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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015128
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】フェルール継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/02 20060101AFI20250123BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20250123BHJP
   F16L 23/032 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F16L23/02 D
F16J15/10 L
F16L23/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118303
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】520034439
【氏名又は名称】MTエンデバー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柄崎 英夫
【テーマコード(参考)】
3H016
3J040
【Fターム(参考)】
3H016AA05
3H016AB08
3H016AC04
3H016AD04
3H016AD08
3H016AD13
3J040AA15
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA01
3J040EA22
3J040EA25
3J040FA05
3J040HA03
3J040HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安定したシール効果を維持できるフェルール継手を提供する。
【解決手段】一方側シール部122を有する一方側継手部112と、他方側シール部152を有する他方側継手部142と、前記一方側および前記他方側シール部との間に設けられたガスケット160と、前記一方側および他方側シール部に互いに接近する方向の力を加えるクランプと、を有するフェルール継手において、前記一方側シール部122と前記他方側シール部152が有する一方側押圧面124と他方側押圧面154は、中心側から外側に向かうに従って互いに遠ざかる形状を成し、これにより、前記一方側シール部122と前記他方側押圧面154がガスケット160に対してその径を大きくする力を加え、ガスケット160の反力との釣り合いにより、シール作用を成すようにしたフェルール継手100。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側シール部を有する一方側継手部と、他方側シール部を有する他方側継手部と、前記一方側シール部と前記他方側シール部との間に位置する環状のガスケットと、前記一方側シール部と前記他方側シール部とに対して互いに接近する方向の力を加えるクランプと、を有し、前記クランプからの力に基づき、前記一方側シール部と前記他方側シール部)により、前記ガスケットを押圧する、フェルール継手において、
前記一方側継手部の前記一方側シール部は前記ガスケットを押圧する一方側押圧面を有し、また前記他方側継手部の前記他方側シール部は前記ガスケットを押圧する他方側押圧面を有し、
前記一方側シール部の前記一方側押圧面と前記他方側シール部の前記他方側押圧面は、前記一方側継手部や前記他方側継手部の中心側から外側に向かうに従って、互いに遠ざかるように、それぞれ前記一方側継手部や前記他方側継手部を流れる流体の流れの方向に直角な面に対して傾斜しており、
ガスケットが有する一方側シール面と他方側シール面は、前記一方側継手部や前記他方側継手部の中心側から外側に向かうに従って、互いに遠ざかるように、それぞれ前記一方側継手部や前記他方側継手部を流れる前記流体の前記流れの方向に直角な面に対して傾斜しており、
前記前記クランプが前記一方側シール部や他方側シール部に加える力により、前記ガスケットの前記一方側シール面や前記他方側シール面は、前記一方側シール部の前記一方側押圧面や前記他方側シール部の他方側押圧面により押圧され、前記ガスケットに対して、その径を大きくする方向である外周側に広げる方向の力が作用する、
ことを特徴とするフェルール継手。
【請求項2】
請求項1に記載のフェルール継手において、
前記ガスケットは管状の形状を成し、
前記ガスケットは、前記一方側シール部の側に前記一方側押圧面から押圧を受ける前記一方側シール面を有し、
前記ガスケットは、前記他方側シール部の側に前記他方側押圧面から押圧を受ける前記他方側シール面を有し、
前記一方側シール面と前記他方側シール面との間の長さは、前記ガスケットの中心側から外周側に向かうに従って長くなり、
前記ガスケットの前記一方側シール面に加わる前記一方側シール部の前記一方側押圧面からの押圧と、前記ガスケットの前記他方側シール部に加わる前記他方側押圧面からの押圧とにより、前記管状の形状を成す前記ガスケットに、前記管状の径が広がる方向の力が作用して、前記管状の形状を成す前記ガスケットが径方向において変形し、前記ガスケットの前記径方向における変形と、前記一方側押圧面からの押圧や前記他方側押圧面からの押圧により、前記一方側シール部と前記他方側継手部との間のシールが維持される、
ことを特徴とするフェルール継手。
【請求項3】
請求項2に記載のフェルール継手において、前記フェルール継手の内部を移動する前記流体の圧力は1Mパスカル以上である、ことを特徴とするフェルール継手。
【請求項4】
請求項3に記載のフェルール継手において、前記フェルール継手の内部を移動する前記流体の温度は、摂氏150度以上である、ことを特徴とするフェルール継手。
【請求項5】
請求項1から請求項4の内の一に記載のフェルール継手において、前記一方側継手部や前記他方側継手部を金属材料で構成し、前記ガスケットをエンジニアリングプラスチックで構成した、ことを特徴とするフェルール継手。
