(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015160
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】容器入り冷菓及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/48 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
A23G9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118359
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 央往
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮介
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GE02
4B014GE11
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG14
4B014GK05
4B014GK07
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4B014GP02
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4B014GP13
4B014GP14
4B014GP25
4B014GP26
4B014GP27
4B014GQ02
4B014GQ17
(57)【要約】
【課題】食べすすむ際に感覚の変化を楽しめる冷菓の提供。
【解決手段】開口部1aを有する容器1に、冷菓本体2が収容されており、冷菓本体2は、冷菓基材3と、冷菓基材3中に存在する油性組成物の硬化体4とを有し、硬化体4は、容器1の深さ方向Xに交わる方向に張り出しながら容器1の底部1b側から開口部1a側へ向かって伸びる形状を有し、冷菓本体2の、容器1の開口部1aの中心を通り深さ方向Xに平行な断面において、硬化体4の厚さの平均値が0.8~1.5mm、標準偏差が0.82mm以上である、容器入り冷菓。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器に、冷菓本体が収容されており、
前記冷菓本体は、冷菓基材と、前記冷菓基材中に存在する油性組成物の硬化体とを有し、
前記硬化体は、前記容器の深さ方向に交わる方向に張り出しながら前記容器の底部側から開口部側へ向かって伸びる形状を有し、
前記冷菓本体の、前記容器の開口部の中心を通り前記深さ方向に平行な断面において、前記硬化体の厚さの平均値が0.8~1.5mm、標準偏差が0.82mm以上である、容器入り冷菓。
【請求項2】
前記断面において、前記冷菓本体の輪郭に内接する矩形を、前記容器の底部側の領域と開口部側の領域とに2等分したとき、前記底部側の領域の総面積に対して前記硬化体の面積が占める割合が16%以上であり、前記開口部側の領域の総面積に対して前記硬化体の面積が占める割合が10%以下である、請求項1に記載の容器入り冷菓。
【請求項3】
前記断面に存在する前記硬化体の厚さを横軸とし、前記横軸の階級幅を0.1mmとするヒストグラムにおいて、累積相対度数が5~95%の範囲内で前記硬化体の厚さの平均値が0.7~1.5mm、標準偏差が0.4mm以上である、請求項1に記載の容器入り冷菓。
【請求項4】
前記硬化体の形状は、油性組成物からなる流動体が、一部は冷菓基材からなる流動体と交互に重なり合い、他部は油性組成物からなる流動体どうしが重なり合うように、前記容器内に堆積した後に不規則に変形して硬化した形状である、請求項1に記載の容器入り冷菓。
【請求項5】
前記冷菓基材の5℃における粘度が10~1500mPa・sである、請求項1に記載の容器入り冷菓。
【請求項6】
前記油性組成物が、チョレート、準チョコレート、及びコーティングチョコレートから選ばれるチョコレート類を含む、請求項1に記載の容器入り冷菓。
【請求項7】
前記冷菓基材のオーバーランが40%以上である、請求項1に記載の容器入り冷菓。
【請求項8】
前記冷菓基材の脂肪含有量が1~20質量%である、請求項1に記載の容器入り冷菓。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の容器入り冷菓を製造する方法であって、
上部に開口部を有する容器内に、前記冷菓基材の未固化物である第1流動体と、前記油性組成物の未硬化物である第2流動体を、上方から連続的に流下させて、前記容器の底面上に堆積させる充填工程を有し、
前記充填工程において、前記第1流動体及び前記第2流動体のそれぞれが、つづら折り状の軌跡を描きながら前記容器内に堆積するように、かつ堆積直後において、前記第2流動体の一部は前記第1流動体の一部と交互に重なり合い、前記第2流動体の他部は第2流動体どうしが重なり合うように、前記第1流動体と前記第2流動体とを接触させた状態で流下させる、容器入り冷菓の製造方法。
【請求項10】
前記第1流動体と前記第2流動体とが接触する直前の、前記第1流動体の温度と前記第2流動体の温度との差が27~60℃である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1流動体の凍結点をt℃とすると、前記第1流動体と前記第2流動体とが接触する直前の、前記第1流動体の温度が(t-3)~(t-0.1)℃であり、前記第2流動体の温度の温度が25~50℃である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1流動体の流下速度V1(単位:mL/秒)に対する、前記第2流動体の流下速度V2(単位:mL/秒)の比を表す、V2/V1が0.075~0.5である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記容器内に、前記第1流動体の複数本と前記第2流動体の複数本を同時に流下させる、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り冷菓及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器入り冷菓の製造方法に関して、特許文献1には、容器内で、特定のアイスクリーム類用ソースとアイスクリーム類とを一方向に回転撹拌してマーブル状の帯を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のマーブル状冷菓は、アイスクリームとソースの両方を味わうことができるが、食べ始めから食べ終わりまでほぼ均質であり単調であった。
