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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015185
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】アンモニア分解装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
C01B3/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118418
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】仲井 和成
(72)【発明者】
【氏名】河本 祐作
(72)【発明者】
【氏名】田口 脩平
(72)【発明者】
【氏名】大倉 莉奈
(72)【発明者】
【氏名】尾松 大輔
(57)【要約】
【課題】 アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒を収容させた分解容器内において、アンモニアを効率よく水素と窒素とに分解できるようにする。
【解決手段】 アンモニアNHを分解容器10内で水素Hと窒素Nとに分解させるアンモニア分解装置において、分解容器内を流れるアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して、アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒21を用いた触媒層20を、分解容器内に複数段設けると共に、分解容器内を加熱させる加熱装置を設けた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを分解容器内で水素と窒素とに分解させるアンモニア分解装置において、前記の分解容器内を流れるアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して、アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒を用いた触媒層を前記の分解容器内に複数段設けると共に、前記の分解容器内を加熱させる加熱装置を設けたことを特徴とするアンモニア分解装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンモニア分解装置において、前記の加熱装置を前記の分解容器の外周側に設けると共に、前記の加熱装置の外周側に断熱体を設けたことを特徴とするアンモニア分解装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアンモニア分解装置において、前記の分解容器内にアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して触媒層を複数段設けるにあたり、前記の触媒層を分解容器内に上下方向に所要間隔を設けたことを特徴とするアンモニア分解装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のアンモニア分解装置において、前記の分解容器内に触媒層をアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して複数段設けるにあたり、前記の触媒層を保持する保持手段を分解容器内に設け、前記の触媒層間に空間部を設けるようにしたことを特徴とするアンモニア分解装置。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のアンモニア分解装置において、前記の分解容器内に触媒層をアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して複数段設けるにあたり、前記の触媒層間に通気性を有する蓄熱体を設けたことを特徴とするアンモニア分解装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアンモニア分解装置において、前記の触媒層に対して、通気性を有する蓄熱体をアンモニアの流れ方向両側に設けたことを特徴とするアンモニア分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを分解容器内で水素と窒素とに分解させるアンモニア分解装置に関するものである。特に、アンモニアを燃料として使用するにあたり、アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒を収容させた分解容器内において、アンモニアを効率よく水素と窒素とに分解できるようにした点に特徴を有するアンモニア分解装置である。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させる燃焼装置においては、一般に、燃料として炭化水素系燃料を用いたものが使用されている。
【0003】
しかし、このように燃焼装置において炭化水素系燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させた場合、二酸化炭素などの温室効果ガスが多く発生するという問題があった。
