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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151574
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20251002BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
A23L2/38 B
A23L2/00 F
A23L2/38 G
A23L2/52
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053079
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太士
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇典
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC04
4B117LE01
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK13
4B117LK21
4B117LK23
4B117LP12
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、銅及び/又は亜鉛を含有しつつも、銅及び/又は亜鉛に由来する金属臭や苦味の少ない有用細菌含有飲料を提供することにある。また、銅及び/又は亜鉛を含有し、有用細菌の沈殿が抑制された有用細菌含有飲料を提供することにある。
【解決手段】
本出願人は、銅及び/又は亜鉛を含有する飲料に対して、乳酸菌などの有用細菌を配合することにより、銅や亜鉛に由来する金属臭や苦味が軽減されることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、有用細菌と共に、銅及び/又は亜鉛を含有させることにより、有用細菌の沈殿が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【選択図】
なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオン及び亜鉛イオンの中から選ばれる少なくとも1以上と、有用細菌を含有し、前記銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が1質量ppm以上であることを特徴とする、飲料。
【請求項2】
さらに、カリウムイオンを含有することを特徴とする、請求項1に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅イオン及び/又は亜鉛イオンと有用細菌を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
銅や亜鉛は、生命を維持する上で不可欠な必須微量栄養素である(非特許文献1)。銅は、ヘモグロビン合成に必須の酵素を構成する成分であり、鉄代謝に関与し、貧血予防に不可欠なミネラルである。また、免疫細胞(マクロファージなど)においてエネルギー代謝に関わる酵素を構成する成分でもあるため、免疫機能にも寄与している。一方、亜鉛は、タンパク質やDNAの合成に必要なミネラルであり、発育や生命の維持に重要な役割を果たしている。亜鉛が欠乏すると皮膚や粘膜などの再生不良による創傷治癒障害や、味蕾細胞数の減少による味覚障害が引き起こされることが知られている。このように、銅や亜鉛は欠くことのできない重要な栄養素であるため、銅や亜鉛を補給するサプリメントが広く流通している。
【0003】
銅や亜鉛を含有するサプリメントの剤形としては、錠剤やカプセルが一般的である。他方で、錠剤やカプセルを嚥下することが苦手な消費者もいるため、銅や亜鉛を手軽に補給できる飲料の開発が求められてきた。しかしながら、銅や亜鉛は独特の金属臭や苦味を有するため、飲料の剤形には適さないという課題があった。
【0004】
ところで、銅や亜鉛と同様、健康に寄与する素材として、乳酸菌やビフィズス菌といった有用細菌が知られている。有用細菌は水に不溶であるため、有用細菌を配合した健康食品は、錠剤やカプセルといった剤形の場合が多い。飲料に有用細菌を配合する場合には、有用細菌の沈殿を抑制するための工夫が必要となる。有用細菌の沈殿を抑制する方法としては、乳酸菌を含有する飲料のpHを二段階で調整し、最終的にpH4以下にする方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、pHを低くするため、飲料の酸味が強くなるという課題があった。また、安定剤としてHMペクチンを用いることにより乳酸菌の沈殿を抑制する方法(非特許文献2)も知られているが、余計な食品添加物の配合を望まない消費者が多いことや、HMペクチンの配合が飲料の質感に影響を与えること等の理由から、別の方法の開発が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-074701号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】塩釜市立病院ホームページ,「栄養だより~微量元素を知ろう~ 令和4年11.12月号」,URL: http://www.city-hospital-shiogama.jp/data/eiyodayori/4-11-12-eiyodayori.pdf,2024年3月25日検索