【請求項6】
請求項5に記載のフェルール継手において、
前記一方側シール部は、前記ガスケットの外周面の一部を覆う一方側外周部を有し、
前記他方側シール部は、前記ガスケットの前記外周面の一部を覆う他方側外周部を有し、
前記他方側シール部や他方側外周部と前記ガスケットの前記外周面との間に、ガスケットを保持する保持具を設けた、ことを特徴とするフェルール継手。
【請求項7】
請求項4に記載のフェルール継手において、
前記流体の移動方向に対して直角な面の方向を表す直角軸を設定し、さらに前記一方側継手部が有する前記一方側シール部の前記一方側押圧面や前記他方側継手部が有する前記他方側シール部の前記他方側押圧面と、前記直角軸とのなす角度θが10度から40度の範囲である、ことを特徴とするフェルール継手。
【請求項8】
請求項7に記載のフェルール継手において、
前記ガスケットの前記一方側シール面や前記他方側シール面と前記直角軸とのなす角度θ202が、前記一方側継手部が有する前記一方側シール部の前記一方側押圧面や前記他方側継手部が有する前記他方側シール部の前記他方側押圧面と前記直角軸とのなす前記角度θより小さい、ことを特徴とするフェルール継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付けや分解が容易なフェルール継手に関する。フェルール継手はヘルール継手とも言われている。フェルール継手やヘルール継手を総称して、本明細書ではフェルール継手と記載する。
【背景技術】
【0002】
フェルール継手は、洗浄性に優れている、あるいは分解や組付けが比較的容易である、などの特徴を備えている。単に一例であるが、食品の分野や医薬品の分野、更には半導体などの精密技術の分野、等で、流体を流すための配管を接続する継手として、たいへん有効である。
【0003】
配管を接続するための一般的なフェルール継手の構成は、例えば、第1フェルール部を有する第1継手部と、第2フェルール部を有する第2継手部と、前記第1フェルール部と前記第2フェルール部との間に設けられるガスケットと、前記第1フェルール部と前記第2フェルール部とが前記ガスケットを押圧する方向に力を加えるクランプ部材と、を備えていている。前記配管の軸に沿って一方側に前記第1継手部が設けられ、他方側に前記第2継手部が設けられ、前記ガスケットを挟んで、前記一方側に前記第1フェルール部が位置し、前記他方側に前記第2フェルール部が位置し、前記クランプ部材により前記第1フェルール部と前記第2フェルール部とを締め付けることにより、前記第1フェルール部と前記第2フェルール部とが前記ガスケットを挟んでシールされる。これにより前記配管内を流れる流体の漏れを防止できる。
【0004】
一般的には、前記第1フェルール部と第2フェルール部の前記ガスケット側の面は、それぞれ前記配管の軸に対して直角を成す平面を形成している。前記クランプ部材により、前記第1フェルール部と前記第2フェルール部とで、前記ガスケットを圧縮して弾性変形させることによる前記ガスケットの反力により、前記配管内を流れる流体の漏れが防止される。しかし、実際には、前記ガスケットを均一に圧縮することが困難であり、前記ガスケットの弾性変形にはむらが生じる。この弾性変形のむらは、時間経過とともに大きくなる。その結果、前記配管内を流れる流体との関係において、いろいろな悪影響が現れる。例えばその結果としてシール性能にむらが生じ、前記配管内の流体がシール部の内部に入り込むなどの悪影響が見られる。これらの悪影響を防ぐために、短期間に前記ガスケットを新しいものと交換するなどの対応が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3152172号公報
【特許文献2】特許第6718346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のフランジ式管継手1では、配管であるパイプ3の軸方向において、一方側と他方側にそれぞれフランジ2が、間に弾性ガスケット8を挟み込むように設けられている。一方側と他方側のフランジ2は互いに、ボルト20とナット22で締め付けられる構造である。ここで弾性ガスケット8を挟み込む一方側と他方側のフランジ2の面は何れも配管であるパイプ3の軸に対して直角の位置関係となっている。さらに一方側と他方側のフランジ2を複数のボルト20とナット22で締め付けることにより、シール性が保たれる。なおこの特許文献1では、弾性ガスケット8の内側の面にV字型リップ部14が形成されており、流体圧力がV字型リップ部14に作用することにより、弾性ガスケット8が一方側と他方側のフランジ2を押圧する構成になっている。
【0007】
一方側と他方側のフランジ2を複数のボルト20とナット22で締め付ける構造は、分解や組み立てが容易であり、メンテナンスの観点で優れている。しかしここで上述した課題が生じる。即ち弾性ガスケット8に応力的なむらが生じ時間経過と共にシール性にむらが生じることである。例えば弾性ガスケット8において弾性むらが生じ、部分的にシール性がそこなわれる問題が生じる。特許文献1の構成は、パイプ3を流れる流体圧により弾性ガスケット8のV字型リップ部14によりシール性を補強しようとする試みに基づくと思われる。しかしこの対策では不十分であり、弾性ガスケット8の使用期間を短くて新しい弾性ガスケット8と交換するなどの対応が生じる。シール性の改善に関する課題を根本的に改善することが求められる。
【0008】
特許文献2に記載のヘルール継手11は、ヘルールガスケット12を挟むように配置された一方と他方のヘルール13を有している。ヘルールガスケット12は流体の移動方向に対して直角方向に伸びる平坦面23を有している。一方と他方のヘルール13はそれぞれ対向面34を有し、一方と他方のヘルール13はそれぞれの対向面34でヘルールガスケット12の平坦面23を挟み込み、クランプ14の力に基づいてヘルールガスケット12の平坦面23を押圧する構成を有している。
【0009】
