(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152014
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】消音器
(51)【国際特許分類】
F01N 1/00 20060101AFI20251002BHJP
F01N 1/02 20060101ALI20251002BHJP
F01N 1/08 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
F01N1/00 A
F01N1/02 K
F01N1/02 E
F01N1/08 H
F01N1/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053705
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 暢仁
(72)【発明者】
【氏名】清水 正道
(72)【発明者】
【氏名】黒田 峻史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健太
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA01
3G004CA01
3G004CA06
3G004CA13
3G004DA08
3G004DA09
3G004DA14
3G004FA01
3G004FA07
(57)【要約】
【課題】気流音の発生を抑えつつ、気柱共鳴音の抑制を可能とする。
【解決手段】消音器10のマフラーパイプ(24、26、28)は、本体部20の内部に開口して音響回路の端部を構成する一端部(26A、24A)と、マフラーパイプ(24、26、28)の長さ方向Nに分散して配置される複数の連通孔72で構成され、周面(26C)に設けられて一端部(26A、24A)を経ずに流入する排気ガスGの流れを許容する連通部70と、を有する。連通部70は、一端部(26A、24A)と排出口30との間の通流経路74の全長Lのうち排気ガスGの流れにおける上流側の1/2の範囲のみに配置される。連通部70が配置された位置は、通流経路74に二つの腹100Bが形成される二次共鳴波100の腹100Bの位置を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消音器であって、
本体部と、
前記本体部に導入される排気ガスを導くインレットパイプと、
少なくとも一つのパイプを含んで構成され、前記本体部内の排気ガスを前記本体部外に開口する排出口から排出するとともに音響回路を構成するマフラーパイプと、
を備え、
前記マフラーパイプは、
前記本体部の内部に開口して前記音響回路の端部を構成する一端部と、
前記マフラーパイプの長さ方向に分散して配置される複数の連通孔で構成され、周面に設けられて前記一端部を経ずに流入する排気ガスの流れを許容する連通部と、
を有し、
前記連通部は、前記一端部と前記排出口との間の通流経路の全長のうち排気ガスの流れにおける上流側の1/2の範囲のみに配置され、
前記連通部が配置された位置は、前記通流経路に二つの腹が形成される二次共鳴波の腹の位置を含む、
消音器。
【請求項2】
請求項1に記載の消音器であって、
前記連通部は、前記二次共鳴波の腹の位置を境とする前記長さ方向の一方側から他方側に亘る範囲であって、かつ、前記二次共鳴波の節を含まない位置に形成される、
消音器。
【請求項3】
請求項2に記載の消音器であって、
前記連通孔は、前記通流経路に三つの腹が形成される三次共鳴波の最上流に形成される腹の位置を更に含むように配置される、
消音器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の消音器であって、
前記連通孔は、前記マフラーパイプの周方向に分散して配置される、
消音器。
【請求項5】
請求項4に記載の消音器であって、
前記連通孔は、前記マフラーパイプの周面に螺旋状に配置される、
消音器。
【請求項6】
請求項5に記載の消音器であって、
前記連通部において隣接する前記連通孔どうしの配置間隔は均一である、
消音器。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の消音器であって、
前記インレットパイプは、前記本体部内に開口する導入口を有し、
前記導入口は、前記連通部と対向しない位置に配置される、
消音器。
【請求項8】
請求項7の記載の消音器であって、
