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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015146
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】米粉の製造方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20250123BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118331
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】宮地 誠
(72)【発明者】
【氏名】大内 公介
(72)【発明者】
【氏名】古谷 健太
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE07
4B023LG01
4B023LG03
4B023LP02
4B023LP06
4B023LP07
4B023LP13
4B023LP14
4B023LP20
4B023LT01
4B023LT53
4B023LT60
(57)【要約】
【課題】排水処理設備が不要で、かつ、原料米全体に水分を保持する保水量を増大させて、原料米全体に水分を浸透させるテンパリング時間を短くすることのできる米粉の製造方法及びその装置を提供する。
【解決手段】原料米を粗割する粗割工程と、粗割工程により粗割された原料米の水の浸透し難い層に微細な亀裂を生じさせる亀裂生成工程と、粗割工程及び前記亀裂生成工程により粗割され、かつ、亀裂を生成した原料米に水分を添加する加水工程と、加水工程により水分を添加された原料米の水分を浸透させて水分率の均一化を図るテンパリング工程と、テンパリング工程により水分率が均一化された原料米を微粉砕する微粉砕工程と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料米を粗割する粗割工程と、
前記粗割工程により粗割された原料米の水の浸透し難い層に微細な亀裂を生じさせる亀裂生成工程と、
前記粗割工程及び前記亀裂生成工程により粗割され、かつ、亀裂を生成した原料米に水分を添加する加水工程と、
前記加水工程により水分を添加された原料米の水分を浸透させて水分率の均一化を図るテンパリング工程と、
前記テンパリング工程により水分率が均一化された原料米を微粉砕する微粉砕工程と、を備えたことを特徴とする米粉の製造方法。
【請求項2】
前記粗割工程と前記亀裂生成工程との間に、粗割された原料米の篩い分けを行う篩分け工程を設け、前記篩分け工程にて篩い分けされた粗割れ粒は前記亀裂生成工程に搬入し、前記篩分け工程にて篩い分けされた微細粒は前記加水工程に搬入して、前記篩分け工程にて篩い分けされた原料米の粒度に応じて別々の処理を行うことを特徴とする請求項1記載の米粉の製造方法。
【請求項3】
原料米を粗割する粗割装置と、
前記粗割装置によって粗割された原料米の表層に微細な亀裂を生じさせる加熱装置と、
前記粗割装置によって粗割され、かつ、前記加熱装置によって表面に微細な亀裂を生成した原料米に水分を添加させる加水装置と、
前記加水装置によって加水した原料米の水分を均一化するテンパリング装置と、
前記テンパリング装置によってテンパリングされた原料米を微粉砕する気流粉砕装置と、を備えたことを特徴とする米粉の製造装置。
【請求項4】
前記粗割装置と前記加熱装置との間に、前記粗割装置によって粗割れされた原料米を、粗割れ粒と微細粒とに篩分けするシフタを設けてなる請求項3記載の米粉の製造装置。
【請求項5】
前記粗割装置が、一対の粉砕ロールを対向させるとともに、互いに異なる回転方向で、かつ、異なる周速度で回転されるロール機であって、一方の粉砕ロールのロール周面は、回転軸の軸方向と平行に複数の条溝からなるロール目を形成し、他方の粉砕ロールのロール周面は、ロールの円周方向と平行に複数の条溝からなるロール目を形成して、特殊なロールの組み合わせとしてある請求項3又は4記載の米粉の製造装置。
【請求項6】
