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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151485
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
F25B1/00 371Z
F25B1/00 399Y
F25B1/00 361D
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052933
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟木 智之
(57)【要約】
【課題】制御対象の応答性の違いによる快適性の低下を抑制することができる冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る冷凍サイクル装置は、室外機と、少なくとも1つの第1室内機と、少なくとも1つの中継ユニットと、制御手段とを備える。室外機は、圧縮機と、室外熱交換器とを有する。第1室内機は、冷媒と空気を熱交換させる冷媒熱交換器と第1膨張弁とを有し、室外機と接続される。中継ユニットは、冷媒と水を熱交換させる水冷媒熱交換器と第2膨張弁とを有し、第1室内機と並列に室外機に接続される。制御手段は、第1室内機および中継ユニットの運転状態を個々に識別する端末識別部を有し、端末識別部の識別情報と第1室内機および中継ユニットからの要求能力の総和とに応じて、圧縮機の回転数の制御パターンを決定する。制御手段は、端末識別部の識別情報に応じて圧縮機の回転数の制御時間を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室外熱交換器とを有する室外機と、
冷媒と空気を熱交換させる冷媒熱交換器と第1膨張弁とを有し、前記室外機と接続される少なくとも1つの第1室内機と、
冷媒と水を熱交換させる水冷媒熱交換器と第2膨張弁とを有し、前記第1室内機と並列に前記室外機に接続される少なくとも1つの中継ユニットと、
前記第1室内機および前記中継ユニットの運転状態を個々に識別する端末識別部を有し、前記端末識別部の識別情報と前記第1室内機および前記中継ユニットからの要求能力の総和とに応じて、前記圧縮機の回転数の制御パターンを決定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記端末識別部の識別情報に応じて前記圧縮機の回転数の制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御手段は、前記第1室内機のみが運転中のときは、前記中継ユニットのみが運転中のときよりも前記制御時間を短くする
冷凍サイクル装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記中継ユニットに水配管を介して接続され、水と空気を熱交換させる水空気熱交換器と流量調整弁とを有する少なくとも1つの第2室内機をさらに備え、
前記端末識別部は、前記中継ユニットの運転状態として前記第2室内機の運転状態を識別し、
前記制御手段は、前記第1室内機の運転台数と前記第2室内機の運転台数との割合に応じて、前記圧縮機の回転数の制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御手段は、前記第1室内機の運転台数が前記第2室内機の運転台数より多いときは、前記第1室内機の運転台数が前記第2室内機の運転台数よりも少ないときよりも前記制御時間を短くする
冷凍サイクル装置。
【請求項5】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御時間として、前記第1室内機を対象とする第1制御時間と、前記中継ユニットを対象とする、前記第1制御時間よりも長い第2制御時間とを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御手段は、前記制御時間を前記第1制御時間と前記第2制御時間のいずれか一方を選択する
冷凍サイクル装置。
【請求項6】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記中継ユニットに水配管を介して接続され、水と空気を熱交換させる水空気熱交換器と流量調整弁とを有する少なくとも1つの第2室内機と、
前記第1室内機および前記第2室内機の利用状況の履歴を記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記端末識別部は、前記中継ユニットの運転状態として前記第2室内機の運転状態を識別し、
前記制御手段は、運転中の前記第1室内機および前記第2室内機のうち利用頻度の高い方の室内機を対象として前記制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項7】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記第1室内機および前記中継ユニットの設置情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御手段は、前記識別情報と前記設置情報とに応じて前記制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御手段は、前記制御時間として、前記圧縮機の回転数の制御間隔を前記端末識別部の識別情報に応じて決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御手段は、前記制御時間として、前記圧縮機の回転数の変化率を前記端末識別部の識別情報に応じて決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項10】
圧縮機と、室外熱交換器とを有する室外機と、
冷媒と空気を熱交換させる冷媒熱交換器と第1膨張弁とを有し、前記室外機と接続される少なくとも1つの第1室内機と、
冷媒と水を熱交換させる水冷媒熱交換器と第2膨張弁とを有し、前記第1室内機と並列に前記室外機に接続される少なくとも1つの中継ユニットと、
前記第1室内機および前記中継ユニットの運転状態を個々に識別する端末識別部を有し、前記端末識別部の識別情報と前記第1室内機および前記中継ユニットからの要求能力の総和とに応じて、前記圧縮機の回転数の制御パターンを決定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記要求能力を所定時間ごとに取得し、前記中継ユニットが運転中の場合には前記中継ユニットからの要求能力の入力を所定間隔でマスクして前記圧縮機の回転数の制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項11】
請求項10に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記中継ユニットに水配管を介して接続され、水と空気を熱交換させる水空気熱交換器と流量調整弁とを有する少なくとも1つの第2室内機をさらに備え、
前記端末識別部は、前記中継ユニットの運転状態として前記第2室内機の運転状態を識別し、
前記制御手段は、前記第1室内機の運転台数と前記第2室内機の運転台数との割合に応じて、前記中継ユニットからの要求能力の入力をマスクするか否かを決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項12】
請求項10に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記第1室内機および前記中継ユニットの設置情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御手段は、前記識別情報と前記設置情報とに応じて、前記中継ユニットからの要求能力の入力をマスクする頻度を変更する
冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路と水回路とを接続する中継ユニットを備えた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
並列に接続された複数の室内機が室外機に接続された空気調和機(マルチエアコン)は、各室内機の能力を個別に調整するために、各室内機から送信される要求能力(室温が設定温度に到達するのに必要な能力)を満たせるように圧縮機の回転数および各室内機の膨張弁の開度を調整するフィードバック制御を一定間隔で行っている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、冷媒を循環させる圧縮機と室外熱交換器を有する冷媒回路と、水冷媒熱交換器と、冷媒と熱交換する水を循環させるポンプを有する水回路と、冷媒回路に接続された直膨式の室内機(直膨端末)と、水回路に接続された間膨式の室内機(間膨端末)とを備えた空気調和機が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-356669号公報