特許文献2に付いても上述の特許文献1と同じことが言える。流体の流れの軸方向に対して直角な面を有するヘルール13で、ヘルールガスケット12の平坦面23を押圧した場合に、均一に押圧が作用し、それによりヘルールガスケット12の平坦面23が均一に変形し、流体に対して均一なシール作用をなすことがたいへん難しい。一般的には、不均一となる。当初は、ヘルールガスケット12は優れた弾力性を備えているが、時間経過と共に、ヘルールガスケット12は作用する圧力のむらの影響を受け、シール性に偏りが生じる。このため、部分的に流体がヘルールガスケット12とヘルール13との間に浸み込む等の現象が生じ、問題が生じる。結果として、短期間にヘルールガスケット12を交換するなどの対応が必要となる。
【0010】
本発明の目的は、安定したシール効果を維持できるフェルール継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔第1の発明〕
上記課題を解決するための第1の発明は、一方側シール部を有する一方側継手部と、他方側シール部を有する他方側継手部と、前記一方側シール部と前記他方側シール部との間に位置する環状のガスケットと、前記一方側シール部と前記他方側シール部とに対して互いに接近する方向の力を加えるクランプと、を有し、前記クランプからの力に基づき、前記一方側シール部と前記他方側シール部により、前記ガスケットを押圧する、フェルール継手において、
前記一方側継手部の前記一方側シール部は前記ガスケットを押圧する一方側押圧面を有し、また前記他方側継手部の前記他方側シール部は前記ガスケットを押圧する他方側押圧面を有し、
前記一方側シール部の前記一方側押圧面と前記他方側シール部の前記他方側押圧面は、前記一方側継手部や前記他方側継手部の中心側から外側に向かうに従って、互いに遠ざかるように、それぞれ前記一方側継手部や前記他方側継手部を流れる流体の流れの方向に直角な面に対して傾斜しており、
ガスケットが有する一方側シール面と他方側シール面は、前記一方側継手部や前記他方側継手部の中心側から外側に向かうに従って、互いに遠ざかるように、それぞれ前記一方側継手部や前記他方側継手部を流れる前記流体の前記流れの方向に直角な面に対して傾斜しており、
前記クランプが前記一方側シール部や前記他方側シール部に加える力により、前記ガスケットの前記一方側シール面や前記他方側シール面は、前記一方側シール部の前記一方側押圧面や前記他方側シール部の他方側押圧面により押圧され、前記ガスケットに対して、その径を大きくする方向である外周側に広げる方向の力が作用する、
ことを特徴とするフェルール継手、である。
【0012】
〔第2の発明〕
第1の発明のフェルール継手において、
前記ガスケットは管状の形状を成し、
前記ガスケットは、前記一方側シール部の側に前記一方側押圧面から押圧を受ける前記一方側シール面を有し、
前記ガスケットは、前記他方側シール部の側に前記他方側押圧面から押圧を受ける前記他方側シール面を有し、
前記一方側シール面と前記他方側シール面との間の長さは、前記ガスケットの中心側から外周側に向かうに従って長くなり、
前記ガスケットの前記一方側シール面に加わる前記一方側シール部の前記一方側押圧面からの押圧と、前記ガスケットの前記他方側シール部に加わる前記他方側押圧面からの押圧とにより、前記管状の形状を成す前記ガスケットに、前記管状の径が広がる方向の力が作用して、前記管状の形状を成す前記ガスケットが径方向において変形し、前記ガスケットの前記径方向における変形と、前記一方側押圧面からの押圧や前記他方側押圧面からの押圧により、前記一方側シール部と前記他方側継手部との間のシールが維持される、
ことを特徴とするフェルール継手、である。
【0013】
〔第1および第2の発明の作用効果の説明〕
発明の作用や効果を説明する欄では、理解し易いように発明の構成に対応する実施例の構成に係る参照符号を付して説明する。これは発明の構成を実施例の構成に限定する事ではなく、あくまでも、説明を理解し易くするためだけである。なお、以下で他の発明の作用効果の説明においても同様に、発明の構成に対応する実施例の構成に係る参照符号を付して説明する。これは発明の構成を実施例の構成に限定する事ではなく、あくまでも、説明を理解し易くするためだけである。
【0014】
従来技術に基づく継手は、前記継手内を流れる流体の移動方向、言い換えると流体の移動軸に対して、ガスケットは直角方向に広がるシール面を有している。ガスケットに押圧を加える一方側継手部の一方側押圧面や他方側継手部の他方側押圧面もまた同様に、流体の前記移動軸に対して直角であった。継手の内部を移動する前記流体の圧力が低くい場合には、柔らかいゴムなどの、加わる圧力に対して変形量が非常に大きいガスケットを使用することができる。このため特性むらがあっても、あるいは作用する圧力にムラが有っても、大きな変形量により上述の斑が吸収され、良好なシール効果を維持することが容易であった。
【0015】
しかし流体の圧力が高くなると、変形量の大きいガスケットを使用することができない。このような継手でシール効果を得るためには、一方側継手部112の一方側押圧面124や他方側継手部142の他方側押圧面154に大きな圧力を加えても、ガスケットがそれに耐えられることが必要となる。この場合には変形量が少ないガスケットを使用することとなる。変形量が少ないガスケットを従来の構成の継手で使用する場合は、上述したように、流体の漏洩防止作用を維持することが難しくなる。このため従来の継手では比較的短期間の使用で、ガスケットを交換せざるを得なくなる。
【0016】
本発明では、流体20の流れ方向である流体移動軸に対して直角な面ではなく、傾斜した面で、ガスケット160と一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152他方側押圧面154とが押圧し合う構成としている。この結果、一方側シール面164や他方側シール面166を有するガスケット160が、ガスケット160全体として、外周方向に広げられる方向の力を受ける。この外周方向に広げられる方向の力を受けることにより、ガスケット160自身は全体として径方向に押して縮まる方向の反発力を発生する。
【0017】