前記加熱装置が、多孔壁により形成された穀物流下路と、穀物流下路上部の投入口と、穀物流下路下部の排出口と、穀物流下路を横断するように加熱空気を送給する熱風供給部と、穀物流下路を通過した熱風を機外に排出する排風部と、から構成されてなる請求項3又は4に記載の米粉の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉の製造方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米粉の製造方法、及び米粉製造システムとして以下のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、玄米又は白米の原料米を微粉砕して米粉を製造する米粉製造システムが開示されている。この米粉製造システムXは、前記原料米を水洗浄する洗浄装置Rと、前記洗浄した原料米の水分を調節する水分調節装置Sと、前記水分調節された原料米を粗砕して、粗砕米を生成する粗砕装置Tと、前記粗砕米に水を加える加水装置Uと、前記粗砕米に水を浸透させて水分を調節するテンパリング装置Vと、前記水分率を調整した粗砕米を微粉砕する微粉砕装置Wとを含むことを特徴とするものである(図7参照)。
【0004】
玄米は外皮(糠=果皮、種皮及び糊粉層)で被覆されているため(図8の(a)参照)、玄米を水に浸漬し、又は玄米に水を加えても、短時間で玄米の芯まで水分が浸透せず、水分を浸透させるには、長時間(15~16時間)を要していた。これを解決すべく特許文献1では、粗砕装置Tにより玄米を粗砕(2~4分割)し(図8の(b)参照)、粗砕玄米に外皮(糠)で被覆されない破断面を形成することとした(粗砕工程)。そして、加水装置Uにより粗砕玄米の破断面に水を加えると(図8の(c)参照)、粗砕玄米の破断面等に水が付着することとなる(加水工程)。さらに、加水された粗砕玄米は、破断面から水分が浸透され、この状態で熟成して水分を調整することで(図8の(d)参照)、粗砕玄米を所望の水分率(30%前後)に到達させる(テンパリング工程)。
【0005】
以上のように、玄米を粗砕玄米とすれば、短時間で飽和水分率(30%前後)にでき、効率良く米粉(玄米粉)を製造できる。特に、玄米に水分を浸透させる湿式粉砕を採用して、水分率30%前後の粗砕玄米を微粉砕しているので、澱粉層に与える損傷も少ない。玄米を粗砕するので、澱粉層に与える損傷を少なくできる。
【0006】
第2に、玄米を粗砕する前に、水洗浄するので、玄米に付着する土壌菌、土壌等の汚染物を除去でき、衛生的である(洗浄工程)。
第3に、玄米の水洗浄後、玄米に付着する水分を調節するので、粗砕工程における粗砕玄米の粉化、糊状化を抑制できる(水分調整工程、粗砕工程)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-50378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の技術にあっては、粗砕装置Tによって原料米を粗砕する前に、洗浄装置Rによって原料米を水洗浄しているため、洗浄のための水を多く使用しなければならない。そして、この水洗浄後の排水の排水処理設備が必要となり、製造コスト高となるとともに、排水処理に伴うエネルギーコストも増大するといった問題があった。
【0009】
また、上記特許文献1にあっては、粗砕玄米の破断面等から水分を浸透させることができるが、破断面ではない玄米の表面は、水分が浸透し難い外皮(糠)で覆われていることから、原料となる玄米の外皮(糠)近傍では水分を保持する保水量が十分ではなく、玄米の粒全体で見たときは水分量の分布にムラがあり、原料米全体に水分を浸透(行き渡らせる)させるためのテンパリング装置Vによるテンパリング時間に長くかかる傾向があった。
【0010】
本発明は上記問題点にかんがみ、排水処理設備が不要で、かつ、原料米全体に水分を保持する保水量を増大させて、原料米全体に水分を浸透させるテンパリング時間を短くすることのできる米粉の製造方法及びその装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では、原料米(玄米、精白米、無洗米など)を粗割する粗割工程と、前記粗割工程により粗割された原料米の水の浸透し難い層に微細な亀裂を生じさせる亀裂生成工程と、前記粗割工程及び前記亀裂生成工程により粗割され、かつ、亀裂を生成した原料米に水分を添加する加水工程と、前記加水工程により水分を添加された原料米の水分を浸透させて水分率の均一化を図るテンパリング工程と、前記テンパリング工程により水分率が均一化された原料米を微粉砕する微粉砕工程と、を備えたことを特徴とする米粉の製造方法とした。
【0012】