【特許文献2】特開2017-89950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の室内機から送信される要求能力に応じて圧縮機の回転数および各室内機の膨張弁の開度を調整するフィードバック制御の更新間隔は、制御対象の応答性に合わせて設定され、制御対象が複数ある場合には一般的に応答性の悪い方に合わせて設定される。このため直膨端末と間膨端末が同時に運転する空気調和機においては、直膨端末よりも応答性の悪い間膨端末に合わせて上記フィードバック制御の更新間隔が設定される。
【0006】
しかしながら、間膨端末に合わせてフィードバック制御の更新間隔を設定すると、直膨端末の熱時定数よりも更新間隔が長くなるため直膨端末が設置される室内の温度が設定温度に到達するまでの時間が長期化するため快適性が低下するという問題がある。反対に、直膨端末に合わせてフィードバック制御の更新間隔を設定すると、間膨端末の熱時定数よりも更新間隔が短くなるため間膨端末からの要求能力が過大に算出され、間膨端末の能力が過剰となることで間膨端末が設置される室内の快適性が低下するという問題がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、直膨端末と間膨端末とを備えた空気調和機において、制御対象の応答性の違いによる快適性の低下を抑制することができる冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る冷凍サイクル装置は、室外機と、少なくとも1つの第1室内機と、少なくとも1つの中継ユニットと、制御手段と、を備える。
前記室外機は、圧縮機と、室外熱交換器とを有する。
前記第1室内機は、冷媒と空気を熱交換させる冷媒熱交換器と第1膨張弁とを有し、前記室外機と接続される。
前記中継ユニットは、冷媒と水を熱交換させる水冷媒熱交換器と第2膨張弁とを有し、前記第1室内機と並列に前記室外機に接続される。
前記制御手段は、前記第1室内機および前記中継ユニットの運転状態を個々に識別する端末識別部を有し、前記端末識別部の識別情報と前記第1室内機および前記中継ユニットからの要求能力の総和とに応じて、前記圧縮機の回転数の制御パターンを決定する。
前記制御手段は、前記端末識別部の識別情報に応じて前記圧縮機の回転数の制御時間を決定する。
【0009】
上記冷凍サイクル装置においては、運転状況に応じて圧縮機の回転数の制御時間(制御間隔・変化率)を決定することで、間膨端末運転時には過剰制御とならないように制御時間を長くし、直膨端末単独運転時には設定温度に早く到達させられるように制御時間を短くする。これにより快適性の低下を抑制できる。
【0010】
前記制御手段は、前記第1室内機のみが運転中のときは、前記中継ユニットのみが運転中のときよりも前記制御時間を短くするようにしてもよい。
【0011】
前記冷凍サイクル装置は、少なくとも1つの第2室内機をさらに備えてもよい。前記第2室内機は、前記中継ユニットに水配管を介して接続され、水と空気を熱交換させる水空気熱交換器と流量調整弁とを有する。前記端末識別部は、前記中継ユニットの運転状態として前記第2室内機の運転状態を識別し、前記制御手段は、前記第1室内機の運転台数と前記第2室内機の運転台数との割合に応じて、前記圧縮機の回転数の制御時間を決定するようにしてもよい。
【0012】
前記制御手段は、前記第1室内機の運転台数が前記第2室内機の運転台数より多いときは、前記第1室内機の運転台数が前記第2室内機の運転台数よりも少ないときよりも前記制御時間を短くするようにしてもよい。
【0013】
前記冷凍サイクル装置は、前記制御時間として、第1室内機を対象とする第1制御時間と、前記中継ユニットを対象とする、前記第1制御時間よりも長い第2制御時間とを記憶する記憶部をさらに備えてもよい。前記制御手段は、前記制御時間を前記第1制御時間と前記第2制御時間のいずれか一方を選択するようにしてもよい。
【0014】
あるいは前記冷凍サイクル装置は、少なくとも1つの第2室内機と、記憶部をさらに備えてもよい。前記第2室内機は、前記中継ユニットに水配管を介して接続され、水と空気を熱交換させる水空気熱交換器と流量調整弁とを有する。前記記憶部は、前記第1室内機および前記第2室内機の利用状況の履歴を記憶する。
前記端末識別部は、前記中継ユニットの運転状態として前記第2室内機の運転状態を識別し、前記制御手段は、運転中の前記第1室内機および前記第2室内機のうち利用頻度の高い方の室内機を対象として前記制御時間を決定するようにしてもよい。
【0015】
あるいは前記冷凍サイクル装置は、前記第1室内機および前記中継ユニットの設置情報を記憶する記憶部をさらに備えてもよい。前記制御手段は、前記識別情報と前記設置情報とに応じて前記制御時間を決定するようにしてもよい。
【0016】
前記制御手段は、前記制御時間として、前記圧縮機の回転数の制御間隔を前記端末識別部の識別情報に応じて決定するようにしてもよい。
【0017】
あるいは前記制御手段は、前記制御時間として、前記圧縮機の回転数の変化率を前記端末識別部の識別情報に応じて決定するようにしてもよい。
【0018】
本発明の他の形態に係る冷凍サイクル装置は、室外機と、少なくとも1つの第1室内機と、少なくとも1つの中継ユニットと、制御手段とを備える。
前記室外機は、圧縮機と、室外熱交換器とを有する。
前記第1室内機は、冷媒と空気を熱交換させる冷媒熱交換器と第1膨張弁とを有し、前記室外機と接続される。
前記中継ユニットは、冷媒と水を熱交換させる水冷媒熱交換器と第2膨張弁とを有し、前記第1室内機と並列に前記室外機に接続される。
前記制御手段は、前記第1室内機および前記中継ユニットの運転状態を個々に識別する端末識別部を有し、前記端末識別部の識別情報と前記第1室内機および前記中継ユニットからの要求能力の総和とに応じて、前記圧縮機の回転数の制御パターンを決定する。
前記制御手段は、前記要求能力を所定時間ごとに取得し、前記中継ユニットが運転中の場合には前記中継ユニットからの要求能力の入力を所定間隔でマスクして前記圧縮機の回転数の制御時間を決定する。
【0019】
このように所定間隔で間膨端末の入力をマスク(無視)することで、直膨端末・間膨端末ともに適した制御間隔で能力調整を行うことができる。
【0020】
前記冷凍サイクル装置は、少なくとも1つの第2室内機をさらに備えてもよい。前記第2室内機は、前記中継ユニットに水配管を介して接続され、水と空気を熱交換させる水空気熱交換器と流量調整弁とを有する。
前記端末識別部は、前記中継ユニットの運転状態として前記第2室内機の運転状態をさらに識別し、前記制御手段は、前記第1室内機の運転台数と前記第2室内機の運転台数との割合に応じて、前記中継ユニットからの要求能力の入力をマスクするか否かを決定するようにしてもよい。
【0021】
前記冷凍サイクル装置は、前記第1室内機および前記中継ユニットの設置情報を記憶する記憶部をさらに備えてもよい。前記制御手段は、前記識別情報と前記設置情報とに応じて、前記中継ユニットからの要求能力の入力をマスクする頻度を変更するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、直膨端末と間膨端末とを備えた空気調和機において、制御対象の応答性の違いによる快適性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷媒-水回路図である。
図2】制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】冷媒の凝縮温度の変化に対する直膨端末側の室温変化と間膨端末側の室温変化の関係を示す図である。
図4】上記制御装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
図5】室内機からの要求能力と圧縮機の回転数との関係を示すテーブルの一例を示す図である。
図6】第1室内機(直膨端末)と第2室内機(間膨端末)の運転台数の各パターンと圧縮機回転数の制御間隔との関係の一例を示す説明図である。
図7】上記制御装置の一作用の説明図である。
図8】上記制御装置の他の構成例を示す機能ブロック図である。
図9】間膨端末からの要求能力の入力に対するマスク例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0025】
[冷凍サイクル装置の構成]