【0004】
このため、従来から、燃焼装置における燃料として、アンモニアを用いることが行われている。
【0005】
しかし、アンモニアは炭化水素系燃料に比べて燃焼性が悪く、完全燃焼させることが困難であり、また低温での燃焼時に失火しやすい一方、強く燃焼させるようにすると、火炎温度が高くなって、NOxが発生する量が増加するという問題あった。
【0006】
このため、従来においては、特許文献1に示されるように、アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒が充填された反応器内にアンモニアを導いて、アンモニアを水素と窒素とに分解させる前に、アンモニアに昇温された希釈ガスを混合させて希釈させるようにしたものが示されている。
【0007】
しかし、このようにアンモニアに昇温された希釈ガスを混合させて反応器に導いても、アンモニアを水素と窒素とに十分に分解させることは困難であった。
【0008】
また、特許文献2においては、アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒を収容させた触媒収容部の外周に加熱装置を設け、アンモニアを水素と窒素とに分解させるにあたり、加熱装置により触媒収容部に収容された触媒を加熱させるようにしたものが示されている。
【0009】
しかし、触媒収容部の外周に設けた加熱装置によって触媒収容部に収容された触媒を加熱させる場合、触媒収容部の径が大きくなると、触媒収容部の中央部における触媒が十分に加熱されなくて活性化されず、触媒収容部を通過するアンモニアを、水素と窒素とに十分に分解させることは困難であった。
【0010】
また、特許文献3、4においては、触媒を収容させた触媒収容体を周囲から加熱させるようにしたものが示されている。
【0011】
しかし、特許文献3、4に示されるものも、前記の特許文献2に示されたものと同様に、触媒収容部の径が大きくなると、触媒収容部の中央部における触媒が十分に加熱されなくて活性化されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2022-109042号公報
【特許文献2】特開2023-39681号公報
【特許文献3】WO2011/052020号公報
【特許文献4】特開2012-57508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、アンモニアを分解容器内で水素と窒素とに分解させるアンモニア分解装置における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0014】
すなわち、本発明は、前記のようなアンモニア分解装置において、アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒を収容させた分解容器内において、アンモニアを効率よく水素と窒素とに分解できるようにした点にすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るアンモニア分解装置においては、前記のような課題を解決するため、アンモニアを分解容器内で水素と窒素とに分解させるアンモニア分解装置において、前記の分解容器内を流れるアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して、アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒を用いた触媒層を前記の分解容器内に複数段設けると共に、前記の分解容器内を加熱させる加熱装置を設けるようにした。
【0016】
このように、分解容器内を流れるアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して、アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒を用いた触媒層を分解容器内に複数段設けると、前記の加熱装置による熱により触媒層が加熱されると共に、触媒層間の部分を通して、加熱装置による熱が分解容器内における各触媒層の中央部にも伝わり、触媒層の中央部も十分に加熱されて触媒が活性化され、分解容器内を流れるアンモニアが各触媒層を通して効率よく水素と窒素とに分解されるようになる。
【0017】
ここで、本発明のアンモニア分解装置において、前記のように分解容器内を加熱させる加熱装置を設けるにあたっては、前記の加熱装置を前記の分解容器の外周側に設けると共に、前記の加熱装置の外周側に断熱体を設けるようにすることができる。
【0018】
また、本発明のアンモニア分解装置においては、前記のように分解容器内を加熱させる加熱装置を設けるにあたっては、前記の分解容器内にアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して触媒層を複数段設けるにあたり、前記の触媒層を分解容器内に上下方向に所要間隔を設けるようにすることができる。
【0019】
