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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151473
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052919
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】金森 亮介
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA34
3L211DA12
3L211DA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デフロスタ流出口を開口する吹出モードにおいて、円滑に温風をデフロスタ流出口に導く車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両用空調装置は、ロータリ式のモードドア20に整流部50を備え、整流部は回転中心線Axに沿って形成される温風集合部と、温風集合部に開口する温風回収孔53hと、温風回収孔から流入した温風が通流する温風供給路と、温風供給路を通流した温風が流出する温風供給孔53dとを有する。整流部は、モードドアのドア流入開口に装着され、温風供給路は、温風回収孔から温風供給孔まで直線状に延びており、モードドアがデフロスタ流出口15からの空気の流出を許容する回転位置のとき、温風供給孔はデフロスタ流出口に臨む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内(CR)を温度調和する車両用空調装置であって、
内部空間(IS)とこの内部空間を通流した空気を吹き出す複数の流出口(15,16,17)とを有するハウジング(11)と、
前記内部空間(IS)に配置され空気を冷風として流出可能な冷却用熱交換器(12)と、
前記冷却用熱交換器(12)を流出した空気を温風として流出可能な加熱用熱交換器(13)と、
前記加熱用熱交換器(13)に流入する空気と前記加熱用熱交換器(13)を迂回する空気との割合を変更可能なミックスドア(14)と、
前記ハウジングに回転可能に支持されて前記複数の流出口(15,16,17)の開度を調節可能なロータリ式のモードドア(20)と、
前記加熱用熱交換器(13)を流出した温風の一部が内部を通流する整流部(50)と、
を備え、
前記ハウジング(11)は、前記冷却用熱交換器(12)を流出した冷風が通流する冷風領域(CP)と、前記加熱用熱交換器(13)を流出した温風が通流する温風領域(HP)と、冷風と温風とを混合可能な混合領域(MP)と、を有し、
前記モードドア(20)は、前記混合領域(MP)に配置されるとともに、回転中心線(Ax)に沿って延びる回転軸(33)と、前記回転軸(33)から前記回転中心線(Ax)に交差する方向に延びる扇状で一対のドア側面部(31)と、前記回転中心線(Ax)から離れて形成され前記一対のドア側面部(31)の径方向端辺を接続するドア周面部(32)と、前記一対のドア側面部(31)と前記ドア周面部(32)とで囲まれたドア内部空間(23)と、前記混合領域(MP)の空気を前記ドア内部空間(23)へ取り込むドア流入開口(21)と、前記ドア内部空間(23)から前記複数の流出口(15,16,17)に空気を流出するドア流出開口(22)と、を有し、
前記複数の流出口(15,16,17)は、前記車室内(CR)のフロントウインドウに空気を供給するためのデフロスタ流出口(15)と、前記車室内(CR)の上方空間に空気を供給するためのベント流出口(16)と、前記車室内(CR)の下方空間に空気を供給するためのフット流出口(17)と、を含み、
前記整流部(50)は、前記回転中心線(Ax)に沿って形成される温風集合部(51)と、当該温風集合部に開口する温風回収孔(53h,54h,55h)と、当該温風回収孔から流入した温風が通流する温風供給路(52)と、当該温風供給路(52)を通流した温風が流出する温風供給孔(53d、54d、55d)と、を有するとともに、前記モードドア(20)の前記ドア流入開口(21)に装着され、
前記温風供給路(52)は、前記温風回収孔(53h,54h,55h)から前記温風供給孔(53d,54d,55d)まで直線状に延びており、前記モードドア(20)が前記デフロスタ流出口(15)からの空気の流出を許容する回転位置のとき、前記温風供給孔(53d,54d,55d)が前記デフロスタ流出口(15)に臨むことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記温風領域(HP)から前記混合領域(MP)へ流入する温風の流れ方向(H2i)と前記温風供給路(52)の延びる方向(Ps)とがなす角(α)は鋭角であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
車両の車室内(CR)を温度調和する車両用空調装置であって、
内部空間(IS)とこの内部空間を通流した空気を吹き出す複数の流出口(15,16,17)とを有するハウジング(11)と、
前記内部空間(IS)に配置され空気を冷風として流出可能な冷却用熱交換器(12)と、
前記冷却用熱交換器(12)を流出した空気を温風として流出可能な加熱用熱交換器(13)と、
前記加熱用熱交換器(13)に流入する空気と前記加熱用熱交換器(13)を迂回する空気との割合を変更可能なミックスドア(14)と、
前記ハウジングに回転可能に支持されて前記複数の流出口(15,16,17)の開度を調節可能なロータリ式のモードドア(20)と、
前記加熱用熱交換器(13)を流出した温風の一部が内部を通流する整流部(50)と、
を備え、
前記ハウジング(11)は、前記冷却用熱交換器(12)を流出した冷風が通流する冷風領域(CP)と、前記加熱用熱交換器(13)を流出した温風が通流する温風領域(HP)と、冷風と温風とを混合可能な混合領域(MP)と、を有し、
前記モードドア(20)は、前記混合領域(MP)に配置されるとともに、回転中心線(Ax)に沿って延びる回転軸(33)と、前記回転軸(33)から前記回転中心線(Ax)に交差する方向に延びる扇状で一対のドア側面部(31)と、前記回転中心線(Ax)から離れて形成され前記一対のドア側面部(31)の径方向端辺を接続するドア周面部(32)と、前記一対のドア側面部(31)と前記ドア周面部(32)とで囲まれたドア内部空間(23)と、前記混合領域(MP)の空気を前記ドア内部空間(23)へ取り込むドア流入開口(21)と、前記ドア内部空間(23)から前記複数の流出口(15,16,17)に空気を流出するドア流出開口(22)と、を有し、