請求項2記載の発明では、前記粗割工程と前記亀裂生成工程との間に、粗割された原料米の篩い分けを行う篩分け工程を設け、前記篩分け工程にて篩い分けされた粗割れ粒は前記亀裂生成工程に搬入し、前記篩分け工程にて篩い分けされた微細粒は前記加水工程に搬入して、前記篩分け工程にて篩い分けされた原料米の粒度に応じて別々の処理を行うことを特徴とする請求項1記載の米粉の製造方法とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原料米を粗割する粗割工程と、前記粗割工程により粗割された原料米の水の浸透し難い層に微細な亀裂を生じさせる亀裂生成工程と、前記粗割工程及び前記亀裂生成工程により粗割され、かつ、亀裂を生成した原料米に水分を添加する加水工程と、前記加水工程により水分を添加された原料米の水分を浸透させて水分率の均一化を図るテンパリング工程と、前記テンパリング工程により水分率が均一化された原料米を微粉砕する微粉砕工程と、を備えたので、粗割工程では、原料となる原料米が2~4分割に粗割され、次いで、亀裂生成工程では、粗割された原料米の表層に存在する水分の浸透し難い部分に微細な亀裂を多数生じさせ、さらに、加水工程では、粗割され、かつ、表面に微細な亀裂を多数生成した原料米に水分が添加されるようになり、水分は、粗割工程で生じた原料米の破断面のほか、亀裂生成工程で生じた微細な多数の亀裂から水分が染み込んで吸収される。すなわち、破断面及び亀裂の2つの水分の通り道によって中心部のデンプン層にまで、いち早く吸水されることになる。
【0014】
また、亀裂生成工程により生じた亀裂により、水分の通り道が形成されているので、原料米全体に水分を保持する保水量を増大させることができる。このため、原料米全体に水分を浸透させるテンパリング時間を従来よりも短くすることができる。さらに、原料米のデンプン層への水分吸収が十分に行われているから、最初の水洗浄工程は必ずしも設ける必要はなく、排水処理設備を設置する必要がない。
【0015】
また、請求項2のように、前記粗割工程と前記亀裂生成工程との間に、粗割された原料米の篩い分けを行う篩分け工程を設け、前記篩分け工程にて篩い分けされた粗割れ粒は、前記亀裂生成工程に搬入し、前記篩分け工程にて篩い分けされた微細粒は、前記加水工程に搬入して、前記篩分け工程にて篩い分けされた原料米の粒度に応じて別々の処理を行うこととすれば、亀裂生成工程で使用する乾燥機の収容量や能力を小さく設計することが可能であり、亀裂生成工程で使用する熱量、エネルギー量も削減することができる。このような篩分け工程を設けることにより、粒度に応じた別々の処理を行うことで、イニシャルコスト及びランニングコストを削減することができるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る米粉の製造方法を概略説明する工程図である。
図2】本発明の別の実施形態に係る米粉の製造方法を概略説明する工程図である。
図3図1図2に示す製造方法を実施するための製造装置を示す概略図である。
図4】一対の粉砕ロールの各ロールの周面形状を示す斜視図である。
図5】本発明の米粉製造方法の原料玄米の状態を示す概略模式図である。
図6】吸水特性を比較した図である。
図7】従来の米粉製造システムを示す概略図である。
図8】従来の米粉製造方法の原料玄米の状態を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明は、本質的な例示に過ぎない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る米粉の製造方法を概略説明する工程図であり、図2は、本発明の別の実施形態に係る米粉の製造方法を概略説明する工程図であり、図3は、図1図2を実施するための製造装置を示す概略図である。
図1に示すように本実施形態の米粉の製造方法は、玄米、精白米又は無洗米を原料米とし、これを微粉砕することで米粉を製造するものである。そして、本発明の米粉の製造方法は、ご飯を炊くときのような原料米の水洗工程や、浸漬工程は不要でありながら、デンプン層への水分吸収を十分に行った後、微粉砕する湿式粉砕方式を採用している。
【0019】
すなわち、本発明では、従来のように、水を入れた容器に原料米を投入して完全に漬けてしまう、いわゆる「どぶ漬け」による水洗工程や浸漬工程は採用していない。このため、水洗工程や浸漬工程にて生じる排水の排水処理設備が不要となって、原料米に加水する際にも使用水量を大幅に削減することができるものとなっている。
【0020】
図1において、まず、原料となる原料米(例えば、水分14%の玄米)を、粗割工程(図1のステップ1、図3の符号2)に供給する。粗割工程は、原料米を2~4分割に粗割して、粗割の原料米を生成する工程である。粗割工程で使用する粗割装置2は、例えば、図3に示すように、原料米の投入ホッパ21、揚穀機22、供給タンク23及び粗割機24を含んで構成されている。
