(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151387
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】男性用吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/471 20060101AFI20251002BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20251002BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
A61F13/471
A61F13/534 100
A61F13/535 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052786
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181434
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100180035
【弁理士】
【氏名又は名称】生塩 智邦
(72)【発明者】
【氏名】細田 涼太
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA14
3B200BA01
3B200CA12
3B200DB05
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】着用感に優れ、目立ち難くて吸収性に優れた男性用吸収性物品を提供する。
【解決手段】本開示は、液透過性の肌側のトップシート11と、液不透過性の非肌側のバックシート12と、トップシート11とバックシート12との間に配置された吸収体13とを備える男性用吸収性物品10であって、吸収体13は、肌側の上層吸収体13aと、非肌側の下層吸収体13bとの二層構造であり、下層吸収体13bの長手方向の最大長さLbは、上層吸収体13aの長手方向の最大長さLaの20%以上50%以下であり、下層吸収体13bの幅方向の最大長さWbは、上層吸収体13aの幅方向の最大長さWaの50%以上100%以下であり、下層吸収体13bは、男性用吸収性物品10の長手方向の中央CLよりも股側に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の肌側のトップシートと、液不透過性の非肌側のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備える男性用吸収性物品であって、
前記吸収体は、肌側の上層吸収体と、非肌側の下層吸収体との二層構造であり、
前記下層吸収体の長手方向の最大長さは、前記上層吸収体の長手方向の最大長さの20%以上50%以下であり、
前記下層吸収体の幅方向の最大長さは、前記上層吸収体の幅方向の最大長さの50%以上100%以下であり、
前記下層吸収体は、前記男性用吸収性物品の長手方向の中央よりも股側に配置される
ことを特徴とする男性用吸収性物品。
【請求項2】
前記下層吸収体の厚みは、1mm以上であり、かつ前記上層吸収体の厚みの100%以上200%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の男性用吸収性物品。
【請求項3】
前記下層吸収体の総吸収量は、前記上層吸収体の総吸収量の100%以上200%以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の男性用吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、男性用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、男性用失禁パッドが開示されている。この男性用失禁パッドは、不透液性裏面シートと、尿などを速やかに透過させる透液性表面シートと、これら両シート間に介在された吸収体と、この吸収体の少なくとも肌側面及び非肌側面を覆う被包シートとから構成されている。男性用失禁パッドの下側半分の領域には、下側に向けて突出する平面形状を有する塞き止め用エンボスが複数条設けられている。
【0003】
特許文献2には、男性用吸収性物品が開示されている。この男性用吸収性物品は、不透液性裏面シートと、尿などを速やかに透過させる透液性表面シートと、これら両シート間に介在された吸収体と、この吸収体の少なくとも肌側面及び非肌側面を覆う被包シートとから構成されている。吸収体は、外形が円形又は楕円形からなり、肌当接面に、吸収体の中心より周縁側に偏倚した位置において、全周に亘って厚み方向に窪む底面部と、底面部から吸収体の周縁部に向かって肌当接面側に傾斜する傾斜面部とによって画成された陰茎の収容空間が形成されている。底面部が偏倚した側と反対側の傾斜面部には、底面部又はその近傍から吸収体の周縁部に向けて延びる1又は複数のエンボス溝が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-143431号公報
【特許文献2】特開2019-058236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、男性用の軽失禁ライナー、失禁パッド等の男性用吸収性物品では、高吸収量(150cc以上)の失禁パッド等が開発されており、相対的に高い耐モレ、吸収性能が求められる。一方で着用者は主に自立して動くことのできる壮年層となるため、運動の妨げとならない良好な着用感を有するとともに着用していることが目立ち難いものが求められる。