また、本発明のアンモニア分解装置において、前記の分解容器内に触媒層をアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して複数段設けるにあたり、前記の触媒層を保持する保持手段を分解容器内に設け、前記の触媒層間に空間部を設けることができる。このようにすると、前記のように加熱装置による熱により触媒層が加熱されると共に、触媒層間の空間部を通して、加熱装置による熱が分解容器内における各触媒層の中央部にも伝わり、各触媒層全体が十分に加熱されて触媒が活性化されて、分解容器内を流れるアンモニアが各触媒層を通して効率よく水素と窒素とに分解されるようになる。
【0020】
また、本発明のアンモニア分解装置において、前記の分解容器内に触媒層をアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して複数段設けるにあたり、前記の触媒層間に通気性を有する蓄熱体を設けることができる。このようにすると、加熱装置による熱により触媒層と一緒に、触媒層間に設けられた蓄熱体が加熱されて蓄熱され、分解容器内を流れるアンモニアが触媒層間に設けた蓄熱体に蓄熱された熱によって加熱され、分解容器内を流れるアンモニアが各触媒層を通して効率よく水素と窒素とに分解されるようになる。特に、前記の触媒層に対して、通気性を有する蓄熱体をアンモニアの流れ方向両側に設けると、分解容器内を流れるアンモニアが、触媒層の両側に設けられた各蓄熱体に蓄熱された熱により加熱されて、分解容器内を流れるアンモニアがさらに効率よく水素と窒素とに分解されるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るアンモニア分解装置においては、前記のように分解容器内を流れるアンモニアの流れ方向に所要間隔を介して、アンモニアを水素と窒素とに分解させる触媒を用いた触媒層を前記の分解容器内に複数段設けると共に、前記の分解容器内を加熱させる加熱装置を設けたため、前記の加熱装置による熱により触媒層が加熱されると共に、触媒層間の部分を通して、加熱装置による熱が分解容器内における各触媒層の中央部にも伝わり、各触媒層全体が十分に加熱されて触媒が活性化されるようになる。
【0022】
この結果、本発明におけるアンモニア分解装置においては、分解容器内に導かれたアンモニアが、中心部まで加熱されて活性化された各触媒層における触媒によって効率よく水素と窒素とに分解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1に係るアンモニア分解装置を示した概略断面説明図である。
図2】前記の実施形態1に係るアンモニア分解装置の変更例1を示した概略断面説明図である。
図3】本発明の実施形態2に係るアンモニア分解装置を示した概略断面説明図である。
図4】前記の実施形態2に係るアンモニア分解装置の変更例2を示した概略断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るアンモニア分解装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係るアンモニア分解装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0025】
(実施形態1)
実施形態1に係るアンモニア分解装置においては、図1に示すように、分解容器10内でアンモニアNHを水素Hと窒素Nとに分解させるにあたって、分解容器10の下部にアンモニアNHを導入させる導入口11を設ける一方、分解容器10の上部にアンモニアNHが分解された水素Hと窒素Nとを取り出す取出し口12を設け、前記の導入口11を通して分解容器10内にアンモニアNHを導入し、導入されたアンモニアNHを分解容器10内で水素Hと窒素Nとに分解させて、分解された水素Hと窒素Nとを前記の取出し口12から取り出すようにしている。
【0026】
ここで、この実施形態1に係るアンモニア分解装置においては、前記の分解容器10内に、アンモニアNHを水素Hと窒素Nとに分解させる触媒21を用いた触媒層20をアンモニアNHの流れ方向に所要間隔を介して複数段設けるにあたり、触媒21としてペレット状の触媒21aを用い、ペレット状の触媒21aがこぼれ落ちないように保持するグレーチング等の通気性を有する保持部材31を、前記の分解容器10内にアンモニアNHの流れ方向である上下方向に所要間隔を介して複数段(図では3段)設け、このように設けた各保持部材31の上に、ペレット状の触媒21aを適当な厚みになるように積み重ねて複数段(図に示す例では3段)の触媒層20を設けると共に、各触媒層20の間に空間部22を設けるようにしている。
【0027】
また、この実施形態1に係るアンモニア分解装置においては、前記の分解容器10内を加熱させるヒーターからなる加熱装置40を分解容器10の外周側に設けると共に、加熱装置40の外周側に断熱体41を設け、加熱装置40による熱が外部に放熱されないようにして、分解容器10内に設けた各触媒層20や触媒層20間における各空間部22を効率よく加熱させるようにしている。
【0028】
そして、この実施形態1に係るアンモニア分解装置において、前記の加熱装置40によって前記の分解容器10内を加熱させながら、分解容器10の下部に設けられた導入口11からアンモニアNHを分解容器10内に導入させ、導入されたアンモニアNHを、分解容器10内における第1の触媒層20a、第1の空間部22a、第2の触媒層20b、第2の空間部22b、第3の触媒層20cの順に導いて加熱させながら、水素Hと窒素Nとに分解させて、分解容器10の上部に設けた前記の取出し口12から取り出すようにしている。
