(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015126
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】健診受診勧奨システム、健診受診勧奨方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20250123BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118298
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】柴山 渉
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】健診受診の勧奨による健診の受診率を向上することが可能な健診受診勧奨システム、健診受診勧奨方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】基準年よりも過去の複数年における対象者ごとの健診受診有無を示す第1データと、前記基準年における前記対象者ごとの前記健診受診有無を示す第2データとの組を1つのデータセットとして、前記基準年が異なる複数の前記データセットにおける前記第1データと前記第2データとの関係に基づき、前記対象者の各々が健診を受診する受診確率を予測する予測部、を備える健診受診勧奨システム。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準年よりも過去の複数年における対象者ごとの健診受診有無を示す第1データと、前記基準年における前記対象者ごとの前記健診受診有無を示す第2データとの組を1つのデータセットとして、前記基準年が異なる複数の前記データセットにおける前記第1データと前記第2データとの関係に基づき、前記対象者の各々が健診を受診する受診確率を予測する予測部、
を備える健診受診勧奨システム。
【請求項2】
前記予測部は、前記第1データが説明変数データであり、前記第2データが正解データである前記データセットを教師データとして、前記第1データと前記第2データとの関係を学習された予測モデルを用いて、前記受診確率を予測する、
請求項1に記載の健診受診勧奨システム。
【請求項3】
前記第1データは、前記対象者ごとのレセプトに関するデータを含む、
請求項1に記載の健診受診勧奨システム。
【請求項4】
前記対象者の特徴に基づき、各対象者を特徴に応じたセグメントに分類するセグメント分類部、
をさらに備え、
前記予測部は、前記セグメントごとに前記受診確率を予測する、
請求項1に記載の健診受診勧奨システム。
【請求項5】
予測された前記受診確率に基づき、健診受診の勧奨対象となる対象者を示すリストを生成する勧奨処理部、
をさらに備える請求項1に記載の健診受診勧奨システム。
【請求項6】
前記対象者のうち、前記受診確率が高い対象者を前記勧奨対象の対象者として抽出する絞込部、
をさらに備え、
前記勧奨処理部は、前記絞込部によって抽出された前記勧奨対象の対象者について前記リストを生成する、
請求項5に記載の健診受診勧奨システム。
【請求項7】
前記勧奨処理部は、各対象者が分類されたセグメントごとに前記リストを生成する、
請求項5に記載の健診受診勧奨システム。
【請求項8】
基準年よりも過去の複数年における対象者ごとの健診受診有無を示す第1データと、前記基準年における前記対象者ごとの前記健診受診有無を示す第2データとの組を1つのデータセットとして、前記基準年が異なる複数の前記データセットにおける前記第1データと前記第2データとの関係に基づき、前記対象者の各々が健診を受診する受診確率を予測する予測過程、
を含むコンピュータにより実行される健診受診勧奨方法。
【請求項9】
コンピュータを、
基準年よりも過去の複数年における対象者ごとの健診受診有無を示す第1データと、前記基準年における前記対象者ごとの前記健診受診有無を示す第2データとの組を1つのデータセットとして、前記基準年が異なる複数の前記データセットにおける前記第1データと前記第2データとの関係に基づき、前記対象者の各々が健診を受診する受診確率を予測する予測手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健診受診勧奨システム、健診受診勧奨方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