図1は本発明の一実施形態に係る冷凍サイクル装置100の冷媒-水回路図である。本実施形態の冷凍サイクル装置100は空気調和機であり、室外機2と、複数(本実施形態では2台)の第1室内機3a,3b(以下、個別に説明する場合を除き第1室内機3とも総称する)と、複数(本実施形態では2台)の中継ユニット50a,50b(以下、個別に説明する場合を除き中継ユニット50と総称する)と、制御装置90とを備える。
【0026】
(室外機)
室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、アキュムレータ25とを有する。これら各装置と第1室内機3および中継ユニット50が配管で接続されることで、冷凍サイクル装置100の冷媒-水回路において冷媒(一次冷媒)が循環する一次冷媒回路20が形成される。また、第1室内機3と中継ユニット50は並列に接続される。
【0027】
圧縮機21は、図示しないインバータにより回転数が制御されることで、運転容量を変化させることができる容量可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、四方弁22のポートaに吐出管61で接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入側は、アキュムレータ25の冷媒流出側に吸入管65で接続されている。
【0028】
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出側に吐出管61で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管62で接続されている。ポートcは、アキュムレータ25の冷媒流入側と冷媒配管66で接続されている。そして、ポートdは、中継ユニット50における水冷媒熱交換器51のガス冷媒出入口51b、および室内機3における室内熱交換器31の一方の冷媒出入口と、室外機ガス管64とガス分岐管17およびガス管37で接続されている。
【0029】
室外熱交換器23は、冷媒と、室外ファン29の回転により室外機2内部に取り込まれた外気を熱交換する。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述したように四方弁22のポートbに冷媒配管62で接続され、他方の冷媒出入口は、中継ユニット50における水冷媒熱交換器51の液冷媒出入口51a、および第1室内機3における第1膨張弁33と、室外機液管63と液分岐管16および液管36で接続されている。
【0030】
室外膨張弁24は、例えば電子膨張弁である。室外膨張弁24は、室外機液管63に配置されており、その開度を調整することが可能で、通過する冷媒を減圧する。
【0031】
室外ファン29は樹脂製であり、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン29は、図示しないファンモータによって回転することで室外機2の図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を室外機2の図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
【0032】
(第1室内機)
第1室内機3は、室内熱交換器31と、室内ファン32と、第1膨張弁(室内膨張弁)33とを有する。図1において第1室内機3は並列に接続された2台の第1室内機3a、3bを有している。各第1室内機3a,3bは同一の構成を有している。なお第1室内機3の数は2台に限られず、少なくとも1つであればよい。
【0033】
室内熱交換器31は、冷媒と、室内ファン32の回転により第1室内機3内部に取り込まれた外気との熱交換が行われる冷媒熱交換器である。室外機ガス管64と第1室内機3との間はガス管37で接続されており、ガス管37と室内熱交換器31の一方の冷媒出入口は室内機ガス管39で接続されている。室外機液管63と第1室内機3との間は液管36で接続されており、液管36と室内熱交換器31の他方の冷媒出入口との間は室内機液管38で接続されている。
【0034】
第1膨張弁33は、例えば電子膨張弁である。第1膨張弁33は、室内機液管38に配置されており、その開度を調整することが可能で、通過する冷媒を減圧する。
【0035】
室内ファン32は樹脂製であり、室内熱交換器31の近傍に配置されている。室内ファン32は、図示しないファンモータによって駆動され、第1室内機3の図示しない吸込口から室内空気を取り込み、室内熱交換器31において冷媒と熱交換した空気を第1室内機3の図示しない吹出口から室内に放出する。
【0036】
(中継ユニット)
中継ユニット50は、水冷媒熱交換器51と、第2膨張弁52とを有する。図1において中継ユニット50は並列に接続された2台の中継ユニット50a、50bを有している。中継ユニット50a,50bは、第1室内機3と並列に室外機2と接続される。中継ユニット50は、室外機2とは別ユニットとして室外に設置されるが、室外機2の内部に設置されてもよい。なお中継ユニット50の数は複数である場合に限られず、少なくとも1つあればよい。
【0037】
水冷媒熱交換器51は、例えば二重管熱交換器であり、冷媒側流路511と、水側流路512と、液管36に接続される液冷媒出入口51aと、ガス管37に接続されるガス冷媒出入口51bと、入水口51cと、出水口51dとを有している。
【0038】
冷媒側流路511は、一端が液冷媒出入口51aに接続され、他端がガス冷媒出入口51bに接続されている。また、水側流路512は、一端が入水口51cに接続され、他端が出水口51dに接続されている。水冷媒熱交換器51においては、冷媒側流路511を流れる冷媒と水側流路512を流れる水とが熱交換する。
【0039】
液冷媒出入口51aは、室外熱交換器23の他方の冷媒出入口と液分岐管16および室外機液管63で接続されている。液分岐管16は液管36から分岐する冷媒配管である。ガス冷媒出入口51bは、四方弁22のポートdとガス分岐管17および室外機ガス管64で接続されている。ガス分岐管17はガス管37から分岐する冷媒配管である。入水口51cは、第2室内機4の室内熱交換器41と第2水配管12で接続されている。出水口51dは、第2室内機4の室内熱交換器41と第1水配管11で接続されている。
【0040】
第2膨張弁52は、例えば電子膨張弁である。第2膨張弁52は、室外膨張弁24と液冷媒出入口51aとの間に配置されており、その開度を調整することが可能で、通過する冷媒を減圧する。
【0041】
(二次冷媒回路)
水冷媒熱交換器51は、二次冷媒である水が循環する二次冷媒回路40a,40bに接続される。二次冷媒回路40aは、中継ユニット50aの水冷媒熱交換器51に接続される第2室内機4aを有し、二次冷媒回路40bは、中継ユニット50bの水冷媒熱交換器51に接続される第2室内機4bを有する。
【0042】
なお、二次冷媒回路40a,40bは同一の構成を有しているため、以下個別に説明する場合を除き、二次冷媒回路40a,40bを二次冷媒回路40と総称する。同様に、第2室内機4a,4bは同一の構成を有するため、以下個別に説明する場合を除き、第2室内機4a,4bを第2室内機4と総称する。
【0043】
二次冷媒回路40は、第2室内機4と、循環ポンプ44とを含む。第2室内機4は、室内熱交換器41と、室内ファン42と、開閉弁43とを有する。
【0044】
室内熱交換器41は、水と、室内ファン42の回転により第2室内機4内部に取り込まれた外気を熱交換する水空気熱交換器である。室内熱交換器41の入口側は、水冷媒熱交換器51の出水口51dと第1水配管11で接続されている。室内熱交換器41の出口側は、水冷媒熱交換器51の入水口51cと第2水配管12で接続されている。
【0045】
室内ファン42は、樹脂製であり、室内熱交換器41の近傍に配置されている。室内ファン42は、図示しないファンモータによって回転することで、第2室内機4の図示しない吸込口から第2室内機4内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器41において水と熱交換した空気を第2室内機4の図示しない吹出口から室内へ吹き出す。室内ファン42は室内熱交換器41とともにファンコイルユニット(FCU)を構成する。
【0046】
開閉弁43は、第1水配管11に配置され、水冷媒熱交換器51の出水口51dから室内熱交換器41へ向かう水の流れを遮断可能な遮断弁である。開閉弁43の開閉は各第2室内機4a,4bについて個別に制御され、運転が停止している(又は運転を停止させる)第2室内機4の開閉弁43は閉状態に切り替えられる。
【0047】
なお、開閉弁43は、開度を任意に調整することができる流量調整弁であってもよい。この場合、流量調整弁の開度に応じて室内熱交換器41を流れる水の流量を制御することができる。これにより、例えば循環ポンプ44が最低回転数で駆動していても第2室内機4で要求される能力以上の能力が出てしまう場合に室内熱交換器41に流入する水の流量を調整できるため、要求能力への追従性が改善され、快適性が向上する。