従来の構成では、単にガスケットのシール面とこれに対する押圧面とが平面的に押し合うことにより、シール作用が生み出されている。このような従来の構成では、シール作用が個々の部分的な状態に依存している。このため、ガスケットのシール面を押圧する圧力むらや、ガスケットのシール面やそれに押圧を加える押圧面の部分的な特性バラツキなどにより、個々の部分毎の状態むらにより、シール作用のむらが生じ、使用期間と共に個々のむらが全体に対して大きな影響を及ぼしていた。上述したようにガスケットとして圧力に対する変形量の小さい材料を使用せざるを得ない場合には、これは大きな障害となっていた。
【0018】
本発明では、ガスケット160の個々の部分毎のシール作用の寄せ集めに基づくのではなく、全体としてシール効果が定まるような構造とした。即ちガスケット160の全体に対して、常にガスケット160が環状形状の径方向における中心から外周側に向かう力(図4に記載の矢印24の方向の力)が生じるようにし、前記径方向における外周方向に働く力に対して、この外周方向の力に対向するガスケット160の反力を発生させる構成とした。一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152の他方側押圧面154と、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166との間のシール作用を、常にガスケット160の環状形状の径方向における中心から外周側に向かう力と、これに対向するガスケット160の反力とがぶつかり合う構造により、生じさせるようにした。
【0019】
シール作用を従来技術では、個々の部分における個々のシール作用の集まりの結果として捉えているが、本発明では、ガスケット160が有する一方側シール面164や他方側シール面166全体が、これらと密着してこれらに押圧を加える一方側押圧面124や他方側押圧面154の押圧により、ガスケット160全体への径方向における外周方向への径の拡大方向の力と、ガスケット160全体の反力とのバランス状態に基づいて、シール作用を生じさせるようにした。上記2つの力のバランスで、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166と、一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152他方側押圧面154との位置関係が定まるし、この位置関係は変化する。本発明のこの構成により、個々の部分的なシールむらを解消することができる。その結果としてガスケット160の使用の寿命を長くすることができる。
【0020】
さらに一方側シール部122や他方側シール部152における一方側継手部112や他方側継手部142と一体化している、最も流路の中心側の位置は、一方側継手部112や他方側継手部142と一体化している状態であり、従来の構成では、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166に押圧を掛けられない。しかし本願発明では、ガスケット160自身が上述したように、常に径を小さくする方向に反力を発生しているので、良好なシール効果を維持できる。
【0021】
〔第3の発明〕
第2の発明のフェルール継手において、前記フェルール継手の内部を移動する前記流体の圧力は1Mパスカル以上である、ことを特徴とするフェルール継手、である。
【0022】
〔第4の発明〕
第3の発明のフェルール継手において、前記フェルール継手の内部を移動する前記流体の温度は、摂氏150度以上である、ことを特徴とするフェルール継手、である。
【0023】
〔第5の発明〕
第5の発明のフェルール継手は、第1の発明から第4の発明の内の一の発明のフェルール継手において、前記一方側継手部や前記他方側継手部を金属材料で構成し、前記ガスケットをエンジニアリングプラスチックで構成した、ことを特徴とするフェルール継手、である。
【0024】
〔第6の発明〕
第6の発明のフェルール継手は、第5の発明のフェルール継手において、
前記一方側シール部は、前記ガスケットの外周面の一部を覆う一方側外周部を有し、
前記他方側シール部は、前記ガスケットの前記外周面の一部を覆う他方側外周部を有し、
前記他方側シール部や他方側外周部と前記ガスケットの前記外周面との間に、ガスケットを保持する保持具を設けた、ことを特徴とするフェルール継手、である。
【0025】
〔第6の発明の作用効果〕
フェルール継手100を組み立てる場合に、ガスケット160が一方側継手部112あるいは他方側継手部142に保持されていると、非常に組み立て易い。第6の発明では、保持具210や保持具221、保持具222で、ガスケット160を一方側シール部122や他方側シール部152に保持した状態で、フェルール継手100を組み立てることができる。
【0026】
〔第7の発明〕
第7の発明のフェルール継手は、第4の発明のフェルール継手において、
前記流体の移動方向に対して直角な面の方向を表す直角軸を設定し、さらに前記一方側継手部が有する前記一方側シール部の前記一方側押圧面や前記他方側継手部が有する前記他方側シール部の前記他方側押圧面1と、前記直角軸とのなす角度θが10度から40度の範囲である、ことを特徴とするフェルール継手、である。
【0027】
〔第8の発明〕
第8の発明のフェルール継手は、第7の発明のフェルール継手において、
前記ガスケットの前記一方側シール面や前記他方側シール面と前記直角軸とのなす角度θ202が、前記一方側継手部が有する前記一方側シール部の前記一方側押圧面や前記他方側継手部が有する前記他方側シール部の前記他方側押圧面と前記直角軸とのなす前記角度θより小さい、ことを特徴とするフェルール継手、である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、安定したシール効果を維持できるフェルール継手を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明が適用されたフェルール継手100の使用状態を示す説明図である。
図2図2は、フェルール継手100の断面図である。