前記本体部は、排気ガスの通過を許容する貫通穴を有するバッフルプレートによって仕切られる複数の室を有し、
前記導入口は、前記連通部が位置する室と前記貫通穴を介して連通しており前記連通部が位置しない室に配置される、
消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消音器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジン用マフラが開示されている。エンジン用マフラは、マフラ本体に導入された排気ガスを排出パイプの一端から他端へ通流させて排出する。また、マフラ本体の膨張室に導入された排気ガスは、排出パイプの側面に形成された貫通小孔を介して排出パイプに導入され排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエンジン用マフラにおいて、排出パイプの貫通小孔は、排出パイプで生ずる気柱共鳴音を低減させる効果を有する。
【0005】
この貫通小孔は、形成範囲が狭いと目的とする気柱共鳴音を低減することができない場合が生ずる。一方、貫通小孔の形成範囲を広げると貫通小孔の数が増大し、排出パイプ内で発生する気流音が大きくなる虞がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、気流音の発生を抑えつつ、気柱共鳴音の抑制を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、消音器は、本体部と、前記本体部に導入される排気ガスを導くインレットパイプと、少なくとも一つのパイプを含んで構成され、前記本体部内の排気ガスを前記本体部外に開口する排出口から排出するとともに音響回路を構成するマフラーパイプと、を備え、前記マフラーパイプは、前記本体部の内部に開口して前記音響回路の端部を構成する一端部と、前記マフラーパイプの長さ方向に分散して配置される複数の連通孔で構成され、周面に設けられて前記一端部を経ずに流入する排気ガスの流れを許容する連通部と、を有し、前記連通部は、前記一端部と前記排出口との間の通流経路の全長のうち排気ガスの流れにおける上流側の1/2の範囲のみに配置され、前記連通部が配置された位置は、前記通流経路に二つの腹が形成される二次共鳴波の腹の位置を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記態様において、マフラーパイプの周面には、排気ガスの流入を許容する連通部が設けられている。連通部は、通流経路の全長のうち排気ガスの流れにおける上流側の1/2の範囲のみに形成され、当該連通部は、通流経路に二つの腹が形成される二次共鳴波の腹の位置を含む箇所に配置される。
【0009】
このため、消音器は、通流経路で生ずる共鳴波の腹の位置と異なる箇所に連通部が形成される場合と比較して、通流経路で生ずる二次共鳴波の気柱共鳴音を効率的に抑制することが可能となる。
【0010】
また、消音器は、通流経路で生ずる共鳴波の腹の位置と無関係に連通部の範囲を広げる場合と比較して、マフラーパイプ内で生じ得る気流音を効率的に抑制することが可能となる。
【0011】
したがって、消音器は、気流音の発生を抑制しつつ、気柱共鳴音の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る消音器を示す断面図である。
【
図2】
図2は、アウトレットパイプの連通部の説明に用いる説明図である。
【
図3】
図3は、アウトレットパイプの連通部と一次共鳴波との関係の説明に用いる説明図である。
【
図4】
図4は、アウトレットパイプの連通部と二次共鳴波との関係の説明に用いる説明図である。
【
図5】
図5は、アウトレットパイプの連通部と三次共鳴波との関係の説明に用いる説明図である。
【
図6】
図6は、第一変形例に係る消音器のアウトレットパイプの要部を示す図である。
【
図7】
図7は、第二変形例に係る消音器のアウトレットパイプの要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る消音器10について説明する。
【0014】
まず、
図1を参照して、消音器10の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る消音器10を示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、消音器10は、例えば、自動車の排気経路に設けられ、エンジンから出力される音を低減させる装置である。なお、本実施形態では、消音器10が自動車の排気経路に用いられる場合を例に挙げて説明するが、消音器10の用途はこれに限定されるものではない。消音器10は、例えば工場の配管(ダクト)に接続して使用してもよい。
