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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151720
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053278
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 明
(72)【発明者】
【氏名】清田 達也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 祐介
(72)【発明者】
【氏名】堀 敦史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 良和
(57)【要約】
【課題】絶縁破壊を防止できるパワー半導体モジュールを提供すること。
【解決手段】2枚の配線基板5,6と、2枚の配線基板5,6の間に、配線52,62同士を接続するように設けられているパワー半導体素子100Aと、を備え、パワー半導体素子100Aが、第一面1aに、第一電極11および第二電極12を備え、第二面1bに、第三電極14を備えるパワー半導体チップ1と、パワー半導体チップ1の第一面1aに、第一電極11と導通し得るように設けられている第一導通部21と、第二電極12と導通し得るように設けられ、平面視において、パワー半導体チップ1の外周縁から外側に張り出した部分を有する第二導通部22と、第一導通部21および第二導通部22を包み込む第一絶縁層23と、を備える第一接続部材2と、を備え、2枚の配線基板5,6の配線52,62のうちの少なくとも一方に、絶縁膜8が設けられている、パワー半導体モジュール200。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ基材および配線を備える、2枚の配線基板と、
2枚の前記配線基板の間に、前記配線同士を接続するように設けられているパワー半導体素子と、を備えるパワー半導体モジュールであって、
前記パワー半導体素子が、
第一面に、第一電極および第二電極を備え、前記第一面の反対側の第二面に、第三電極を備えるパワー半導体チップと、
前記パワー半導体チップの前記第一面に、前記第一電極と導通し得るように設けられている第一導通部と、前記第二電極と導通し得るように設けられ、平面視において、前記パワー半導体チップの外周縁から外側に張り出した部分を有する第二導通部と、前記第一導通部および前記第二導通部を包み込む第一絶縁層と、を備える第一接続部材と、を備え、
2枚の前記配線基板の前記配線のうちの少なくとも一方に、絶縁膜が設けられている、
パワー半導体モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記パワー半導体素子が、
前記パワー半導体チップの前記第二面に、前記第三電極と導通し得るように設けられている第三導通部と、前記第三導通部を包み込む第二絶縁層と、を備える第二接続部材と、
少なくとも前記パワー半導体チップを包み込む封止樹脂層と、をさらに備える、
パワー半導体モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
2枚の前記配線基板の前記配線のうちの少なくとも一方は、前記配線の一部が凸状となっている凸部を有しており、
前記凸部に、前記パワー半導体素子が配置されている、
パワー半導体モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
平面視において、前記パワー半導体素子の周縁部と、前記絶縁膜とが重なっている、
パワー半導体モジュール。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記パワー半導体モジュールが、2枚の前記配線基板の前記配線の一方に、受動部品をさらに備え、
2枚の前記配線基板の前記配線の他方に、前記絶縁膜が設けられている、
パワー半導体モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
2枚の前記配線基板の前記配線の一方は、前記配線の一部が凹状となっている凹部を有しており、
前記凹部に、前記受動部品が配置されている、
パワー半導体モジュール。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
2枚の前記配線基板の前記配線の両方に、前記絶縁膜が設けられている、
パワー半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子は、取り扱う電圧、または電流が大きく、スイッチの機能を備えている半導体素子である。このようなパワー半導体素子をモジュール化したものとして、例えば、特許文献1には、上側と下側にそれぞれ放熱板を備えた両面放熱構造を有するパワー半導体モジュールが開示されている。
また、このようなパワー半導体モジュールに好適に用いることができるパワー半導体素子として、例えば、特許文献2には、第1の面側に第1の電極と第2の電極とを備え、前記第1の面と逆側である第2の面側に第3の電極を備え、前記第1の電極がメインセル領域に設けられたパワー半導体チップと、前記パワー半導体チップの前記第1の面側に前記第1の電極と導通し得るように設けられ、前記パワー半導体チップの外周縁から外側に張り出した張り出し部を有する第4の電極と、を備える、パワー半導体素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-85631号公報
