(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015187
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】工具保持構造および工具取り出し方法
(51)【国際特許分類】
B23B 31/06 20060101AFI20250123BHJP
B23B 31/20 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B23B31/06
B23B31/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118421
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000205834
【氏名又は名称】BIG DAISHOWA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518042372
【氏名又は名称】大昭和精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】土居 正幸
(72)【発明者】
【氏名】今井 久敬
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭亮
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032BB12
3C032BB21
3C032DD01
3C032FF09
3C032JJ13
(57)【要約】
【課題】切削工具が折損した場合でも切削工具の取り外しが簡易な工具保持構造及び工具取り出し方法を提供する。
【解決手段】工具保持構造は、切削工具Tを保持し、回転軸芯Xを中心に回転する筒状の工具ホルダ1を備えている。工具ホルダ1は、回転軸芯X方向の一方側に設けられ、切削工具Tのシャンク部2を受け入れ可能なチャック部12と、切削工具Tのシャンク部2を保持すると共に、チャック部12に挿入されて回転軸芯Xと同軸芯に保持されるコレット30と、コレット30に対して回転軸芯X方向の他方側に配置されてコレット30に連結される筒状の連結部材40と、を有し、連結部材40は、工具ホルダ1の内面に着脱可能であり、工具ホルダ1の回転軸芯X方向の他方側からの操作によって一方側に向けて移動してコレット30を回転軸芯X方向に沿って押すことにより、チャック部12から工具Tをコレット30と共に抜き出し可能に構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具を保持し、回転軸芯を中心に回転する筒状の工具ホルダを備え、
前記工具ホルダは、
前記回転軸芯方向の一方側に設けられ、前記切削工具のシャンク部を受け入れ可能なチャック部と、
前記切削工具の前記シャンク部を保持すると共に、前記チャック部に挿入されて前記回転軸芯と同軸芯に保持されるコレットと、
前記コレットに対して前記回転軸芯方向の他方側に配置されて前記コレットに連結される筒状の連結部材と、を有し、
前記連結部材は、前記工具ホルダの内面に着脱可能であり、前記工具ホルダの前記回転軸芯方向の前記他方側からの操作によって前記一方側に向けて移動して前記コレットを前記回転軸芯方向に沿って押すことにより、前記チャック部から前記切削工具を前記コレットと共に抜き出し可能に構成されている工具保持構造。
【請求項2】
前記連結部材は、前記一方側に配置される第一連結部材と、前記他方側に配置される第二連結部材と、を有し、
前記第一連結部材は、前記コレットに連結可能に構成され、
前記第二連結部材は、前記第一連結部材に連結可能であり且つ前記工具ホルダの前記内面に着脱可能に構成されている請求項1に記載の工具保持構造。
【請求項3】
前記コレットは、前記他方側に設けられた雌ねじ部を有し、
前記第二連結部材は、前記一方側に設けられた雌ねじ部と、前記工具ホルダの内面に設けられた雌ねじ部にねじ止め可能な雄ねじ部と、を有し、
前記第一連結部材は、前記コレットの前記雌ねじ部にねじ止め可能な第一雄ねじ部と、前記第二連結部材の前記雌ねじ部にねじ止め可能な第二雄ねじ部とを有し、
前記第二連結部材の前記雄ねじ部のねじ径は、前記第一連結部材の前記第一雄ねじ部のねじ径及び前記第二雄ねじ部のねじ径よりも大きい請求項2に記載の工具保持構造。
【請求項4】
前記コレットは、前記他方側に設けられた雌ねじ部を有し、
前記第二連結部材は、前記一方側に設けられた雌ねじ部と、前記工具ホルダの内面に設けられた雌ねじ部にねじ止め可能な雄ねじ部と、を有し、
前記第一連結部材は、前記コレットの前記雌ねじ部にねじ止め可能な第一雄ねじ部と、前記第二連結部材の前記雌ねじ部にねじ止め可能な第二雄ねじ部とを有し、
前記第二連結部材の前記雄ねじ部のねじピッチと、前記第一連結部材の前記第二雄ねじ部のねじピッチとが異なるように構成されている請求項2又は3に記載の工具保持構造。
【請求項5】
工具ホルダに保持された切削工具を前記工具ホルダから取り出す工具取り出し方法であって、
前記切削工具を保持し、回転軸芯を中心に回転する筒状の工具ホルダを備え、
前記工具ホルダは、
前記回転軸芯方向の一方側に設けられ、前記切削工具のシャンク部を受け入れ可能なチャック部と、
前記切削工具の前記シャンク部を保持すると共に、前記チャック部に挿入されて前記回転軸芯と同軸芯に保持されるコレットと、
前記コレットに対して前記回転軸芯方向の他方側に配置されて前記コレットに連結される筒状の連結部材と、を有し、
前記工具ホルダの前記回転軸芯方向の前記他方側から前記連結部材を操作し、前記連結部材を前記一方側に向けて移動させて前記コレットを前記工具ホルダの前記回転軸芯方向に沿って押すことにより、前記チャック部から前記切削工具を前記コレットと共に抜き出す工具取り出し方法。
【請求項6】
工具ホルダに保持された切削工具を前記工具ホルダから取り出す工具取り出し方法であって、
前記切削工具を保持し、回転軸芯を中心に回転する筒状の工具ホルダを備え、
前記工具ホルダは、
前記回転軸芯方向の一方側に設けられ、前記切削工具のシャンク部を受け入れ可能なチャック部と、
前記切削工具の前記シャンク部を保持すると共に、前記チャック部に挿入されて前記回転軸芯と同軸芯に保持されるコレットと、
