(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015181
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/335 20190101AFI20250123BHJP
【FI】
G06F16/335
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118408
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】591280485
【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河戸 優典
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA01
5B175FB01
5B175HA02
(57)【要約】
【課題】保育施設の職員の業務負担を軽減できるデータ処理装置、データ処理方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本開示のデータ処理装置は、ユーザ入力を受け付ける入力部と、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルを用いた第1の特定処理を行う処理部と、前記第1の特定処理の結果を出力する出力部と、を備え、前記第1の特定処理は、就学前の子供の日々の生活記録を要約した要録を生成する処理を含み、前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記生活記録とを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ入力を受け付ける入力部と、
入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルを用いた第1の特定処理を行う処理部と、
前記第1の特定処理の結果を出力する出力部と、を備え、
前記第1の特定処理は、就学前の子供の日々の生活記録を要約した要録を生成する処理を含み、
前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記生活記録とを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む、
データ処理装置。
【請求項2】
前記生活記録は、前記子供の保護者と前記子供を保育又は教育する保育者とが作成した前記子供に関する記録である、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、さらに前記文章生成モデルを用いた第2の特定処理を行い、
前記第2の特定処理は、前記子供の保育又は教育を行う保育施設の保育計画を生成する処理を含み、
前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めとを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記子供の保育に関する保育情報を受け付けることができ、
前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めと前記保育情報とを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む、
請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記子供の発育に関する情報は、前記第1の特定処理の結果を含む、
請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めは、保育所保育指針、幼稚園教育要領及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領の少なくとも1つを含む、
請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
ユーザ入力を受け付ける工程と、
就学前の子供の日々の生活記録を取得する工程と、
前記生活記録を要約した要録を生成する第1の特定処理を実行するために、ユーザ入力から得られる情報と前記生活記録とから、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルに入力する前記入力データを生成する工程と、
生成した前記入力データを前記文章生成モデルに入力して前記第1の特定処理を実行する工程と、
前記第1の特定処理の結果を出力する工程と、を備える、
データ処理方法。
【請求項8】
データ処理装置を構成するコンピュータの少なくとも1つのプロセッサに、
ユーザ入力を受け付ける処理と、
就学前の子供の日々の生活記録を取得する処理と、
前記生活記録を要約した要録を生成する第1の特定処理を実行するために、ユーザ入力から得られる情報と前記生活記録とから、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルに入力する前記入力データを生成する処理と、
生成した前記入力データを前記文章生成モデルに入力して前記第1の特定処理を実行する処理と、
前記第1の特定処理の結果を出力する処理と、を実行させる、
プログラム。
【請求項9】
ユーザ入力を受け付ける入力部と、
入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルを用いた特定処理を行う処理部と、
前記特定処理の結果を出力する出力部と、を備え、
前記特定処理は、就学前の子供の保育を行う保育施設の保育計画を生成する処理を含み、
前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めとを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む、
データ処理装置。
【請求項10】
前記入力部は、前記子供に関する保育情報を受け付けることができ、
前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めと前記保育情報とを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む、
請求項9に記載のデータ処理装置。
【請求項11】
前記就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めは、保育所保育指針、幼稚園教育要領及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領の少なくとも1つを含む、
請求項9に記載のデータ処理装置。
【請求項12】
前記子供の発育に関する情報は、前記子供の日々の生活記録及び前記生活記録を要約した要録のうちの少なくとも1つを含む、
請求項9に記載のデータ処理装置。
【請求項13】
ユーザ入力を受け付ける工程と、
就学前の子供の発育に関する情報を取得する工程と、
前記子供の保育を行う保育施設の保育計画を生成する特定処理を実行するために、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めとから、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルに入力する前記入力データを生成する工程と、
生成した前記入力データを前記文章生成モデルに入力して前記特定処理を実行する工程と、
前記特定処理の結果を出力する工程と、を備える、
データ処理方法。
【請求項14】