近年では、味覚的なおいしさに加えて、視覚、食感、聴覚等の感覚的な新しさがある冷菓が求められている。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、食べすすむ際に感覚の変化を楽しめる冷菓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 開口部を有する容器に、冷菓本体が収容されており、前記冷菓本体は、冷菓基材と、前記冷菓基材中に存在する油性組成物の硬化体とを有し、前記硬化体は、前記容器の深さ方向に交わる方向に張り出しながら前記容器の底部側から開口部側へ向かって伸びる形状を有し、前記冷菓本体の、前記容器の開口部の中心を通り前記深さ方向に平行な断面において、前記硬化体の厚さの平均値が0.8~1.5mm、標準偏差が0.82mm以上である、容器入り冷菓。
[2] 前記断面において、前記冷菓本体の輪郭に内接する矩形を、前記容器の底部側の領域と開口部側の領域とに2等分したとき、前記底部側の領域の総面積に対して前記硬化体の面積が占める割合が16%以上であり、前記開口部側の領域の総面積に対して前記硬化体の面積が占める割合が10%以下である、[1]に記載の容器入り冷菓。
[3] 前記断面に存在する前記硬化体の厚さを横軸とし、前記横軸の階級幅を0.1mmとするヒストグラムにおいて、累積相対度数が5~95%の範囲内で前記硬化体の厚さの平均値が0.7~1.5mm、標準偏差が0.4mm以上である、[1]又は[2]に記載の容器入り冷菓。
[4] 前記硬化体の形状は、油性組成物からなる流動体が、一部は冷菓基材からなる流動体と交互に重なり合い、他部は油性組成物からなる流動体どうしが重なり合うように、前記容器内に堆積した後に不規則に変形して硬化した形状である、[1]~[3]のいずれかに記載の容器入り冷菓。
[5] 前記冷菓基材の5℃における粘度が10~1500mPa・sである、[1]~[4]のいずれかに記載の容器入り冷菓。
[6] 前記油性組成物が、チョレート、準チョコレート、及びコーティングチョコレートから選ばれるチョコレート類を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の容器入り冷菓。
[7] 前記冷菓基材のオーバーランが40%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の容器入り冷菓。
[8] 前記冷菓基材の脂肪含有量が1~20質量%である、[1]~[7]のいずれかに記載の容器入り冷菓。
[9] 前記[1]~[8]のいずれかに記載の容器入り冷菓を製造する方法であって、上部に開口部を有する容器内に、前記冷菓基材の未固化物である第1流動体と、前記油性組成物の未硬化物である第2流動体を、上方から連続的に流下させて、前記容器の底面上に堆積させる充填工程を有し、前記充填工程において、前記第1流動体及び前記第2流動体のそれぞれが、つづら折り状の軌跡を描きながら前記容器内に堆積するように、かつ堆積直後において、前記第2流動体の一部は前記第1流動体の一部と交互に重なり合い、前記第2流動体の他部は第2流動体どうしが重なり合うように、前記第1流動体と前記第2流動体とを接触させた状態で流下させる、容器入り冷菓の製造方法。
[10] 前記第1流動体と前記第2流動体とが接触する直前の、前記第1流動体の温度と前記第2流動体の温度との差が27~60℃である、[9]に記載の製造方法。
[11] 前記第1流動体の凍結点をt℃とすると、前記第1流動体と前記第2流動体とが接触する直前の、前記第1流動体の温度が(t-3)~(t-0.1)℃であり、前記第2流動体の温度の温度が25~50℃である、[9]又は[10]に記載の製造方法。
[12] 前記第1流動体の流下速度V1(単位:mL/秒)に対する、前記第2流動体の流下速度V2(単位:mL/秒)の比を表す、V2/V1が0.075~0.5である、[9]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13] 前記容器内に、前記第1流動体の複数本と前記第2流動体の複数本を同時に流下させる、[9]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、食べすすむ際に感覚の変化を楽しめる容器入り冷菓が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の容器入り冷菓の一実施形態を示す断面の写真である。
【
図2】硬化体の厚さの測定方法を説明するためのバイナリ画像の例である。
【
図3】硬化体の面積割合の測定方法を説明するためのバイナリ画像の例である。
【
図4】本発明の製造方法に用いられる装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図6】比較例1で用いた冷菓の断面のバイナリ画像である。
【
図8】比較例2で用いた冷菓の断面のバイナリ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「~」で表される数値範囲は、特に断りのない限り、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0009】
本発明における冷菓は、一般的な「冷菓」に分類されるもの、及びフローズンヨーグルトを含む。「冷菓」は、具体的には、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)、氷菓を挙げることができる。
アイスクリーム類とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって乳固形分3.0%以上を含むもの(はっ酵乳を除く)をいう。アイスクリーム類は、含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに分類される。
一方、乳固形分3.0%未満のものは、前記アイスクリーム類ではなく、食品衛生法に基づく厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」により、氷菓として規定されている。
また、フローズンヨーグルトは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令により、種類別「発酵乳」に分類される。発酵乳は「乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの又はこれらを凍結したものをいう」と定められ、成分規格は、「無脂乳固形分8.0%以上、乳酸菌数又は酵母数1000万/mL以上」と規定されている。フローズンヨーグルトは、凍結した発酵乳に該当する。
本発明における冷菓は、氷菓、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、フローズンヨーグルトのいずれであってもよい。