国民の健康の保持や疾病の予防を図るために健診の受診が重要とされており、保険者や事業者に対して特定健診や健康診断の実施が法律によって義務付けられている。しかしながら、健診を受診しない者や健診を受診しても健診結果に関心がない者などについては、医療機関への受診が遅れて適切な治療の機会を逸する恐れがある。健診の受診率を向上するとともに医療機関への受診につなげるために、健診受診の勧奨が励行されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、対象者の受診履歴に基づき健診の受診が勧奨される健診の実施機関を特定し、対象者の携帯端末に対して、対象者から所定の範囲内にある実施機関での健診の受診を勧奨するメッセージを送信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、健診を受診している者と受診していない者との区別をすることなく、健診受診の勧奨を行っている。しかしながら、健診を受診していない者の中には、健診受診の勧奨を受けてもなお健診を受診しない者が存在する。このため、健診を受診している者と受診していない者とを区別することなく健診受診の勧奨を行っても、健診の受診率の向上につながらないことが課題であった。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、健診受診の勧奨による健診の受診率を向上することが可能な健診受診勧奨システム、健診受診勧奨方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る健診受診勧奨システムは、基準年よりも過去の複数年における対象者ごとの健診受診有無を示す第1データと、前記基準年における前記対象者ごとの前記健診受診有無を示す第2データとの組を1つのデータセットとして、前記基準年が異なる複数の前記データセットにおける前記第1データと前記第2データとの関係に基づき、前記対象者の各々が健診を受診する受診確率を予測する予測部、を備える健診受診勧奨システムである。
【0008】
本発明の一態様に係る健診受診勧奨方法は、基準年よりも過去の複数年における対象者ごとの健診受診有無を示す第1データと、前記基準年における前記対象者ごとの前記健診受診有無を示す第2データとの組を1つのデータセットとして、前記基準年が異なる複数の前記データセットにおける前記第1データと前記第2データとの関係に基づき、前記対象者の各々が健診を受診する受診確率を予測する予測過程、を含むコンピュータにより実行される健診受診勧奨方法である。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、基準年よりも過去の複数年における対象者ごとの健診受診有無を示す第1データと、前記基準年における前記対象者ごとの前記健診受診有無を示す第2データとの組を1つのデータセットとして、前記基準年が異なる複数の前記データセットにおける前記第1データと前記第2データとの関係に基づき、前記対象者の各々が健診を受診する受診確率を予測する予測手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、健診受診の勧奨による健診の受診率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る健診受診勧奨システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る健診受診勧奨システムによる処理の概要を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る学習サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る教師データ生成の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る教師データ生成の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る教師データ生成の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る教師データ生成の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る健診受診勧奨サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】本実施形態に係る学習サーバにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態に係る健診受診勧奨サーバにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0013】
<1.健診受診勧奨システムの構成>
