(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151912
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】遮音床構造
(51)【国際特許分類】
E04F 15/20 20060101AFI20251002BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
E04F15/20
E04B1/86 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053543
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】399024302
【氏名又は名称】株式会社細田工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】冨永 大祐
(72)【発明者】
【氏名】森 清輝
(72)【発明者】
【氏名】山路 繭子
【テーマコード(参考)】
2E001
2E220
【Fターム(参考)】
2E001DF04
2E001DF07
2E001FA11
2E001GA12
2E001GA24
2E001HA32
2E220AA19
2E220AB06
2E220BA19
2E220BB03
2E220DA19
2E220EA03
2E220FA13
2E220GB22X
2E220GB35X
2E220GB40X
(57)【要約】
【課題】施工が容易な遮音床構造を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の遮音床構造は、吸音素材で構成される吸音層、及び吸音層の上に配置され且つ吸音層が接合されている板状の吸音層保持層を有する接合層と、接合層より上側に配置され且つ下地材によって構成される上層と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音素材によって構成される吸音層、及び前記吸音層の上に配置され且つ該吸音層が接合されている板状の吸音層保持層を有する接合層と、
前記接合層より上側に配置され且つ下地材によって構成される上層と、を備える、遮音床構造。
【請求項2】
前記接合層と前記上層との間に配置され且つ制振シートによって構成される制振シート層を備える、請求項1に記載の遮音床構造。
【請求項3】
前記吸音層保持層と前記吸音層とは、接着によって接合されている、請求項1又は2に記載の遮音床構造。
【請求項4】
前記吸音層保持層は、木質系セメント板であり、
前記吸音層は、ロックウールを結合剤により板状にしたロックウール吸音板である、請求項3に記載の遮音床構造。
【請求項5】
前記上層を前記接合層に固定する固定部材を備え、
前記固定部材は、前記接合層に対して非貫通状態で刺し込まれている、請求項4に記載の遮音床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物における遮音床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物において上階床での衝撃音が階下へ伝わるのを軽減させる床構造がしられている(特許文献1参照)。この床構造は、グラスウールやロックウール等によって構成され且つ構造床の上に配置される吸音層と、板状の部材であり且つ吸音層の上に配置される床パネル層と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この床構造の施工では、柔らかいグラスウールを構造床上に敷き詰めた後、この敷き詰められたグラスウールの上に板状の床パネル層を配置するため、工数が多く、煩雑であった。
【0005】
そこで、本発明は、施工が容易な遮音床構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の遮音床構造は、
吸音素材によって構成される吸音層、及び前記吸音層の上に配置され且つ該吸音層が接合されている板状の吸音層保持層を有する接合層と、
前記接合層より上側に配置され且つ下地材によって構成される上層と、を備える。
【0007】
かかる構成によれば、吸音層が吸音層保持層に接合されているため、施工時において、吸音層と該吸音層の上に配置される板状の部材(吸音層保持層)とを一度に敷設することができ、施工が容易になる。
【0008】
また、前記遮音床構造は、前記接合層と前記上層との間に配置され且つ制振シートによって構成される制振シート層を備えてもよい。
【0009】
このように、接合層と上層との間に制振シート層が配置されることで、上階床から階下への伝わる音をより抑えることができる、即ち、遮音性がより向上する。
【0010】
また、前記遮音床構造では、
前記吸音層保持層と前記吸音層とは、接着によって接合されていてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、吸音層が十分な強度で吸音層保持層に保持され、運搬時や敷設時の吸音層の吸音層保持層からの剥離等が防がれる。
【0012】
この場合、例えば、
前記吸音層保持層は、木質系セメント板であり、
前記吸音層は、ロックウールを結合剤により板状にしたロックウール吸音板であってもよい。
【0013】
また、前記遮音床構造は、
前記上層を前記接合層に固定する固定部材を備え、