前記複数の流出口(15,16,17)は、前記車室内(CR)のフロントウインドウに空気を供給するためのデフロスタ流出口(15)と、前記車室内(CR)の上方空間に空気を供給するためのベント流出口(16)と、前記車室内(CR)の下方空間に空気を供給するためのフット流出口(17)と、を含み、
前記整流部(50)は、前記回転中心線(Ax)に沿って形成される温風集合部(51)と、当該温風集合部に開口する温風回収孔(53h,54h,55h)と、当該温風回収孔から流入した温風が通流する温風供給路(52)と、当該温風供給路(52)を通流した温風が流出する温風供給孔(53d、54d、55d)と、を有するとともに、前記モードドア(20)の前記ドア流入開口(21)に装着され、
前記温風供給路(52)は、前記温風回収孔(53h,54h,55h)から前記温風供給孔(53d、54d、55d)まで湾曲しているとともに、前記モードドア(20)が前記デフロスタ流出口(15)からの空気の流出を許容する回転位置のとき、前記温風回収孔(53h,54h,55h)と連続する前記温風供給路の上流部が前記温風領域(HP)を向き、前記温風供給孔(53d、54d、55d)が前記デフロスタ流出口(15)に臨むことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
前記温風供給路(52)は、中央温風供給路(54)と、前記回転中心線(Ax)に沿った方向において前記中央温風供給路(54)よりも一方側に設けられた第1側方温風供給路(53)と、前記回転中心線(Ax)に沿った方向において前記中央温風供給路(54)よりも他方側に設けられた第2側方温風供給路(55)と、を有し、
前記中央温風供給路(54)は、前記第1側方温風供給路(53)及び前記第2側方温風供給路(55)よりも断面積が大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記温風集合部(51)は、前記温風領域(HP)から前記混合領域(MP)へ流入する温風の流れ方向(H2i)に対して凹状に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記温風供給路(52)は、中央温風供給路(54)と、前記回転中心線(Ax)に沿った方向において前記中央温風供給路(54)よりも一方側に設けられた第1側方温風供給路(253)と、前記回転中心線(Ax)に沿った方向において前記中央温風供給路(54)よりも他方側に設けられた第2側方温風供給路(255)と、を含み、
前記温風回収孔(53h,54h,55h)は、前記中央温風供給路(54)へ温風が流入する中央温風回収孔(54h)と、前記第1側方温風供給路(253)へ温風が流入する第1側方温風回収孔(53h)と、前記第2側方温風供給路(255)へ温風が流入する第2側方温風回収孔(55h)と、を含み、
前記温風供給孔(253d,54d,255d)は、前記中央温風供給路(54)から温風が流出する中央温風供給孔(54d)と、前記第1側方温風供給路(253)から温風が流出する第1側方温風供給孔(253d)と、前記第2側方温風供給路(255)から温風が流出する第2側方温風供給孔(255d)と、を含み、
前記第1側方温風供給孔(253d)は、前記第1側方温風回収孔(53h)よりも前記回転中心線(Ax)に沿った方向における一方側に設けられ、
前記第2側方温風供給孔(255d)は、前記第2側方温風回収孔(55h)よりも前記回転中心線(Ax)に沿った方向における他方側に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に空気を送風可能な車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両は、車室内の温度を適切に調節するために車両用空調装置を備えている。車両用空調装置は、車室外または車室内の空気を吸い込み下流側に向けて送風する送風装置と、送風装置から送風された空気の温度を調節し車室内へ吹出す温度調和装置と、を有する。温度調和装置は、内部空間に空気が通過するハウジングと、送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器と、送風空気を加熱可能な加熱用熱交換器と、加熱用熱交換器を通過する空気と加熱用熱交換器を迂回する空気との割合を調節するミックスドアと、を有する。
【0003】
ハウジングは、乗員の上半身に向けて空気を吹出すベント流出口と、乗員の足元に向けて空気を吹出すフット流出口と、フロントウインドウに向けて空気を吹出すデフロスタ流出口と、を有する。これらの流出口から吹出される空気の量を調節するためにモードドアが備えられている。モードドアは、回転軸を中心に回転し、ドア閉塞面に設けられた連通口がハウジングの各流出口に連通することによって、空気の吹出を許容するロータリドアが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されるロータリドアは、ドア閉塞面とドア側壁部とで囲まれた内部空間に、回転軸の軸方向を複数に仕切る仕切壁と、仕切壁によって仕切られた内部空間の一部に設けられたバッフル部及びガイド部と、を有する。バッフル部及びガイド部は、ロータリドアの回転位置に応じて、姿勢が変化する。
【0005】
特許文献1に示されるガイド部は、バイレベルモードのときにベント流出口及びフット流出口に向かう流れに沿うよう位置する。よって、ロータリドアの内部空間を流れる調和空気を、ベント流出口及びフット流出口に円滑に供給することができる。
【0006】
一方で、ガイド部は、デフフットモード及びデフロスタモードのときに水平方向に延びるよう位置する。ロータリドアの内部空間を流れる調和空気は、ガイド部によって水平方向に移動する。ここでガイド部は、流出口がデフロスタ流出口よりも下方に位置する。このため、水平方向に流れた調和空気は、方向を変更し、ロータリドアの上方に設けられたデフロスタ流出口へと流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-160459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、デフフットモード及びデフロスタモードのときにデフロスタ流出口に向かう調和空気の通気抵抗が高くなり、そこから十分な風量が得られない恐れがある。
【0009】
そこで本発明は、デフロスタ流出口を開口する吹出モードにおいて、円滑に温風をデフロスタ流出口に導く車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