データ処理装置を構成するコンピュータの少なくとも1つのプロセッサに、
ユーザ入力を受け付ける処理と、
就学前の子供の発育に関する情報を取得する処理と、
前記子供の保育を行う保育施設の保育計画を生成する特定処理を実行するために、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めとから、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルに入力する前記入力データを生成する処理と、
生成した前記入力データを前記文章生成モデルに入力して前記特定処理を実行する処理と、
前記特定処理の結果を出力する処理と、を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ処理装置、データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、少なくとも一つのプロセッサにより遂行される、ペルソナチャットボット制御方法であって、ユーザ発話を受信するステップと、前記ユーザ発話を、チャットボットのキャラクターに関する説明と関連した指示文を含むプロンプトに追加するステップと前記プロンプトをエンコードするステップと、前記エンコードしたプロンプトを言語モデルに入力して、前記ユーザ発話に応答するチャットボット発話を生成するステップを含む、方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、保育業界の人手不足や業務の複雑化に伴って、保育施設の職員、例えば保育士の業務負担の増加が問題となっている。特に、子供と直接かかわる保育活動に加えて、各子供の状況等をまとめた要録作成や保育計画の策定といった事務的な活動(すなわち、事務作業)が増加していることが、保育士の業務負担増加の一因となっている。他方、上述したようなチャットボットに代表されるAIモデルの利用は様々な分野に広がってきているが、保育業界での利用については具体的な利用方法等について検討の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の技術に係る第1の態様のデータ処理装置は、ユーザ入力を受け付ける入力部と、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルを用いた第1の特定処理を行う処理部と、前記第1の特定処理の結果を出力する出力部と、を備え、前記第1の特定処理は、就学前の子供の日々の生活記録を要約した要録を生成する処理を含み、前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記生活記録とを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む。
【0006】
本開示の技術に係る第2の態様のデータ処理装置は、上述した第1の態様のデータ処理装置に関し、前記生活記録は、前記子供の保護者と前記子供を保育又は教育する保育者とが作成した前記子供に関する記録である。
【0007】
本開示の技術に係る第3の態様のデータ処理装置は、上述した第1又は第2の態様のデータ処理装置に関し、前記処理部は、さらに前記文章生成モデルを用いた第2の特定処理を行い、前記第2の特定処理は、前記子供の保育又は教育を行う保育施設の保育計画を生成する処理を含み、前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めとを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む。
【0008】
本開示の技術に係る第4の態様のデータ処理装置は、上述した第3の態様のデータ処理装置に関し、前記入力部は、前記子供の保育に関する保育情報を受け付けることができ、前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めと前記保育情報とを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む。
【0009】
本開示の技術に係る第5の態様のデータ処理装置は、上述した第3又は第4の態様のデータ処理装置に関し、前記子供の発育に関する情報は、前記第1の特定処理の結果を含む。
【0010】
本開示の技術に係る第6の態様のデータ処理装置は、上述した第3乃至第5のいずれかの態様のデータ処理装置に関し、前記就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めは、保育所保育指針、幼稚園教育要領及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領の少なくとも1つを含む。
【0011】
本開示の技術に係る第7の態様のデータ処理方法は、ユーザ入力を受け付ける工程と、就学前の子供の日々の生活記録を取得する工程と、前記生活記録を要約した要録を生成する第1の特定処理を実行するために、ユーザ入力から得られる情報と前記生活記録とから、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルに入力する前記入力データを生成する工程と、生成した前記入力データを前記文章生成モデルに入力して前記第1の特定処理を実行する工程と、前記第1の特定処理の結果を出力する工程と、を含む。
【0012】
本開示の技術に係る第8の態様のプログラムは、データ処理装置を構成するコンピュータの少なくとも1つのプロセッサに、ユーザ入力を受け付ける処理と、就学前の子供の日々の生活記録を取得する処理と、前記生活記録を要約した要録を生成する第1の特定処理を実行するために、ユーザ入力から得られる情報と前記生活記録とから、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルに入力する前記入力データを生成する処理と、生成した前記入力データを前記文章生成モデルに入力して前記第1の特定処理を実行する処理と、前記第1の特定処理の結果を出力する処理と、を実行させる。
【0013】
本開示の技術に係る第9の態様のデータ処理装置は、ユーザ入力を受け付ける入力部と、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルを用いた特定処理を行う処理部と、前記特定処理の結果を出力する出力部と、を備え、前記特定処理は、就学前の子供の保育を行う保育施設の保育計画を生成する処理を含み、前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めとを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む。
【0014】
本開示の技術に係る第10の態様のデータ処理装置は、上述した第9の態様のデータ処理装置に関し、前記入力部は、前記子供に関する保育情報を受け付けることができ、前記処理部は、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めと前記保育情報とを前記入力データとして前記文章生成モデルに入力することを含む。
【0015】
本開示の技術に係る第11の態様のデータ処理装置は、上述した第9又は第10の態様のデータ処理装置に関し、前記就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めは、保育所保育指針、幼稚園教育要領及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領の少なくとも1つを含む。
【0016】