【0010】
凍結点は、液状にした試料を雰囲気温度-25℃で冷却しながら品温を経時的に測定し、液体が固体になる際の発熱反応により温度が下降しないポイント(凝固点)における温度である。
冷菓基材の粘度は、冷菓基材が5℃のとき、B型粘度計にて、ローターNo.2を使用し、回転数60rpmで測定した、30秒後の値である。
【0011】
成分等の含有量の測定方法は以下の方法を用いる。
(1)水分
常圧加熱乾燥法(乾燥助剤添加法)により測定する。
(2)固形分
固形分(質量%)=100-水分(質量%)で算出する。
【0012】
(3)冷菓基材の脂肪含有量・乳脂肪分
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に記載の、アイスクリーム類の乳脂肪分の定量法に準拠する方法で測定する。
具体的には、試料4gを小型ビーカーに採り、水3mLを加えてよく混ぜ合わせ、レーリッヒ管に移す。前記ビーカーは、水3mLでよく洗い、その洗液を前記レーリッヒ管に加え、振り混ぜる。次に、アンモニア水(アンモニアの25~30%水溶液、無色透明なもの)2mLを加え、静かに混合する。次に、前記レーリッヒ管を60℃の水浴中につけ、時々振り混ぜながら20分間加温する。さらにエタノール(95~96%水溶液)10mLを加えてよく混ぜ合わせる。
次いで、前記レーリッヒ管にエーテル25mLを加え静かに回転し、均一の色調となったときエーテルガスを抜き、管を水平にして30秒間激しく振り混ぜる。次に石油エーテル(沸点60℃以下)25mLを加え、同様に30秒間振り混ぜて栓を緩め、上澄液が透明になるまで直立して2時間以上静置する。上澄液を、予め恒量を求めたビーカーに入れる。
前記レーリッヒ管に、上記と同様の手順で、エーテル25mL及び石油エーテル25mLを加えて混ぜ、上澄液を前記ビーカーに入れる。側管の先端を、エーテルと石油エーテルの等量混合液で洗浄して前記ビーカーに加える。
前記ビーカーを、約75℃に加熱して溶剤を揮発させ、雰囲気温度100~105℃の乾燥器中で1時間乾燥した後、秤量する。ビーカーの恒量からの増加分を脂肪分とする。
試料が乳脂肪以外の他の脂肪分を含まない場合は、上記で求めた脂肪分を乳脂肪の含有量とする。
試料が乳脂肪以外の他の脂肪分を含む場合は、上記で求めた脂肪分から他の脂肪分を差し引いた値を乳脂肪の含有量とする。
【0013】
(4)無脂乳固形分
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に記載の、発酵乳及び乳酸菌飲料の無脂乳固形分の定量法に準拠する方法で測定する。
具体的には、試料(凍結状のものにあっては、40℃以下の温度でなるべく短時間に全部融解させたもの)約50gを精密に量り、フェノールフタレイン溶液数滴を加える。これをかき混ぜながら10%水酸化ナトリウム溶液を徐々に加えて微アルカリ性とし、メスフラスコに採る。水を加えて100mLとし、その5mLを正確に150mLのケルダール分解フラスコに採る。これに硫酸カリ9gと硫酸銅1gの混合粉末0.2gを加え、更にフラスコの内壁を伝わらせて硫酸10mLを加える。次に、このフラスコを徐々に加熱し、亜硫酸ガスの白煙が生じたとき少し加熱を強める。泡末の大部分が消失した後、強熱し、中の液が透明な淡青色を呈し、かつ、フラスコの内壁に炭化物を認めなくなったとき加熱を止める。放冷後、注意しながら水30mLを加え、再び冷却した後フラスコを蒸留装置に連結する。この場合、200mLの吸収フラスコ中には0.05mol/L硫酸30mL及びメチルレッド溶液数滴を入れ、冷却器の下端が液中につかるようにする。
次に、ケルダール蒸留装置の漏斗から30%水酸化ナトリウム溶液40mLを入れ、水10mLで洗い込み、ピンチコツクを閉じ、直ちに蒸留をはじめる。留出液が80mL~100mLの量に達したとき冷却器の下端を液面から離し、更に留出液の数mLを採る。
蒸留終了後、冷却器の液に浸った部分を少量の水で洗い、その洗液を吸収フラスコ中の液に合し、これを0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定する。
無脂乳固形分(単位:質量%)は、次式によって計算する。
無脂乳固形分={0.0014×(A-B)}/試料の採取量(単位:g)×6.38×2.82×100
A:0.05mol/Lの硫酸30mLを中和するのに要する0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の量(単位:mL)
B:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の量(単位:mL)
標示薬:メチルレッド溶液(メチルレッド1gをエタノール50mLに溶かし、これに水を加えて100mLとし、必要があればろ過する。
(5)乳固形分
前記(3)の方法で求めた乳脂肪分と、前記(4)の方法で求めた無脂乳固形分との合計を乳固形分とする。
【0014】
<容器入り冷菓>
図1は、本発明の容器入り冷菓の一実施形態を示す断面の写真である。
本実施形態の容器入り冷菓は、上部に開口部1aを有する容器1と、容器1に収容された冷菓本体2を有する。図中符号1bは容器1の底部を示す。
冷菓本体2は、冷菓基材3と、油性組成物の硬化体4とを有する。硬化体4は冷菓基材3中に存在する。
冷菓基材3は、水及び甘味料を含む組成物(アイス原料ミックス)の凍結物からなる。硬化体4は、例えばチョコレート等の油性組成物が硬化したものである。
アイス原料ミックス、油性組成物については後述する。
【0015】
図1において、容器1の深さ方向をX方向とし、X方向に垂直な方向をY方向とする。
図1は、冷菓本体2の、容器1の開口部1aの中心を通りX方向に平行な断面(以下、「中心を通る縦断面」ともいう。)を示している。
冷菓本体2において、硬化体4は冷菓基材3中に存在する。
図1に示すように、硬化体4は、X方向に交わる方向に張り出しながら容器1の底部1b側から開口部1a側へ向かってに伸びる形状を有する。
【0016】
硬化体4の厚さは不規則である。
冷菓本体2の中心を通る縦断面において、硬化体4の厚さの平均値は0.8~1.5mm、標準偏差が0.82mm以上である。前記厚さの平均値は0.9~1.4mmが好ましく、1.0~1.3mmがより好ましい。
硬化体4の厚さの平均値が上記範囲の下限値以上であるとパリパリした食感が明確に感じられ、上限値以下であると適度な硬さでくちどけもよい食感となる。
硬化体4の厚さの標準偏差の値が大きいほど、厚さのばらつきが大きいことを意味する。硬化体4の厚さの標準偏差が上記下限値以上であると、厚い硬化体4と薄い硬化体4との食感の違いを十分に楽しむことができる。例えば、薄い硬化体4はパリパリした食感で、厚い硬化体4はゴリゴリした食感というような、食感の違いを得ることができる。