本開示によれば、車両の車室内(CR)を温度調和する車両用空調装置であって、内部空間(IS)とこの内部空間を通流した空気を吹き出す複数の流出口(15,16,17)とを有するハウジング(11)と、内部空間(IS)に配置され空気を冷風として流出可能な冷却用熱交換器(12)と、冷却用熱交換器(12)を流出した空気を温風として流出可能な加熱用熱交換器(13)と、加熱用熱交換器(13)に流入する空気と加熱用熱交換器(13)を迂回する空気との割合を変更可能なミックスドア(14)と、ハウジングに回転可能に支持されて複数の流出口(15,16,17)の開度を調節可能なロータリ式のモードドア(20)と、加熱用熱交換器(13)を流出した温風の一部が内部を通流する整流部(50)と、を備え、ハウジング(11)は、冷却用熱交換器(12)を流出した冷風が通流する冷風領域(CP)と、加熱用熱交換器(13)を流出した温風が通流する温風領域(HP)と、冷風と温風とを混合可能な混合領域(MP)と、を有し、モードドア(20)は、混合領域(MP)に配置されるとともに、回転中心線(Ax)に沿って延びる回転軸(33)と、回転軸(33)から回転中心線(Ax)に交差する方向に延びる扇状で一対のドア側面部(31)と、回転中心線(Ax)から離れて形成され一対のドア側面部(31)の径方向端辺を接続するドア周面部(32)と、一対のドア側面部(31)とドア周面部(32)とで囲まれたドア内部空間(23)と、混合領域(MP)の空気をドア内部空間(23)へ取り込むドア流入開口(21)と、ドア内部空間(23)から複数の流出口(15,16,17)に空気を流出するドア流出開口(22)と、を有し、複数の流出口(15,16,17)は、車室内(CR)のフロントウインドウに空気を供給するためのデフロスタ流出口(15)と、車室内(CR)の上方空間に空気を供給するためのベント流出口(16)と、車室内(CR)の下方空間に空気を供給するためのフット流出口(17)と、を含み、整流部(50)は、回転中心線(Ax)に沿って形成される温風集合部(51)と、温風集合部に開口する温風回収孔(53h,54h,55h)と、温風回収孔から流入した温風が通流する温風供給路(52)と、温風供給路(52)を通流した温風が流出する温風供給孔(53d、54d、55d)と、を有するとともに、モードドア(20)のドア流入開口(21)に装着され、温風供給路(52)は、温風回収孔(53h,54h,55h)から温風供給孔(53d,54d,55d)まで直線状に延びており、モードドア(20)がデフロスタ流出口(15)からの空気の流出を許容する回転位置のとき、温風供給孔(53d,54d,55d)がデフロスタ流出口(15)に臨むことを特徴とする車両用空調装置が提供される。
【0012】
温風供給路(52)は、デフフットモードのとき、温風供給孔(53d,54d,55d)がデフロスタ流出口(15)に臨むよう、位置する。さらに、温風回収孔から温風供給孔に至るまで温風供給路(52)が直線状に延びている。よって、温風供給路(52)を流れる空気は流れ方向が変更されることなく、デフロスタ流出口(15)へ導かれる。すなわち、通路抵抗が大きく上昇することなく、一部の温風を円滑にデフロスタ流出口(15)へと導くことができる。
【0013】
例えば、温風領域(HP)から混合領域(MP)へ流入する温風の流れ方向(H2i)と温風供給路(52)の延びる方向(Ps)とがなす角(α)は鋭角である。よって、温風供給路(52)を流れる調和空気は、温風領域(HP)から温風供給路(52)へ流入するときに温風の流れ方向の極端な変化を抑えることができ、スムーズに温風回収孔(53d,54d,55d)を介して流入することができる。
【0014】
本開示によれば、車両の車室内(CR)を温度調和する車両用空調装置であって、内部空間(IS)とこの内部空間を通流した空気を吹き出す複数の流出口(15,16,17)とを有するハウジング(11)と、内部空間(IS)に配置され空気を冷風として流出可能な冷却用熱交換器(12)と、冷却用熱交換器(12)を流出した空気を温風として流出可能な加熱用熱交換器(13)と、加熱用熱交換器(13)に流入する空気と加熱用熱交換器(13)を迂回する空気との割合を変更可能なミックスドア(14)と、ハウジングに回転可能に支持されて複数の流出口(15,16,17)の開度を調節可能なロータリ式のモードドア(20)と、加熱用熱交換器(13)を流出した温風の一部が内部を通流する整流部(50)と、を備え、ハウジング(11)は、冷却用熱交換器(12)を流出した冷風が通流する冷風領域(CP)と、加熱用熱交換器(13)を流出した温風が通流する温風領域(HP)と、冷風と温風とを混合可能な混合領域(MP)と、を有し、モードドア(20)は、混合領域(MP)に配置されるとともに、回転中心線(Ax)に沿って延びる回転軸(33)と、回転軸(33)から回転中心線(Ax)に交差する方向に延びる扇状で一対のドア側面部(31)と、回転中心線(Ax)から離れて形成され一対のドア側面部(31)の径方向端辺を接続するドア周面部(32)と、一対のドア側面部(31)とドア周面部(32)とで囲まれたドア内部空間(23)と、混合領域(MP)の空気をドア内部空間(23)へ取り込むドア流入開口(21)と、ドア内部空間(23)から複数の流出口(15,16,17)に空気を流出するドア流出開口(22)と、を有し、複数の流出口(15,16,17)は、車室内(CR)のフロントウインドウに空気を供給するためのデフロスタ流出口(15)と、車室内(CR)の上方空間に空気を供給するためのベント流出口(16)と、車室内(CR)の下方空間に空気を供給するためのフット流出口(17)と、を含み、整流部(50)は、回転中心線(Ax)に沿って形成される温風集合部(51)と、温風集合部に開口する温風回収孔(53h,54h,55h)と、温風回収孔から流入した温風が通流する温風供給路(52)と、温風供給路(52)を通流した温風が流出する温風供給孔(53d、54d、55d)と、を有するとともに、モードドア(20)のドア流入開口(21)に装着され、温風供給路(52)は、温風回収孔(53h,54h,55h)から温風供給孔(53d、54d、55d)まで湾曲しているとともに、モードドア(20)がデフロスタ流出口(15)からの空気の流出を許容する回転位置のとき、温風回収孔(53h,54h,55h)と連続する温風供給路の上流部が温風領域(HP)を向き、温風供給孔(53d、54d、55d)がデフロスタ流出口(15)に臨むことを特徴とする車両用空調装置が提供される。
【0015】
温風供給路(52)は、デフフットモードのとき、温風供給孔(53d,54d,55d)がデフロスタ流出口(15)に臨むよう、位置する。さらに、温風回収孔から温風供給孔(53d、54d、55d)に至るまで温風供給路(52)が湾曲している。よって、温風供給路(52)を流れる調和空気は局所的に流れ方向が変更されることなく、デフロスタ流出口(15)へと導かれる。すなわち、通気抵抗が大きく上昇することなく、一部の温風を円滑にデフロスタ流出口(15)へと導くことができる。
【0016】