前記コレットに対して前記回転軸芯方向の他方側に配置されて前記コレットに連結される筒状の連結部材と、を有し、
前記連結部材は、前記一方側に配置される第一連結部材と、前記回転軸芯方向の前記他方側に配置される第二連結部材と、を有し、
前記第一連結部材は、前記コレットに連結可能に構成され、
前記第二連結部材は、前記第一連結部材に連結可能であり且つ前記工具ホルダの前記内面に着脱可能に構成されており、
前記コレットは、前記他方側に雌ねじ部を有し、
前記第二連結部材は、前記一方側に設けられた雌ねじ部と、前記工具ホルダの内面に設けられた雌ねじ部にねじ止め可能な雄ねじ部と、を有し、
前記第一連結部材は、前記コレットの前記雌ねじ部にねじ止め可能な第一雄ねじ部と、前記第二連結部材の前記雌ねじ部にねじ止め可能な第二雄ねじ部とを有し、
前記第二連結部材の前記雄ねじ部のねじピッチと、前記第一連結部材の前記第二雄ねじ部のねじピッチとが異なるように構成されており、
前記第二連結部材の回転操作により、前記第二連結部材の前記雄ねじ部のねじピッチと、前記第一連結部材の前記第二雄ねじ部のねじピッチとのピッチ差だけ前記第一連結部材を前記一方側に向けて移動させて前記コレットを前記工具ホルダの前記回転軸芯方向に沿って押すことにより、前記チャック部から前記切削工具を前記コレットと共に抜き出す工具取り出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具のシャンク部を工具ホルダ等のチャック部に挿入して保持する工具保持構造および工具ホルダ等からの工具取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような工具保持構造として、例えば、特許文献1には、チャック部に挿入されたコレットを介して切削工具のシャンク部を保持するものが示されている。この工具保持構造では、チャック部に対する切削工具の抜け止め機構及び回り止め機構が備えられている。具体的には、チャック部の内面に形成された内嵌合部に嵌合する嵌合部材が、コレット及び切削工具のシャンク部の外面から露出するように配置されている。そして、嵌合部材がチャック部の内嵌合部に嵌合することで、チャック部に対する切削工具の抜け止め及び回り止めが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される工具保持構造において、チャック部に挿入されるコレットは、工具ホルダの内面に組み付けられることがある。こうした工具ホルダへのコレットの組み付けは、コレットまたはコレットに連結された部材に対する操作によって行われ、当該操作はチャック部の開口側から行われる。このような構成において、工具ホルダに保持された切削工具が、加工時等にチャック部の開口近くで折損することがある。この場合、工具ホルダのチャック部から突出する切削工具が短い場合には、チャック部の開口側から切削工具の取り出し操作を適正に行えないことがある。そうなると、工具ホルダから切削工具の取り出しが困難になる。このように、チャック部に対してコレットを介して取付けられる切削工具の工具保持構造について改善の余地があった。
【0005】
上記実情に鑑み、切削工具が折損した場合でも切削工具の取り外しが簡易な工具保持構造及び工具取り出し方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工具保持構造の特徴構成は、切削工具を保持し、回転軸芯を中心に回転する筒状の工具ホルダを備え、前記工具ホルダは、前記回転軸芯方向の一方側に設けられ、前記切削工具のシャンク部を受け入れ可能なチャック部と、前記切削工具の前記シャンク部を保持すると共に、前記チャック部に挿入されて前記回転軸芯と同軸芯に保持されるコレットと、前記コレットに対して前記回転軸芯方向の他方側に配置されて前記コレットに連結される筒状の連結部材と、を有し、前記連結部材は、前記工具ホルダの内面に着脱可能であり、前記工具ホルダの前記回転軸芯方向の前記他方側からの操作によって前記一方側に向けて移動して前記コレットを前記回転軸芯方向に沿って押すことにより、前記チャック部から前記切削工具を前記コレットと共に抜き出し可能に構成されている点にある。
【0007】
本構成によれば、工具ホルダの他方側からの連結部材の操作によって連結部材が一方側に向けて移動してコレットを回転軸芯方向に沿って押すことにより、チャック部から切削工具をコレットと共に抜き出し可能に構成されている。したがって、切削加工時等に切削工具の軸部が折損し、チャック部の開口側から切削工具を操作して切削工具を取り出すことが困難な場合でも、工具ホルダの他方側からの操作によってチャック部から切削工具を容易に取り出すことができる。また、工具ホルダのチャック部では切削工具がコレットに保持されるため、切削工具の折損時にコレットの外周側に位置するチャック部の内面は損傷し難い。また、チャック部から切削工具を取り出す際には、チャック部から切削工具がコレットと共に抜き出されるため、チャック部の内面は損傷し難い。したがって、切削加工時等に切削工具が折損した場合でも、工具ホルダはコレットのみを交換して継続使用することもできる。
【0008】
他の特徴構成は、前記連結部材は、前記一方側に配置される第一連結部材と、前記他方側に配置される第二連結部材と、を有し、前記第一連結部材は、前記コレットに連結可能に構成され、前記第二連結部材は、前記第一連結部材に連結可能であり且つ前記工具ホルダの前記内面に着脱可能に構成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、連結部材が第一連結部材及び第二連結部材によって構成されるので、コレットを工具ホルダに組付ける際に、連結部材によってコレットの位置調整を容易に行うことができる。また、第一連結部材及び第二連結部材をそれぞれ複数用意することで、工具ホルダの多様な内面形状に合う連結部材を容易に構成することもできる。
【0010】
他の特徴構成は、前記コレットは、前記他方側に設けられた雌ねじ部を有し、前記第二連結部材は、前記一方側に設けられた雌ねじ部と、前記工具ホルダの内面に設けられた雌ねじ部にねじ止め可能な雄ねじ部と、を有し、前記第一連結部材は、前記コレットの前記雌ねじ部にねじ止め可能な第一雄ねじ部と、前記第二連結部材の前記雌ねじ部にねじ止め可能な第二雄ねじ部とを有し、前記第二連結部材の前記雄ねじ部のねじ径は、前記第一連結部材の前記第一雄ねじ部のねじ径及び前記第二雄ねじ部のねじ径よりも大きい点にある。