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る健診受診勧奨システムの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る健診受診勧奨システムの構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す健診受診勧奨システムは、対象者が健診を受診する確率(以下、「受診確率」とも称する)を予測し、当該受診確率に基づき健診受診の勧奨対象となる者(以下、「勧奨者」とも称される)を示すリスト(以下、「勧奨者リスト」とも称される)を生成して出力するシステムである。勧奨者リストが示す鑑賞者には、例えば受診確率が高い対象者が優先的に選定される。このため、勧奨者に対して健診受診の勧奨を実施する者(以下、「勧奨実施者」とも称される)は、勧奨者リストが示す鑑賞者に対して健診受診の勧奨を行うことで、健診の受診率の向上を図ることができる。
対象者は、例えば、健康保険に加入している者(被保険者)である。この場合、勧奨者は、被保険者の中から受診確率に基づき選定された被保険者である。勧奨実施者は、例えば、自治体や健康保険組合などである。
健診は、健康診断(健康診査)のことであり、一般健康診断(定期健康診断)と特定健康診査に分類される。
【0014】
図1に示すように、健診受診勧奨システム1は、ユーザ端末10と、学習サーバ20と、健診受診勧奨サーバ30とを備える。
ネットワークNWには、情報の授受を行うための構成として、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話網(携帯電話網、固定電話網等)、地域IP(Internet Protocol)網、インターネット等が適用される。
【0015】
(1)ユーザ端末10
ユーザ端末10は、ユーザが有する端末である。ユーザは、例えば、自治体や健康保険組合などの担当者(勧奨実施者)である。ユーザ端末10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末、又はPC(Personal Computer)などである。ユーザ端末10は、ネットワークNWを介して、学習サーバ20、及び健診受診勧奨サーバ30と通信可能に接続されている。
【0016】
(2)学習サーバ20
学習サーバ20は、学習処理を実行するサーバである。当該学習処理では、受診確率を予測するための学習を行い、受診確率を予測するモデル(以下、「予測モデル」とも称される)が生成される。学習サーバ20は、1つ又は複数のサーバ(例えば、クラウドサーバ)で構成される。学習サーバ20は、ネットワークNWを介して、ユーザ端末10、及び健診受診勧奨サーバ30と通信可能に接続されている。
【0017】
(3)健診受診勧奨サーバ30
健診受診勧奨サーバ30は、健診受診勧奨のための処理を実行するサーバである。健診受診勧奨サーバ30は、1つ又は複数のサーバ(例えば、クラウドサーバ)で構成される。健診受診勧奨サーバ30は、ネットワークNWを介して、ユーザ端末10、及び学習サーバ20と通信可能に接続されている。
【0018】
ここで、
図2を参照して、健診受診勧奨システム1による処理の概要について説明する。
図2は、本実施形態に係る健診受診勧奨システム1による処理の概要を示す図である。
【0019】
図2に示すように、健診受診勧奨システム1には、入力データとして対象者に関する情報を示す対象者情報が入力される。対象者情報は、例えば、対象者の受診歴、性年代、住居エリアなどを示す情報である。対象者の受診歴は、対象者が過去複数年に実施された健診を受診したか否か(健診受診有無)を示す情報である。対象者の受診歴を示す情報は、以下では「受診歴情報」とも称される。
【0020】
対象者情報が入力されると、健診受診勧奨システム1は、まず、セグメント分類を行う(ステップS1)。具体的に、健診受診勧奨システム1は、入力された対象者情報が示す対象者の特徴に基づき、各対象者を特徴に応じたセグメントに分類する。例えば、健診受診勧奨システム1は、対象者を性別に応じたセグメント、年代に応じたセグメント、住居エリアに応じたセグメントなどに分類する。なお、セグメントには、複数の特徴が組み合わされたセグメント(例えば性別と年代に応じたセグメント)が用意されてもよい。
【0021】
セグメント分類後、健診受診勧奨システム1は、予測モデルを用いて受診確率の予測を行う(ステップS2)。この時、健診受診勧奨システム1は、対象者が分類されたセグメントごとに予測モデルを用いた受診確率の予測を行い、予測結果をセグメントごとにまとめる。
【0022】
受診確率の予測後、健診受診勧奨システム1は、予測結果に基づき勧奨者の絞り込みを行う(ステップS3)。この時、健診受診勧奨システム1は、対象者が分類されたセグメントごとに勧奨者の絞り込みを行う。例えば、健診受診勧奨システム1は、セグメントごとに対象者の中から、予測された受診確率が高い対象者を優先的に勧奨者として抽出する。受診確率が高い対象者は、例えば受診確率が所定の基準値以上の対象者である。
