(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015184
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】可撓止水継手の接合構造および補修方法
(51)【国際特許分類】
E03F 3/04 20060101AFI20250123BHJP
E04B 1/68 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
E03F3/04 A
E04B1/68 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118413
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】398040642
【氏名又は名称】ジェイアール東海コンサルタンツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000196624
【氏名又は名称】西武ポリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】荻田 倫之
(72)【発明者】
【氏名】福田 和彰
(72)【発明者】
【氏名】毛塚 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】本田 真基
(72)【発明者】
【氏名】染谷 詔和
(72)【発明者】
【氏名】福田 興士
(72)【発明者】
【氏名】荒木 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】辻 慎太郎
【テーマコード(参考)】
2D063
2E001
【Fターム(参考)】
2D063BA06
2D063BA26
2D063BA27
2E001DA01
2E001EA01
2E001FA30
2E001FA71
2E001GA24
2E001HE01
2E001KA01
2E001LA01
(57)【要約】
【課題】接合部を短時間に簡単に接合でき、損傷部を簡単に交換して補修することができる可撓止水継手の接合構造および補修方法を提供する。
【解決手段】可撓止水継手の接合構造100は、伸縮部11と、伸縮部11の両端縁部に固定用凸条部13とを備え、構造物1の目地部2を跨いで固定用凸条部13が固定部材20で押圧固定される可撓止水継手10の接合構造であって、可撓止水継手10は、固定用凸条部13に構造物1側に突き出し外側端部13aに位置し押圧されて止水する止水線条部14を備え、互いに突き合わされる可撓止水継手10の接合部Aは、接合部Aを跨いで可撓止水継手10の表側表面10aおよび固定用凸条部13の外側面13bまでを覆う止水シート部材30を有し、止水シート部材30で構造物1の表面1aに押圧された止水線条部14の外側面13bを構造物1の表面1aまで覆って接合部Aの間を止水する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮部と、前記伸縮部の両端縁部に固定用凸条部とを備え、構造物の目地部を跨いで前記固定用凸条部が固定部材で押圧固定される可撓止水継手の接合構造であって、
前記可撓止水継手は、前記固定用凸条部に前記構造物側に突き出し外側端部に位置し押圧されて止水する止水線条部を備え、
互いに突き合わされる前記可撓止水継手の接合部は、前記接合部を跨いで前記可撓止水継手の表側表面および前記固定用凸条部の外側面までを覆う止水シート部材を有し、前記止水シート部材で前記構造物の表面に押圧された前記止水線条部の外側面を前記構造物の表面まで覆って前記接合部の間を止水する、
ことを特徴とする可撓止水継手の接合構造。
【請求項2】
伸縮部と、前記伸縮部の両端縁部に固定用凸条部とを備え、構造物の目地部を跨いで前記固定用凸条部が固定部材で押圧固定される可撓止水継手の接合構造であって、
前記可撓止水継手は、前記目地部に沿って複数に分割された止水継手部材と、前記止水継手部材の前記固定用凸条部に前記構造物側に突き出し外側端部に位置し押圧されて止水する止水線条部と、を備え、
互いに突き合わされる前記止水継手部材の接合部は、前記接合部を跨いで前記止水継手部材の表側表面および前記固定用凸条部の外側面までを覆う止水シート部材を有し、前記止水シート部材で前記構造物の表面に押圧された前記止水線条部の外側面を前記構造物の表面まで覆って前記接合部の間を止水する、
ことを特徴とする可撓止水継手の接合構造。
【請求項3】
前記止水シート部材は、前記可撓止水継手の表面と接して加硫接着される自然加硫シート材を備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の可撓止水継手の接合構造。
【請求項4】
前記固定部材は、前記構造物に締め付けられる締結部と、前記締結部の一端に延設され前記固定用凸条部に装着される凹溝部と、を備え、
前記凹溝部は、前記固定用凸条部の外側面を覆う前記止水シート部材に当てて押える押え部が前記固定部材と一体または別体に形成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の可撓止水継手の接合構造。
【請求項5】
前記固定部材は、前記構造物に締め付けられる締結部と、前記締結部の一端に延設され前記固定用凸条部に装着される凹溝部と、を備え、
前記固定用凸条部は、前記凹溝部の溝幅より小さい幅に形成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の可撓止水継手の接合構造。
【請求項6】