【特許文献2】特開2023-79124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載のようなパワー半導体素子を用いて、両面放熱構造を有するパワー半導体モジュールを作製した場合には、次のような問題があることが分かった。すなわち、パワー半導体モジュールの小型化(低背化)が求められている。この場合には、パワー半導体素子を介して向かい合う配線同士の間隔が短くなる。さらに、バッテリー電圧の上昇などの要求もあり、向かい合う配線同士により高い電圧がかかるが、このような場合の絶縁破壊を確実に防止する必要がある。一方で、配線同士の空間を、充填材などで埋めようとしても、内部に泡などが発生しやすく、絶縁破壊を十分に防止できない可能性がある。
【0005】
本発明は、絶縁破壊を防止できるパワー半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示すパワー半導体モジュールが提供される。
[1] それぞれ基材および配線を備える、2枚の配線基板と、
2枚の前記配線基板の間に、前記配線同士を接続するように設けられているパワー半導体素子と、を備えるパワー半導体モジュールであって、
前記パワー半導体素子が、
第一面に、第一電極および第二電極を備え、前記第一面の反対側の第二面に、第三電極を備えるパワー半導体チップと、
前記パワー半導体チップの前記第一面に、前記第一電極と導通し得るように設けられている第一導通部と、前記第二電極と導通し得るように設けられ、平面視において、前記パワー半導体チップの外周縁から外側に張り出した部分を有する第二導通部と、前記第一導通部および前記第二導通部を包み込む第一絶縁層と、を備える第一接続部材と、を備え、
2枚の前記配線基板の前記配線のうちの少なくとも一方に、絶縁膜が設けられている、
パワー半導体モジュール。
[2] [1]に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記パワー半導体素子が、
前記パワー半導体チップの前記第二面に、前記第三電極と導通し得るように設けられている第三導通部と、前記第三導通部を包み込む第二絶縁層と、を備える第二接続部材と、
少なくとも前記パワー半導体チップを包み込む封止樹脂層と、をさらに備える、
パワー半導体モジュール。
[3] [1]または[2]に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
2枚の前記配線基板の前記配線のうちの少なくとも一方は、前記配線の一部が凸状となっている凸部を有しており、
前記凸部に、前記パワー半導体素子が配置されている、
パワー半導体モジュール。
[4] [3]に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
平面視において、前記パワー半導体素子の周縁部と、前記絶縁膜とが重なっている、
パワー半導体モジュール。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載のパワー半導体モジュールにおいて、
前記パワー半導体モジュールが、2枚の前記配線基板の前記配線の一方に、受動部品をさらに備え、
2枚の前記配線基板の前記配線の他方に、前記絶縁膜が設けられている、
パワー半導体モジュール。
[6] [5]に記載のパワー半導体モジュールにおいて、
2枚の前記配線基板の前記配線の一方は、前記配線の一部が凹状となっている凹部を有しており、
前記凹部に、前記受動部品が配置されている、
パワー半導体モジュール。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のパワー半導体モジュールにおいて、
2枚の前記配線基板の前記配線の両方に、前記絶縁膜が設けられている、
パワー半導体モジュール。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、絶縁破壊を防止できるパワー半導体モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に用いるパワー半導体素子の一態様を示す概略図である。
図2図1のII-II断面を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に用いるパワー半導体素子の一態様を示す断面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係るパワー半導体モジュールを示す断面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るパワー半導体モジュールを示す断面図である。
図6】本発明の第三実施形態に係るパワー半導体モジュールを示す断面図である。
図7】本発明の第四実施形態に係るパワー半導体モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大または縮小をして図示した部分がある。
【0010】
(パワー半導体素子)
先ず、本実施形態に用いるパワー半導体素子について説明する。
本実施形態に用いるパワー半導体素子100は、図1および図2に示すように、パワー半導体チップ1と、第一接続部材2と、を備えている。
パワー半導体素子100は、1つのパワー半導体チップ1を備えていてもよく、2以上のパワー半導体チップ1を備えていてもよい。