【0023】
勧奨者の絞り込み後、健診受診勧奨システム1は、勧奨者リストを出力する(ステップS4)。この時、健診受診勧奨システム1は、対象者が分類されたセグメントごとに勧奨者リストを生成して出力する。例えば、健診受診勧奨システム1は、
図2に示すようにセグメントごとに抽出された勧奨者とその受診確率を示すリストを勧奨者リストとして生成して出力する。
【0024】
<2.学習サーバの機能構成>
以上、本実施形態に係る健診受診勧奨システム1の構成について説明した。続いて、
図3から
図7を参照して、本実施形態に係る学習サーバ20の機能構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る学習サーバ20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、学習サーバ20は、通信部210と、記憶部220と、制御部230とを備える。
【0025】
(1)通信部210
通信部210は、各種情報を送受信する機能を有する。通信部210は、ネットワークNWを介してユーザ端末10と通信を行い、受診歴情報を受信する。また、通信部210は、ネットワークNWを介して健診受診勧奨サーバ30と通信を行い、予測モデルを送信する。
【0026】
(2)記憶部220
記憶部220は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部220は、学習サーバ20がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
図3に示すように、記憶部220は、受診歴情報記憶部221と、教師データ記憶部222と、予測モデル記憶部223とを備える。
【0027】
(2-1)受診歴情報記憶部221
受診歴情報記憶部221は、受診歴情報を記憶する機能を有する。当該受診歴情報は、通信部210がユーザ端末10から受信した情報である。
【0028】
(2-2)教師データ記憶部222
教師データ記憶部222は、教師データを記憶する機能を有する。当該教師データは、後述するデータ処理部232によって生成されるデータである。なお、教師データはデータ処理部232によって生成されるデータに限定されず、例えばユーザ端末10で生成され、通信部210はユーザ端末10から受信したデータであってもよい。
【0029】
(2-3)予測モデル記憶部223
予測モデル記憶部223は、予測モデルを記憶する機能を有する。当該予測モデルは、後述する学習部233によって生成されるモデルである。
【0030】
(3)制御部230
制御部230は、学習サーバ20の動作全般を制御する機能を有する。制御部230は、例えば、学習サーバ20がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図3に示すように、制御部230は、データ取得部231と、データ処理部232と、学習部233と、出力処理部234とを備える。
【0031】
(3-1)データ取得部231
データ取得部231は、各種データを取得する機能を有する。例えば、データ取得部231は、通信部210がユーザ端末10から受信した受診歴情報を取得し、受診歴情報記憶部221に記憶させる。
【0032】
(3-2)データ処理部232
データ処理部232は、各種データを処理する機能を有する。例えば、データ処理部232は、データ取得部231によって取得された受診歴情報から教師データを生成する処理を行う。生成後、データ処理部232は、生成した教師データを教師データ記憶部222に記憶させる。
なお、データ処理部232は、自ら受診歴情報記憶部221へアクセスして受診歴情報を取得してもよい。
【0033】
まず、データ処理部232は、受診歴情報において基準年を設定する。基準年は、教師データを生成する基準となる年である。
次に、データ処理部232は、設定した基準年よりも過去の複数年における対象者ごとの健診受診有無を示す第1データを説明変数データとして抽出する。また、データ処理部232は、基準年における対象者ごとの健診受診有無を示す第2データを正解データとして抽出する。
次に、データ処理部232は、抽出した第1のデータと第2のデータの組からなる1つのデータセットを1つの教師データとして生成する。複数の教師データを生成する場合、データ処理部232は、例えばまず1年前を基準年として教師データを生成し、2年前、3年前と順に基準年をずらして設定し、設定した基準年ごとに教師データを生成する。このようにして、データ処理部232は、複数の教師データを生成する。
【0034】
ここで、
図4から