【0011】
本構成によれば、コレットが雌ねじ部を有し、第一連結部材が回転軸芯方向の両側に雄ねじ部を夫々有し、第二連結部材が回転軸芯方向の両側に雌ねじ部及び雄ねじ部を有することで、連結部材は、コレットに第一連結部材を確実に連結しつつ、第二連結部材を工具ホルダの内面に確実に組付けることができる。また、第二連結部材の雄ねじ部のねじ径は、第一連結部材の両雄ねじ部のねじ径よりも大きいことで、工具ホルダの内面に対して連結部材を安定的に固定できる。これにより、連結部材に連結されたコレットは、回転軸芯に沿う姿勢に安定的に保持できる。
【0012】
他の特徴構成は、前記コレットは、前記他方側に設けられた雌ねじ部を有し、前記第二連結部材は、前記一方側に設けられた雌ねじ部と、前記工具ホルダの内面に設けられた雌ねじ部にねじ止め可能な雄ねじ部と、を有し、前記第一連結部材は、前記コレットの前記雌ねじ部にねじ止め可能な第一雄ねじ部と、前記第二連結部材の前記雌ねじ部にねじ止め可能な第二雄ねじ部とを有し、前記第二連結部材の前記雄ねじ部のねじピッチと、前記第一連結部材の前記第二雄ねじ部のねじピッチとが異なるように構成されている点にある。
【0013】
第二連結部材の雄ねじ部のねじピッチと、第一連結部材の第二雄ねじ部のねじピッチとが同じであると、第二連結部材を回転操作しても、第二連結部材の端面が第一連結部材に当接するまでは、第二連結部材に第一連結部材が連れ回りして、第一連結部材をコレットに向かう方向に移動させることができない。そこで、本構成では、第二連結部材の雄ねじ部と、第一連結部材の第二雄ねじ部とが、異なるねじピッチを有して構成されている。このように構成した場合、仮に、第二連結部材の雄ねじ部のねじピッチが、第一連結部材の第二雄ねじ部のねじピッチよりも大きい場合には、工具ホルダの他方側から第二連結部材を当該第二連結部材が工具ホルダの一方側に移動するように回転させる。こうすると、第二連結部材が一回転した際に、第二連結部材のコレットに向かう方向の移動距離が第一連結部材のコレットとは反対方向の移動距離よりも大きくなるので、第一連結部材を第二連結部材と一体的に回転軸芯方向の一方側に移動させることができる。また、反対に、第二連結部材の雄ねじ部のねじピッチが、第一連結部材の第二雄ねじ部のねじピッチよりも小さい場合には、工具ホルダの他方側から第二連結部材を当該第二連結部材が工具ホルダの他方側に移動するように回転させる。こうすると、第二連結部材が一回転した際に、第一連結部材の回転軸芯方向の一方側に向かう移動距離が第二連結部材の回転軸芯方向の他方側に向かう移動距離よりも大きくなるので、第一連結部材を回転軸芯方向の一方側に向けて移動させることができる。その結果、工具ホルダからの切削工具の取り出し操作を効率よく行うことができる。
【0014】
本発明に係る工具取り出し方法の特徴は、工具ホルダに保持された切削工具を前記工具ホルダから取り出す工具取り出し方法であって、前記切削工具を保持し、回転軸芯を中心に回転する筒状の工具ホルダを備え、前記工具ホルダは、前記回転軸芯方向の一方側に設けられ、前記切削工具のシャンク部を受け入れ可能なチャック部と、前記切削工具の前記シャンク部を保持すると共に、前記チャック部に挿入されて前記回転軸芯と同軸芯に保持されるコレットと、前記コレットに対して前記回転軸芯方向の他方側に配置されて前記コレットに連結される筒状の連結部材と、を有し、前記工具ホルダの前記回転軸芯方向の前記他方側から前記連結部材を操作し、前記連結部材を前記一方側に向けて移動させて前記コレットを前記工具ホルダの前記回転軸芯方向に沿って押すことにより、前記チャック部から前記切削工具を前記コレットと共に抜き出す点にある。
【0015】
本方法によれば、工具ホルダの他方側からの連結部材の操作によって連結部材が回転軸芯方向の一方側に移動してコレットを回転軸芯方向に沿って押すことにより、チャック部から切削工具をコレットと共に抜き出す。したがって、切削加工時等に切削工具の軸部が折損し、チャック部の開口側から切削工具を操作して切削工具を取り出すことが困難な場合でも、工具ホルダの他方側からの操作によってチャック部から切削工具を容易に取り出すことができる。また、工具ホルダのチャック部では切削工具がコレットに保持されるため、切削工具の折損時にコレットの外周側に位置するチャック部の内面は損傷し難い。また、チャック部から切削工具を取り出す際には、チャック部から切削工具がコレットと共に抜き出されるため、チャック部の内面は損傷し難い。したがって、切削加工時等に切削工具が折損した場合でも、工具ホルダはコレットのみを交換して継続使用することもできる。
【0016】
本発明に係る工具取り出し方法の特徴は、工具ホルダに保持された切削工具を前記工具ホルダから取り出す工具取り出し方法であって、前記切削工具を保持し、回転軸芯を中心に回転する筒状の工具ホルダを備え、前記工具ホルダは、前記回転軸芯方向の一方側に設けられ、前記切削工具のシャンク部を受け入れ可能なチャック部と、前記切削工具の前記シャンク部を保持すると共に、前記チャック部に挿入されて前記回転軸芯と同軸芯に保持されるコレットと、前記コレットに対して前記回転軸芯方向の他方側に配置されて前記コレットに連結される筒状の連結部材と、を有し、前記連結部材は、前記一方側に配置される第一連結部材と、前記回転軸芯方向の前記他方側に配置される第二連結部材と、を有し、前記第一連結部材は、前記コレットに連結可能に構成され、前記第二連結部材は、前記第一連結部材に連結可能であり且つ前記工具ホルダの前記内面に着脱可能に構成されており、前記コレットは、前記他方側に雌ねじ部を有し、前記第二連結部材は、前記一方側に設けられた雌ねじ部と、前記工具ホルダの内面に設けられた雌ねじ部にねじ止め可能な雄ねじ部と、を有し、前記第一連結部材は、前記コレットの前記雌ねじ部にねじ止め可能な第一雄ねじ部と、前記第二連結部材の前記雌ねじ部にねじ止め可能な第二雄ねじ部とを有し、前記第二連結部材の前記雄ねじ部のねじピッチと、前記第一連結部材の前記第二雄ねじ部のねじピッチとが異なるように構成されており、前記第二連結部材の回転操作により、前記第二連結部材の前記雄ねじ部のねじピッチと、前記第一連結部材の前記第二雄ねじ部のねじピッチとのピッチ差だけ前記第一連結部材を前記一方側に向けて移動させて前記コレットを前記工具ホルダの前記回転軸芯方向に沿って押すことにより、前記チャック部から前記切削工具を前記コレットと共に抜き出す点にある。