パワー半導体素子100が1つのパワー半導体チップ1を備えている場合、パワー半導体素子100の大きさ(平面面積)は、10mm以上1000mm以下であることが好ましく、20mm以上500mm以下であることがより好ましく、30mm以上150mm以下であることがさらに好ましく、40mm以上80mm以下であることが特に好ましい。また、パワー半導体素子100が2つのパワー半導体チップ1を備えている場合、パワー半導体素子100の大きさは、20mm以上2000mm以下であることが好ましく、40mm以上1000mm以下であることがより好ましく、60mm以上300mm以下であることがさらに好ましく、80mm以上160mm以下であることが特に好ましい。さらに、パワー半導体素子100が3以上のパワー半導体チップ1を備えている場合、パワー半導体素子100の大きさは、1つのパワー半導体チップ1を備えている場合の例を参考にして適宜設定できる。
パワー半導体素子100の厚みは、100μm以上300μm以下であることが好ましく、120μm以上250μm以下であることがより好ましく、150μm以上200μm以下であることが特に好ましい。
本実施形態に係るパワー半導体モジュール200は、前記のように、小型化が求められているため、パワー半導体素子100を介して向かい合う配線同士の間隔が短くなり、絶縁破壊が発生するおそれがある。しかしながら、後述するように、本実施形態に係るパワー半導体モジュール200のような構造であれば、絶縁破壊を防止できる。
【0011】
パワー半導体チップ1は、第一面1aに、第一電極11および第二電極12を備え、第一面1aの反対側の第二面1bに、第三電極14を備え、さらに、半導体チップ本体13を備えている。
ここで、例えば、第一電極11、第二電極12、および第三電極14は、それぞれ、ソース電極、ゲート電極、およびドレイン電極である。
ここで、パワー半導体チップ1は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のいずれでもよい。MOSFETの場合には、第一電極11、第二電極12、および第三電極14は、それぞれ、ソース電極、ゲート電極、およびドレイン電極に対応している。また、IGBTの場合には、第一電極11、第二電極12、および第三電極14は、それぞれ、エミッタ電極、ベース電極、およびコレクター電極に対応している。ここで、パワー半導体チップ1がMOSFETの場合、ゲート絶縁層がトレンチ溝に設けられてゲート電極の一部が埋設されているようなトレンチ型であってもよく、ゲート絶縁層およびゲート電極が積層されたプレーナー型であってもよい。
半導体チップ本体13の材料は、特に限定されず、公知の半導体材料を用いることができる。具体的な材料としては、Si、SiC、GaN、GaAs、およびダイヤモンドなどが挙げられる。これらの中でも、絶縁破壊強度または熱伝導度などの観点から、ワイドバンドギャップ半導体を用いることが好ましい。ワイドバンドギャップ半導体としては、SiC、GaN、GaAs、およびダイヤモンドなどが挙げられる。
【0012】
第一接続部材2は、パワー半導体チップ1の第一面1aに、第一電極11と導通し得るように設けられている第一導通部21と、第二電極12と導通し得るように設けられている第二導通部22と、第一導通部21および第二導通部22を包み込む第一絶縁層23と、を備えている。
第二導通部22は、図1および図2に示すように、平面視において、パワー半導体チップ1の外周縁から外側に張り出した部分を有している。これにより、パワー半導体素子100において、ソース電極とゲート電極との間に十分な間隔を設けることができる。そのため、パワー半導体素子100を、配線基板の配線上に直接接合することが可能となる。
【0013】
第一接続部材2の上面(パワー半導体チップ1と接していない面)における第一導通部21の端部から第二導通部22の端部までの距離(以下、沿面距離X(図1参照)とも称する)は、0.1mm以上4mm以下であることが好ましく、0.2mm以上3mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上2mm以下であることが特に好ましい。沿面距離Xが前記範囲内であれば、ソース電極とゲート電極との間に十分な間隔を設けることができる。
パワー半導体チップ1の厚みは、70μm以上270μm以下であることが好ましく、90μm以上220μm以下であることがより好ましく、100μm以上200μm以下であることが特に好ましい。
【0014】
第一導通部21および第二導通部22の材質としては、金属が挙げられる。金属としては、銅、アルミニウム、銀、および金、並びに、これらを含む合金などが挙げられる。これらの中でも、銅、またはアルミニウムが好ましい。
第一絶縁層23は、絶縁性の樹脂組成物からなる層である。
樹脂組成物に用いる樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン、シンジオタクチックポリスチレン、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、およびメラミン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、絶縁破壊防止の観点から、ポリイミド、またはポリエーテルイミドを用いることが好ましい。