図3図3は、第1クランプ182および第2クランプ192の構成を説明するための説明図である。
図4図4は、実施例に記載の発明の作用効果を説明するための説明図である。
図5図5は、一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152の他方側押圧面154の傾斜角とガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166の傾斜角との具体的な関係を説明する説明図である。
図6図6は、他の実施例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.はじめに
本発明が適用された実施例を、添付図面を参照して以下説明する。添付図面において略同じ構成には同じ符号を付し、同じ符号が付された構成は略同じ動作および作用を為し、略同じ効果を奏する。同じ符号の構成に関する繰り返しの説明は、煩雑さを避けるために省略する。
【0031】
2.本発明が適用されたフェルール継手100の基本構成に関する説明
(1)フェルール継手100の全体構造
図1はフェルール継手100の使用状態を説明する図である。高い圧力が加えられている流体20が、矢印22で示すように、他方側配管34の方から一方側配管32の方に移動している。なお、矢印22で示す流体20の移動方向は一例であり、逆方向であっても、フェルール継手100に関する各構成の作用効果は全く同じである。流体20を流すための他方側配管34と一方側配管32は、フェルール継手100によりお互いに接続されている。フェルール継手100による接続において、他方側配管34と一方側配管32のつなぎ目で、流体20が漏れてはいけないことは当然であるが、以下で記載するシールのためのガスケット160のシール面において、あるいはガスケット160の内側面等の周囲において、流体20が入り込む隙間、あるいは流れを妨げる隙間、等が形成されることも避けたい。例えば流体20がどこかの隙間に入り込み長時間停滞すると、腐敗を生じたり、化学変化が生じたりする恐れがあり、好ましくない。
【0032】
一方側継手部112には漏れを防止するシールのための一方側シール部122が設けられ、また他方側継手部142には他方側シール部152が設けられている。図2は、図1を流体20の移動方向に沿って断面した断面図である。図2に記載するように、一方側シール部122と他方側シール部152との間には、シールのためのガスケット160が設けられている。一方側シール部122と他方側シール部152とでガスケット160を挟み込み、ガスケット160に所定の圧力を加えるために、一方側クランプ182と他方側クランプ192とが設けられている。なお、一方側配管32や他方側配管34が一方側継手部112や他方側継手部142の内側にそれぞれ存在しているが、記載を省略する。
【0033】
(2)一方側クランプ182や他方側クランプ192の説明
図1図2図3に記載のごとく、一方側継手部112の一方側シール部122と他方側継手部142の他方側シール部152に、この実施例では上下方向に、一方側クランプ182と他方側クランプ192の2つのクランプが設けられている。第1クランプ182や第2クランプ192は、それぞれ一方側クランプ面183や他方側クランプ面184、一方側クランプ面193や他方側クランプ面194を有している。一方側クランプ面183や他方側クランプ面184、および一方側クランプ面193や他方側クランプ面194は、流体20が位置している側が広く、逆に外周側である環状の窪み187や窪み197の底部の側が狭くなっている。従って第1クランプ182や第2クランプ192で作られる環状の窪み187や窪み197の内部に、一方側シール部122や他方側シール部152を挟み込み、ボルト197やナット187で締め付けることにより、第1クランプ182や第2クランプ192の径を小さくする方向である矢印12や矢印14の方向に、締め付けることができる。
【0034】
クランプは複数に分割されている。この実施例では、第1クランプ182と第2クランプ192の2つに分割されている。第1クランプ182は一方側締付具188を有し、第2クランプ192は他方側締付具198を有し、他方側締付具198にはボルト199が固定されている。従って一方側締付具188の中央をボルト199が貫通するようにし、ナット189で締め付けることにより、第1クランプ182と第2クランプ192とにより、一方側継手部112と他方側継手部142とに互いに接近させる方向の力を加えることが可能となる。一方側継手部112と他方側継手部142は環状形状をなしている。一方側継手部112に設けられた一方側シール部122や他方側継手部142に設けられた他方側シール部152もまた円筒形をなしている。一方側シール部122と他方側シール部152は、径方向における中心側すなわち一方側継手部112や他方側継手部142に繋がる部分が、流体20の移動方向に沿う長さである、言い換えると厚みが最も厚い。環状形状の一方側シール部122や他方側シール部152は、流体20の側から遠ざかるにつれて、すなわち環状形状の径の大きさが大きくなるにつれて、厚みが薄くなる形状をしている。一方側シール部122や他方側シール部152はその外周面の部分が最も薄くなっている。
【0035】
上述したが、一方側クランプ182や他方側クランプ192は、同じ形状の窪み187と窪み187とをそれぞれ有しており、窪み187と窪み197とは、径の小さい方が、幅が広く、径が大きくなるに従って幅が狭くなる形状を有している。従って一方側クランプ182には矢印12の方向に力を加え、さらに他方側クランプ192には矢印14の方向に力を加えることにより、一方側シール部122と他方側シール部152とで以下に記載のガスケット160を圧縮する力が増大する。なお前記ボルト199やナット189によりガスケット160の圧縮力を調整することができる。
【0036】
(3)一方側継手部112と他方側継手部142との間のシール構造の説明