【0017】
本方法によれば、コレットに連結される連結部材が、回転軸芯方向の一方側に配置される第一連結部材と、回転軸芯方向の他方側に配置される第二連結部材と、を有し、第二連結部材の回転操作により、第二連結部材の雄ねじ部のねじピッチと、第一連結部材の第二雄ねじ部のねじピッチとのピッチ差だけ第一連結部材を回転軸芯方向の一方側に向けて移動させてコレットを回転軸芯方向に沿って押すことにより、チャック部から切削工具をコレットと共に抜き出す。したがって、二部材で構成された連結部材を有する工具ホルダにおいて、切削加工時等に切削工具の軸部が折損し、チャック部の開口側から切削工具を操作して切削工具を取り出すことが困難な場合でも、工具ホルダの他方側からの操作によってチャック部から切削工具を容易に取り出すことができる。また、工具ホルダのチャック部では切削工具がコレットに保持されるため、切削工具の折損時にコレットの外周側に位置するチャック部の内面は損傷し難い。また、チャック部から切削工具を取り出す際には、チャック部から切削工具がコレットと共に抜き出されるため、チャック部の内面は損傷し難い。したがって、切削加工時等に切削工具が折損した場合でも、工具ホルダはコレットのみを交換して継続使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態における工具を装着した状態の工具ホルダの断面図である。
【
図2】第1実施形態における工具ホルダ及び切削工具の分解斜視図である。
【
図3】嵌合部に挿入された突出部を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態における工具ホルダからの工具の取り出し動作を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態における工具を装着した状態の工具ホルダの断面図である。
【
図6】第2実施形態における工具ホルダ及び切削工具の分解斜視図である。
【
図7】第2実施形態における工具ホルダからの工具の取り出し動作を示す断面図である。
【
図8】第3実施形態における工具を装着した状態の工具ホルダの断面図である。
【
図9】第3実施形態における工具ホルダ及び切削工具の分解斜視図である。
【
図10】第3実施形態における工具ホルダからの工具の取り出し動作を示す断面図である。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施できる。
【0020】
〔第1実施形態〕
〔工具ホルダと切削工具〕
図1及び
図2に示されるように、工具ホルダ1は、工作機械(不図示)に嵌合状態で装着されるテーパ状の装着部11と、切削工具T(以下、「工具T」と略称する。)が挿入されるチャック部12と、を有したホルダ本体10を備える。工具ホルダ1は、チャック部12の外周面12Sに装着される締結リング5を備えており、チャック部12に挿入される工具Tを保持する工具保持構造を有する具体例である。
【0021】
工具ホルダ1は、回転軸芯X(以下、「軸芯X」と略称する。)を中心として全体が筒状に成形され、工作機械(不図示)に装着されることにより軸芯Xを中心に回転する。ホルダ本体10の内部には、チャック部12から装着部11に向けて軸芯Xを中心とするシリンダ状の内部空間13が形成されている。以下では、工具ホルダ1の軸芯X方向において、チャック部12の側をX1側(先端側、一方側の一例)と称し、装着部11の側をX2側(基端側、他方側の一例)と称する。
【0022】
工具Tは、シャンク部2と切削加工を行う刃部3とを有する。
図1に示されるように、工具Tは、シャンク部2がコレット30に挿入されて支持される。すなわち、工具保持構造としての工具ホルダ1にはコレット30が含まれる。工具Tのシャンク部2は、コレット30と共にチャック部12の内部空間13に挿入される。コレット30は、チャック部12に挿入されて保持される。なお、以下の説明では工具Tの回転中心も軸芯Xとして説明する。
【0023】
コレット30は、円筒状であって、内部空間13の内面に密嵌合する外周部30aと、小径の工具Tの外周に密接する内周部30bとを有する。コレット30には軸芯Xに沿って複数の割空間32がスリット状に形成されている。複数の割空間32の1つである割空間32aには、先端側に嵌合部材20の突出部22が通過可能な案内孔33が設けられ、案内孔33のX2側には嵌合部材20がコレット30の周方向に沿って移動可能な嵌合孔部Bが形成されている。
【0024】
工具ホルダ1では、工具Tのシャンク部2の外面の外嵌合部Aと、コレット30の嵌合孔部Bとに嵌合する嵌合部材20を用いることにより、工具Tの工具ホルダ1からの抜け出しを阻止すると共に、工具ホルダ1に対する工具Tの相対回転を阻止する機能を有している。
図1及び
図2に示されるように、嵌合部材20は、シャンク部2の外嵌合部Aに嵌め込まれるベース部21と、外方に突出する突出部22とを一体的に形成している。外嵌合部Aは、規格で決められており、工具Tのシャンク部2の外面の一部を平坦に切削した嵌合面により構成されている。
【0025】
コレット30を含む工具ホルダ1は、X1側からX2側を視たときに、切削加工時において反時計回りに駆動回転されるものを想定している。
図3は、コレット30を軸芯Xから径外方向を視たとき、すなわち、コレット30の内周部30bを視たときの嵌合孔部Bを示している。
図3に示されるように、コレット30に設けられる嵌合孔部Bは、コレット30に対してシャンク部2が相対回転する方向で嵌合部材20が当接する回転阻止面Bxと、コレット30に対してシャンク部2が抜け出す方向で嵌合部材20が当接する抜出阻止面Byとを備えている。なお、矢印Sは、工具ホルダの回転方向を示す。
【0026】