【0048】
循環ポンプ44は、図示しないモータによって駆動される能力可変型のポンプである。循環ポンプ44が駆動することにより、水冷媒熱交換器51の出水口51dから第1水配管11に水が流出し、室内熱交換器41および第2水配管12を介して水冷媒熱交換器51の入水口51cに水が流入するように、水が循環する。
【0049】
循環ポンプ44の駆動により循環する水の流量は、上記モータの回転数で制御される。これにより各第2室内機4に対して水が同一の流量で供給される。図1に示す例では循環ポンプ44が第2水配管12に配置されているが、これに代えて、第1水配管11に配置されてもよく、また、中継ユニット50の内部に配置されてもよい。
【0050】
(センサ類)
冷凍サイクル装置100には各種センサが設けられている。室外機2において、吐出管61には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検出する高圧センサ71と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ72が設けられている。吸入管65には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する低圧センサ73と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ74とが設けられている。
【0051】
室外熱交換器23には、室外熱交換器23を流れる冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ75が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ76が設けられている。第1室内機3および第2室内機4には、第1室内機3および第2室内機4に流入する空気の温度(室温)を検出する室温センサ77が設けられている。
【0052】
中継ユニット50の液分岐管16には、冷房運転時に水冷媒熱交換器51に流入する冷媒の温度を検出する第1冷媒温度センサ78が第2膨張弁52と液冷媒出入口51aとの間に設けられ、ガス分岐管17には、暖房運転時に水冷媒熱交換器51に流入する冷媒の温度を検出する第2冷媒温度センサ79が設けられている。第1室内機3の室内機液管38には、冷房運転時に室内熱交換器31に流入する冷媒の温度(又は暖房運転時に室内熱交換器31から流出する冷媒の温度)を検出する第3冷媒センサ81が設けられ、室内機ガス管39には、暖房運転時に室内熱交換器31に流入する冷媒の温度(又は冷房運転時に室内熱交換器31から流出する冷媒の温度)を検出する第4冷媒温度センサ82が設けられている。水冷媒熱交換器51の入水口51cに接続される第2水配管12には、水冷媒熱交換器51へ流入する水の温度を検出する水温センサ80が設けられている。第1冷媒温度センサ78および第2冷媒温度センサ79は、水冷媒熱交換器51に流入する冷媒の温度を検出する一次冷媒温度検出部に相当する。水温センサ80は、水冷媒熱交換器51に流入する水の温度を検出する二次冷媒温度検出部に相当する。
【0053】
(制御装置)
制御装置90は、例えば、室外機2に備えられた室外機制御装置であり、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されている。
【0054】
図2は、制御装置90の構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御装置90は、CPU91、記憶部92、通信部93、センサ入力部94および回転数検出部95を有する。
【0055】
記憶部92は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、室外機2の制御プログラムや制御パラメータ、各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン29等の制御状態、通信部93を介して取得した室内ファン32,42の回転数、使用者によって設定入力された運転モード等を含む第1室内機3および第2室内機4の制御状態等を記憶している。
【0056】
通信部93は、第1室内機3、第2室内機4および、中継ユニット50との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部94は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU91に出力する。回転数検出部95は、圧縮機21のモータの回転数を検出してCPU91に出力する。回転数検出部95は、モータの駆動軸に取り付けられたエンコーダ等でモータの回転数を直接検出するように構成されてもよいし、モータに供給される駆動電流からモータの回転数を検出するように構成されてもよい。以下の説明において、圧縮機21の回転数とは、モータの回転数をいう。
【0057】
CPU91は、記憶部92に格納されたプログラムを実行することで、圧縮機21を含む室外機2の各部の運転を制御する制御部である。プログラムは、例えば種々の記憶媒体を介して制御装置90にインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールが実行されてもよい。
【0058】
CPU91は、上述した室外機2の各センサでの検出結果を、センサ入力部94を介して取り込む。さらには、CPU91は、第1室内機3および第2室内機4から送信される制御信号を、通信部93を介して取り込む。第1室内機3および第2室内機4から送信される制御信号には、第1室内機3および第2室内機4から要求される必要運転能力(以下、要求能力ともいう)などが含まれる。なお、要求能力の詳細については後述する。
【0059】
CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン29、室内ファン32,42、循環ポンプ44の駆動制御、例えば、これらを駆動させる回転数である指示回転数の設定を行う。また、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、四方弁22の切り替え制御を行う。さらには、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、室外膨張弁24、第1膨張弁33、第2膨張弁52の開度制御および開閉弁43の開閉制御などを行う。
【0060】
[冷凍サイクル装置の基本的な動作]
続いて、冷凍サイクル装置100の基本的な動作について説明する。以下、冷房運転時と暖房運転時における冷凍サイクル装置100の動作について説明する。
【0061】
(冷房運転)
冷凍サイクル装置100が冷房運転(冷房運転モード)を行うときは、四方弁22は図1において実線で示す状態、すなわちポートaとポートbが連通し、ポートcとポートdが連通する状態に切り替えられた状態で、圧縮機21および循環ポンプ44を駆動させる。圧縮機21の駆動により冷媒回路20を冷媒が循環し、循環ポンプ44の駆動により水回路40を水が循環する。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、室内熱交換器31および水冷媒熱交換器51が蒸発器として機能する。
【0062】
圧縮機21の回転数および循環ポンプ44の流量は、第1室内機3および第2室内機4からの要求能力に応じて決定される。ここでは、すべての室内機(第1室内機3、第2室内機4)が室内の冷房を行う場合を例に挙げて説明する。
【0063】
圧縮機21によって圧縮されて高温かつ高圧となった冷媒は、圧縮機21から吐出されて吐出管61を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管62へと流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン29の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。
【0064】
室外熱交換器23から流出した冷媒は室外機液管63を流れて室外膨張弁24を通過する。室外膨張弁24を通過した冷媒の一部は、液管36を流れて第1膨張弁33を通過する際に減圧される。室外膨張弁24を通過した冷媒の他の一部は、液分岐管16を流れて第2膨張弁52を通過する際に減圧される。
【0065】
ここで、室外膨張弁24の開度は、例えば全開とされる。また、第1膨張弁33の開度は、室内熱交換器31における蒸発温度に対応する蒸発圧力となるような開度となっており、より具体的には、蒸発温度が第1室内機3に設定される空調温度(設定温度)の最低値(例えば18℃)より低くなるような開度となっている。さらに、第2膨張弁52の開度は、第2室内機4が設置される室内の冷房運転時の設定温度を実現するための、水冷媒熱交換器51における蒸発温度に対応する蒸発圧力となるような開度となっており、より具体的には、水冷媒熱交換器51における蒸発温度および水冷媒熱交換器51から流出する水の温度が、第2室内機4に設定される空調温度(設定温度)の最低値(例えば18℃)より低くなるような開度となっている。
