(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151432
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/18 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
E02F9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052859
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海崎 裕輝
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015FA02
(57)【要約】
【課題】カウンタウェイト内に配置される液剤タンクのメンテナンス性を向上できる建設機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられたフロント装置4と、上部旋回体3の後部に設けられたカウンタウェイト20とを有し、カウンタウェイト20は、カウンタウェイト20の外表面(後面20Aの表面)表面に形成される収納凹部31と、収納凹部31の内部に収納され、カウンタウェイト20の前方に配置された排気浄化装置14に供給される液剤を貯留する尿素タンク51と、収納凹部31に収納された尿素タンク51を上部旋回体3の外側から収納凹部31に押し付けように尿素タンク51に当接し、収納凹部31内に尿素タンク51を保持するブラケット38とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
前記上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられたフロント装置と、
前記上部旋回体の後部に設けられたカウンタウェイトと
を有する建設機械において、
前記カウンタウェイトは、
当該カウンタウェイトの外表面に形成される収納凹部と、
前記収納凹部の内部に収納され、前記カウンタウェイトの前方に配置された機器に供給される液剤を貯留する液剤タンクと、
前記収納凹部に収納された前記液剤タンクを前記上部旋回体の外側から前記収納凹部に押し付けるように前記液剤タンクに当接し、前記収納凹部内に前記液剤タンクを保持する保持部材と
を有する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記収納凹部は、
前記カウンタウェイトの後部に設けられ、前記上部旋回体の後側に向けて開口している
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械において、
前記上部旋回体に設けられ、前記カウンタウェイトの前方に配置されたエンジン室と、
前記エンジン室に収容されるエンジンと、
前記エンジン室に収容され、前記エンジンから排出される排気ガスに還元剤を供給する排気浄化装置と
を備え、
前記排気浄化装置は、前記エンジン室の内部であって、前記上部旋回体の左右方向の一側に配置され、
前記カウンタウェイトは、その内表面が前記エンジン室と対向するように設けられ、
前記カウンタウェイトは、前記収納凹部と前記カウンタウェイトの前記内表面とを連通する連通孔を有し、
前記収納凹部及び前記連通孔は、
前記カウンタウェイトのうち、前記上部旋回体の左右方向に対して前記排気浄化装置と同じ側に設けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2記載の建設機械において、
前記収納凹部は、
前記カウンタウェイトの前記外表面側から前記カウンタウェイトの内表面側へ向かって縮径するテーパ状の形状を備え、
前記カウンタウェイトは、前記収納凹部と前記カウンタウェイトの前記内表面とを連通する連通孔を有する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項2記載の建設機械において、
前記液剤タンクは、
前記保持部材に当接されて前記収納凹部内に保持された状態で前記カウンタウェイト外に露出して配置される注液口を備え、
前記保持部材は、
前記注液口を貫通させる被貫通部を備え、
前記収納凹部は、
前記注液口を嵌合させる嵌合部を備える
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械において、
前記カウンタウェイトの前記外表面は、平面視にて略円弧状の形状を備えており、
前記液剤タンクは、
前記収納凹部内に収容された状態で前記上部旋回体の後側に位置する後面が
前記カウンタウェイトの前記外表面に沿って形成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1記載の建設機械において、