【0006】
特許文献1に記載の男性用失禁パッドでは、排尿時に塞き止めを超えて漏れが発生するおそれがある。また、陰部にエンボスが接触する可能性があり、着用感に支障が出るおそれがある。
【0007】
また、特許文献2に記載の男性用吸収性物品では、吸収体に陰茎を収納する空間を確保するので、一般的な男性用吸収性物品と比較して大型化する可能性があり、アウターを着用した際に目立ってしまう可能性があり、美粧性を確保することが難しい。また、吸収体のエンボスにより吸収された体液を拡散させるものであるが、排泄物の保持性や吸収体の柔軟性を考慮したものではない。
【0008】
そこで、本開示は、着用感に優れ、目立ち難くて吸収性に優れた男性用吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、液透過性の肌側のトップシートと、液不透過性の非肌側のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備える男性用吸収性物品であって、前記吸収体は、肌側の上層吸収体と、非肌側の下層吸収体との二層構造であり、前記下層吸収体の長手方向の最大長さは、前記上層吸収体の長手方向の最大長さの20%以上50%以下であり、前記下層吸収体の幅方向の最大長さは、前記上層吸収体の幅方向の最大長さの50%以上100%以下であり、前記下層吸収体は、前記男性用吸収性物品の長手方向の中央よりも股側に配置される。
【0010】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の男性用吸収性物品であって、前記下層吸収体の厚みは、1mm以上であり、かつ前記上層吸収体の厚みの100%以上200%以下である。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様の男性用吸収性物品であって、前記下層吸収体の総吸収量は、前記上層吸収体の総吸収量の100%以上200%以下である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、着用感に優れ、目立ち難くて吸収性に優れた男性用吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る男性用吸収性物品の肌側からの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る男性用吸収性物品について説明する。
【0015】
本明細書において、男性用吸収性物品の着用とは、体液(尿)の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、男性用吸収性物品を装着した状態を意味する。また、長手方向とは、男性用吸収性物品の長手の方向を意味し、男性用吸収性物品を着用した際に着用者の腹側から股側(股下)に沿う方向であり、図中の矢印Xに沿った方向である。図中の矢印Xが指し示す方向が腹側を示し、その反対方向が股側を示す。また、幅方向とは、男性用吸収性物品の短手の方向を意味し、長手方向と交叉(直交)する方向であり、図中の矢印Yに沿った方向である。また、男性用吸収性物品の厚み方向とは、各構成部材を積層する方向をいい、図中の矢印Zに沿った方向を意味する。また、男性用吸収性物品の各構成部材の「肌側」とは、厚み方向のうち男性用吸収性物品を着用した際に着用者の身体に向かう方向を意味し、図中の矢印Zが指し示す方向である。また、「非肌側」とは、厚み方向のうち肌側とは反対の方向を意味し、図中の矢印Zが指し示す方向とは反対側の方向である。また、左右方向は、前方を向いた状態の着用者から視た左右方向を意味する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る男性用吸収性物品の肌側からの平面図である。
図2は、
図1のII-II矢視断面図である。なお、
図2の断面図は、各部材を概略的に示している。また、各図は、男性用吸収性物品の構成部材の寸法の大小関係を規定するものではなく、各構成部材の寸法は、男性用吸収性物品の用途等に応じてそれぞれ広い範囲から適宜選択できる。
【0017】
[男性用吸収性物品]
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る男性用吸収性物品10は、男性用のパッドタイプの吸収性物品である。パッドタイプの吸収性物品としては、例えば、軽失禁パッド、尿吸収パッド等が挙げられる。男性用吸収性物品10は、例えば、下着の内側に取り付けて使用してもよい。
【0018】
(形状)
男性用吸収性物品10の形状は、特に限定されるものではないが、上部側の幅方向の長さが長く、下部側の幅方向の長さが短い、男性の局部を包み込むカップ型の形状であることが好ましい。なお、本実施形態では、カップ型の形状の男性用吸収性物品10について説明しているが、これに限定されるものではない。また、図面では、分かり易くするために、男性用吸収性物品10を平面状に図示しているが、実際には、男性用吸収性物品10は、前方へ膨らむカップ型の立体形状である。
【0019】