【0021】
図3に示すように、粗割機24は、製粉用ロール機のような一対の粉砕ロール2a,2bにより形成されている。一対の粉砕ロール2a,2bは、それぞれのロールを対向させるとともに、互いに異なる回転方向(原料米を噛み込んで粗割ができるよう互いが内方向に回転する回転方向)で、かつ、異なる周速度で回転される構成となっている。粉砕ロール2a,2bは、原料米となる玄米を2~4分割に粗割するため、図4に示すように、ロール目のあるブレーキロールとなっている。すなわち、一方の粉砕ロール2aのロール周面は、回転軸の軸方向と平行に複数の条溝からなるロール目を形成し、他方の粉砕ロール2bのロール周面は、ロールの円周方向(回転方向)と平行に複数の条溝からなるロール目を形成した、特殊なロールの組み合わせとなっている。これにより、一対の粉砕ロール2a,2bのロール間隙に噛み込まれた原料米が細かく砕かれる(微粉砕される)おそれが少なくなり、原料米が大雑把に2~4分割にされる割合が高くなる。図4に示すように、粉砕ロール2a,2bのロール目の特殊な組み合わせは、原料米を大雑把に粗割する際には好適となる。
【0022】
粗割機24(図3参照)下方には、圧送用リングブロワ25が設けられる。粗割された原料米は、この圧送用リングブロワ25により、空気輸送管26を介して上方に搬送される。上方に搬送された原料米は、その後、サイクロン27に捕集されて、そのまま待機される。
【0023】
サイクロン27下方には、必要に応じて、粗割された原料米の粒を篩分けするシフタ28(図3参照)が設置される。このシフタ28は、粉状粒が極端に少ない場合には、特に、設置する必要はない。
【0024】
図1において、粗割された原料米は、粗割工程の次工程の、亀裂生成工程(図1のステップ2、図3の符号3)に至る。亀裂生成工程は、2~4分割に粗割された原料米において、当該原料米の表層に存在する水分の浸透し難い部分に微細な亀裂を生じさせる工程である。この微細な亀裂は、原料米の中心部のデンプン層に至る水分の通り道(導管)となる。
【0025】
亀裂生成工程では、粗割された原料米に熱風を送給するか又はマイクロ波を照射する方法で加熱する加熱装置3を使用するとよい。加熱装置3としては、例えば、図3に示すように、揚穀機31、供給タンク32及び乾燥機33を含んで構成されている。
【0026】
図3に示すように、乾燥機33は、多孔壁3aにより形成された穀物流下路34と、穀物流下路34上部の投入口35と、穀物流下路34下部の排出口36と、穀物流下路34を横断するように40~60℃に加熱された空気を送給する熱風供給部37と、穀物流下路34を通過した熱風を機外に排出する排風部38と、から構成され、一回通過式の穀物乾燥機のような形態となっている。
【0027】
乾燥機33では、粗割された原料米に40~60℃に加熱された空気を5~10分間送給して熱風で乾燥する。これにより、原料米の表面には、多数の微細な亀裂を形成するようになる。このとき、乾燥後の原料米の水分は10~13%程度となっている。また、乾燥機33ではなく、マイクロ波を使用した加熱装置3であった場合、原料米にマイクロ波を1分間照射すると、原料米を100℃に急激に加熱することが可能となり、原料米の表面には、多数の微細な亀裂を形成するようになる。このときも、米粒全体の水分は10~13%程度となっている。原料米の表面には、亀甲状又は魚の鱗(うろこ)状の微細な亀裂が生じ、この亀裂が、原料米の中心部のデンプン層に至る水分の通り道(導管)となる。
【0028】
図1において、亀裂が生成された原料米は、亀裂生成工程の次工程の、加水工程(図1のステップ3、図3の符号4)に至る。加水工程は、粗割され、かつ、表面に微細な亀裂を生成した原料米に水分を添加させる工程である。加水工程では、粗割工程で生じた破断面、及び亀裂生成工程で生じた微細な亀裂を介して水分が供給され、中心部のデンプン層に吸水されることになる。
【0029】
加水工程で使用する加水装置4は、例えば、図3に示すように、揚穀機41、加水ドラム42、加水ドラム42内に回転可能に配置した攪拌翼43、加水ドラム42内に配置した加水ノズル44、加水ノズル44からパイプ45を介して連絡した水タンク46などを含んで構成されている。パイプ45の途中には、水の流量を制御するためにバルブ47が設けられている。
【0030】