【非特許文献2】ユニテックフーズ株式会社ホームページ,「低脂肪・無脂肪でも美味しい乳製品開発」,URL: http://www.unitecfoods.co.jp/wp/?article=detail003,2024年3月25日検索
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、銅及び/又は亜鉛を含有しつつも、銅及び/又は亜鉛に由来する金属臭や苦味の少ない有用細菌含有飲料を提供することにある。また、銅及び/又は亜鉛を含有し、有用細菌の沈殿が抑制された有用細菌含有飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、上記課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、銅及び/又は亜鉛を含有する飲料に対して、乳酸菌などの有用細菌を配合することにより、銅や亜鉛に由来する金属臭や苦味が軽減されることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、有用細菌と共に、銅及び/又は亜鉛を含有させることにより、有用細菌の沈殿が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]銅イオン及び亜鉛イオンの中から選ばれる少なくとも1以上と、有用細菌を含有し、前記銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が1質量ppm以上であることを特徴とする、飲料。
[2]さらにカリウムイオンを含有することを特徴とする、[1]に記載の飲料。
[3]さらにカリウムイオンを含有し、カリウムイオンの濃度が30~500質量ppmであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の飲料。
[4]前記銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が100質量ppm以下であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]さらに食物繊維を含有することを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]さらに食物繊維を含有し、食物繊維の濃度が1000~50000質量ppmであることを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7]前記有用細菌が乳酸菌及びビフィズス菌の中から選ばれるいずれか1以上であることを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載の飲料。
[8]前記飲料が容器詰飲料であることを特徴とする、[1]~[7]のいずれかに記載の飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、銅及び/又は亜鉛を含有しつつも、銅及び/又は亜鉛に由来する金属臭や苦味の少ない有用細菌含有飲料を得ることができる。また、銅及び/又は亜鉛を含有し、有用細菌の沈殿が抑制された有用細菌含有飲料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の飲料について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明の飲料は、銅イオン及び亜鉛イオンの中から選ばれる少なくとも1以上と、有用細菌を含有し、前記銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度(両方を含有する場合には合計の濃度)が1質量ppm以上であることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、銅及び/又は亜鉛イオンの濃度が1質量ppm以上である飲料に有用細菌を配合することにより、銅及び/又は亜鉛に由来する金属臭や苦味が軽減される。
【0014】
また、本発明によれば、銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有することにより、飲料中における有用細菌の沈殿が抑制される。
【0015】
[銅イオン・亜鉛イオン]
本発明の飲料は、銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度(両方を含有する場合には合計の濃度)が1質量ppm以上である。銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が1質量ppm未満の場合には、銅及び/亜鉛に由来する金属臭や苦味を何もしなくとも感じないため、本発明の課題が存在しない。飲料中の銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度としては1ppm以上の範囲であれば特に制限はないが、銅及び/又は亜鉛を多く摂取できるという点から、3質量ppm以上であることが好ましく、4質量ppm以上であることがより好ましく、5質量ppm以上であることが特に好ましく、7質量ppm以上であることが最も好ましい。