前記カウンタウェイトは、
前記液剤タンクに当接して保持する保持部材を取り付ける取付凹部をさらに有し、
前記保持部材は、
前記取付凹部に対し締結具により着脱可能に取り付けられる
ことを特徴とする建設機械。
【請求項8】
請求項7記載の建設機械において、
前記液剤タンクは、樹脂製であり、かつ、
前記収納凹部内に収容された状態で前記上部旋回体の後側に位置する平坦面、および、前記平坦面に隣接して、前記保持部材と当接するための凸部を有し、
前記液剤タンクの前記平坦面と前記保持部材との間には、前記保持部材により前記液剤タンクが前記収納凹部内に保持された状態で隙間が形成される
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部旋回体にカウンタウェイトを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車体フレーム上に設けられるカウンタウェイトと、カウンタウェイトの内部に設けられ、カウンタウェイトを構成する後面板または上面板に開口部が設けられた液体還元剤タンク収容空間と、タンク収容空間内に設けられる仕切部材によってカウンタウェイト内に充填される重量調整材と隔てられて形成されたタンク収容室と、タンク収容室を開閉可能に閉塞する蓋部材と、タンク収容室内に設けられる液体還元剤タンクと、タンク収容室と液体還元剤タンクとの間の固定手段と、から構成される建設機械のNOx還元触媒用液体還元剤タンクの配置構造を開示している。また、液体還元剤タンクが固定された液体還元剤タンクとタンク収容箱とは、タンク収容箱の下面、前後面の3つの外面に対して長手方向に延設される凸部と、凸部に対応するようにタンク収容箱の内面の下面、前後面の3つの外面に対して長手方向に設けられる凹部との嵌合によって固定される固定手段を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンクのメンテナンス時等において、カウンタウェイト内に配置されたタンクを取り出したい場合がある。しかしながら、特許文献1においては、メンテナンス時に、蓋部材を開いたうえで、長手方向に延設される凸部と凹部との嵌合を確認しながら、液体還元剤タンクを抜き差しする必要があるため、手間がかかってしまう。また、凸部と凹部がずれた状態で液体還元剤タンクを無理に差し込もうとすると、固定手段が破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カウンタウェイト内に配置される液剤タンクのメンテナンス性を向上できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられたフロント装置と、前記上部旋回体の後部に設けられたカウンタウェイトとを有する建設機械において、カウンタウェイトは、当該カウンタウェイトの外表面に形成される収納凹部と、収納凹部の内部に収納され、前記カウンタウェイトの前方に配置された機器に供給される液剤を貯留する液剤タンクと、前記収納凹部に収納された液剤タンクを前記上部旋回体の外側から前記収納凹部に押し付けるように前記液剤タンクに当接し、前記収納凹部内に前記液剤タンクを保持する保持部材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カウンタウェイト内に配置される液剤タンクのメンテナンス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態における油圧ショベルの構造を右後側から表す斜視図である。
【
図3】
図1中のIII-III断面による横断面図である。
【
図4】
図1中のブラケット周辺を表す部分拡大斜視図である。
【
図5】
図4中のV-V断面による沿う鉛直断面図である。
【
図7】カウンタウェイトに収容される尿素タンクユニット及びブラケットを説明するための分解斜視図である。
【
図9】尿素タンクの注液側端面を平坦面とした変形例における、ブラケット周辺の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、油圧ショベル1に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
なお、以下の説明において、上下方向、前後方向、左右方向は、
図1等の各図中に適宜示す矢印方向に対応している。すなわち、図示の「上」「下」「前」「後」「左」「右」は、キャブ7(後述)内に着座したオペレータから見た上下左右前後方向に相当している。
【0011】
<油圧ショベルの全体構造>
油圧ショベル1は、例えば、土木、解体、地下工事等の作業現場で用いられる。油圧ショベル1は、この例では、例えば狭い作業現場での作業に適した小型(例えば、機械重量が1~6トン程度)の小型の油圧ショベルである。
【0012】
油圧ショベル1の車体は、