【0016】
消音器10は、本体部20と、本体部20に導入される排気ガスGを導くインレットパイプ22と、を備える。また、消音器10は、少なくとも一つのパイプ(24、26、28)を含んで構成され、本体部20内の排気ガスGを本体部20外に開口する排出口30から排出するとともに音響回路を構成するマフラーパイプ(24、26、28)を備える。
【0017】
マフラーパイプ(24、26、28)は、テールパイプ28とアウトレットパイプ26との組み合わせ、又は連結パイプ24と連結パイプ24に第五拡張室58を介して連通するアウトレットパイプ26とテールパイプ28との組み合わせで構成される。なお、テールパイプ28とアウトレットパイプ26とは、一体であってもよい。
【0018】
テールパイプ28は、本体部20の外部に開口する排出口30を有する。テールパイプ28は、マフラーパイプを構成するアウトレットパイプ26に接続されてアウトレットパイプ26から流入する排気ガスGを排出口30から外部に排出する。
【0019】
この消音器10は、発生する気柱共鳴音を抑制する構成を備える。発生する気柱共鳴音を抑制する際には、発生する気柱共鳴音が測定され、低減すべき共鳴波が予め絞り込まれる。そして、低減すべき共鳴波が形成される音響回路が特定され、当該音響回路において発生する二次共鳴波100が低減するように構成される。
【0020】
本実施形態では、音響回路を構成するマフラーパイプがアウトレットパイプ26とテールパイプ28とからなる場合を例に挙げて説明する。
【0021】
(本体部)
本体部20は、扁平な筒状に形成された筒状部34と、筒状部34の一端に設けられ一端側の開口部を閉鎖する一端側エンドプレート36と、筒状部34の他端に設けられ他端側の開口部を閉鎖する他端側エンドプレート38と、を有する。本体部20の筒状部34には、前述したインレットパイプ22が接続され、エンジンから排出された排気ガスGがインレットパイプ22を介して本体部20に導入される。
【0022】
本体部20には、第一バッフルプレート40と、第二バッフルプレート42と、第三バッフルプレート44と、第四バッフルプレート46とが、本体部20の長手方向に間隔をおいて設けられている。各バッフルプレート40、42、44、46によって本体部20の内部には、第一拡張室50と、第二拡張室52と、第三拡張室54と、第四拡張室56と、第五拡張室58とが形成されている。
【0023】
第一バッフルプレート40、第二バッフルプレート42、及び第三バッフルプレート44には、隣接する室(50、52、54、56)どうしを連通する貫通穴60が形成されている。第四バッフルプレート46は、貫通穴60を備えず、第四拡張室56と第五拡張室58とは、連通されない。
【0024】
これにより、本体部20は、排気ガスGの通過を許容する貫通穴60を有したバッフルプレート(40、42、44)によって仕切られる複数の室(50、52、54、56)を有する。
【0025】
第三拡張室54には、インレットパイプ22の先端部が挿入されている。インレットパイプ22の先端に開口する導入口64は、第三拡張室54に開口する。
【0026】
本体部20の内部には、前述した連結パイプ24が設けられている。連結パイプ24は、第一バッフルプレート40と、第二バッフルプレート42と、第三バッフルプレート44と、第四バッフルプレート46と、を挿通した状態で各バッフルプレート40、42、44,46に固定されている。
【0027】
連結パイプ24の一端開口部24Aは、第一拡張室50内に開口する。連結パイプ24の他端開口部24Bは、第五拡張室58内に開口する。
【0028】
また、本体部20には、前述したアウトレットパイプ26が設けられている。アウトレットパイプ26は、一端側エンドプレート36と、第一バッフルプレート40と、第二バッフルプレート42と、第三バッフルプレート44と、第四バッフルプレート46と、を挿通する。アウトレットパイプ26は、一端側エンドプレート36及び各バッフルプレート40、42、44、46に固定される。
【0029】
アウトレットパイプ26の一端部26Aは、第五拡張室58内に開口する。本体部20の外部に配置されたアウトレットパイプ26の他端部26Bには、テールパイプ28が接続されている。
【0030】