前記固定用凸条部は、凹溝部の溝幅より小さい幅とした体積分だけ高さを高く形成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の可撓止水継手の接合構造。
【請求項7】
前記接合部における前記固定用凸条部は、前記止水シート部材の厚さの2倍分だけ凹溝部の溝幅より小さい幅に形成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の可撓止水継手の接合構造。
【請求項8】
前記接合部における前記固定用凸条部は、前記止水線条部と干渉させずに前記止水シート部材の厚さの2倍分だけ凹溝部の溝幅より小さい幅に形成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の可撓止水継手の接合構造。
【請求項9】
請求項1または2に記載の可撓止水継手の接合構造の少なくとも損傷部を備える止水継手部材を、固定部材を外して接合部間で取り除く工程と、
前記損傷部を備えた前記止水継手部材が取り除かれた目地部に、補修用の止水継手部材を設置する工程と、
既設の前記止水継手部材と補修用の前記止水継手部材との前記接合部を跨いで、止水シート部材で前記止水継手部材の表側表面および前記固定用凸条部の外側面までを覆う工程と、
前記止水シート部材で覆われた前記固定用凸条部を前記固定部材で締め付けるとともに、止水線条部を押圧して前記止水線条部の外側面を前記止水シート部材で前記構造物の表面まで覆って固定する工程と、を備えて前記接合部間を補修用の前記止水継手部材で補修する、
ことを特徴とする可撓止水継手の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓止水継手の接合構造および補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製構造物やシールド管路などの構造物の目地部には、内外を止水するとともに、その両側の構造物の不等沈下や地震時変位並びに温度変化等に起因する壁部分の伸縮等を許容する必要があり、目地部を跨ぐ構造物間にゴムや合成樹脂などの可撓止水継手が設けられる。
【0003】
可撓止水継手は、目地部の周囲の長さに応じた長さに形成され、施工現場に搬送した後、端部同士を加硫接合して環状とされる。可撓止水継手の目地部への固定は、例えば、可撓止水継手にボルト穴を形成せずに両端縁部に固定用凸条部を形成しておき、押え板だけをアンカーボルトに締め付け、押え板の凹溝部に固定用凸条部を装着して締め付けることで、可撓止水継手を固定できるようにしたものが開示されている(特許文献1参照)。
可撓止水継手の一部分に損傷が生じた場合にこれを補修しようとすると、損傷部を含む両側で切断し、切断部に対応した長さの新たな補修用可撓止水継手を用意し、その両端部をそれぞれ切断部の既設の可撓止水継手と接合しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、可撓止水継手の接合は加硫接合が行われ、現地にて接合用金型を用いて2箇所の接合が必要となり、切断部の端部処理、接合用金型の加熱などのため、長時間を要し、簡単に補修することができない。
そこで、接合部を短時間に簡単に接合でき、損傷部を簡単に交換して補修することができる技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる従来技術に鑑みてなされたものであって、接合部を短時間に簡単に接合でき、損傷部を簡単に交換して補修することができる可撓止水継手の接合構造および補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる可撓止水継手の接合構造は、
伸縮部と、前記伸縮部の両端縁部に固定用凸条部とを備え、構造物の目地部を跨いで前記固定用凸条部が固定部材で押圧固定される可撓止水継手の接合構造であって、
前記可撓止水継手は、前記固定用凸条部に前記構造物側に突き出し外側端部に位置し押圧されて止水する止水線条部を備え、
互いに突き合わされる前記可撓止水継手の接合部は、前記接合部を跨いで前記可撓止水継手の表側表面および前記固定用凸条部の外側面までを覆う止水シート部材を有し、前記止水シート部材で前記構造物の表面に押圧された前記止水線条部の外側面を前記構造物の表面まで覆って前記接合部の間を止水する、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点にかかる可撓止水継手の接合構造は、
伸縮部と、前記伸縮部の両端縁部に固定用凸条部とを備え、構造物の目地部を跨いで前記固定用凸条部が固定部材で押圧固定される可撓止水継手の接合構造であって、
前記可撓止水継手は、前記目地部に沿って複数に分割された止水継手部材と、前記止水継手部材の前記固定用凸条部に前記構造物側に突き出し外側端部に位置し押圧されて止水する止水線条部と、を備え、
互いに突き合わされる前記止水継手部材の接合部は、前記接合部を跨いで前記止水継手部材の表側表面および前記固定用凸条部の外側面までを覆う止水シート部材を有し、前記止水シート部材で前記構造物の表面に押圧された前記止水線条部の外側面を前記構造物の表面まで覆って前記接合部の間を止水する、
ことを特徴とする。
【0009】
前記止水シート部材は、前記可撓止水継手の表面と接して加硫接着される自然加硫シート材を備える、ことが好ましい。
【0010】
前記固定部材は、前記構造物に締め付けられる締結部と、前記締結部の一端に延設され前記固定用凸条部に装着される凹溝部と、を備え、
前記凹溝部は、前記固定用凸条部の外側面を覆う前記止水シート部材に当てて押える押え部が前記固定部材と一体または別体に形成される、ことが好ましい。