本開示の技術に係る第12の態様のデータ処理装置は、上述した第9乃至第11のいずれかの態様のデータ処理装置に関し、前記子供の発育に関する情報は、前記子供の日々の生活記録及び前記生活記録を要約した要録のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
本開示の技術に係る第13の態様のデータ処理方法は、ユーザ入力を受け付ける工程と、就学前の子供の発育に関する情報を取得する工程と、前記子供の保育を行う保育施設の保育計画を生成する特定処理を実行するために、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めとから、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルに入力する前記入力データを生成する工程と、生成した前記入力データを前記文章生成モデルに入力して前記特定処理を実行する工程と、前記特定処理の結果を出力する工程と、を含む。
【0018】
本開示の技術に係る第14の態様のプログラムは、データ処理装置を構成するコンピュータの少なくとも1つのプロセッサに、ユーザ入力を受け付ける処理と、就学前の子供の発育に関する情報を取得する処理と、前記子供の保育を行う保育施設の保育計画を生成する特定処理を実行するために、前記ユーザ入力から得られる情報と前記子供の発育に関する情報と就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めとから、入力データに応じた文章を生成する文章生成モデルに入力する前記入力データを生成する処理と、生成した前記入力データを前記文章生成モデルに入力して前記特定処理を実行する処理と、前記特定処理の結果を出力する処理と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係るデータ処理装置を含むデータ処理システムの構成の一例を示す概念図である。
【
図2】データ処理装置及びスマートデバイスの要部機能の一例を示す概念図である。
【
図4】データ処理装置の特定処理部の機能構成を概略的に示す。
【
図5】
図3に示す第1の特定処理の動作フローの一例を概略的に示す。
【
図6A】複数の感情がマッピングされる感情マップを示す。
【
図6B】複数の感情がマッピングされる感情マップを示す。
【
図8】
図6に示す第2の特定処理の動作フローの一例を概略的に示す。
【
図9】本開示の第2の実施形態に係るデータ処理装置が実行する特定処理の一例の概要を示す。
【
図10】
図8に示す特定処理の動作フローの一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本開示の技術に係るデータ処理装置、データ処理方法、及びプログラムの実施形態の一例について説明する。
【0021】
先ず、以下の説明で使用される文言について説明する。
【0022】
以下の実施形態において、符号付きのプロセッサ(以下、単に「プロセッサ」と称する)は、1つの演算装置であってもよいし、複数の演算装置の組み合わせであってもよい。また、プロセッサは、1種類の演算装置であってもよいし、複数種類の演算装置の組み合わせであってもよい。演算装置の一例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)、APU(Accelerated Processing Unit)、又はTPU(Tensor Processing Unit)等が挙げられる。
【0023】
以下の実施形態において、符号付きのRAM(Random Access Memory)は、一時的に情報が格納されるメモリであり、主にプロセッサによってワークメモリとして用いられる。
【0024】
以下の実施形態において、符号付きのストレージは、各種プログラム及び各種パラメータ等を記憶する1つ又は複数の不揮発性の記憶装置である。不揮発性の記憶装置の一例としては、フラッシュメモリ(SSD(Solid State Drive))、磁気ディスク(例えば、ハードディスク)、又は磁気テープ等が挙げられる。
【0025】
以下の実施形態において、符号付きの通信I/F(Interface)は、通信プロセッサ及びアンテナ等を含むインタフェースである。通信I/Fは、複数のコンピュータ間での通信を司る。通信I/Fに対して適用される通信規格の一例としては、5G(5th Generation Mobile Communication System)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等を含む無線通信規格が挙げられる。
【0026】
以下の実施形態において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0027】
<第1の実施形態>
図1には、本開示の第1の実施形態に係るデータ処理システム10の構成の一例が示されている。
【0028】
図1に示すように、データ処理システム10は、データ処理装置12及びスマートデバイス14を備えていてよい。データ処理装置12の一例としては、サーバが挙げられる。また、スマートデバイス14の一例としては、スマートフォン、タブレット端末あるいはモバイルPCが挙げられる。本実施形態において、データ処理装置12は、本開示の技術に係る「データ処理装置」の一例である。なお、本開示の技術に係るデータ処理装置の各種構成要素が、以下に説明するデータ処理装置12以外の装置、例えばスマートデバイス14に搭載される場合もある。
【0029】
データ処理装置12は、コンピュータ22、データベース24及び通信I/F26を備えていてよい。コンピュータ22は、本開示の技術に係る「コンピュータ」の一例である。コンピュータ22は、プロセッサ28、RAM30及びストレージ32を備えていてよい。これらのプロセッサ28、RAM30及びストレージ32は、バス34により相互通信可能に接続され得る。また、データベース24及び通信I/F26も、バス34により相互通信可能に接続されていてよい。データベース24は、後述する特定処理を含む処理を実行するために必要な各種情報が格納されていてよい。このデータベース24は、クラウド等の形態で実現することもできる。通信I/F26は、ネットワーク54に接続され得る。ネットワーク54の一例としては、WAN(Wide Area Network)及び/又はLAN(Local Area Network)等が挙げられる。
【0030】
スマートデバイス14は、コンピュータ36、受付装置38、出力装置40、カメラ42及び通信I/F44を備えていてよい。コンピュータ36は、プロセッサ46、RAM48及びストレージ50を備えていてよい。これらのプロセッサ46、RAM48及びストレージ50は、バス52に接続され得る。また、受付装置38、出力装置40及びカメラ42も、バス52に接続されていてよい。
【0031】
受付装置38は、タッチパネル38A及びマイクロフォン38B等を備えていてよく、ユーザ入力を受け付けることができる。タッチパネル38Aは、指示体(例えば、ペン又は指等)の接触を検出することにより、指示体の接触によるユーザ入力を受け付けることができる。マイクロフォン38Bは、ユーザの音声を検出することにより、音声によるユーザ入力を受け付けることができる。プロセッサ46は、タッチパネル38A及びマイクロフォン38Bによって受け付けたユーザ入力を示すデータをデータ処理装置12に送信する。データ処理装置12では、特定処理部290が、ユーザ入力を示すデータを取得する。
【0032】