【0029】
ここで、前記のように分解容器10の外周側に設けた加熱装置40により、分解容器10内に設けた各触媒層20(20a~20c)及び各空間部22(22a,22b)を加熱させると、各空間部22(22a,22b)を通して、加熱装置40による熱が各触媒層20(20a~20c)の中央部にも伝わり、各触媒層20(20a~20c)全体が十分に加熱されて触媒21が活性化されるようになる。
【0030】
この結果、前記のように加熱装置40によって分解容器10内を加熱させながら、分解容器10の下部の導入口11から導入されたアンモニアNHを、分解容器10内における第1の触媒層20a、第1の空間部22a、第2の触媒層20b、第2の空間部22b、第3の触媒層20cの順に導くと、全体が十分に加熱されて活性化された各触媒21aにより、前記のアンモニアNHを効率よく水素Hと窒素Nとに分解させて、前記の取出し口12から取り出すことができるようになる。
【0031】
ここで、前記の実施形態1に係るアンモニア分解装置においては、触媒層20における触媒21にペレット状の触媒21aを用いるようにしたが、使用する触媒21はこのようなものに限られない。
【0032】
例えば、図2に示す変更例1においては、触媒21として、アンモニアNHの流れ方向に通気性を有するハニカム状の触媒21bを使用して、所定形状に成形した触媒層20を用い、このように成形した触媒層20を分解容器10の内周から突出した保持用突出部32の上に保持させるようにして、分解容器10内に前記の触媒層20をアンモニアNHの流れ方向である上下方向に所要間隔を介して複数段(図に示す例では3段)設け、各触媒層20の間に空間部22を設けるようにしている。
【0033】
ここで、図2に示す変更例1においても、図1に示した実施形態1のものと同様に、分解容器10内を加熱させるヒーターからなる加熱装置40を分解容器10の外周側に設けると共に、加熱装置40の外周側に断熱体41を設け、加熱装置40による熱が外部に放熱されないようにして、分解容器10内に設けた各触媒層20や触媒層20間における各空間部22を効率よく加熱させるようにしている。
【0034】
そして、この変更例1に係るアンモニア分解装置においても、前記の実施形態1のものと同様に、前記の加熱装置40によって前記の分解容器10内を加熱させながら、分解容器10の下部に設けられた導入口11からアンモニアNHを分解容器10内に導入させ、導入されたアンモニアNHを、分解容器10内における第1の触媒層20a、第1の空間部22a、第2の触媒層20b、第2の空間部22b、第3の触媒層20cの順に導いて加熱させながら、水素Hと窒素Nとに分解させて、分解容器10の上部に設けた前記の取出し口12から取り出すようにしている。
【0035】
このようにすると、変更例1に係るアンモニア分解装置においても、前記の実施形態1のものと同様に、分解容器10の下部の導入口11から導入されたアンモニアNHが、分解容器10内における第1の触媒層20a、第1の空間部22a、第2の触媒層20b、第2の空間部22b、第3の触媒層20cの順に導かれて、全体が十分に加熱されて活性化された各触媒21bにより、前記のアンモニアNHを効率よく水素Hと窒素Nとに分解させて、前記の取出し口12から取り出すことができるようになる。
【0036】
なお、前記の実施形態1及び変更例1においては、分解容器10内に触媒層20をアンモニアNHの流れ方向である上下方向に所要間隔を介して3段設けたものを示したが、分解容器10内に設ける触媒層20の段数は特に限定されず、触媒層20間に空間部22が形成されるのであればよく、2段以上であれば、触媒層20にさらに多く設けることも可能である。
【0037】
また、前記の実施形態1及び変更例1においては、分解容器10の下部に導入口11を設ける一方、分解容器10の上部に取出し口12を設けるようにしたが、分解容器10の上部に導入口11を設ける一方、分解容器10の下部に取出し口12を設け、アンモニアNHを、分解容器10の上部の導入口11から分解容器10内に導入させ、分解容器10内において水素Hと窒素Nとに分解させて、分解容器10の下部の取出し口12から取り出すようにすることも可能である。
【0038】
さらに、前記の実施形態1及び変更例1においては、導入口11や取出し口12を、分解容器10の上部又は下部に設けると共に、分解容器10内に触媒層20を上下方向に所要間隔を介して複数設けるようにしたが、このようなものに限定されず、図示していないが、分解容器10を横にして、分解容器10の横方向の両側に導入口11や取出し口12を設けるようにすると共に、分解容器10内に触媒層20を横方向に所要間隔を介して複数設けることもできる。
【0039】
(実施形態2)
実施形態2に係るアンモニア分解装置においても、図3に示すように、分解容器10内でアンモニアNHを水素Hと窒素Nとに分解させるにあたって、分解容器10の下部にアンモニアNHを導入させる導入口11を設ける一方、分解容器10の上部にアンモニアNHが分解された水素Hと窒素Nとを取り出す取出し口12を設け、前記の導入口11を通して分解容器10内にアンモニアNHを導入し、導入されたアンモニアNHを分解容器10内で水素Hと窒素Nとに分解させて、分解された水素Hと窒素Nとを前記の取出し口12から取り出すようにしている。