【0011】
前記固定部材は、前記構造物に締め付けられる締結部と、前記締結部の一端に延設され前記固定用凸条部に装着される凹溝部と、を備え、
前記固定用凸条部は、前記凹溝部の溝幅より小さい幅に形成される、ことが好ましい。
【0012】
前記固定用凸条部は、前記凹溝部の溝幅より小さい幅とした体積分だけ高さを高く形成される、ことが好ましい。
【0013】
前記接合部における前記固定用凸条部は、前記止水シート部材の厚さの2倍分だけ前記凹溝部の溝幅より小さい幅に形成される、ことが好ましい。
【0014】
前記接合部における前記固定用凸条部は、前記止水線条部と干渉させずに前記止水シート部材の厚さの2倍分だけ前記凹溝部の溝幅より小さい幅に形成される、ことが好ましい。
【0015】
本発明の第3の観点にかかる可撓止水継手の補修方法は、
可撓止水継手の接合構造の少なくとも損傷部を備える止水継手部材を、固定部材を外して接合部間で取り除く工程と、
前記損傷部を備えた前記止水継手部材が取り除かれた目地部に、補修用の止水継手部材を設置する工程と、
既設の前記止水継手部材と補修用の前記止水継手部材との前記接合部を跨いで、止水シート部材で前記止水継手部材の表側表面および前記固定用凸条部の外側面までを覆う工程と、
前記止水シート部材で覆われた前記固定用凸条部を前記固定部材で締め付けるとともに、止水線条部を押圧して前記止水線条部の外側面を前記止水シート部材で前記構造物の表面まで覆って固定する工程と、を備えて前記接合部間を補修用の前記止水継手部材で補修する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接合部を短時間に簡単に接合でき、損傷部を簡単に交換して補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の可撓止水継手の接合構造の一実施の形態にかかり、(a)は接合部の断面図、(b)は構造物の概略斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態の、展開して示す可撓止水継手の正面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は締め付け前の状態を、(b)は締め付けた状態を、(c)は締め付け前の従来例をそれぞれ示す部分断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態の中間部にかかり、(a)は締め付け前の状態を示す部分断面図、(b)は締め付けた状態を示す部分断面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の接合部にかかり、(a)は締め付け前の状態を示す部分断面図、(b)は締め付けた状態を示す部分断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は中間部の正面図および断面図、(b)は内側を削った接合部の正面図および断面図、(c)は外側を削った接合部の正面図および断面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は押え部を一体とした固定部材と固定用凸条部の締め付け前と締め付け後の説明する部分断面図、(b)は押え部を別体とした固定部材と固定用凸条部の締め付け前と締め付け後の説明する部分断面図、(c)は押え部を別体とした他の固定部材と固定用凸条部の締め付け前と締め付け後の説明する部分断面図である。
【
図8】本発明の可撓止水継手の補修方法の一実施の形態にかかり、(a)~(d)はそれぞれの工程を展開して示す正面図である。
【
図9】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は90度のコーナー継手部材の接合状態の概略斜視図、(b)は分解状態の概略斜視図である。
【
図10】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は135度のコーナー継手部材の接合状態の概略斜視図、(b)は分解状態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、
図1~
図10を参照して詳細に説明する。
可撓止水継手の接合構造100は、
図1に示すように、伸縮部11と、伸縮部11の両端縁部12に表側(構造物1と反対側)に突き出した固定用凸条部13とを備え、構造物1の目地部2を跨いで固定用凸条部13が固定部材20で押圧固定される可撓止水継手10に適用される。
【0019】
可撓止水継手10は、固定用凸条部13に構造物1側に突き出し外側端部13aに位置し押圧されて止水する止水線条部14を備える(
図1(a)、
図3(a)参照)。
互いに突き合わされる可撓止水継手10の接合部Aは、接合部Aを跨いで可撓止水継手10の表側表面10aおよび固定用凸条部13の外側面13bまでを覆う止水シート部材30を有し、止水シート部材30で構造物1の表面1aに押圧された止水線条部14の外側面14aを構造物1の表面1aまで覆うことで、接合部Aの間を止水する(
図1、
図2参照)。
すなわち、この可撓止水継手の接合構造100では、これまでの可撓止水継手10の接合部Aの端面同士を他の部分と同様に界面を生じること無く一体に接合する加硫接合や接着剤による接合などとは異なり、界面を残したまま(端面を突き合わせたまま)接合部Aの表側表面を止水シート部材30で覆うことおよび接合部Aの裏側を両端縁部12の外側端部13aに位置する止水線条部14を押圧することによって止水状態を表裏で連続させて界面の周囲を止水できるように接合するものである(
図5(b)参照)。