出力装置40は、ディスプレイ40A及びスピーカ40B等を備えていてよく、データを人物20が知覚可能な表現形(例えば、音声及び/又はテキスト)で出力することでデータを人物20に対して提示する。ディスプレイ40Aは、プロセッサ46からの指示に従ってテキスト及び画像等の可視情報を表示する。スピーカ40Bは、プロセッサ46からの指示に従って音声を出力する。
【0033】
カメラ42は、例えばスマートフォンあるいはタブレット端末に内蔵されたカメラであって、レンズ、絞り及びシャッタ等の光学系と、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子とが搭載された小型デジタルカメラで構成することができる。
【0034】
通信I/F44は、ネットワーク54に接続されている。通信I/F44及び26は、ネットワーク54を介してプロセッサ46とプロセッサ28との間の各種情報の授受を司る。
【0035】
図2には、データ処理装置12及びスマートデバイス14の要部機能の一例が示されている。
【0036】
図2に示すように、データ処理装置12では、プロセッサ28によって特定処理が行われる。ストレージ32には、特定処理プログラム56が格納され得る。特定処理プログラム56は、本開示の技術に係る「プログラム」の一例である。プロセッサ28は、ストレージ32から特定処理プログラム56を読み出し、読み出した特定処理プログラム56をRAM30上で実行できる。特定処理は、プロセッサ28がRAM30上で実行する特定処理プログラム56に従って特定処理部290として動作することによって実現できる。
【0037】
ストレージ32には、文章生成モデルの一例としてのデータ生成モデル58及び感情特定モデル60が格納されていてよい。データ生成モデル58及び感情特定モデル60は、特定処理部290によって用いられ得る。
【0038】
スマートデバイス14では、プロセッサ46によって受付出力処理が行われる。ストレージ50には、受付出力プログラム62が格納され得る。受付出力プログラム62は、データ処理システム10によって特定処理プログラム56と併用され得る。プロセッサ46は、ストレージ50から受付出力プログラム62を読み出して、読み出した受付出力プログラム62をRAM48上で実行することができる。受付出力処理は、プロセッサ46がRAM48上で実行する受付出力プログラム62に従って、制御部46Aとして動作することによって実現され得る。
【0039】
次に、データ処理装置12が、子供の保育又は教育を行う保育施設で生じる事務作業を実行する特定処理を行う際の、特定処理部290の処理について説明する。
【0040】
本実施形態に係るデータ処理装置12を含むデータ処理システム10は、主に保育園、幼稚園及び認定こども園といった、就学前の子供(以下、単に「子供」ともいう)が通う保育施設において発生する事務作業の一部を、保育士等の保育施設の職員に代わって実施する。具体的には、本実施形態に係るデータ処理装置12は、第1の特定処理として、就学前の子供の日々の生活記録を要約した要録を作成する。
【0041】
ここで、就学前の子供の日々の生活記録とは、子供の保護者(例えば父親又は母親)と子供を保育又は教育する保育者(例えば保育施設でその子供を担任する保育士)とが作成した子供に関する記録であってよい。より具体的には、保護者と保育者とが日々の子供の状態等を毎日記入した連絡帳(コミュニケーションノート)であってよい。この連絡帳は、紙製のものであっても、アプリケーション等の形態で提供され記入されたデータであってもよい。またこの連絡帳の記載内容は、その記載日や記載者、記載内容等が特定できるように、予め所定のルール(具体的には、記載者の署名欄や健康状態に関する記載を行う欄を設ける等)に基づく記載がなされるよう工夫されていると好ましい。なお、子供に関する記録は、上述した連絡帳には限定されず、子供の日々の状態を把握できるものであればよい。
【0042】
また、要録とは、特定の期間、例えば1か月ごとに子供の様子や特徴、健康状態等を元に作成される記録であってよい。この要録は、保育士間の情報共有や医療機関又は今後入学する小学校への情報提供に用いられ得る。なお、既存の要録としては、連絡帳の内容に基づいて担当の保育士等が作成し、特定の期間における子供の様子を数百文字程度に要約して示したものが一般的である。
【0043】
図3は、第1の特定処理を実行する状況の一例を示した説明図である。本実施形態における第1の特定処理は、保育施設に通う子供毎に実行され得る。したがって、本実施形態のデータ処理システム10は、例えば保育施設単位で導入することができる。また、本実施形態では、第1の特定処理を実行するために、保育施設に通う複数(例えばn(n=自然数))名の子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHn毎に、その保護者と保育士との間で毎日の子供の状況を記録した連絡帳CN1、CN2、CN3、・・・、CNnの記入が行われているものとする。
【0044】
連絡帳CN1、CN2、CN3、・・・、CNnの記入が継続的に行われている状態で特定の期間が経過すると、保育施設の職員(例えば保育士)等のユーザにより要録を作成するためのユーザ入力がスマートデバイス14の受付装置38等を介して行われる。このようなユーザ入力を受け付けると、データ処理装置12の特定処理部290は、第1の特定処理を実行する。
【0045】
特定処理部290は、
図4に示すように、入力部292、処理部294及び出力部296を含む。
【0046】
入力部292は、スマートデバイス14で受け付けたユーザ入力を取得する。具体的には、スマートデバイス14のマイクロフォン38Bで受け付けたユーザの音声入力や、タッチパネル38Aを介して入力されたテキスト情報を、ユーザ入力として取得することができる。
【0047】
加えて、この入力部292は、ユーザ入力に加えて、子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHnの日々の生活記録の一例としての連絡帳データを取得することもできる。連絡帳データは、連絡帳CN1、CN2、CN3、・・・、CNnの記載内容のテキストデータで構成されていてよい。なお、連絡帳CN1、CN2、CN3、・・・、CNnが紙からなる場合には、例えばスマートデバイス14のカメラ42を利用して記載内容を画像データに変換し、周知のOCR(Optical Character Recognition/Reader、光学的文字認識)機能を利用することでテキストデータを取得してもよいし、画像データをそのままデータ生成モデル58に入力してもよい。
【0048】
処理部294は、文章生成モデルの一例としてのデータ生成モデル58を用いた特定処理を行う。具体的には、処理部294は、先ず、予め定められたトリガ条件を満たすか否かを判定する。より具体的には、ユーザからの音声あるいはテキストによる問いかけ(例えば、「要録を作成してください」)を受け付けたことをトリガ条件とする。なお、本実施形態の処理部294では、上述した第1の特定処理に加えて、後述する第2の特定処理をも実行することができるが、ここでは第1の特定処理に関連した説明を主に行うものとする。
【0049】
そして、処理部294は、トリガ条件を満たした場合に、特定処理のためのデータを得るための指示を表す入力文章(入力データの一例)、より具体的にはテキストデータを、データ生成モデル58に入力し、データ生成モデル58の出力に基づいて、処理結果を取得する。より具体的に説明すると、処理部294が第1の特定処理を実行する場合は、入力部292が受け付けたユーザ入力から得られる情報と、生活記録、具体的には連絡帳データとから、データ生成モデル58に入力するテキストデータを生成する。そして、生成したテキストデータをデータ生成モデル58に入力し、その処理結果を第1の特定処理の結果として取得する。