加水量としては原料米全体の水分が20~30%となるように制御される。具体的には、加水ドラム42内の加水ノズル44による、噴霧によって原料米表面に微細な水滴を付着させるようにして、原料米への表面付着水によって水分を増加させる方法を採用することが望ましい。加水ノズル44による加水、および攪拌翼43による攪拌を、10~15分程度行うと、原料米全体の水分を20~30%に到達するように制御することができる。このような加水工程によって、破断面と、原料米表面の微細な亀裂とを通して中心部のデンプン層にまで水を吸水させることができる。また、ゆっくりとした緩慢な加水であるため、原料米表層部と中心部との間の水分ムラが生じ難いといった利点がある。
【0031】
図1において、加水された原料米は、加水工程の次工程の、テンパリング工程(図1のステップ4、図3の符号5)に至る。テンパリング工程は、加水した原料米の水分を均一化する。テンパリングは、「寝かし」とも呼ばれる。これにより、原料米の中心まで水を浸透させて水分の均一化を図るものである。水分の均一化が図れないと、最終工程の微粉砕工程での米粉の品質が悪くなり、テンパリング工程の有無で米粉の品質を左右することになる。
【0032】
テンパリング工程で使用するテンパリング装置5は、例えば、図3に示すように、コンベア筒51、コンベア筒51内に回転可能に配置したスクリュー52などを含んで構成されている。テンパリング装置5は、スクリュー52を回転させ、加水された原料米をコンベア筒51の供給口53から排出口54まで移送させる。これにより、加水された原料米は、原料米表面に付着した付着水が、微細な亀裂を通して中心部のデンプン層にまで水を吸水させ、原料米相互に水分ムラのない20~30%、好ましくは、28%前後に調質されて排出口54から排出される。
【0033】
図1において、テンパリングされた原料米は、最終工程の、微粉砕工程(図1のステップ5、図3の符号6)に至る。微粉砕工程は、加水・テンパリングの各工程を経た原料米を微粉砕する。このとき、デンプン損傷を最小限に抑えるとともに、微細な米粉を作るために、粉砕時の衝撃を抑えた気流粉砕装置を使用するのが好ましい。微粉砕工程で使用する気流粉砕装置6は、例えば、図3に示すように、粉砕室61内に固定状に配置された固定ピン62と、粉砕室61内に回転可能に配置された回転ピン62などを含んで構成されている。原料米は、気流粉砕装置6の粉砕室61に投入され、高速回転された回転ピンにより微粉砕される。このとき、粉砕室61には気流が発生し、気流によって繰り返し回転ピンによる衝撃を受けて微粉砕されて米粉が生成される。微粉砕された米粉は、回収した後、所定水分まで乾燥するとともに、結露が生じないよう常温に戻して、最終的な製品として市場等に出荷される。
【0034】
次に、図1に示す米粉の製造方法の作用について図5図6を用いて説明する。図1のステップ1の粗割工程では、原料となる原料米(例えば、水分14%の玄米、図5の(a))が2~4分割に粗割される(図5の(b))。
次いで、図1のステップ2の亀裂生成工程では、粗割された原料米の表層に存在する水分の浸透し難い部分に微細な亀裂Kを多数生じさせる(図5の(c))。この微細な多数の亀裂Kが原料米の中心部のデンプン層に至る水分の通り道(導管)となる。
さらに、図1のステップ3の加水工程では、粗割され、かつ、表面に微細な亀裂を多数生成した原料米に水分が添加される(図5の(d))。このとき、水分は、粗割工程で生じた原料米の破断面のほか、亀裂生成工程で生じた微細な多数の亀裂Kから水分が染み込んで吸収される。破断面及び亀裂Kの2つの水分の通り道によって中心部のデンプン層にいち早く吸水されることになる。
【0035】
図6は原料米の処理の違いによる吸水特性(吸水速度)を確認した図である。図6に示すように、原料米を粗割した吸水特性(破線=従来技術)に比べて、原料米を粗割した後に亀裂生成した吸水特性(実線=本発明)のほうが、吸水速度が速く、飽和水分に至る時間が短いことが分かった。
【0036】
そして、図1のステップ4のテンパリング工程では、原料米相互に水分ムラのない20~30%、好ましくは、28%前後に調質される。図1のステップ5の微粉砕工程では、原料米が微粉砕されて米粉が生成される。
【0037】
<別実施例>
図2に示すように、本発明の別の実施形態に係る米粉の製造方法は、基本的には、図1の米粉の製造方法と同じであるが、粗割工程(ステップ1)と亀裂生成工程(ステップ2)との間に、篩分け工程(ステップA)を設けた点が異なる点である。