図1及び
図2に示すように、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、を有している。
【0013】
<上部旋回体>
上部旋回体3は、前部に、車体フレームとしての旋回フレーム5を有している。旋回フレーム5は、旋回輪6を介して下部走行体2上に旋回可能に取付けられている。旋回フレーム5は、前端側に、円筒状のスイングブラケット5Aを有している。旋回フレーム5は、左前側に、運転室を区画するキャブ7を有している。
【0014】
上部旋回体3は、前側に、俯仰動可能に設けられたフロント装置4を有している。フロント装置4は、基端側に、スイングポスト4Aを有している。このスイングポスト4Aは、旋回フレーム5のスイングブラケット5Aに左右方向に揺動可能に連結されている。これにより、フロント装置4は、上部旋回体3に対して左右方向に揺動可能に、かつ上下方向に俯仰動可能に取り付けられ、土砂等の掘削作業を行う。
【0015】
また、上部旋回体3は、旋回フレーム5上であって後述のカウンタウェイト20の前側に、原動機としてのエンジン11を有している。
図3に示すように、エンジン11は、エンジン室10内に配置されており、左右方向に延びる横置き状態で搭載されている。エンジン11には所要方向の気流を生成するファン装置12、及び、エンジン11からの排気ガスを外部に排出するマフラ13が近接して配置されている。また、上部旋回体3は、エンジン11の駆動に伴って排出される排気ガスを浄化するための排気浄化装置14(後処理装置)を有している。この排気浄化装置14は、尿素タンク51(後述)に貯留される尿素水溶液を用いて排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減する既知の尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)である。
【0016】
さらに、上部旋回体3は、エンジン11を後側及び上側から覆う原動機カバー17と、エンジン11を含む油圧ポンプ、熱交換装置等(いずれも図示せず)が収容されたエンジン室10を覆う外装カバー16と、を有している。外装カバー16は、エンジン室10を左側から覆う左側面カバー16Aと、エンジン室10を右側から覆う右側面カバー16Bと、原動機カバー17の上面板18を取り囲むように配置されエンジン室10を上側から覆う上面カバー16Cと、により構成されている。
【0017】
<カウンタウェイト>
上部旋回体3の旋回フレーム5の後部には、フロント装置4との重量バランスを取るカウンタウェイト20が設けられている。
図3に示すように、カウンタウェイト20は、平面視にて略円弧状の湾曲した形状の外表面(後面20Aの表面)を有しており、左右方向に延びる重量物として一体形成される鋳物からなる。
【0018】
図1及び
図3に示すように、カウンタウェイト20は、左ウェイト部21と、右ウェイト部22と、下ウェイト部23と、点検開口25と、を有している。左ウェイト部21は、カウンタウェイト20の左側に配置され、旋回フレーム5から上側に立ち上がっている。右ウェイト部22は、カウンタウェイト20の右側に配置され、旋回フレーム5から上側に立上がっている。下ウェイト部23は、カウンタウェイト20の下側に配置され、左ウェイト部21及び右ウェイト部22の下側を連結している。
【0019】
点検開口25は、左ウェイト部21、右ウェイト部22、及び下ウェイト部23によって囲まれた領域で形成される。すなわち、点検開口25は、カウンタウェイト20の左右方向の中央部に形成された矩形の開口であり、原動機カバー17によって開閉される。原動機カバー17を開位置に移動させたときには、カウンタウェイト20の点検開口25を通じて、エンジン11等のエンジン室10の内部の搭載機器に対する点検作業を行わせることができる。なお
図3に示すように、カウンタウェイト20は、上部旋回体3におけるエンジン室10の後方に配置され、その内表面(前面20Bの表面)がエンジン室10と対向するように設けられている。
【0020】
図3、
図4、及び
図5に示すように、右ウェイト部22と下ウェイト部23との境界付近に、カウンタウェイト20の前面20Bから後面20Aにかけて、収納凹部31、及び、取付凹部35が、この順序で配置されている。
【0021】
<収納凹部>
収納凹部31は、カウンタウェイト20の後部に設けられ、上部旋回体3の後側に向けて開口するように、カウンタウェイト20の外表面(後面20Aの表面)に形成される凹部である。
カウンタウェイト20内において、収納凹部31の前側には、連通孔151が形成されている。連通孔151は、
図3及び
