(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015174
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】カップ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 3/22 20060101AFI20250123BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B65D3/22 B
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118396
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】591007295
【氏名又は名称】株式会社アプリス
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 敦士
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA22
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC13
3E013BD11
3E013BE01
(57)【要約】
【課題】加熱によりカップ容器が熱くなっていても、喫食者が不快感なく把持できる時間を延長したカップ容器を提供する。
【解決手段】カップ容器1は、紙製であり、容器本体2の底を塞ぐ底部21と、紙基材4を湾曲させて成り、底部21の周縁に沿って立ち上がる胴部22とを備えている。胴部22の上端部は外側に折り返されており、胴部2の周縁に沿って延在するカール部3が設けられる。紙基材4のうち、カール部3を成す範囲には、複数の凸部5aを有するエンボス領域5が形成される。カール部3のカール内部35には、エンボス領域5の凸部5aであるカール内凸部51aが突き出している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製のカップ容器であって、
容器の底を塞ぐ底部と、
紙基材を湾曲させて成り、前記底部の周縁に沿って立ち上がる胴部と、
前記胴部の上端部が外側に折り返され、当該胴部の周縁に沿って延在するカール部と、
前記紙基材のうち、前記カール部を成す範囲に形成され、複数の凸部を有するエンボス領域と、
を備え、
前記カール部の内部には、前記エンボス領域の前記凸部であるカール内凸部が突き出していること、
を特徴とするカップ容器。
【請求項2】
前記胴部に内嵌合する蓋を備え、
前記エンボス領域は、前記蓋との嵌合領域に形成され、前記胴部の内周面から突き出す前記凸部であるカール外凸部を有すること、
を特徴する請求項1記載のカップ容器。
【請求項3】
前記カール部は、
前記胴部の周縁となる屈曲部と、
前記屈曲部を始端として外側に折り返された折り返し部と、
前記折り返し部が被さる対面部と、
を有し、
前記カール部の内部は、前記屈曲部、前記折り返し部及び前記対面部によって画成され、
前記カール外凸部は、前記対面部から突出していること、
を特徴とする請求項2記載のカップ容器。
【請求項4】
前記蓋は、上から下へ外側に向かって拡がり、前記胴部の前記嵌合領域と対面する逆テーパ部を備えること、
を特徴とする請求項2記載のカップ容器。
【請求項5】
前記カール部は、
前記胴部の周縁となる屈曲部と、
前記屈曲部を始端として外側に折り返された折り返し部と、
前記折り返し部が被さる対面部と、
を有し、
前記カール部の内部は、前記屈曲部、前記折り返し部及び前記対面部によって画成され、
前記エンボス領域は、前記折り返し部、前記対面部又は両方に、前記カール内凸部を有すること、
を特徴とする請求項1記載のカップ容器。
【請求項6】
前記エンボス領域は、少なくとも、前記折り返し部に前記カール内凸部を有し、
前記折り返し部の前記カール内凸部は、前記対面部の前記カール内凸部よりも薄く引き延ばされていること、
を特徴とする請求項5記載のカップ容器。
【請求項7】
前記エンボス領域は、
前記折り返し部にある前記カール内凸部の形成範囲である第1凸部領域と、
前記対向部にある前記カール内凸部の形成範囲である第2凸部領域と、
前記第1凸部領域と前記第2凸部領域との間に位置し、凹凸が無い平滑領域と、