【0020】
可撓止水継手10は、構造物1の目地部2の周囲の長さに対応した1本の一定の横断面形状とされて形成され、両端の1箇所を接合部Aとして接合することで環状とされる場合のほか、
図2に示すように、目地部2の周囲の長さ方向に複数に分割された止水継手部材10Aを分割数+1箇所の接合部Aを接合することで環状とされる場合で構成される。
以下の実施の形態では、可撓止水継手10は、複数に分割された止水継手部材10Aで構成されて分割数+1箇所で接合される場合を例に説明する。複数に分割した止水継手部材10Aにより、損傷が生じた場合に、損傷した止水継手部材10A1だけを交換して両端部を接合することで、簡単に補修することができるようにしている。
【0021】
可撓止水継手10の複数に分割された止水継手部材10Aは、
図1(a)に示すように、変位を許容する伸縮部11と、伸縮部11の両端部に延設された碇着部(両端縁部)12に表側(構造物1と反対側)設けられる固定用凸条部13と、を備えるもので、碇着部12に設けられる固定用凸条部13が固定部材20で固定される。
【0022】
止水継手部材10Aは、ゴムや合成樹脂などの弾性部材で構成され、例えば、必要な強度に応じて補強のための布が補強布として1層乃至複数層内層される。また、止水継手部材10Aは、補強布を内層せずに、可撓止水継手10の施工の際に、止水継手部材10Aや止水シート部材30の外側を覆うように設置して用いられる場合もある。
【0023】
変位を許容する伸縮部11は、例えば、
図1(a)に示したように、横断面形状が略コ字状とされ開口側で目地部2の両側を囲むように構成されたもの、あるいは、円弧状として1つの略Ω状の横断面形状に構成されたもの、複数の円弧状を連続させた略W字状に蛇行する横断面形状に構成されたものなどが用いられる。伸縮部11は、構造物1の不等沈下や地震時変位並びに温度変化等に起因する変位等を許容できるものであれば、その横断面形状は、何ら限定するものでない。伸縮部11に延設される碇着部12は、構造物1の表面に設置できる平坦な帯状などであれば良く、形状などは、伸縮部11と同様、特に限定するものでない。
【0024】
固定用凸条部13は、例えば
図1(a)、
図4(a)、
図5(a)に示すように、碇着部12において表側(構造物1の表面1aに対して外側)に突き出すように一体に形成され、例えば、横断面形状が矩形に突き出して形成される。
固定用凸条部13の形状は、横断面形状を矩形とする場合に限らず、図示省略したが、外側面13bが構造物1の表面1aに略垂直な平面であれば、他の部分の形状は、何ら限定するものでなく、後述する固定部材20の凹溝部21で表側から構造物1の表面1aに向かって押さえることができる形状であれば良い。
【0025】
止水継手部材10Aは、碇着部12の裏面に止水線条部14を備える(
図1(a)、
図3(a)、
図4(a)、
図5(a)参照)。止水線条部14は、固定用凸条部13の裏面である構造物1と対向する側の表面に、構造物1側に突き出して形成される。止水線条部14は、例えば、一方の固定用凸条部13の裏面にそれぞれ半円状に突き出して2条の止水線条部14が全長に渡って一体に形成される。2条の止水線条部14のうち一方は、固定用凸条部13の裏面の目地部2の幅方向の外側端部13aに配置され、押圧されて構造物1の表面1aに押し潰された状態で、固定用凸条部13の裏面と止水線条部14の外側面14aとの角部に隙間が無い状態となるように配置してある(
図3(b)、
図4(b)、
図5(b)参照)。
【0026】
こうすることにより、止水継手部材10Aと構造物1の表面1aとの間では、目地部2を挟む両側の固定用凸条部13のうち外側に位置する止水線条部14同士によって、これら外側の2条の止水線条部14より外側(
図3(b)のX部分参照)は、碇着部12の平面や面圧が小さい平面が形成されず止水状態が確保される。この止水線条部14により面圧を高めて止水状態を確保することができることおよび固定用凸条部13の裏面の外側に位置する止水線条部14によってこれらより外側への漏水がなく止水状態が確保できることを単体実験により確認している。
なお、止水線条部14の横断面形状は、半球状とする場合に限らず台形状や矩形状などの他の形状であっても良く、固定部材20によって締め付ける場合に面圧を高めて構造物1の表面1aとの間のシール状態を確保できれば良い。
【0027】
固定部材20は、金属板で成形されており、
図1(a)に示すように、一端部に形成された凹溝部21と、中間部の締結部22と、他端部の支持部23とを備えている。固定部材20は止水継手部材10Aの中間部や止水継手部材10Aの接合部Aを跨いで固定する(
図2、
図6参照)。固定部材20は、1つの止水継手部材10Aを所定間隔の複数箇所で固定できる幅に形成される。固定部材20は、例えば両端の接合部Aの間の7箇所を一定の間隔で締め付けて固定する。固定部材20の幅や締め付けの間隔は、止水継手部材10Aの長さや必要な押圧力により設定され、止水状態を保持できるように設定する。また、止水継手部材10Aの接合部Aでは、接合部Aを跨いで両側の止水継手部材10Aを同時に押圧して固定することができるように固定部材20の幅などが設定され、中間部や接合部Aの使用場所によらず、同一仕様とされている。
なお、固定部材20は、中間部と接合部Aでそれぞれ幅などの仕様を変えるようにしても良い。
【0028】
固定部材20は、止水継手部材10Aの固定用凸条部13に外側から一端部に設けた凹溝部21を被せるようにし、中間部の締結部22をアンカーボルト3で構造物1に締め付け、他端部の支持部23を構造物1の表面1aとの間に締め付け空間を形成して当てることで、締め付け空間を狭めるように撓ませて締め付けることで固定するものである(
