(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151552
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】絶縁材
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
H05K3/28 C
H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053049
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】依田 弥生
(72)【発明者】
【氏名】林 茉莉花
(72)【発明者】
【氏名】磯野 仁希
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 彰一
(72)【発明者】
【氏名】清田 達也
【テーマコード(参考)】
5E314
【Fターム(参考)】
5E314AA24
5E314AA36
5E314AA42
5E314BB02
5E314GG06
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】低熱膨張率であり、かつ耐電圧に優れる絶縁材を提供すること。
【解決手段】第一樹脂組成物からなる第一絶縁層1と、第一絶縁層1の少なくとも一方の表面に設けられている、第二樹脂組成物からなる第二絶縁層2とを備える絶縁材100であって、前記第一樹脂組成物が、無機フィラーを含有し、前記第二樹脂組成物が、無機フィラーを含有しない、絶縁材100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一樹脂組成物からなる第一絶縁層と、前記第一絶縁層の少なくとも一方の表面に設けられている、第二樹脂組成物からなる第二絶縁層とを備える絶縁材であって、
前記第一樹脂組成物が、無機フィラーを含有し、
前記第二樹脂組成物が、無機フィラーを含有しない、
絶縁材。
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁材において、
前記第二絶縁層の厚みが、0.5μm以上10μm以下である、
絶縁材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の絶縁材において、
前記第一樹脂組成物は、前記第一樹脂組成物の全固形分に対して、20質量%以上70質量%以下の無機フィラーを含有する、
絶縁材。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の絶縁材において、
前記無機フィラーが、シリカである、
絶縁材。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の絶縁材において、
前記第一樹脂組成物が、ポリイミドを含有する、
絶縁材。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の絶縁材において、
前記第二絶縁層は、前記第一絶縁層の両方の表面に設けられている、
絶縁材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化および軽量化に伴い、フレキシブルプリント配線基板が広く用いられている。このフレキシブルプリント配線基板は、例えば、ポリイミド基材上にパターン形成された銅配線を被覆するようにカバーレイを積層することにより形成される。
例えば、特許文献1には、絶縁性、可撓性および光反射性を有するカバーフィルム、並びに、このカバーフィルムの一方の面に積層される接着層を備えるカバーレイが記載されている。このカバーレイでは、カバーフィルムが、基材層と、この基材層の他方の面側に積層される反射層とを含む。そして、この反射層が白色顔料を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、カバーレイには、低熱膨張率も要求されるようになった。そこで、カバーレイを形成するためのワニスに、無機フィラーを多量に配合することが考えられる。しかしながら、無機フィラーを多量に含むワニスを塗工し、硬化させると、耐電圧が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、低熱膨張率であり、かつ耐電圧に優れる絶縁材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示す絶縁材が提供される。
[1] 第一樹脂組成物からなる第一絶縁層と、前記第一絶縁層の少なくとも一方の表面に設けられている、第二樹脂組成物からなる第二絶縁層とを備える絶縁材であって、
前記第一樹脂組成物が、無機フィラーを含有し、
前記第二樹脂組成物が、無機フィラーを含有しない、
絶縁材。
[2] [1]に記載の絶縁材において、