図1に示されるように、締結リング5の内周面5Sは、チャック部12の外周面12Sと平行姿勢に成形され、締結リング5の内周面5Sと、チャック部12の外周面12Sとの間には複数のニードルローラ6が配置されている。複数のニードルローラ6は、チャック部12の外周面12Sの外周において螺旋状となる軸芯上に配置され、締結リング5を所定方向に回転操作した場合には、チャック部12の外周面12Sに沿って自転しながら、軸芯Xを中心に公転する。これにより複数のニードルローラ6がチャック部12の外周面12Sに乗り上げてチャック部12に圧力を作用させ、内部空間13の縮径を実現する。
【0027】
また、締結リング5の端部の内周面5Sと、チャック部12の外周面12Sとの間にはシールを備えており、チャック部12の開口側の端部には、シールを保持するためのリングプレート8が取付られている。
【0028】
図1に示されるように、コレット30のX2側の端部には、軸芯X方向に沿って雌ねじ部35が形成されている。
図1及び
図2に示されるように、雌ねじ部35には軸芯X方向のコレット30の位置調節を行う連結部材40が取り付けられる。
【0029】
連結部材40は、軸芯X方向に沿って筒状に形成されており、軸芯X方向の中央側に設けられる大径部41と、軸芯X方向のX1側に設けられる第1小径部42と、軸芯X方向のX2側に設けられる第2小径部43とを有して構成されている。小径部42,43はいずれも外周部分が雄ねじ部である。具体的には、第1小径部42には、
図1の状態でX2側からX1側を視たときに(以下、「X1方向に向かって視たときに」という)、外周部に右ねじの第一雄ねじ部44が設けられ、第一雄ねじ部44はコレット30の雌ねじ部35にねじ止めする。すなわち、筒状の連結部材40は、コレット30に対して軸芯X方向のX2側に配置されてコレット30に連結される。第2小径部43には、
図1の状態でX1側からX2側を視たときに(以下、「X2方向に向かって視たときに」という)、外周部に右ねじの第二雄ねじ部45が設けられ、第二雄ねじ部45はホルダ本体10の内部空間13のX2側に設けられた雌ねじ部16にねじ止めする。
【0030】
本実施形態では、雌ねじ部16のX2側に、雌ねじ部16のねじ径(内径)よりも大径のねじ孔17が形成されており、ねじ孔17にクーラント通路部材(不図示)の一端側がねじ止めされて組み付けられる。
【0031】
本実施形態では、
図1に示されるように、連結部材40において、第一雄ねじ部44のねじ径(外径)W1が第二雄ねじ部45のねじ径(外径)W2よりも大きい。図示しないが、連結部材40は、ホルダ本体10の内部空間13に応じて、第二雄ねじ部45のねじ径(外径)W2が第一雄ねじ部44のねじ径(外径)W1よりも大きくてもよいし、第一雄ねじ部44のねじ径(外径)W1と第二雄ねじ部45のねじ径(外径)W2とが同じであってもよい。
【0032】
連結部材40は軸芯Xに沿う貫通孔46を有している。貫通孔46のX1側の端部には回転操作具R(例えばレンチ、
図4参照)の先端部が係合可能な孔部47(例えば六角孔)が形成されている。また、貫通孔46のX2側の端部には回転操作具Rの先端部が係合可能な孔部48(例えば六角孔)が形成されている。
【0033】
〔工具の装着形態〕
ホルダ本体10の内部空間13のX2側には、連結部材40を固定するための雌ねじ部16が設けられている。
【0034】
先ず、コレット30に連結部材40を取付ける。具体的には、コレット30の雌ねじ部35に連結部材40の小径部42(第一雄ねじ部44)をねじ止めさせる。第一雄ねじ部44は右ねじなので、コレット30に対して連結部材40を時計方向に回転させる。
【0035】
次に、ホルダ本体10の内部空間13に連結部材40が接続されたコレット30を組付ける。具体的には、第一雄ねじ部44に形成された孔部47に回転操作具R(
図4参照)等の治具を差し込み、ホルダ本体10の内面の雌ねじ部16に連結部材40の第二雄ねじ部45をねじ止めする。第二雄ねじ部45は右ねじなので、X2方向に向かって視たときに回転操作具Rを時計方向に回転させることにより、連結部材40が取付けられたコレット30は、ホルダ本体10に取り付けられる。
【0036】
次に、工具Tを工具ホルダ1に装着する。チャック部12の内部空間13に配置されたコレット30に付勢機構としてスプリング7を予め挿入しておき、工具Tのシャンク部2の外嵌合部Aに嵌合部材20を嵌合により位置合わせした状態で保持する。
【0037】
次に、嵌合部材20を支持した工具Tのシャンク部2をコレット30に挿入する。このとき、嵌合部材20の突出部22はコレット30の案内孔33に挿入して案内孔33に沿って移動する。こうして工具Tのシャンク部2がチャック部12の開口側からX2側に移動し、シャンク部2の内端がスプリング7に接触すると、スプリング7によって工具Tに対して押し出し方向に付勢力が作用する。
【0038】
次に、
図3に示されるように、工具Tを回転させ、嵌合部材20の突出部22を回転阻止面Bxとしてのコレット30の嵌合孔部Bの周方向の端面に接触させる。こうすることで、工具Tはコレット30に対して相対回転しない状態に維持される。また、この状態では、スプリング7の付勢力により突出部22の端部が抜出阻止面Byに接触する状態となる。このように、嵌合部材20が回転阻止面Bxに当接する方向に工具Tが回転した場合に、嵌合部材20の突出部22の端部を抜出阻止面Byに当接させることで工具ホルダ1からの意図しない工具Tの脱落を阻止できる。
【0039】
工具ホルダ1に対する工具Tのセッティングが完了した後に、締結リング5を所定方向に回転操作することで複数のニードルローラ6からチャック部12の外周面12Sに圧力が作用して内部空間13の縮径が図られる。この縮径により、チャック部12の内周面(内部空間13の内周面)にコレット30が圧着される状態になり、工具ホルダ1に工具Tが保持される。
【0040】
〔工具の取り出し方法1〕
工具Tが折損しておらず、チャック部12に対して締結リング5による縮径を解除した後に、工具Tの回転操作が可能な場合には、上述の装着形態に示した操作の逆の操作を順次実行する。これにより、工具Tを工具ホルダ1から取り出すことができる。
【0041】
〔工具の取り出し方法2〕