を有し、
前記屈曲部は、前記平滑領域を含み形成されていること、
を特徴とする請求項5記載のカップ容器。
【請求項8】
前記エンボス領域は、前記胴部の下端又は途中高さから、前記カール部を成す範囲にかけて形成され、前記胴部の外表面に前記凸部を有すること、
を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のカップ容器。
【請求項9】
前記胴部の外表面に発泡樹脂層を備えること、
を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のカップ容器。
【請求項10】
前記胴部の内表面に樹脂コーティング層を備えること、
を特徴とする請求項8記載のカップ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は飲料が収容され、飲食前に電子レンジで加熱されるカップ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジで加熱されることを予定されている調理済みの食品又は飲料等の飲食物が、コンビニエンスストア等で陳列及び販売されている。これら飲食物は、電子レンジによる加熱対応の使い捨てカップ容器に収容され、容器から取り出さずに電子レンジに収容及び加熱される。
【0003】
このカップ容器は、一端有底及び他端開口の容器本体を有している。容器本体は、底部の周縁から無端状に立ち上がる胴部を有している。胴部の上端部は、周縁に沿ってカール部が形成されている。カール部は、胴部の上端部を外側に折り返して成る(例えば特許文献1参照)。カール部は、開口を囲う周縁の強度を高めるために形成され、開口が歪み難くしている。また、カール部は、容器本体に覆い被さる外嵌合蓋との嵌合部として形成されることもある。
【0004】
電子レンジから取り出す際等において、喫食者が火傷し難いように、喫食者がカップ容器を把持しても飲食物の熱が喫食者に伝わり難い断熱処理がされている。断熱処理方法としては、湿気を有する紙製のカップ容器の外表面にポリエチレン樹脂等の熱可塑性の発泡層をコーティングし、カップ容器の紙に含有の水分の蒸気圧によって発泡層を発泡させる方法がある(例えば、特許文献2参照。)。発泡層がカップ容器と喫食者の手や指との間に介在する。この発泡層が断熱層となり、飲食物から喫食者への伝熱を抑制する。
【0005】
発泡層の発泡程度や均一性は、熱可塑性樹脂の押出し時の樹脂温度、紙の表面性、貼り合せ時のニップ圧等の条件によってバラツキが生じる虞がある。そのため、発泡厚の薄い局所箇所が生じ、局所的に有用な断熱効果が得られない虞がある。もっとも、発泡層が良好に形成することができても、喫食者に不快感を与えずに済むような断熱処理方法は、未だ開発途上にある。
【0006】
従って、喫食者は、発泡層でコーティングされていたとしても胴部を把持することを躊躇う。代わりに、喫食者は、経験的に、カール部を把持することが多い。カール部は、容器開口の周縁に位置し、飲食物から最も遠い。またカール部は、胴部の紙基材を折り返して形成されるため、厚肉であり、胴部より伝熱性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-91540
【特許文献2】特公昭48-32283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、カール部は、開口周縁の強化及び外嵌合のために設けられ、把持するために設けられていない。特に、外嵌合容易性の観点から、カール部は短く、喫食者の指の大半はカール部からはみ出して胴部に触れてしまう。そのため、カール部を持ち手として扱ったとしても、喫食者がカップ容器を不快感なく把持できる時間は、そう長く続かなかった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、加熱によりカップ容器が熱くなっていても、喫食者が不快感なく把持できる時間を延長したカップ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るカップ容器は、紙製のカップ容器であって、容器の底を塞ぐ底部と、紙基材を湾曲させて成り、前記底部の周縁に沿って立ち上がる胴部と、前記胴部の上端部が外側に折り返され、当該胴部の周縁に沿って延在するカール部と、前記紙基材のうち、前記カール部を成す範囲に形成され、複数の凸部を有するエンボス領域と、を備え、前記カール部の内部には、前記エンボス領域の前記凸部であるカール内凸部が突き出している。