図7を参照して、データ処理部232が生成する教師データについて説明する。
図4から
図7は、本実施形態に係る教師データ生成の一例を示す図である。
なお、
図4から
図6に示す例では、説明の便宜上、IDが1~6の対象者の受診歴情報をもとに、基準年より過去3年分の説明変数データを抽出する例が示されている。また、
図7に示す例では、説明の便宜上、IDが7~8の対象者の受診歴情報をもとに、基準年より過去3年分の説明変数データを抽出する例が示されている。また、
図4から
図7に示す例では、受診有りが「〇」で示され、受診無しが「×」で示されている。
【0035】
図4には、基準年を1年前に設定した場合の教師データ40の生成例が示されている。
図4に示すように、教師データ40は、2年前~4年前(過去3年分)の健診受診有無を示す説明変数データ41と、1年前の健診受診有無を示す正解データ42との組み合わせで生成されている。
【0036】
図5には、基準年を2年前に設定した場合の教師データ40の生成例が示されている。
図5に示すように、教師データ40は、3年前~5年前(過去3年分)の健診受診有無を示す説明変数データ41と、2年前の健診受診有無を示す正解データ42との組み合わせで生成されている。
【0037】
図6には、基準年を3年前に設定した場合の教師データ40の生成例が示されている。
図6に示すように、教師データ40は、4年前~6年前(過去3年分)の健診受診有無を示す説明変数データ41と、3年前の健診受診有無を示す正解データ42との組み合わせで生成されている。
【0038】
図7には、基準年を1年前に設定した場合の教師データ40の生成例が示されている。
図7に示すように、教師データ40は、2年前~4年前(過去3年分)の健診受診有無を示す説明変数データ41と、1年前の健診受診有無を示す正解データ42との組み合わせで生成されている。
【0039】
教師データの生成では、
図7に示す例のように、正解データが全て受診無し(あるいは受診有り)として生成される場合があり得る。直近1年の健診受診有無のみを正解データとして用いる場合、
図7に示すような教師データをもとに学習が行われると、予測モデルによる健診の受診確率の予測に重大な影響を及ぼし、その正確性を大幅に低下させてしまう恐れがある。
これに対して、本実施形態に係る健診受診勧奨システム1では、基準年を1年ごとにずらして複数の教師データが生成される。これにより、直近1年だけに発生した「多くの要因が複雑に絡み合って発生した人間の行動」の影響を排除し、
図7に示すような教師データが予測モデルによる健診の受診確率の予測に与える影響を最小にとどめ、予測の正確性を確保することができる。
特に、健診受診有無は、「体調」よりも「多くの要因が複雑に絡み合って」決定されるものであり、「健診受診有無」を「説明変数を有するデータ」とすることで、健診の受診確率の予測の正確性をより向上することができる。
【0040】
(3-3)学習部233
学習部233は、学習によって予測モデル(学習済みモデル)を生成する機能を有する。学習部233は、データ処理部232によって生成された複数の教師データに基づき、説明変数データ(第1データ)と正解データ(第2データ)との関係を学習した予測モデルを生成する。当該関係を学習した予測モデルは、対象者の受診歴情報を入力として、当該対象者の健診の受診確率を出力する。生成後、学習部233は、生成した予測モデルを予測モデル記憶部223に記憶させる。
【0041】
(3-4)出力処理部234
出力処理部234は、各種情報の出力を制御する機能を有する。例えば、出力処理部234は、通信部210を介して、学習部233によって生成された予測モデルを健診受診勧奨サーバ30へ送信する。
【0042】
<3.健診受診勧奨サーバの機能構成>
以上、本実施形態に係る学習サーバ20の機能構成について説明した。続いて、
図8を参照して、本実施形態に係る健診受診勧奨サーバ30の機能構成について説明する。
図8は、本実施形態に係る健診受診勧奨サーバ30の機能構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、健診受診勧奨サーバ30は、通信部310と、記憶部320と、制御部330とを備える。
【0043】
(1)通信部310
通信部310は、各種情報を送受信する機能を有する。通信部310は、ネットワークNWを介してユーザ端末10と通信を行い、対象者情報を受信し、勧奨者リストを送信する。また、通信部310は、ネットワークNWを介して学習サーバ20と通信を行い、予測モデルを受信する。
【0044】
(2)記憶部320