前記第二絶縁層の厚みが、0.5μm以上10μm以下である、
絶縁材。
[3] [1]または[2]に記載の絶縁材において、
前記第一樹脂組成物は、前記第一樹脂組成物の全固形分に対して、20質量%以上60質量%以下の無機フィラーを含有する、
絶縁材。
[4] [1]から[3]のいずれかに記載の絶縁材において、
前記無機フィラーが、シリカである、
絶縁材。
[5] [1]から[4]のいずれかに記載の絶縁材において、
前記第一樹脂組成物が、ポリイミドを含有する、
絶縁材。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載の絶縁材において、
前記第二絶縁層は、前記第一絶縁層の両方の表面に設けられている、
絶縁材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、低熱膨張率であり、かつ耐電圧に優れる絶縁材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る絶縁材を示す断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る絶縁材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大または縮小をして図示した部分がある。
【0010】
(絶縁材)
本実施形態に係る絶縁材100は、
図1に示すように、第一樹脂組成物からなる第一絶縁層1と、第一絶縁層1の少なくとも一方の表面に設けられている、第二樹脂組成物からなる第二絶縁層2とを備えている。また、絶縁材100は、基板3の上に、設けられている。
そして、この第一樹脂組成物が、無機フィラーを含有し、この第二樹脂組成物が、無機フィラーを含有しないことが必要である。
【0011】
本実施形態に係る絶縁材100が、低熱膨張率であり、かつ耐電圧に優れる理由は、以下のとおりであると本発明者らは推察する。
すなわち、絶縁材100の熱膨張率を低くするためには、無機フィラーを多量に配合する必要があるが、無機フィラーを多量に含むワニスを塗工し硬化させると、無機フィラーが膜表面に露出してしまう。これにより、耐電圧が低下してしまうものと本発明者らは推察する。これに対し、本実施形態に係る絶縁材100においては、無機フィラーを含有する第一絶縁層1の上側の表面に、無機フィラーを含有しない第二絶縁層2が設けられている。そのため、無機フィラーが、絶縁材100の表面に露出することを抑制し、表面を平滑化するができる。これにより、絶縁材100の耐電圧を向上できる。以上のようにして、本実施形態に係る絶縁材100は、低熱膨張率であり、かつ耐電圧に優れるものと反発明者らは推察する。
【0012】
(第一絶縁層)
第一絶縁層1は、第一樹脂組成物からなる層である。そして、第一樹脂組成物は、無機フィラーを含有することが必要である。この無機フィラーにより、絶縁材100の熱膨張率を低くできる。
無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、諸物性のバランスの観点から、シリカが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
無機フィラーの配合量は、第一樹脂組成物の固形分100質量%に対して、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、25質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上55質量%以下であることが特に好ましい。無機フィラーの配合量が前記下限以上であれば、絶縁材の熱膨張率を更に低くできる。他方、無機フィラーの配合量が前記上限以下であれば、第一樹脂組成物中に無機フィラーを十分に分散できる。
【0014】
第一樹脂組成物は、樹脂を含有する。樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン、シンジオタクチックポリスチレン、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、およびメラミン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、低熱膨張率および優れた耐電圧の観点から、ポリイミドが好ましい。また、このポリイミドは、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を硬化させて得られるものであることが好ましい。
【0015】
第一樹脂組成物は、無機フィラーおよび樹脂以外に、添加剤および溶剤を含有してもよい。
添加剤としては、硬化促進剤、および難燃剤などが挙げられる。