エンジンから排出された排気ガスGは、インレットパイプ22を介して、第三拡張室54に導入される。第三拡張室54に導入された排気ガスGは、第二バッフルプレート42の貫通穴60を介して、第二拡張室52へ流れる。第二拡張室52に流れた排気ガスGは、第一バッフルプレート40の貫通穴60を介して、第一拡張室50へ流れる。
【0031】
第一拡張室50に流れた排気ガスGは、連結パイプ24の一端開口部24Aから当該連結パイプ24に流入する。連結パイプ24に流入した排気ガスGは、他端開口部24Bから第五拡張室58へ流れる。第五拡張室58に流れた排気ガスGは、アウトレットパイプ26の一端部26Aから当該アウトレットパイプ26に流入する。アウトレットパイプ26に流入した排気ガスGは、テールパイプ28を介して外部に排出される。
【0032】
(アウトレットパイプ)
アウトレットパイプ26は、本体部20の第五拡張室58の内部で開口する一端部26Aと、テールパイプ28が接続される他端部26Bと、周面26Cに設けられて一端部26Aを経ずに流入する排気ガスGの流れを許容する連通部70と、有する。
【0033】
連通部70は、アウトレットパイプ26の一端部26Aとテールパイプ28の排出口30との間の通流経路74の全長Lのうち排気ガスGの流れにおける上流側の1/2の範囲のみに配置されている。連通部70が配置された位置は、通流経路74に二つの腹が形成される二次共鳴波100の腹100Bの位置を含む(
図4参照)。
【0034】
インレットパイプ22から第三拡張室54に導入された排気ガスGの一部は、第三バッフルプレート44の貫通穴60を介して、第四拡張室56へ流れる。第四拡張室56に流れた排気ガスGは、アウトレットパイプ26の周面26Cに設けられた連通部70を介して当該アウトレットパイプ26内に流入する。アウトレットパイプ26内に流入した排気ガスGは、アウトレットパイプ内を流れる排気ガスGと合流する。
【0035】
通流経路74内で発生する定在波は、腹の部分における音圧レベルが高い。音圧レベルの高い腹が位置するアウトレットパイプ26の部位に連通孔72を設けると、定在波の腹の音圧は、連通孔72から外部へ逃げる。これにより、定在波は、減衰し、排気騒音が低減する。
【0036】
アウトレットパイプ26の連通部70について
図2から
図5を用いて具体的に説明する。
【0037】
図2は、アウトレットパイプ26の連通部70の説明に用いる説明図である。
図3は、アウトレットパイプ26の連通部70と一次共鳴波90との関係の説明に用いる説明図である。
図4は、アウトレットパイプ26の連通部70と二次共鳴波100との関係の説明に用いる説明図である。
図5は、アウトレットパイプ26の連通部70と三次共鳴波110との関係の説明に用いる説明図である。
【0038】
図2に示すように、連通部70は、アウトレットパイプ26の長さ方向N及び周方向Cに分散して配置された複数の連通孔72で構成されている。各連通孔72は、アウトレットパイプ26の周面26Cに沿って螺旋状に配置されている。
【0039】
螺旋状に配置された連通孔72において、アウトレットパイプ26の周方向Cに配置された各連通孔72は、一定の周方向間隔SKをおいて配置されている。アウトレットパイプ26の長さ方向Nに配置された各連通孔72は、一定の長さ方向間隔NKをおいて配置されている。これにより、連通部70は、隣接する連通孔72どうしの配置間隔(ピッチ)が均一となるように構成されている。なお、各連通孔72どうしの間隔(SK、NK)は、各連通孔72の中心どうしの間隔によって定めるものとする。
【0040】
図1に示すように、インレットパイプ22の導入口64は、第三拡張室54内に開口する一方、連通孔72で構成された連通部70は、第四拡張室56に配置されている。
【0041】
これにより、インレットパイプ22は、本体部20内に開口する導入口64を有し、導入口64は、連通部70と対向しない位置に配置される。また、インレットパイプ22の導入口64は、連通部70が位置する室としての第四拡張室56と第三バッフルプレート44の貫通穴60を介して連通しており、当該導入口64は、連通部70が位置しない室としての第三拡張室54に配置される。
【0042】
図3から
図5に示すように、連通部70は、通流経路74の全長Lのうち排気ガスGの流れにおける上流側であるアウトレットパイプ26の一端部26A側の1/2の上流側範囲80に設けられている。
【0043】
すなわち、エンジンから出力される音によってアウトレットパイプ26とテールパイプ28とからなる通流経路74に定常波が形成されると気柱共鳴音が生ずる。