【0011】
前記胴部に内嵌合する蓋を備え、前記エンボス領域は、前記蓋との嵌合領域に形成され、前記胴部の内周面から突き出す前記凸部であるカール外凸部を有するようにしてもよい。
【0012】
前記カール部は、前記胴部の周縁となる屈曲部と、前記屈曲部を始端として外側に折り返された折り返し部と、前記折り返し部が被さる対面部と、を有し、前記カール部の内部は、前記屈曲部、前記折り返し部及び前記対面部によって画成され、前記カール外凸部は、前記対面部から突出しているようにしてもよい。
【0013】
前記蓋は、上から下へ外側に向かって拡がり、前記胴部の前記嵌合領域と対面する逆テーパ部を備えるようにしてもよい。
【0014】
前記カール部は、前記胴部の周縁となる屈曲部と、前記屈曲部を始端として外側に折り返された折り返し部と、前記折り返し部が被さる対面部と、を有し、前記カール部の内部は、前記屈曲部、前記折り返し部及び前記対面部によって画成され、前記エンボス領域は、前記折り返し部、前記対面部又は両方に、前記カール内凸部を有するようにしてもよい。
【0015】
前記エンボス領域は、少なくとも、前記折り返し部に前記カール内凸部を有し、
前記折り返し部の前記カール内凸部は、前記対面部の前記カール内凸部よりも薄く引き延ばされているようにしてもよい。
【0016】
前記エンボス領域は、前記折り返し部にある前記カール内凸部の形成範囲である第1凸部領域と、前記対向部にある前記カール内凸部の形成範囲である第2凸部領域と、前記第1凸部領域と前記第2凸部領域との間に位置し、凹凸が無い平滑領域と、を有し、前記屈曲部は、前記平滑領域を含み形成されているようにしてもよい。
【0017】
前記エンボス領域は、前記胴部の下端又は途中高さから、前記カール部を成す範囲にかけて形成され、前記胴部の外表面に前記凸部を有するようにしてもよい。
【0018】
前記胴部の外表面に発泡樹脂層を備えるようにしてもよい。
【0019】
前記胴部の内表面に樹脂コーティング層を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、加熱によりカップ容器が熱くなっていても、カール部を持ち手としてカップ容器を扱う喫食者が不快感なく把持できる時間を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係るカップ容器について図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。以下、カップ容器の底面側を下方又は下側といい、開口側を上方又は上側といい、カップ容器が拡がる方向を径方向という。
【0023】
(構成)
図1は、カップ容器1の全体図である。カップ容器1は、例えばドリア等の電子レンジで温められる飲食品を内部に収容している。飲食品はカップ容器1に収容されたまま、電子レンジに入れられて温められる。このカップ容器1は、容器本体2と蓋7とを備えている。容器本体2は紙を基材とする紙製であり、蓋7は、樹脂シートを成形して得られる透明な樹脂製である。
【0024】
容器本体2は、有底筒形状を有する。有底筒形状としては、上方へ垂直に立ち上がる円筒形状、及び上方へ向けて漸次拡径する逆錐台状が挙げられる。筒の環形状には、例えば、真円、楕円、角丸長方形、卵形、その他のオーバル状を含む各種円形状、及び多角形状が含まれる。この容器本体2は、底部21と胴部22を有する。底部21は容器本体2の底を塞ぐ厚肉面である。この底部21は、平坦面であり、又は容器本体2の内部に向けてドーム状に湾曲している。
【0025】
胴部22は、底部21の周縁全周に沿って無端状に延在する。胴部22は、底部21の周縁から上方へ立ち上がる。胴部22の下端側が底部21よりも下方に延び、容器本体2の高台を担っていてもよい。胴部22の環形状は、底部21に倣った同一形状であってもよいし、底部21と異なる形状であってもよい。また、胴部22は、下端から上端にかけて同一形状であってもよいし、高さによって異なる形状を有していてもよい。
【0026】