溶剤としては、n-メチル-2-ピロリドン(N-メチルピロリドン)、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびメチルエチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
第一絶縁層1の厚みは、耐電圧の観点から、10μm以上100μm以下であることが好ましく、15μm以上50μm以下であることがより好ましく、20μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0017】
(第二絶縁層)
第二絶縁層2は、第二樹脂組成物からなる層である。そして、第二樹脂組成物は、無機フィラーを含有しないことが必要である。また、第二絶縁層2は、第一絶縁層1の少なくとも一方の表面に設けられるが、
図1に示すように、第一絶縁層1の上側の表面に、設けられることが好ましい。このようにすれば、第一絶縁層1の上側の表面に露出している無機フィラーを、第二絶縁層2で覆うことができる。
【0018】
第二樹脂組成物は、樹脂を含有する。樹脂としては、第一樹脂組成物で用いる樹脂と同様のものが挙げられる。なお、層間接着性の観点から、第一樹脂組成物および第二樹脂組成物で用いる樹脂を同じ種類にすることが好ましい。
第二樹脂組成物は、樹脂以外に、第一樹脂組成物で用いる添加剤および溶剤を含有してもよい。
【0019】
第二絶縁層2の厚みは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましく、1μm以上5μm以下であることがさらに好ましく、2μm以上4μm以下であることが特に好ましい。第二絶縁層2の厚みが前記下限以上であれば、膜表面での無機フィラーの露出をより確実に抑制できる。他方、第二絶縁層2の厚みが前記上限以下であれば、低熱膨張率を維持できる。
【0020】
熱膨張率および耐電圧のバランスの観点から、第一絶縁層1の厚みに対する第二絶縁層2の厚みの比(第二絶縁層2の厚み/第一絶縁層1の厚み)は、1/20以上1/2以下であることが好ましく、1/15以上1/4以下であることがより好ましく、1/10以上1/6以下であることが特に好ましい。
【0021】
(基板)
基板3としては、適宜公知のものが挙げられる。具体的には、フレキシブル配線基板、リジット配線基板、および半導体基板などを挙げられる。
【0022】
(絶縁材の作製方法)
本実施形態に係る絶縁材100の作製方法は、特に限定されない。絶縁材100は、例えば、基板3の上に、第一樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成する第一成膜工程と、第一成膜工程で形成された塗布膜を乾燥して、第一絶縁層1の前駆体膜を形成する第一乾燥工程と、第一乾燥工程で得られた第一絶縁層1の前駆体膜の上に、第二樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成する第二成膜工程と、第二成膜工程で形成された塗布膜を乾燥して、第二絶縁層2の前駆体膜を形成する第二乾燥工程と、第一絶縁層1および第二絶縁層2の前駆体膜を硬化させて、第一絶縁層1および第二絶縁層2を形成する硬化工程と、を備える方法により、作製できる。
【0023】
第一成膜工程においては、基板3の上に、第一樹脂組成物を塗布して膜状にする。
第一樹脂組成物の塗布装置としては、バーコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ロールコーター、およびスクリーン印刷機などが挙げられる。
第一樹脂組成物の塗布厚みは、第一絶縁層1の厚みが前述の範囲となるように、調整することが好ましい。
【0024】
第一乾燥工程においては、第一成膜工程で形成された塗布膜を乾燥(以下、プリベークとも称する)して、第一絶縁層1の前駆体膜を形成する。
乾燥の条件は、樹脂の種類に応じて、適宜設定できる。例えば、樹脂がポリイミドの前駆体であるポリアミック酸である場合には、以下の条件が挙げられる。
乾燥の温度は、60℃以上150℃以下であることが好ましく、70℃以上140℃以下であることがより好ましく、80℃以上130℃以下であることが特に好ましい。この温度が前記範囲内であれば、第一樹脂組成物中の溶剤を乾燥させることができる。
乾燥の時間は、10秒間以上45分間以下であることが好ましく、1分間以上40分間以下であることがより好ましく、5分間以上35分間以下であることが特に好ましい。この時間が前記範囲内であれば、第一樹脂組成物中の溶剤を乾燥させることができる。
【0025】
第二成膜工程においては、第一乾燥工程で得られた第一絶縁層1の前駆体膜の上に、第二樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成する。
第二樹脂組成物の塗布装置としては、第一樹脂組成物の塗布装置と同様のものを使用できる。
第二樹脂組成物の塗布厚みは、第二絶縁層2の厚みが前述の範囲となるように、調整することが好ましい。