樹脂組成物は、フィラー、および添加剤などを含有していてもよい。フィラーとしては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウムなどが挙げられる。添加剤としては、公知のものを適宜使用できる。
【0015】
第一接続部材2の厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、15μm以上80μm以下であることがより好ましく、20μm以上50μm以下であることが特に好ましい。この厚みが前記範囲内であれば、適当な沿面距離Xを確保した第一接続部材2を設計しやすい。
【0016】
本実施形態においては、前述したパワー半導体素子100の他に、次のようなパワー半導体素子を使用できる。
本実施形態に用いるパワー半導体素子100Aは、図3に示すように、パワー半導体チップ1と、第一接続部材2と、第二接続部材3と、封止樹脂層4と、を備えている。
パワー半導体チップ1および第一接続部材2については、前述のとおりである。
【0017】
第二接続部材3は、パワー半導体チップ1の第二面1bに、第三電極14と導通し得るように設けられている第三導通部31と、第三導通部31を包み込む第二絶縁層32と、を備えている。
第三導通部31の材質としては、第一導通部21および第二導通部22と同様のものが挙げられる。ただし、第三導通部31の材質は、第一導通部21または第二導通部22と同じであってもよく、異なっていてもよい。
第二絶縁層32は、絶縁性の樹脂組成物からなる層である。樹脂組成物の樹脂としては、第一絶縁層23で用いたものと同様のものを使用できる。ただし、第二絶縁層32の材料は、第一絶縁層23と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
第二接続部材3の厚みは、3μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上80μm以下であることがより好ましく、7μm以上50μm以下であることが特に好ましい。
【0019】
封止樹脂層4は、少なくともパワー半導体チップ1を包み込む、絶縁性の樹脂組成物からなる層である。封止樹脂層4は、パワー半導体チップ1だけでなく、第一接続部材2および第二接続部材3を包み込んでいてもよい。
樹脂組成物に用いる樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン、シンジオタクチックポリスチレン、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、およびメラミン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性の観点から、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂組成物は、第一絶縁層23または第二絶縁層32と同様に、フィラー、および添加剤などを含有していてもよい。ただし、封止樹脂層4の材料は、第一絶縁層23または第二絶縁層32と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
(パワー半導体モジュール)
本実施形態に係るパワー半導体モジュール200は、図4に示すように、第一配線基板5および第二配線基板6と、これらの間に、第一配線52および第二配線62同士を接続するように設けられている、前述のパワー半導体素子100Aと、を備えている。パワー半導体素子100Aは、接合材7により、第一配線52および第二配線62に接合している。そして、第一配線基板5の第一配線52に、絶縁膜8が設けられている。なお、絶縁膜8は、第一配線52および第二配線62のうちの少なくとも一方に設けられていればよい。
本実施形態においては、向かい合う第一配線52および第二配線62同士の間隔Sが短くなるが、絶縁膜8により、絶縁破壊を防止できる。
この間隔Sは、100μm以上2000μm以下であることが好ましく、150μm以上1000μm以下であることがより好ましく、200μm以上500μm以下であることが特に好ましい。間隔Sが前記下限以上であれば、パワー半導体モジュール200の内部に、種類にもよるが、他の電子部品を搭載できる。間隔Sが前記上限以下であれば、パワー半導体モジュール200をより小型化できる。
【0021】
本実施形態においては、図4に示すように、第一配線52は、第一配線52の一部が凸状となっている凸部521を有していることが好ましい。そして、凸部521に、パワー半導体素子100Aが配置されていることが好ましい。
このような構成であれば、第一配線52の凸部521の高さHの分だけ、向かい合う第一配線52および第二配線62同士の間隔Sを長くできる。
凸部521の高さHは、10μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましく、30μm以上150μm以下であることが特に好ましい。
【0022】
本実施形態においては、平面視において、パワー半導体素子100Aの周縁部と、絶縁膜8とが重なっていることが好ましい。
このような構成であれば、パワー半導体素子100Aの周縁部と第一配線52との間に絶縁膜8が存在することになり、パワー半導体素子100Aの周縁部と第一配線52との間での絶縁破壊をより確実に防止できる。
【0023】
第一配線基板5は、第一基材51および第一配線52を備えている。また、第二配線基板6は、第二基材61および第二配線62を備えている。
第一基材51および第二基材61としては、公知の基材を使用できる。具体的には、セラミック基板などが挙げられる。