そして、温風供給路(52)は、中央温風供給路(54)と、回転中心線(Ax)に沿った方向において中央温風供給路(54)よりも一方側に設けられた第1側方温風供給路(53)と、回転中心線(Ax)に沿った方向において中央温風供給路(54)よりも他方側に設けられた第2側方温風供給路(55)と、を有し、中央温風供給路(54)は、第1側方温風供給路(53)及び第2側方温風供給路(55)よりも断面積が大きいことが好ましい。より円滑にデフロスタ流出口(15)に温風を供給できる。
【0017】
あるいは、温風集合部(51)は、温風領域(HP)から混合領域(MP)へ流入する温風の流れ方向(H2i)に対して凹状に形成されていることが好ましい。温風集合部(51)で効率よく温風を集め、温風供給路(52)に通流することができる。
【0018】
あるいは、温風供給路(52)は、中央温風供給路(54)と、回転中心線(Ax)に沿った方向において中央温風供給路(54)よりも一方側に設けられた第1側方温風供給路(253)と、回転中心線(Ax)に沿った方向において中央温風供給路(54)よりも他方側に設けられた第2側方温風供給路(255)と、を含み、温風回収孔(53h,54h,55h)は、中央温風供給路(54)へ温風が流入する中央温風回収孔(54h)と、第1側方温風供給路(253)へ温風が流入する第1側方温風回収孔(53h)と、第2側方温風供給路(255)へ温風が流入する第2側方温風回収孔(55h)と、を含み、温風供給孔(253d,54d,255d)は、中央温風供給路(54)から温風が流出する中央温風供給孔(54d)と、第1側方温風供給路(253)から温風が流出する第1側方温風供給孔(253d)と、第2側方温風供給路(255)から温風が流出する第2側方温風供給孔(255d)と、を含み、第1側方温風供給孔(253d)は、第1側方温風回収孔(53h)よりも回転中心線(Ax)に沿った方向における一方側に設けられ、第2側方温風供給孔(255d)は、第2側方温風回収孔(55h)よりも回転中心線(Ax)に沿った方向における他方側に設けられていることが好ましい。第1側方温風供給路(253)及び第2側方温風供給路(255)がモードドア(20)の回転中心線(Ax)に沿った方向へ広がるように形成される。よって、扇状に形成されたデフロスタ流出口(15)の形状に沿って温風を吹出すことができるので、円滑にデフロスタ流出口(15)に温風を供給することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、デフロスタ流出口を開口する吹出モードにおいて、円滑に温風をデフロスタ流出口に導く車両用空調装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車両に配置される実施例1の車両用空調装置の斜視図である。
図2図1の2-2断面における実施例1の車両用空調装置の温度調和装置の断面図である。
図3】実施例1の車両用空調装置におけるモードドアの斜視図である。
図4】実施例1の車両用空調装置におけるモードドアの分解図である。
図5】実施例1の車両用空調装置におけるデフフットモード時の温風の流れを示した断面図である。
図6】実施例1の車両用空調装置におけるモードドアでの温風の流れを示した斜視図である。
図7図3の7-7断面における実施例1の整流部の断面図である。
図8図3の冷風抑制断面における実施例1のデフフットモード時の温風の流れを示した断面図である。
図9図3のノーマル断面における実施例1のデフフットモード時の温風の流れを示した断面図である。
図10】実施例1の車両用空調装置におけるベントモード時の温風の流れを示した断面図である。
図11】実施例1の車両用空調装置におけるバイレベルモード時の温風の流れを示した断面図である。
図12】実施例1の車両用空調装置におけるフットモード時の温風の流れを示した断面図である。
図13】実施例1の車両用空調装置におけるデフモード時の温風の流れを示した断面図である。
図14】実施例2の車両用空調装置におけるデフフットモード時の温風の流れを示した断面図である。
図15】その他の実施例の車両用空調装置におけるモードドアを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図に基づいて実施例を説明する。また、図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。なお、これらの方向は、以下に説明する車両用空調装置の説明のために便宜的に使用するものであり、車両用空調装置が車両に搭載された際の向きを限定するものではない。
【0022】
<実施例1>
図1~13を用いて実施例1を説明する。図1を参照する。図1は、車室内CRから見た車両用空調装置1の斜視図を示している。車両用空調装置1は、例えば乗用車の車室内CRに搭載され、車室外または車室内CRの空気を取り込んで温度の調節を行う。車両用空調装置1は、吸い込んだ空気を送風する送風装置90と、送風装置90から送風された空気の温度調和を行い車室内CRに調和空気を吹出す温度調和装置10と、を備えている。
【0023】
送風装置90は、車室外または車室内CRの空気の導入を切り替えるインテークドア(図示せず)を有する内外気切替部91を有し、その下流にインペラ(図示せず)を収容するスクロールケース92と、インペラを駆動するモータ93と、を有する。インテークドアによって車室外または車室内CRの空気が選択され、インペラの回転により空気が内外気切替部91に取り込まれスクロールケース92を通り、送風装置90から温度調和装置10へと送られる。
【0024】
図1及び図2を参照する。図2は温度調和装置10の断面図である。温度調和装置10は、送風装置90からの送風空気が送られる内部空間ISとこの内部空間ISを通流した空気を吹出す複数の流出口15,16,17とを有するハウジング11と、内部空間ISに配置され空気を冷風として流出可能な冷却用熱交換器12と、冷却用熱交換器12を流出した空気を温風として流出可能な加熱用熱交換器13と、加熱用熱交換器13に流入する空気と加熱用熱交換器13を迂回する空気との割合を変更可能なミックスドア14と、を有する。
【0025】
ハウジング11は、送風装置90に接続される。送風装置90から送られた送風空気は、内部空間ISの前方から後方へと流れる。
【0026】
ハウジング11は、冷却用熱交換器12を流出した冷風が通流する冷風領域CPと、加熱用熱交換器13を流出した温風が通流する温風領域HPと、冷風と温風を混合可能な混合領域MPと、を有するとともに、混合領域MPの下流端と接続し複数の流出口15,16,17に向かう空気が流出する複数の制御開口151,161,171を有する。
【0027】