図5に示すように、収納凹部31と、カウンタウェイト20の内表面(前面20Bの表面)とを連通する。言い換えれば、収納凹部31と、連通孔151とによって、カウンタウェイト20の後面20A側の外側端31A(後側の端部)から前面20B側の内側端31B(前側の端部)まで貫通している。収納凹部31及び連通孔151は、この例では、上部旋回体3の左右方向において、排気浄化装置14と同じ側である右側に配置されている。
また、収納凹部31は、外表面(カウンタウェイト20の後面20Aの表面)から内表面(カウンタウェイト20の前面20Bの表面)へ向かって縮径するテーパ状部31Cと、テーパ状部31Cの前側に配置され同径部31Dと、このテーパ状部31Cから上側に突出し非貫通の凹部形状を備えた嵌合部31Eと、を有している。本実施形態では、このような構造の収納凹部31に、カウンタウェイト20の前方に配置された機器に供給される液剤(この例では排気浄化装置14に供給される尿素水溶液)を貯留する尿素タンクユニット50が収納される。
【0022】
<取付凹部>
取付凹部35は、
図3、
図4、及び
図5に示すように、ブラケット38(保持部材)を取り付ける、略矩形状の外縁を有する。取付凹部35は、
図6及び
図7に示すように、収納凹部31の外側端31Aに形成され、4つのボルト孔36を有している。
【0023】
<ブラケット>
通常時、収納凹部31は、
図4に示すように、取付凹部35に嵌まり合うようにブラケット38が配置されることで覆われている。ブラケット38は、例えば金属製の平板状プレートであり、後述する注液口53及びキャップ54を貫通させるために丸穴状に切り欠かれた被貫通部39を有している。ブラケット38は、
図7に示すように、四隅にボルト孔41を有し、取付凹部35に対してボルト42(締結具)により着脱可能に取り付けられている。
【0024】
<尿素タンクユニット>
尿素タンクユニット50は、
図3及び
図5に示すように、収納凹部31の内部に取り出し可能に収納され、排気浄化装置14へと導かれる尿素水溶液(液剤)を貯留する尿素タンク51(液剤タンク)と、排気浄化装置14へつながる導液ホース55と、を有している。
【0025】
<尿素タンク>
尿素タンク51は、
図5及び
図8に示すように、注液側端面51Aから吐出側端面51Bにかけて縮径するテーパ状の形状を有する、例えば樹脂製のタンクである。尿素タンク51は、収納凹部31の内部に収納された際に収納凹部31のテーパ状部31Cに接するような、テーパ状の形状を有している。このとき、ブラケット38は、
図5に示すように、収納凹部31に収納された尿素タンク51を、上部旋回体3の外側から収納凹部31に押し付けるように尿素タンク51に当接し、収納凹部31内に尿素タンク51を保持する。
詳細には、尿素タンク51の注液側端面51Aに、収納凹部31内に収容された状態で上部旋回体3の後側に位置する平坦面59、および、平坦面59に隣接して、ブラケット38と当接するための凸部52、が備えられている。尿素タンク51は、収納凹部31の内部に収納された状態で、注液側端面51Aの凸部52がブラケット38に当接し、外周面51Cが収納凹部31に備えられたテーパ状部31Cの内周面と当接することで、収納凹部31の内部に確実に保持される。言い換えれば、ブラケット38とカウンタウェイト20とで、尿素タンク51を挟み込むようにして保持することができる。
【0026】
また、尿素タンク51は、注液側端面51A側の上側に、尿素水溶液を尿素タンク51内に注入するための注液口53を有している。注液口53は、端部53Aが注液側端面51Aよりも突出するように(収納凹部31への収納時において後側に位置するように)構成されており、尿素タンク51がブラケット38に当接して収納凹部31内に保持された状態で端部53Aがカウンタウェイト20外に露出して配置されている。注液口53は、収納凹部31の嵌合部31Eに嵌合することにより、収納凹部31に対する尿素タンク51の回り止めとしても機能する。注液口53は、通常時、着脱可能なキャップ54で閉じられており、注液時においてこのキャップ54が取り外されることにより尿素水溶液が注液される。
【0027】
上記構成の尿素タンク51は、収納凹部31の外側端31A(後側の開口)から差し入れられ、注液側端面51Aが収納凹部31の外側端31A側に位置し、吐出側端面51Bが収納凹部31の内側端31B側(前側の開口側)に位置するように収納凹部31に収納される。収納凹部31に収納された場合の尿素タンク51の後面(詳細には、凸部52を含む注液側端面51A及び注液口53の端部53A)は、
図3に示すように、前述したカウンタウェイト20の外表面(後面20Aの表面)に沿って形成されている。これにより、尿素タンク51や注液口53の後端が、カウンタウェイト20の後面20Aから突出して周囲と干渉することを防止する。
【0028】
<導液ホース>
導液ホース55は、尿素タンク51の吐出側端面51Bから尿素タンク51内に挿入されて、尿素水溶液を排気浄化装置14に導く。導液ホース55は、