第一配線52および第二配線62の材質としては、金属が挙げられる。金属としては、銅、アルミニウム、銀、および金、並びに、これらを含む合金などが挙げられる。これらの中でも、銅、またはアルミニウムが好ましい。
第一配線52および第二配線62の厚みは、100μm以上2000μm以下であることが好ましく、150μm以上1500μm以下であることがより好ましく、200μm以上1000μm以下であることが特に好ましい。なお、第一配線52および第二配線62には、後述するように凸部や凹部を設けてもよく、部分的に厚みを変更してもよい。
接合材7としては、はんだ、焼結金属、および導電性接着剤などが挙げられる。
【0024】
絶縁膜8は、絶縁性の樹脂組成物からなる膜である。この膜は、単層膜であってもよく、多層膜であってもよい。
樹脂組成物に用いる樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン、シンジオタクチックポリスチレン、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、およびメラミン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、絶縁破壊防止の観点から、ポリイミド、またはポリエーテルイミドを用いることが好ましい。
なお、絶縁膜8は、多層膜であることが好ましい。そして、少なくとも一層を構成する樹脂の絶縁破壊強度は、100kV/mm以上であることが好ましく、150kV/mm以上であることがより好ましく、200kV/mm以上であることが特に好ましい。例えば、多層膜は、接着性を有する層と、絶縁破壊強度が前記範囲内にある樹脂を含有する層とを備えるものであってもよい。このような構成であれば、接着性に優れ、しかも絶縁破壊防止の効果も高い絶縁膜8を形成できる。
また、樹脂組成物は、第一絶縁層23または第二絶縁層32と同様に、フィラー、および添加剤などを含有していてもよい。
ただし、絶縁膜8の材料は、第一絶縁層23または第二絶縁層32と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
絶縁膜8の厚みは、10μm以上300μm以下であることが好ましく、15μm以上200μm以下であることがより好ましく、20μm以上150μm以下であることが特に好ましい。
【0026】
(第一実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)向かい合う第一配線52および第二配線62同士の間隔Sが短くなるが、絶縁膜8により、絶縁破壊を防止できる。
(2)第一配線52の凸部521により、凸部521の高さHの分だけ、向かい合う第一配線52および第二配線62同士の間隔Sを長くできる。
(3)パワー半導体素子100Aの周縁部と第一配線52との間に存在する絶縁膜8により、パワー半導体素子100Aの周縁部と第一配線52との間での絶縁破壊をより確実に防止できる。
【0027】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を図面に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同様の構成についての説明は省略する。
本実施形態に係るパワー半導体モジュール200Aは、図5に示すように、第一配線基板5および第二配線基板6と、これらの間に、第一配線52および第二配線62同士を接続するように設けられているパワー半導体素子100Aと、を備えている。パワー半導体素子100Aは、接合材7により、第一配線52および第二配線62に接合している。第一配線52は、凸部521を有しているだけでなく、第二配線62は、凸部621を有している。そして、第一配線52および第二配線62の両方に、絶縁膜8が設けられている。
第一配線52および第二配線62の両方に、絶縁膜8が設けられていることにより、第一配線52および第二配線62の間での絶縁破壊をより確実に防止できる。
【0028】
パワー半導体モジュール200Aは、第一配線52に、受動部品9をさらに備えている。そして、第二配線62に、絶縁膜8が設けられている。
このような構成であれば、受動部品9と第二配線62との間の絶縁破壊をより確実に防止できる。
受動部品9としては、抵抗器、コンデンサ、およびインダクタなどが挙げられる。
【0029】
本実施形態においては、図5に示すように、第一配線52は、第一配線52の一部が凹状となっている凹部522を有していることが好ましい。また、この凹部522に、受動部品9が配置されていることが好ましい。
このような構成であれば、大きな受動部品9であっても、パワー半導体モジュール200Aの内部に搭載できる。
凹部522の深さDは、10μm以上2000μm以下であることが好ましく、20μm以上1000μm以下であることがより好ましく、30μm以上500μm以下であることが特に好ましい。
【0030】
(第二実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態における作用効果(1)~(3)と同様の作用効果、並びに、下記作用効果(4)~(6)を奏することができる。
(4)第一配線52および第二配線62の両方に、絶縁膜8が設けられていることにより、第一配線52および第二配線62の間での絶縁破壊をより確実に防止できる。
(5)受動部品9と第二配線62との間に存在する絶縁膜8により、受動部品9と第二配線62との間の絶縁破壊をより確実に防止できる。