図1(a)、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)参照)。
【0029】
固定部材20は、一端部の凹溝部21が止水継手部材10Aの固定用凸条部13に被せることができるよう、例えば矩形の凹溝が形成される。固定用凸条部13の幅bと凹溝部21の溝幅Bとは、凹溝部21の着脱が円滑にできるように設定される。例えば、固定部材20の凹溝部21の溝幅Bに対して固定用凸条部13の幅bを小さく形成する一方、幅bを小さく形成した分だけ固定用凸条部13の高さをh分だけ高くすることで、締め付け状態では、固定用凸条部13が凹溝部21内に充填されて密着するように設定される(
図4(a)参照)。
【0030】
また、止水継手部材10Aの接合部Aでは、
図5(a)(b)に示すように、止水シート部材30を表側の表面1aに被せるようにすることから、固定用凸条部13の幅bを止水シート部材30の厚さの2倍分小さい幅b1とされる。この止水シート部材30の厚さを考慮して固定用凸条部13の幅bをb1と小さくする場合には、裏面の外側端部13aに突き出ている止水線条部14と干渉して外側を削り込むことがないようにする必要がある(
図6(c)参照)。止水シート部材30の厚さを考慮して固定用凸条部13を削る場合には、固定用凸条部13の内側だけを削るようにすることが最も好ましい(
図6(b)参照)。外側だけを削る場合には、止水線条部14との干渉を生じるおそれがあり(
図6(c)参照)、締め付けた際に止水線条部14が外側に逃げるように変形し、面圧を確保して止水することができなくなる。また、内側および外側をそれぞれ削ることもできるが、加工が2工程となり好ましくない。
なお、中間部と接合部Aとで、同一仕様の固定部材20を使用する場合は、固定用凸条部13の削り方によって固定部材20の位置がずれることになる(
図6参照)が、締結部22のアンカーボルト3への取付孔を長孔などとすることで対応すれば良い。
【0031】
固定部材20の中間部の締結部22は、構造物1の表面と略平行に形成され、一端部に凹溝部21の溝側部21aが略垂直に延設される。締結部22の他端部には、支持部23が延設されて斜めに形成され、先端部が構造物1の表面に当接するようになっている。
固定部材20は、凹溝部21を止水継手部材10Aの固定用凸条部13に被せ、中間部の締結部22をアンカーボルト3に装着して支持部23を構造物1の表面1aに当てた状態で締結部22と構造物1の表面1aとの間に形成される空間が固定部材20を撓ませることができる締め付け空間となる(
図1(a)参照)。
なお、固定部材20は、締め付けが完了した状態では、締め付け空間が無くなり、凹溝部21の溝側部21aが構造物1の表面1aに接近した状態となっても良い。
【0032】
固定部材20は、止水継手部材10Aの接合部Aにおいては、凹溝部21の溝側部21aによって固定用凸条部13を覆う止水シート部材30を固定用凸条部13に密着するように押えるため、溝側部21aの長さ(外側の溝深さ)が設定される。すなわち、凹溝部21の溝側部21aが固定用凸条部13の外側面13bの長さに合わせて内側より長く形成される(
図7(a)参照)。
【0033】
固定部材20は、止水継手部材10Aの接合部A以外の部分の固定には、凹溝部21の溝側部21aを長くしておく必要がなく同一仕様とする場合には、過剰の機能となり、金属板材も多く必要となることから、接合部Aに対しては、凹溝部21の内側に別体として押え部24を設けるようにすることもできる。押え部24は、
図7(b)(c)に示すように、固定用凸条部13の外側面13bに当てる平板状の金属板とされたものや頂面13cおよび外側面13bに当てるL字状に形成したものが用いられる。この場合の押え部24は、固定用凸条部13の止水線条部14が押し潰されるとともに、固定用凸条部13が押圧されて凹溝部21内を満たすように変形した状態で、構造物1の表面1aに接するように寸法などが設定される。押え部24は、凹溝部21の溝内側に溶接や接着剤などで固定して設けるようにしたり、別体としたものを止水継手部材10Aの接合の際に止水シート部材30で覆った固定用凸条部13の外側面13bに当てるようにする。
【0034】
止水シート部材30は、互いに突き合わされる止水継手部材10A同士の接合部Aを跨いで止水継手部材10Aの表側表面10aおよび固定用凸条部13の外側面13bまでを覆うことで止水するシート部材である(
図1(a)、
図2参照)。止水シート部材30は、止水継手部材10Aの両端部の止水線条部14が構造物1の表面1aに押圧された状態で、止水シート部材30の両端部がそれぞれ構造物1の表面1aに接し、一方の固定用凸条部13の外側面13bから止水継手部材10Aの表側表面10aおよび固定用凸条部13の表面を他方の固定用凸条部13の外側面13bまでを覆うように取り付けられる。
【0035】
止水シート部材30は、例えば表面が加硫ゴムシートとされ、裏面が未加硫の自然加硫ゴムシートとされて積層されて構成される。未加硫の自然加硫ゴムシートを止水継手部材10Aの表側表面10aおよび固定用凸条部13の表面を一方の固定用凸条部13の外側面13bから他方の固定用凸条部13の外側面13bまでを覆うように転圧することで、その粘着性によって接着することができる。接合後、止水シート部材30の表面温度が高まることで自然加硫ゴムシートの加硫が進行し、強力に接着された状態となる。また、表面の加硫ゴムシートにより自然加硫ゴムシートを補強することができる。
接合部Aに対する接合強度に対する要求条件にもよるが、実験によりこれまでの加硫接合に匹敵する接合強度となることを確認している。