男性用吸収性物品10は、着用時に肌側に位置する液透過性のトップシート11と、着用時に非肌側に位置する液不透過性のバックシート12と、トップシート11とバックシート12との間に配置される吸収体13と、を備える。トップシート11は、バックシート12との間に吸収体13を挟んで、バックシート12の肌側に対向して配置される。トップシート11の外周縁部の一部又は全部は、バックシート12に対して貼り合わされている。なお、男性用吸収性物品10は、上記に加えて、後述する立体ギャザーや、キャリアシートや、トランスファーシートを備えてもよい。
【0020】
(トップシート)
トップシート11は、液透過性のシート状部材であって、体液が吸収体13へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されていればよい。基材の一例としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を含む、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。
【0021】
トップシート11には、液透過性を向上させる観点から、公知の方法に従ってエンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート11には、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有させてもよい。トップシート11の形状は特に制限されず、吸収体13へと誘導される体液の漏れがないように、吸収体13の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0022】
(バックシート)
バックシート12は、吸収体13が保持している体液の非肌側への漏れがないように液不透過性を備えた基材を用いて形成されていればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布等の複数の同種及び/又は異種の不織布を積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
【0023】
バックシート12には、着用時の蒸れを防止するために、通気性を持たせることが好ましい。バックシート12に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート12にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。例えば、樹脂とフィラーとを混練し、得られた混練物をフィルム状に成形し、得られたフィルムからフィラーを除去することにより、多孔性(通気性)樹脂フィルムを得ることができる。
【0024】
バックシート12の非肌側面(男性用吸収性物品10の非肌側面)には、男性用吸収性物品10を下着に貼り付け可能とするズレ止め粘着部を設けてもよい。
【0025】
ズレ止め粘着部を形成する粘着剤としては、特に限定はないが、例えば、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン-アクリル系共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンブロック共重合体(SBC)、スチレン-スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等のホットメルト粘着剤が挙げられる。これらを、1種のみを使用しても、複数をブレンドして使用してもよい。これらの中でも、合成ゴム系(SBS、SIS、SEBS等)の粘着剤(合成ゴム系粘着剤)であることが好ましい。上記の粘着剤を、男性用吸収性物品10の非肌側面に塗布することで、粘着層を形成してズレ止め粘着部として機能させることができる。なお、使用前の男性用吸収性物品10のズレ止め粘着部には、剥離可能なシート(剥離紙等)を貼り付けて、ズレ止め粘着部を保護してもよい。
【0026】
(吸収体)
吸収体13は、肌側の上層吸収体13aと、非肌側の下層吸収体13bとの二層構造の吸収体13である。なお、
図1では、分かり易くするために、下層吸収体13bの外縁を上層吸収体13aの外縁よりも内側に図示しているが、これに限定されるものではない。
【0027】
吸収体13(上層吸収体13a及び下層吸収体13b)としては、例えば、基材としての吸収性繊維と、吸収性繊維に担持された高吸収性ポリマー(以下、「SAP」という場合がある。)と、を含むフラッフ吸収体や、液吸収性シート間にSAP粒子を固着したSAPシートが挙げられる。
【0028】
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。また、液吸収性シートとしては、上記吸収性繊維の1種又は2種以上から構成されるシートが挙げられる。
【0029】
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
吸収体13において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものであってもよく、或いは吸収性繊維間にSAP粒子を固着したものであってもよい。
【0031】
(上層吸収体)
上層吸収体13aとしては、フラッフパルプにSAPを担持したフラッフ吸収体であることが好ましい。上層吸収体13aの形状としては、特に限定されるものではないが、男性用吸収性物品10の形状と同様にカップ型の形状であることが好ましい。
(上層吸収体の寸法)
【0032】