【0066】
第1膨張弁33を通過した冷媒は、室内機液管38を介して室内熱交換器31へ流入する。室内熱交換器31へ流入した冷媒は、室内ファン32の回転によって第1室内機3の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発することにより、第1室内機3が設置された室内の冷房が行われる。室内熱交換器31から流出した冷媒は、室内機ガス管39およびガス管37を介して室外機ガス管64に流入し、圧縮機21に戻る。
【0067】
第2膨張弁52を通過した冷媒は、液分岐管16を介して水冷媒熱交換器51の液冷媒出入口51aに流入する。液冷媒出入口51aに流入した冷媒は、冷媒側流路511を通過して水側流路512を流れる水と熱交換を行って蒸発し、水冷媒熱交換器51のガス冷媒出入口51bからガス分岐管17を介して室外機ガス管64へ流入する。室外機ガス管64に流入した冷媒は、四方弁22、冷媒配管66、アキュムレータ25および吸入管65を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0068】
一方、水側流路512を流れる際に冷却された水は、水冷媒熱交換器51の出水口51dから第1水配管11へ流入する。第1水配管11に流入した水は、開放状態にある開閉弁43を介して第2室内機4の室内熱交換器41に流入し、室内ファン42の回転によって室内熱交換器41を通過する室内の空気を冷却する。これにより、第2室内機4が設置された室内の冷房が行われる。
【0069】
各第2室内機4の室内熱交換器41から流出した水は、第2水配管12を介して循環ポンプ44に吸入される。循環ポンプ44に吸入された水は、水冷媒熱交換器51の入水口51cに送出され、水側流路512を通過して冷媒側流路511を流れる冷媒により再び冷却された後、出水口51dから第2室内機4へ向けて流出する。
【0070】
(暖房運転)
冷凍サイクル装置100が暖房運転(暖房運転モード)を行うときは、四方弁22は図1において破線で示す状態、すなわちポートaとポートdが連通し、ポートbとポートcが連通する状態に切り替えられた状態で、圧縮機21および循環ポンプ44を駆動させる。圧縮機21の駆動により冷媒回路20を冷媒が循環し、循環ポンプ44の駆動により水回路40を水が循環する。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器31および水冷媒熱交換器51が凝縮器として機能する。
【0071】
圧縮機21の回転数および循環ポンプ44の流量は、第1室内機3および第2室内機4からの要求能力に応じて決定される。ここでは、すべての室内機(第1室内機3、第2室内機4)が室内の暖房を行う場合を例に挙げて説明する。
【0072】
圧縮機21によって圧縮されて高温かつ高圧となった冷媒は、圧縮機21から吐出されて吐出管61を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管64を介してガス管37およびガス分岐管17へ流入する。
【0073】
ガス管37へ流入した冷媒は、室内機ガス管39を介して室内熱交換器31へ流入する。室内熱交換器31へ流入した冷媒は、室内ファン32の回転によって第1室内機3の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮することにより、第1室内機3が設置された室内の暖房が行われる。室内熱交換器31から流出した冷媒は、第1膨張弁33により減圧され、室内機液管38および液管36を介して室外機液管63へ流入する。
【0074】
このとき第1膨張弁33の開度は、室内熱交換器31から流出する冷媒のサブクール(過冷却度)が目標サブクールとなるような開度となっており、より具体的には、第1膨張弁33に流入する冷媒が室内熱交換器31で完全に凝縮された液単相冷媒となるような開度となっている。
【0075】
一方、ガス分岐管17へ流入した冷媒は、水冷媒熱交換器51のガス冷媒出入口51bに流入する。ガス冷媒出入口51bに流入した冷媒は、冷媒側流路511を通過して水側流路512を流れる水を加温する。水側流路512を流れる水との熱交換により凝縮した冷媒は、水冷媒熱交換器51の液側出入口51aから液分岐管16へ流出し、第2膨張弁52により減圧されて室外機液管63へ流入する。
【0076】
このとき第2膨張弁52の開度は、第2室内機4が設置される室内の暖房運転時の設定温度を実現するための、水冷媒熱交換器51から流出する冷媒のサブクール(過冷却度)が目標サブクールとなるような開度となっており、より具体的には、第2膨張弁52に流入する冷媒が水冷媒熱交換器51で完全に凝縮された液単相冷媒となるような開度となっている。
【0077】
水側流路512を流れる際に加温された水は、水冷媒熱交換器51の出水口51dから第1水配管11へ流入する。第1水配管11に流入した水は、開放状態にある開閉弁43を介して室内熱交換器41へ流入し、室内ファン42の回転によって室内熱交換器41を通過する室内の空気を加温する。これにより、第2室内機4が設置された室内の暖房が行われる。
【0078】
室内熱交換器41から流出した水は第2水配管12へ流入し、循環ポンプ44に吸入される。循環ポンプ44に吸入された水は、水冷媒熱交換器51の入水口51cに送出され、水側流路512を通過して冷媒側流路511を流れる冷媒により再び加温された後、出水口51dから第2室内機4へ向けて流出する。
【0079】
一方、室外機液管63へ流入した冷媒は、室外膨張弁24を通って室外熱交換器23へ流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン29の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から流出した冷媒は冷媒配管62を流れ、四方弁22、冷媒配管66、アキュムレータ25および吸入管65を介して圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。なお、室外膨張弁24の開度は全開、または、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が目標とする吐出温度となる開度に制御される。
【0080】
[制御装置の詳細]
制御装置90は、第1室内機3および第2室内機4からの要求能力に応じて、圧縮機21の回転数、循環ポンプ44の流量、第1膨張弁33および第2膨張弁52の開度をそれぞれ制御する。例えば制御装置90は、冷房運転または暖房運転の際、室内温度が設定温度に到達したか否か判定し、設定温度に到達した室内に設置された室内機の運転を停止させる(以下、サーモオフともいう)。この際、制御装置90は、運転を停止させる室内機に対応する膨張弁を全閉または微開にすることで、当該室内機における室内熱交換器での冷媒の流通を停止させる。
【0081】
ここで、室内機からの要求能力とは、室温が設定温度に到達するのに必要な能力、あるいは、設定温度に到達した室温を当該設定温度に維持するのに必要な能力をいう。室内機からの要求能力は、設定温度からの室温の差分に基づいて算出される。以下の説明では、第1室内機3からの要求能力とは、第1室内機3aからの要求能力と第1室内機3bからの要求能力との和をいうものとする。同様に、第2室内機4からの要求能力とは、第2室内機4aからの要求能力と第2室内機4bからの要求能力との和をいうものとする。
【0082】
一方、中継ユニット50は第2室内機4に接続されるため、中継ユニット50からの要求能力は、第2室内機4からの要求能力に相当する。つまり図1の例では、中継ユニット50aからの要求能力は第2室内機4aからの要求能力に相当し、中継ユニット50bからの要求能力は第2室内機4bからの要求能力に相当する。したがって以下の説明では、中継ユニット50からの要求能力とは、第2室内機4aからの要求能力と第2室内機4bからの要求能力との和をいうものとする。
【0083】
なお以下の説明では、第1室内機3を直膨端末あるいは直膨端末型の室内機ともいい、第2室内機4を間膨端末あるいは間膨端末型の室内機ともいう。直膨端末とは、空調対象となる空間の近くで冷媒を膨張させて熱交換を行う方式に用いる室内機をいい、間膨端末とは、熱源側で膨張させた冷媒により冷却・加熱した水を移送し冷暖房を行う方式に用いる室内機をいう。
【0084】