胴部22にはエンボス領域5が形成されている。エンボス領域5は、胴部22の面に複数の凸部5aが形成された領域である。凸部5aは、胴部22に対して局所的に型を押し当てて圧力をかけ、紙製の胴部22を局所的に盛り上げることで成型される。エンボス領域5は、胴部22の全面に及んでいてもよいし、エンボス領域5が求められる機能に合わせて限定された1又は複数の領域に形成されていてもよい。また、凸部5aは、求められる機能に合わせて、容器本体2の外側に盛り上がるように形成されていてもよいし、容器本体2の内側に盛り上がるように形成されていてもよいし、盛り上がる方向が異なる複数種が形成されていてもよい。
【0027】
胴部22の周縁26にはカール部3が形成されている。カール部3は、胴部22よりも径方向外側に膨出している。このカール部3は、紙製の胴部22を径方向外側に折り曲げて形成される。容器本体2は開口25を有する。開口25は飲食時の飲食品取り出し口である。カール部3は、この開口25を一周に亘って取り囲み、開口25の強度を高めている。また、このカール部3は、喫食者の指先で把持されても、喫食者の指の広範囲が当該カール部3に収まるように、上下方向に幅広になっている。
【0028】
カール部3は、更に蓋7を着座させる機能も担っている。蓋7は、カール部3に着座しつつ、容器本体2と内嵌合して、容器本体2の開口25を閉じる。但し、容器本体2と蓋7とは熱融着等は無く未接着である。この蓋7は、例えばポリプロピレン等のプラスチックシートを用いたシート成形して作製される。蓋7は、中心から外周へ向けて、天面71と内嵌合部72と蓋側フランジ部74を備えている。天面71と内嵌合部72と蓋側フランジ部74は、シート成形によって繋ぎ目無く一続きに繋がることで一体的に形成されている。
【0029】
天面71は、蓋7の中心を含む最内殻に位置する。天面71は、蓋7の中心から全周に亘って径方向に拡がる。内嵌合部72は、天面71の周縁に沿って1周に亘って無端状に延在する。内嵌合部72は、蓋7の下方に凸状に膨出した環状体である。内嵌合部72は、容器本体2の内周面と同径又は若干大径である。蓋7を容器本体2に被せたとき、内嵌合部72は、容器本体2の内側に入り込んで、容器本体2の内周面と圧接する。
【0030】
蓋側フランジ部74は、内嵌合部72の外周壁の上端に沿って1周に亘って無端状に延設され、半径方向外方に拡大する。蓋側フランジ部74は、蓋7の最外周に位置する。蓋側フランジ部74は、容器本体2のカール部3に着座する。従って、蓋側フランジ部74の最外径は、少なくとも、容器本体2のカール部3の最内径よりも長径である。蓋側フランジ部74は、カール部3に載ればよく、半径方向に水平に延びる水平面であってもよいし、カール部3の上部を包むように、カール部3に沿って湾曲していてもよい。
【0031】
図2は、胴部22の紙基材4の展開図である。また、
図3は、カール部3の断面図である。
図2及び
図3を参照しつつ、容器本体2のカール部3とエンボス領域5との関係について、更に詳細に説明する。胴部22は、紙基材4の両端部を貼り合わせた筒である。
図3に示すように、紙基材4は、環状扇形(annular sector)のシート又は長方形の帯状シートである。
【0032】
紙基材4には、胴部22の外側になる面に発泡樹脂層がコーティングされ、容器本体2の内側になる面に高軟化点樹脂層がコーティングされている。発泡樹脂層と高軟化点樹脂層の熱可塑性樹脂としては軟化点に差があるものが用いられる。発泡樹脂層には高軟化点樹脂層よりも軟化点が低い熱可塑性樹脂が用いられ、高軟化点樹脂層には発泡樹脂層よりも軟化点が高い樹脂が用いられる。
【0033】
発泡樹脂層及び高軟化点樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、などポリオレフィンを挙げることができる。ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスフィルド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどを挙げることができる。
【0034】