一方、工具Tが例えば切削加工時に折損した場合において残存する工具Tのコレット30からの突出長さが短い場合には、チャック部12に対して締結リング5による縮径を解除しても、工具Tを回転操作できないことがある。そこで、本実施形態では、工具ホルダ1は、ホルダ本体10の軸芯X方向のX2側からの操作によって連結部材40がX1方向に向けて移動してコレット30を軸芯X方向に沿って押すことにより、チャック部12から工具Tをコレット30及び連結部材40と共に抜き出し可能に構成されている。
【0042】
具体的には、締結リング5による縮径を解除した後に、
図4に示されるように、工具ホルダ1の軸芯X方向のX2側から回転操作具Rを挿入し、連結部材40の第二雄ねじ部45に形成された孔部48に回転操作具Rの端部を係合させて、X1方向に向かって視たときに、回転操作具Rを時計方向に回転操作して連結部材40を時計方向に回転させる。右ねじである第二雄ねじ部45は、X1方向に向かって視たときに時計方向に回転すると、ホルダ本体10に対する締め付けが緩められる。これにより、連結部材40がX1方向に移動する。この連結部材40のX1方向への移動によって連結部材40にねじ止めされたコレット30もX1方向に移動する。第二雄ねじ部45のホルダ本体10へのねじ止めが外れると、チャック部12から工具Tをコレット30及び連結部材40と共に抜き出すことができる。その後、チャック部12から抜き出されたコレット30のX1側の端部を、各種治具を用いて回転操作等することで、工具Tをコレット30から離脱させることができる。
【0043】
したがって、切削加工時等に工具Tの軸部が折損し、チャック部12のX1側(開口側)から工具Tを操作して工具Tを取り出すことが困難な場合でも、工具ホルダ1のX2側(他方側)からの操作によってチャック部12から工具Tを容易に取り出すことができる。また、工具ホルダ1のチャック部12では工具Tがコレット30に保持されるため、工具Tの折損時にコレット30の外周側に位置するチャック部12の内面は損傷し難い。また、チャック部12から工具Tを取り出す際には、チャック部12から工具Tがコレット30と共に抜き出されるため、チャック部12の内面は損傷し難い。したがって、切削加工時等に工具Tが折損した場合でも、工具ホルダ1はコレット30のみを交換して継続使用することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図5~
図7に示されるように、第2実施形態では、連結部材40が第一連結部材50及び第二連結部材60によって構成されている点で、第1実施形態とは異なる。連結部材40以外の他の構成については、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0045】
第一連結部材50及び第二連結部材60は、いずれも軸芯Xに沿って筒状に形成されている。第一連結部材50及び第二連結部材60のうち、第一連結部材50が工具ホルダ1のX1側に配置され、第二連結部材60が工具ホルダ1のX2側に配置される。
【0046】
第一連結部材50は、軸芯X方向の中央側に設けられる大径部51と、軸芯X方向のX1側に設けられる第1小径部52と、軸芯X方向のX2側に設けられる第2小径部53とを有して構成されている。小径部52,53はいずれも外周部分が雄ねじ部である。具体的には、第1小径部52には、X1方向に向かって視たときに、外周部に右ねじの第一雄ねじ部54が設けられ、第一雄ねじ部54はコレット30の雌ねじ部35にねじ止めする。すなわち、筒状の第一連結部材50は、コレット30に対して軸芯X方向のX2側に配置されてコレット30に連結される。第2小径部53には、X2方向に向かって視たときに、外周部に右ねじの第二雄ねじ部55が設けられ、後述の第二連結部材60に設けられる雌ねじ部64にねじ止めする。
【0047】
第二連結部材60は、軸芯X方向のX2側に設けられる大径部61と、軸芯X方向のX1側に設けられる小径部62とを有して構成されている。大径部61には、X1方向に向かって視たときに、外周部に右ねじの雄ねじ部63が設けられ、雄ねじ部63はホルダ本体10の内部空間13に設けられた雌ねじ部16にねじ止めする。小径部62には内周部に雌ねじ部64が設けられ、雌ねじ部64は第一連結部材50の第二雄ねじ部55にねじ止めする。本実施形態では、
図5に示されるように、第二連結部材60の雄ねじ部63のねじ径(外径)W3は、第一連結部材50の第一雄ねじ部54のねじ径(外径)W1及び第二雄ねじ部55のねじ径(外径)W2よりも大きい。大径部61のX2側の端部には、回転操作具R(
図7参照)による回転操作用の孔部65(例えば六角孔)が形成されている。
【0048】
第一連結部材50は軸芯Xに沿う貫通孔56を有している。貫通孔56はX1側の第1貫通孔56aとX2側の第2貫通孔56bとを有する。第1貫通孔56aは第2貫通孔56bよりも大径に形成されている。第1貫通孔56aのX1側の端部には回転操作具R(例えば六角レンチ)の先端部が係合可能な孔部57(例えば六角孔)が形成されている。第2貫通孔56bのX2側の端部においても、回転操作具R(例えば六角レンチ)の先端部が係合可能な孔部58(例えば六角孔)が形成されている。
【0049】
〔コレット及び連結部材の装着形態〕
コレット30に対する第一連結部材50の取付けと、ホルダ本体10の内面に対する第二連結部材60の組付けとを行う。コレット30に対する第一連結部材50の取付けは、コレット30の雌ねじ部35に第一連結部材50の小径部52(第一雄ねじ部54)をねじ止めさせて行う。ホルダ本体10の内面に対する第二連結部材60の組付けは、第二連結部材60をホルダ本体10に対してX2側から挿入し、大径部61(雄ねじ部63)を工具ホルダ1の内面の雌ねじ部16にねじ止めする。
【0050】
次に、ホルダ本体10の内部空間13において、第一連結部材50が接続されたコレット30を第二連結部材60に組付ける。具体的には、第二連結部材60の雌ねじ部64に第一連結部材50の第二雄ねじ部55をねじ止めする。こうして、工具ホルダ1の内部空間13に、コレット30及び連結部材40(第一連結部材50及び第二連結部材60)が一体的に装着される。以降の工具ホルダ1に対する工具Tの取付け形態は、第1実施形態と同じである。
【0051】
本実施形態によれば、連結部材40が第一連結部材50及び第二連結部材60によって構成されるので、コレット30をホルダ本体10に組付ける際に、連結部材40によってコレット30のX方向の位置調整を容易に行うことができる。また、第一連結部材50及び第二連結部材60をそれぞれ複数用意することで、工具ホルダ1の多様な内面形状に合う連結部材40を容易に構成することもできる。