前記固定部材は、前記接合層に対して非貫通状態で刺し込まれていてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、接合層より下側の構造床や部材等への固定部材の当接が防がれ、これにより、固定部材の当接に起因する前記構造床や部材等の損傷を防ぎつつ上層を接合層に固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上より、本発明によれば、施工が容易な遮音床構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る遮音床構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図2を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態に係る遮音床構造は、例えば、二階建て以上の建物において各階の構造床上に形成されている。
【0019】
具体的には、遮音床構造1は、
図1~
図2に示すように、構造床Rから上方に向けて順に積層される、接合層2と、制振シート層3と、上層4と、表層5と、を備える。また、遮音床構造1は、上層4と制振シート層3とを接合層2に固定する少なくとも一つの固定部材6と、を備える。
【0020】
接合層2は、構造床Rの上に配置される。この接合層2は、複数層(本実施形態の例では二層)によって構成される部材であり、本実施形態の接合層2は、吸音層21と吸音層保持層22とによって構成された部材である。これら吸音層21と吸音層保持層22とは、接合されている。
【0021】
本実施形態の接合層2では、吸音層21と吸音層保持層22とは、接着によって接合されている。即ち、吸音層21と吸音層保持層22とは、接着剤によって構成される接着層を介して接合されている。また、吸音層21と吸音層保持層22とは、対向している面の全域で接着剤によって接着されている。
【0022】
また、本実施形態の接合層2では、吸音層保持層22は、吸音層21より厚い、即ち、積層方向における吸音層保持層22の厚さ寸法は、吸音層21の厚さ寸法より大きい。また、遮音床構造1において、吸音層保持層22は、制振シート層3、上層4、及び表層5のいずれよりも厚い。
【0023】
吸音層21は、吸音素材によって構成されている。例えば、吸音層21は、繊維状材料を樹脂の結合剤により板状にした部材によって構成されている。本実施形態の吸音層21は、ロックウールによって構成されており、作業員等が表層5上を歩いたときの沈み込みを抑制できる密度を持っている。本実施形態の吸音層21の厚さは、5~25mmである。尚、吸音層21は、ロックウールに限定されず、グラスウールやポリエステルウール等の吸音性能を有する部材によって構成されていればよい。
【0024】
吸音層保持層22は、吸音層21の上に配置され且つ該吸音層21が接合されている板状の部材である。この吸音層保持層22は、上層4よりも密度及び剛性の高い部材である。本実施形態の吸音層保持層22は、切断等の加工性が高い木質系セメント板(JISA5404)によって構成されている。本実施形態の吸音層保持層22の厚さは、15~30mmである。尚、吸音層保持層22は、木質系セメント板に限定されず、ALC、押出し成型セメント板等の吸音層21より剛性の高い板状の部材によって構成されていればよい。
【0025】
制振シート層3は、接合層2の上に配置される。この制振シート層3は、所定の制振性能を有する制振シートによって構成される。本実施形態の制振シート層3は、アスファルト系制振シートによって構成されている。本実施形態の制振シート層3の厚さは、2~12mmである。尚、制振シート層3は、アスファルト系制振シートに限定されず、樹脂系制振シートやゴム系制振シート等によって構成されていてもよい。
【0026】
上層4は、制振シート層3の上に配置される。この上層4は、合板によって構成される。本実施形態の上層4の厚さは、6~15mmである。尚、上層4は、表層5を構成する部材を釘、ビス又は接着剤等で固定できる部材であればよく、例えば、パーチクルボード板等であってもよい。
【0027】
表層5は、上層4の上に配置される。この表層5は、フローリングやタイル等の仕上げ材によって構成される。本実施形態の表層5は、接着剤や釘によって上層4に接着や接合されている。本実施形態の表層5の厚さは、5~15mmである。尚、表層5は、遮音フローリング、畳、カーペット、石膏ボードやセメント板等のボード類等によって構成されていてもよい。
【0028】
固定部材6は、制振シート層3と上層4とを接合層2に固定する部材である。この固定部材6は、上層4と制振シート層3とを下方に向けて貫通した状態で、吸音層保持層22を貫通しない位置まで該吸音層保持層22に挿入(本実施形態の例では、螺入)されている。尚、固定部材6は、接合層2を貫通していなければよく、吸音層21まで挿入されていてもよい。
【0029】
固定部材6は、接合層2と制振シート層3と上層4とをそれぞれ一体的に固定できる構成であれば、種々の部材を選択可能である。本実施形態の固定部材6は、ビスである。尚、固定部材6は、釘、タッカー等であってもよい。
【0030】
次に、遮音床構造1の施工方法について説明する。本実施形態の遮音床構造の施工方法では、接合層形成工程と、制振シート層形成工程と、上層形成工程と、固定工程と、表層形成工程と、が順に行われる。
【0031】
接合層形成工程では、吸音層21と吸音層保持層22とが接合されている部材が、吸音層21を下向きにして構造床Rの上に配置されることで接合層2が形成される。
【0032】