図3に示すように、ポンプユニット15に接続されており、尿素水溶液は所要のタイミングでポンプユニット15により吐出される。
【0029】
このとき、カウンタウェイト20には、収納凹部31内に導液ホース55を固定するホース固定ブラケット26(ホース固定具)が設けられている。尿素タンクユニット50の収納凹部31の内部への収納状態においては、尿素タンク51の吐出側端面51B(奥部)が、ホース固定ブラケット26に安定的に固定された導液ホース55に接続される。
【0030】
<実施形態の効果>
以上のように構成した本実施形態においては、カウンタウェイト20の内部には、カウンタウェイト20の外表面(後面20Aの表面)に収納凹部31が設けられる。この収納凹部31の内部に、尿素水溶液を貯留した尿素タンク51が収納される。そして、ブラケット38が、上部旋回体3の外側から収納凹部31に押し付けるように尿素タンク51に当接し、収納凹部31内に尿素タンク51を保持する。注液時には、ブラケット38や尿素タンク51を取り外すことなく、キャップ54のみを取り外すことで簡単に補充することができる。
【0031】
このように、収納凹部31内に収納した尿素タンク51をブラケット38が抑え込む構造とすることにより、メンテナンス時にはブラケット38を外すことで尿素タンク51を収納凹部31から簡単に取り出すことができる。また、メンテナンス後には尿素タンク51を収納凹部31に入れてブラケット38で抑えれば足りる。したがって、本実施形態によれば、カウンタウェイト20内に配置される尿素タンク51のメンテナンス性を向上できる。
具体的には、例えば通常の尿素タンクの収納構造では、外装カバーを外したうえで、さらに、タンクを固定しているバンド(又はブラケット等)などを解除する必要がある。あるいは、タンク自体を露出させた状態でバンド(又はブラケット等)で固定することも考えられるが、メンテナンスしやすい外表面に配置すると、ぶつけやすく、損傷の恐れがある。
これに対して、本実施形態によれば、外装カバーに相当するブラケット38を外すだけで、尿素タンク51の着脱を行うことができる。さらに、尿素タンク51の保護を図ることもできる。
【0032】
また、尿素タンク51を鋳物からなる収納凹部31内に配置することにより、例えば尿素タンク51が樹脂からなるものであったとしても、エンジン11等の発熱部からの熱による尿素水溶液への悪影響を、カウンタウェイト20自体が断熱材となって抑制できる。さらに、尿素タンク51をカウンタウェイト20の内部に配置することにより、通常使用されない空間を有効活用でき、尿素タンク51を配置するための別途のスペースを設けることも省略できる。
【0033】
また、本実施形態では特に、収納凹部31は、カウンタウェイト20の後部に設けられ上部旋回体3の後側に向けて開口しており、尿素タンク51を収納凹部31の外側端31Aから挿し入れる構造である。これにより、尿素タンク51を上記のように上部旋回体3の最後部(又はその近傍)に配置可能となり、エンジン11等の発熱部からの距離を遠くできるので、熱による尿素水溶液への悪影響を防止することができる。
【0034】
また、本実施形態では特に、カウンタウェイト20の後部において、上部旋回体3の左右方向に対して、排気浄化装置14と同じ側である右側に収納凹部31を設けている。これにより、排気浄化装置14と尿素タンク51との距離を近くでき、エンジン室10内に配策されるホース長さを短くすることができ、ホース内にある尿素水がエンジン室内で受ける熱影響を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では特に、収納凹部31がテーパ状部31Cを備え、尿素タンク51をテーパ状部31Cの大径側から出し入れすることにより、メンテナンス時の尿素タンク51の取り出し、及びメンテナンス後の尿素タンク51の取り付けを円滑かつ容易に行うことができる。また、カウンタウェイト20とブラケット38とで尿素タンク51を挟み込んでいる状態では、テーパ状部31Cと尿素タンク51とが面で当接するため、安定して保持することができる。特に、ブラケット38による押し込み方向に対して角度をもって、上下方向、左右方向ともに当接するため、ブラケット38による押し込み方向である略前後方向だけでなく、上下方向及び左右方向ともに同時に抑えることができる。すなわち、油圧ショベル1が作業することによって強い振動が生じたときにその振動の影響で尿素タンク51が動いて破損することを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態では特に、尿素タンク51は注液口53を有しており、ブラケット38が、注液口53を貫通させて露出させる被貫通部39を有している。これにより、尿素タンク51がブラケット38で保持されつつ収納凹部31内に保持されている状態で、注液口53から尿素タンク51内へと尿素水溶液を補充することができる。
