を有するポリエーテルポリオールである。芳香環を有するポリエーテルポリオールの中でも、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールなどを好適に使用することができる。
【0055】
トリレンジアミン系ポリエーテルポリオールとは、開始剤としてトリレンジアミンを用いて製造したトリレンジアミン系ポリエーテルポリオールである。
上記マンニッヒ系ポリエーテルポリオールとは、マンニッヒ反応を利用して得られるものであって、分子内に2個以上の水酸基を有するマンニッヒ縮合物、又はそのようなマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールである。より具体的には、フェノール及びそのアルキル置換誘導体の少なくともいずれか、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られたマンニッヒ縮合物、又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールである。
【0056】
<発泡剤>
発泡剤は、不燃性ウレタン樹脂組成物の発泡を促進する。発泡剤としては、例えば、水、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、ハイドロフルオロオレフィン(以下「HFO」と記載することがある。)、ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物、あるいはこれらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
これらのうち、発泡剤としての安定性が高く、かつ触媒活性が低下しにくくなり、さらに、環境負荷も低くなるハイドロフルオロオレフィン(HFO)を含むことが好ましい。
【0057】
好適な発泡剤であるHFOとしては、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケン等を挙げることができる。また、HFOは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。
HFOとしては、例えば、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。
より具体的には、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz)等が挙げられる。これらの中ではHFO-1233zd(E)が好ましい。
【0058】
発泡剤の含有量は特に限定されず、ポリオール100質量部に対して、25~130質量部が好ましく、30~105質量部がより好ましく、40~93質量部が更に好ましい。発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、発泡性が良好となり、ポリウレタン発泡体の密度を低減することができる。一方、発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。また、発泡剤の含有量を上記範囲内とすることで、不燃性ウレタン樹脂組成物のゲルタイムを所定の範囲内に調整しやすくなる。
【0059】
上記、発泡剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。本発明のウレタン樹脂組成物においては、上述のHFOとそれ以外の発泡剤を併用することが好ましく、例えば、HFOと、取り扱い性に優れる水、酸素ガス、二酸化炭素ガスを併用してもよい。特に、水はイソシアネートインデックスを調整する観点、及び取り扱い容易性の観点から好ましい。
HFOの含有量としては、ポリオール100質量部に対し、25~120質量部が好ましく、30~100質量部がより好ましく、40~90質量部がさらに好ましい。
水の含有量としては、ポリオール100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部がさらに好ましい。
【0060】
<整泡剤>
本発明のポリオール組成物は、整泡剤を含んでもよい。整泡剤としては、分子内に極性部分と非極性部分を有し界面活性効果を備える化合物を好適に使用することができる。
整泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。また、シリコーン整泡剤としては、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの重合体であるポリオキシアルキレングリコールとポリジメチルシロキサンとのグラフト共重合体でもよい。また、市販品も使用でき、具体的にはSH-193(東レダウコーニング社製)、S-824-02(日本ユニカー社)、SZ-1704(日本ユニカー社)、F501(信越化学工業社)、SF-2937F(ダウ東レ社製)等の整泡剤を使用することができる。
整泡剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~8質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。
【0061】
<沈降防止剤>
本発明のポリオール組成物は、沈降防止剤を含んでもよい。沈降防止剤を使用することにより、ポリオール組成物に含有するフィラー等の固形成分の沈殿を防止することができる。また、沈降防止剤の使用により、フィラー等の固形成分を均一に分散させやすくなる。沈降防止剤は、一般的に常温、常圧で固体となるものであり、通常、混合液剤において固形分(不溶分)となる。なお、沈降防止剤は、上記した難燃剤以外である。
【0062】
沈降防止剤としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック、粉状シリカ、有機クレー等から選択される一種又は二種以上を使用することが好ましく、これらの中では粉状シリカがより好ましい。