【0040】
ここで、この実施形態2に係るアンモニア分解装置においては、前記の分解容器10内に、通気性を有する蓄熱体23と、アンモニアNHを水素Hと窒素Nとに分解させる触媒21を用いた触媒層20とを、アンモニアNHの流れ方向である上下方向に交互に複数段設けるようにしている。
【0041】
そして、この実施形態2に係るアンモニア分解装置においては、前記の蓄熱体23として、蓄熱材24にアンモニアNHの流れ方向に通気性を有するハニカム状の蓄熱材24aを用い、このハニカム状の蓄熱材24aを所定形状に成形したものを使用する一方、前記の触媒層20においては、触媒21としては、ペレット状の触媒21aを用いるようにし、前記の導入口11から導入されたアンモニアNHの流れ方向上流側における分解容器10内の下部に、前記のハニカム状の蓄熱材24で成形された第1の蓄熱体23aを、分解容器10の内周から突出した保持用突出部32の上に保持させ、前記の第1の蓄熱体23aの上に、ペレット状の触媒21aを適当な厚みになるように積み重ねた第1の触媒層20aを設け、前記の第1の触媒層20aの上にハニカム状の蓄熱材24で成形された第2の蓄熱体23bを設け、前記の第2の蓄熱体23bの上にペレット状の触媒21aを適当な厚みになるように積み重ねた第2の触媒層20bを設け、前記の第2の触媒層20bの上にハニカム状の蓄熱材24で成形された第3の蓄熱体23cを設けるようにしている。
【0042】
このときのハニカム状の蓄熱材24のハニカムのメッシュの大きさは、ペレット状の触媒21aがメッシュの穴からこぼれ落ちないように、ペレット状の触媒21aの最小寸法より小さくしておく。
【0043】
また、この実施形態2に係るアンモニア分解装置においても、前記の分解容器10内を加熱させるヒーターからなる加熱装置40を分解容器10の外周側に設けると共に、加熱装置40の外周側に断熱体41を設け、加熱装置40による熱が外部に放熱されないようにして、分解容器10内に設けた前記の各蓄熱体23(23a~23c)及び各触媒層20(20a,20b)を効率よく加熱させるようにしている。
【0044】
そして、この実施形態2に係るアンモニア分解装置において、前記の加熱装置40によって分解容器10内を加熱させながら、分解容器10の下部に設けられた導入口11からアンモニアNHを分解容器10内に導入させ、導入されたアンモニアNHを、分解容器10内における第1の蓄熱体23a、第1の触媒層20a、第2の蓄熱体23b、第2の触媒層20b、第3の蓄熱体23cの順に導いて加熱させながら、水素Hと窒素Nとに分解させて、分解容器10の上部に設けた前記の取出し口12から取り出すようにしている。
【0045】
ここで、前記のように分解容器10の外周側に設けた加熱装置40により、分解容器10内に設けた各蓄熱体23(23a~23c)及び各触媒層20(20a,20b)を加熱させると、導入口11から分解容器10内に導入されたアンモニアNHが、第1の蓄熱体23aに蓄熱された熱により加熱されて第1の触媒層20aに導かれ、加熱された第1の触媒層20aにおける触媒21aにより水素Hと窒素Nとに分解され、さらに、アンモニアNHが、第2の蓄熱体23bに蓄熱された熱により加熱されて第2の触媒層20bに導かれ、加熱された第2の触媒層20bにおける触媒21aにより水素Hと窒素Nとに分解され、このように分解された水素Hと窒素Nとが第3の蓄熱体23cに導かれ、第3の蓄熱体23cに蓄熱された熱により加熱されて、前記の取出し口12から取り出されるようになる。
【0046】
そして、前記のように加熱装置40によって分解容器10内を加熱させながら、分解容器10の下部の導入口11から導入されたアンモニアNHを、第1の蓄熱体23a、第1の触媒層20a、第2の蓄熱体23b、第2の触媒層20b、第3の蓄熱体23cの順に導いて加熱させながら水素Hと窒素Nとに分解させると、蓄熱体23a、23b、23cを利用することで空間部22を空けるだけよりも高温が維持され、高温の蓄熱体23a,23b,23cで触媒層20a、20bを上下から挟むことにより、各触媒層20a、20b全体が十分に加熱されて各触媒21aが活性化されるようになり、前記のアンモニアNHをさらに効率よく水素Hと窒素Nとに分解させて、前記の取出し口12から取り出すことができるようになる。
【0047】
また、前記のように分解された水素Hと窒素Nとを第3の蓄熱体23cにおいて加熱させて取出し口12から取り出すようにすると、水素Hを高温の状態で取り出すことができて、燃料として簡単に利用できるようになる。
【0048】
ここで、前記の実施形態2に係るアンモニア分解装置においては、蓄熱体23における蓄熱材24にハニカム状の蓄熱材24aを用い、触媒層20における触媒21にペレット状の触媒21aを用いるようにしたが、使用する蓄熱体23における蓄熱材24や、触媒層20における触媒21は、このようなものに限られない。
【0049】