制振シート層形成工程では、接合層2の上にアスファルト系制振シートが配置(積層)されることによって制振シート層3が形成される。
【0033】
上層形成工程では、制振シート層3の上に合板が配置(積層)されることによって上層4が形成される。
【0034】
固定工程では、上層4から接合層2に向けてビス(固定部材)6が打ち込まれる(ねじ込まれる)ことで、制振シート層3と上層4とが接合層2に固定される。このとき、ビス(固定部材)6の先端が吸音層保持層22を貫通して吸音層21に達しないように、各ビス(固定部材)6が打ち込まれる。
【0035】
表層形成工程では、上層4の上に仕上げ材が張り付けられることによって表層5が形成される。これにより、構造床Rの上に、床表面(表層5の表面)の振動から構造床Rに伝わる振動が吸音層21によって緩和される浮き床構造としての遮音床構造1が形成される。
【0036】
尚、この遮音床構造1の施工方法において、制振シート層3及び上層4が固定部材によって接合層2に固定されるときに、各層の間に接着剤が塗布されていてもよい。
【0037】
以上の遮音床構造1は、吸音素材によって構成される吸音層21、及び吸音層21の上に配置され且つ該吸音層21が接合されている板状の吸音層保持層22を有する接合層2と、接合層2より上側に配置され且つ下地材によって構成される上層4と、を備える。このように、吸音層21が吸音層保持層22に接合されているため、施工時において、吸音層21と該吸音層21の上に配置される板状の部材(吸音層保持層)22とを一度に敷設することができ、施工が容易になる。即ち、吸音層21と吸音層保持層22とが接合された部材を敷設して接合層2を構成することで、吸音層21のみを敷設する工程が省略でき、作業時間を短縮することができる。更に換言すると、板状の部材(吸音層保持層)22を敷設することと同じ作業工数で、吸音層21を用いた浮き床構造を構築することができる。
【0038】
また、吸音層21と吸音層保持層22とが一体となって(接合されて)接合層2を構成していることで、吸音層21と吸音層保持層22とを一体として運搬、切断等の加工、構造床R上への敷設等を行うことができるため、遮音床構造1の施工のための作業が容易になる。
【0039】
また、ロックウール等は軽く柔らかい材料であるため、ロックウールによって構成される吸音層に作業者等が乗ると吸音層に足形等の部分的な凹み等が生じるため、吸音層を構成する部材と、吸音層の上に積層される板状の部材とを別々に敷設する場合、吸音層の上に板状の部材を敷設する際に、作業者等が吸音層に乗ることができず、作業手順が煩雑になる。しかし、上記構成のように、吸音層21と吸音層保持層22とを一体として敷設できるようにすることで、工数を抑え且つ敷設作業が容易になる。
【0040】
また、本実施形態の遮音床構造1は、接合層2と上層4との間に配置され且つ制振シートによって構成される制振シート層3を備えている。
【0041】
このように、接合層2と上層4との間に制振シート層3が配置されることで、上階床から階下への伝わる音をより抑えることができる、即ち、遮音性がより向上する。
【0042】
また、本実施形態の遮音床構造1では、吸音層保持層22と吸音層21とは、接着によって接合されている。このため、吸音層21が十分な強度で吸音層保持層22に保持され、運搬時や敷設時の吸音層21の吸音層保持層22からの剥離等が防がれる。
【0043】
また、本実施形態の遮音床構造1は、上層4を接合層2に固定する固定部材6を備え、固定部材6は、接合層2に対して非貫通状態で刺し込まれている(挿入されている)。
【0044】
この構成によれば、接合層2より下側の構造床Rや部材等への固定部材6の当接が防がれ、これにより、固定部材6の当接に起因する構造床Rや部材等の損傷を防ぎつつ上層4を接合層2に固定することができる。また、接合層2のうち少なくとも吸音層21を、固定部材6が貫通していなければ、吸音層21による吸音機能を阻害しないので好適である。
【0045】
尚、本発明の遮音床構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0046】
また、上記実施形態の接合層2では、吸音層21と吸音層保持層22とは、対向面の全域で接着(接合)されているが、この構成に限定されない。吸音層21と吸音層保持層22とは、部分的に接合されていてもよい。また、吸音層21と吸音層保持層22との接合は接着に限定されず、例えば、ピンや両面テープ等によって接合されていてもよい。即ち、接合層2(接合層2を構成する部材)の運搬時や加工(切断等)、敷設時等において吸音層21が吸音層保持層22から外れないように接合されていれば、吸音層21と吸音層保持層22との具体的な接合方法、接合部材は限定されない。
【0047】
また、上記実施形態の接合層2では、吸音層保持層22が吸音層21より厚いが、この構成に限定されない。吸音層保持層が吸音層21より薄くてもよく、吸音層21と同じ厚さでもよい。
【0048】
また、上記実施形態の遮音床構造1は、接合層2と上層4との間に制振シート層3が配置されているが、この構成に限定されない。遮音床構造1は、接合層2と上層4との間に制振シート層3の無い構成であってもよい。また、遮音床構造1は、表層5の無い構成であってもよい。これらの構成によっても、施工時において、吸音層21と該吸音層21の上に配置される板状の部材(吸音層保持層)22とを一度に敷設することができ、施工が容易になる。
【符号の説明】
【0049】
1…遮音床構造、2…接合層、21…吸音層、22…吸音層保持層、3…制振シート層、4…上層、5…表層、6…固定部材、R…構造床