複数の流出口15,16,17は、車室内CRのフロントウインドウに空気を供給するためのデフロスタ流出口15と、車室内CRの上方空間に空気を供給するためのベント流出口16と、車室内CRの下方空間に空気を供給するためのフット流出口17と、を有する。ベント流出口16は車幅方向における中央に向けて空気を供給するためのセンターベント流出口16aと車幅方向における側方に向けて空気を供給するためのサイドベント流出口16bとを有し、フット流出口17は車室内CRの前方に向けて空気を供給するための前席用フット流出口17aと車室内CRの後方に向けて空気を供給するための後席用フット流出口17bとを有する。
【0028】
複数の制御開口151,161,171は、混合領域MPから、デフロスタ流出口15に向かって空気が流出するデフロスタ制御開口151と、ベント流出口16に向かって空気が流出するベント制御開口161と、フット流出口17に向かって空気が流出するフット制御開口171と、を有する。
【0029】
冷却用熱交換器12は、内部空間ISに配置される。冷却用熱交換器12は例えば内部に冷媒が通流し、送風装置90から送られた送風空気の熱を吸収することによって送風空気を冷却することができる。冷却用熱交換器12の内部を通る媒体は冷媒のみならず他の熱媒体であってもよい。
【0030】
加熱用熱交換器13は、内部空間ISの冷却用熱交換器12の下流に配置される。例えば、内部を流れる熱媒体が送風空気に加熱することによって、送風空気を加熱することができる。熱媒体は、エンジンの冷却水を使用してもよいし、あるいは図示しない電熱線によって加熱される温水を使用してもよい。または、加熱用熱交換器13は内部に熱媒体が流れる形態に制限されない。つまり加熱用熱交換器13自体が電気によって発熱し、送風空気に放熱してもよい。加熱用熱交換器13は一つに限らず、複数設けられていてもよい。
【0031】
ミックスドア14は、冷風領域CPと混合領域MPとの間、並びに温風領域HPと混合領域MPとの間を摺動可能に設けられる。ミックスドア14は、例えばモードドア20と同軸に回転するロータリ式のドアである。ミックスドア14の開度によって、冷風領域CPのみを通る冷風のみを通流可能にするフルクール位置と、温風領域HPを通る温風のみを通流可能にするフルホット位置と、冷風領域CPを通る冷風と温風領域HPを通る温風との両方を通流可能にするミックス位置と、を調節することができる。
【0032】
次にモードドア20について説明する。モードドア20は、ハウジング11に回転可能に支持され、混合領域MP内を回転するように設けられる。モードドア20は、例えばミックスドア14と同軸に回転するロータリ式のドアである。
【0033】
図3及び図4を参照する。図3の3A及び3Bは、モードドア20の単体を示した図である。図4はモードドア20の分解図である。モードドア20は、ドア内部空間23と、混合領域MPの空気をドア内部空間23へ取り込むドア流入開口21と、ドア内部空間23から複数の流出口15,16,17に空気が流出するドア流出開口22とを有するとともに、ドア本体30と、シール部材40と、整流部50と、を有する。ドア本体30は、回転中心線Axに沿って延びる回転軸33と、回転軸33から回転中心線Axに交差する方向に延びる扇状で一対のドア側面部31と、回転中心線Axから離れて形成され一対のドア側面部31の径方向短辺を接続するドア周面部32と、を有する。ドア内部空間23は、ドア側面部31とドア周面部32とで囲まれた空間である。シール部材40は、ドア周面部32の外周面に設けられる。シール部材40は、ドア流出開口22によって分割され、ドア流入開口21に臨むドア周面部32の端部のうち一方側に位置する第1ドア周面端部321側に設けられる第1シール41と、回転中心線Axに対して第1ドア周面端部321とは反対側に位置する第2ドア周面端部322側に設けられる第2シール42とを有する。
【0034】
整流部50は、ドア流入開口21近傍に設けられている。整流部50は、回転中心線Axに沿って形成される温風集合部51と、温風集合部51に開口する温風回収孔53h,54h,55hと、温風回収孔53h,54h,55hから流入した温風が通流する温風供給路52と、温風供給路52を通流した温風が流出する温風供給孔53d,54d,55dを有する。温風集合部51は第1ドア周面端部321側に設けられ、温風供給孔53d,54d,55dは第2ドア周面端部322側に設けられる。
【0035】
温風集合部51は、温風領域HPから混合領域MPへ流入する温風の流れ方向H2iに対して凹状に形成されている。言い換えると、温風集合部51は、ドア流入開口21と同一平面上に設けられドア流入開口21の一部を塞ぐ集合部第1面511と、ドア流入開口21からドア内部空間23とは反対側に延びる集合部第2面512と、集合部第1面511と集合部第2面512とが交差する頂部513と、を有する。温風回収孔53h,54h,55hは、集合部第1面511、頂部513、および集合部第2面512にまたがるように設けられる。
【0036】
温風回収孔53h,54h,55hは、第1側方温風回収孔53hと中央温風回収孔54hと第2側方温風回収孔55hとを有し、それぞれが回転中心線Axの延びる方向に沿った方向に離れて設けられている。
【0037】
温風供給路52は、中央温風回収孔54hから流入した温風が流れる中央温風供給路54と、回転中心線Axに沿った方向において中央温風供給路54よりも一方側に設けられ第1側方温風回収孔53hから流入した温風が流れる第1側方温風供給路53と、回転中心線Axに沿った方向において中央温風供給路54よりも他方側に設けられ第2側方温風回収孔55hから流入した温風が流れる第2側方温風供給路55と、を有する。また、温風供給路52は内部にそれぞれ中央温風供給路54の内部空間54p、第1側方温風供給路53の内部空間53p、第2側方温風供給路55の内部空間55pを有し、温風回収孔53d,54d,55dで集められた温風が通流する。温風供給路52は、それぞれが回転中心線Axに沿った方向に離れて設けられており、温風回収孔53h,54h,55hから回転中心線Axに交差する方向に直線状に延びている。
【0038】
図7を参照する。中央温風供給路54は、第1側方温風供給路53及び第2側方温風供給路55よりも断面積が大きく設定されている。中央温風供給路54の幅W54が第1側方温風供給路53の幅W53及び第2側方温風供給路55の幅W55よりも広く形成されている。
【0039】
図3及び図4を参照する。回転中心線Axに交差する方向において、温風回収孔53h,54h,55hとは反対側に、温風供給路52を通流した温風が流出する温風供給孔53d,54d,55dが設けられている。温風供給孔53d,54d,55dは第1側方温風供給孔53dと中央温風供給孔54dと第2側方温風供給孔55dとからなり、それぞれが回転中心線Axに沿った方向に離れて設けられている。
【0040】
整流部50は、さらに温風供給孔53d,54d,55dが設けられている側に、複数の温風供給路を接続する冷風抑制部56を有している。
【0041】
以上に説明した、車両用空調装置1の作用について説明する。