上層吸収体13aの長手方向の最大長さLaは、特に限定されるものではないが、200mm以上250mm以下であることが好ましい。また、上層吸収体13aの幅方向の最大長さWaは、特に限定されるものではないが、100mm以上150mm以下であることが好ましい。上層吸収体13aの寸法を上記範囲に調整すると、種々の形態の男性用吸収性物品10を容易に得られる。なお、上層吸収体13aの上記寸法(最大長さLa,Wa)は、立体形状に沿った長さではなく、平面視(
図1参照)における長さを意味する。
【0033】
(下層吸収体)
下層吸収体13bの長手方向の最大長さLbは、上層吸収体13aの長手方向の最大長さLaの20%以上50%以下であることが好ましい。下層吸収体13bの長手方向の最大長さLbを、上層吸収体13aの長手方向の最大長さLaの20%よりも小さくすると、排尿に対して十分な吸収量を発揮できないおそれがある。一方、下層吸収体13bの長手方向の最大長さLbを、上層吸収体13aの長手方向の最大長さLaの50%よりも大きくすると、男性用吸収性物品10の全体の厚さが増して着用感が低下する可能性があるとともに、アウター着用時の美粧性(以下、単に「美粧性」という場合がある。)が低下する可能性がある。
【0034】
(下層吸収体の寸法)
下層吸収体13bの幅方向の最大長さWbは、上層吸収体13aの幅方向の最大長さWaの50%以上100%以下である。下層吸収体13bの幅方向の最大長さWbを、上層吸収体13aの幅方向の最大長さWaの50%よりも小さくすると、排尿に対して十分な吸収量を発揮できないおそれがある。一方、吸収性能を高めつつ、可能な限り着用性を高めるには、下層吸収体13bの幅方向の最大長さWbを、上層吸収体13aの幅方向の最大長さWa以下(100%以下)にする必要があるが、下層吸収体13bの幅方向の最大長さWbを、上層吸収体13aの幅方向の最大長さWaの100%よりも大きくすると、上層吸収体13aよりも下層吸収体13bが大きくなるので、吸収性能を十分に発揮できない可能性がある。なお、下層吸収体13bの上記寸法(最大長さLb,Wb)は、立体形状に沿った長さではなく、平面視(
図1参照)における長さを意味する。
【0035】
(下層吸収体の配置位置)
下層吸収体13bは、男性用吸収性物品10の長手方向の中央CL(
図1に一点鎖線CLで示す位置)よりも股側に配置される。下層吸収体13bを、男性用吸収性物品10の長手方向の中央CLよりも腹側まで配置すると、排尿時に下層吸収体13bが膨潤した際に、陰茎に触れる箇所の吸収体13の厚みが増大するので、着用感が悪化するおそれがある。
【0036】
(下層吸収体の厚み)
下層吸収体13bの厚みTbは、1mm以上であり、かつ上層吸収体13aの厚みTaの100%以上200%以下である。下層吸収体13bの厚みTbを上層吸収体13aの厚みTa(100%)よりも小さくすると、吸収性能を十分に確保できないおそれがある。一方、下層吸収体13bの厚みTbを上層吸収体13aの厚みTaの200%よりも大きくすると、着用感の低下や美粧性の低下を招くおそれがある。
【0037】
(下層吸収体の総吸収量)
下層吸収体13bの総吸収量は、上層吸収体13aの総吸収量の100%以上200%以下であることが好ましい。下層吸収体13bの総吸収量を上層吸収体13aの総吸収量(100%)よりも小さくすると、多量の排尿時に十分な吸水性能が発揮されず漏れが発生するおそれがある。一方、下層吸収体13bの総吸収量を上層吸収体13aの総吸収量の200%よりも大きくすると、下層吸収体13bの膨潤により吸収体13の厚みが増大し過ぎてしまい、着用感が低下するおそれがある。
【0038】
(総吸収量の測定)
上層吸収体13a及び下層吸収体13bの総吸収量を測定する際には、先ず、各吸収体13a,13bを秤量し、その重量を予め測定する。次に、各吸収体13a,13bを生理食塩水(0.9%のNaCl水溶液)に完全に浸かるように5分間浸漬する。次に、各吸収体13a,13bを生理食塩水から取り出し、肌側面を下に向けて金網上に載置し、30秒間水切りをする。そして、水切り後の各吸収体13a,13bを秤量し、浸漬前後の重量差(水切り後の各吸収体13a,13b重量-予め測定した浸漬前の重量)を求める。この求めた値を各吸収体13a,13bの総吸収量(mL)とする。
【0039】
(キャリアシート)
男性用吸収性物品10は、吸収体13からのSAP粒子の漏洩防止や吸収体13の形状の安定化の目的から、吸収体13を包むような、キャリアシートを有していてもよい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、例えば、ティッシュ、吸収紙、エアレイド不織布、スパンボンド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。これらの中でも、スパンボンド不織布が好ましい。また、キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0040】
(トランスファーシート)
男性用吸収性物品10は、トップシート11を通過した体液の吸収体13への拡散性を高めるために、トップシート11と吸収体13との間にトランスファーシートを設けてもよい。トランスファーシートとしては、透液性を有する基材であれば特に限定されないが、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布等の同種又は異種の不織布積層体等の複合不織布、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等からなる発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。
【0041】
(立体ギャザー)