【0036】
止水シート部材30を設けることで、互い突き合わせた止水継手部材10A同士の接合部Aを突き合わせた端面を接合することなく止水する。
止水継手部材10A同士の接合部Aは、突き合わせた端面を接合しない状態では、端面の間が水道(ミズミチ)(水路)となり、目地部2を介して浸入する水分などは、端面の間の水道から漏れ出る。この可撓止水継手の接合構造100では、目地部2側となる構造物1の表面1a側では、固定用凸条部13の裏面の外側端部13aの止水線条部14によってこれより外側へは漏水しない止水状態となる(
図3(b)中のX部参照)。また、固定用凸条部13の裏面の外側端部13aの止水線条部14の内側では、端面間が水道となって外部に漏れ出る(
図3(b)中のY部参照)が、端面間の外側、すなわち、一方の固定用凸条部13の外側面13bから止水継手部材10Aの表側表面10aおよび固定用凸条部13の表面を他方の固定用凸条部13の外側面13bまで止水シート部材30で覆ってあるので、この表側(外側)を止水状態とすることができる(
図3(b)中のZ部参照)。
【0037】
このような可撓止水継手の接合構造100では、止水継手部材10Aの接合部Aの外側を構造物1の表面1aに両端部を当てた止水シート部材30で覆うことで止水状態にすることができる。接合部Aの内側は、止水線条部14が構造物1の表面1aに押圧された状態で接合部Aの端面の固定用凸条部13の外側端部13aの角部を塞ぐようにする。これら止水継手部材10Aの接合部Aの内外の止水構造を組み合わせることで止水状態とすることができる。
したがって、固定用凸条部13の外側端部13aに設ける止水線条部14の位置が止水状態の確保に大きく影響し、止水線条部14が目地部2側に形成され(
図1参照)、止水線条部14と固定用凸条部13との間に平坦部や面圧が小さい部分が存在すると、この平坦部や面圧が小さい部分を通じて漏水が生じることになる(
図3(c)参照)が、可撓止水継手の接合構造100では、このような状態を回避して止水状態を保持すること(
図3(b)参照)ができる。
【0038】
止水線条部14の位置が固定用凸条部13の外側端部13aより内側とされ、面圧が小さい平面が形成される場合には、
図3(c)に示すように、この平面部分を止水シート部材30で止水しようとすると、固定用凸条部13の裏面、すなわち碇着部12の裏面に回り込むように止水シート部材30を取り付ける必要がある。これにより、止水継手部材10Aの表側だけからの接合作業では、接合部Aを接合することができなくなってしまう。
【0039】
次に、このような可撓止水継手の接合構造100の施工は、これまでの可撓止水継手10のように、目地部2の周囲の長さに合わせて成形された一本の可撓止水継手10の両端の接合部を加硫用の接合金型を用いて予め環状に接合した後、目地部2に取り付けるのとは異なる。
可撓止水継手の接合構造100の施工は、まず、分割された止水継手部材10Aの一本を目地部2を跨ぐように所定の位置に固定部材20で取り付ける。
この後、次の一本の止水継手部材10Aの接合部Aを固定した止水継手部材10Aに突き合わせ、接合部A同士を、既に説明した接合構造100を適用して接合して取り付ける。すなわち、止水継手部材10A同士の接合部Aを跨ぐように止水シート部材30で覆い、固定部材20を被せるようした後、締め付けて固定する。
このような止水継手部材10Aを固定し、接合部Aを止水シート部材30で覆って接合することを繰り返し、最後の一本の止水継手部材10Aを両端の接合部Aを突き合わせるように装着して固定部材20で固定するとともに、両端の2箇所の接合部Aを止水シート部材30で覆った後、固定部材20を被せるようにし、締め付けて固定する。こうして分割された止水継手部材10Aを分割数+1箇所の接合部Aを接合して環状とすることで、連続した可撓止水継手10としての施工が完了する。
【0040】
このようにして施工する可撓止水継手の接合構造100によれば、分割した短く軽い止水継手部材10Aを固定していけば良く、現場への搬送が容易であり、施工も表側からだけ取り付け作業を行うことで接合でき、短時間に接合することができる。
また、止水継手部材10Aの固定用凸条部13の幅bを固定部材20の凹溝部21の溝幅Bより小さくしてあるので、固定部材20の凹溝部21を大きな力を加えることなく、固定用凸条部13に被せるように装着でき、効率よく、短時間に固定することができる。
【0041】
なお、可撓止水継手の接合構造100では、止水継手部材10Aを構造物1の直角のコーナー部や角度を変えたコーナー部に取り付ける場合には、予め90度に成形したコーナー継手部材10B(
図9参照)や予め135度に成形したコーナー継手部材10C(
図10参照)を用意し、直線状の止水継手部材10Aと組み合わせることで、一層容易にコーナー部分にコーナー継手部材10B,10Cを固定して接合することで止水状態とすることができる。
【0042】
次に、本発明の可撓止水継手の補修方法の実施の形態について、
図2および
図8を参照して説明する。
このような可撓止水継手の補修方法は、
図2に示すように、既に説明した可撓止水継手の接合構造100を適用して取り付けられた止水継手部材10Aに対して適用することができるものである。この可撓止水継手の補修方法では、分割されて両端部の接合部Aで取り付けられていた損傷部10bが形成された止水継手部材10A1を補修用止水継手部材10A2に交換して補修する。
【0043】
1)破損箇所の取り外し
損傷部10bが形成された止水継手部材10A1を取り外すため、止水継手部材10A1を固定していた中間部の固定部材20を取り外すとともに、接合部Aの2箇所の固定部材20を取り外す。この後、2箇所の接合部Aを覆っていた止水シート部材30をそれぞれ剥がす(