【0042】
<デフフットモード>
図2を参照する。送風装置90(図1参照)から送られた空気は温度調和装置10の内部空間ISを流れ、冷却用熱交換器12を通過する。冷却用熱交換器12を通過した空気は冷風となり、冷風領域CPを通流する。ミックスドア14がミックス位置にあるとき、一部の冷風C1は加熱用熱交換器13に向かい、残りの冷風C2は混合領域MPへ向かう。加熱用熱交換器13に向かった冷風C1は加熱用熱交換器13を通過することで加熱され温風H1となる。温風H1は温風領域HPを通流し、温風H2となり、混合領域MPへ向かう。
【0043】
図5図8図9を参照する。図5図8図9はいずれもデフフットモードにおける、モードドア20の回転位置と空気の流れを示した断面図である。デフフットモードでは、モードドア20がデフロスタ流出口15とフット流出口17とを開口し、ベント流出口16を閉塞する位置にある。詳述すると、デフロスタ制御開口151は、モードドア20の第2周面端部322が位置していることによって一部が開放されている。ベント制御開口161はモードドア20のドア周面部32及び第2シール42(図3参照)が位置していることによって閉塞されている。フット制御開口171は、ドア流出開口22が位置していることによって一部が開放されている。
【0044】
このとき、上述したようにミックスドア14はミックス位置にある。そのため冷風領域CPを通流する冷風C2と温風領域HPを通流する温風H2とが、混合領域MPに流入する。
【0045】
ここで車両用空調装置1の断面は3種類に分けられる。図3及び図4を参照する。モードドア20の回転中心線Axに沿った方向において、ドア側面部31と第1側方温風供給路53との間又は第2側方温風供給路55とドア側面部31との間で切断したノーマル断面と、温風供給路52で切断した供給路断面と、第1側方温風供給路53と中央温風供給路54との間又は中央温風供給路54と第2側方温風供給路55との間で切断した冷風抑制断面と、を有する。図9はノーマル断面、図5は供給路断面、図8は冷風抑制断面を示している。
【0046】
図9を参照し、ノーマル断面での空気の流れを説明する。混合領域MPに流入した温風H2は、一方が温風集合部51を迂回するかまたは温風集合部51に集められても温風回収孔53h、54h、55hを迂回して、ドア流入開口21を介してドア内部空間23に流入し温風H3となる。他方はミックスドア14の内部を通る温風H4aとなる。温風H4aは冷風領域CPから混合領域MPへ流入した冷風C2の一部と混合され、混合空気M1となる。混合空気M1はデフロスタ制御開口151を介してデフロスタ吹出空気D1となりデフロスタ流出口15から吹き出される。
【0047】
冷風C2の残りの一部は冷風C3となりドア流入開口21を介してドア内部空間23に流入する。温風H3は冷風C3と混合し、ドア流出開口22及びフット制御開口171を介してフット吹出空気F1となり、フット流出口17から吹き出される。
【0048】
このとき、混合空気M1は冷風領域CP近傍で冷風と温風が混合されるため、比較的温度が低くなる。一方、フット吹出空気F1は混合空気M1よりも温風領域HPに近い側で冷風と温風が混合されるため、比較的温度が高くなる。
【0049】
図8を参照し、冷風抑制断面での空気の流れを説明する。ノーマル断面との違いは、第2周面端部322から冷風抑制部56が延びている点である。冷風抑制部56は、デフフットモード時にはデフロスタ制御開口151を閉塞するように位置している。
【0050】
温風領域HPから混合領域MPに流入した温風H2はノーマル断面と同様に温風H3と温風H4aに分けられる。温風H4aはミックスドア14の内部を通り冷風C2と混合されるが、冷風抑制部56によってデフロスタ制御開口151が閉塞されるためデフロスタ流出口15への空気流れが抑制される。温風H3は冷風C3と混合され、フット制御開口171を介してフット吹出空気F1となり、フット流出口17から吹き出される。
【0051】
冷風抑制断面では冷風抑制部56によってデフロスタ制御開口151が閉塞されるため、比較的温度の低い混合空気M1(図9参照)及び冷風C2がデフロスタ流出口15から吹き出されることを抑制している。
【0052】
図5図6を参照し、供給路断面での空気の流れを説明する。ノーマル断面、冷風抑制断面との違いは温風供給路52を備えている点である。図5では、第1側方温風供給路53が、温風供給路52を代表して示されている。図6はモードドア20において空気の流れ方向を示す図である。
【0053】
混合領域MPに流入した温風H2は、温風集合部51に向かって流れ、集合部第1面511及び集合部第2面512に衝突する。温風集合部51において衝突した温風が集められて第1側方温風回収孔53hから第1側方温風供給路53へ流入する。第1側方温風回収孔53hが集合部第1面511と集合部第2面512とが交差する頂部513に設けられていることによって(第1側方温風回収孔53hが集合部第1面511と集合部第2面512とにまたがって形成されていることによって)、温風H2を効率的に回収することができる。温風回収孔53h、54h、55hを迂回した温風は、他の断面と同様に温風H3や温風H4aとなり、冷風C2と混合される。
【0054】
温風H2から第1側方温風回収孔53hを通って温風H5aとなるとき、温風の流れ方向が変更される。詳しくは、温風領域HPから混合領域MPへ流入する温風の流れ方向H2iから温風供給路52の延びる方向Psへ変更される。本実施例では、温風領域HPから混合領域MPへ流入する温風の流れ方向H2iは車両用空調装置1の略鉛直方向であり、温風供給路52の延びる方向Psは温風領域HP近傍からデフロスタ制御開口151へ向かう方向、つまり後方かつ下方から前方かつ上方へ向かう方向である。このとき、温風領域HPから混合領域MPへ流入する温風の流れ方向H2iと第1側方温風供給路53の延びる方向Psとがなす角αは鋭角である。温風H2が第1側方温風回収孔53hに流入し温風H5aとなる際に極度な流れ方向の変化を抑制することができ、通気抵抗を軽減することができる。
【0055】
第1側方温風回収孔53hから第1側方温風供給路53へ流入した温風H5aは、第1側方温風供給路53の延びる方向に沿って第1側方温風供給路53の内部空間53pを通流し、第1側方温風供給孔53dから流出する。デフフットモード時、第1側方温風供給孔53dはデフロスタ制御開口151の近傍に位置するため、第1側方温風供給孔53dから流出した温風H5cはスムーズにデフロスタ制御開口151を介してデフロスタ吹出空気D1となり、デフロスタ流出口15から吹き出される。
【0056】
第1側方温風回収孔53hに流入し第1側方温風供給路53の内部空間53pを通る温風H5bは、冷風C2と混ざることなく第1側方温風供給孔53dから流出する温風H5cとなるため、温度低下することなくデフロスタ流出口15へ供給される。