例えば、図4に示す変更例2においては、蓄熱体23における蓄熱材24にボール状の蓄熱材24bを用い、このボール状の蓄熱材24bがこぼれ落ちないように保持するグレーチング等の通気性を有する保持部材31を、前記の分解容器10内にアンモニアNHを導入させるにおける導入口11の上方に設け、この保持部材31の上に、ボール状の蓄熱材24bを適当な厚みになるように積み重ねて第1の蓄熱体23aを設け、この第1の蓄熱体23aの上に、ペレット状の触媒21aを適当な厚みになるように積み重ねて第1の触媒層20aを設け、この第1の触媒層20aの上に、ボール状の蓄熱材24bを適当な厚みになるように積み重ねて第2の蓄熱体23bを設け、この第2の蓄熱体23bの上に、ペレット状の触媒21aを適当な厚みになるように積み重ねて第2の触媒層20bを設け、この第2の触媒層20bの上に、ボール状の蓄熱材24bを適当な厚みになるように積み重ねて第3の蓄熱体23cを設けるようにしている。
【0050】
ここで、図4に示す変更例2においても、分解容器10内を加熱させるヒーターからなる加熱装置40を分解容器10の外周側に設けると共に、加熱装置40の外周側に断熱体41を設け、加熱装置40による熱が外部に放熱されないようにして、分解容器10内に設けた前記の各蓄熱体23(23a~23c)及び各触媒層20(20a,20b)を効率よく加熱させるようにしている。
【0051】
そして、この変更例2に係るアンモニア分解装置においても、前記の実施形態2に係るアンモニア分解装置と同様に、前記の加熱装置40によって分解容器10内を加熱させながら、分解容器10の下部に設けられた導入口11からアンモニアNHを分解容器10内に導入させ、導入されたアンモニアNHを、分解容器10内における第1の蓄熱体23a、第1の触媒層20a、第2の蓄熱体23b、第2の触媒層20b、第3の蓄熱体23cの順に導いて加熱させながら、水素Hと窒素Nとに分解させて、分解容器10の上部に設けた前記の取出し口12から取り出すようにしている。
【0052】
ここで、前記のように分解容器10の外周側に設けた加熱装置40により、分解容器10内に設けた各蓄熱体23(23a~23c)及び各触媒層20(20a,20b)を加熱させると、導入口11から導入されたアンモニアNHが、第1の蓄熱体23aに蓄熱された熱により加熱されて第1の触媒層20aに導かれ、加熱された第1の触媒層20aにおいて水素Hと窒素Nとに分解され、さらに、アンモニアNHが、第2の蓄熱体23bに蓄熱された熱により加熱されて第2の触媒層20bに導かれ、加熱された第2の触媒層20bにおいて水素Hと窒素Nとに分解され、このように分解された水素Hと窒素Nとが第3の蓄熱体23cに導かれ、第3の蓄熱体23cに蓄熱された熱により加熱されて、前記の取出し口12から取り出されるようになる。
【0053】
そして、この変更例2に係るアンモニア分解装置においては、ボール状の蓄熱材24bを使用したことにより、この蓄熱材24bが水平方向の通気性も有するため、加熱装置40による熱が、前記の実施形態2に係るアンモニア分解装置に用いたハニカム状の蓄熱材24aによりも、各触媒層20a、20bの中央部まで伝わりやすくなり、前記のように導入口11から分解容器10内に導入させたアンモニアNHが、分解容器10内においてさらに効率よく水素Hと窒素Nとに分解されて、前記の取出し口12から取り出すことができるようになると共に、分解された水素Hと窒素Nとが、第3の蓄熱体23cにおいて加熱させて取出し口12から取り出され、水素Hを高温の状態で取り出すことができて、燃料として簡単に利用できるようになる。
【0054】
なお、前記の実施形態2及び変更例2においては、分解容器10内に設けた前記の3つの蓄熱体23(23a~23c)と2つの触媒層20(20a,20b)を設けたものを示したが、分解容器10内に設ける蓄熱体23や触媒層20の数は限定されず、触媒層20と蓄熱体23とを交互にして、触媒層20と蓄熱体23とを更に多くの設けるようにすることもできる。
【0055】
また、前記の実施形態2及び変更例2においても、分解容器10の下部に導入口11を設ける一方、分解容器10の上部に取出し口12を設けるようにしたが、分解容器10の上部に導入口11を設ける一方、分解容器10の下部に取出し口12を設け、アンモニアNHを、分解容器10の上部の導入口11から分解容器10内に導入させ、分解容器10内において水素Hと窒素Nとに分解させて、分解容器10の下部の取出し口12から取り出すようにすることも可能である。
【0056】
さらに、前記の実施形態2及び変更例2においては、導入口11や取出し口12を、分解容器10の上部又は下部に設けると共に、分解容器10内に触媒層20と蓄熱体23を上下方向に積層させるようにして複数設けるようにしたが、このようなものに限定されず、図示していないが、分解容器10を横にして、分解容器10の横方向の両側に導入口11や取出し口12を設けると共に、分解容器10内に触媒層20と蓄熱体23を横方向に並設させるようにして複数設けることもできる。
【符号の説明】
【0057】
10 :分解容器
11 :導入口
12 :取出し口
20、20a~20c :触媒層
21、21a、21b :触媒
22、22a、22b :空間部
23、23a~23c :蓄熱体
24、24a、24b :蓄熱材
31 :保持部材
32 :保持用突出部
40 :加熱装置
41 :断熱体
:水素
:窒素
NH :アンモニア
図1
図2
図3
図4