【0044】
この気柱共鳴音を生ずる定常波を共鳴波とすると、排気音に影響する共鳴波としては、一次共鳴波90と、二次共鳴波100と、三次共鳴波110と、が挙げられる。
【0045】
図3に示すように、一次共鳴波90は、アウトレットパイプ26の一端部26A及びテールパイプ28の排出口30に節90Nが形成されるとともに通流経路74の中央部に一つの腹90Bが形成された定常波で構成される。一次共鳴波90の腹90Bは、通流経路74の全長Lの略1/2の部位に形成される。
【0046】
図4に示すように、二次共鳴波100は、アウトレットパイプ26の一端部26A、テールパイプ28の排出口30、及び通流経路74の中央部に節100Nが形成されるとともに通流経路74中に二つの腹100Bが形成された定常波で構成される。
【0047】
図5に示すように、三次共鳴波110は、アウトレットパイプ26の一端部26A、テールパイプ28の排出口30、及び通流経路74中の二か所に節110Nが形成されるとともに通流経路74中に三つの腹110Bが形成された定常波で構成される。
【0048】
ここで、定常波における各腹90B、100B、110Bは、定常波の振幅が最も大きくなる位置を示す。定常波における節90N、100N、110Nは、定常波の振幅が「0」になる位置を示す。
【0049】
アウトレットパイプ26の一端部26Aからテールパイプ28の排出口30までの通流経路74の全長を「L」とすると、連通部70は、アウトレットパイプ26の一端部26Aから1/2Lの上流側範囲80に設けられている。
【0050】
上流側範囲80に設けられた連通部70は、二次共鳴波100の腹100Bの位置を含んでアウトレットパイプ26の長さ方向Nに分散して配置される複数の連通孔72を有する。連通部70を構成する連通孔72は、二次共鳴波100の最上流に形成された腹100Bの位置に配置された連通孔72(A)を有する(
図4参照)。
【0051】
また、連通部70を構成する連通孔72は、三次共鳴波110の最上流に形成された腹110Bの位置に配置された連通孔72(B)を有する(
図5参照)。これにより、連通孔72は、三次共鳴波110の最上流に形成された腹110Bの位置を更に含むように配置される。
【0052】
なお、連通部70を構成する連通孔72は、その一部が一次共鳴波90の腹90Bに近接する位置に配置されることが望ましい。
【0053】
(グラスウールチャンバ)
図1に示すように、アウトレットパイプ26の周面26Cには、連通部70よりも下流側に複数の小孔140が形成されている。各小孔140は、アウトレットパイプ26を包囲するグラスウールチャンバ142内に開口する。
【0054】
グラスウールチャンバ142は、アウトレットパイプ26を包囲する包囲壁146と、包囲壁146の内部に設けられたグラスウール148とを有する。グラスウールチャンバ142は、アウトレットパイプ26で生じた気流音をグラスウール148で吸音する消音機能を有する。
【0055】
グラスウールチャンバ142の包囲壁146は、内部に密閉された空間を形成し、各拡張室50、52、54からの排気ガスGの流入を阻止する。これにより、アウトレットパイプ26の小孔140は、各拡張室50、52、54の排気ガスGのアウトレットパイプ26内への流入を許容しない。
【0056】
なお、本実施形態では、音響回路を構成するマフラーパイプがアウトレットパイプ26とテールパイプ28とで構成される場合を例に挙げて説明したが、本実施形態は、これに限定されるものではない。
【0057】
例えば、第五拡張室58が充分に小さい場合、音響回路を構成するマフラーパイプは、連結パイプ24、アウトレットパイプ26、及びテールパイプ28で構成されることがある。この場合、連結パイプ24の一端部としての一端開口部24Aからテールパイプ28の排出口30までの範囲を通流経路74とする。そして、連結パイプ24の一端開口部24Aからテールパイプ28の排出口30までの通流経路74の全長Lに基づいて、各共鳴波90、100、110の腹90B、100B、110Bの位置が定められ、連通部70及び連通孔72の位置が設定される。
【0058】
(作用及び効果)
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0059】