【0050】
なお、処理部294は、感情特定モデル60を用いてユーザ等(例えば、子供、子供の保護者あるいは保育士)の感情を推定し、ユーザ等の感情と、データ生成モデル58とを用いた特定処理を行うようにしてもよい。この場合、処理部294にて生成されるテキストデータは、感情特定モデル60により推定されたユーザ等の感情に対応するプロンプトをも利用して生成されることになる。感情特定モデル60によるユーザの感情の特定手法については後に例示する。
【0051】
出力部296は、処理部294が取得した特定処理の結果を出力する。出力の具体的な方法としては、例えば第1の特定処理の結果をスマートデバイス14に送信し、スマートデバイス14にて、出力装置40等を介してユーザに第1の特定処理の結果を要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnとして報知する、あるいはこの要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnをデータベース24あるいはストレージ50に格納してユーザ等が任意のタイミングで閲覧可能とするといった方法が挙げられる。
【0052】
例えば上述の方法でユーザに第1の特定処理の結果が報知されると、ユーザは当該結果に対するユーザ入力をさらに行う場合がある。例えばマイクロフォン38Bにおいて、第1の特定処理の結果に対するユーザ入力を示す音声を取得すると、制御部46Aは、マイクロフォン38Bによって取得されたユーザ入力を示す音声データをデータ処理装置12に送信する。そして、データ処理装置12では、特定処理部290による再度の特定処理(具体的には、第1の特定処理あるいは後述する第2の特定処理)が実行される。
【0053】
データ生成モデル58は、いわゆる生成AI(Artificial Intelligence)であってよい。データ生成モデル58の一例としては、ChatGPT(インターネット検索<URL: https://openai.com/blog/chatgpt>)等の生成AIが挙げられる。データ生成モデル58は、ニューラルネットワークに対して深層学習を行わせることによって得られる。データ生成モデル58には、指示を含むプロンプトが入力され、かつ、音声を示す音声データ、テキストを示すテキストデータ、及び画像を示す画像データ等の推論用データが入力され得る。データ生成モデル58は、入力された推論用データをプロンプトにより示される指示に従って推論し、推論結果を音声データ及びテキストデータ等のデータ形式で出力する。ここで、推論とは、例えば、分析、分類、予測、及び/又は要約等を指す。
【0054】
次に、データ処理システム10の作用の一例について
図5を参照しながら説明する。ここでは、第1の特定処理の流れの一例について、
図5を参照しながら説明する。なお、
図5に示す第1の特定処理の流れは、本開示の技術に係る「データ処理方法」の一例である。また、この第1の特定処理の流れは、データ処理装置12のプロセッサ28により実施され得、当該プロセッサによる処理は、プロセッサが特定処理プログラム56を実行することで実現され得る。
【0055】
データ処理システム10が動作を開始すると、
図5に示すように、特定処理部290は、先ずスマートデバイス14の受付装置38が、第1の特定処理のトリガ条件となるユーザ入力を受け付けたか否かを監視する(工程S101)。ここで、例えば保育施設の職員から受付装置38を介して第1の特定処理のトリガ条件となるユーザ入力がなされ、このユーザ入力が通信I/F44、26を介してデータ処理装置12に送信されて入力部292にて取得されると(工程S101でYes)、特定処理部290による第1の特定処理が開始される。
【0056】
第1の特定処理が開始されると、先ず、要録を作成する対象となる子供の連絡帳データを取得する(工程S102)。連絡帳データは、予めデータベース24に格納しておくようにしてもよいし、ユーザ入力と共にユーザが収集してデータ処理装置12に送信するようにしてもよい。
図3では、複数(例えばn(n=自然数))名の子供CH1、CH2、・・・、CHnの紙製の連絡帳CN1、CN2、CN3、・・・、CNnをスマートデバイス14のカメラ42を用いて読み取り、テキストデータに変換して連絡帳データを取得している。
【0057】
入力部292にてユーザ入力及び連絡帳データが取得されると、次に処理部294にて、ユーザ入力から得られる情報と連絡帳データとから、データ生成モデル58に入力する入力文章を生成する(工程S103)。生成された入力文章はデータ生成モデル58に入力されることで、データ生成モデル58にて入力文章に応じた文章が生成される(工程S104)。
【0058】
データ生成モデル58で生成された文章は、第1の特定処理の結果として例えばスマートデバイス14に送られ、出力装置40で要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnとして出力される(工程S105)。これと並行して要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnは、データベース24あるいはストレージ50に格納され、保育施設の職員や医療施設等が任意のタイミングで閲覧できるようにしておくと良い。
【0059】
上述した一連の第1の特定処理において、データ生成モデル58に入力される入力文章及びそれに対する出力結果を以下に例示する。
【0060】
例えば
図3に示すように、保育施設の職員が、子供CH1の直近1ヶ月間の要録SR1を作成するために、スマートデバイス14に対しユーザ入力として「〇〇君の1か月間の要録を作成してください」との音声入力をした場合を説明する。当該音声入力を取得すると、データ処理装置12の処理部294は、当該音声入力をトリガとして第1の特定処理を開始する。具体的には、先ず、子供CH1の連絡帳CN1から連絡帳データを作成する。このとき、連絡帳データを作成する連絡帳CN1の記載内容のうち、直近1ヶ月間の記録のみが連絡帳データとして作成されてもよいし、直近1ヶ月よりも長い期間の記録を連絡帳データとしてもよい。
【0061】
次に、処理部294は、入力文章として、例えば「『・・・(連絡帳データの内容)・・・』これは〇〇君の生活記録です。直近1ヶ月の〇〇君の生活記録を要約した要録を作成してください」というプロンプトを生成し、データ生成モデル58に入力する。データ生成モデル58では、前述のプロンプトが入力されると、テキストデータ等で構成される要録SR1を出力することができる。なお、連絡帳データは、入力文章に添付する形式でデータ生成モデル58に入力されてもよい。
【0062】
図2の説明に戻って、感情特定モデル60は、特定のマッピングに従い、ユーザの感情を決定してよい。具体的には、感情特定モデル60は、特定のマッピングである感情マップ(
図6A参照)に従い、ユーザの感情を決定してよい。
【0063】
図6Aは、複数の感情がマッピングされる感情マップ400を示す図である。感情マップ400において、感情は、中心から放射状に同心円に配置されている。同心円の中心に近いほど、原始的状態の感情が配置されている。同心円のより外側には、心境から生まれる状態や行動を表す感情が配置されている。感情とは、情動や心的状態も含む概念である。同心円の左側には、概して脳内で起きる反応から生成される感情が配置されている。同心円の右側には概して、状況判断で誘導される感情が配置されている。同心円の上方向及び下方向には、概して脳内で起きる反応から生成され、かつ、状況判断で誘導される感情が配置されている。また、同心円の上側には、「快」の感情が配置され、下側には、「不快」の感情が配置されている。このように、感情マップ400では、感情が生まれる構造に基づいて複数の感情がマッピングされており、同時に生じやすい感情が、近くにマッピングされている。