【0017】
ここで、本明細書における、硬化体の厚さの平均値及び標準偏差は、冷菓本体の中心を通る縦断面に存在する硬化体について、以下の方法で測定した値である。
(1)例えば
図2に例示するように、冷菓本体の中心を通る縦断面を撮影し、二値化処理してバイナリ画像を得る。バイナリ画像において、白は冷菓基材の領域、黒は油性組成物の硬化体の領域である。
(2)前記(1)で得たバイナリ画像において、冷菓本体のX方向における高さを二等分する直線Kを設け、冷菓本体上の直線Kを11等分するように、X方向に平行な10本の帯状領域a1…a10を設ける。各帯状領域a1…a10のY方向における幅Wは0.1mmとする。
(3)10本の帯状領域内a1、…a10に存在する黒領域(硬化体)について、それぞれの面積S(単位:mm
2)を測定し、得られた面積Sを帯状領域の幅Wで割った値を各硬化体の厚さT(T=S/W、単位:mm)として近似的に求める。
このようにして、10本の帯状領域内に存在する全ての黒領域(硬化体)について、それぞれの厚さTを測定する。
(4)前記(3)で得た厚さTの平均値及び標準偏差を求め、冷菓本体の中心を通る縦断面における硬化体の厚さの平均値及び標準偏差とする。
【0018】
本実施形態において、冷菓本体の中心を通る縦断面に存在する硬化体の厚さを横軸とし、前記横軸の階級幅を0.1mmとするヒストグラムにおいて、累積相対度数が5~95%の範囲内で前記硬化体の厚さの平均値が0.7~1.5mm、標準偏差が0.4mm以上であることが好ましい。
前記累積相対度数が5~95%における厚さの平均値は0.8~1.5mmがより好ましく、0.9~1.5mmがさらに好ましく、1.0~1.5mmが特に好ましい。前記累積相対度数が5~95%における厚さの標準偏差は0.5mm以上がより好ましく、0.6mm以上がさらに好ましい。
前記累積相対度数が5~95%における厚さの平均値が上記範囲の下限値以上であるとパリパリした食感が明確に感じられ、上限値以下であると適度な硬さでくちどけもよい食感となる。
前記累積相対度数が5~95%における厚さの標準偏差が上記下限値以上であると、厚い硬化体4と薄い硬化体4との食感の違いを十分に楽しむことができる。
【0019】
本明細書において、前記ヒストグラムは以下の方法で求める。
すなわち、前記(1)~(3)の手順で得られた黒領域(硬化体)の厚さTの分布をヒストグラムで表す。ヒストグラムの横軸は厚さT、縦軸は度数(黒領域の数)、横軸の階級幅は0.1mmとする。
得られたヒストグラムにおいて、累積相対度数が5~95%の範囲内に存在する黒領域(硬化体)について、厚さTの平均値及び標準偏差を求める。
なお、累積相対度数が5~95%の範囲内に存在する黒領域とは、厚さTを測定した黒領域の総数を100%として、厚さTの値が最小に近い5%の黒領域と、最大に近い5%の黒領域を除いた残りの黒領域である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の容器入り冷菓は、硬化体4が底部側に偏在している。
図3に例示するように、冷菓本体2の中心を通る縦断面において、冷菓本体2の輪郭に内接する矩形を、容器1の底部1b側の領域1Bと、開口部1a側の領域1Aとに2等分したとき、領域1Bの総面積に対して硬化体4の面積が占める割合SBが16%以上であり、領域1Aの総面積に対して硬化体4の面積が占める割合SAが10%以下であることが好ましい。
このように、開口部1a側よりも底部1b側に硬化体4が多く存在すると、開口部1a側から食べすすめる際に、硬化体4が少ない領域から、硬化体4が多い領域への変化を楽しむことができる。
前記底部1b側の割合SBは18%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。上限は食感の点から33%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。
前記開口部1a側の割合SAは8%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましい。下限はゼロでもよい。
前記底部1b側の割合SBと、前記開口部1a側の割合SAとの差(SB-SA)の絶対値は10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。
【0021】
ここで、本明細書における、前記底部1b側の割合SB及び前記開口部1a側の割合SAは、以下の方法で測定した値である。
(i)例えば
図3に例示するように、冷菓本体2の中心を通る縦断面を撮影し、二値化処理してバイナリ画像を得る。バイナリ画像において、白は冷菓基材の領域、黒は油性組成物の硬化体の領域である。
(ii)前記(i)で得たバイナリ画像において、冷菓本体の輪郭に内接する矩形を設定する。
(iii)前記(ii)で設定した矩形の、X方向における高さを2等分する位置に、X方向に垂直な直線である境界線Qを引く。
(iv)前記矩形内であって前記境界線Qより底部1b側の領域1Bに存在する、黒領域の面積BBと白領域の面積BWをそれぞれ測定する。下記計算式により、領域1Bの総面積に対する、黒領域の面積が占める割合SB(単位:%)を求める。
SB=BB/(BB+BW)×100
(v)同様に、前記矩形内であって前記境界線Qより開口部1a側の領域1Aに存在する、黒領域の面積ABと、白領域の面積AWをそれぞれ測定する。下記計算式により、領域1Aの総面積に対する、黒領域の面積が占める割合SA(単位:%)を求める。
SA=AB/(AB+AW)×100
なお、前記(iv)と(v)の順序は任意である。
【0022】
<容器入り冷菓の製造方法>
図4は、本発明の容器入り冷菓の製造方法に好適に用いられる充填装置の一実施形態を説明するための概略図である。
本実施形態の装置は、真下に存在する容器1内に、冷菓基材3の未固化物である第1流動体21を吐出する第1ノズル11と、油性組成物の未硬化物である第2流動体22を吐出する第2ノズル12を備える。また図示していないが、第1ノズル11へ冷菓基材3の未固化物を供給する第1供給装置と、第2ノズル12へ油性組成物の未硬化物を供給する第2供給装置を備える。
第1ノズル11及び第2ノズル12と、容器1との相対位置は、X方向において調整可能に構成されている。
【0023】
第1ノズル11及び第2ノズル12はX方向と平行に延びており、第2ノズル12の先端は第1ノズル11に近づく方向に曲げられている。
第1ノズル11から吐出された第1流動体21に、第2ノズル12から吐出された第2流動体22が接触するように、第2ノズル12が配置されている。
本装置は、複数本の第1ノズル11と、複数本の第2ノズル12を備えており、複数対の第1流動体21及び第2流動体22を同時に流下させることができるようになっている。
【0024】