沈降防止剤に使用するカーボンブラックは、ファーネス法、チャンネル法、サーマル法等の方法で製造されたものを使用することができる。カーボンブラックは、市販品を適宜選択して使用すればよい。
また、粉状シリカとしては、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカゲルなどを使用できる。これらの中では、フュームドシリカが好ましい。フュームドシリカとしては、日本アエロジル社のアエロジル(登録商標)などを使用できる。
【0063】
ポリオール組成物が沈降防止剤を含む場合、沈降防止剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、1.5~15質量部であることがより好ましく、2~10質量部であることがさらに好ましい。沈降防止剤の配合量を上記範囲内とすることで、固形分を必要以上に増加させることなく、固形成分の沈降を防止し、さらには固形成分の分散性を良好にできる。
【0064】
<その他成分>
本発明のポリオール組成物は、上記以外にも、目的を損なわない範囲で必要に応じて、難燃剤及び沈降防止剤以外の無機充填材、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤(金属不活性化剤)、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、可塑剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤等から選択される1種以上を含むことができる。
【0065】
[不燃性ウレタン樹脂組成物]
本発明は、不燃性ウレタン樹脂組成物も提供する。本発明の不燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリオール、触媒、発泡剤、及び難燃剤に加えて、ポリイソシアネートを含む。
また、不燃性ウレタン樹脂組成物は、必要に応じて、整泡剤、沈降防止剤、その他成分などを含有してもよい。
なお、不燃性ウレタン樹脂組成物に含有される各成分の詳細は、上記のとおりであり、その説明は省略する。
【0066】
本発明の不燃性ウレタン樹脂組成物は、好ましくは上記ポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含むものであり、これらを混合して得られる。また、本発明のポリウレタン発泡体は、不燃性ウレタン樹脂組成物を、反応及び発泡させて得た反応生成物である。
【0067】
<ポリイソシアネート>
本発明において、ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等が挙げられる。
【0068】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0069】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、又はこれらの混合物がより好ましく、中でもジフェニルメタンジイソシアネートがさらに好ましく、特に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、ポリイソシアネートは、ポリオール組成物と混合する前に、ポリイソシアネートに配合される公知の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0071】
なお、ポリオール組成物と、ポリオール組成物に混合されるポリイソシアネートは、互いに体積が実質的に同じであることが好ましい。具体的には、ポリオール組成物に対する、ポリイソシアネートの体積比は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、0.95~1.05がさらに好ましい。
【0072】
<イソシアネートインデックス>
本発明の不燃性ウレタン樹脂組成物におけるイソシアネートインデックスに特に制限はないが、250以上が好ましい。イソシアネートインデックスが当該下限値以上であると、ポリオール対するポリイソシアネートの量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタン発泡体の不燃性が向上する。また、不燃性を付与することも可能になる。さらに、上記下限値以上とすると、上記した各種触媒を併用することも相俟って、イソシアヌレート結合を十分に有するポリウレタン発泡体、すなわち、不燃性と断熱性とを高い水準で兼ね備えるポリウレタン発泡体を製造しやすい。これらの観点から、イソシアネートインデックスは、300以上がより好ましく、350以上がさらに好ましい。
また、イソシアネートインデックスは、1,200以下が好ましく、1,000以下がより好ましく、800以下がさらに好ましい。イソシアネートインデックスが前記上限値以下であると、製造コストに十分見合った不燃性が得られる。
【0073】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56,100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0074】
<ポリウレタン発泡体の製造方法>
ポリウレタン発泡体の製造方法に特に制限はないが、ポリオール組成物を、発泡機などにおいて、ポリイソシアネートと混合させ、得られた混合液(不燃性ウレタン樹脂組成物)を反応かつ発泡させることで、ポリウレタン発泡体を製造するとよい。発泡機としては、スプレーガンを有するスプレー装置等を用いるとよい。
ポリオール組成物は、発泡機に送液され、別の容器などから送液されたポリイソシアネート発泡体と発泡機内部にて衝突混合させるとよい。そして、その混合液(不燃性ウレタン樹脂組成物)は、スプレーガンなどの吐出口から吐出させ、吐出された不燃性ウレタン樹脂組成物によりポリウレタン発泡体を成形するとよい。
【0075】