紙基材4の上端部41は、カール部3に成形される。カール部3は、屈曲部31、折り返し部32、対面部33及び折り込み部34を有する。折り返し部32は、容器本体2の外側に折り返された紙片であり、先端が紙基材4の下端42に向くまで折り返されている。屈曲部31は、折り返し部32の始端となり、胴部22の周縁となる。対面部33は、胴部22から続き、折り返し部32と対面する領域である。折り込み部34は、折り返し部32の先端域であり、折り返し部32と対面部33との間に折り込まれている。
【0035】
ここで、このカール部3は、喫食者の指先で把持されても、喫食者の指の広範囲が当該カール部3に収まるように、上下方向に幅広になっている。例えば、折り返し部32は、上下方向に8mm以上20mm以下の長さを有する。これに対し、折り込み部34の上下方向の長さは、2mm以上10mm以下であり、折り返し部32と対面部33との間は、折り込み部34によって中実ではなく、空間となる。尚、折り込み部34を10mm超とすると、生産効率の低下を招来したり、折り返し部32の略中央部に負荷がかかってシワが発生したり、シワにより強度不足が発生したり、折り返し部32が変形し易くなってしまう虞がある。従って、折り込み部34は、10mm以下が好ましく、この場合、喫食者の指の広さに影響される折り返し部32と同等の長さにはならない。
【0036】
エンボス領域5は、紙基材4のうち、カール部3に成形される領域を含めて拡がっている。エンボス領域5は、カール内凸部領域51とカール外凸部領域52と胴部凸部領域53に大別される。カール内凸部領域51は、カール部3の対面部33の途中位置から屈曲部31を経て折り返し部32が形成される紙基材4の上端部41の領域である。カール外凸部領域52は、カール内凸部領域51に隣接し、対面部33の下端までの領域である。胴部凸部領域53は、胴部22のうち、カール部3より下方の領域である。
【0037】
図4に示すように、カール内凸部領域51において、エンボス領域5の凸部5aは、カール部3の折り返し部32と対面部33との間に挟まれたカール内部35に膨出するカール内凸部51aである。カール内凸部51aは、紙基材4の容器内周面24となる面から型で押し出されて、容器外周面23となる面に膨出している。カール内凸部領域51は、対面部33から折り返し部32に形成されているため、このカール内凸部51aは、カール内面36の範囲に配置され、カール内部35に膨出する。
【0038】
ここで、
図3及び
図4に示すように、カール内凸部領域51は、折り返し部32に対応する第1凸部領域511と、対面部33に対応する第2凸部領域512と、屈曲部31に対応する平滑領域513を有する。第1凸部領域511と第2凸部領域512には、カール内凸部51aが形成されている。しかし、平滑領域513には、カール内凸部51aを含め、一切の凸部5aは形成されていない。
【0039】
次に、カール外凸部領域52において、エンボス領域5の凸部5aは、カール部3の背面に膨出するカール外凸部52aである。カール外凸部52aは、紙基材4の容器外周面23となる面から型で押し出されて、容器内周面24となる面に膨出している。カール外凸部領域52は、対面部33の下端域に形成されているため、このカール外凸部52aは、カール部3の背面に配置され、容器本体2の容器内周面24に膨出する。
【0040】
胴部凸部領域53において、エンボス領域5の凸部5aは、カール部3よりも下方の胴部22に膨出する胴部凸部53aである。胴部凸部53aは、紙基材4の容器内周面24となる面から型で押し出されて、容器外周面23となる面に膨出している。尚、この胴部凸部53aを含め、エンボス領域5の凸部5aは、真円、楕円、角丸長方形、卵形、その他のオーバル状を含む各種円形状、細長い線状を含む多角形状の領域である。典型的には、四角形である。凸部5aの角は角張っていてもよいし、丸みを帯びていてもよい。凸部5aは、平坦面無く湾曲した半球状であってもよい。
【0041】
(作用)
このようなカップ容器1において、カール部3とエンボス領域5との関係においては、次の通りとなる。まず、カール内凸部領域51が無い場合を考える。喫食者の指の広範囲をカール部3に収めるために、カール部3が上下方向に幅広になるように、折り返し部32を伸ばすと、喫食者による押圧によりカール部3が潰れ易くなる。カール部3が潰れてしまうと、カール部3が薄肉になり、単位面積当たりの断熱作用が低下してしまう。
【0042】