【0064】
これらの感情は、感情マップ400の3時の方向に分布しており、普段は安心と不安のあたりを行き来する。感情マップ400の右半分では、内部的な感覚よりも状況認識の方が優位に立つため、落ち着いた印象になる。
【0065】
感情マップ400の内側は心の中、感情マップ400の外側は行動を表すため、感情マップ400の外側に行くほど、感情が目に見える(行動に表れる)ようになる。
【0066】
ここで、人の感情は、姿勢や血糖値のような様々なバランスを基礎としており、それらのバランスが理想から遠ざかると不快、理想に近づくと快という状態を示す。ロボットや自動車やバイク等においても、姿勢やバッテリー残量のような様々なバランスを基礎として、それらのバランスが理想から遠ざかると不快、理想に近づくと快という状態を示すように感情を作ることができる。感情マップは、例えば、光吉博士の感情地図(音声感情認識及び情動の脳生理信号分析システムに関する研究、徳島大学、博士論文:https://ci.nii.ac.jp/naid/500000375379)に基づいて生成されてよい。感情地図の左半分には、感覚が優位にたつ「反応」と呼ばれる領域に属する感情が並ぶ。また、感情地図の右半分には、状況認識が優位にたつ「状況」と呼ばれる領域に属する感情が並ぶ。
【0067】
感情マップでは学習を促す感情が2つ定義される。1つは、状況側にあるネガティブな「懺悔」や「反省」の真ん中周辺の感情である。つまり、「もう2度とこんな想いはしたくない」「もう叱られたくない」というネガティブな感情がロボットに生じたときである。もう1つは、反応側にあるポジティブな「欲」のあたりの感情である。つまり、「もっと欲しい」「もっと知りたい」というポジティブな気持ちのときである。
【0068】
感情特定モデル60は、ユーザ入力を、予め学習されたニューラルネットワークに入力し、感情マップ400に示す各感情を示す感情値を取得し、ユーザの感情を決定する。このニューラルネットワークは、ユーザ入力と、感情マップ400に示す各感情を示す感情値との組み合わせである複数の学習データに基づいて予め学習されたものである。また、このニューラルネットワークは、
図6Bに示す感情マップ900のように、近くに配置されている感情同士は、近い値を持つように学習される。
図6Bでは、「安心」、「安穏」、「心強い」という複数の感情が、近い感情値となる例を示している。
【0069】
感情特定モデル60によって特定された感情値は、入力文章に利用することができる。入力文章に利用する場合には、感情値をプロンプトに変更して入力文章の一部とするとよい。ここで特定される感情値は、例えば保育施設に通う子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHnの感情値であってよい。各子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHnの保育施設利用時の感情値を収集するために、保育施設の適所に、子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHnの表情等を撮像可能なカメラや子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHnの体温を測定可能な感温センサ等が設置されているとよい。このような方法で収集した感情値は、子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHn毎に蓄積され第1の特定処理の実行時に参照され得る。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係るデータ処理装置12、データ処理方法及びプログラムでは、データ生成モデル58を利用して保育施設に通う子供毎に要録を作成することができるようになる。これにより、保育施設の職員の事務作業を大幅に削減できる。
【0071】
ところで、保育施設において発生する事務作業は、上述した要録の作成以外にも様々なものがある。例えば、保育施設では、クラス単位で特定の期間(例えば1週間)毎に当該クラスの保育計画を作成する場合がある。この保育計画は、保育施設が定める1乃至複数のクラス、あるいは月齢単位で生成されるのが一般的である。また、保育計画とは、保育施設が実施する保育活動に関するスケジュールであって、教育あるいは保育の具体的内容(昼食の時間やお昼寝の時間、教育カリキュラム等)や外出の有無といった予定を含み得る。
【0072】
保育計画は、各クラスに所属する子供の状況や保育施設で設定している行事あるいは保育施設周辺の環境、就学前の子供の教育及び保育に関する取り決め等を踏まえて決定する必要がある。したがって、当該保育計画は保育施設の職員のうち、種々の事情を把握している職員、例えばクラスを担当する保育士が作成する場合が多い。しかし、保育士は、保育施設内に子供がいるときには子供と直接かかわる保育活動を優先的に行うため、当該保育活動中は事務作業を行うことが難しい。このような事情から、当該事務作業は子供が帰宅した後に行うこととなり、保育士の労働時間の長期化の要因となり得る。
【0073】
本実施形態のデータ処理装置12では、上述した点を考慮して、第1の特定処理に加えて、保育計画80を作成する第2の特定処理をも実行することができる。以下、第2の特定処理について説明する。
【0074】
図7は、第2の特定処理を実行する状況の一例を示した説明図である。本実施形態のデータ処理装置12が実行する第2の特定処理は、複数の子供が属するグループ、例えば保育施設のクラス単位で実行され得る。また、本実施形態では、第2の特定処理を実行するために、事前に第1の特定処理を実行し、保育施設の特定のクラスに属する子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHnの要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnを作成しておくものとする。
【0075】
保育施設の職員等のユーザにより、保育計画80を作成するためのユーザ入力がスマートデバイス14の受付装置38等を介して行われると、データ処理装置12の特定処理部290は、第2の特定処理を実行する。
【0076】
第2の特定処理は、上述した特定処理部290により実行される。特定処理部290は、入力部292で取得したユーザ入力の内容等に基づいて、実行する特定処理が第1の特定処理であるのか、第2の特定処理であるのかを特定するとよい。具体的には、例えば処理部294に設定される予め定められたトリガ条件として、第1の特定処理と第2の特定処理のそれぞれに異なるトリガ条件を設定すれば、第1の特定処理と第2の特定処理とを選択的に実行することができる。
【0077】
特定処理部290の処理部294に設定された、第2の特定処理を実行するためのトリガ条件が満たされると、処理部294は、第2の特定処理を実行するためにいくつかの情報を収集する。具体的には、処理部294は、子供の発育に関する情報と、就学前の子供の教育及び保育に関する取り決め70と、を収集する。本実施の形態では、子供の発育に関する情報が、事前に第1の特定処理を実行することで作成された特定の子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHnの要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnであるものを例示している。
【0078】