図2から図4を用いて、一方側シール部122や他方側シール部152とガスケット160で構成されるシール構造を説明する。フェルール継手100の内部を流れる流体20は、加圧されており、例えば1M(メガ)パスカル以上に加圧されている。場合によっては2M(メガ)パスカル以上に加圧されている。また温度も摂氏150度以上に加熱されていても問題ないことが望まれている。これらのことからガスケット160は、4フッ化エチレンやポリエーテルエーテルケトンなどの、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックで作られる。また一方側シール部122を有する一方側継手部112や他方側シール部152を有する他方側継手部142は、ステンレススチールなどの金属で作られている。なお、ガスケット160をエンジニアリングプラスチックではなく、金属で構成しても良い。
【0037】
ガスケット160は、その断面が台形形状を有する環状形状をなしている。一方側継手部112や他方側継手部142も環状形状を成しており、ガスケット160や一方側継手部112や他方側継手部142は、それぞれの流体20側の面である内面が、ほぼ同じ径を有している。従ってガスケット160の内側面162は、一方側継手部112や他方側継手部142の内面とほぼ同一の面を形成している。
【0038】
ガスケット160の断面は流体20が通る側が流体の流れ方向の幅が狭く、流体20から遠ざかるにつれて、すなわち径が大きくなり、外周面に近づくにつれて上記幅が広くなっている。断面が台形形状を有するガスケット160の流体移動軸に沿う方向における一方側に、一方側シール面164が形成され、一方側シール部122の一方側押圧面124に接し、一方側押圧面124から常に押圧を受け、シール作用を成している。また台形形状断面の他方側シール部152の側に他方側シール面166を有している。他方側シール面166は、他方側シール部152の他方側押圧面154から常に押圧を受け、他方側押圧面154と他方側シール面166との間でシール作用をなしている。
【0039】
一方側シール部122の一方側締付面123と他方側シール部152の他方側締付面153とで形成される形状は台形形状であり、流体20の側から外周側に行くに従って間隔が狭くなる形状である。上述したように第1クランプ182が矢印12の方向にまた第2クランプ192が矢印14の方向に、一方側シール部122や他方側シール部152を加圧することにより、一方側シール部122と他方側シール部152は、互いに近づく方向に押圧されている。このため一方側シール部122の一方側押圧面124と他方側シール部152の他方側押圧面154とで、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166が押圧され、ガスケット160には図4に記載のごとく矢印24で示す力が働く。図4は一部のみを示しているが、ガスケット160の全周に渡って、ガスケット160の径を大きくする方向の力が作用する。一方ガスケット160は矢印24の力に対して、反力をガスケット160の全周に渡って発生する。
【0040】
(4)一方側シール部122や他方側シール部152とガスケット160との作用効果の説明
従来技術に基づく継手は、前記継手内を流れる流体の移動方向、言い換えると流体の移動軸に対して、ガスケットは直角方向に広がるシール面を有している。ガスケットに押圧を加える一方側継手部の一方側押圧面や他方側継手部の他方側押圧面もまた同様に、流体の前記移動軸に対して直角であった。継手の内部を移動する前記流体の圧力が低くい場合には、柔らかいゴムなどの、加わる圧力に対して変形量が非常に大きいガスケットを使用することができる。このため特性むらがあっても、あるいは作用する圧力にムラが有っても、大きな変形量により上述の斑が吸収され、良好なシール効果を維持することが容易であった。
【0041】
しかし流体の圧力が高くなると、変形量の大きいガスケットを使用することができない。このような継手でシール効果を得るためには、一方側継手部112の一方側押圧面124や他方側継手部142の他方側押圧面154に大きな圧力を加えても、ガスケットがそれに耐えられることが必要となる。この場合には変形量が少ないガスケットを使用することとなる。変形量が少ないガスケットを従来の構成の継手で使用する場合は、上述したように、流体の漏洩防止作用を維持することが難しくなる。このため従来の継手では比較的短期間の使用で、ガスケットを交換せざるを得なくなる。
【0042】
実施例に記載の発明では、流体20の流れ方向である流体移動軸に対して直角な面ではなく、傾斜した面で、ガスケット160と一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152他方側押圧面154とが押圧し合う構成としている。この結果、一方側シール面164や他方側シール面166を有するガスケット160が、ガスケット160全体として、外周方向に広げられる方向の力を受ける。この外周方向に広げられる方向の力を受けることにより、ガスケット160自身は全体として径方向に押して縮まる方向の反発力を発生する。
【0043】
従来の構成では、単にガスケットのシール面とこれに対する押圧面とが平面的に押し合うことにより、シール作用が生み出されている。このような従来の構成では、シール作用が個々の部分的な状態に依存している。このため、ガスケットのシール面を押圧する圧力むらや、ガスケットのシール面やそれに押圧を加える押圧面の部分的な特性バラツキなどにより、個々の部分毎の状態むらにより、シール作用のむらが生じ、使用期間と共に個々のむらが全体に対して大きな影響を及ぼしていた。上述したようにガスケットとして圧力に対する変形量の小さい材料を使用せざるを得ない場合には、これは大きな障害となっていた。
【0044】
実施例に記載の発明では、ガスケット160の個々の部分毎のシール作用の寄せ集めに基づくのではなく、全体としてシール効果が定まるような構造とした。即ちガスケット160の全体に対して、常にガスケット160が環状形状の径方向における中心から外周側に向かう力(図4に記載の矢印24の方向の力)が生じるようにし、前記径方向における外周方向に働く力に対して、この外周方向の力に対向するガスケット160の反力を発生させる構成とした。一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152の他方側押圧面154と、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166との間のシール作用を、常にガスケット160の環状形状の径方向における中心から外周側に向かう力と、これに対向するガスケット160の反力とがぶつかり合う構造により、生じさせるようにした。