記憶部320は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部320は、健診受診勧奨サーバ30がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリ、EEPROM、RAM、ROM、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
図8に示すように、記憶部320は、予測モデル記憶部321と、対象者情報記憶部322とを備える。
【0045】
(2-1)予測モデル記憶部321
予測モデル記憶部321は、予測モデルを記憶する機能を有する。当該予測モデルは、学習サーバ20によって生成され、通信部310が学習サーバ20から受信したモデルである。
【0046】
(2-2)対象者情報記憶部322
対象者情報記憶部322は、対象者情報を記憶する機能を有する。当該対象者情報は、通信部310がユーザ端末10から受信した情報である。
【0047】
(3)制御部330
制御部330は、健診受診勧奨サーバ30の動作全般を制御する機能を有する。制御部330は、例えば、健診受診勧奨サーバ30がハードウェアとして備えるCPU又はGPUにプログラムを実行させることによって実現される。
図8に示すように、制御部330は、対象者情報取得部331と、セグメント分類部332と、予測部333と、絞込部334と、勧奨処理部335と、出力処理部336とを備える。
【0048】
(3-1)対象者情報取得部331
対象者情報取得部331は、対象者情報を取得する機能を有する。対象者情報取得部331は、通信部310がユーザ端末10から受信した対象者情報を取得し、対象者情報記憶部322に記憶させる。
【0049】
(3-2)セグメント分類部332
セグメント分類部332は、対象者のセグメント分類を行う機能を有する。例えば、セグメント分類部332は、対象者情報取得部331によって取得された対象者情報が示す対象者の特徴に基づき、各対象者を特徴に応じたセグメントに分類する。具体的に、セグメント分類部332は、対象者を性別に応じたセグメント、年代に応じたセグメント、住居エリアに応じたセグメントなどに分類する。また、セグメント分類部332は、性別と年代に応じたセグメント、性別と居住エリアに応じたセグメント、年代と居住エリアに応じたセグメント、性別と年代と居住エリアに応じたセグメントなどのように、対象者を複数の特徴が組み合わされたセグメントに分類してもよい。
【0050】
(3-3)予測部333
予測部333は、対象者の健診の受診確率を予測する機能を有する。予測部333は、基準年が異なる複数のデータセットにおける第1データと第2データとの関係に基づき、対象者の各々が健診を受診する受診確率を予測する。例えば、予測部333は、第1データが説明変数データであり、第2データが正解データであるデータセットを教師データとして、第1データと第2データとの関係を学習された予測モデルを用いて、受診確率を予測する。当該予測モデルは、例えば学習サーバ20における学習によって生成され、健診受診勧奨サーバ30の予測モデル記憶部321に記憶されている。
【0051】
予測部333は、予測モデルを用いて受診確率を予測する際に、対象者情報取得部331によって取得された対象者情報から必要な受診歴情報を取得して、予測モデルへ入力する。この時、予測部333は、セグメント分類部332によって分類されたセグメントごとに対象者の受診歴情報を取得して予測モデルへ入力する。
予測部333は、受診歴情報の入力によって予測モデルから出力される受診確率を予測結果として取得する。この時、予測部333は、予測結果をセグメントごとにまとめて管理する。このようにして、予測部333は、セグメントごとに受診確率を予測する。
【0052】
(3-4)絞込部334
絞込部334は、勧奨者の絞り込みを行う機能を有する。絞込部334は、対象者のうち、受診確率が高い対象者を勧奨対象の対象者として抽出することで、勧奨者の絞り込みを行う。この時、絞込部334は、予測部333によるセグメントごとの受診確率の予測結果に基づき、セグメントごとに勧奨者の絞り込みを行う。
具体的に、絞込部334は、セグメントごとに対象者の中から、予測された受診確率が高い対象者を優先的に勧奨者として抽出する。一例として、絞込部334は、受診確率が50%(所定の基準値)以上の対象者を受診確率が高い対象者として抽出する。一方で、絞込部334は、受診確率が50%未満である対象者を受診確率が高い対象者として抽出しない。即ち、絞込部334は、受診確率が低い対象者を勧奨対象から除外する。
なお、所定の基準値の具体的な数値は、50%に限定されない。
【0053】
(3-5)勧奨処理部335
勧奨処理部335は、勧奨リストを生成する機能を有する。勧奨処理部335は、予測部333によって予測された受診確率に基づき、勧奨者リストを生成する。具体的に、勧奨処理部335は、絞込部334によって抽出された勧奨者について、勧奨者ごとの受診確率を示す勧奨者リストを生成する。この時、勧奨処理部335は、各勧奨者が分類されたセグメントごとに勧奨者リストを生成する。