一方、このカップ容器1では、カール内部35に向けてカール内凸部51aが膨出している。そのため、カール内部35の空隙が減少し、カール内凸部51aにより、カール部3が強化されている。そのため、上下方向に幅広になったカール部3を喫食者が押圧しても、カール部3は潰れ難い。従って、カール部3の断熱作用を減少させることなく、喫食者の指の広範囲をカール部3によって熱から保護することができる。このカップ容器1を電子レンジにより加熱した後、カール部3を持ち手としてカップ容器1を扱っても、喫食者が不快感なく把持できる時間を延ばすことができる。
【0043】
カール内凸部51aは、カール内部35を画するカール内面36から膨出すれば、膨出箇所に特に限定はない。例えば、カール内凸部51aは、対面部33のみに設けてもよい。もっとも、カール内凸部51aは、少なくとも、折り返し部32に設けられることが、より有益である。折り返し部32に設けられたカール内凸部51aは、胴部22の成形工程中、紙基材4の上端部41が折り返されて、対面部33側に押し付けられた際、薄く引き延ばされる。このとき、折り返し部32のカール内凸部51aは、引き延ばされる際に消費され、折り返し部32の代わりに薄く引き延ばされる。そのため、カール部3には、しわが寄り難く、見栄えが向上し、歩留まりが向上する。
【0044】
より好ましくは、カール内凸部51aは、対面部33と折り返し部32の両方に設ける。カール内部35の中実度が更に向上し、カール部3がより潰れ難くなる。但し、更に好ましい態様として、このカップ容器1は、カール内凸部領域51を、折り返し部32に対応する第1凸部領域511と、対面部33に対応する第2凸部領域512とに分ける。そして、第1凸部領域511と第2凸部領域512との間に、凸部5aが形成されておらず、凹凸が無い平滑領域513を設ける。
【0045】
この更なる好ましい態様によれば、第1凸部領域511と平滑領域513との境界が折り目になり易く、また第2凸部領域512と平滑領域513との境界が折り目になり易い。このようにエンボス領域5が折り目の役割を果たす。そのため、平滑領域513を狭くすれば、容器半径方向に幅狭な屈曲部31が形成可能となる。幅狭な屈曲部31には、例えばチーズが入った飲食物をカップ容器1に収容する際などにおいて、チーズ等の飲食物が載り難く、見栄えよくカップ容器1に飲食物を収容でき、歩留まりが向上するとともに、蓋7による密閉性が向上する。
【0046】
図4は、カップ容器1の内嵌合を示す断面図である。カール部3の背面は、蓋7の内嵌合部72との嵌合領域に属する。カール外凸部領域52のカール外凸部52aは、内嵌合部72とカップ容器1の容器内周面24との圧接力を増強し、蓋7を外れ難くする。このとき、内嵌合部72には、上から下へ外側に向かって拡がる逆テーパ面73を形成するとよい。内嵌合部72が逆テーパ面73により逆テーパ部となり、カール外凸部52aに引っ掛かり、蓋7をより外れ難くする。蓋7が外れ難くなれば、電子レンジで加熱したとき、内部から熱せられた蒸気が放出され難く、喫食者がカール部3を把持したときの不快感を低減させることができる。
【0047】
このように、このカップ容器1は、紙製であり、容器本体2の底を塞ぐ底部21と、紙基材4を湾曲させて成り、底部21の周縁に沿って立ち上がる胴部22とを備えている。胴部22の上端部は外側に折り返されており、胴部22の周縁に沿って延在するカール部3が設けられる。そして、複数の凸部5aを有するエンボス領域5は、紙基材4のうち、カール部3を成す範囲に形成するようにした。カール部3のカール内部35には、エンボス領域5の凸部5aであるカール内凸部51aが突き出すようにした。
【0048】
これにより、カール部3を喫食者が押圧しても、カール部3は潰れ難いため、カール部3を上下方向に幅広に伸ばし、喫食者の指の広範囲をカール部3によって熱から保護することができる。従って、このカップ容器1を電子レンジにより加熱した後、カール部3を持ち手としてカップ容器1を扱っても、喫食者が不快感なく把持できる時間を延ばすことができる。
【0049】
カール部3は潰れ難くするためには、エンボス領域5は、紙基材4のうちのカール部3を成形する範囲に限れば十分である。しかし、これに限らず、同じ工程で、胴部22の下端42又は途中高さから、カール部3を成す範囲にかけてエンボス領域5を拡張してもよく、胴部22の容器外周面23に凸部5aを有するようにしてもよい。喫食者が胴部22を把持したとしても、胴部22のエンボス領域5によって、喫食者の不快感を低減させることができます。