ここで、就学前の子供の教育及び保育に関する取り決め(以下、「保育指導要領」ともいう)70とは、保育施設を管轄する行政機関が定める法律や取り決めとすることができる。具体的には、保育指導要領70には、保育所保育指針、幼稚園教育要領及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領の少なくとも1つが含まれてよい。保育所保育指針、幼稚園教育要領及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領とは、いずれも行政機関(詳しくは、厚生労働省、文部科学省及び内閣府)によって制定された、就学前の子供の保育あるいは教育についての考え方や基準といった取り決めを示したものである。第2の特定処理に際して保育指導要領70を利用することにより、第2の特定処理によって得られる保育計画80を上述した保育指導要領70の取り決め等に沿ったものとすることができる。
【0079】
また、本実施形態のデータ処理装置12が実行する第2の特定処理においては、上述した2つの情報に加えて、子供の保育に関する保育情報をさらに受け付けることができるものであってよい。子供の保育に関する保育情報とは、保育施設ごとに定められた年間行事や保育施設周辺の施設情報(例えば公園や児童館の有無等)、保育施設自体の設備情報、あるいは担当保育士からの要望といった、保育に関連する種々の情報が含まれ得る。このような保育情報は、例えば保育施設の職員等がスマートデバイス14の受付装置38等を介して個別に入力することで、入力部292にて取得され得る。第2の特定処理に際して保育情報を利用することにより、実際の保育現場の要望等を簡単に保育計画80に反映させることができる。
【0080】
次に、データ処理システム10の作用について
図8を参照しながら説明する。ここでは、第2の特定処理の流れの一例について、
図8を参照しながら説明する。なお、この第2の特定処理の流れは、データ処理装置12のプロセッサ28により実施され得、当該プロセッサによる処理は、プロセッサが特定処理プログラム56を実行することで実現され得る。
【0081】
データ処理システム10が動作を開始すると、
図8に示すように、特定処理部290は、先ずスマートデバイス14の受付装置38が第2の特定処理のトリガ条件となるユーザ入力を受け付けたか否かを監視する(工程S111)。ここで、例えば保育施設の職員から受付装置38を介して第2の特定処理のトリガ条件となるユーザ入力がなされ、このユーザ入力が通信I/F44、26を介してデータ処理装置12に送信されて入力部292にて取得されると(工程S111でYes)、特定処理部290による第2の特定処理が開始される。
【0082】
第2の特定処理が開始されると、先ず、事前に取得された第1の特定処理の結果を取得する(工程S112)。ここでいう第1の特定処理の結果は、特定のクラスに所属する子供CH1、CH2、CH3、・・・、CHnの要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnのデータであってよい。この要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnのデータは、予めデータベース24あるいはストレージ50に格納しておくようにしてもよいし、第2の特定処理を実行する直前に第1の特定処理を実行することで収集されるようにしてもよい。
【0083】
また、第2の特定処理では、要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnのデータの取得と並行して、保育指導要領70の取得(工程S113)及び保育情報75の受付(工程S114)。保育指導要領70は、事前にデータベース24に格納しておいたものを取得すればよい。また、保育情報75は、第2の特定処理のトリガ条件が満たされたタイミングでユーザに要求する、あるいは事前に登録しておいたものを取得することで、受け付けることができる。なお、工程S112~S114は、少なくとも一部が同時に実行されてもよいし、任意の順番で実行されてもよい。
【0084】
入力部292にてユーザ入力、要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnのデータ、保育指導要領70及び保育情報75が取得されると、次に処理部294にて、ユーザ入力から得られる情報、要録SR1、SR2、SR3、・・・、SRnのデータ、保育指導要領70及び保育情報75とから、データ生成モデル58に入力する入力文章を生成する(工程S115)。生成された入力文章はデータ生成モデル58に入力されることで、データ生成モデル58にて入力文章に応じた文章が生成される(工程S116)。
【0085】
データ生成モデル58で生成された文章は、第2の特定処理の結果として例えばスマートデバイス14に送られ、出力装置40で保育計画80として出力される(工程S105)。これと並行して保育計画80は、データベース24あるいはストレージ50に格納され、保育施設の職員や医療施設等が任意のタイミングで閲覧できるようにしておくと良い。
【0086】
上述した一連の第2の特定処理において、データ生成モデル58に入力される入力文章及びそれに対する出力結果を以下に例示する。
【0087】
例えば
図7に示すように、保育施設の職員が、特定のクラスの保育計画80を作成するために、スマートデバイス14に対しユーザ入力として「クラスAの子供たちに合った保育計画を作成してください」との音声入力をした場合を説明する。当該音声入力を取得すると、データ処理装置12の処理部294は、当該音声入力をトリガとして第2の特定処理を開始する。具体的には、先ず、クラスAに所属する子供の要録データと、保育指導要領70と、保育情報75とを収集する。
【0088】
次に、処理部294は、入力文章として、例えば「これはクラスAの子供たちの要録と保育指導要領と保育情報です。この子供たちに合った保育計画を作成してください」というプロンプトを生成する。そして、当該プロンプトを、クラスAに所属する子供全ての要録データ、保育指導要領70、及び、保育情報75のデータと共にデータ生成モデル58に入力する。データ生成モデル58では、前述のプロンプト及び各種データが入力されると、テキストデータ等で構成される保育計画80を出力することができる。
【0089】
以上説明した通り、本実施形態に係るデータ処理装置12、データ処理方法及びプログラムでは、データ生成モデル58を利用して保育施設に通う子供毎に要録を作成することに加えて、保育計画をも作成することができるようになる。これにより、保育施設の職員の事務作業をさらに大幅に削減できる。また、要録や保育計画を自動で作成するため、従前の方法では発生していた、要録や保育計画を作成する保育士の能力に起因する質のバラツキを抑制することもできる。
【0090】
<第2の実施形態>
上述した第1の実施形態では、第2の特定処理により保育計画80を作成する際に、第1の特定処理によって作成された要録を入力文章の一部として利用しているものを例示したが、保育計画80を作成する方法は、これに限定されない。具体的に言えば、本開示のデータ処理装置、データ処理方法及びプログラムは、第1の特定処理によって作成された要録以外の情報に基づいて、保育計画80を作成することもできる。そこで以下には、本開示の第2の実施形態として、上述した第2の特定処理とは異なる、保育計画を作成する方法等について説明する。
【0091】
第2の実施形態に係るデータ処理装置、データ処理方法及びプログラムは、第1の実施形態において説明した第2の特定処理と、処理部において使用する情報が異なる点を除き、共通するものである。そこで、以下には第1の実施形態と同様の点についてはその説明を省略し、第1の実施形態と異なる点を中心に説明を行うものとする。