本製造方法は、好ましくは吹付用途に適用することができる。したがって、発泡機から吐出された混合液は、施工対象面に一定の吐出圧力で吹き付け、発泡させることにより、施工対象面上にポリウレタン発泡体を成形するとよい。
【0076】
<用途>
本発明の不燃性ウレタン樹脂組成物、及び該組成物から形成されるポリウレタン発泡体の用途は、特に限定されないが、建築物、家具、自動車、電車、船等の構造物の空洞に充填する用途に用いたり、該構造物に対して吹き付ける用途に用いたりすることができる。中でも、構造物に対して吹き付ける用途、即ち、吹き付け用途に用いられることが好ましく、建築物の施工現場における吹き付け用途に用いられることがより好ましい。
吹き付けは、吹き付け装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガン(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。吹き付けは、別容器に入ったポリオール組成物とポリイソシアネートを吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で両者を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。吹き付け装置及びスプレーガンは公知であり、市販品を使用することができる。また原液温度設定・圧力等は一般的なポリウレタン発泡体の吹き付け条件が適応できる。
【実施例0077】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0078】
各実施例及び比較例で使用した成分は、以下の通りである。
【0079】
<ポリイソシアネート>
・4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200)
<ポリオール組成物>
(ポリオール)
・p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
【0080】
(難燃剤)
・リン酸エステル:トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
・トリエチルホスフェート(TEP)(大八化学社製、製品名:TEP)
・赤燐系難燃剤(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
・ホウ酸亜鉛(早川商事社製、製品名:FirebrakeZB)
【0081】
(沈降防止剤)
・フュームドシリカ(日本アエロジル社製、製品名:アエロジルR976S)
【0082】
(触媒)
・三量化触媒1 4級アンモニウム塩、2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩(エアープロダクツ社、製品名:DABCO(登録商標)TMR7)濃度45~55質量%
・三量化触媒2 金属触媒、2-エチルヘキサン酸カリウム(エアープロダクツ社製、製品名:DABCO(登録商標)K-15)濃度70~80質量%
・樹脂化触媒1 金属触媒、ビスマストリオクテート(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-600)濃度55~58質量%
・樹脂化触媒2 アミン触媒、1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-DM70)濃度65~75質量%
【0083】
(発泡剤)
・ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(ハネウェルジャパン社製、製品名:ソルティスLBA)
・水
【0084】
[各物性の測定、評価方法]
<不燃性>
各実施例、比較例において表1に記載の配合に従い、ポリオール組成物とポリイソシアネートとを用いて、ポリウレタン発泡体を作製した。その際の作製条件は、以下のとおりであった。
<作製条件>
・吹付機:グラコ社製吹付装置H-25
・設定(ヒーター設定)
・イソシアネートヒーター:38℃
・プレミクスヒーター(ポリオール組成物加温用):38℃
・ホースヒーター(ポリイソシアネート及びポリオール組成物の混合前加温用):38℃
・基材:石膏ボード
・基材温度(吹付対象面の温度):20℃±1℃
【0085】
以上のように作製したポリウレタン発泡体の側から、縦10cm横10cm厚み3.5cmのサイズで石膏ボードを含むように切り出した。そのため、切り出したサンプルの一部は石膏ボードであり、厚み3.5cmのうち石膏ボードの厚さが1.25cm、ポリウレタン発泡体の厚さが2.25cmであった。
上記のとおり得たコーンカロリーメーター試験用サンプルをISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて20分間加熱したときの総発熱量(MJ/m)を測定すると共に、以下の評価基準に基づいて、不燃性を評価した。
〇:20分間の総発熱量が8MJ/m以下であった。
×:20分間の総発熱量が8MJ/m超であった。
【0086】
<粘度>
各実施例、比較例において表1の配合に従って調製したポリオール組成物300mLを、300mLのポリプロピレン製のカップに入れて、ポリオール組成物の液温を25℃に調整して、B型粘度計でポリオール組成物の粘度を測定した。粘度の測定条件は、スピンドルLV-03、回転速度60rpmであり、測定装置としては、「BROOKFIELD DV2T」を使用した。そのうえで、粘度を以下の評価基準に基づいて評価した。
〇:粘度が1300mPa・s以下
×:粘度が1300mPa・s超
【0087】
【表1】
【0088】
以上の実施例から明らかな通り、本発明の要件を満たすポリオール組成物は、粘度が低く、かつ、該組成物から形成されたポリウレタン発泡体は、不燃性に優れていた。
これに対し、比較例で作製したポリオール組成物は、ポリウレタン発泡体に優れた不燃性を付与できた一方で、赤燐系難燃剤に対する液状リン系難燃剤の配合比が所定よりも低すぎたことで、ポリオールの粘度が高く、取り扱い性が悪化した結果となった。