本実施形態の消音器10は、本体部20と、本体部20に導入される排気ガスGを導くインレットパイプ22と、を備える。消音器10は、少なくとも一つのパイプ(24、26、28)を含んで構成され、本体部20内の排気ガスGを本体部20外に開口する排出口30から排出するとともに音響回路を構成するマフラーパイプ(24、26、28)と備える。マフラーパイプ(24、26、28)は、本体部20の内部に開口して音響回路の端部を構成する一端部(26A、24A)と、マフラーパイプ(24、26、28)の長さ方向Nに分散して配置される複数の連通孔72で構成され、周面(26C)に設けられて一端部(26A、24A)を経ずに流入する排気ガスGの流れを許容する連通部70と、を有する。連通部70は、一端部(26A、24A)と排出口30との間の通流経路74の全長Lのうち排気ガスGの流れにおける上流側の1/2の範囲のみに配置される。連通部70が配置された位置は、通流経路74に二つの腹100Bが形成される二次共鳴波100の腹100Bの位置を含む。
【0060】
この構成において、マフラーパイプを構成するアウトレットパイプ26の周面26Cには、排気ガスGの流入を許容する連通部70が設けられている。連通部70は、通流経路74の全長Lのうち排気ガスGの流れにおける上流側の1/2の範囲のみに形成され、当該連通部70は、通流経路74に二つの腹100Bが形成される二次共鳴波100の腹100Bの位置を含む箇所に配置される。
【0061】
このため、消音器10は、通流経路74で生ずる共鳴波の腹100Bの位置と異なる箇所に連通部70が形成される場合と比較して、通流経路74で生ずる二次共鳴波100の気柱共鳴音を効率的に抑制することが可能となる。
【0062】
また、消音器10は、通流経路74で生ずる共鳴波の腹100Bの位置と無関係に連通部70の範囲を広げる場合と比較して、マフラーパイプ(26、28)内で生じ得る気流音を効率的に抑制することが可能となる。
【0063】
したがって、消音器10は、気流音の発生を抑制しつつ、気柱共鳴音の抑制が可能となる。
【0064】
また、本実施形態において、連通部70は、複数の連通孔72で構成されている。このため、連通孔72の配置を調整することで、二次共鳴波100の気柱共鳴音のみならず、他の共鳴波の気柱共鳴音の抑制も可能となる。
【0065】
さらに、本実施形態において、連通部70は、消音機能を有するグラスウールチャンバ142よりも排気ガスGの通流方向上流側に設けられている。このため、連通部70からの排気ガスGの流入によって発生し得る気流音を下流側のグラスウールチャンバ142によって低減することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態の消音器10において、連通部70は、二次共鳴波100の腹100Bの位置を境とする長さ方向Nの一方側から他方側に亘る範囲であって、かつ、二次共鳴波100の節100Nを含まない位置に形成される。
【0067】
この構成によれば、連通部70の範囲を抑えつつ、二次共鳴波100の低減が可能となる。
【0068】
また、連通部70を構成する各連通孔72は、マフラーパイプを構成するアウトレットパイプ26の長さ方向Nに分散して配置される。このため、長さ方向Nの同位置に形成された複数の連通孔72から大量の排気ガスGが流入してアウトレットパイプ26内の流速が急激に変化する場合と比較して、流速の急激な変動を抑えて乱流渦の発生を抑制し、発生する気流音の低減が可能となる。また、アウトレットパイプ26内で生じ得る排気ガスGの流れの乱れを抑制することで圧損を抑えることが可能となる。
【0069】
また、本実施形態の消音器10において、連通孔72は、通流経路74に三つの腹110Bが形成される三次共鳴波110の最上流に形成される腹110Bの位置を更に含むように配置される。
【0070】
この構成によれば、消音器10は、通流経路74で生ずる三次共鳴波110の気柱共鳴音を効率的に抑制することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態の消音器10において、連通孔72は、マフラーパイプを構成するアウトレットパイプ26の周方向Cに分散して配置される。
【0072】
この構成によれば、消音器10は、アウトレットパイプ26への排気ガスGの流入箇所を周方向Cで分散することができる。これにより、連通孔72から流入する排気ガスGを、アウトレットパイプ26内の排気ガスGにスムーズに合流させることができるので、乱流の発生を抑制して発生し得る気流音の抑制が可能となる。
【0073】
また、本実施形態の消音器10において、連通孔72は、マフラーパイプを構成するアウトレットパイプ26の周面26Cに螺旋状に配置される。
【0074】