本実施形態の容器入り冷菓の製造方法は、まず、第1ノズル11及び第2ノズル12の直下に容器1を配置し、第1流動体21及び第2流動体22をそれぞれ連続的に吐出する(第1充填工程)。
第1流動体21及び第2流動体22は、容器1の上方から連続的に流下して、容器1の底面1b上に堆積する。容器1の底面1b上の堆積物は、容器1内の隙間を埋めるように流動する。堆積物中に隙間(空気層)が生じ難いように、必要に応じて、X方向における第1ノズル11及び第2ノズル12と容器1との距離を変化させてもよい。
なお本工程において、容器1の中心軸Pを回転軸とする回転方向における、第1ノズル11及び第2ノズル12と容器1との相対位置は変化させない。
【0025】
本工程では、
図4に模式的に示すように、第1流動体21と第2流動体22とが接触した状態で流下し、つづら折り状の軌跡を描きながら容器1の底面1b上に連続的に堆積する。堆積直後において、第2流動体22の一部は第1流動体21の一部と交互に重なり合い(図中、符号31で示す。)、第2流動体22の他部は第2流動体22どうしが重なり合うように(図中、符号32で示す。)、第1流動体21と第2流動体22とを接触させる。
第1流動体21と第2流動体22との重なり合い状態は、冷菓基材(第1流動体21)の流下速度、冷菓基材(第1流動体21)の温度、X方向における第1ノズル11と容器1との距離などによって調整できる。
【0026】
第1ノズル11に供給される第1流動体21の温度は、第2ノズル12に供給される第2流動体22の温度より低い。
第1流動体21と第2流動体22とが接触する直前の、第1流動体21の温度と第2流動体22の温度との差は下限値としては27℃以上、28℃以上、29℃以上、30℃以上、31℃以上、32℃以上、33℃以上、34℃以上、35℃以上、36℃以上、37℃以上、38℃以上、39℃以上、40℃以上が好ましく、上限値としては60℃以下、59℃以下、58℃以下、57℃以下、56℃以下、55℃以下、54℃以下、53℃以下、52℃以下、51℃以下、50℃以下が好ましい。範囲としては、例えば27~60℃が好ましく、35~55℃がより好ましく、40~50℃がさらに好ましい。
前記温度差が上記範囲の下限値以上であると製造適性が良好であり、上限値以下であると冷菓基材の食感が良好となる。
【0027】
第1流動体21の凍結点をt℃とすると、第1流動体21と第2流動体22とが接触する直前の、第1流動体21の温度は(t-3)~(t-0.1)℃が好ましく、(t-2.5)~(t-0.5)℃がより好ましく、(t-2)~(t-1)℃がさらに好ましい。前記第1流動体21の温度が上記範囲の下限値以上であると製造適性が良好であり、上限値以下であると冷菓基材の食感が良好となる。
第1流動体21と第2流動体22とが接触する直前の、第2流動体22の温度の温度は下限値としては25℃以上、26℃以上、27℃以上、28℃以上、29℃以上、30℃以上、31℃以上、32℃以上、33℃以上、34℃以上、35℃以上が好ましく、上限値としては50℃以下、49℃以下、48℃以下、47℃以下、46℃以下、45℃以下が好ましい。範囲としては、例えば25~50℃が好ましく、30~48℃がより好ましく、35~45℃がさらに好ましい。前記第2流動体22の温度が上記範囲の下限値以上であると製造適性が良好であり、上限値以下であると冷菓基材の食感が良好となる。
例えば、凍結点tが-7~-1.9℃であり、第1流動体21と第2流動体22とが接触する直前の、第1流動体21の温度が-10~-2℃であることが好ましく、-9~-2.9℃であることがより好ましい。
【0028】
第1流動体21の流下速度V1(単位:mL/秒)に対する、第2流動体22の流下速度V2(単位:mL/秒)の比を表す、V2/V1は下限値としては0.075以上、0.10以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上が好ましく、上限値としては0.5以下、0.45以下、0.4以下が好ましい。範囲としては例えば、0.075~0.5が好ましく、0.15~0.45がより好ましく、0.25~0.4がさらに好ましい。
前記V2/V1が上記範囲の下限値以上であると硬化体4の形状が複雑化し、上限値以下であると硬化体4が適切な厚さになる。
第1流動体21の流下速度V1は、前記第1供給装置によって調整できる。
第2流動体22の流下速度V2は、前記第2供給装置によって調整できる。
【0029】
本工程において、連続的に流下した第2流動体22は、一部が第1流動体21と交互に重なり合い、他部は第2流動体22どうしが重なり合うように容器1内に堆積した後に、不規則に変形した形状となる。不規則に変形する際に、第2流動体22の厚さが不規則に変化する。連続的に流下した第2流動体22の一部が不連続になってもよい。
【0030】
次いで、第1充填工程において、所定量の第1流動体21及び第2流動体22を吐出した後、第2流動体22の吐出を停止し、第1流動体21のみを容器内に流下させ、堆積させる(第2充填工程)。
容器1内の堆積物中に隙間(空気層)が生じ難いように、必要に応じて、X方向における第1ノズル11と容器1との距離を変化させてもよい。
なお本工程において、容器1の中心軸Pを回転軸とする回転方向における、第1ノズル11と容器1との相対位置は変化させてもよく、変化させなくてもよい。
【0031】
第2充填工程の終了後、容器1内の堆積物を冷却し固化して冷菓本体2を得る(固化工程)。固化工程は、冷菓の製造において公知の固化方法を用いて行うことができる。
固化工程における冷却温度は-40~-25℃が好ましく、-35~-25℃がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると省エネルギーとなり、上限値以下であると冷菓基材の食感が良好となる。
【0032】
本実施形態の製造方法によれば、容器1の底部1b上に硬化体4を含む層が存在し、その上に冷菓基材3のみからなる層を有する冷菓本体2が得られる。
硬化体4を含む層における冷菓基材3と硬化体4との体積比(硬化体/冷菓基材)は、下限値としては0.075以上、0.10以上、0.125以上、0.15以上が好ましく、上限値としては0.5以下、0.45以下、0.4以下が好ましい。範囲としては、例えば0.075~0.5が好ましく、0.10~0.45がより好ましく、0.125~0.4がさらに好ましく、0.15~0.4が特に好ましい。
硬化体4を含む層中の硬化体4は、
図1に示すように、X方向に交わる方向に張り出しながら容器1の底部1b側から開口部1a側へ向かって伸びる形状を有する。
すなわち、硬化体4は、容器1の深さ方向(X方向)と、深さ方向(X方向)に交わる方向の両方に伸びている。また好ましい態様において、硬化体4は、容器1の底部1b側から開口部1a側へ向かって複数に枝分かれることを繰り返しながらクネクネと続いている形状を有する。硬化体4は2本以上に枝分かれしており、好ましくは3本以上に枝分かれしているところが存在する。