直膨端末型の室内機と間膨端末型の室内機が室外機に並列に接続された冷凍サイクル装置においては、各室内機から送信される要求能力に応じて圧縮機の回転数等を調整するフィードバック制御の更新間隔は、制御対象の応答性に合わせて設定され、制御対象が複数ある場合には一般的に応答性の悪い方に合わせて設定される。
【0085】
例えば図3に、冷媒の凝縮温度の変化に対する直膨端末側の室温変化と間膨端末側の室温変化の関係を示す。同図に示すように直膨端末と間膨端末とでは同じ冷媒温度の変化に対して応答性に差がある。これは、直膨端末が冷媒から空気への熱の輸送であるのに対して間膨端末は冷媒から水への熱の輸送と水から空気への熱の輸送であることと、空気と水で熱時定数に差があるためである。直膨端末と間膨端末とでは凝縮温度に対して同じ室温に到達する時間(応答性)に差があるため、同じ更新時間で要求能力を算出すると、各端末に最適な制御を行えない。つまり、更新間隔が熱時定数より短いと能力過剰などになり、更新間隔が熱時定数より長いと立ち上がりが遅れる。一般的に直膨端末と間膨端末が同時に運転する空気調和機においては、直膨端末よりも応答性の悪い間膨端末に合わせてフィードバック制御の更新間隔が設定される。
【0086】
しかしながら、間膨端末に合わせてフィードバック制御の更新間隔を設定すると、直膨端末の熱時定数よりも更新間隔が長くなるため直膨端末が設置される室内の温度が設定温度に到達するまでの時間が長期化するため快適性が低下するという問題がある。反対に、直膨端末に合わせてフィードバック制御の更新間隔を設定すると、間膨端末の熱時定数よりも更新間隔が短くなるため間膨端末からの要求能力が過大に算出され、間膨端末の能力が過剰となることで間膨端末が設置される室内の快適性が低下するという問題がある。このような問題を解決するため、本実施形態における制御装置90は、以下のように構成される。
【0087】
<第1の実施形態>
図4は、制御装置90のCPU91の構成を示す機能ブロック図である。制御装置90は、本発明における制御手段の一具体例である。CPU91は、端末識別部911と、制御パターン決定部912とを有する。
【0088】
運転状態としては、各室内機3a,3b,4a,4bが運転中であるか停止中(サーモオフを含む)であるかの状態を含む。各室内機3a,3b,4a,4bには固有のID(識別子)が付されており、端末識別部911は当該IDに基づいて個々の室内機の運転状態を識別する。
【0089】
端末識別部911は、個々の室内機の運転状態に基づいて、運転中の室内機がすべて第1室内機3であるときは「直膨」と識別し、運転中の室内機に少なくとも1台の第2室内機4が含まれているときは「間膨」と識別する。「直膨」か「間膨」かの識別結果に関する情報を以下、識別情報ともいう。
【0090】
端末識別部911は、所定時間ごとに(例えば、圧縮機21の回転数制御の更新タイミングごとに)各室内機の運転状態に応じた識別情報を生成し、その結果を記憶部92(図2参照)へ記憶する。記憶部92に記憶された識別情報は、上記所定時間ごとに毎回(識別結果に変更が生じていない場合も含めて)更新されてもよいし、識別結果に変更が生じた場合にのみ更新されてもよい。
【0091】
制御パターン決定部912は、端末識別部911の識別情報と第1室内機3および中継ユニット50からの要求能力の総和とに応じて、圧縮機21の回転数の制御パターンを決定する。
【0092】
圧縮機21の回転数の制御パターンは、圧縮機21の回転数と、圧縮機21の回転数の制御時間とを含む。圧縮機21の回転数の制御時間は、典型的には、圧縮機21の回転数の制御間隔(更新間隔)のほか、圧縮機21の回転数の変化率(変化速度)であってもよい。以下の説明では主として、圧縮機21の回転数の制御時間が制御間隔である場合を例に挙げて説明する。
【0093】
制御パターン決定部912はさらに、第1室内機3からの要求能力および中継ユニット50からの要求能力の総和に基づいて圧縮機21の回転数を決定する。第1室内機3からの要求能力および中継ユニット50からの要求能力の総和とは、すなわち、第1室内機3からの要求能力と第2室内機4からの要求能力との総和を意味する。
【0094】
例えば、第1室内機3からの要求能力は、図3の更新時刻Tにおける直膨端末からの要求能力Pdに相当し、中継ユニット50からの要求能力は、図3の更新時刻Tにおける間膨端末からの要求能力Piに相当し、第1室内機3からの要求能力と第2室内機4からの要求能力との総和は、Pd+Piに相当する。
【0095】
制御パターン決定部912は、第1室内機3からの要求能力Pdおよび中継ユニット50からの要求能力Piを所定時間ごとに(例えば、圧縮機21の回転数制御の更新タイミングごとに)算出し、圧縮機21の回転数の更新タイミングで当該回転数を制御する。
【0096】
記憶部92(図2参照)は、上記総和に応じてあらかじめ設定された圧縮機21の回転数テーブルを記憶する。図5は、この回転数テーブルの一例を示している。同図に示す回転数テーブルは、要求能力を示すコード値(全能力コードCrt)を任意の範囲で分類し、その分類ごとに異なる値の回転数(圧縮機回転数R)を設定したものである。制御パターン決定部912は、第1室内機3からの要求能力および中継ユニット50からの要求能力の総和であるコード値(全能力コードCrt)がいずれの分類に属するか判定し、判定した分類に対応する回転数値で圧縮機21を回転させる制御指令を圧縮機21へ出力する(図4参照)。
【0097】
圧縮機21の回転数の制御間隔は、端末識別部911の識別情報(記憶部92に格納された識別情報)に応じて決定される。上記制御間隔は、予め設定された複数の制御時間から、上記識別情報に応じて1つの制御時間を選択するようにしてもよい。予め設定された複数の制御時間としては、例えば、第1の制御時間と、当該第1の制御時間よりも長い第2の制御時間とを含む。第1の制御時間は、直膨端末である第1室内機3の熱時定数(冷媒の温度変化に対する室温変化の応答性。以下同じ)に対応する制御時間(例えば60秒)であり、第2の制御時間は、間膨端末である第2室内機4の熱時定数に対応する制御時間(例えば120秒)である。
【0098】
制御パターン決定部912は、所定時間ごとに(例えば、圧縮機21の回転数制御の更新タイミングごとに)、記憶部92(図2参照)に格納された識別情報を参照し、その識別情報に基づいて、圧縮機21の回転数の制御間隔を決定する。決定された制御間隔は、次回の更新タイミングに反映される。
【0099】
制御間隔の決定方法としては、例えば、第1室内機3のみが運転中のとき、制御パターン決定部912は、上記制御間隔として上記第1の制御時間を選択することで、中継ユニット50のみ(すなわち、第2室内機4のみ)が運転中のときよりも圧縮機21の回転数の制御間隔を短くする。この場合、直膨端末である第1室内機3の熱時定数に合わせて圧縮機21の回転数の制御間隔が採用されるため、第1室内機が設置される室内の温度が設定温度に到達するまでの時間が無駄に長くならないことで快適性を高めることができる。
【0100】
一方、中継ユニット50のみが運転中のとき、制御パターン決定部912は、上記制御間隔として上記第2の制御時間を選択することで、第1室内機3のみが運転中のときよりも圧縮機21の回転数の制御間隔を長くする。この場合、間膨端末である第2室内機の応答性に合わせて圧縮機21の回転数の制御間隔が採用されるため、第2室内機4の要求能力が過大に算出されることを回避でき、これにより第2室内機4が設置される室内の快適性の低下および省エネ性の低下を抑えることができる。
【0101】
また、第1室内機3および第2室内機4の双方が運転中のとき、制御パターン決定部912は、上記制御間隔として第2の制御時間を選択することで、応答速度が遅い方である第2室内機4の更新間隔に合わせるようにしてもよいが、第1室内機3の運転台数と第2室内機4の運転台数との割合に応じて、圧縮機21の回転数の制御間隔を決定するようにしてもよい。より具体的には、第1室内機3および第2室内機4のうち運転台数が多い方の室内機に合わせた制御間隔が選択される。
【0102】
例えば、第1室内機3の運転台数が第2室内機4の運転台数より多いとき、制御パターン決定部912は、上記制御間隔として上記第1の制御時間を選択することで、第1室内機3の運転台数が第2室内機4の運転台数よりも少ないときよりも制御時間を短くする。これとは逆に、第2室内機4の運転台数が第1室内機3の運転台数より多いとき、制御パターン決定部912は、上記制御間隔として上記第2の制御時間を選択することで、第2室内機4の運転台数が第1室内機3の運転台数より少ないときよりも制御時間を長くする。
【0103】
このように第1室内機3(直膨端末)と第2室内機4(間膨端末)のうち運転台数の割合が多数を占める室内機の方を基準として圧縮機21の回転数の制御時間を決定することで、全利用者のうち上記割合に相当すると見込まれる多数勢の利用者の快適性を高めることができる。
【0104】