また、銅及び/又は亜鉛に由来する金属臭や苦味がより軽減されやすいという点から、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、30質量ppm以下であることが特に好ましく、20質量ppm以下であることが最も好ましい。この銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度は、両金属イオンが含まれている場合は、両金属イオンの合計の濃度であり、一方の金属イオンのみが含まれている場合は、その含まれている金属イオンの濃度である。なお、本発明の飲料が粉末飲料の場合、飲料中の濃度とは水等の液体に懸濁させて飲料として摂取する際の濃度を意味する(その他の成分についても同様)。銅イオン及び亜鉛イオンの濃度は、ICP発光分光分析法等の公知の測定方法により測定することができ、例えば、ICP発光分光分析装置として、アジレントテクノロジー株式会社「Agilent 5900 ICP-OES」を用いることにより測定することができる。
【0016】
銅イオン及び亜鉛イオンを本発明の飲料に含有させる方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、銅製や亜鉛製の鍋を用いて液体原料(水、緑色野菜含有水等)を加熱することにより鍋から銅イオンや亜鉛イオンを溶出させて含有させる方法や、銅イオン水又は亜鉛イオン水を用いる方法、銅や亜鉛を含有する添加物を配合する方法が挙げることができる。銅や亜鉛を含有する添加物を配合する方法としては、銅又は亜鉛のグルコン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩等の水溶性塩を添加し含有させる方法や、亜鉛酵母や銅酵母などの銅イオンや亜鉛イオンを高濃度で含有する素材を添加し含有させる方法等を挙げることができる。
【0017】
[カリウムイオン]
本発明の飲料は、さらに、カリウムを含有しても良い。カリウムは細胞の浸透圧を調整する働きを有する生命維持活動に欠かせない栄養素である。また、体内に含まれる余分な塩分を対外に排出する作用があることから、血圧を下げる効果があることも知られている。一方で、カリウムは苦味を有するが、本発明の飲料に配合した場合にはカリウムの苦味を感じにくい。また、本発明の飲料にカリウムを配合することにより、銅又は亜鉛に由来する金属臭や苦味をより抑制し、有用細菌の沈殿をより抑制することができる。飲料中のカリウムの濃度としては特に制限はないが、栄養素であるカリウムを多く補給しつつカリウムに由来する苦味を感じにくくする点、銅又は亜鉛に由来する金属臭や苦味をより抑制する点、有用細菌の沈殿をより抑制する点から、30~500質量ppmであることが好ましく、50~300質量ppmであることがより好ましく、60~250質量ppmであることが特に好ましく、70~200質量ppmであることが最も好ましい。
【0018】
カリウムイオンを本発明の飲料に含有させる方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、塩化カリウム、乳酸カリウムといったカリウム塩、カリウムイオンを含有するイオン水、カリウムを含有する植物の粉砕末又はエキスなどを飲料に配合すればよい。カリウムの濃度は、一般的な分析方法によって測定することができ、例えば、原子吸光光度法によって測定することができる。
【0019】
[食物繊維]
本発明の飲料は、さらに、食物繊維を含有しても良い。食物繊維は、整腸作用など、身体の中で有用な働きをすることが知られており、摂取を推奨されている成分である。本発明の飲料に食物繊維を配合することにより、有用細菌の沈殿をより抑制することができる。飲料中の食物繊維の濃度としては特に制限はないが、有用細菌の沈殿をより抑制する点から、1000~50000質量ppmであることが好ましく、1500~40000質量ppmであることがより好ましく、2000~30000質量ppmであることが特に好ましく、2500~20000質量ppmであることが最も好ましい。
【0020】
食物繊維を本発明の飲料に含有させる方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、シトラスファイバーや難消化性デキストリンなどの食物繊維を配合してもよく、植物の粉砕末など、食物繊維を含有する原料を配合してもよい。食物繊維の濃度はプロスキー法によって測定することができる。
【0021】
[有用細菌]
【0022】
本発明における有用細菌とは、哺乳動物の腸内で生育可能な細菌を有用菌(善玉菌)、有害菌(悪玉菌)及び日和見(ひよりみ)菌に分類した場合に有用菌と認められる細菌を意味し、具体的には、乳酸菌やビフィズス菌、短鎖脂肪酸産生菌(酪酸菌、酢酸菌等)などを挙げられる。これらの中でも、銅及び/又は亜鉛に由来する金属臭や苦味がより軽減されやすいという点から、乳酸菌及びビフィズス菌が特に好ましい。有用細菌の濃度によらず本発明の効果が発揮されるため、飲料中の有用細菌の濃度としては特に制限はないが、例えば、0.0001質量%以上であってもよく、0.001質量%以上であってもよく、0.01質量%以上であってもよい。
【0023】