【0054】
(3-6)出力処理部336
出力処理部336は、各種情報の出力を制御する機能を有する。例えば、出力処理部336は、通信部310を介して、勧奨処理部335によって生成された勧奨者リストをユーザ端末10へ送信する。
これにより、勧奨実施者は、ユーザ端末10で勧奨者リストを表示して、健診の受診確率が高い勧奨者を確認することができる。勧奨実施者は、勧奨者リストで確認した勧奨者に対して優先的に勧奨業務を行うことで、健診の受診率の向上を図ることができる。
【0055】
<4.処理の流れ>
以上、本実施形態に係る健診受診勧奨サーバ30の機能構成について説明した。続いて、
図9及び
図10を参照して、本実施形態に係る処理の流れについて説明する。
【0056】
(1)学習サーバ20における処理の流れ
図9を参照して、学習サーバ20における処理の流れについて説明する。
図9は、本実施形態に係る学習サーバ20における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0057】
図9に示すように、まず、学習サーバ20のデータ取得部231は、受診歴情報を取得する(ステップS101)。
【0058】
次に、学習サーバ20のデータ処理部232は、データ取得部231によって取得された受診歴情報に基づき、教師データを生成する(ステップS102)。具体的に、データ処理部232は、異なる複数の基準年を設定し、設定した基準年ごとに教師データを生成することで、複数の教師データを生成する。
【0059】
次に、学習サーバ20の学習部233は、データ処理部232によって生成された複数の教師データを用いて学習を行う(ステップS103)。当該学習により、学習部233は、予測モデルを生成する。
【0060】
予測モデルの生成後、学習部233は、生成した予測モデルを予測モデル記憶部223に保存(記憶)させる(ステップS104)。
【0061】
予測モデルの保存後、学習サーバ20の出力処理部234は、通信部210を介して、予測モデルを健診受診勧奨サーバ30へ送信(出力)する(ステップS105)。
【0062】
(2)健診受診勧奨サーバ30における処理の流れ
図10を参照して、健診受診勧奨サーバ30における処理の流れについて説明する。
図10は、本実施形態に係る健診受診勧奨サーバ30における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0063】
図10に示すように、まず、健診受診勧奨サーバ30の対象者情報取得部331は、対象者情報を取得する(ステップS201)。当該対象者情報は、例えば、受診確率の予測対象となる対象者を示す情報として、ユーザ端末10から送信されて通信部310が受信する情報である。
【0064】
次に、健診受診勧奨サーバ30のセグメント分類部332は、対象者情報取得部331によって取得された対象者情報に基づき、対象者を特徴に応じたセグメントに分類する(ステップS202)。
【0065】
次に、健診受診勧奨サーバ30の予測部333は、セグメント分類部332によって分類されたセグメントごとに、対象者の受診確率を予測する(ステップS203)。具体的に、予測部333は、対象者情報取得部331によって取得された対象者情報からセグメントごとに対象者の受診歴情報を抽出し、当該受診歴情報を予測モデル記憶部321に記憶されている予測モデルへ入力し、出力される受診確率を予測結果として取得する。
【0066】
予測後、健診受診勧奨サーバ30の絞込部334は、セグメント分類部332によって分類されたセグメントごとに、勧奨者の絞り込みを行う(ステップS204)。具体的に、絞込部334は、セグメントごとに対象者の中から、予測された受診確率が高い対象者を優先的に勧奨者として抽出することで、勧奨者の絞り込みを行う。
【0067】
絞り込み後、健診受診勧奨サーバ30の勧奨処理部335は、セグメント分類部332によって分類されたセグメントごとに、勧奨者リストを生成する(ステップS205)。具体的に、勧奨処理部335は、セグメントごとに絞込部334によって抽出された勧奨者について、勧奨者ごとの受診確率を示す勧奨者リストを生成する。
【0068】