【0045】
シール作用を従来技術では、個々の部分における個々のシール作用の集まりの結果として捉えているが、本発明では、ガスケット160が有する一方側シール面164や他方側シール面166全体が、これらと密着してこれらに押圧を加える一方側押圧面124や他方側押圧面154の押圧により、ガスケット160全体への径方向における外周方向への径の拡大方向の力と、ガスケット160全体の反力とのバランス状態に基づいて、シール作用を生じさせるようにした。上記2つの力のバランスで、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166と、一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152他方側押圧面154との位置関係が定まるし、この位置関係は変化する。本発明のこの構成により、個々の部分的なシールむらを解消することができる。その結果としてガスケット160の使用の寿命を長くすることができる。
【0046】
さらに一方側シール部122や他方側シール部152における一方側継手部112や他方側継手部142と一体化している、最も流路の中心側の位置は、一方側継手部112や他方側継手部142と一体化している状態であり、従来の構成では、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166に押圧を掛けられない。しかし本願発明では、ガスケット160自身が上述したように、常に径を小さくする方向に反力を発生しているので、良好なシール効果を維持できる。
【0047】
(5)適用分野およびその他
本実施例に記載のフェルール継手100は、衛生管理が極めて重要な食品や医薬品の分野で使用できる。さらにこれらの分野は、気密性が極めて重要となる。本実施例のフェルール継手100はこれらの点でも大変優れている。
〔0048〕
また半導体分野等で使用される流体の継手としてもたいへん有効である。図1における一方側配管32や他方側配管34の口径として、1インチ口径以上の配管のための継手として最適である。
【0048】
図4において、上述の通り、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166は、流体20の流れ方向に対して直角ではなく傾斜している。また一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152の他方側押圧面154も流体20の流れ方向に対する直角な面に対して傾斜している。今流体20の流れ方向に対する直角な面を直角軸200で示すと、他方側押圧面154は押圧軸201の方向であり、角度θ傾いている。一方側押圧面124については、記載を省略しているが他方側押圧面154と同じ角度θ傾いている。これらの傾きにより、一方側押圧面124や他方側押圧面154の押圧により、ガスケット160には矢印24の方向の力が発生し、ガスケット160は、矢印24の逆方向である環状形状の径の外周側から中心に向かって縮む方向の反力を発生する。流体20の流れ方向に対して直角方向を示す直角軸200に対して、一方側押圧面124や他方側押圧面154の角度θは5度以上であり、望ましくは10度以上である。また傾斜角θの最大角は80度で、角度θこれ以下の角度ある。好ましくは40度以下の角度である。なお押圧軸201は他方側シール面166に対して記載しているが、一方側シール面164と他方側シール面166とは同じ傾斜角すなわち角度θが望ましい。
【0049】
ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166も、角度θとほぼ同じ傾斜角を有している。なお、この実施例では、一方側シール部122の一方側押圧面124の角度θや他方側シール部152の他方側押圧面154の角度が、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166より少し傾斜角が大きくなっている。具体的な例を、図5を用いて説明する。
【0050】
図5において、直角軸200は流体の流れの軸に垂直な面を表している。押圧軸201は他方側シール部152の他方側押圧面154に沿う面である。押圧軸201の直角軸200に対する角度θに対して、ガスケット160の他方側シール面166に沿う面の角度を表すシール角206は、押圧軸201の角度θより小さく設定されている。上述の通り、シール角206を角度θと同じにしても良いが、シール角206を角度θより小さくすることにより、次の作用をする。なおシール角206を角度θより小さくする角度は、5度以下である。
【0051】
第1クランプ182や第2クランプ192が一方側シール部122や他方側シール部152に押圧を加える位置が、一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152の他方側押圧面154がガスケット160に押圧を加える位置より、環状形状の一方側シール部122や他方側シール部152における径方向、すなわち半径方向における、外周側である。言い換えると径の大きい場所である。このため第1クランプ182や第2クランプ192の押圧により、一方側シール部122や他方側シール部152が、径方向においてやや湾曲する。このため、一方側シール部122の一方側押圧面124や他方側シール部152の他方側押圧面154より、ガスケット160の一方側シール面164や他方側シール面166の傾斜角を小さくした方が、一方側シール面164や他方側シール面166の径方向における、加圧が均一化される作用をする。
【0052】