乳酸菌とは、代謝により乳酸を産生する細菌の総称を意味し、例えば、Lactbacillus属、Enterococcus属、Bacillus属、Leuconostoc 属、Pediococcus 属、Staphylococcus 属、Tetragenococcus 属等に属する細菌を挙げられる。これらの中でも、銅及び/又は亜鉛に由来する金属臭や苦味がより軽減されやすいという点から、Lactbacillus属、Enterococcus属、Bacillus属の乳酸菌が特に好ましい。Lactbacillus属の乳酸菌としては、例えば、Lactbacillus brevis、Lactbacillus gasseri、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus delburvecki、Lactobacillus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus halivaticus、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacilus paracasei、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus sporogenes、Lactobacillus sakei、Lactobacillus fructivorans、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus fermentum等を挙げられる。Enterococcus属の乳酸菌としては、例えば、Enterococcus faecalis (Streptococcus faecalis と称されることもある)、Enterococcus faesium (Streptococcus faesiumと称されることもある)等を挙げられる。Bacillus属の乳酸菌としては、例えば、Bacillus coagulans、Bacillus mesentericus等を挙げられる。
【0024】
ビフィズス菌とは、Bifidobacterium属に属する菌を意味する。Bifidobacterium属の細菌としては、例えば、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium mongoliense等を挙げられる。
【0025】
短鎖脂肪酸産生菌とは、代謝により酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸(乳酸を除く)を産生する細菌の総称を意味する。短鎖脂肪酸産生菌のうち、酪酸菌は、酪酸を産生する細菌であり、具体的には、Coprococcus属の細菌、Marvinbryantia属の細菌、Anaerostipes属の細菌、Roseburia属の細菌、Faecalibacterium属の細菌等を挙げられる。また短鎖脂肪酸産生菌のうち、酢酸菌としては、Paraprevotella属の細菌等を挙げられる。
【0026】
本発明によれば、飲料に銅イオン又は亜鉛イオンを含有することにより、有用細菌の沈殿が抑制される。飲料中において有用細菌が沈殿してしまうと、飲料を飲用した際に有用細菌が底に残ってしまい、栄養成分である有用細菌の摂取量が減ってしまうという問題がある。また、ペットボトルなど、透明な容器に充填した飲料の場合には、有用細菌が沈殿していると見た目が悪くなるため、消費者の購買意欲を損なうおそれもある。そのため、有用細菌の沈殿を抑制することは、飲料において重要な課題である。
【0027】
[飲料]
本発明の飲料としては、ペットボトル、缶、瓶、紙パック等に充填された容器詰飲料、粉末飲料の形態を挙げることができる。本願において粉末飲料とは、摂取時に、消費者が、水や湯、牛乳、豆乳などの液体に混合して、飲料として飲用に供される粉末状の加工食品(医薬部外品や医薬品を含む)を意味する。これらの飲料のうち、本発明の効果をより享受できる点から、容器詰飲料が好ましい。
【0028】
本発明の飲料には、適宜、通常食品分野で用いられる添加剤を配合してもよい。例えば、植物粉砕末や植物抽出物、ビタミンAやビタミンB、ビタミンC等のビタミン類、甘味料、香料等を適宜配合することができる。
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
1.金属臭及び苦味の評価試験
容器詰飲料を製造し、銅又は亜鉛に由来する金属臭及び苦味を評価した。具体的には以下のとおりである。
【0031】
[容器詰飲料の製造]
表1に記載の含有量となるように各原料を均一に混合し、粉末飲料A~Jを作成した。その後、粉末飲料をそれぞれ3gずつ分包に充填した。なお、粉末飲料の賦形剤としては、呈味に影響を与えないことが知られており、有用細菌の沈殿性にも影響を与えないことから、デキストリンを選択した。使用したデキストリンが銅又は亜鉛に由来する金属臭や苦味、有用細菌の沈殿性に影響を与えないことについては、事前に確認した。
【0032】
【表1】
【0033】
得られた粉末飲料を、それぞれ1包(3g)ずつペットボトル容器(容量200mL、直径54mm×高さ132mm、口径28mm)に入れ、水を加えて100mLに調整した。その後、ペットボトルの蓋を閉め、ペットボトルを片手で持ち、上下に20秒間振って(振れ幅約20cm、1秒あたり1.5~2往復の速度)、中身を混合することにより、投入した粉末飲料が液体中に均一に分散するようにして、表2に示すコントロール(コントロールCu、コントロールZn)及び実施例(実施例1~8)の容器詰飲料を作成した。