【0026】
第二乾燥工程においては、第二成膜工程で形成された塗布膜を乾燥して、第二絶縁層2の前駆体膜を形成する。
乾燥の条件は、第一硬化工程における乾燥の条件と同様である。
【0027】
硬化工程においては、第一絶縁層1および第二絶縁層2の前駆体膜を硬化させて、第一絶縁層1および第二絶縁層2を形成する。
硬化の条件は、樹脂の種類に応じて、適宜設定できる。例えば、樹脂がポリイミドの前駆体であるポリアミック酸である場合には、以下の条件が挙げられる。
硬化の温度は、140℃以上250℃以下であることが好ましく、150℃以上240℃以下であることがより好ましく、160℃以上230℃以下であることが特に好ましい。この温度が前記範囲内であれば、第一樹脂組成物および第二樹脂組成物を適切に硬化させることができる。
硬化の時間は、10分間以上300分間以下であることが好ましく、15分間以上200分間以下であることがより好ましく、20分間以上100分間以下であることが特に好ましい。この時間が前記範囲内であれば、第一樹脂組成物および第二樹脂組成物を適切に硬化させることができる。
なお、硬化は、一段階で行ってもよいが、二段階以上で行ってもよい。
以上のようにして、本実施形態に係る絶縁材100を作製できる。
【0028】
(第一実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)第一絶縁層1の上側の表面に露出している無機フィラーを、第二絶縁層2で覆うことができる。そして、低熱膨張率であり、かつ耐電圧に優れる絶縁材100が得られる。
【0029】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を図面に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同様の構成についての説明は省略する。
本実施形態に係る絶縁材100Aは、
図2に示すように、第一樹脂組成物からなる第一絶縁層1と、第一絶縁層1の両方の表面に設けられている、第二樹脂組成物からなる第二絶縁層2とを備えている。また、絶縁材100Aは、基板3の上に、設けられている。
そして、この第一樹脂組成物が、無機フィラーを含有し、この第二樹脂組成物が、無機フィラーを含有しないことが必要である。
【0030】
第一絶縁層1、第二絶縁層2、および基板3については、前述のとおりである。
本実施形態に係る絶縁材100Aは、前述した絶縁材100の作製方法における第一成膜工程の前に、基板3の上に、第二樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成する前塗布膜成膜工程と、前塗布膜成膜工程で形成された塗布膜を乾燥して、第二絶縁層2の前駆体膜を形成する前塗布膜乾燥工程と、をさらに備える方法で作製できる。
【0031】
(第二実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態における作用効果(1)と同様の作用効果、並びに、下記作用効果(2)を奏することができる。
(2)耐電圧および伸び率を更に向上させた絶縁材100Aが得られる。
【0032】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、または改良などは本発明に含まれる。
例えば、前述の実施形態では、絶縁材100は、第一樹脂組成物と第二樹脂組成物の2つの塗液を用いて、作製しているが、これに限定されない。例えば、樹脂組成物として、無機フィラーが沈殿して、2層に分かれるようなものを使用して、絶縁材100を作製してもよい。
【実施例0033】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を
以下に示す。
(樹脂)
ポリアミック酸溶液:下記調製例1で得られるポリアミック酸溶液
(無機フィラー)
無機フィラー:シリカ、商品名「SC2500-SQ」、アドマテックス社製
(溶剤)
溶剤A:n-メチル-2-ピロリドン(N-メチルピロリドン)、阪本薬品工業社製
溶剤B:シクロヘキサノン、三洋化成品社製
【0034】
[調製例1]
攪拌機、還流冷却管、温度計を備えた1Lの四つ口セパラブルフラスコに、4,4-オキシジアニリン0.5g、ダイマージアミン(クローダジャパン社製の「PRIAMINE1075」)4g、2,2',3,3',5,5'-ヘキサメチル[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル=ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボキシラート)6.2g、n-メチル-2-ピロリドン32gを仕込み、反応容器内に窒素を0.1mL/secで吹き込みながら、50℃で3.5時間ほど加熱攪拌し、塩溶解を確認後、さらに室温撹拌を24時間行い、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を合成して、ポリアミック酸溶液(固形分:20質量%)を得た。このポリアミック酸自体は溶液であり、そのまま銅箔に対する塗布用のワニスとして使用できる。