【0033】
[アイス原料ミックス]
第1ノズル11へ供給する、冷菓基材3の未固化物は、アイス原料ミックスを、空気を含有させつつ凍結点付近まで冷却して、流動性を有する部分凍結物(冷菓基材3の未固化物)とする工程(フリージング工程)を有する方法で調製できる。
アイス原料ミックスの組成と、部分凍結物の組成と、冷菓基材の組成とは同じである。
アイス原料ミックスの原料は、冷菓の原料として公知の原料を適宜選択して用いることができる。
【0034】
アイス原料ミックスは、水及び甘味料を含む組成物である。さらに乳成分を含むことが好ましい。これら以外のその他の成分を含んでもよい。
甘味料の例としては、砂糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒砂糖)、水あめ、粉飴、砂糖混合異性化糖、異性化糖、乳糖、ぶどう糖、麦芽糖、果糖、転化糖、還元麦芽水あめ、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D-キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチロール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料;等が挙げられる。甘味料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
乳成分の例としては生乳、牛乳、クリーム、バター、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、練乳、チーズ、ホエイ、ホエイ蛋白濃縮物等の乳製品が挙げられる。乳成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
その他の成分の例としては、卵成分、植物油脂、食物繊維、乳化剤、安定剤、酸味料、香料、着色料、呈味材料、その他の食品添加剤等が挙げられる。
呈味材料は、アイス原料ミックスに均一に溶解又は分散可能な食材であり、例えば食塩、果汁、抹茶、コーヒー、紅茶、酒等が例示できる。
また、アイス原料ミックスは、本実施形態の容器入り冷菓の製造に支障を生じない範囲で、果実、種実類など、アイス原料ミックスに不均一に分散される固体材料を含んでもよい。
【0037】
アイス原料ミックスの総質量に対して、固形分は下限値としては30質量%以上、31質量%以上、32質量%以上が好ましく、上限値としては50質量%以下、49質量%以下、48質量%以下、47質量%以下、46質量%以下、45質量%以下が好ましい。範囲としては、例えば30~50質量%が好ましく、32~48質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい。上記範囲内であると、アイスミックスの凍結点範囲と冷菓基材の風味が良好となる。
アイス原料ミックスの総質量に対して、甘味料の含有量は下限値としては5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上が好ましく、上限値としては20質量%以下、19質量%以下、18質量%以下が好ましい。範囲としては、例えば5~20質量%が好ましく、8~18質量%がより好ましく、10~18質量%がさらに好ましく、12~18質量%が特に好ましい。上記範囲内であると、アイスミックスの凍結点範囲と冷菓基材の風味が良好となる。
アイス原料ミックスの総質量に対して、脂肪含有量は下限値としては1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上が好ましく、上限値としては20質量%以下、19質量%以下、18質量%以下、17質量%以下、16質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下が好ましい。範囲としては、例えば1~20質量%が好ましく、2~18質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましく、4~13質量%が特に好ましい。上記範囲内であると、アイスミックスの凍結点範囲と冷菓基材の風味が良好となる。
アイス原料ミックスの総質量に対して、無脂乳固形分は下限値としては1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上が好ましく、上限値としては15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下が好ましい。範囲としては、例えば1~15質量%が好ましく、3~12質量%がより好ましく、4~12質量%がさらに好ましく、5~12質量%が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であるとアイスミックスの脂肪乳化安定性が良好であり、上限値以下であると製造適性が良好となる。
【0038】
アイス原料ミックスの凍結点は、下限値としては-7℃以上、-6℃以上、-5.5℃以上、-5℃以上、-4.5℃以上、-4℃以上が好ましく、上限値としては-1.5℃以下、-1.9℃以下、-2.0℃以下、-2.2℃以下、-2.5℃以下が好ましい。範囲としては、例えば-7~-1.9℃が好ましく、-5.5~-2.2℃がより好ましく、-4~-2.5℃がさらに好ましい。上記範囲内であると、アイスミックスの製造適性が良好となる。
冷菓基材の5℃における粘度は、下限値としては10mPa・s以上、25mPa・s以上、50mPa・s以上、75mPa・s以上、100mPa・s以上、150mPa・s以上、180mPa・s以上が好ましく、上限としては1500mPa・s以下、1400mPa・s以下、1300mPa・s以下、1200mPa・s以下、1000mPa・s以下、900mPa・s以下、800mPa・s以下、700mPa・s以下、600mPa・s以下、500mPa・s以下が好ましい。範囲としては、例えば10~1500mPa・sが好ましく、100~1000mPa・sがより好ましく、180~500mPa・sがさらに好ましい。上記範囲内であると、アイスミックスの製造適性が良好となる。
【0039】
冷菓基材のオーバーラン(以下、ORと記載することもある。)は、下限値として40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上が好ましく、上限値としては150%以下、140%以下、130%以下、120%以下が好ましい。範囲としては、例えば40~150%が好ましく、80~120%がより好ましい。上記範囲内であると、アイスミックスの製造適性が良好となる。