なお、一方側シール部122と他方側シール部152は、ガスケット160を径方向において超えた位置で、互いに接近する一方側対向部126と他方側対向部156とを有している。一方側対向部126の一方側対向面128と他方側対向部156の他方側対向面158とは、所定の狭い間隔を挟んで対抗している。第1クランプ182や第2クランプ192の押圧が大きくなると、一方側対向面128と他方側対向面158とがぶつかる状態となり、第1クランプ182や第2クランプ192から一方側シール部122や他方側シール部152に作用させることが可能な最大の押圧が、定まり、それ以上の押圧を加えても、ガスケット160にその押圧が作用することが制限される。従ってガスケット160に対する最大押圧が定まる。安全などの観点において重要である。
【0053】
(6)フェルール継手100の組み立てに関する説明
図2図3は組み立てが完了したフェルール継手100を表している。フェルール継手100の利点は、簡単に分解でき、簡単に組み立てられることである。一方側継手部112あるいは他方側継手部142とガスケット160とを組み立てる。この場合にガスケット160が一方側継手部112または他方側継手部142に保持できると、残りの一方側継手部112または他方側継手部142を組付けることが容易となる。
【0054】
一方側シール部122および他方側シール部152に、ガスケット160の外周の更に外側において、ガスケット160の外周面の一部と対向する一方側外周部125や他方側外周部155が設けられている。一方側継手部112の一方側シール部122に一方側外周部125を設けることで、ガスケット160の外周と一方側外周部125の内側との間に保持具210を挿入することで、ガスケット160を一方側シール部122に固定することが可能となる。ガスケット160を一方側継手部112の一方側シール部122に固定すれば、他方側継手部142を組付けることが容易となる。同様に他方側継手部142にガスケット160を借り固定しても良い。この場合は他方側継手部142の他方側外周部155の内側面とガスケット160の外周側の面との間に保持具210を挿入することで、他方側継手部142の他方側シール部152にガスケット160を仮止めすることが可能となり、さらに一方側シール部122を組付けることが可能となる。
【0055】
一方側継手部112と他方側継手部142との間にガスケット160を挟み込んだ状態で、さらに第1クランプ182や第2クランプ192をボルト199やナット189により組付けることにより、フェルール継手100を組み立てることが可能となる。ガスケット160の外周面の更に外側に一方側外周部125や他方側外周部155を設けることにより、一方側シール部122の一方側締付面123や他方側シール部152の他方側締付面153を大きく角をすることができ、第1クランプ182や第2クランプ192で、安定して一方側シール部122と他方側シール部152とに互いに近づける方向の力を加えることが可能となり、この点でも大きな効果がある。
【0056】
図4に記載の実施例で、保持具210はガスケット160よりも非常に柔らかい弾性体で構成される。このため組み立て時に人の操作で簡単に変形することができる。また保持具210は環状形状であり、ガスケット160に保持されていることが、取り扱いの上で大変便利である。このため保持具210の内側とガスケット160の外周面との間な凹凸を形成することで、環状形状の保持具210の柔らかい弾性力を利用して、保持具210をガスケット160に保持しておくことが可能となる。
【0057】
図6は、図4に記載の実施例の代案である。ガスケット160の外周面に保持具221や保持具222を設けることにより、ガスケット160を一方側シール部122や他方側シール部152に仮止めすることが可能となる。従って一方側継手部112と他方側継手部142の組付けが容易になる。
【0058】
(7)その他の作用効果
図3図4に記載のように、一方側継手部112に設けられた一方側シール部122や他方側継手部142に設けられた他方側シール部152は環状形状をなし、それぞれの径方向における長さL2が、環状形状のガスケット160の径方向における長さL1より非常に大きい。一方側シール部122や他方側シール部152の径方向の長さL2は、ガスケット160の径方向の長さL1の2倍以上である。さらに第1クランプ182が一方側シール部122や他方側シール部152に押圧を加えている位置は、環状形状であるガスケット160の最外周のさらに外側の位置である。なお、第2クランプ192と一方側シール部122や他方側シール部152との関係も同じである。このような構成とすることで、組み立てやすい効果がある。即ち一方側継手部112や他方側継手部142に対して、第1クランプ182や第2クランプ192を組みつけ易い効果がある。
【0059】
さらに一方側継手部112や他方側継手部142はステンレス鋼などの金属で作られており、弾性を有している。このため、第1クランプ182や第2クランプ192に対して、あるいは図1に記載の一方側配管32や他方側配管34の振動等を吸収できる。
【符号の説明】
【0060】
20・・・流体、32・・・一方側配管、34・・・他方側配管、100・・・フェルール継手、112・・・一方側継手部、122・・・一方側シール部、123・・・一方側締付面、124・・・一方側押圧面、125・・・一方側外周部、142・・・他方側継手部、152・・・他方側シール部、153・・・他方側締付面、154・・・他方側押圧面、155・・・他方側外周部、160・・・ガスケット、162・・・内側面、164・・・一方側シール面、166・・・他方側シール面、182・・・第1クランプ、183・・・一方側クランプ面、184・・・他方側クランプ面、187・・・窪み、188・・・一方側締付具、189・・・ナット、192・・・第2クランプ、193・・・一方側クランプ面、194・・・他方側クランプ面、197・・・窪み、198・・・他方側締付具、199・・・ボルト、202・・・空隙、204・・・空隙、210・・・保持具、221・・・保持具、222・・・保持具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6