【0057】
図5では、第1側方温風供給路53の断面について説明したが、中央側方温風供給路54と第2側方温風供給路55との断面においても第1側方温風供給路53と同様である。
【0058】
図5図8図9を参照して、各流出口における空気の吹出温度について説明する。デフロスタ制御開口151から、ノーマル断面では温風H2と冷風C2とが混合された混合空気M1が流出し、冷風抑制断面では冷風抑制部56によって混合空気M1の流出が抑制される。供給路断面では温風供給孔53d、54d、55dから流出した温風H5cが流出する。特に、温風供給路52のうち中央温風供給路54の断面積が大きく設定されている。よって、モードドア20の回転中心線Axに沿った方向における中央部分に温度の高い空気が集まることで、フロントウインドウの中央部分の曇りを抑制することができる。
【0059】
ベント制御開口161は、いずれの断面においてもドア周面部32及び第2シール42によって閉塞されている。このため、ベント制御開口161を介してベント流出口16からの空気の流出は抑制される。
【0060】
フット制御開口171から流出するフット吹出空気F1は、いずれの断面においても温風H3と冷風C3とが混合される。このため、デフロスタ制御開口151から流出するデフロスタ吹出空気D1よりも低い温度で流出する。
【0061】
これらのことから、デフフットモードにおいて、円滑に温風をデフロスタ流出口15に導くことができ、車室のフロントウインドウに向かって温度の高いデフロスタ吹出空気D1が供給される。
【0062】
本実施例では、ミックスドア14がミックス位置にあるときの作用について説明したが、ミックスドア14がフルホット位置にあってもよい。この場合では、温風領域HPを通流する温風H2のみが混合領域MPに流入する。供給路断面において、ミックスドア14がミックス位置にあるときと同様に、温風供給路52に温風H2が流入することによって温風供給孔53d,54d,55dとデフロスタ制御開口151とを介してデフロスタ流出口15に温度の高いデフロスタ吹出空気D1を供給することができる。
【0063】
<ベントモード>
図10を参照してベントモード時の空気流れについて説明する。図10は、供給路断面を示している。ベントモードでは、モードドア20がベント流出口16を開口し、デフロスタ流出口15とフット流出口17とを閉塞する。詳述すると、ベント制御開口161は、モードドア20のドア流出開口22が位置していることによって開放されている。一方、デフロスタ制御開口151及びフット制御開口171は、モードドア20のドア周面部32及び、第1シール41又は第2シール42(図3参照)が位置していることによって閉塞されている。整流部50において、温風供給孔53d、54d、55d(図3参照)が冷風領域CPに面しており、温風集合部51及び温風回収孔53h、54h、55hが(図3参照)混合領域MP内に位置する。
【0064】
このとき、ミックスドア14はフルクール位置にある。そのため冷風領域CPを通流する冷風C2のみが、混合領域MPに流入する。
【0065】
混合領域MPに流入した冷風C2は、整流部50の温風供給路52を迂回しモードドア20のドア流入開口21を介して、ドア内部空間23に流入し冷風C3となる。冷風C3はドア流出開口22及びベント制御開口161を経てベント吹出空気V1となり、ベント流出口16から吹き出される。
【0066】
よって、ベントモード時には乗員の上半身に向かって温度の低いベント吹出空気V1が供給される。
【0067】
<バイレベルモード>
図11を参照してバイレベルモード時の空気流れについて説明する。図11は、供給路断面を示している。バイレベルモードでは、モードドア20がベント流出口16とフット流出口17とを開口し、デフロスタ流出口15を閉塞する。詳述すると、モードドア20のドア流出開口22がベント制御開口161の一部及びフット制御開口171の一部と連通するように位置していることによって、ベント制御開口161とフット制御開口171とが開放されている。一方、デフロスタ制御開口151は、モードドア20のドア周面部32及び第2シール42(図3参照)が位置していることによって閉塞されている。整流部50は、その全体が混合領域MP内に位置している。
【0068】
このとき、ミックスドア14はミックス位置にある。そのため冷風領域CPを通流する冷風C2と温風領域HPを通流する温風H2とが、混合領域MPに流入する。
【0069】
混合領域MPに流入した冷風C2は、整流部50の温風供給路52を迂回しモードドア20のドア流入開口21を介して、ドア内部空間23に流入し冷風C3となる。また、混合領域MPに流入した温風H2は、整流部の温風集合部51及び温風供給路52を迂回しドア流入開口21を介して、ドア内部空間23に流入し温風H3となる。冷風C3と温風H3が混合し、ベント吹出空気V1及びフット吹出空気F1となり、それぞれベント流出口16及びフット流出口17から吹き出される。
【0070】
よって、バイレベルモード時には乗員の上半身及び足元に向かって温度調節されたベント吹出空気V1及びフット吹出空気F1が供給される。
【0071】
<フットモード>
図12を参照してフットモード時の空気流れについて説明する。図12は、供給路断面を示している。フットモードでは、モードドア20がフット流出口17を開口し、デフロスタ流出口15とベント流出口16とを閉塞する。詳述すると、フット制御開口171は、モードドア20のドア流出開口22が位置していることによって開放されている。一方、デフロスタ制御開口151及びベント制御開口161は、モードドア20のドア周面部32及び第2シール42(図3参照)が位置していることによって閉塞されている。整流部50は、その全体が混合領域MP内に位置している。
【0072】
このとき、ミックスドア14はフルホット位置にある。そのため温風領域HPを通流する温風H2のみが、混合領域MPに流入する。
【0073】
混合領域MPに流入した温風H2は、整流部50の温風供給路52を迂回しモードドア20のドア流入開口21を介して、ドア内部空間23に流入し温風H3となる。温風H3はドア流出開口22及びフット制御開口171を経てフット吹出空気F1となり、フット流出口17から吹き出される。
【0074】
よって、フットモード時には乗員の足元に向かって温度の高いフット吹出空気F1が供給される。
【0075】
<デフロスタモード>
図13を参照してデフロスタモード時の空気流れについて説明する。図13は、供給路断面を示している。デフロスタモードでは、モードドア20がデフロスタ流出口15を開口し、ベント流出口16及びフット流出口17を閉塞する。詳述すると、デフロスタ制御開口151とベント制御開口161の間にモードドア20の第2周面端部322が位置していることで、デフロスタ制御開口151は開放されている。一方、ベント制御開口161及びフット制御開口171は、モードドア20のドア周面部32及び第2シール42(図3参照)が位置していることによって閉塞されている。整流部50は、温風供給孔53d、54d、55dがデフロスタ制御開口151に向けられるよう位置している。