アイス原料ミックスの部分凍結物のオーバーランと、部分凍結物を凍結させた凍結物(冷菓基材)のオーバーランは同じである。
オーバーランは、空気を含有させる前のアイス原料ミックスの容量に対する、アイス原料ミックスの凍結物(冷菓基材)の含有空気容量の百分率の値である。例えばオーバーラン値が100%の場合、アイス原料ミックスの凍結物は、アイス原料ミックスと同容量の空気を含むことを意味する。
【0040】
アイス原料ミックスの好ましい組成として、例えば以下の組成(i)、(ii)が挙げられる。
組成(i):アイス原料ミックスの総質量に対して、固形分が35~45質量%、甘味料が12~18質量%、脂肪含有量が4~13質量%、無脂乳固形分が4~12質量%であるアイス原料ミックス。
組成(ii):アイス原料ミックスの総質量に対して、固形分が36~40質量%、甘味料が15~18質量%、脂肪含有量が9~13質量%、無脂乳固形分が7~12質量%であるアイス原料ミックス。
【0041】
[油脂組成物]
第2ノズル12へ供給する油性組成物は、油脂を含む組成物である。油脂は特に限定されず、冷菓の材料として用いられる油脂であればよい。
油脂の例としては菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、シア脂、サル脂、カカオ脂が挙げられる。油脂組成物に含まれる油脂は1種でもよく、2種以上でもよい。
【0042】
油脂組成物は、油脂以外の他の成分を含んでもよい。
他の成分の例としては、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ原料;甘味料:乳製品;水;乳化剤;増粘安定剤;食塩、塩化カリウム等の塩味剤;酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料;β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料;トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤;小麦蛋白、大豆蛋白等の植物蛋白;卵、各種卵加工品等の卵製品;香料;香辛料;調味料;pH調整剤;食品保存料;日持ち向上剤;呈味材料;が挙げられる。
甘味料、乳製品の具体例としては、前記原料ミックスに用いられる甘味料、乳製品と同様のものが挙げられる。
呈味材料は、油脂組成物に均一に溶解又は分散可能な食材であり、例えば果汁、抹茶、コーヒー、紅茶、酒等が例示できる。
また、油脂組成物は、本実施形態の容器入り冷菓の製造に支障を生じない範囲で、果実、種実類など、油脂組成物に不均一に分散される固体材料を含んでもよい。
【0043】
油性組成物は、チョレート、準チョコレート、及びコーティングチョコレートから選ばれるチョコレート類を含むことが好ましい。チョコレート類以外に前記固体材料を含んでもよい。
本明細書におけるチョコレート、及び準チョコレートは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約及び施行規則」により規定されている「チョコレート」、及び「準チョコレート」にそれぞれ分類されるものを意味する。
本明細書におけるコーティングチョコレートとは、「チョコレート利用食品の表示に関する公正競争規約・施行規則」に規定される「チョコレートコーチング」を意味する。具体的には、『チョコレート類を原料とし、必要により糖類、食用油脂、乳製品、香料その他の可食物を加え、精錬、調温して製造し、カカオ分が全重量の8パーセント以上又はココアバターが全重量の2パーセント以上のものをいう(チョコレート生地及び準チョコレートに該当するものを除く。)。ただし、乳製品を加えたものにあっては、カカオ分が全重量の5パーセントを下らず、かつ、乳固形分との合計が8パーセントを下らない範囲内で、カカオ分の代わりに乳製品を使用することができる。』と規定されている。
【0044】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限らず本発明の範囲内で変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、第1充填工程において第1流動体21及び第2流動体22を容器1内に流下させ、第2充填工程において第1流動体21のみを容器内に流下させたが、これに限らない。
第2充填工程において、第1流動体21及び第2流動体22を容器1内に流下させてもよい。第1充填工程と第2充填工程とで、流下速度比V2/V1の値を変えることによって、硬化体4を底部1b側又は開口部1a側に偏在させることができる。
また、第1充填工程と第2充填工程とで、第1流動体を吐出するノズルが異なってもよい。第1充填工程と第2充填工程とで、第1流動体の組成が異なってもよい。
【0045】
また、第2充填工程の終了後、固化工程の前に、容器1内の堆積物の表面を平坦化する平坦化工程を設けてもよい。
具体的には、第1充填工程及び第2充填工程が終了した時点で、容器1内の堆積物の表面には凸凹があるため、下面が平坦である治具(以下、スタンプという)を上方から押し付けて平坦化する。
スタンプの下面は、容器1の開口部1aよりも小径の円形であることが好ましい。スタンプは例えば円柱状とすることができる。容器1の開口部1aの直径Rに対する、スタンプの下面の直径RSの比を表すRS/Rは0.3~0.9が好ましく、0.5~0.8がより好ましい。
また、スタンプの下面の材質を焼結金属等の多孔質材とし、スタンプの下面から空気等の気体が噴き出す構成としてもよい。かかる構成によれば、堆積物の表面にスタンプの下面を押し付けて引き上げる際に、スタンプの下面に堆積物が付着するのを防止できる。
さらに、スタンプを中空体とし、内腔部に液体窒素等の冷媒を供給して、堆積物の表面にスタンプの下面を押し付けると同時に、堆積物の表面を冷却する構成としてもよい。かかる構成によれば、堆積物の表面が冷却されて硬くなるため、スタンプを引き上げる際に、スタンプの下面に堆積物が付着するのを防止できる。
【0046】
また、前記固化工程で冷菓本体2を固化した後に、冷菓本体2の表面を覆うコーティング層(図示せず)を形成してもよい。コーティング層は公知の方法で形成することができる。
コーティング層の材料としては、硬化体4を構成する油脂組成物と同様の材料が例示でできる。
【実施例0047】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
(調製例1:冷菓基材の調製)
表1の配合で全原料を混合し、70℃で20分間撹拌して溶解した後、均質化処理した。次いで、90℃、30秒間の条件で加熱殺菌し、5℃に冷却してアイス原料ミックスを得た。
得られたアイス原料ミックスを連続式フリーザーに供給し、連続式フリーザーから排出される部分凍結品を、冷菓基材の未固化物(第1流動体)として充填工程に用いた。