図2の篩分け工程(ステップA)では、粗割工程で粗割された原料米の粒の篩い分けが行われる。前述したように図4に示すような粗割機24であれば、原料米が細かく砕かれる(微粉砕される)おそれが少なくなり、原料米を大雑把に粗割する際に好適であるが、中には微粉砕される粒が生じることもある。このような篩分け工程を設けることにより、粗割工程の次の工程において、粒度に応じた別々の処理を行うことができる。
【0038】
図2に示す篩分け工程(ステップA)では、図3の符号28で示すシフタ28を使用するとよい。シフタ28は、例えば、図3に示すように、筐体28a内に篩網28bを張設して構成されている。篩網28bの目幅としては、例えば、目開きが850マイクロメータのものを採用することができる。そして、筐体28aには、図3に示すように、篩網28bをオーバーした粗割れ粒を移送する経路28cと、篩網28bをスルーした微細粒を移送する経路28dとが設けられる。
【0039】
そして、シフタ28の篩網28bをオーバーした粗割れ粒は、経路28c、揚穀機31を介して亀裂生成工程の乾燥機33へ供給される一方、シフタ28の篩網28bをスルーした微細粒は、経路28dを介して加水工程の加水ドラム42に供給される。つまり、本発明の別の実施形態では、粗割工程で粗割された原料米の全てを亀裂生成工程へ搬入することを行わない。粗割した際に生じる一部微細粒は亀裂生成工程を省略して加水工程へ直接搬入される。これにより、亀裂生成工程の乾燥機33の収容量や能力を小さく設計することが可能であり、乾燥機33に使用する熱量、エネルギー量も削減することができる。このような篩分け工程を設けることにより、粒度に応じた別々の処理を行うことで、イニシャルコスト及びランニングコストを削減することができるメリットがある。
【0040】
以上のように本発明によれば、原料米を粗割する粗割工程と、粗割工程により粗割された原料米の水の浸透し難い層に微細な亀裂を生じさせる亀裂生成工程と、粗割工程及び前記亀裂生成工程により粗割され、かつ、亀裂を生成した原料米に水分を添加する加水工程と、加水工程により水分を添加された原料米の水分を浸透させて水分率の均一化を図るテンパリング工程と、テンパリング工程により水分率が均一化された原料米を微粉砕する微粉砕工程と、を備えた米粉の製造方法としたので、従来のように、水を入れた容器に原料米を投入して完全に漬けてしまう、いわゆる「どぶ漬け」による水洗工程や浸漬工程は採用していないため排水処理設備が不要となる。また、原料米の水の浸透し難い層に微細な亀裂を生じさせているから、原料米全体に水分を保持する保水量を増大させて、原料米全体に水分を浸透させるテンパリング時間を短くすることができる。
【0041】
また、粗割工程と亀裂生成工程との間に、粗割された原料米の篩い分けを行う篩分け工程を設け、篩分け工程にて篩い分けされた粗割れ粒は亀裂生成工程に搬入し、篩分け工程にて篩い分けされた微細粒は加水工程に搬入して、篩分け工程にて篩い分けされた原料米の粒度に応じて別々の処理を行っているから、亀裂生成工程におけるイニシャルコスト及びランニングコストを削減することができるメリットがある。
【0042】
また、粗割装置として、一対の粉砕ロールを対向させるとともに、互いに異なる回転方向で、かつ、異なる周速度で回転されるロール機であって、一方の粉砕ロールのロール周面は、回転軸の軸方向と平行に複数の条溝からなるロール目を形成し、他方の粉砕ロールのロール周面は、ロールの円周方向と平行に複数の条溝からなるロール目を形成して、特殊なロールの組み合わせとしてあるから、一対の粉砕ロールのロール間隙に噛み込まれた原料米が細かく砕かれる(微粉砕される)おそれが少なくなり、原料米が大雑把に2~4分割にされる割合が高くなる。
【0043】
さらに、加熱装置として、多孔壁により形成された穀物流下路と、穀物流下路上部の投入口と、穀物流下路下部の排出口と、穀物流下路を横断するように加熱空気を送給する熱風供給部と、穀物流下路を通過した熱風を機外に排出する排風部と、から構成されているから、原料米の全体の水分を10~13%程度に乾燥させることで、原料米の表面に、亀甲状又は魚の鱗(うろこ)状の微細な亀裂を生じさせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、本発明は、原料米(玄米、精白米、無洗米など)を微粉砕して得られる米粉の製造方法及びその装置に利用されるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 米粉の製造装置
2 粗割装置
3 加熱装置
4 加水装置
5 テンパリング装置
6 気流粉砕装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8