【0034】
【表2】
【0035】
[金属臭及び苦味の評価]
得られた容器詰飲料について、飲料の官能試験に関する知識と経験を有するパネラー4人により、銅又は亜鉛に由来する金属臭及び苦味を評価した。具体的には、上記手順により作成した容器詰飲料を作成直後に各パネラーが摂取し、下記の採点方法にしたがって採点した。銅イオンを含有する実際例1~6についてはコントロールCu、亜鉛イオンを含有する実施例7及び8についてはコントロールZnを基準(コントロール)として採点した。
【0036】
<金属臭及び苦味の採点方法>
●金属臭(口に含んだ時に感じる銅又は亜鉛に由来する金属臭)
2:コントロールに比べて明らかに金属臭を感じにくい
1:コントロールに比べると少し金属臭を感じにくい
0:コントロールと同程度に金属臭を感じる
-1:コントロールよりも強く金属臭を感じる
【0037】
●苦味(口に含んだ時に感じる銅又は亜鉛に由来する苦味)
2:コントロールに比べて明らかに苦味を感じにくい
1:コントロールに比べると少し苦味を感じにくい
0:コントロールと同程度に苦味を感じる
-1:コントロールよりも強く苦みを感じる
【0038】
採点後、4人の平均点を算出し、以下の基準によって◎、〇、×の3段階にて評価した。なお、4人の評価のばらつきは少なく、いずれの容器詰飲料の評価においても、4人の中で最も高い点数と最も低い点数の差は1点以内であった。
【0039】
<金属臭及び苦味の評価>
◎:平均点1.75以上
〇:平均点1以上、かつ1.75未満
×:平均点1未満
【0040】
結果を表2に示す。有用細菌を含有しない飲料(コントロール)に比べて、有用細菌を含有する飲料(実施例1~8)では、銅又は亜鉛に由来する金属臭と苦味が抑制されていた。また、銅又は亜鉛に由来する金属臭及び苦味の抑制は、有用細菌の種類によらずに発揮されていた(実施例2、4~6)。
【0041】
2.有用細菌の沈殿評価試験(1)
容器詰飲料を製造し、有用細菌の沈殿を評価した。具体的には以下のとおりである。
【0042】
[容器詰飲料の製造]
表3に記載の含有量となるように各原料を均一に混合し、粉末飲料K~ABを作成した。その後、粉末飲料をそれぞれ3gずつ分包に充填した。
【0043】
【表3】
【0044】
得られた粉末飲料を、それぞれ1包(3g)ずつペットボトル容器(容量200mL、直径54mm×高さ132mm、口径28mm)に入れ、水を加えて100mLに調整した。その後、ペットボトルの蓋を閉め、ペットボトルを片手で持ち、上下に20秒間振って(振れ幅約20cm、1秒あたり1.5~2往復の速度)、中身を混合することにより、投入した粉末飲料が液体中に均一に分散するようにして、表4に示すコントロール(コントロールE.F、コントロールL.C、コントロールB.C、コントロールB.L)、ポジティブコントロール(ポジコンE.F、ポジコンL.C、ポジコンB.C、ポジコンB.L)、実施例(実施例9~16)、比較例(比較例1及び2)の容器詰飲料を作成した。なお、ポジティブコントロールに配合されているHMペクチンは、飲料において乳酸菌の沈殿を抑制することが知られている公知の安定剤である。
【0045】
【表4】
【0046】
[沈殿の評価]
得られた容器詰飲料について、飲料の官能試験に関する知識と経験を有するパネラー4人により、有用細菌の沈殿を評価した。具体的には、上記手順により作成した容器詰飲料を室温にて24時間静置した後、ペットボトルの底に沈殿する有用細菌の量を目視で観察し、下記の採点方法にしたがって採点した。Enterococcus faecalisを配合した比較例1及び2、実施例9~13についてはコントロールE.F及びポジコンE.Fを、Lactobacillus caseiを配合した実施例14についてはコントロールL.C及びポジコンL.Cを、Bacillus coagulansを配合した実施例15についてはコントロールB.C及びポジコンB.Cを、Bifidobacterium longumを配合した実施例16についてはコントロールB.L及びポジコンB.Lを、それぞれ基準として採点した。
【0047】
<沈殿の採点方法>
●有用細菌の沈殿
3:白い有用細菌の沈殿が、ポジティブコントロールよりも少ない
2:白い有用細菌の沈殿が、ポジティブコントロールと同程度
1:白い有用細菌の沈殿が、コントロールよりも少ないが、ポジティブコントロールよりは多い
0:白い有用細菌の沈殿が、コントロールと同程度
-1:白い有用細菌の沈殿が、コントロールよりも多い
【0048】
採点後、4人の平均点を算出し、以下の基準によって◎、〇、×の3段階にて評価した。なお、4人の評価のばらつきは少なく、いずれの容器詰飲料の評価においても、4人の中で最も高い点数と最も低い点数の差は1点以内であった。
【0049】
<沈殿の評価>
◎:平均点1.75以上
〇:平均点1以上、かつ1.75未満
×:平均点1未満
【0050】
結果を表4に示す。銅イオン又は亜鉛イオンを含有しない飲料(コントロール)に比べて、銅イオン又は亜鉛イオンを含有する飲料(実施例9~16)では、有用細菌の沈殿が抑制されていた。また、有用細菌の沈殿抑制は、有用細菌の種類によらずに発揮されていた(実施例9~16)。
【0051】