冷菓基材のオーバーランは105%、5℃における粘度は190mPa・sである。
【0049】
【0050】
(実施例1)
図4に示す充填装置を用いて容器入り冷菓を製造した。容器1は、底部の直径が58mm、開口部の直径が79mm、高さが58mmのカップを用いた。最終製品における容器内の冷菓本体2の体積(設定値)は130mLとした。
調製例1で得た冷菓基材(第1流動体21)を第1ノズル11へ供給した。これとは別に、加温したチョコレート(第2流動体22)を第2ノズル12へ供給した。
第1ノズル11及び第2ノズル12の直下に容器1を配置し、冷菓基材及びチョコレートをそれぞれ連続的に吐出し、冷菓基材とチョコレートとを接触させた状態で流下させ、容器1の底面1b上に堆積させた。
冷菓基材とチョコレートとが接触する直前の、冷菓基材の温度は-4.4℃、チョコレートの温度は38℃とした。両者の温度差は42.4℃であった。
冷菓基材の流下速度V1は150mL/秒、チョコレートの流下速度V2は50mL/秒とした。
流下する冷菓基材及びチョコレートは、それぞれがつづら折り状の軌跡を描きながら容器1の底面1b上に堆積した。
【0051】
冷菓基材及びチョコレートの吐出量の合計が、冷菓本体2の体積の50体積%に達した時点でチョコレートの吐出を停止した。以降は冷菓本体2の体積の100%に達するまで、冷菓基材のみを吐出して堆積させ、充填工程を終了した。充填工程の終了後、下面が平坦面である円柱状(下面の直径60mm)のスタンプを、上方から容器内の堆積物の表面に押し付けて平坦化した。
この後、-25℃で24時間冷却して、容器内の堆積物を固化して冷菓本体2とし、容器入り冷菓を得た。
得られた冷菓本体2は、冷菓基材3中にチョコレートが硬化した硬化体4が存在する領域の上に、冷菓基材3のみからなる領域が存在していた。
冷菓基材3中の硬化体4の形状は、流下したチョコレートの一部が冷菓基材3と交互に重なり合い、他部はチョコレートどうしが重なり合うように容器1内に堆積した後に不規則に変形して硬化した形状であり、容器1の深さ方向(X方向)に交わる方向に張り出しながら容器1の底部1b側から開口部1a側へ向かって伸びる形状であった。
【0052】
得られた容器入り冷菓を、容器の開口部の中心を通り容器の深さ方向(X方向)に平行な断面が得られるように、容器ごと切断した。断面を撮影した画像を用い、上記の方法で前記断面におけるチョコレート(硬化体)の厚さを測定した。
厚さの測定結果に基づいて、厚さの平均値及び標準偏差を求めた。結果を表2に示す。
厚さの測定結果を、厚さを横軸とし、横軸の階級幅を0.1mmとするヒストグラムで表した結果を
図5に示す。ヒストグラムの縦軸(度数)は、厚さを測定した黒領域(チョコレートの硬化体)の数である。得られたヒストグラムに基づいて、累積相対度数5~95%における厚さの平均値及び標準偏差を求めた。結果を表2に示す。
また、前記断面を撮影した画像を用い、上記の方法で、底部側及び開口部側の各領域におけるチョコレートの面積の割合を求めた。結果を表2に示す。
【0053】
なお、断面を撮影した画像の解析には、画像解析ソフト(Image J)を用いた。
具体的には撮影画像を白黒の16bit画像に変換した後、Threshold処理を行って冷菓基材(白)とチョコレートの硬化体(黒)となるように調整した。その画像にBinary処理を行い、画像を完全な白と完全な黒に二極化させた。画像解析する範囲を指定し、Histogram解析で黒いピクセル数と白いピクセル数からそれぞれ冷菓基材の面積とチョコの硬化体の面積を算出した。
【0054】
(比較例1、2)
チョコレートの硬化体を含む市販のアイスクリーム類について、実施例1と同様にして、断面におけるチョコレート(硬化体)の厚さを測定し、厚さの平均値及び標準偏差、累積相対度数5~95%における厚さの平均値及び標準偏差、並びに底部側及び開口部側の各領域におけるチョコレートの面積の割合を求めた。結果を表2及び
図6~9に示す。
【0055】
比較例1は、アイスクリーム中に、チョコレートが硬化した薄層が螺旋状に存在する容器入り冷菓である。容器は、底部の直径が75mm、開口部の直径が81mm、高さが35mmのカップである。容器内の冷菓本体の体積は約184mLであった。
図6は、容器の開口部の中心を通り容器の深さ方向に平行な断面のバイナリ画像である。
図7は、断面におけるチョコレートの厚さの測定結果を示すヒストグラムである。
【0056】
比較例2は、冷菓本体にスティックが挿入されたアイスバーである。冷菓本体の大きさは高さ約90mm、幅約30mm、厚み30mmの略円柱状である。
図8は、冷菓本体の厚みを2等分するように切断した断面のバイナリ画像である。
図9は、断面におけるチョコレートの厚さの測定結果を示すヒストグラムである。
なお本例では、スティックの挿入方向(高さ方向)をX方向とみなし、X方向の両側のうち、スティックが挿入されている側を底部側(以下「下側」ともいう)、その反対側を開口部側(以下「上側」ともいう)とみなして測定を行った。
【0057】
【0058】
表2及び
図5、7、9の結果に示されるように、実施例1の冷菓本体は、比較例1、2の冷菓本体に比べて、冷菓基材中に存在するチョコレートの厚さの平均値が大きく、標準偏差の値が高い。標準偏差の値が高いほど厚さのばらつきが大きい。
また、ヒストグラムを比べると、比較例1、2はチョコレートの厚さが小さい方に偏っているのに対して、実施例1は厚さの偏りが小さい。累積相対度数5~95%における厚さの平均値及び標準偏差を比べると、実施例1は比較例1、2より顕著に大きい値を示した。
このように、実施例1はチョコレートの厚さのばらつきが大きく、厚さの偏りが小さいため、食べすすむ際に、薄いチョコレートの食感と厚いチョコレートの食感の違いを十分に楽しむことができる。
【0059】
また表2の結果に示されるように、実施例1の冷菓本体は、冷菓本体の輪郭に内接する矩形を、容器の底部側の領域と開口部側の領域とに2等分したとき、底部側の領域の総面積に対してチョコレートの面積が占める割合が高く、前記開口部側の領域の総面積に対してチョコレートの面積が占める割合がほぼゼロであり、その差が大きかった。なお、開口部側のチョコレートの面積の割合が0より大きくなったのは、容器入り冷菓を切断する際に断面にチョコレートのかけらが付着したことによる測定誤差である。
したがって、実施例1の容器入り冷菓を開口部側から食べすすめると、冷菓基材のみからなる領域から、チョコレートを含む領域への変化を楽しむことができる。
一方、比較例1の冷菓本体は、底部側より開口部側にチョコレートが多く存在しており、その差は実施例1より小さかった。
比較例2の冷菓本体は、スティックが挿入されている側を下側とすると、下側及び上側の両方にチョコレートが多く存在し、その差は非常に小さかった。