生成後、健診受診勧奨サーバ30の出力処理部336は、セグメント分類部332によって分類されたセグメントごとに、勧奨者リストを出力する(ステップS206)。具体的に、出力処理部336は、通信部310を介して、勧奨処理部335によって生成された勧奨者リストをユーザ端末10へ送信する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る健診受診勧奨システム1は、基準年よりも過去の複数年における対象者ごとの健診受診有無を示す第1データと、基準年における対象者ごとの健診受診有無を示す第2データとの組を1つのデータセットとして、基準年が異なる複数のデータセットにおける第1データと第2データとの関係に基づき、対象者の各々が健診を受診する受診確率を予測する予測部333、を備える。
【0070】
かかる構成により、勧奨実施者は、予測された受診確率が低い対象者を、健診受診の勧奨を受けてもなお健診を受診しない者として、勧奨対象から除外することができる。また、勧奨実施者は、予測された受診確率が高い対象者のみを勧奨対象として健診受診の勧奨を行うことで、健診の受診率の向上を図ることができる。
よって、本実施形態に係る健診受診勧奨システム1は、健診受診の勧奨による健診の受診率を向上することを可能とする。
また、健診受診の勧奨を書面の郵送によって行っている場合は、健診受診の勧奨を受けてもなお健診を受診しない者に対して勧奨の書面を郵送しないことにより、書面の郵送にかかるコストを削減することができる。
【0071】
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明した。続いて、上述した実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0072】
上述した実施形態では、健診受診勧奨システム1がユーザ端末10と、学習サーバ20と、健診受診勧奨サーバ30とを備える例について説明したが、かかる例に限定されない。健診受診勧奨システム1は、1つの装置によって実現されてもよいし、複数の装置によって実現されてもよいし、種類の異なる複数の装置の組み合わせによって実現されてもよい。
例えば、健診受診勧奨システム1は、学習サーバ20及び健診受診勧奨サーバ30の機能を有するユーザ端末10のみによって実現されてもよい。また、健診受診勧奨システム1は、ユーザ端末10と、学習サーバ20及び健診受診勧奨サーバ30の機能を有する1つのサーバとで実現されてもよい。また、健診受診勧奨システム1は、学習サーバ20又は健診受診勧奨サーバ30のいずれか一方の機能を有するユーザ端末10と、学習サーバ20又は健診受診勧奨サーバ30の機能のうちユーザ端末10が有していない機能を有する1つ又は複数のサーバとで実現されてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、説明変数データ(第1データ)が健診受診有無のみを示すデータである例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、説明変数データには、健診受診有無に加えて、対象者ごとのレセプトに関するデータが含まれてもよい。レセプトに関するデータは、例えば、対象者の年間のレセプト数や通院回数などを示す情報である。例えば、年間のレセプト数や通院回数が多い対象者ほど自身の健康状態に関心が高い者であり、年間のレセプト数や通院回数が少ない対象者ほど自身の健康状態に関心が低い者であるといえる。このため、健診受診勧奨システム1は、年間のレセプト数や通院回数が多いことは受診確率を高く算出する1つの要因として学習し、年間のレセプト数や通院回数が少ないことは受診確率を低く算出する1つの要因として学習する。
これにより、健診受診勧奨システム1は、健診の受診確率の予測の正確性をより向上することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態の変形例について説明した。なお、上述した実施形態における健診受診勧奨システム1、学習サーバ20、及び健診受診勧奨サーバ30の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。ここでいうコンピュータには、量子コンピュータも含まれる。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0075】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…健診受診勧奨システム、10…ユーザ端末、20…学習サーバ、30…健診受診勧奨サーバ、210…通信部、220…記憶部、221…受診歴情報記憶部、222…教師データ記憶部、223…予測モデル記憶部、230…制御部、231…データ取得部、232…データ処理部、233…学習部、234…出力処理部、310…通信部、320…記憶部、321…予測モデル記憶部、322…対象者情報記憶部、330…制御部、331…対象者情報取得部、332…セグメント分類部、333…予測部、334…絞込部、335…勧奨処理部、336…出力処理部、NW…ネットワーク