図8(a)参照)。
損傷した止水継手部材10A1が取り外された構造物1の表面1aを清掃し、補修用止水継手部材10A2の設置に備える。
【0044】
2)補修用の止水継手部材への交換
予め用意してある補修用止水継手部材10A2を、取り外された構造物1の目地部2に止水継手部材10A1の部分に設置する(
図8(b)参照)。
なお、補修用止水継手部材10A2の設置の際、図示省略したが、中間部を固定部材20で固定するようにする。こうすることで、構造物1の天井部や側壁部などでの交換であっても補修用止水継手部材10A2を簡単に保持した状態にできる。
【0045】
3)接合
補修用止水継手部材10A2の両端の接合部Aの接合は、接合部Aを跨ぐように止水シート部材30を被せるように取り付ける(
図8(c)参照)。止水シート部材30は、止水継手部材10Aの一方の固定用凸条部13の外側面13bから他方の外側面13bまでを両端部が構造物1の表面1aに接した状態で被せるように取り付ける。止水シート部材30は、内側が粘着性の自然加硫ゴムシートとしてあるので、押し付けるように転圧して取り付けることができる。
【0046】
4)固定して補修完了
補修用止水継手部材10A2の両端の接合部Aの止水シート部材30の外側から凹溝部21を固定用凸条部13に被せるようにした後、固定部材20を締め付けて固定する。
このように補修用止水継手部材10A2の中間部および接合部Aを固定部材20で固定することで、損傷部10bが形成された止水継手部材10A1を新たな補修用止水継手部材10A2に交換し、補修することができる。
【0047】
このような可撓止水継手の補修方法によれば、損傷した止水継手部材10A1を補修用止水継手部材10A2に置き換えた後、接合部Aの外側に止水シート部材30を被せるようにして接合することができ、接合金型を用いた加硫接合に比べ大幅に作業時間を短縮することができ、例えば1時間程度で補修することができる。
これに対し、従来の補修方法では、損傷が形成された部分の両側を切断して取り除くことになるが、取り除きと置き換えだけで2倍以上の時間がかかる。また、加硫接合で接合する必要から、健全部を含む広い範囲の可撓止水継手を取り除き、接合金型に装着できるようにしなければならず、可撓止水継手の接合のための端部処理、加硫接合の予熱時間や接合時間により10倍以上の長時間を要してしまう。
したがって、補修のための時間に夜間の時間だけで補修することの制約がある場合に、例えば4時間以上の時間が必要となり、夜間だけでの補修ができない。
【0048】
以上、実施の形態とともに、具体的に説明したように、本発明の可撓止水部材の接合構造100によれば、伸縮部11と、伸縮部11の両端縁部に固定用凸条部13とを備え、構造物1の目地部2を跨いで固定用凸条部13が固定部材20で押圧固定される可撓止水継手10であって、可撓止水継手10は、固定用凸条部13に構造物1側に突き出し外側端部13aに位置し押圧されて止水する止水線条部14を備え、互いに突き合わされる可撓止水継手10の接合部Aは、接合部Aを跨いで可撓止水継手10の表側表面10aおよび固定用凸条部13の外側面13bまでを覆う止水シート部材30を有し、止水シート部材30で構造物1の表面1aに押圧された止水線条部14の外側面13bを構造物1の表面1aまで覆って接合部Aの間を止水する。
かかる構成によれば、可撓止水継手10を端面を突き合わせたまま接合部Aの表側表面10aを止水シート部材30で覆って接着することおよび接合部Aの裏側を両端縁部12の外側端部13aに位置する止水線条部14を押圧することによって止水状態を表裏で連続させて界面の周囲を止水して接合することができる。これにより、これまでの接合金型を用いて加硫接合する場合に比べ、接合部Aを短時間に簡単に接合できる。また、可撓止水継手10の表側から止水シート部材30を被せるようにするだけで簡単に接合することができる。
【0049】
可撓止水部材の接合構造100によれば、伸縮部11と、伸縮部11の両端縁部に固定用凸条部13とを備え、構造物1の目地部2を跨いで固定用凸条部13が固定部材20で押圧固定される可撓止水継手10であって、可撓止水継手10は、目地部2に沿って複数に分割された止水継手部材10Aと、止水継手部材10Aの固定用凸条部13に構造物1側に突き出し外側端部13aに位置し押圧されて止水する止水線条部14と、を備え、互いに突き合わされる止水継手部材10Aの接合部Aは、接合部Aを跨いで止水継手部材10Aの表側表面10aおよび固定用凸条部13の外側面13bまでを覆う止水シート部材30を有し、止水シート部材30で構造物1の表面1aに押圧された止水線条部14の外側面14aを構造物1の表面1aまで覆って接合部Aの間を止水する。
かかる構成によれば、止水継手部材10Aを端面を突き合わせたまま接合部Aの表側表面10aを止水シート部材30で覆って接着することおよび接合部Aの裏側を両端縁部12の外側端部13aに位置する止水線条部14を押圧することによって止水状態を表裏で連続させて界面の周囲を止水して接合することができる。これにより、これまでの接合金型を用いて加硫接合する場合に比べ、接合部Aを短時間に簡単に接合できる。また、分割された止水継手部材10Aであっても表側から止水シート部材30を被せるようにするだけで簡単に接合することができ、分割数+1箇所の接合部Aを接合して環状の可撓止水継手10に短時間に接合することができる。
【0050】
可撓止水部材の接合構造100によれば、止水シート部材30は、可撓止水継手10の表側表面10aと接して加硫接着される自然加硫シート材を備える。