【0050】
また、エンボス領域5は、少なくとも、折り返し部32にカール内凸部51aを有するようにした。折り返し部32のカール内凸部51aは、対面部33のカール内凸部51aよりも薄く引き延ばされているようにした。
【0051】
これにより、カール部3を上下方向に幅広に伸ばしたとしても、カール部3に周方向に沿った皺がより難くなり、見栄えがよく、歩留まりも向上する。
【0052】
また、エンボス領域5は、折り返し部32にあるカール内凸部51aの形成範囲である第1凸部領域511と、対面部33にあるカール内凸部51aの形成範囲である第2凸部領域512と、第1凸部領域511と第2凸部領域512との間に位置し、凹凸が無い平滑領域513とを有するようにした。
【0053】
これにより、第1凸部領域511と平滑領域513の境界と、第2凸部領域512と平滑領域513の境界に折り目が付く。屈曲部31は、平滑領域513を含み形成されるようになる。即ち、平滑領域513を細くすれば、屈曲部31を細くすることができ、製造時に飲食物がカール部3に載ってしまうリスクを低減でき、見栄えがよく、歩留まりも向上する。
【0054】
また、胴部22に内嵌合する蓋7を備えるようにした。そして、エンボス領域5は、蓋7との嵌合領域に形成され、胴部22の容器内周面24から突き出す凸部5aであるカール外凸部52aとを有するようにした。
【0055】
これにより、容器本体2と蓋7との圧接力が向上し、蓋7が外れ難くなる。そのため、電子レンジで加熱したとき、内部から熱せられた蒸気が放出され難く、喫食者がカール部3を把持したときの不快感を低減させることができる。
【0056】
(他の実施形態)
このほか、本発明の実施形態及び実施例は例として提示したものであって、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。上記実施形態及び実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態、実施例及びその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【0057】
例えば、カール部3を潰れ難くして、加熱調理後に喫食者がカール部3を把持したとき不快感を低減させる場合、エンボス領域5は、カール内凸部領域51のみとしてもよい。また、上下方向に伸ばしたカール部3に皺が生じ難し、見栄えの向上及び歩留まりの向上を図るためには、エンボス領域5は、折り返し部32に対応する第1凸部領域511のみとしてもよい。
【0058】
また、カール部3の屈曲部31を細くし、製造工程内で飲食物がカール部3に載って見栄えが悪くなったり、歩留まりが低下しないように、エンボス領域5として、折り返し部32に対応する第1凸部領域511と、対面部33に対応する第2凸部領域512と、屈曲部31に対応する平滑領域513のみを設けるようにしてもよい。
【0059】
また、蓋7を外れ難くし、加熱調理後、カール部3を把持する喫食者に不快感を与えないように、エンボス領域5は、カール外凸部領域52のみとしてもよい。このカール外凸部領域52は、蓋7との嵌合領域であれば、カール部3の背面のみならず、カール部3よりも下方に形成してもよいし、カール部3の下方のみに形成するようにしてもよい。
【0060】
更に、胴部凸部領域53を含め、エンボス領域5内の複数の領域を併せ持つカップ容器1としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 カップ容器
2 容器本体
21 底部
22 胴部
23 容器外周面
24 容器内周面
25 開口
26 周縁
27 嵌合領域
3 カール部
31 屈曲部
32 折り返し部
33 対面部
34 折り込み部
35 カール内部
36 カール内面
4 紙基材
41 上端部
42 下端
5 エンボス領域
5a 凸部
51 カール内凸部領域
51a カール内凸部
511 第1凸部領域
512 第2凸部領域
513 平滑領域
52 カール外凸部領域
52a カール外凸部
53 胴部凸部領域
53a 胴部凸部
7 蓋
71 天面
72 内嵌合部
73 逆テーパ面
74 蓋側フランジ