男性用吸収性物品10は、着用者が排泄した体液の横モレを防止するために、男性用吸収性物品10の肌側面のトップシート11の幅方向の両側に、立体ギャザーを設けてもよい。立体ギャザーは、撥水性及び/又は防水性のギャザーシートと弾性伸縮部材とを含む。
【0042】
ギャザーシートは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。ギャザーシート用の不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。ギャザーシートは、幅方向の外端(固定端)が男性用吸収性物品10の幅方向の両端付近に固定され、幅方向の内端が起立性を有する自由端となっている。
【0043】
弾性伸縮部材は、ギャザーシートの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、ギャザーシートの自由端及びその近傍領域を装着者の体型に合わせて変形可能にする。弾性伸縮部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0044】
上記のように構成された男性用吸収性物品10では、吸収体13は、肌側の上層吸収体13aと非肌側の下層吸収体13bとの二層構造であり、下層吸収体13bは、男性用吸収性物品10の長手方向の中央CLよりも股側に配置される。そして、下層吸収体13bの長手方向の最大長さLbは、上層吸収体13aの長手方向の最大長さLaの20%以上50%以下であり、下層吸収体13bの幅方向の最大長さWbは、上層吸収体13aの幅方向の最大長さWaの50%以上100%以下である。
【0045】
このため、本実施形態によれば、着用感に優れ、目立ち難くて吸収性に優れた男性用吸収性物品10を提供することができる。
【0046】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【実施例0047】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1~7及び比較例1~7)
表1に示す各条件において、実施例1~7及び比較例1~7のそれぞれの男性用吸収性物品を作製した。実施例1~7及び比較例1~7の男性用吸収性物品では、吸収体への拡散性を高めるトランスファーシート、及び吸収体を包むキャリアシートを設けた。実施例1~7及び比較例1~7の男性用吸収性物品では、下層吸収体の構成以外の構成を互いに同じ構成にした。そして、各男性用吸収性物品について、以下の3つの評価(「使用時(吸収前)の快適性」の評価、「使用時(吸収後)の快適性」の評価、及び「漏れ」の評価)を行った。
【0049】
(使用時(吸収前)の快適性)
「使用時(吸収前)の快適性」の評価は、男性モニター20名による官能評価であって、各男性用吸収性物品を装着して運動及び着席起立動作をしてもらい、その快適性について、0点(不快である)、1点(やや気になる)、2点(快適である)の3段階で評価してもらった。そして、各男性用吸収性物品の合計点を、以下の基準で評価した。
◎:合計点が30点以上
○:合計点が20点以上30点未満
△:合計点が10点以上20点未満
×:合計点が10点未満
【0050】
(使用時(吸収後)の快適性)
「使用時(吸収後)の快適性」の評価は、男性モニター20名による官能評価であって、生理食塩水(0.9%のNaCl水溶液)を吸収させた各男性用吸収性物品を装着して運動及び着席起立動作をしてもらい、その快適性について、0点(不快である)、1点(やや気になる)、2点(快適である)の3段階で評価してもらった。各男性用吸収性物品には、上層吸収体及び下層吸収体のそれぞれに、それぞれの総吸収量分の上記生理食塩水を吸収させた。そして、各男性用吸収性物品の合計点を、以下の基準で評価した。
◎:合計点が30点以上
○:合計点が20点以上30点未満
△:合計点が10点以上20点未満
×:合計点が10点未満
【0051】
(漏れ)
「漏れ」の評価は、ダミー人形に着用させた各男性用吸収性物品に上記生理食塩水を注水し、男性用吸収性物品から生理食塩水が漏れるまでの時間によって評価した。具体的には、生理食塩水が漏れるまでの時間を計測する際には、先ず、男性用吸収性物品が排尿部に位置するように、ボクサータイプの下着の肌側面に男性用吸収性物品を取り付け、成人男性を模したダミー人形に当該下着を着用させた。次に、生理食塩水(0.9%のNaCl水溶液)を、ダミー人形の股下部分に設けられた仮想尿道口から男性用吸収性物品へ、一定の速度(15mL/sec)で注入する。そして、生理食塩水が男性用吸収性物品から漏れたことを目視で確認できるまでの時間を、10秒を上限として計測する。そして、生理食塩水が男性用吸収性物品から漏れるまでの時間を、以下の基準で評価した。
○:5秒以上漏れなかった。
△:5秒以下で漏れたが、ダミー人形の足には伝わなかった。
×:5秒以下で漏れ、ダミー人形の足に伝った。
【0052】
得られた結果を表1に示す。なお、表1における「全長」は「長手方向の最大長さ」を、「全幅」は「幅方向の最大長さ」をそれぞれ示す。また、「総吸収量」は、上述した「総吸収量の測定」に基づいて測定される値である。また、「快適性」は「使用時(吸収前)の快適性」を、「上層+下層の総吸収量のNaCl0.9%水溶液吸収時の快適性」は「使用時(吸収後)の快適性」を、「モレの評価」は「漏れ」の評価を、それぞれ示す。
【0053】
【0054】
このように、表1から、本開示によれば、着用感に優れ、目立ち難くて吸収性に優れた男性用吸収性物品を提供できることが確認された。