【0035】
[実施例1]
調製例1で得られたポリアミック酸溶71質量%、無機フィラー14質量%、溶剤A3質量%、および溶剤B12質量%を、3本ロールで混合分散して、第一樹脂組成物を得た。
また、調製例1で得られたポリアミック酸溶液を、そのまま第二樹脂組成物とした。
基板(PETフィルム、厚み40μm)の上に、第一樹脂組成物を塗工した後、120℃10分間のプリベークをして、第一絶縁層(厚み:20μm)の前駆体膜を形成した。
その後、第一絶縁層の前駆体膜の上に、第二樹脂組成物を塗工した後、上記と同様の条件で、プリベークをして、第二絶縁層(厚み:3μm)の前駆体膜を形成した。次いで、150℃60分間の熱硬化処理を行い、その後さらに180℃30分間の熱硬化処理を行うことで、ポリアミック酸が閉環重合し、ポリイミドを得て、第一絶縁層および第二絶縁層を形成して、絶縁材を作製した。
【0036】
[実施例2]
実施例1と同様にして、第一樹脂組成物および第二樹脂組成物を得た。
基板(PETフィルム、厚み40μm)の上に、第二樹脂組成物を塗工した後、120℃10分間のプリベークをして、第二絶縁層(厚み:3μm)の前駆体膜を形成した。
次に、第二絶縁層の前駆体膜の上に、第一樹脂組成物を塗工した後、上記と同様の条件で、プリベークをして、第一絶縁層(厚み:20μm)の前駆体膜を形成した。
その後、第一絶縁層の前駆体膜の上に、第二樹脂組成物を塗工した後、上記と同様の条件で、プリベークをして、第二絶縁層(厚み:3μm)の前駆体膜を形成した。次いで、150℃60分間の熱硬化処理を行い、その後さらに180℃30分間の熱硬化処理を行うことで、ポリアミック酸が閉環重合し、ポリイミドを得て、第一絶縁層および第二絶縁層を形成して、絶縁材を作製した。
【0037】
[比較例1]
実施例1と同様にして、第一樹脂組成物を得た。
基板(PETフィルム、厚み40μm)の上に、第一樹脂組成物を塗工した後、120℃10分間のプリベークをし、150℃60分間の熱硬化処理を行い、その後さらに180℃30分間の熱硬化処理を行うことで、ポリアミック酸が閉環重合し、ポリイミドを得て、第一絶縁層(厚み:23μm)を形成して、絶縁材を作製した。
【0038】
[比較例2]
調製例1で得られたポリアミック酸溶液を、そのまま第二樹脂組成物とした。
基板(PETフィルム、厚み40μm)の上に、第二樹脂組成物を塗工した後、120℃10分間のプリベークをし、150℃60分間の熱硬化処理を行い、その後さらに180℃30分間の熱硬化処理を行うことで、ポリアミック酸が閉環重合し、ポリイミドを得て、第二絶縁層(厚み:23μm)を形成して、絶縁材を作製した。
【0039】
[絶縁材の評価]
絶縁材の評価(耐電圧、熱膨張率、伸び率)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。また、実施例および比較例における、樹脂組成物の配合組成、および層構成を表1に示す。
(1)耐電圧
得られた絶縁材を試料として、所定の面積で、絶縁材の厚さ方向に対して、電圧を0.5kV/secで昇圧させ、導電する電圧を測定し、絶縁破壊強度を算出した。そして、以下の基準に従って、耐電圧を評価した。
◎:絶縁破壊強度が、450kV/mm以上である。
○:絶縁破壊強度が、400kV/mm以上450kV/mm未満である。
△:絶縁破壊強度が、350kV/mm以上400kV/mm未満である。
×:絶縁破壊強度が、350kV/mm未満である。
(2)熱膨張率
得られた絶縁材を所定のサイズに切り出して試料とし、IPC TM-650 2.4.24Cに準拠し、熱膨張率を測定した。そして、以下の基準に従って、熱膨張率を評価した。
◎:熱膨張率が、80×10-6mm/℃未満である。
○:熱膨張率が、80×10-6mm/℃以上100×10-6mm/℃未満である。
×:熱膨張率が、100×10-6mm/℃以上である。
(3)伸び率
得られた絶縁材を所定のサイズに切り出して試料とし、SHIMAZU社製のオートグラフを使用し、引張速度5mm/minの条件で、伸び率を測定した。そして、以下の基準に従って、伸び率を評価した。
◎:伸び率が、5%以上である。
○:伸び率が、3%以上5%未満である。
△:伸び率が、1%以上3%未満である。
×:伸び率が、1%未満である。
【0040】
【0041】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明に係る絶縁材(実施例1および2)は、耐電圧、熱膨張率、および伸び率の全ての結果が良好であった。従って、本発明に係る絶縁材は、低熱膨張率であり、かつ耐電圧に優れることが確認された。