【0076】
このとき、フットモード時と同様、ミックスドア14はフルホット位置にある。そのため温風領域HPを通流する温風H2のみが、混合領域MPに流入する。
【0077】
図13では、第1側方温風供給路53が、温風供給路52を代表して示されている。混合領域MPに流入した温風H2は、そのうち一部が温風H5aとなり、整流部50の温風集合部51に集められ、第1側方温風回収孔53hを通り第1側方温風供給路53内を通流し第1側方温風供給孔53dから流出する温風H5cとなる。中央側方温風供給路54の断面、第2側方温風供給路55の断面においても同様である。残りはミックスドア14の内部を通る温風H4aとなりデフロスタ制御開口151に向かって流れる温風H4bとなる。温風H5cと温風H4bとはデフロスタ制御開口151を経てデフロスタ吹出空気D1となり、デフロスタ流出口15から吹き出される。
【0078】
よって、デフロスタモード時には車室のフロントウインドウに向かって温度の高いデフロスタ吹出空気D1が供給される。
【0079】
<実施例2>
図14を参照して実施例2について説明する。実施例2による車両用空調装置110は、モードドア120の整流部150の構成が実施例1とは異なる。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0080】
図14図5に相当する図であり、デフフットモードにおける供給路断面を示している。実施例2の車両用空調装置110における整流部150は、第1側方温風供給路153がドア内部空間23に向かって凸になるように湾曲していることを特徴とする。
【0081】
デフフットモードにおいて、第1側方温風供給路153の上流部が温風領域HPを向き、温風集合部51及び第1側方温風回収孔153hは温風領域HPに面している。
【0082】
混合領域MPに流入した温風H2は、温風集合部51に到達して集合し、直接第1側方温風回収孔153hに流入する。第1側方温風供給路153を流れる温風H5aは、温風H2から流れ方向の変更がなく第1側方温風供給路153に流入する。言い換えると、温風H2から混合領域MPへ流入する温風の流れ方向H2iと第1側方温風供給路153へ流入する温風H5aの流れ方向とが同じである。
【0083】
温風回収孔から第1側方温風供給路153へと流入した温風H5aは、第1側方温風供給路153の延びる方向に沿って第1側方温風供給路153の内部空間153pを通流し、第1側方温風供給孔153dから流出する。このとき、第1側方温風供給路153はドア内部空間23に凸になるように湾曲している。そのため温風H5bの流れ方向が徐変しながら第1側方温風供給孔153dへと向かい、流出する。デフフットモード時、第1側方温風供給孔153dはデフロスタ制御開口151の近傍に位置するため、第1側方温風供給孔153dから流出した温風H5cはスムーズにデフロスタ制御開口151を介してデフロスタ吹出空気D1となり、デフロスタ流出口15から吹き出される。
【0084】
温風H2が第1側方温風回収孔153hに回収されて温風H5aになる際に流れ方向の変更を抑制し、さらに温風H5bの流れ方向を徐変しながら第1側方温風供給路153dへ向かうことから、通気抵抗が大きく上昇することなく、温風H5cを円滑にデフロスタ流出口15へと導くことができる。
【0085】
図14では、第1側方温風供給路153の断面について説明したが、中央側方温風供給路154と第2側方温風供給路155との断面においても第1側方温風供給路153と同様である。また、ノーマル断面と冷風抑制断面においては実施例1と同様である。
【0086】
<その他の実施例>
図15を参照してその他の実施例について説明する。その他の実施例による車両用空調装置は、モードドア220の整流部250の構成が実施例1及び実施例2とは異なる。実施例1及び実施例2と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0087】
図15図5に相当する図であり、デフフットモードにおける供給路断面を示している。整流部250は実施例1の整流部50を基にしているが、実施例1とは異なり、第1側方温風供給路253及び第2側方温風供給路255が、それぞれ第1側方温風回収孔53h、第2側方温風回収孔55hから第1側方温風供給孔253d、第2側方温風供給孔255dにかけて回転中心線Axに沿った方向に広がっていることを特徴とする。言い換えると、第1側方温風供給孔253dは第1側方温風回収孔53hよりも回転中心線Axに沿った方向における一方側に設けられ、第2側方温風供給孔255dは第2温風回収孔55hよりも回転中心線Axに沿った方向における他方側に設けられている。
【0088】
よって、第1温風供給孔253d及び第2温風供給孔255dから、回転中心線Axに沿った方向における端部側に向かって、デフロスタ制御開口151を介してデフロスタ流出口15に温風H5cを供給することができる。したがって、デフロスタ制御開口151からデフロスタ流出口15が扇状に形成されているとき、この形状に沿って温風を吹出すことができるので、円滑にデフロスタ流出口15に温風を供給することができる。
【0089】
各実施例の構成要素は、適宜組み合わせることができる。例えば、前述した整流部150と整流部250とを組み合わせて、温風供給路52が回転中心線Axに沿った方向へ広がりつつもドア内部空間23に向かって凸になるように湾曲した整流部を適用することができる。このように本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の車両用空調装置は、乗用車に搭載する空調装置に好適である。
【符号の説明】
【0091】
1,110…車両用空調装置
10…温度調和装置
11…ハウジング
12…冷却用熱交換器
13…加熱用熱交換器
14…ミックスドア
15…デフロスタ流出口
151…デフロスタ制御開口
16…ベント流出口
161…ベント制御開口
17…フット流出口
171…フット制御開口
20…モードドア
21…ドア流入開口
22…ドア流出開口
23…ドア内部空間
30…ドア本体
40…シール部材
50,150,250…整流部
51…温風集合部
52,152,252…温風供給路
53h,54h,55h,153h,154h,155h…温風回収孔
53d,54d,55d,153d,154d,155d,253d,254d,255d…温風供給孔
IS…内部空間
CP…冷風領域
HP…温風領域
MP…混合領域
CR…車室内
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