図6は、第1室内機3(直膨端末)と第2室内機4(間膨端末)の運転台数の各パターンと圧縮機回転数の制御間隔との関係の一例を示している。ここでは、方法1および方法2の2通りの制御間隔の決定方法を示している。また、第1室内機3と第2室内機4の数は、それぞれ最大で6台の場合を示している。
【0105】
方法1は、端末識別部911により識別された端末の種類に応じて制御間隔が決定される。「識別」は、端末識別部911の識別情報に相当し、運転中の室内機がすべて第1室内機3であるときは「直膨」とされ(パターン1,5)、運転中の室内機に少なくとも1台の第2室内機4が含まれているときは「間膨」とされる(パターン2~4,6,7)。この方法1においては、制御パターン決定部912は、端末識別部911の識別情報が「直膨」のときは圧縮機21の回転数の制御間隔を60秒(第1の制御時間)と決定し、「間膨」のときは制御間隔を120秒(第2の制御時間)と決定する。
【0106】
方法2は、運転中の全室内機の台数に対する第2室内機4の運転台数の割合に応じて種別を識別し、その識別結果に応じて制御間隔を決定する方法である。「間膨比」は、運転中の全室内機に対する第2室内機4(間膨端末)の運転台数の割合を示している。この方法2においては、制御パターン決定部912は、間膨比が50%未満のときは、制御間隔を60秒(第1の制御時間)と決定し(パターン1,4~6)、間膨比が50%以上のときは、制御間隔を120秒(第2の制御時間)と決定する(パターン2,3,7)。
【0107】
方法1は、間膨端末である第2室内機4の利用者の快適性の確保を優先にしものであるといえるのに対し、方法2は、運転台数の割合に応じて定まる利用者の快適性を優先したものであるといえる。なお方法方2においては、一例として間膨比50%を基準に制御間隔を決定するようにしたが、間膨比の基準は50%に限られない。
【0108】
上述の方法1と方法2のいずれを採用するかは、第1室内機3および第2室内機4あるいは中継ユニット50の設置環境等に応じて任意に選択可能である。また、上述の方法2で採用される間膨比の基準(50%)についても同様に、第1室内機3および第2室内機4あるいは中継ユニット50の設置環境等に応じて任意に変更可能である。
【0109】
(室内機が設置される空間の広さ)
例えば図7に示すように、執務室で7台の直膨端末型の室内機(第1室内機3に相当)が運転しており、3つの会議室A,B,Cではそれぞれ1台の間膨端末型の室内機(第2室内機4に相当)が運転している場合を考える。この場合、上述の方法2では間膨端末の割合が30%であるため、制御間隔としては直膨端末を対象する制御時間(第1の制御時間)に決定されるが、各会議室は執務室よりも空間的に狭いため第1の制御時間では制御が過剰になる可能性が高くなりやすく、このため会議室の利用者の快適性が大きく低下するおそれがある。そこで、執務室と会議室との空間の広さを考慮して、いずれかの会議室で間膨端末が運転しているときは方法1を採用し、制御間隔が常に間膨端末を対象とする制御時間(第2の制御時間)となるようにしてもよい。
【0110】
(室内機の利用頻度)
直膨端末型の室内機(第1室内機3に相当)が設置される部屋と、間膨端末型の室内機第2室内機4が設置される部屋があり、いずれの室内機も運転している場合は、利用頻度が高い方の部屋に設置された室内機の種別(直膨または間膨)に対応する制御間隔で圧縮機21の回転数の制御時間が決定されてもよい。利用頻度が高い部屋ほど利用者が多いと考えられることから、利用頻度が高い部屋に設置された室内機の種別に対応する制御間隔を採用することで当該利用者の快適性の低下を抑えることができる。なお、各部屋の利用頻度は、例えば各室内機の運転履歴や総運転時間、各部屋の利用履歴等を基に算出することができる。
【0111】
(中継ユニットの設置環境)
間膨端末の熱時定数は、中継ユニット50と第2室内機4との間を接続する水配管11,12の長さや水回路40を循環する水の量等によっても変化する。例えば、水配管11,12の配管長が長いほど水回路40の水量が増加するため、圧縮機21の回転数の変化が室温の変化として現れる時間が長くなる(応答性が悪くなる)。このため、間膨端末を対象とする制御間隔(第2の制御時間)を上記配管長や水量に応じて可変に設定されてもよい。このように制御の応答性に影響を与える中継ユニット50の設置情報を加味することでより適切に制御時間を設定でき、これにより間膨端末の利用者の快適性の低下を抑えることができる。なお上記配管長を含む設置情報は、記憶部92(図2参照)に格納される。
【0112】
(圧縮機の回転数の変化率による制御)
ここまで圧縮機21の回転数の制御時間が制御間隔である場合を例に挙げて説明したが、制御時間を圧縮機21の回転数の変化率(変化速度)としてもよい。例えば、制御間隔は直膨端末に対応する制御間隔(例えば、60秒)として、間膨端末を対象とする圧縮機21の回転数の変化率を、直膨端末を対象とする変化率(例えば、1秒あたり1rps)よりも遅くする(例えば、1秒あたり0.5rps)ように設定してもよい。以下の説明では、制御間隔を60秒として、制御パターン決定部912から圧縮機21の回転数を60rps上昇させる指示があった場合を例に挙げて説明する。
【0113】
圧縮機21の回転数の変化率が1秒あたり1rpsの場合には、圧縮機21の回転数は次の制御までに60rps上昇する。しかし、熱時定数の大きい間膨端末では、圧縮機21の回転数の変化量の一部(例えば、30rps分)は室温に反映されないため、次の制御では間膨端末の要求能力が過大に算出され、過剰な制御になる可能性がある。
【0114】
一方で、圧縮機21の回転数の変化率を1秒あたり0.5rpsとした場合には、圧縮機21の回転数は次の制御までに30rpsだけ上昇する。その結果、熱時定数の大きい間膨端末であっても室温に反映されていない圧縮機21の回転数の変化量が小さくなり(例えば、15rps分)、過剰な制御を抑制することができる。
【0115】
さらに、次のフィードバック制御において、室温に反映されていない分の圧縮機21の回転数の変化量を加味して、間膨端末型の室内機の要求能力を算出するようにしてもよい。このような制御を行うことで、要求能力を正確に算出できるため、より適切にフィードバック制御を行うことができる。
【0116】
<第2の実施形態>
上述の第1の実施形態では、直膨端末と間膨端末とでフィードバック制御のタイミングを同一としたが、本実施形態では直膨端末と間膨端末とでフィードバック制御の更新間隔を異ならせることで、直膨端末と間膨端末とで快適性の両立を図るようにしている。
【0117】
図8は、本実施形態における制御装置90のCPU91Aの構成を示す機能ブロック図である。制御装置90は、本発明における制御手段の一具体例である。CPU91Aは、端末識別部911と、制御パターン決定部912、マスク決定部913とを有する。すなわち本実施形態では、マスク決定部913を有する点で第1の実施形態と異なる。
【0118】
マスク決定部913は、端末識別部911の識別情報に基づいて中継ユニット50が運転中であるか否かを判定し、中継ユニット50が運転中の場合には中継ユニット50からの要求能力の入力を所定間隔でマスクする。
【0119】
図9は、間膨端末からの要求能力の入力に対するマスク例を示す説明図である。同図において黒丸は直膨端末からの要求能力の入力を示し、白丸は間膨端末からの要求能力の入力を示している。ここでは、圧縮機11の回転数の制御間隔が60秒である場合を例に挙げて説明する。
【0120】
制御パターン決定部912は、図9の時刻T1、T3およびT5では第1室内機3からの要求能力Pd(図3)と中継ユニット50からの要求能力Pi(図3)との総和で全能力コードCrt(図5)を算出し、その算出値に対応する回転数を決定する。一方、制御パターン決定部912は、時刻T2およびT4では、中継ユニット50からの要求能力の入力がマスクされるため第1室内機3からの要求能力Pdのみで全能力コードCrtを算出し、その算出値に対応する回転数を決定する。すなわち本例では、120秒間隔で中継ユニット50からの要求能力がマスクされる。
【0121】
このように本実施形態によれば、間膨端末である第2室内機4においては能力調整の結果に反応する前に要求能力を算出することによる能力過剰を防止でき、直膨端末である第1室内機3においてはその熱時定数に合わせた能力調整を行うことができる。これにより、直膨端末および間膨端末のいずれにも適した制御間隔で運転能力の調整を行えるようになる。
【0122】
なお、中継ユニット50からの要求能力のマスク時(時刻T2,T4)においては第1室内機3からの要求能力Pdのみで(すなわちPi=0として)全能力コードCrtを算出するようにしたが、これに代えて、第1室内機3からの要求能力Pdに前回算出した中継ユニット50からの要求能力Piが加算された値で全能力コード値Crtが算出されてもよい。あるいは、第1室内機3からの要求能力Pdに、中継ユニット50からの現在の要求能力Piと前回の要求能力Piとの差分(ΔPi)が加算された値で全能力コード値Crtが算出されてもよい。