(6)第一配線52が凹部522を有していることにより、大きな受動部品9であっても、パワー半導体モジュール200Aの内部に搭載できる。
【0031】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を図面に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同様の構成についての説明は省略する。
本実施形態に係るパワー半導体モジュール200Bは、図6に示すように、第一配線基板5および第二配線基板6と、これらの間に、第一配線52および第二配線62同士を接続するように設けられているパワー半導体素子100Aと、を備えている。パワー半導体素子100Aは、接合材7により、第一配線52および第二配線62に接合している。第一配線52は、凸部521を有していないため、間隔Sは、第一実施形態における間隔Sよりも短い。そして、第一配線52および第二配線62の両方に、絶縁膜8が設けられている。
第一配線52および第二配線62の両方に、絶縁膜8が設けられていることにより、第一配線52および第二配線62の間での絶縁破壊をより確実に防止できる。
【0032】
(第三実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態における作用効果(1)と同様の作用効果、並びに、前記第二実施形態における作用効果(4)と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態を図面に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同様の構成についての説明は省略する。
本実施形態に係るパワー半導体モジュール200Cは、図7に示すように、第一配線基板5および第二配線基板6と、これらの間に、第一配線52および第二配線62同士を接続するように設けられているパワー半導体素子100と、を備えている。パワー半導体素子100は、接合材7により、第一配線52および第二配線62に接合している。第一配線52は、凸部521を有していないため、間隔Sは、第一実施形態における間隔Sよりも短い。そして、第一配線52および第二配線62の両方に、絶縁膜8が設けられている。
第一配線52および第二配線62の両方に、絶縁膜8が設けられていることにより、第一配線52および第二配線62の間での絶縁破壊をより確実に防止できる。
また、本実施形態においては、第一実施形態で用いたパワー半導体素子100Aに代えて、パワー半導体素子100を用いている。パワー半導体素子100には、段差があり、パワー半導体素子100の一部と、第二配線62とが向かい合う部分がある。そして、平面視において、パワー半導体素子100の一部と、絶縁膜8とが重なっている。
このような構成であれば、パワー半導体素子100の一部と第二配線62との間に絶縁膜8が存在することになり、パワー半導体素子100の一部と第二配線62との間での絶縁破壊をより確実に防止できる。
【0034】
(第四実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態における作用効果(1)と同様の作用効果、前記第二実施形態における作用効果(4)と同様の作用効果、並びに、下記作用効果(7)を奏することができる。
(7)パワー半導体素子100の一部と第二配線62との間に存在する絶縁膜8により、パワー半導体素子100の一部と第二配線62との間での絶縁破壊をより確実に防止できる。
【0035】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、または改良などは本発明に含まれる。
例えば、前述の第一実施形態では、パワー半導体モジュール200に搭載されるパワー半導体素子100Aの個数は1つであるが、これに限定されない。パワー半導体素子100Aの個数は2以上であってもよい。
また、前述の第二実施形態では、パワー半導体モジュール200Aに搭載される受動部品9の個数は1つであるが、これに限定されない。受動部品9の個数は2以上であってもよい。
前述の第二実施形態では、第二配線62には、パワー半導体素子100Aが配置されている箇所を除き、ほぼ全面にわたり、絶縁膜8が設けられているが、これに限定されない。パワー半導体モジュール200Aに搭載される受動部品9に対向する部分において、第二配線62が存在しないような配線パターンとしてもよい。このような部分に第二配線62がなければ、絶縁膜8がなくても、受動部品9と第二配線62との間の絶縁破壊の問題が発生しない。また、第二配線62が存在しない分だけ、大きな受動部品9を用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1…パワー半導体チップ
11…第一電極
12…第二電極
13…半導体チップ本体
14…第三電極
2…第一接続部材
21…第一導通部
22…第二導通部
23…第一絶縁層
3…第二接続部材
31…第三導通部
32…第二絶縁層
4…封止樹脂層
5…第一配線基板
51…第一基材
52…第一配線
521…凸部
522…凹部
6…第二配線基板
61…第二基材
62…第二配線
621…凸部
7…接合材
8…絶縁膜
9…受動部品
100,100A…パワー半導体素子
200,200A,200B,200C…パワー半導体モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7