【0092】
図8は、第2の実施形態のデータ処理装置において特定処理を実行する状況の一例を示した説明図である。本実施形態のデータ処理装置12Aが実行する特定処理は、複数の子供が属するグループ単位で実行され得る。本実施の形態のデータ処理装置12Aは、第1の実施形態のデータ処理装置12と同様の構成要素からなるものであってよい。また、データ処理装置12Aは、上述したデータ処理システム10と同様のシステム上で動作し得る。したがって、データ処理装置12Aの構成の説明は、データ処理装置12のものを流用するものとし、ここでは説明を省略する。
【0093】
保育施設の職員等のユーザにより、保育計画80を作成するためのユーザ入力がスマートデバイス14の受付装置38等を介して行われると、データ処理装置12Aの特定処理部290は、特定処理を実行する。本実施形態における特定処理は、特定処理部290の入力部292で取得したユーザ入力をトリガとして実行され得る。
【0094】
特定処理部290の処理部294に設定されたトリガ条件が満たされると、処理部294は、特定処理を実行するためにいくつかの情報を収集する。具体的には、処理部294は、子供の発育に関する情報90と、就学前の子供の教育及び保育に関する取り決め70と、を収集する。
【0095】
ここで、本実施形態における子供の発育に関する情報(以下、「子供の発育情報」ともいう)90とは、子供に関連する種々の情報を含み得るものである。具体的には、上述した連絡帳に代表される就学前の子供の日々の生活記録や、保育士が作成した子供の状況等をまとめた要録を含み得る。この子供の発育情報90は、AIモデル等を用いて自動的に作成されるものであってもよいし、保育士や保護者が手作業で作成したものを画像あるいはテキストの形態で収集したものであってもよい。
【0096】
また、本実施形態のデータ処理装置12Aが実行する特定処理においても、第1の実施形態の場合と同様に、入力文章に子供の保育に関する保育情報75をさらに利用することができる。
【0097】
次に、データ処理装置12Aを含むデータ処理システムの作用の一例について、
図10を参照しながら説明する。ここでは、本実施形態における特定処理の流れの一例について、
図10を参照しながら説明する。なお、この特定処理の流れは、データ処理装置12のプロセッサ28により実施され得、当該プロセッサによる処理は、プロセッサが特定処理プログラム56を実行することで実現され得る。
【0098】
図10を見ると分かる通り、本実施形態のデータ処理装置12Aが実行する特定処理は、ユーザ入力を受け付けた後に、第1の特定処理の結果を取得する(工程S112)のに代えて、子供の発育情報を取得している(工程S112A)点を除き、
図8に示した第2の特定処理の流れと同様である。なお、上述の点に関連して、本実施形態の工程S115では、処理部294は、ユーザ入力から得られる情報、子供の発育情報90、保育指導要領70及び保育情報75とから、データ生成モデル58に入力する入力文章を生成することになる。
【0099】
以上説明した通り、本実施形態に係るデータ処理装置12A、データ処理方法及びプログラムでは、データ生成モデル58を利用して保育計画を作成することができるようになる。これにより、保育施設の職員の事務作業を大幅に削減できる。また、保育計画を自動で作成するため、従前の方法では発生していた、保育計画を作成する保育士の能力に起因する質のバラツキを抑制することもできる。
【0100】
上記各実施形態では、1台のコンピュータ22によって特定処理が行われる形態例を挙げたが、本開示の技術はこれに限定されず、コンピュータ22を含めた複数のコンピュータによる特定処理に対する分散処理が行われるようにしてもよい。
【0101】
上記各実施形態では、ストレージ32に特定処理プログラム56が格納されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、特定処理プログラム56がUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの可搬型のコンピュータ読み取り可能な非一時的格納媒体に格納されていてもよい。非一時的格納媒体に格納されている特定処理プログラム56は、データ処理装置12のコンピュータ22にインストールされる。プロセッサ28は、特定処理プログラム56に従って特定処理を実行する。
【0102】
また、ネットワーク54を介してデータ処理装置12、12Aに接続されるサーバ等の格納装置に特定処理プログラム56を格納させておき、データ処理装置12の要求に応じて特定処理プログラム56がダウンロードされ、コンピュータ22にインストールされるようにしてもよい。
【0103】
なお、ネットワーク54を介してデータ処理装置12、12Aに接続されるサーバ等の格納装置に特定処理プログラム56の全てを格納させておいたり、ストレージ32に特定処理プログラム56の全てを記憶させたりしておく必要はなく、特定処理プログラム56の一部を格納させておいてもよい。
【0104】
特定処理を実行するハードウェア資源としては、次に示す各種のプロセッサを用いることができる。プロセッサとしては、例えば、ソフトウェア、すなわち、プログラムを実行することで、特定処理を実行するハードウェア資源として機能する汎用的なプロセッサであるCPUが挙げられる。また、プロセッサとしては、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路が挙げられる。何れのプロセッサにもメモリが内蔵又は接続されており、何れのプロセッサもメモリを使用することで特定処理を実行する。
【0105】
特定処理を実行するハードウェア資源は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、又はCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、特定処理を実行するハードウェア資源は1つのプロセッサであってもよい。
【0106】
1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが、特定処理を実行するハードウェア資源として機能する形態がある。第2に、SoC(System-on-a-chip)などに代表されるように、特定処理を実行する複数のハードウェア資源を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、特定処理は、ハードウェア資源として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて実現される。
【0107】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路を用いることができる。また、上記の特定処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0108】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0109】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0110】
10 データ処理システム
12、12A データ処理装置
14 スマートデバイス
58 データ生成モデル(文章生成モデルの一例)
70 保育指導要領(就学前の子供の教育及び保育に関する取り決めの一例)
75 保育情報
80 保育計画
90 子供の発育に関する情報
290 特定処理部
292 入力部
294 処理部
296 出力部