【0052】
また、本実施形態によれば、コレット30が雌ねじ部35を有し、第一連結部材50がX方向の両側に雄ねじ部54,55を夫々有し、第二連結部材60がX方向の両側に雌ねじ部64及び雄ねじ部63を有することで、連結部材40は、コレット30に第一連結部材50を確実に連結しつつ、第二連結部材60をホルダ本体10の内面に確実に組付けることができる。また、第二連結部材60の雄ねじ部63のねじ径(外径)W3は、第一連結部材50の両雄ねじ部54,55のねじ径(外径)W1,W2よりも大きいことで、工具ホルダ1の内面に対して連結部材40を安定的に固定できる。これにより、工具ホルダ1において、連結部材40に連結されたコレット30は、軸芯Xに沿う姿勢に安定的に保持できる。
【0053】
〔工具の取り出し方法1〕
本実施形態においても、工具Tが折損しておらず、チャック部12に対して締結リング5による縮径が解除されたときに、工具Tの回転操作が可能な場合には、上述の装着形態に示した操作の逆の操作を順次実行する。これにより、工具Tを工具ホルダ1から取り出すことができる。
【0054】
〔工具の取り出し方法2〕
一方、工具Tが例えば切削加工時に折損した場合において残存する工具Tのコレット30からの突出長さが短い場合には、以下に示す方法を用いることで工具Tを工具ホルダ1から取り出すことができる。本実施形態では、第二連結部材60の右ねじの雄ねじ部63と、第一連結部材50の右ねじの第二雄ねじ部55とが、異なるねじピッチを有して構成されている。具体的には、
図5及び
図7に示されるように、第二連結部材60の雄ねじ部63のねじピッチP2が、第一連結部材の第二雄ねじ部55のねじピッチP1よりも大きくなるように構成されている。仮に、ねじピッチP1とねじピッチP2とが同じ場合には、X1方向に向かって視たときに、第二連結部材60を右回り(時計回り)に回転させた際に、第一連結部材50と第二連結部材60とは相対回転するので、第二連結部材60のX1側への移動距離と第一連結部材50のX2側への移動距離が同じになる。したがって、第二連結部材60を右回り(時計回り)に回転させても、第一連結部材50がX1側に向けて移動しない状態が生じることがある。
【0055】
一方、本実施形態では、締結リング5による縮径を解除した後に、
図7に示されるように、例えば回転操作具Rを用いて、X1方向に向かって視たときに、第二連結部材60を右回り(時計回り)に回転させると、第二連結部材60が一回転する度に、第二連結部材60がX1側に向けて移動する距離が、第一連結部材50が第二雄ねじ部55と雌ねじ部64とのねじ止めによりX2側に向けて移動する距離よりも大きくなる。したがって、第二連結部材60を回転させることで、第一連結部材50はX1側に移動させることができる。すなわち、第二連結部材60の回転操作により、第二連結部材60の雄ねじ部63のねじピッチP2と、第一連結部材50の第二雄ねじ部55のねじピッチP1とのピッチ差だけ第一連結部材50をX1側に向けて移動させてコレット30を軸芯X方向に沿って押すことにより、チャック部12から工具Tをコレット30と共に抜き出す。本実施形態では、第二連結部材60は、右回り(時計回り)に一回転する度に、ねじピッチP1とねじピッチP2との差分(ピッチ差)ずつコレット30及び第一連結部材50が工具ホルダ1のX1側に押し出される。
【0056】
具体例として、第二雄ねじ部55のねじピッチP1が1.00mmであり、雄ねじ部63のねじピッチP2が1.25mmである場合を示す。この場合には、第二連結部材60が右回り(時計回り)に一回転する度に、ねじピッチP1とねじピッチP2の差分(ピッチ差)である、0,25mmずつ第一連結部材50がコレット30に向けて移動し、工具Tがコレット30及び第一連結部材50と共に工具ホルダ1のX1側に押し出される。これにより、工具ホルダ1からの工具Tの取り出し操作を効率よく行うことができる。
【0057】
工具ホルダ1からの工具Tの具体的な取り出しは、第二連結部材60を一回転または数回転させて第一連結部材50をX1側に移動させ、その後に第一連結部材50を回転させることで、工具T、コレット30及び第一連結部材50をホルダ本体10から離脱させることができる。これは、工具ホルダ1に取付けられた工具Tが折損した際に、ホルダ本体10に対するコレット30の密着度合が変化することで、第一連結部材50の孔部58に対する回転操作具Rの回転操作が困難な場合に有効な手法である。
【0058】
なお、第二連結部材60を操作せず、若しくは、第二連結部材60をX1側に向けて最大限回転操作した後に、第1実施形態と同様に、第一連結部材50の孔部58を回転操作具Rで回転操作することにより、工具T、コレット30及び第一連結部材50をホルダ本体10から離脱させてもよい。
【0059】
〔第3実施形態〕
図8~
図10に示されるように、第3実施形態においても、第2実施形態と同じく、連結部材40が2つの連結部材(第一連結部材50及び第二連結部材70)によって構成されいている。ただし、第3実施形態の第二連結部材70は、第2実施形態の第二連結部材60とは構成が異なる。連結部材40以外の他の構成については、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。また、第一連結部材50については、第2実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0060】
第二連結部材70は、軸芯X方向のX1側に設けられる大径部71と、軸芯X方向のX2側に設けられる小径部72とを有して構成されている。大径部71には、X1方向に向かって視たときに、外周部に右ねじである雄ねじ部73が設けられ、内周部に雌ねじ部74が設けられる。雄ねじ部73はホルダ本体10の内部空間13のX2側に設けられた雌ねじ部16にねじ止めする。雌ねじ部74は、第一連結部材50の第二雄ねじ部55にねじ止めされる。本実施形態では、
図8に示されるように、第二連結部材70の雄ねじ部73のねじ径(外径)W4は、第一連結部材50の第一雄ねじ部54のねじ径(外径)W1及び第二雄ねじ部55のねじ径(外径)W2よりも大きい。小径部72のX2側の端部には、回転操作具R(