2.有用細菌の沈殿評価試験(2)
乳酸菌のような細菌の培養液において、菌体の量(菌体の濃度)と濁度(OD660)は比例関係にあることが知られており、培養液における菌体量の指標として濁度(OD660)が一般に用いられている。そこで、容器詰飲料の上澄みを採取して濁度を測定することにより、沈殿せずに飲料中に分散している有用細菌の量を評価した。具体的には以下のとおりである。
【0052】
[液体飲料の製造]
表5に記載の含有量となるように各原料を均一に混合し、粉末飲料AC~AKを作成した。その後、粉末飲料をそれぞれ3gずつ分包に充填した。
【0053】
【表5】
【0054】
得られた粉末飲料を、それぞれ1包(3g)ずつビーカー(容量100mL)に入れ、水を加えて50mLに調整した。その後、マドラーを用いて10秒間攪拌し、表6に示す比較例3~5、実施例17~22の液体飲料を作成した。
【0055】
【表6】
【0056】
[濁度の測定]
作成した液体飲料を24時間静置した後、液体飲料の上澄みを採取し、紫外可視分光光度計「UV-1800」(株式会社島津製作所製)を用いて吸光度(OD660)を測定した。
【0057】
測定結果を表6に示す。銅イオン又は金属イオンを含有しない飲料(比較例3)に比べて、銅イオン又は金属イオンを含有する飲料(実施例17~22)では上澄みの濁度の数値が高かった。これにより、銅イオン又は金属イオンを含有することで有用細菌の沈殿が抑制され、液体中に分散する有用細菌の量が多くなることが示された。また、銅イオンのみを含有する飲料(実施例18)に比べて、さらにカリウムイオン及び食物繊維を含有する飲料(実施例19)では濁度の数値が高く、有用細菌がより多く液体中に分散していることが示された。なお、カリウムイオンやナトリウムイオンのみを含有する飲料(比較例4及び5)では、比較例3の飲料と比べても、濁度の数値は高くなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、銅及び/又は亜鉛を含有する飲料に対して、乳酸菌などの有用細菌を配合することにより、銅や亜鉛に由来する金属臭や苦味が軽減された飲料や、有用細菌の沈殿が抑制された飲料を得ることができる。本発明の飲料を飲用することにより、銅や亜鉛といったミネラルや、有用細菌を摂取できるため、本発明の飲料は食品として有用である。
【手続補正書】
【提出日】2025-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオン(乳酸菌由来を除く)と、有用細菌を含有し、
前記銅イオンの濃度が3質量ppm以上であることを特徴とする、飲料(ただし、以下に記載する(A)を除く
(A)銅イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、亜鉛イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)が0.25~9.0の範囲内である、容器詰青汁飲料)。
【請求項2】
亜鉛イオンと、有用細菌を含有し、
前記亜鉛イオンの濃度が3質量ppm以上であることを特徴とする、飲料(ただし、以下に記載する(A)~(C)を除く
(A)銅イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、亜鉛イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)が0.25~9.0の範囲内である、容器詰青汁飲料
(B)ヒト腸粘膜に対してポジティブ効果を有する生存可能な乳酸杆菌を含有するスポーツドリンク
(C)亜鉛化合物及びオロト酸を配合することを特徴とする亜鉛化合物配合組成物)。
【請求項3】
さらに、カリウムイオンを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の飲料。
【手続補正書】
【提出日】2025-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオン(乳酸菌由来を除く)と、有用細菌(亜鉛を富化した細菌及び銅を富化した細菌を除く)を含有し、
前記銅イオンの濃度が3質量ppm以上であることを特徴とする、飲料(ただし、以下に記載する(A)を除く
(A)銅イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、亜鉛イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)が0.25~9.0の範囲内である、容器詰青汁飲料)。
【請求項2】
亜鉛イオンと、有用細菌(銅を富化した細菌を除く)を含有し、
前記亜鉛イオンの濃度が3質量ppm以上であることを特徴とする、飲料(ただし、以下に記載する(A)~(C)を除く
(A)銅イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、亜鉛イオンを0.5ppm以上、5ppm未満含有し、銅イオンの含有量と、亜鉛イオンの含有量との比率(銅イオン/亜鉛イオン)が0.25~9.0の範囲内である、容器詰青汁飲料
(B)乳酸杆菌を含有するスポーツドリンク
(C)オロト酸を含有する組成物)。
【請求項3】
さらに、カリウムイオンを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の飲料。