さらに、本実施形態の消音器10において、連通部70において隣接する連通孔72どうしの配置間隔は均一である。
【0075】
これら構成によれば、連通孔72から流入する排気ガスGを、アウトレットパイプ26内の排気ガスGによりスムーズに合流させることができるので、乱流の発生をさらに抑制し、発生する気流音のさらなる抑制が可能となる。
【0076】
また、本実施形態の消音器10において、インレットパイプ22は、本体部20内に開口する導入口64を有し、導入口64は、連通部70と対向しない位置に配置される。
【0077】
さらに、本実施形態の消音器10において、本体部20は、排気ガスGの通過を許容する貫通穴60を有するバッフルプレート(40、42、44)によって仕切られる複数の室(50、52、54,56)を有する。導入口64は、連通部70が位置する室(56)と貫通穴60を介して連通しており連通部70が位置しない室(54)に配置される。
【0078】
これらの構成によれば、インレットパイプ22の導入口64で発生する気流音が、例えば各拡張室50、52、54、56、58が構成する低減回路で低減されずに外部へ出力される場合と比較して、外部に漏れる気流音の抑制が可能となる。
【0079】
なお、本実施形態では、アウトレットパイプ26の周面26Cに沿って螺旋状に配置された連通孔72で連通部70を構成する場合を例に挙げて説明したが、連通部70は、この構成に限定されるものではない。連通部70は、例えば、次の第一変形例及び第二変形例のように構成してもよい。
【0080】
(第一変形例)
図6は、第一変形例に係る消音器200のアウトレットパイプ26の要部を示す図である。
【0081】
図6に示すように、第一変形例に係る消音器200のマフラーパイプを構成するアウトレットパイプ26は、アウトレットパイプ26の周方向Cにずれた例えば第一列210及び第二列212に配置されている。また、連通孔72は、第一列210及び第二列212において、アウトレットパイプ26の長さ方向Nに等間隔をおいて配置されている。なお、長さ方向Nに配置された各連通孔72どうしの間隔は、各連通孔72の中心どうしの間隔によって定めるものとする。
【0082】
アウトレットパイプ26には、第一列210に配列された連通孔72と第二列212に配列された連通孔72とが長さ方向Nで交互に配置されている。
【0083】
これにより、連通部70は、アウトレットパイプ26の長さ方向N及び周方向Cに分散して配置された複数の連通孔72で構成されている。
【0084】
第一変形例に係る消音器200は、前述した実施形態と同一又は同等部分に関しては、前述した実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0085】
(第二変形例)
図7は、第二変形例に係る消音器300のアウトレットパイプ26の要部を示す側面図である。
【0086】
図7に示すように、第二変形例に係る消音器300のマフラーパイプを構成するアウトレットパイプ26は、連通部70を構成する各連通孔72がランダムに形成されている。隣接する連通孔72は、アウトレットパイプ26の長さ方向Nに等間隔をおいて離間するとともに周方向Cにずれた位置に配置されている。なお、長さ方向Nに配置された各連通孔72どうしの間隔は、各連通孔72の中心どうしの間隔によって定めるものとする。
【0087】
これにより、連通部70は、アウトレットパイプ26の長さ方向N及び周方向Cに分散して配置された複数の連通孔72で構成されている。
【0088】
第二変形例に係る消音器300は、前述した実施形態と同一又は同等部分に関しては、前述した実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0090】
10、200、300 消音器
20 本体部
22 インレットパイプ
24 連結パイプ(マフラーパイプ)
26 アウトレットパイプ(マフラーパイプ)
26A 一端部
26B 他端部
26C 周面
28 テールパイプ(マフラーパイプ)
30 排出口
40 第一バッフルプレート
42 第二バッフルプレート
44 第三バッフルプレート
46 第四バッフルプレート
50 第一拡張室
52 第二拡張室
54 第三拡張室
56 第四拡張室
58 第五拡張室
60 貫通穴
64 導入口
70 連通部
72 連通孔
74 通流経路
80 上流側範囲
100 二次共鳴波
100B 腹
100N 節
110 三次共鳴波
110B 腹
110N 節
C 周方向
G 排気ガス
L 全長
N 長さ方向
NK 長さ方向間隔
SK 周方向間隔