また、尿素タンク51は、注液口53が収納凹部31の嵌合部31Eに嵌合するようになっている。これにより、例えば尿素タンク51が単なる円筒形状や逆円錐形状等である場合のように尿素タンク51が収納凹部31内で回り得ることはなくなり、嵌合部31Eがいわゆる回り止めとして機能することができる。
【0037】
また、本実施形態では特に、上述したように、収納凹部31に収納された場合の尿素タンク51の後面がカウンタウェイト20の後面20Aの表面に沿って形成されている。これにより、それらの後端がカウンタウェイト20の後面20Aから突出して周囲と干渉することを防止できる。
【0038】
また、本実施形態では特に、収納凹部31に収納された尿素タンク51が、収納凹部31内でホース固定ブラケット26により固定された導液ホース55に接続されるので、尿素タンク51内の尿素水溶液を確実に排気浄化装置14へ導き、エンジン11の排気ガスの浄化を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態では特に、カウンタウェイト20が取付凹部35を備えることにより、尿素タンク51を収納凹部31に収納しブラケット38を当接させて保持した状態で、ボルト42によりブラケット38を取付凹部35に取り付けることができる。その際、ブラケット38は取付凹部35に入り込んで配置されることにより、ブラケット38がカウンタウェイト20の後面20Aから突出し周囲に干渉することが防止される。また、ボルト42を緩めるだけで簡単にブラケット38を取り外し、収納凹部31内の尿素タンク51を取り出すことができる。
【0040】
また、本実施形態では特に、尿素タンク51は、樹脂製であり、かつ、ブラケット38と当接するための凸部52を有する。
尿素タンク51は、内部の尿素水の凍結による膨張等に伴って、タンク自体が膨張変形する恐れがある。これに対して、本実施形態では、尿素タンク51が凸部52を有することにより、上記のように尿素タンク51が膨張変形したとしても、平坦面59とブラケット38との間には、ブラケット38により尿素タンク51が収納凹部31内に保持された状態で隙間が形成される。これにより、尿素タンク51の膨張変形を許容しつつ、タンク形状を保持することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0042】
(1)尿素タンクの注液側端面を平坦面とする場合
図9は、本変形例の油圧ショベル1における、ブラケット周辺を表す部分拡大斜視図であり、上記
図4に相当する図である。
図10は、
図9中のX-X断面による沿う鉛直断面図であり、上記
図5に相当する図である。これら
図9及び
図10に示すように、本変形例では、上記実施形態と異なり尿素タンク51の注液側端面51Aが凸部52を有さない平坦面となっている。また、注液側端面51Aと当接するように、ブラケット38の前側に凹み38Aが設けられている。
【0043】
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0044】
(2)その他
上記においては、液剤タンクとして尿素タンクを例にとって説明したが、これにに限られない。例えば、液剤タンクとして、ウォッシャ液のタンク、 エンジン等の原動機の冷却水タンク等に本発明を適用してもよい。これらの場合も上記同様の効果を得る。
【0045】
<解決しようとする課題や発明の効果について>
発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上記した内容に限定されるものではない。すなわち、本発明によって、上述されていない課題を解決したり、上述されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0046】
<形状、数値、構造、時系列について>
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0047】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0048】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント装置
5 旋回フレーム
10 エンジン室
11 エンジン
14 排気浄化装置
20 カウンタウェイト
20A 後面(外表面)
20B 前面(内表面)
26 ホース固定ブラケット(ホース固定具)
31 収納凹部
31A 外側端
31B 内側端
31E 嵌合部
35 取付凹部
38 ブラケット(保持部材)
39 被貫通部
42 ボルト(締結具)
51 尿素タンク(液剤タンク)
51A 注液側端面(後面)
52 凸部(後面)
53 注液口
55 導液ホース
59 平坦面
151 連通孔