【0123】
また、中継ユニット50からの要求能力Piをマスクする間隔は、間膨端末の運転台数の割合に応じて変更するようにしてもよい。つまり、マスク決定部913は、第1室内機3の運転台数と第2室内機4の運転台数との割合に応じて、中継ユニット50からの要求能力の入力をマスクするか否かを決定するようにしてもよい。
【0124】
例えば間膨比が50%未満の場合においてのみ(図6においてパターン4,6)、圧縮機11の回転数の制御間隔を第1の制御時間(60秒)としつつ、間膨端末(中継ユニット50)からの要求能力をマスクするようにしてもよい。これにより、運転中の全室内機の半数以上を占める直膨端末(第1室内機3)についてはその熱時定数に応じた制御間隔で運転能力の調整を行えるため、直膨端末側の室内の快適性の低下を抑えることができる。
【0125】
また上述のように、間膨端末の熱時定数は中継ユニット50と第2室内機4との間を接続する水配管11,12の長さや水回路40を循環する水の量等によっても変化する。このため、マスク決定部913は、端末識別部911の識別情報と、記憶部92に記憶された中継ユニット50の設置情報とに応じて、中継ユニット50の要求能力の入力をマスクする頻度(周期)を変更するようにしてもよい。例えば、水配管11,12の長さが所定の長さ以上である場合は、水配管11,12の長さが上記所定の長さ未満である場合よりも、中継ユニット50の要求能力の入力をマスクする頻度を高くすることにより、快適性の低下を抑制することができる。
【0126】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本実施形態において被熱交換対象は室内空気および水としたが、これに限られず、被熱交換対象は不凍液であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
1…室外機
3…第1室内機
4…第2室内機
11…第1水配管
12…第2水配管
21…圧縮機
22…四方弁
23…室外熱交換器
31,41…室内熱交換器
33…第1膨張弁
50…中継ユニット
52…第2膨張弁
90…制御装置
100…冷凍サイクル装置
911…端末識別部
912…制御パターン決定部
913…マスク決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2025-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室外熱交換器とを有する室外機と、
前記圧縮機の駆動により流入する冷媒と空気を熱交換させる冷媒熱交換器と第1膨張弁とを有し、前記室外機と接続される少なくとも1つの第1室内機と、
前記圧縮機の駆動により流入する冷媒と水を熱交換させる水冷媒熱交換器と第2膨張弁とを有し、前記第1室内機と並列に前記室外機に接続される少なくとも1つの中継ユニットと、
前記第1室内機および前記中継ユニットの運転状態を個々に識別する端末識別部を有し、前記端末識別部の識別情報と前記第1室内機および前記中継ユニットからの要求能力の総和とに応じて、前記圧縮機の回転数の制御パターンを決定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記端末識別部の識別情報に応じて前記圧縮機の回転数の制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御手段は、前記第1室内機のみが運転中のときは、前記中継ユニットのみが運転中のときよりも前記制御時間を短くする
冷凍サイクル装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記中継ユニットに水配管を介して接続され、水と空気を熱交換させる水空気熱交換器と流量調整弁とを有する少なくとも1つの第2室内機をさらに備え、
前記端末識別部は、前記中継ユニットの運転状態として前記第2室内機の運転状態を識別し、
前記制御手段は、前記第1室内機の運転台数と前記第2室内機の運転台数との割合に応じて、前記圧縮機の回転数の制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御手段は、前記第1室内機の運転台数が前記第2室内機の運転台数より多いときは、前記第1室内機の運転台数が前記第2室内機の運転台数よりも少ないときよりも前記制御時間を短くする
冷凍サイクル装置。
【請求項5】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御時間として、前記第1室内機を対象とする第1制御時間と、前記中継ユニットを対象とする、前記第1制御時間よりも長い第2制御時間とを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御手段は、前記制御時間を前記第1制御時間と前記第2制御時間のいずれか一方を選択する
冷凍サイクル装置。
【請求項6】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記中継ユニットに水配管を介して接続され、水と空気を熱交換させる水空気熱交換器と流量調整弁とを有する少なくとも1つの第2室内機と、
前記第1室内機および前記第2室内機の利用状況の履歴を記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記端末識別部は、前記中継ユニットの運転状態として前記第2室内機の運転状態を識別し、
前記制御手段は、運転中の前記第1室内機および前記第2室内機のうち利用頻度の高い方の室内機を対象として前記制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項7】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記第1室内機および前記中継ユニットの設置情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御手段は、前記識別情報と前記設置情報とに応じて前記制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御手段は、前記制御時間として、前記圧縮機の回転数の制御間隔を前記端末識別部の識別情報に応じて決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御手段は、前記制御時間として、前記圧縮機の回転数の変化率を前記端末識別部の識別情報に応じて決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項10】
圧縮機と、室外熱交換器とを有する室外機と、
前記圧縮機の駆動により流入する冷媒と空気を熱交換させる冷媒熱交換器と第1膨張弁とを有し、前記室外機と接続される少なくとも1つの第1室内機と、
前記圧縮機の駆動により流入する冷媒と水を熱交換させる水冷媒熱交換器と第2膨張弁とを有し、前記第1室内機と並列に前記室外機に接続される少なくとも1つの中継ユニットと、
前記第1室内機および前記中継ユニットの運転状態を個々に識別する端末識別部を有し、前記端末識別部の識別情報と前記第1室内機および前記中継ユニットからの要求能力の総和とに応じて、前記圧縮機の回転数の制御パターンを決定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記要求能力を所定時間ごとに取得し、前記中継ユニットが運転中の場合には前記中継ユニットからの要求能力の入力を所定間隔でマスクして前記圧縮機の回転数の制御時間を決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項11】
請求項10に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記中継ユニットに水配管を介して接続され、水と空気を熱交換させる水空気熱交換器と流量調整弁とを有する少なくとも1つの第2室内機をさらに備え、
前記端末識別部は、前記中継ユニットの運転状態として前記第2室内機の運転状態を識別し、
前記制御手段は、前記第1室内機の運転台数と前記第2室内機の運転台数との割合に応じて、前記中継ユニットからの要求能力の入力をマスクするか否かを決定する
冷凍サイクル装置。
【請求項12】
請求項10に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記第1室内機および前記中継ユニットの設置情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御手段は、前記識別情報と前記設置情報とに応じて、前記中継ユニットからの要求能力の入力をマスクする頻度を変更する
冷凍サイクル装置。