図10参照)による回転操作用の孔部75(例えば六角孔)が形成されている。
【0061】
〔コレット及び連結部材の装着形態〕
コレット30に対する第一連結部材50の取付けと、ホルダ本体10の内部空間13(内面)に対する第二連結部材70の組付けとを行う。コレット30に対する第一連結部材50の取付けは、第2実施形態と同じである。ホルダ本体10の内面に対する第二連結部材70の組付けは、第二連結部材70をホルダ本体10に対して基端側から挿入し、大径部71(雄ねじ部73)をホルダ本体10の内部空間13のX2側に形成された雌ねじ部16にねじ止めする。
【0062】
次に、ホルダ本体10の内部空間13において、第一連結部材50が接続されたコレット30を第二連結部材70に組付ける。具体的には、第二連結部材70の雌ねじ部74に第一連結部材50の第二雄ねじ部55をねじ止めする。こうして、ホルダ本体10の内部空間13に、コレット30及び連結部材40(第一連結部材50及び第二連結部材70)が一体的に装着される。以降の工具ホルダ1に対する工具Tの取付け形態は、第1実施形態と同じである。
【0063】
〔工具の取り出し方法1〕
第3実施形態においても、工具Tが折損しておらず、チャック部12に対して締結リング5による縮径が解除されたときに、工具Tの回転操作が可能な場合には、上述の装着形態に示した操作の逆の操作を順次実行する。これにより、工具Tを工具ホルダ1から取り出すことができる。
【0064】
〔工具の取り出し方法2〕
一方、工具Tが例えば切削加工時に折損した場合において残存する工具Tのコレット30からの突出長さが短い場合には、以下に示す方法を用いることで工具Tを工具ホルダ1から取り出すことができる。本実施形態でも、第2実施形態と同じく、第二連結部材70の雄ねじ部73と、第一連結部材50の第二雄ねじ部55とが、異なるねじピッチを有して構成されている。但し、本実施形態は、ねじピッチ同士の大小関係が第2実施形態とは異なる。具体的には、
図8及び
図10に示されるように、第二連結部材70の雄ねじ部73のねじピッチP3が、第一連結部材の第二雄ねじ部55のねじピッチP1よりも小さくなるように構成されている。この場合は、工具ホルダ1のX2側から第二連結部材70が工具ホルダ1のX2側に移動するように回転させる。
【0065】
具体的には、締結リング5による縮径を解除した後に、
図10に示されるように、例えば回転操作具Rを用いて第二連結部材70を、X1方向に向かって視たときに左回り(反時計回り)に回転させる。こうすると、第二連結部材70が一回転した際に、第一連結部材50のX1側への移動距離が第二連結部材70のX2側への移動距離よりも大きくなる。したがって、第二連結部材70を回転させることで、第一連結部材50をX1側に移動させることができる。すなわち、第二連結部材70の回転操作により、第二連結部材70の雄ねじ部73のねじピッチP3と、第一連結部材50の第二雄ねじ部55のねじピッチP1とのピッチ差だけ第一連結部材50をX1側に向けて移動させてコレット30を軸芯X方向に沿って押すことにより、チャック部12から工具Tをコレット30と共に抜き出す。本実施形態では、第二連結部材70を左回り(反時計回り)一回転させる度に、ねじピッチP1とねじピッチP3との差分ずつコレット30及び第一連結部材50が押し出される。
【0066】
具体例として、第二雄ねじ部55のねじピッチP1が1.25mmであり、雄ねじ部73のねじピッチP3が1.00mmである場合を示す。この場合は、第二連結部材70が左回り(反時計回り)に一回転する度に、ねじピッチP1とねじピッチP3の差分である、0,25mmずつ第一連結部材50がコレット30に向けて移動し、工具Tがコレット30共に工具ホルダ1のX1側に押し出される。これにより、工具ホルダ1からの工具Tの取り出し操作を効率よく行うことができる。
【0067】
本実施形態においても、工具ホルダ1からの工具Tの具体的な取り出しは、第二連結部材70を一回転または数回転させて第一連結部材50をX1側に移動させ、その後に第一連結部材50を回転させることで、工具T、コレット30及び第一連結部材50をホルダ本体10から離脱させることができる。
【0068】
なお、本実施形態においても、第二連結部材70を操作せず、若しくは、第二連結部材70をX2側に向けて最大限操作した後に、第1実施形態と同様に、第一連結部材50の孔部58を回転操作具Rで回転操作することにより、工具T、コレット30及び第一連結部材50をホルダ本体10から離脱させてもよい。
【0069】
〔他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、工具ホルダ1に対して工具Tを回り止め及び抜け止めするための構成として、工具Tに設置された嵌合部材20とコレット30の嵌合孔部Bとを用いる例を示したが、他の構成を用いてもよい。
【0070】
(2)上記の第2実施形態では、第二連結部材60の雄ねじ部63のねじピッチP2が、第一連結部材の第二雄ねじ部55のねじピッチP1よりも大きい例を示した。これに代えて、連結部材40は、第二連結部材60の雄ねじ部63のねじピッチP2と、第一連結部材50の第二雄ねじ部55のねじピッチP1とが同じであってもよい。ただし、この場合は、上述の通り、第一連結部材50のX1側への移動は、第一連結部材50が第二連結部材60に対して回転しない状態になった後に、第一連結部材50を回転操作することにより可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、工具保持構造および工具取り出し方法に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 :工具ホルダ
2 :シャンク部
12 :チャック部
13 :内部空間
16 :雌ねじ部
30 :コレット
30a :外周部
35 :雌ねじ部
40 :連結部材
44 :第一雄ねじ部
45 :第二雄ねじ部
50 :第一連結部材
54 :第一雄ねじ部
55 :第二雄ねじ部
60,70:第二連結部材
63,73:雄ねじ部
64,74:雌ねじ部
P1,P2,P3:ねじピッチ
T :工具(切削工具)
W1,W2,W3,W4:ねじ径
X :軸芯(回転軸芯)