かかる構成によれば、止水シート部材30の自然加硫シート材を可撓止水継手10に押し当てて転圧することで、その粘着性によって簡単に取り付けて接着することができる。また、時間の経過とともに、自然加硫されることで、接着強度が高くなり、一層止水性が向上する。
【0051】
可撓止水部材の接合構造100によれば、固定部材20は、構造物1に締め付けられる締結部22と、締結部22の一端に延設され固定用凸条部13に装着される凹溝部21と、を備え、凹溝部21は、固定用凸条部13の外側面13bを覆う止水シート部材30に当てて押える押え部24が固定部材20と一体または別体に形成される。
かかる構成によれば、固定部材20の凹溝部21に、止水シート部材30を固定用凸条部13の外側面13bに押える押え部24を設けることで、止水シート部材30で固定用凸条部13の外側面13bを確実に覆って接着でき、止水性を保持することができる。また、押え部24を別体とすることで、接合部Aにだけ押え部24を配置することで、同一仕様の固定部材20で効率よく接合部Aを止水することができる。
【0052】
可撓止水部材の接合構造100によれば、固定部材20は、構造物1に締め付けられる締結部22と、締結部22の一端に延設され固定用凸条部13に装着される凹溝部21と、を備え、固定用凸条部13は、凹溝部21の溝幅Bより小さい幅bに形成される。
かかる構成によれば、可撓止水継手10の固定用凸条部13の幅bを固定部材20の凹溝部21の溝幅Bより小さくすることで、着脱が容易になり、短時間に接合作業を行うことができる。
【0053】
可撓止水部材の接合構造100によれば、固定用凸条部13は、凹溝部21の溝幅Bより小さい幅bとした体積分だけ高さを高く(h分だけ)形成される。
かかる構成によれば、固定用凸条部13の幅bを小さくしても高さをその分だけ(h分)高くして体積を同一とすることで、凹溝部21の固定用凸条部13を締め付けた状態では、これまでと同様の密着性を確保でき、確実に固定することができる。
【0054】
可撓止水部材の接合構造100によれば、接合部Aにおける固定用凸条部13は、止水シート部材30の厚さの2倍分だけ凹溝部21の溝幅Bより小さい幅b1に形成される。
かかる構成によれば、可撓止水継手10の接合部Aで固定用凸条部13の外側を覆うように止水シート部材30を被せてもその分だけ固定用凸条部13の幅をb1と狭くしてあるので、接合部Aに対しても固定部材20の着脱が容易にでき、短時間に効率よく接合することができる。
【0055】
可撓止水部材の接合構造100によれば、接合部Aにおける固定用凸条部13は、止水線条部14と干渉させずに止水シート部材30の厚さの2倍分だけ凹溝部21の溝幅Bより小さい幅に形成される。
かかる構成によれば、固定用凸条部13の幅bを狭くする場合に止水線条部14と干渉しないようにすることで、干渉による漏水を防止して止水状態を確保することができる。
【0056】
可撓止水部材の補修方法によれば、可撓止水継手の接合構造100の少なくとも損傷部10bを備える止水継手部材10A1を、固定部材20を外して接合部A間で取り除く工程と、損傷部10bを備えた止水継手部材10A1が取り除かれた目地部2に、補修用の止水継手部材10A2を設置する工程と、既設の止水継手部材10Aと補修用の止水継手部材10A2との接合部Aを跨いで、止水シート部材30で止水継手部材10A,10A2の表側表面10aおよび固定用凸条部13の外側面13bまでを覆う工程と、止水シート部材30で覆われた固定用凸条部13を固定部材20で締め付けるとともに、止水線条部14を押圧して止水線条部14の外側面14aを止水シート部材30で構造物1の表面1aまで覆って固定する工程と、を備えて接合部A間を補修用の止水継手部材10A2で補修する。
かかる構成によれば、分割して固定されている損傷部10bが生じた止水継手部材10A1を取り除いて補修用の止水継手部材10A2に交換し、接合部Aを止水シート部材30で覆って固定部材20で締め付けるだけで簡単に接合でき、短時間に補修することができる。また、補修作業を可撓止水継手10の表側からだけで行うことができ、作業性に優れる。
これにより、これまでの損傷した部分を含む健全部な可撓止水継手を切断して取り除き、補修用の可撓止水継手を用意し、接合部を接合用金型を用いて加硫接合する場合には、長時間を要し、例えば夜間だけの作業で補修することが困難であったが、この補修方法により、夜間だけの作業で簡単に補修することも可能となった。
【0057】
なお、上記実施の形態で説明した可撓止水継手10は、一例に過ぎず、伸縮部11や固定用凸条部13の形状は、図示例に限らず、他の形状であっても良い。
また、固定部材20の構成も上記実施の形態で説明したものに限らず、同一の機能を備えたものであれば、何ら限定するものでない。
さらに、本願の各請求項に記載の発明は、単独の構成要件で構成する場合に限らず、各請求項の構成要件を組み合わせて構成することもできるものであり、例えば、請求項1乃至3に請求項4を、請求項1乃至4に請求項5などを、以下同様に順次組み合わせて構成することができるものである。
【符号の説明】
【0058】
100 可撓止水継手の接合構造
1 構造物
1a 表面
2 目地部
3 アンカーボルト
10 可撓止水継手
10a 表側表面
10b 損傷部
10A 止水継手部材
10A1 損傷した止水継手部材
10A2 補修用止水継手部材
10B コーナー継手部材
10C コーナー継手部材
11 伸縮部
12 碇着部(端縁部)
13 固定用凸条部
13a 外側端部
13b 外側面
13c 頂面
14 止水線条部
14a 外側面
20 固定部材
21 凹溝部
21a 溝側部
22 締結部
23 支持部
24 押え部
30 止水シート部材
A 接合部